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明細書 :四置換不斉炭素を有する光学活性なN,S-アセタール類の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-063481 (P2015-063481A)
公開日 平成27年4月9日(2015.4.9)
発明の名称または考案の名称 四置換不斉炭素を有する光学活性なN,S-アセタール類の製造方法
国際特許分類 C07D 209/34        (2006.01)
C07B  53/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07D 209/34
C07B 53/00 B
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2013-197744 (P2013-197744)
出願日 平成25年9月25日(2013.9.25)
発明者または考案者 【氏名】中村 修一
【氏名】高橋 駿
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4C204
4H006
4H039
Fターム 4C204AB20
4C204BB04
4C204CB03
4C204DB30
4C204EB03
4C204FB03
4C204FB10
4C204GB01
4H006AA02
4H006AC81
4H006BA51
4H006BA52
4H039CA61
4H039CA71
4H039CF40
要約 【課題】この出願の発明が解決しようとする課題は、現状の技術では、光学活性な四置換不斉炭素を有するN,S-アセタール類およびその前駆体の簡便かつ高エナンチオ選択的合成法がない点である。
【解決手段】
下式(13)で表される種々のケチミン類に対し、不斉触媒存在下でチオール類を反応させることにより光学活性な四置換不斉炭素を有するN,S-アセタール類を製造する方法を提供する。

【化13】
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
次式(12)の反応により、イサチン由来のイミン類に触媒とチオール類を反応させることを特徴とする光学活性な四置換不斉炭素を有するN,S-アセタール誘導体の製造方法。

【化12】
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(ただし、R1、R2、R3は、アルコキシカルボニル基、アレーンカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキル基、アリール基、ジアリールホスフィノイル基、ジアルキルホスフィノイル基、アレーンスルホニル基、またはアルキルスルホニル基を示す。R4は、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アリール基、またはエステル基を示す。)。
【請求項2】
上記触媒がシンコナアルカロイド類、二量化型キナアルカロイド類、光学活性ジアミン類、光学活性アミノアルコール類、光学活性チオウレア類、光学活性ビスオキサゾリン類、光学活性ビナフチルリン酸化合物、スクエアアミド類からなる群から選択された一種又は二種以上である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載した添加物(additive)が芳香族系アルコール、脂肪族系アルコールアルキルアルコールからなる群から選択された一種又は二種以上である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記芳香族系アルコールがフェノール、パラニトロフェノール、パラtert-ブチルフェノール、パラメトキシフェノール、パラブロモフェノール、及びパラクロロフェノールであり、前記脂肪族系アルコールアルキルアルコールが、tBuOH、iPrOH、HFIP、シリルアルコールtBuOH、iPrOH、HFIP、およびシリルアルコール、
であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、以前に我々が独自に開発したシンコナアルカロイド誘導体を不斉触媒として用い、ケチミン類に対してチオール類の不斉求核付加反応を行なうことにより、光学活性な四置換不斉炭素を有するN,S-アセタールを製造するものである。
【背景技術】
【0002】
光学活性なN,S-アセタール誘導体は、ペニシリンやfusaperazine A、dideoxyverticillin Aに代表されるような様々な生理活性物質や医農薬品合成の中間体として広く用いられるため、その不斉合成技術は盛んに研究されてきた(非特許文献1-3)。特に、近年では、四置換不斉炭素を有するN,S-アセタールから簡便に誘導できるα-アミノスルホニル化合物において抗結核作用があることが報告されて以来、その合成法の開発が注目されている(非特許文献4—5)。
【0003】
しかしながら、現時点でのその光学活性体の合成には、多量の光学活性な添加物を用いる光学分割法が行われ、簡便な不斉合成手法は存在しない。一方で、光学活性N,S-アセタール類の不斉合成法として、アキラルなN,S-アセタールを求核剤として用いる手法が、いくつか検討されているものの、収率、不斉収率の点から問題点が多い。さらには、この手法では不斉触媒を一当量以上用いなければならず、また四置換不斉炭素を構築する手法は検討されていない(非特許文献6-8)。一方で、光学活性四置換不斉炭素を有するN,S-アセタール類のより直接的な合成手法として、ケトン由来のイミン、ケチミン類に対するチオールの付加反応も考えられるが、これまでに全く検討例がない。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】P. G. Sammes, Chem. Rev. 1976, 76, 113-154.
【非特許文献2】J. Kim, J. A. Ashenhurst, M. Movassaghi, Science 2009, 324, 238-241.
【非特許文献3】I. Gomez-Monterrey, A. Bertamino, A. Porta, A. Carotenuto, S. Musella, C. Aquino, I. Granata, M. Sala, D. Brancaccio, D. Picone, C. Ercole, P. Stiuso, P. Campiglia, P. Grieco, P. Ianelli, B. Maresca, E. Novellino, J. Med. Chem. 2010, 53, 8319-8329
【非特許文献4】V. V. Vintonyak, K. Warburg, H. Kruse, S. Grimme, K. Hubel, D. Rauh, H. Waldmann, Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 5902-5905.
【非特許文献5】V. V. Vintonyak, K. Warburg, B. Over, K. Hubel, D. Rauh, H. Waldmann, Tetrahedron 2011, 67, 6713-6729.
【非特許文献6】L. Wang, S. Nakamura, Y. Ito, T. Toru, Tetrahedron: Asymmetry2004, 15, 3059-3072.
【非特許文献7】L. Wang, S. Nakamura, T. Toru, Org. Biomol. Chem.2004, 2, 2168-2169.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現状の技術では、光学活性な四置換不斉炭素を有するN,S-アセタールを簡便かつ高エナンチオ選択的に合成する手法がない点に鑑みて、当該手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、次式(1)の反応により、修飾したキナアルカロイド触媒を用い、イサチン由来のイミン類にチオグリコール酸類を反応させることを特徴とする光学活性な四置換不斉炭素を有するN,S-アセタール誘導体の製造するものである。
【0007】
【化1】
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【0008】
(ただし、R1、R2、R3は、アルコキシカルボニル基、アレーンカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキル基、アリール基、ジアリールホスフィノイル基、ジアルキルホスフィノイル基、アレーンスルホニル基、アルキルスルホニル基を示す。R4は、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アリール基またはエステル基を示す。)
種々のケチミン類に対し不斉触媒と添加物存在下でチオール類を反応させることにより光学活性な四置換不斉炭素を有するN,S-アセタール類を製造する方法を提供する(請求項1)。
用いる有機触媒は、シンコナアルカロイド類、二量化型キナアルカロイド類、光学活性ジアミン類、光学活性アミノアルコール類、光学活性チオウレア類、光学活性ビスオキサゾリン類、光学活性ビナフチルリン酸化合物、スクエアアミド類などでもよい。
【0009】
また添加物としては、フェノール、パラニトロフェノールのような芳香族系アルコール、tBuOH、iPrOH、HFIP、シリルアルコールのような脂肪族系アルコールアルキルアルコール、などでもよい。
【0010】

以下、種々の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】

発明者らは、発明者らが以前に開発した不斉触媒を用いることにより、ケチミン類へのチオールの付加反応において、チオール部分を活性化しつつ、高度な不斉空間の設計ができ、N,S-アセタール誘導体の合成が達成できると考えた。そこで、修飾キナアルカロイド触媒を用いることで温和な条件で、イサチン由来のイミンへチオール類を付加させ、光学活性なN,S-アセタール誘導体の合成を行った。

【0012】

(第1実施形態)
次式(2)

【0013】
【化2】
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【0014】
上図は本発明の反応の概要である。上図のような種々のイサチン由来のイミン類に触媒と存在下でチオール類を反応させると、高エナンチオ選択的に生成物を与える。R1、R2、R3は、アルコキシカルボニル基、アレーンカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキル基、アリール基、ジアリールホスフィノイル基、ジアルキルホスフィノイル基、アレーンスルホニル基、アルキルスルホニル基を示す。R4は、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アリール基、エステル基を示す。
(参考例1)
本発明の原料として用いる次式(3)の化学式で与えられるEthyl 2-[1-methyl-3-(1-adamantyloxycarbonylamino)indolin-2-one-3-ylthio]acetateは次のようにして得られる。

【0015】
【化3】
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【0016】
1-methylindoline-2,3-dione(300 mg, 1.86 mmol)、1-adamantyloxycarbonylamino
-triphenylphosphine (848 mg, 1.86 mmol)、を1,4-ジオキサン 1.9 mlに溶かし、還流した。12時間攪拌後、溶媒を留去し、生成物を得た。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane:AcOEt = 90:10)で行い、目的生成物を410 mg (65%)で得た。
1-Methyl-3-(1-adamantyloxycarbonylimino)indolin-2-one のスペクトル等は以下の通り。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.63 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.50 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.10 (t, J = 6.3 Hz, 10H), 6.84 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 3.22 (s, 3H), 2.30-2.25 (m, 8H), 1.71-1.67 (m, 7H).
(実施例1)
下記化学式(4)の化学式で与えられるEthyl2-[1-methyl-3-(1-adamantyloxycarbonylimino)indolin-2-one-3-ylthio]acetateの合成について記述する。

【0017】
【化4】
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【0018】
乾燥させた試験管にキニン由来の9-epiアミノスルホンアミド触媒(1.4 mg, 0.003 mmol)とイサチン由来の1-Methyl-3-(1-adamantyloxycarbonylimino)indolin-2-one(10.0 mg, 0.03 mmol)をトルエン1.0 mLに溶解させ、-80 ℃に冷却した。続いてethylthioglycolate(7.5 mL, 0.06 mmol)とhydroxytrimethylsilane(5.6 mL, 0.06 mmol)を加え-80 ℃で8時間攪拌した。反応はTLC(薄層クロマトグラフィー)にて確認した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去し、粗生成物とした。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hex:AcOEt = 9:1)で行いEthyl 2-[1-methyl-3-(1-adamantyloxycarbonylimino)indolin-2-one-3-ylthio]acetate を13.6 mg (99 %, 97% ee) で得た。
Ethyl 2-[1-methyl-3-(1-adamantyloxycarbonylimino)indolin-2-one-3-ylthio]acetate のスペクトル等は以下の通り。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.25-7.05 (m, 4H), 6.78 (s, 1H), 4.50 (d, J = 16.8 Hz, 1H), 4.27 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 3.31-3.26 (m, 4H), 2.08-2.01 (m, 8H), 1.65-1.49 (m, 7H), 1.34 (t, J = 6.5 Hz, 3H); HPLC (DAICEL CHIRALPAK IC, Hexane:iPrOH = 50:50, 1.0 mL/min, 225 nm) tmajor = 12.3 min, tminor= 22.9 min.

(実施例2-16)
各種のイサチンから誘導されたケチミンを用い、下式(5)の反応により、下表1に示す種々の不斉有機触媒そして様々な添加物を用いて行った実施例の結果を表2に示す。

【0019】
【表1】
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【0020】
【化5】
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【0021】
【表2】
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【0022】
Yieldは収率を示し、Eeはエナンチオ過剰率を示す。
上記の結果より触媒はシンコナアルカロイド由来のスルホンアミド触媒が良く、特に、ピリジン環を有するキニン由来のスルホンアミドが最も良い(実施例2-11参照)。またシンコニジン由来のスルホンアミド触媒を用いることで逆の鏡像異性体を作り分けることが可能である(実施例10参照)。また、アルコールを添加物として用いるとエナンチオ選択性が向上し、ヒドロキシトリメチルシランを用いた場合が最も良い(実施例13-16参照)。上記の条件を用いて、各種のイサチン誘導体へ反応を行った実施例を表3に示す。

【0023】
【化6】
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【0024】
【表3】
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【0025】
上記の結果より、R1がベンゼン環上の五位に電子供与基のメチル基でもよく、R1のベンゼン環上の五位にクロロ基や五位、四位にブロモ基の電子求引基でもよい(実施例17-21)。

【0026】

以下、上記した化合物について説明する。
Ethyl 2-[1-methyl-3-(1-adamantyloxycarbonylimino)indolin-2-one-3-ylthio]acetate類のスペクトル等は以下の通り。

【0027】
【化7】
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【0028】
(実施例17):収率91%、97% ee
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.19 (s, 1H), 7.11 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H) 6.72 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.52 (d, J = 17.1 Hz, 1H), 4.27 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.24-3.18 (m, 4H), 2.32 (s, 3H), 2.15-2.09 (m, 8H), 1.65-1.58 (m, 7H), 1.34 (t, J = 6.6 Hz, 3H).; HPLC(DAICEL CHIRALPAK IC, Hexane:iPrOH = 60:40, 1.0 mL/min, 225 nm) tmajor = 17.2, tminor = 32.6 min.

【0029】
【化8】
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【0030】
(実施例18):収率96%、96% ee
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.35 (s, 1H), 7.29 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 6.77 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 4.49 (d, J = 18.0, 1H), 4.27 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 2.15-2.09 (m, 8H), 1.65-1.59 (m, 7H), 1.34 (t, J = 7.1 Hz, 3H).; HPLC (DAICEL CHIRALPAK IC, Hexane:iPrOH = 70:30, 1.0 mL/min, 225 nm) tmajor = 12.1 min, tminor = 20.3 min.

【0031】
【化9】
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【0032】
(実施例19):収率93%、96% ee
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 7.48-7.43 (m, 2H), 7.19 (s, 1H), 6.72 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.48 (d, J = 17.1 Hz, 1H), 4.27 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.24-3.18 (m, 4H), 2.14-2.09 (m, 8H), 1.64-1.56 (m, 7H), 1.33 (t, J= 7.2 Hz, 3H).; HPLC (DAICEL CHIRALPAK IC, Hexane:iPrOH = 60:40, 1.0 mL/min, 225 nm) tmajor = 11.2 min, tminor = 17.1 min.

【0033】
【化10】
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【0034】
(実施例20):収率96%、96% ee
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 7.17 (s, 2H), 7.05 (s, 1H), 7.79 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 4.51 (d, J= 17.1 Hz, 1H), 4.28 (q, J = 6.7 Hz, 2H), 3.32-3.27 (m, 4H), 2.09-2.02 (m, 8H), 1.66-1.59 (m, 7H), 1.35 (t, J = 7.1 Hz, 3H); HPLC (DAICEL CHIRALPAK IC, Hexane:iPrOH = 80:20, 1.0 mL/min, 225 nm) tmajor = 33.6 min, tminor= 51.9 min.
(化11)
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【0035】
(実施例21):収率90%、96% ee
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 7.41-7.27 (m, 7H), 7.05 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 5.28 (s, 1H), 4.29 (d, J = 12.9 Hz, 1H), 4.08 (d, 1H), 2.07-1.93 (m, 8H), 1.57 (s, 7H),; HPLC (DAICEL CHIRALPAK IC, Hexane:iPrOH = 70:30, 1.0 mL/min, 254 nm) tmajor = 9.75 min, tminor= 18.93 min.