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明細書 :ジメチルエーテル製造用触媒、基材担持触媒、及びジメチルエーテルの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6004396号 (P6004396)
公開番号 特開2014-054607 (P2014-054607A)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月5日(2016.10.5)
公開日 平成26年3月27日(2014.3.27)
発明の名称または考案の名称 ジメチルエーテル製造用触媒、基材担持触媒、及びジメチルエーテルの製造方法
国際特許分類 B01J  23/825       (2006.01)
C07C  43/04        (2006.01)
C07C  41/01        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 23/825 Z
C07C 43/04 B
C07C 41/01
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2012-201830 (P2012-201830)
出願日 平成24年9月13日(2012.9.13)
審査請求日 平成27年8月25日(2015.8.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】武石 薫
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100108257、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 伊知良
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100162352、【弁理士】、【氏名又は名称】酒巻 順一郎
審査官 【審査官】増山 淳子
参考文献・文献 特開2008-132467(JP,A)
特開2001-070793(JP,A)
特開2008-000699(JP,A)
特開2006-298782(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素酸化物及び水素を反応させてジメチルエーテルを製造するための触媒であって、
ゾル-ゲル法によって形成され、銅元素、ガリウム元素及びアルミニウム酸化物を含む、ジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項2】
前記ゾル-ゲル法が、
加水分解性アルミニウム化合物の分散液を得る工程と、
前記分散液中の加水分解性アルミニウム化合物を加水分解させて、ゾル状分散液を得る工程と、
前記ゾル状分散液に銅イオン及びガリウムイオンを含む水溶液を加え、金属イオン含有分散液を得る工程と、
前記金属イオン含有分散液の溶媒を留去して、ゲルを得る工程と、
前記ゲルを焼成する工程と、
を有する、請求項1に記載のジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項3】
イットリウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛、ランタニウム、マンガン及び鉄からなる群から選ばれる1種以上の金属元素をさらに含む、請求項1又は2に記載のジメチルエーテル製造用触媒。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のジメチルエーテル製造用触媒が基材上に担持されてなる、ジメチルエーテル製造用基材担持触媒。
【請求項5】
前記基材が金属材料及び酸化物材料から選ばれる基材である、請求項4に記載のジメチルエーテル製造用基材担持触媒。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のジメチルエーテル製造用触媒又は請求項4若しくは5に記載のジメチルエーテル製造用基材担持触媒の存在下において、炭素酸化物及び水素を反応させる、ジメチルエーテルの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ジメチルエーテル製造用触媒、基材担持触媒、及びこれらを用いたジメチルエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルエーテル(以下、DMEと記述する。)は、燃焼しても黒煙等の粒子状物質及び硫黄酸化物が発生しないことから、液化石油ガスや軽油に代わる次世代のクリーン燃料として期待されている。
【0003】
DMEを製造する方法としては、例えば亜鉛、マンガン及び鉄からなる群からなる1以上の金属元素、銅元素及びアルミニウム酸化物を含むDME製造用触媒を用い、その存在下において、炭素酸化物(一酸化炭素又は二酸化炭素)及び水素を反応させる方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-000699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二酸化炭素は地球温暖化の原因の一つとされている物質であり、二酸化炭素から直接DMEを合成することができれば、地球温暖化対策、エネルギー問題の解決等の観点から、利用価値が高い。しかしながら、従来のDME製造用触媒を用いて二酸化炭素及び水素からDMEを直接合成した場合には、DMEの選択率について改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素及び水素を用いた場合においても、DMEの選択率が高い触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゾル-ゲル法によって形成され、銅元素、ガリウム元素及びアルミニウム酸化物を含むDME製造用触媒を提供する。なお、銅元素及びガリウム元素は酸化物の状態で含まれていてもよい。
【0008】
上記ゾル-ゲル法は、加水分解性アルミニウム化合物の分散液を得る工程と、上記分散液中の加水分解性アルミニウム化合物を加水分解させて、ゾル状分散液を得る工程と、上記ゾル状分散液に銅イオン及びガリウムイオンを含む水溶液を加え、金属イオン含有分散液を得る工程と、上記金属イオン含有分散液の溶媒を留去して、ゲルを得る工程と、上記ゲルを焼成する工程と、を有することが好ましい。
【0009】
上記触媒は、イットリウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛、ランタニウム、マンガン及び鉄からなる群から選ばれる1種以上の金属元素をさらに含んでいてもよい。なお、これら金属元素は酸化物の状態で含まれていてもよい。
【0010】
上記触媒は、基材に担持して、基材担持触媒として用いてもよい。基材に担持することによって、触媒の取扱いが容易となり得る。
【0011】
基材としては、反応により生ずる熱を速やかに放散し得ることから、金属材料、酸化物材料等の伝熱性に優れた伝熱性基材であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記触媒又は上記基材担持触媒の存在下、炭素酸化物及び水素を反応させる、DMEの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二酸化炭素及び水素からDMEを直接合成した場合においても、DME選択率の高い触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】触媒A1存在下、二酸化炭素及び水素を反応させたときの反応温度に対するDME及び一酸化炭素、それぞれの選択率及び生成速度(対数表記)を表すグラフである。
【図2】触媒B1存在下、二酸化炭素及び水素を反応させたときの反応温度に対するDME及び一酸化炭素、それぞれの選択率及び生成速度(対数表記)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

【0016】
[DME製造用触媒]
本実施形態に係るDME製造用触媒(以下、単に「触媒」ともいう。)は、ゾル-ゲル法によって形成され、銅元素、ガリウム元素及びアルミニウム酸化物を含むものである。なお、銅元素及びガリウム元素は酸化物の状態で含まれていてもよい。

【0017】
上記触媒における銅元素の含有量は、触媒全体に対して、10~70質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましく、20~50質量%であることがさらに好ましい。
上記触媒におけるガリウム元素の含有量は、触媒全体に対して、0.5~70質量%であることが好ましく、1~60質量%であることがより好ましく、2~50質量%であることがさらに好ましい。
上記触媒におけるアルミニウム酸化物の含有量は、30~90質量%であることが好ましく、35~85質量%であることがより好ましく、40~80質量%であることがさらに好ましい。
なお、触媒におけるそれぞれの成分の含有量は、例えばICP質量分析法や原子吸光分析法等により測定することができる。

【0018】
ゾル-ゲル法としては、一段法、逐次法等が挙げられる。一段法は、加水分解性化合物と金属イオンとを含む分散液を調製し、分散液中の加水分解性化合物を加水分解させてゾル状分散液とし、ゾル状分散液のゲル化と焼成を行うものである。逐次法は、加水分解性化合物の分散液を調製し、加水分解性化合物を加水分解させてゾル状分散液とし、金属イオンをゾル状分散液に加えて、ゾル状分散液のゲル化と焼成を行うものである。

【0019】
上記触媒は、加水分解性アルミニウム化合物の分散液を得る工程(以下、(A)工程という。)と、加水分解性アルミニウム化合物を加水分解させて、ゾル状分散液を得る工程(以下、(B)工程という。)と、上記ゾル状分散液に銅イオン及びガリウムイオンを含む水溶液を加え、金属イオン含有分散液を得る工程(以下、(C)工程という。)と、上記金属イオン含有分散液の溶媒を留去して、ゲルを得る工程(以下、(D)工程という。)と、上記ゲルを焼成する工程(以下、(E)工程という。)と、を有する逐次法により形成されるものであることが好ましい。

【0020】
(A)工程では、例えば、60~80℃の水性溶媒に加水分解性アルミニウム化合物を分散させ、分散液を得る。水性溶媒としては、通常、水が用いられ、エチレングリコール、メタノール、エタノール等のアルコール類及びN,N-ジメチルホルムアミド等の水溶性有機溶媒を含んでいてよい。加水分解性アルミニウム化合物としては、アルミニウムアルコキシドが挙げられ、具体的には、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムブトキシド等が挙げられる。

【0021】
(B)工程では、例えば、(A)工程で得られる分散液に酸又は塩基を加えて、加水分解性アルミニウム化合物を加水分解させて、アルミニウム加水分解物が水性溶媒中に析出したゾル状分散液を得る。酸を用いる場合には、分散液の水素イオン濃度を例えばpH3以下、好ましくはpH2以下とする。酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸が用いられる。また、塩基を用いる場合には、分散液の水素イオン濃度を例えばpH9以上とする。塩基としては、例えば、アンモニア、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が用いられる。これらの中で、無機酸を加えて、分散液の水素イオン濃度をpH3以下とする方法が好ましい。

【0022】
(C)工程では、(B)工程で得られるゾル状分散液に銅イオン及びガリウムイオンを含む水溶液を加え、金属イオン含有分散液を得る。銅イオン及びガリウムイオンを含む水溶液は、通常、銅イオンと対アニオンとからなる銅塩及びガリウムイオンと対アニオンとからなるガリウム塩を水に加えることにより調製される。対アニオンとしては、硝酸イオン、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン等が挙げられる。

【0023】
(D)工程では、例えば、金属イオン含有分散液の溶媒を留去することによりゲルを得る。ゲルとすることで、アルミニウム加水分解物に(C)工程で加える銅イオン及びガリウムイオンを均一に分散させることができる。得られるゲルは、通常、乾燥される。

【0024】
(E)工程では、(D)工程で得られるゲルを焼成する。焼成することにより、アルミニウム加水分解物がアルミニウム酸化物(Al)となり、銅元素及びガリウム元素を含む、本実施形態に係るDME製造用触媒を得ることができる。焼成は通常、大気中で行われ、焼成温度は通常250~700℃であり、焼成時間は2~10時間である。

【0025】
上記工程に従い、通常は粉末状でDME製造用触媒を得る。得られる触媒は、粉末状のまま用いてもよく、顆粒状、球状、円柱状、円筒状等に成形して用いてもよい。

【0026】
本実施形態に係るDME製造用触媒は、イットリウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛、ランタニウム、マンガン及び鉄からなる群から選ばれる1種以上の金属元素をさらに含んでいてもよい。なお、これら金属元素は酸化物の状態で含まれていてもよい。該金属元素をDME製造用触媒に含有させるためには、上記(C)工程において、該金属イオンを含む水溶液を(B)工程で得られるゾル状分散液に加えればよい。

【0027】
なお、上記触媒がこれらの金属元素を含有する場合のその含有量は、触媒全体に対して、例えば、0.1~30質量%とすることができる。

【0028】
上記触媒の比表面積は、10~500m/gであることが好ましい。触媒の比表面積は、例えばBET法又はLangmuir法により測定することができる。

【0029】
上記触媒の酸性度は、例えばピリジンを吸着させた触媒を赤外線吸収スペクトル法で観察することにより確認できる。赤外線吸収スペクトルにおいて、1450cm-1付近にある吸収はルイス酸に由来し、1540cm-1付近にある吸収はブレンステッド酸に由来する。温度を連続的に上昇させて、1450cm-1付近にある吸収が200℃以上でも観測されることが好ましい。

【0030】
[DME製造用基材担持触媒]
本実施形態に係るDME製造用触媒は、基材に担持して、DME製造用基材担持触媒として用いてもよい。

【0031】
基材としては、反応により生ずる熱を速やかに放散し得ることから、金属材料、酸化物材料等の伝熱性に優れた伝熱性基材であることが好ましく、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属、炭化鉄、炭化アルミニウム、炭化ニッケル、炭化チタン等の炭化金属、窒化鉄、窒化アルミニウム、窒化ニッケル、窒化チタン等の窒化金属、アルミナ、シリカ、ゼオライト、ジルコニア及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種の材料の成型体であることがより好ましい。伝熱性基材の形状として、例えば、板状、網状、ハニカム状等が挙げられる。

【0032】
本実施形態に係るDME製造用基材担持触媒は、上記DME製造用触媒の(C)工程で得られる金属イオン含有分散液中に基材を浸漬し、その後、(D)工程及び(E)工程を経ることによって、得ることができる。

【0033】
[DMEの製造方法]
本実施形態に係るDME製造用触媒及びDME製造用基材担持触媒は、DMEを製造する反応の前に還元処理を施すことが好ましい。還元処理は、例えば、水素ガス等の還元雰囲気下、250~500℃で通常1時間以上、好ましくは3時間以上保持することにより行われる。

【0034】
DME製造用触媒又はDME製造用基材担持触媒を用いてDMEを製造するには、例えば、炭素酸化物及び水素を上記触媒に接触させればよい。反応温度は通常150~350℃であり、反応圧力は通常0.1~10MPaである。上記触媒は、他の触媒と併用することなく、単独で、炭素酸化物及び水素からDMEを製造することができる。

【0035】
炭素酸化物としては、一酸化炭素及び二酸化炭素が挙げられる。

【0036】
原料となる炭素酸化物及び水素は、通常ガス状で供給される。炭素酸化物及び水素は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスで希釈されていてもよい。

【0037】
反応器は特に限定されるものでなく、固定床反応器、流動床反応器、移動床反応器、スラリー反応器等の通常の反応器を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
[DME製造用触媒]
70℃の純水約150mLに、乳鉢で磨り潰したアルミニウムイソプロポキシド粉末(和光純薬工業株式会社製、一級、純度95.0%)14.761g及びエチレングリコール10.2mLを加え、同温度で15分間以上撹拌して分散させた。次いで、希硝酸を少しずつ加えて水素イオン濃度pH1~2に調整して、ゾル状分散液を得た。この分散液に硝酸銅3水和物(和光純薬工業株式会社製、特級、純度99.0%)5.185g及び硝酸ガリウムn水和物(n=6~7、三津和化学薬品株式会社製、ガリウム純度19.04%)0.789gを純水約50mLに溶解させた銅イオン及びガリウムイオン水溶液を加え、同温度で30分間以上撹拌し、その後エバポレーターにより減圧乾燥を行ってゲルを得た。このゲルを粉砕した後、大気中、500℃で5時間の焼成を行い、得られた焼成物に水素雰囲気中450℃で10時間の還元処理を施して触媒A1を5.0g得た。この調製による触媒の質量組成は、Cuが27質量%、Gaが3質量%、Alが70質量%であった。
【実施例】
【0040】
比較例1
硝酸ガリウムn水和物の代わりに、硝酸亜鉛6水和物(和光純薬工業株式会社製、特級、純度99.0%)0.689gを用いた以外は、実施例1と同様にして、触媒B1を5.0g得た。この調製による触媒の質量組成は、Cuが27質量%、Znが3質量%、Alが70質量%であった。
【実施例】
【0041】
[DME製造]
触媒A1(実施例1)0.5gを固定床流通系反応装置の反応管内に配置した。二酸化炭素、水素及びアルゴン(CO/H/Ar=15.0/5.0/2.0mLmim-1)を反応管に導入し、流通させた。触媒通過後の生成ガスをガスクロマトグラフによって分析し、DMEの生成速度や選択率を測定した。このとき、触媒を配置した反応管を電気炉によって加熱し、160~280℃で制御した。
触媒B1(比較例1)についても、同様の実験を行った。
【実施例】
【0042】
図1は、触媒A1(実施例1)存在下、二酸化炭素及び水素を反応させたときの反応温度に対するDME及び一酸化炭素、それぞれの選択率及び生成速度(対数表記)を表すグラフである。図2は、触媒B1(比較例1)を用いた場合のDME及び一酸化炭素、それぞれの選択率及び生成速度(対数表記)を表すグラフである。160~280℃において、触媒A1を反応に用いた場合は触媒B1を用いた場合と比較して一酸化炭素の選択率が低くなり、DMEの選択率が高くなることが判明した。
図面
【図1】
0
【図2】
1