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明細書 :硝酸イオンの還元方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-170983 (P2013-170983A)
公開日 平成25年9月2日(2013.9.2)
発明の名称または考案の名称 硝酸イオンの還元方法
国際特許分類 G21C  19/46        (2006.01)
FI G21C 19/46 P
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2012-036314 (P2012-036314)
出願日 平成24年2月22日(2012.2.22)
発明者または考案者 【氏名】目黒 義弘
【氏名】門脇 春彦
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110000442、【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】アンモニアの生成を十分に抑制することのできる、効率の良い硝酸イオンの還元方法を提供する。
【解決手段】パラジウム-銅担持触媒を用いて溶液中の硝酸イオンを還元する方法において、前記溶液に還元剤としてメタノールやエタノールなどのアルコールを用いることを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
触媒を用いて溶液中の硝酸イオンを還元する方法において、前記溶液に還元剤としてアルコールを添加することを特徴とする硝酸イオンの還元方法。
【請求項2】
請求項1に記載の硝酸イオンの還元方法において、前記触媒が、活性炭に少なくともパラジウムと銅を担持した触媒であることを特徴とする硝酸イオンの還元方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硝酸イオンの還元方法において、前記アルコールが、メタノールまたはエタノールであることを特徴とする硝酸イオンの還元方法。
【請求項4】
請求項3に記載の硝酸イオンの還元方法において、前記アルコールがメタノールで、前記硝酸イオンを含む溶液にアルカリ溶液が添加されていることを特徴とする硝酸イオンの還元方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の硝酸イオンの還元方法において、前記硝酸イオンを含む溶液が、放射性元素を含有した廃液であることを特徴とする硝酸イオンの還元方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸イオンの還元方法に係り、特に例えば0.5M程度の高濃度の硝酸塩を含む放射性元素を含有した廃液の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所で使用された使用済み核燃料は硝酸で処理、中和されることにより、硝酸塩を含む放射性廃液が発生する。この高濃度の硝酸塩を含む放射性廃液を安全に処理するための脱硝処理が検討されており、この脱硝処理方法は、窒素ガス化法と硝酸イオン分離法に大別される。
【0003】
窒素ガス化法は、一般にプロセス規模が大きくなり、脱硝速度が遅く、二次廃棄物が発生するなどの問題点がある。一方、硝酸イオン分離法には、触媒処理法と電解還元処理法がある。本発明者らは、高濃度の硝酸塩を含む放射性廃液に、パラジウム-銅担持触媒を加えて、さらにその放射性廃液にヒドラジン還元剤を滴下することにより、硝酸イオンを還元して、最終的には窒素に無害化する方法が有効であることを先に提案した(例えば、下記非特許文献1)。
また、前記パラジウム-銅担持触媒に関しては、例えば下記特許文献1~3などを挙げるこができる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2011-25169号公報
【特許文献2】特開2011-177646号公報
【特許文献3】特開2011-180003号公報
【0005】

【非特許文献1】日本原子力学会2009年秋の大会予稿集、2009年8月28日、第575頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のパラジウム-銅担持触媒とヒドラジン還元剤を併用して放射性廃液中の硝酸イオンを還元する方法においては、還元生成物として窒素、亜酸化窒素およびアンモニアが生成する。窒素および亜酸化窒素はガスとなって殆どが液中から分離されるが、アンモニアは溶解した状態で残留する。このアンモニアは、還元剤に水素を用いた場合も生成することが確認されている。
【0007】
処理液中にアンモニアが含まれていると、後の処理工程であるセメント固化体作製工程において、アンモニアが固化を阻害する。セメント固化を確実なものとするため、セメント固化体中のアンモニア濃度を下げるべく、セメント固化体への処理液の充填率を減らさなければならないが、これに伴いセメント固化体の総量が増加し、処分コストが高くなる難点がある。
【0008】
このように還元剤としてヒドラジンや水素を用いる硝酸イオンの還元方法では、脱硝後に処理液中からアンモニアを除去する工程が必要となり、処理工程が増えて効率が悪いという難点がある。
【0009】
本発明はこのような技術背景に基づいてなされたものであり、その目的は、アンモニアの生成を十分に抑制することのできる、効率の良い硝酸イオンの還元方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、触媒を用いて溶液中の硝酸イオンを還元する方法において、前記溶液に還元剤としてアルコールを添加することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記触媒が、活性炭に少なくともパラジウムと銅を担持した触媒であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、前記アルコールが、メタノールまたはエタノールであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第4の手段は前記第3の手段において、前記硝酸イオンを含む溶液に例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液が添加されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第5の手段は前記第1ないし第4のいずれかの手段において、前記硝酸イオンを含む溶液が、放射性元素を含有した廃液であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は前述のような構成になっており、アンモニアの生成を十分に抑制することのできる、効率の良い硝酸イオンの還元方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例などで使用される脱硝反応装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施例について説明する。
本発明において脱硝触媒としては、例えば活性炭にパラジウムと銅を担持したもの、あるいは前記パラジウム-銅担持触媒に鉄あるいはニッケルを添加したものなどが好適である。鉄あるいはニッケルの添加は、パラジウム-銅担持触媒の耐久性を高める効果がある。

【0018】
前記パラジウム-銅担持触媒は、例えば塩化パラジウムと塩化銅を含む水溶液に、触媒担持体である活性炭を加えて攪拌・混合して60℃の温度で1時間保ち、水酸化ナトリウムの水溶液を加えてpH10に調整した後、これにホスフィン酸ナトリウムの水溶液を添加して、パラジウムと銅を前記活性炭上に還元析出させる。次に濾過、洗浄した後、60℃の温度で乾燥してパラジウム-銅担持触媒を得る。この担持触媒にさらに鉄あるいはニッケルを添加する場合には、塩化パラジウムと塩化銅を含む水酸化ナトリウム水溶液に鉄あるいはニッケルの塩化物を添加して溶解すればよい。
特に、活性炭1g当り0.6x mmol(x=1~3)のパラジウムと、0.4x mmol(x=1~3)の銅を担持させた触媒、および、活性炭1g当りy mmol(y=0.6~0.9)のパラジウムと、1-y mmol(y=0.6~0.9)の銅を担持させた触媒が好適である。

【0019】
本発明において適用可能なアルコール類としては、例えば脂肪族飽和アルコール、脂肪族不飽和アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、複素環式アルコールなどの一価アルコール、および、多価アルコールが挙げられる。
前記脂肪族飽和アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、へキサノール、ペプチルアルコール、ノニルアルコールなどがある。

【0020】
前記脂肪族不飽和アルコールとしては、例えばアリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコールなどがある。
前記脂環式アルコールとしては、例えばシクロペンタノール、シクロヘキサノールなどがある。
前記芳香族アルコールとしては、例えばベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどがある。
前記複素環式アルコールとしては、例えばフルフリルアルコールなどがある。

【0021】
前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコールなどがある。

【0022】
次に本発明の実施例に係る硝酸イオンの還元方法について具体的に説明する。
図1は、後述の脱硝性能試験に使用される脱硝反応装置の概略構成図である。
同図に示すように、マグネチックスターラ1の上に恒温水槽2が設置されており、その恒温水槽2の水中にセパラブルフラスコ3が浸漬され、そのセパラブルフラスコ3の中に後述する反応溶液と触媒の懸濁液4が注入されている。セパラブルフラスコ3は1L用のものと(後述の性能試験1で使用)、500mL用のもの(後述の性能試験2で使用)とが準備されている。

【0023】
還元剤5はポンプ6を通して前記セパラブルフラスコ3内に滴下されるか(後述の性能試験2の場合)、10mLのホールピペット(図示せず、後述の性能試験1の場合)を用いて一度に全量添加される。反応温度は恒温水槽2によって維持され、脱硝反応中における懸濁液4の混合・攪拌はマグネチックスターラ1によってなされる。反応溶液中の硝酸イオンを還元して、硝酸イオン→亜硝酸イオン→窒素ガスで示す硝酸態窒素の還元除去が行なわれる。
懸濁液4からの蒸発や脱硝反応によって生成した窒素などのガス成分は冷却管7によって冷却され、蒸気は結露して懸濁液4に戻され、ガス成分はガストラップ8を通り、ガスバック9の溜められる仕組みになっている。

【0024】
次に還元剤として、本発明の実施例に係るアルコールならびに比較例のヒドラジンなどを用いた場合における硝酸イオンの脱硝(還元)性能試験について説明する。

【0025】
(性能試験1)
試験内容:0.1M 硝酸ナトリウム水溶液の脱硝試験
反応条件
反応溶液:0.1Mの硝酸ナトリウムと1Mの水酸化ナトリウムとの混合水溶液1L
脱硝触媒:活性炭1gに0.6mmolのパラジウムと0.4mmolの銅を担持
触媒濃度:前記反応溶液1Lに0.5gの脱硝触媒(金属)を添加
還元剤量:それぞれ10Mのメタノール、ヒドラジン10mLをホールピペットで一度に添加
反応温度:60℃および80℃
前述の反応条件で0.1M硝酸ナトリウム水溶液の脱硝試験を行い、還元剤ならびに反応温度の違いによる脱硝生成物である亜酸化窒素、窒素ならびにアンモニアの選択率ならびにアンモニアの生成量を次の表1にまとめた。なお、脱硝生成物の選択率は、硝酸イオン由来の窒素から算出した。
【表1】
JP2013170983A_000003t.gif

【0026】
この性能試験1では還元剤としてメタノールおよびヒドラジンを用いており、アンモニアの選択率(生成量)に影響する反応溶液中の硝酸イオン濃度と還元剤濃度の比が同程度の条件で保たれているため、より還元剤の影響が現れ易い条件である。つまり、前述の反応条件で、硝酸ナトリウム水溶液と触媒の懸濁液に還元剤を一度に全量添加する方式で比較した方が、アンモニアの生成抑制効果に対する還元剤種類の影響が正しく比較できると考えて、この方式を採用した。

【0027】
還元剤としてヒドラジンを用い、例えば反応温度が60℃の従来の方法では、窒素の選択率は14.3%と低く、反対にアンモニアの選択率は85.3%、アンモニアの生成量は36.6mmolと非常に高い。

【0028】
これに比べて還元剤としてメタノールを用い、反応温度が同じ60℃の本実施例では、窒素の選択率は98.7%と高く、反対にアンモニアの選択率は1.3%、アンモニアの生成量は0.3mmolと非常に低い。本実施例ではこの従来の方法に比べて、窒素の選択率は約7倍に増し、反対にアンモニアの選択率は約1/65.6に減少、アンモニアの生成量は1/122に減少しており、アンモニアの生成抑制に効果があることが分かる。

【0029】
この傾向は反応温度が80℃の場合でも同様であり、本実施例では従来の方法に比べて、窒素の選択率は約1.8倍に増し、反対にアンモニアの選択率は約1/19、アンモニアの生成量は約1/35に減少している。

【0030】
(性能試験2)
試験内容:0.5M 硝酸ナトリウム水溶液の脱硝試験
反応条件
反応溶液:0.5Mの硝酸ナトリウムと1Mの水酸化ナトリウムとの混合水溶液100mL
脱硝触媒:活性炭1gに0.6mmolのパラジウムと0.4mmolの銅を担持
触媒濃度:前記反応溶液100mLに0.5gの脱硝触媒(金属)を添加
還元剤量:それぞれ10Mのメタノール、エタノール、ギ酸ナトリウム水溶液、ヒドラジン40mLを2時間かけて滴下
反応温度:80℃
前述の反応条件で0.5M 硝酸ナトリウム水溶液の脱硝試験を行い、還元剤の違いによる脱硝率、脱硝生成物である亜酸化窒素、窒素、アンモニアの選択率ならびにアンモニアの生成量を次の表2にまとめた。なお、脱硝生成物の選択率は、硝酸イオン由来の窒素から算出した。
【表2】
JP2013170983A_000004t.gif

【0031】
この性能試験2では、実際の脱硝工程を鑑みた条件、すなわち、硝酸ナトリウム水溶液と触媒の懸濁液に還元剤を滴下する方式で、性能比較している。

【0032】
メタノールを用いた場合、脱硝率は99.4%を示した。溶液中にはメタノールの他に還元剤の中間体と思われるギ酸、ほぼ理論当量となる炭酸イオンが発生した。また、僅かにアンモニアが検出された(アンモニア選択率:2.1%)。

【0033】
従来との比較のためヒドラジンを用いて脱硝した。反応は1時間でほぼ全て脱硝し、アンモニアの選択率は6.3%であった。各還元剤を用いた脱硝の性能結果が前述の表2にまとめられている。

【0034】
アンモニア選択率には還元剤の種類が大きく影響することが分かった。窒素は硝酸イオンの還元中間体同士の反応により、アンモニアはこの中間体のさらなる水素化により生成する。従って、中間体同士の反応と水素化の速度の差が窒素生成物の選択性を決定する主要因の一つである。その水素化のための吸着水素供給の速度は還元剤の種類で異なるため、中間体同士の反応と水素化の速度の差が還元剤ごとに異なり、アンモニア選択率が異なったと考えられる。

【0035】
この表2の結果から明らかなように、還元剤としてギ酸ナトリウムならびにヒドラジンを用いた比較例に比べて還元剤としてメタノールならびにエタノールを用いた本実施例の方が、アンモニアの選択率ならびに生成量が高いもので3分の1程度に減少しており、アンモニアの生成抑制に効果があることが分かる。

【0036】
前記実施例では、還元剤にメタノールを用いる場合は、反応中間体の一酸化炭素が触媒を被毒するので、これを緩和するために反応溶液中に水酸化ナトリウム水溶液を添加したが、水酸化カリウム水溶液(例えば1Mの水酸化カリウム水溶液)など他の高アルカリ溶液を添加しても構わない。
【符号の説明】
【0037】
1:マグネチックスターラ、
2:恒温水槽、
3:セパラブルフラスコ、
4:懸濁液、
5:還元剤、
6:ポンプ、
7:冷却管、
8:ガストラップ、
9:ガスバック。
図面
【図1】
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