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明細書 :試料保持装置および試料分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5904835号 (P5904835)
公開番号 特開2013-205077 (P2013-205077A)
登録日 平成28年3月25日(2016.3.25)
発行日 平成28年4月20日(2016.4.20)
公開日 平成25年10月7日(2013.10.7)
発明の名称または考案の名称 試料保持装置および試料分析方法
国際特許分類 G01N   1/28        (2006.01)
G01N  23/20        (2006.01)
FI G01N 1/28 W
G01N 23/20 320
請求項の数または発明の数 6
全頁数 19
出願番号 特願2012-071442 (P2012-071442)
出願日 平成24年3月27日(2012.3.27)
審査請求日 平成26年10月28日(2014.10.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
発明者または考案者 【氏名】中沢 寛光
【氏名】加藤 知
個別代理人の代理人 【識別番号】100104444、【弁理士】、【氏名又は名称】上羽 秀敏
【識別番号】100112715、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 隆夫
【識別番号】100125704、【弁理士】、【氏名又は名称】坂根 剛
【識別番号】100120662、【弁理士】、【氏名又は名称】川上 桂子
【識別番号】100174285、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮山 聰
審査官 【審査官】福田 裕司
参考文献・文献 特開平01-296149(JP,A)
特開2008-064463(JP,A)
特開2006-162506(JP,A)
特開2005-221317(JP,A)
特開平03-295440(JP,A)
米国特許第5693345(US,A)
調査した分野 G01N 1/28
G01N 23/20
特許請求の範囲 【請求項1】
試料を保持するホルダを備え、
前記ホルダは、
前記試料の表面に接するように形成される表側環境室と、
前記試料の裏面に接するように形成される裏側環境室と、
前記試料へビームを入射させるためのビーム入射口と、
前記試料からビームを出射させるためのビーム出射口と、
前記表側環境室および前記裏側環境室の一方へ通じ、外部へ開口する環境連絡通路とを含む、試料保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料保持装置であって、
前記ホルダと前記試料との境界がシールされる、試料保持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の試料保持装置であって、
前記ホルダはさらに、
前記試料の表側に配置される表側部材と、
前記試料の裏側に配置され、前記表側部材に着脱可能な裏側部材とを含み、
前記表側環境室は前記表側部材内に形成され、前記裏側環境室は前記裏側部材内に形成され、前記ビーム入射口および前記ビーム出射口の一方は前記表側部材内に形成され、前記ビーム入射口および前記ビーム出射口の他方は前記裏側部材内に形成される、試料保持装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の試料保持装置であってさらに、
前記試料と接触して配置され、前記試料の実験条件を制御する制御部材を備える、試料保持装置。
【請求項5】
請求項に記載の試料保持装置であって、
前記制御部材は、前記ホルダの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する、試料保持装置。
【請求項6】
請求項に記載の試料保持装置であって、
前記制御部材は、前記ホルダの電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する、試料保持装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、試料保持装置および試料分析方法に関し、さらに詳しくは、ビーム照射のために試料を保持する試料保持装置およびビームを照射して試料を分析する試料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波または粒子線などのビームを試料に照射して、試料を分析する試料分析方法が知られている。精度の高い測定を行うためには、ビームが照射される位置が一定になるように、試料を保持する必要がある。
【0003】
ビーム照射による測定において、試料の環境(媒体、温度、湿度、圧力、電場、または磁場など)を変化させながら測定をしたい場合がある。例えば、試料に溶液を作用させるため、試料室に溶液を流通させたい場合がある。この場合、試料保持装置は、試料室に溶液を流通させることができ、かつ、試料を動かないように固定できる構造が求められる。
【0004】
特開2008-64463号公報(特許文献1)には、ビーム照射を行う軟質材料の試料を測定装置に動かないように簡易に固定することができ、より試料に溶液を均一になるように流した状態を簡易に維持して計測を行うビーム照射による軟質材料の構造解析方法および軟質材料保持装置、が記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-64463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、板状または膜状の試料では、試料の表裏の面が接する環境を分離したい場合がある。例えば、試料の一方の面から溶液を作用させて、試料の溶液透過性を測定したい場合がある。このとき、ビーム照射による測定を併せて行えば、ビーム照射から得られる試料の結晶構造と、溶液透過性との相関関係を調べることができる。
【0007】
生体皮膚など、固体差または部位差が大きい試料では、この2つの測定を、同一試料で、同時に行うことが好ましい。すなわち、試料の表裏の面が接する環境を分離して、ビーム照射による測定を行うことが好ましい。
【0008】
特許文献1に記載されている軟質材料保持装置では、溶液透過性を有する板状の試料収容部材の試料収容孔に、試料である皮膚がくしゃくしゃにして挿入される。そのため、この軟質材料保持装置では、流通される溶液は、試料の周り全体から試料に作用する。したがって、この軟質材料保持装置は、試料の表裏の面が接する環境を分離して、ビーム照射による測定を行うことはできない。
【0009】
本発明の目的は、試料の表裏の面が接する環境を分離して、ビーム照射による測定を行うこと、およびそのための試料保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による試料保持装置は、試料を保持するホルダを備える。ホルダは、試料の表面に接するように形成される表側環境室と、試料の裏面に接するように形成される裏側環境室と、試料へビームを入射させるためのビーム入射口と、試料からビームを出射させるためのビーム出射口とを含む。
【0011】
この構成によれば、表側環境室および裏側環境室によって、試料の表裏の面が接する環境を分離することができる。
【0012】
好ましくは、ホルダと試料との境界がシールされる。これによって、表側環境室と裏側環境室とが、効果的に分離される。
【0013】
好ましくは、ホルダはさらに、表側環境室および裏側環境室の一方へ通じ、外部へ開口する環境連絡通路を含む。これによって、表側環境室または裏側環境室の環境を測定または制御することができる。
【0014】
好ましくは、ホルダはさらに、試料の表側に配置される表側部材と、試料の裏側に配置され、表側部材に着脱可能な裏側部材とを含む。表側環境室は表側部材内に形成され、裏側環境室は裏側部材内に形成される。ビーム入射口およびビーム出射口の一方は表側部材内に形成され、ビーム入射口およびビーム出射口の他方は裏側部材内に形成される。この構成によれば、ホルダを表側部材と裏側部材とに分割することができる。これによって、試料の交換を容易に行うことができる。
【0015】
好ましくは、試料保持装置は、試料と接触して配置され、試料の実験条件を制御する制御部材を備える。この構成によれば、制御部材は試料と接触して配置されるため、試料の実験条件を制御することができる。
【0016】
好ましくは、制御部材は、ホルダの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。これによって、例えば、試料の温度を制御することができる。
【0017】
好ましくは、制御部材は、ホルダの電気抵抗よりも低い電気抵抗を有する。これによって、例えば、試料に電場を印加することができる。
【0018】
本発明による試料分析方法は、試料の表面に接する表側環境と試料の裏面に接する裏側環境とを分離して試料を保持する工程と、試料へビームを入射し、試料から出射するビームを観察する工程とを備える。
【0019】
好ましくは、試料分析方法はさらに、表側環境および裏側環境の少なくとも一方を測定する工程を備える。
【0020】
好ましくは、試料分析方法はさらに、表側環境および裏側環境の少なくとも一方を制御する工程を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、試料の表裏の面が接する環境を分離して、ビーム照射による測定を行うことができる。また、そのための試料保持装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態による試料保持装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1のII-II線に沿った断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による試料保持装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】制御部材による実験条件の制御の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による試料保持装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施形態による試料保持装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第5の実施形態による試料保持装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【図9】試料分析方法の一例を説明するための図であって、本発明の一実施形態による試料保持装置の模式的断面図である。
【図10】試料分析方法の他の例を説明するための図であって、本発明の一実施形態による試料保持装置の模式的断面図である。
【図11】試料分析方法の他の例を説明するための図であって、本発明の一実施形態による試料保持装置の模式的断面図である。
【図12】ヒト角層の経皮水分蒸散量および脂質分子の秩序性の、温度変化を示すグラフである。
【図13】マウス角層の経皮水分蒸散量および脂質分子の秩序性の、温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。

【0024】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による試料保持装置1の概略構成を示す分解斜視図である。試料保持装置1は、ホルダH1と、Oリング31および32と、高分子フィルム33および34とを備えている。

【0025】
ホルダH1は、表側部材10と裏側部材20とを含んでいる。表側部材10は、概略直方体形状であり、その下面に形成された凹部12を含んでいる。裏側部材20は、概略直方体形状の本体部21と、本体部21の上面に形成された凸部22とを備えている。凸部22は、凹部12に嵌合するように形成されている。ホルダH1は、凹部12と凸部22との間に試料99を挟むことによって、試料99を保持する。試料99は典型的には板状をなし、例えば人の皮膚である。

【0026】
ホルダH1の材質は、特に限定されない。ホルダH1の材質は、例えばアクリル樹脂である。

【0027】
説明の便宜のため、x方向、y方向、およびz方向を、図1のように定義する。x方向、y方向、およびz方向は、表側部材10および裏側部材20の本体部21の外面の法線のいずれかと一致する。

【0028】
凹部12の底面と凸部22の上面とは概略平行である。凹部12は、横に倒された三角柱の形状を有している。具体的には、凹部12は、三角形状の断面を有しており、凹部12の深さはy方向下流に向かって深くなっている。凸部22も凹部12と同様に、横に倒された三角柱の形状を有している。具体的には、凸部22は、三角形状の側面を有しており、凸部22の高さはy方向下流に向かって高くなっている。

【0029】
凹部12の斜面には、Oリング31を配置するための溝13が形成されている。凸部22の斜面には、Oリング32を配置するための溝23が形成されている。ホルダH1は、Oリング31および32を間に挟んで試料99を保持することによって、ホルダH1と試料99との境界がシールされる。すなわち、ホルダH1と試料とが、シール性をもって密接(密着)される。

【0030】
表側部材10は、z方向と平行に形成された貫通孔14および15を含んでいる。裏側部材20は、z方向と平行に形成された貫通孔24および25を含んでいる。表側部材10の貫通孔14と裏側部材20の貫通孔24とは、凸部22を凹部12に嵌合させたときに、互いに同軸となるように形成されている。このとき、貫通孔15と貫通孔25とも、互いに同軸となるように形成されている。図示しないボルトをこれらの貫通孔の一方の端部から通し、他方の端部において図示しないナットで締め付けることによって、表側部材10と裏側部材20とを固定することができる。また、締め付けたボルトとナットとを緩めて、表側部材10と裏側部材20とを分割することができる。すなわち、表側部材10と裏側部材20とは、着脱可能に形成されている。

【0031】
表側部材10は、試料99へビームを入射させるためのビーム入射口16を含んでいる。ビーム入射口16は、y方向と平行な中心軸を持つ円筒形状を有している。ビーム入射口16は、表側部材10の、y方向上流側の側面において開口し、凹部12へ通じている。すなわち、ビーム入射口16は、表側部材10をy方向に貫通している。

【0032】
ビーム入射口16のy方向上流側の開口部を覆って、表側部材10に、高分子フィルム33が接着されている。高分子フィルム33によって、ビーム入射光16のy方向上流側の開口部は密封されている。

【0033】
裏側部材20は、試料99からビームを出射させるためのビーム出射口26を含んでいる。ビーム出射口26は、y方向と平行な中心軸を持ち、y方向下流に向かって口径が大きくなる円錐形状を有している。ビーム出射口26は、裏側部材20の凸部22をy方向に貫通している。

【0034】
ビーム出射口26のy方向下流側の開口部を覆って、裏側部材20に、高分子フィルム34が接着されている。高分子フィルム34によって、ビーム出射口26のy方向下流側の開口部は密封されている。

【0035】
高分子フィルム33および34は、ビーム透過率の高いものが好ましい。一般的に、フィルムの厚さが薄くなるほど、ビーム透過率は高くなる。そのため、高分子フィルム33および34は、薄くしても高い強度を維持できるものが好ましい。高分子フィルム33および34は、例えばポリイミドフィルムである。

【0036】
表側部材10はさらに、表側環境連絡通路17を含んでいる。表側環境連絡通路17は、z方向と平行な中心軸を持つ円筒形状を有している。表側環境連絡通路17は、表側部材10のz方向上流側の上面において開口し、凹部12に通じている。すなわち、表側環境連絡通路17は、表側部材10をz方向に貫通している。

【0037】
裏側部材20はさらに、裏側環境連絡通路27を含んでいる。裏側環境連絡通路27は、z方向と平行な中心軸を持つ円筒形状を有している。裏側環境連絡通路27は、裏側部材20の本体部21のz方向下流側の面、および凸部22の上面において開口している。すなわち、裏側環境連絡通路27は、裏側部材20をz方向に貫通している。

【0038】
図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図2は、試料99の近傍を拡大して示している。

【0039】
試料保持装置1は、ビームをy方向上流側から入射させるように配置されている。ここで、試料99の表裏の面のうち、ビームが入射する側の面を、表(おもて)面と呼び、他方の面を裏面と呼んで参照する。表面および裏面という呼び方は便宜的なものであり、試料99の配置方法を限定する趣旨ではない。

【0040】
図2に示すように、表側部材10は、試料99の表面に接するように形成された表側環境室18を含んでいる。裏側部材20は、試料99の裏面に接するように形成された裏側環境室28を含んでいる。

【0041】
表側環境連絡通路17は、表側環境室18に通じている。同様に、裏側環境連絡通路27は、裏側環境室28に通じている。

【0042】
以上、試料保持装置1の概略構成を説明した。ホルダH1は、樹脂などの材料を切削する機械加工、樹脂などの材料を型に充填して形成する射出成型など、周知の加工方法によって製造することができる。また、Oリング31および32、ならびに高分子フィルム33および34は、周知のものを用いることができる。

【0043】
[試料分析方法、および第1の実施形態の効果]
次に、試料保持装置1による試料分析方法について説明する。試料分析方法は、試料99の表面に接する表側環境と試料99の裏面に接する裏側環境とを分離して試料99を保持する工程と、試料99へビームを入射し、試料99から出射するビームを観察する工程とを備えている。

【0044】
まず、試料保持装置1のホルダH1によって、試料99を保持する。具体的には、凹部12と凸部22との間に、試料99を配置する。表側部材10と裏側部材20とは、着脱可能に構成されているので、試料99の交換を容易に行うことができる。

【0045】
後述するように、試料保持装置1のホルダH1によって試料99を保持することで、試料99の表面に接する表側環境と試料99の裏面に接する裏側環境とを分離することができる。

【0046】
試料99に入射するビームは、例えば、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、テラヘルツ波、マイクロ波、およびミリ波などの電磁波、ならびに電子線、中性子線、α線、重粒子線、およびイオンビームなどの粒子線である。ビームは、単色化されたものであっても、広いエネルギー分布を持つものであっても良い。

【0047】
試料99から出射するビームは、例えば、試料99によって回折もしくは散乱されたビーム、または試料99を透過したビームである。試料99から出射するビームは、試料99によって一部吸収されたり、または試料99から放射されたりするものを含む。また、試料99から出射するビームのエネルギー分布は、入射ビームのエネルギー分布と異なる場合がある。

【0048】
試料99から出射するビームを観察することは、例えば、回折もしくは散乱による角度変化もしくは強度変化、吸収もしくは放射による強度変化、または相互作用によるエネルギー分布の変化を観察することである。このような観察(測定)の代表的なものとして、X線回折およびX線散乱、中性子回折および中性子散乱、赤外線吸収、紫外可視吸収スペクトル、円偏光二色性、ラマンスペクトル、電子スピン共鳴、核磁気共鳴、ならびに蛍光分析が挙げられる。

【0049】
図2を参照して、ビームは、ビーム入射口16から試料99へ入射する。試料99によって回折もしくは散乱されたビーム、試料99を透過したビーム、または試料99から放射されたビームは、ビーム出射口26へ出射する。

【0050】
ビーム出射口26は、既述のように、y方向と平行な中心軸を持ち、y方向下流に向かって口径が大きくなる円錐形状を有している。これによって、試料99によって回折もしくは散乱されたビーム、または試料99から放射されたビームを、試料保持装置1の外側に出射させることができる。もっとも、y方向と平行に出射するビームを観察する場合には、ビーム出射口26は、円筒形状であっても良い。また、ビーム入射口16を円錐形状にしても良い。ビーム入射口16を円錐形状にすれば、ビームを斜めに入射することができる。

【0051】
表側部材10および裏側部材20は、表側環境室18と裏側環境室28とを含んでいる。表側環境室18は試料99の表面に接しており、裏側環境室28は試料99の裏面に接している。この構成によって、試料保持装置1は、試料99の表面が接する環境と、試料99の裏面が接する環境とを、分離することができる。そして、試料99の表裏の面が接する環境を分離して、ビーム照射による測定を行うことができる。

【0052】
ここで、「環境」とは例えば、媒体(固体、液体、および気体を含む)、温度、湿度、圧力、電場、および磁場である。

【0053】
Oリング31および32によって、ホルダH1と試料99との境界がシールされている。これによって、表側環境室18と裏側環境室28とが、効果的に分離されている。具体的には、表側環境室18および裏側環境室28内の流体(気体、液体など)がOリング31および32によって相互に流通しない。

【0054】
表側部材10は、表側環境室18に通じる表側環境連絡通路17を含んでいる。裏側部材20は、裏側環境室28に通じる裏側環境連絡通路27を含んでいる。表側環境連絡通路17を通じて、表側環境室18の環境を測定したり、制御したりすることができる。同様に、裏側環境連絡通路27を通じて、表側環境室28の環境を測定したり、制御したりすることができる。そして、表裏の環境を測定または制御して、ビーム照射による観察を行うことができる。

【0055】
以上、試料分析方法および第1の実施形態の効果を説明した。本実施形態では、試料99が入射ビームに対して約45°傾斜して配置されるように、凹部12および凸部22が形成されている。しかし、試料99を傾斜させる角度は任意である。凹部12および凸部22は、実験条件に応じて任意に設計される。

【0056】
本実施形態では、Oリング31および32を試料99の両側に配置して、ホルダH1と試料99との境界をシールしている。しかしこの構成は必須ではない。例えば、試料99の表面に液体を接触させる実験を行う場合を考える。この場合、表側環境室18に充填された液体が、少なくとも裏側環境室28に漏れ出さなければ良い。充填する液体の粘度など、実験条件によっては、Oリング31および32の一方または両方が不要な場合もある。

【0057】
本実施形態では、表側環境室18を表側部材10に形成し、裏側環境室28を裏側部材20に形成している。また、ビーム入射口16を表側部材10に形成し、ビーム出射口26を裏側部材20に形成している。しかし、表側環境室18、裏側環境室28、ビーム入射口16、およびビーム出射口26をどちらに形成するかは任意である。例えば、表側部材10にビーム出射口26を形成し、裏側部材20にビーム入射口16を形成しても良い。

【0058】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態による試料保持装置2の概略構成を示す分解斜視図である。試料保持装置2は、上記第1の実施形態と異なり、ホルダH2と、試料99の温度を制御するための制御部材60とを備えている。

【0059】
ホルダH2は、表側部材40と裏側部材50とを含んでいる。表側部材40および裏側部材50は、上記第1の実施形態における表側部材10および裏側部材20と概略同じ構成である。ただし、表側部材40は、表側部材10の構成に加えて、制御部材60を配置するためのガイド溝41をさらに含んでいる。裏側部材50は、裏側部材20の構成に加えて、制御部材60を配置するためのガイド溝51と、制御部材60を固定するためのねじ穴52および53とをさらに備えている。

【0060】
制御部材60は、枠状部61と、傾斜部62とを備えている。枠状部61は、板状であり、中央が矩形状に開口した形状を有している。傾斜部62は、板状であり、枠状部61の開口部の一辺に連続して形成されている。図3に示すように、枠状部61をy方向と垂直に配置したとき、傾斜部62は、凹部12の斜面および凸部22の斜面と概略平行になるように形成されている。

【0061】
制御部材60の枠状部61は、貫通孔63および64を含んでいる。貫通孔63および64は、制御部材60を裏側部材50のガイド溝51に配置したとき、裏側部材50のねじ穴52および53と同軸になるように形成されている。そのため、図示しないねじによって、制御部材60を裏側部材50に固定することができる。

【0062】
制御部材60の傾斜部62は、ビーム通過口65を含んでいる。

【0063】
制御部材60の材質は、例えばアルミニウム、銅、鉄である。制御部材60は、例えば次の様にして製造することができる。まず、アルミニウムの平板に、貫通孔63および64、ならびにビーム通過孔65を形成する。続いて、平板よりも一回り小さい矩形状の3辺にスリットを形成し、これを折り曲げて傾斜部62を形成する。傾斜部62を形成することによって、残部は枠状部61となる。

【0064】
図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。図4は、試料99の近傍を拡大して示している。

【0065】
表側部材40および裏側部材50は、表側部材10および裏側部材20と同様に、表側環境室18および裏側環境室28を含んでいる。表側環境室18は、試料99の表面に接している。裏側環境室28は、試料99の裏面に接している。なお、裏側環境室28は、制御部材60の傾斜部62に形成されたビーム通過口65を介して、試料99の裏面と接している。

【0066】
[試料分析方法、および第2の実施形態の効果]
次に、試料保持装置2による試料分析方法について説明する。試料保持装置2による試料分析方法は、試料保持装置1による試料分析方法と概略同じである。

【0067】
まず、試料保持装置2のホルダH2によって、試料99を保持する。図3および図4に示すように、制御部材60は、裏側部材50と試料99との間に配置される。制御部材60は、表側部材40と試料99との間に配置されても良い。

【0068】
制御部材60は、試料99と接触して配置される。具体的には、制御部60の傾斜部62が、試料99と接触するように配置される。制御部材60と試料99とは、密着して配置されることが好ましい。制御部材60と試料99とを密着して配置するために、傾斜部62に、グリスなどを塗布しても良い。

【0069】
表側部材40と試料99との間および裏側部材50と試料99との間には、Oリング31および32が配置される。これによって、ホルダH2と試料99との境界がシールされる。ただし、第1の実施形態と同様に、この構成は必須ではない。

【0070】
図4を参照して、ビームは、ビーム入射口16から試料99へ入射する。試料99によって回折もしくは散乱されたビーム、試料99を透過したビーム、または試料99から放射されたビームは、傾斜部62のビーム通過孔65を通って、ビーム出射口26へ出射する。

【0071】
試料保持装置2によっても、表側環境室18および裏側環境室28によって、試料99の表裏の面が接する環境を分離することができる。そして、試料99の表裏の面が接する環境を分離して、ビーム照射による測定を行うことができる。また、表側環境連絡通路17および裏側環境連絡通路27によって、表裏の環境の測定または制御を行うことができる。

【0072】
試料保持装置2ではさらに、制御部材60によって、試料99の実験条件を制御することができる。制御部材60は、試料99と接触して配置される。そのため、試料99の実験条件を迅速に制御することができる。

【0073】
図5は、制御部材60による実験条件の制御の一例を示す模式図である。図5に示す例では、制御部材60の枠状部61に、ペルチェ素子91と、ペルチェ素子91の熱を放出するためのヒートシンク92とが取り付けられている。そして、傾斜部62の、試料99に近い部分に、熱電対93が取り付けられている。

【0074】
この構成によれば、ペルチェ素子91によって、試料99の温度制御を行うことができる。また、熱電対93によって、試料99の温度を測定することができる。

【0075】
この場合、ホルダH2は、熱伝導率の低い材料で形成されていることが好ましい。これによって、試料99を冷却する場合には、ホルダH2からの単位時間当たりの熱の流入量が小さくなるため、試料99をさらに低温にすることができる。試料99を加熱する場合には、ホルダH2への単位時間当たりの熱の流出量が小さくなるため、試料99をさらに高温にすることができる。また、いずれの場合も、試料99の温度を、全体にわたって均一にすることができる。

【0076】
一方で、制御部材60は、熱伝導率の高い材料で形成されていることが好ましい。これによって、制御部材60への単位時間当たりの熱の流出量または制御部材60からの単位時間当たりの熱の流入量が大きくなる。そのため、試料99の温度を迅速に制御することができる。また、制御部60の温度を全体にわたって均一にすることができる。これよって、制御部材60と接触している試料99の温度も、全体にわたって均一にすることができる。また、制御部材60の温度と試料99の温度とが近づくことによって、熱電対93は、試料99の正確な温度を測定することができる。

【0077】
すなわち、制御部材60は、ホルダH2の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有することが好ましい。これによって、試料99の温度を迅速に制御することができる。

【0078】
本実施形態では、制御部材60は、枠状部61と、傾斜部62とを備えている。この構成は例示である。制御部材60は、例えば平板を45°折り曲げた形状のものであっても良い。

【0079】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態による試料保持装置3の概略構成を示す分解斜視図である。試料保持装置3は、上記第1の実施形態と異なり、制御部材70Aおよび70Bを備えている。

【0080】
制御部材70Aおよび70Bは、例えばアルミニウム、銅、鉄で形成されている。制御部材70Aおよび70Bは、板形状であり、中心部にビーム通過口71を含んでいる。

【0081】
制御部材70Aおよび70Bは、試料99に接触して配置される。具体的には、制御部材70Aは、試料99の表面に接触して、試料99と表側部材10との間に配置される。制御部材70Bは、試料99の裏面に接触して、試料99と裏側部材20との間に配置される。

【0082】
表側部材10と制御部材70Aとの間、および裏側部材20と制御部材70Bとの間には、Oリング31および32が配置される。これによって、ホルダH1と試料99との境界がシールされる。ただし、第1の実施形態と同様に、この構成は必須ではない。

【0083】
[第3の実施形態の効果]
試料保持装置3では、制御部材70Aおよび70Bが、試料99の両面に接触して配置される。制御部材70Aおよび70Bによって、試料99に電場を印加することができる。例えば、制御部材70Aを電位V1に、制御部材70Bを電位V2に接続することによって、試料99の面と交差する方向に電場を印加することができる。または、試料99の面と交差する方向に、電流を流すことができる。電位V1およびV2は、定電位であっても良く、交流電位であっても良く、また、パルスであっても良い。

【0084】
この場合、ホルダH1は、電気抵抗の高い材料で形成されていることが好ましい。これによって、試料99に電場を印加するときに、ホルダH1へ漏れ出る電流を少なくすることができる。ホルダH1は、より好ましくは、絶縁体である。

【0085】
一方、制御部材70Aおよび70Bは、電気抵抗の低い材料で形成されていることが好ましい。これによって、制御部材70Aの全体の電位、および制御部材70Bの全体の電位を、それぞれ均一にすることができる。そのため、試料99に、均一な電場を印加することができる。または、試料99に均一な電流を流すことができる。

【0086】
すなわち、制御部材70Aおよび70Bは、ホルダH1の電気抵抗よりも低い電気抵抗を有することが好ましい。これによって、試料99に均一な電場を印加することができる。または、試料99に均一な電流を流すことができる。

【0087】
[第4の実施形態]
図7は、本発明の第4の実施形態による試料保持装置4の概略構成を示す分解斜視図である。試料保持装置4は、上記第1の実施形態と異なり、制御部材80を備えている。

【0088】
制御部材80は、板形状であり、中心部にビーム通過口81を含んでいる。制御部材80は、導電部82および83と、絶縁部84とを備えている。絶縁部84は、導電部82と83との間に形成され、導電部82と83とを絶縁する。導電部82および83は、例えばアルミニウムで形成されている。絶縁部84は、例えばエポキシ樹脂やポリエチレンで形成されている。

【0089】
制御部材80は、試料99に接触して配置される。図7に示すように、制御部材80は、試料99の裏面に接触して、試料99と裏側部材20との間に配置される。制御部材80は、試料99の表面に接触して、試料99と表側部材10との間に配置されても良い。

【0090】
表側部材10と試料99との間、および裏側部材20と制御部材80との間には、Oリング31および32が配置される。これによって、ホルダH1と試料99との境界がシールされる。ただし、第1の実施形態と同様に、この構成は必須ではない。

【0091】
[第4の実施形態の効果]
試料保持装置4では、制御部材80が、試料99に接触して配置される。制御部材80によって、試料99に電場を印加することができる。例えば、制御部材80の導電部82を電位V1に、導電部83を電位V2に接続することによって、試料99の面内方向に電場を印加することができる。または、試料99の面内方向に、電流を流すことができる。

【0092】
第3の実施形態と同様に、ホルダH1は、電気抵抗の高い材料で形成されていることが好ましい。また、導電部82および83は、電気抵抗の低い材料で形成されていることが好ましい。すなわち、導電部82および83は、ホルダH1の電気抵抗よりも低い電気抵抗を有することが好ましい。これによって、試料99に均一な電場を印加することができる。または、試料99に均一な電流を流すことができる。

【0093】
試料保持装置4を変形させた構成を用いて、試料99に磁場を印加することもできる。例えば、導電部82に代えてS極、導電部83に代えてN極を配置することで、試料99の面内方向に磁場を印加することができる。

【0094】
[第5の実施形態]
図8は、本発明の第5の実施形態による試料保持装置5の概略構成を示す分解斜視図である。試料保持装置5は、上記第1の実施形態と異なり、制御部材80Aおよび80Bを備えている。

【0095】
制御部材80Aおよび80Bは、制御部材80と同一の構成である。

【0096】
制御部材80Aおよび80Bは、試料99に接触して配置される。具体的には、制御部材80Aは、試料99の表面に接触して、試料99と表側部材10との間に配置される。制御部材80Bは、試料99の裏面に接触して、試料99と裏側部材20との間に配置される。

【0097】
表側部材10と制御部材80Aとの間、および裏側部材20と制御部材80Bとの間には、Oリング31および32が配置される。これによって、ホルダH1と試料99との境界がシールされる。ただし、第1の実施形態と同様に、この構成は必須ではない。

【0098】
[第5の実施形態の効果]
試料保持装置5では、制御部材80Aおよび80Bが、試料99の両面に接触して配置される。制御部材80Aおよび80Bによって、試料99に電場を印加することができる。例えば、制御部材80Aの導電部82を電位V1に、導電部83を電位V2に接続する。さらに、制御部材80Bの導電部82を電位V3に、導電部83を電位V4に接続する。これによって、試料99の面と交差する方向、および面内方向に電場を印加することができる。または、試料99の面と交差する方向、および面内方向に電流を流すことができる。電位V1~V4のうちのいくつかが、等しくても良い。

【0099】
第3の実施形態と同様に、制御部材80Aおよび80Bの導電部82および83は、ホルダH1の電気抵抗よりも低い電気抵抗を有することが好ましい。これによって、試料99に均一な電場を印加することができる。または、試料99に均一な電流を流すことができる。

【0100】
試料保持装置5を変形させた構成を用いて、試料99に磁場を印加することもできる。例えば、制御部材80Aおよび80Bの導電部82および83に代えて、それぞれS極とN極とを配置することで、試料99の面と交差する方向、および面内方向に磁場を印加することができる。

【0101】
なお、試料保持装置1~5の全体にコイルを巻きつけることによって、試料99に磁場を印加することもできる。

【0102】
上記では、制御部材60、70A、70B、80、80A、および80Bを用いて、試料99の温度、ならびに試料99に印加する電場および磁場を制御する例を説明した。制御部材はこの他に、試料99に張力を付与するなど、機械的な外力を制御するように構成することも可能である。

【0103】
[試料分析方法の具体例]
試料保持装置1~5による試料分析方法の具体例を説明する。本発明による試料分析方法は、以下の具体例に限定されない。図9~図11は、試料分析方法の一例を説明するための図であって、試料保持装置2の模式的断面図である。これらの図面では、試料保持装置2を用いて測定を行う場合を例示している。しかし、試料保持装置1、および試料保持装置3~5を用いて測定を行う場合も、同様である。

【0104】
図9に示す例では、試料99の裏面側、具体的には、ビーム出射口26、裏側環境連絡通路27、および裏側環境室28が、水Wで満たされている。そして、表側環境連絡通路17の開口部に閉塞型蒸散計94が配置されている。この例では、閉塞型蒸散計94によって、試料99の水分蒸散量を測定することができる。そして、ビーム入射口16およびビーム出射口26によって、ビーム照射による測定を水分蒸散量の測定と並行して行うことができる。

【0105】
なお、試料99の表面側を水Wで満たし、裏側環境連絡通路27の開口部に閉塞型蒸散計94を配置しても良い。

【0106】
図10に示す例では、図9に示す例と同様に、試料99の裏面側が、水Wで満たされている。一方、表側環境連絡通路17の開口部には、開放型蒸散計95が配置されている。表側部材40には、表側環境室18に通じるように、第2環境連絡通路19が追加されている。図10に示す例では、第2環境連絡通路19から乾燥窒素を吹き込む。または、第2環境連絡通路19を追加せず、表側環境連絡通路17に送気管を挿入してそこから乾燥窒素を吹き込むようにしても良い。これによって、開放型蒸散計95は、試料99の水分蒸散量を測定する。そして、ビーム入射口16およびビーム出射口26によって、ビーム照射による測定を水分蒸散量の測定と並行して行うことができる。

【0107】
図10に示す例においても、試料99の表面側を水Wで満たし、裏側環境連絡通路27の開口部に開放型蒸散計95を配置しても良い。この場合は、裏側部材50に設けた第2環境連絡通路(図示せず)、または裏側環境連絡通路27に挿入した送気管から乾燥窒素を吹き込む。

【0108】
図11に示す例では、試料99の表面側、具体的には、ビーム入射口16、表側環境連絡通路17、および表側環境室18が、水Wで満たされている。そして、表側環境連絡通路17の開口部には、超音波素子96が配置されている。超音波素子96によって、試料99の表面を超音波に暴露させることができる。そして、ビーム入射口16およびビーム出射口26によって、ビーム照射による測定を超音波暴露と並行して行うことができる。

【0109】
なお、試料99の裏面側を水Wで満たし、裏側環境連絡通路27の開口部に超音波素子96を配置しても良い。

【0110】
本発明に特に好適な試料は例えば、生物薄膜試料もしくは高分子シート、またはこれらに塗布された固体もしくは液体である。生物薄膜試料は例えば、哺乳類もしくは鳥類の皮膚、爬虫類、両生類、もしくは魚類の鱗、または植物の皮である。高分子シートは例えば、セロファンテープまたはラップである。これらに塗布された固体または液体は例えば、皮膚上に塗布された化粧品もしくは製剤、または基板に塗布されたコーティング剤である。

【0111】
[皮膚角層の構造解析]
皮膚角層の重要な機能は、生体と外界とを隔離し、生体の恒常性を維持することである。この機能は皮膚バリア機能と呼ばれる。荒れ肌や乾燥肌、アトピー性皮膚炎などでは、バリア機能が低下しており、したがって症状改善のためには、外部から医薬品や化粧品を塗布し、バリア機能を補うことが必要となる。逆に、皮膚バリア機能は、経皮吸収型の医薬品または化粧品を体内へ浸透させたい場合には、大きな障壁となる。近年、皮膚角層に放射光を照射すると、細胞脂質由来と思われる散乱ピークが観察されることが見出された。この情報の下に、バリア機能に重要な役割を果たす角層構造の解明、さらには様々な製剤と角層との相互作用の解析が試みられている。本発明によれば、生体皮膚を様々な溶液に暴露したときの角層の構造変化を、リアルタイムで解析することができる。

【0112】
[医薬品や化粧品製剤の経皮浸透過程における角層構造変化の解析]
皮膚上に塗布された経皮吸収型の医薬品や化粧品は、角層と相互作用しながら角層内を透過する。本来角層は、異物の侵入に対して防御壁として機能するが、製剤の構造を工夫し、角層と積極的に相互作用させることで、効率よく体内に浸透させることが可能となる。本試料保持装置を用いることで、経皮吸収過程に生じる角層の構造変化、さらにはその温度特性を解析することが可能となり、高吸収型の製剤開発に役立てることができる。また化粧品は、皮膚に塗布された場合、皮膚表面で新たな構造体を形成することも推測される。本発明によれば、皮膚に塗布された化粧品または製剤そのものの構造変化を、リアルタイムで観察することも可能となる。

【0113】
[イオン導入またはエレクトロポレーション]
本発明による試料保持装置は、試料をシート状のまま保持する。そのため、試料の表面に電極などを配置できる。これによって、イオン導入またはエレクトロポレーション時に生じる構造変化を解析することができる。

【0114】
[トライポロジー分野への応用]
高密度のハードディスクでは、ディスクとヘッドとを近づけなければならない。そのため、ディスクとヘッドとの間の潤滑が、重要な課題となっている。そこで、炭素膜または潤滑油膜をディスク表面に塗布して、ディスクおよびヘッドの摩耗を抑制している。性能の高い表面処理を行うためには、表面の構造解析が必要である。本発明によれば、基板表面に塗布された物質の構造解析を行うことができる。

【0115】
[高分子フィルムの開発]
本発明によれば、高分子フィルムの耐薬品性評価または薬品暴露時に生じる構造変化の、ダイナミック構造解析を行うことができる。

【0116】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の各実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施形態は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0117】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0118】
第2の実施形態による試料保持装置2を用いて、ヒトおよびマウスの皮膚から採取した角層の経皮水分蒸散量(TEWL:TransEpidermal Water Loss)と、脂質分子の秩序性との相関を調査した。
【実施例】
【0119】
測定は、図9に示す配置で行った。試料99(角層)の裏面側、具体的には、ビーム出射口26、裏側環境連絡通路27、および裏側環境室28を、水Wで満たした。そして、表側環境連絡通路17の開口部に閉塞型蒸散計94を配置して、試料99のTEWLを測定した。TEWLの測定と並行して、ビーム入射光16から単色化された放射光X線を試料99へ入射し、ビーム出射口26から出射される回折光を観察した。試料99の温度を、20~70℃に変化させてこれらの測定を行った。
【実施例】
【0120】
結果を図12および図13に示す。図12および図13は、横軸に試料99の温度(℃)を、縦軸に面間隔0.41nm付近の回折X線の積分強度(任意単位)およびTEWL(任意単位)を示したグラフである。図12はヒト角層の測定結果であり、図13はマウス角層の測定結果である。図12および図13に示すように、ヒト角層およびマウス角層の両方において、TEWLと脂質分子の秩序性との間に相関が認められた。
【実施例】
【0121】
本発明によって、試料の表裏の面の環境を分離して、ビーム照射による測定が可能となった。その結果、TEWLと脂質分子の秩序性との相関を明らかにした。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、試料保持装置および試料分析方法として産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0123】
1~5 試料保持装置
H1,H2 ホルダ
10,40 表側部材
12 凹部
13 溝
14,15 貫通孔
16 ビーム入射口
17 表側環境連絡通路
18 表側環境室
20,50 裏側部材
21 本体部
22 凸部
23 溝
24,25 貫通孔
26 ビーム出射口
27 裏側環境連絡通路
28 裏側環境室
31,32 Oリング
33,34 高分子フィルム
60,70,80 制御部材
99 試料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12