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明細書 :ガス検出装置、ガス検出方法、及び光学部品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-211362 (P2014-211362A)
公開日 平成26年11月13日(2014.11.13)
発明の名称または考案の名称 ガス検出装置、ガス検出方法、及び光学部品
国際特許分類 G01N  21/61        (2006.01)
G01N  21/03        (2006.01)
FI G01N 21/61
G01N 21/03 B
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2013-087683 (P2013-087683)
出願日 平成25年4月18日(2013.4.18)
発明者または考案者 【氏名】西島 喜明
【氏名】阿達 佑太
出願人 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000523、【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
審査請求 未請求
テーマコード 2G057
2G059
Fターム 2G057AA01
2G057AB02
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA05
2G057DA02
2G057DB01
2G057DB02
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059CC06
2G059EE01
2G059GG02
2G059GG07
2G059GG08
2G059HH01
2G059JJ02
2G059JJ11
2G059JJ30
2G059KK09
2G059LL01
2G059MM01
2G059MM09
2G059PP04
要約 【課題】NDIR方式に代表される光の減衰に応じてターゲットガス濃度を測定する方式には、検出感度の向上のために光路長を長く確保することが要求される欠点が内在する。
【解決手段】ガス検出装置10は、吸収スペクトルにおいて吸収ピークを呈するターゲットガスが供給されるセル内空間130と、少なくとも吸収ピークに属する波長の光を生成可能である光源410と、光源410から放射されてセル内空間130を伝播した光を検出可能である光検出部420と、を備える。ガス検出装置10は、吸収スペクトルの吸収ピークに対して透過スペクトルの透過ピークが波長軸上で重畳するように複数の光学的開口222が規則的に配置された導電性薄膜220を更に備え、導電性薄膜220が、光源410から光検出部420に至る光路上に設けられ、かつセル内空間130内のターゲットガスに接触可能に設けられる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
吸収スペクトルにおいて吸収ピークを呈するターゲットガスが供給される空間と、
少なくとも前記吸収ピークに属する波長の光を生成可能である光源と、
前記光源から放射されて前記空間を伝播した光を検出可能である光検出部と、を備えるガス検出装置であって、
前記吸収スペクトルの前記吸収ピークに対して透過スペクトルの透過ピークが波長軸上で重畳するように複数の光学的開口が規則的に配置された導電性薄膜を更に備え、
当該導電性薄膜が、前記光源から前記光検出部に至る光路上に設けられ、かつ前記空間内の前記ターゲットガスに接触可能に設けられる、ガス検出装置。
【請求項2】
前記複数の光学的開口は、前記導電性薄膜の平面において互いに直交関係の第1及び第2方向に沿って所定間隔をあけて2次元状に配置される、請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記複数の光学的開口が、前記第1方向に沿って前記光学的開口が配置された第1及び第2光学的開口列を含み、前記第2光学的開口列が、前記第1光学的開口列に対して前記第2方向に隣接して配置され、前記第2光学的開口列における前記光学的開口の配列位置が、前記第1光学的開口列における前記光学的開口の配列位置に対して前記所定間隔の半分の値だけ前記第1方向にシフトしている、請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記第1方向に沿って前記光学的開口が配置された光学的開口列において隣接する前記光学的開口同士の間隔と、当該光学的開口列における前記光学的開口に対して斜め方向において隣接する他の光学的開口列における前記光学的開口との間隔とが等しい、請求項2又は3に記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記複数の光学的開口は、各々、三角格子の構成単位の三角形の頂点に対応する位置に設けられる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項6】
前記導電性薄膜が前記光源の放射光に対して透光性を有する支持基板上に形成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項7】
前記導電性薄膜が形成された前記支持基板は、前記空間への前記光源の放射光の伝播を中継する、若しくは前記空間を伝播した光の前記光検出部への伝播を中継する窓材である、請求項6に記載のガス検出装置。
【請求項8】
前記導電性薄膜が、銀、金、銅、クロム、アルミニウム、及び鉄から成る群から選択される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項9】
前記空間が、ガス導入部及びガス排出部を有するガスセルにより画定される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項10】
前記空間が、ガス導入部及びガス排出部を有するガスセルにより画定され、当該ガスセルの反射性の内面には前記導電性薄膜が設けられる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項11】
前記空間が、反射性の球面により画定され、当該球面上に前記導電性薄膜が設けられる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のガス検出装置。
【請求項12】
吸収スペクトルにおいて吸収ピークを呈するターゲットガスの前記吸収ピークに属する波長の光に対して透光性を有する支持基板と、
前記支持基板上に形成され、かつ前記吸収スペクトルの前記吸収ピークに対して透過スペクトルの透過ピークが波長軸上で重畳するように複数の光学的開口が規則的に配置された導電性薄膜と、
を備えるガス検出装置用の光学部品。
【請求項13】
前記複数の光学的開口が前記導電性薄膜の平面において互いに直交関係の第1及び第2方向に沿って所定間隔をあけて2次元状に配置される、請求項12に記載の光学部品であって、
前記複数の光学的開口が、前記第1方向に沿って前記光学的開口が配置された第1及び第2光学的開口列を含み、前記第2光学的開口列が、前記第1光学的開口列に対して前記第2方向に隣接して配置され、前記第2光学的開口列における前記光学的開口の配列位置が、前記第1光学的開口列における前記光学的開口の配列位置に対して前記所定間隔の半分の値だけ前記第1方向にシフトしている、光学部品。
【請求項14】
吸収スペクトルにおいて吸収ピークを呈するターゲットガスが供給される空間内に配置された導電性薄膜であって、前記吸収スペクトルの前記吸収ピークに対して透過スペクトルの透過ピークが波長軸上で重畳するように複数の光学的開口が規則的に配置された導電性薄膜に対して少なくとも前記吸収ピークに属する波長の光を照射し、
前記導電性薄膜を介して前記空間を伝播した光を検出する、ガス検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置、ガス検出方法、及び光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、環境測定、各種試験等の様々な分野においてガス検出装置が活用されている。ガス検出装置は、例えば、エアコンの排気ガス、自動車の排気ガス、工場の排気ガス、家庭における漏えいガス、シックハウス症候群等の有毒ガス、生ごみ、ペット等の異臭ガスの検出に活用されている。
【0003】
ガス検出方式には、半導体式、接触燃焼式、熱伝導式、NDIR(Non Dispersive InfraRed)式等が挙げられる。半導体式は、半導体に晒されたガスによる電気抵抗の変化を検出するものであり、小型かつ量産性が高いが、安定性に欠ける欠点がある。接触燃焼式は、装置内でガスを燃焼させるものであり、可燃性ガスに限定される。熱電動式は、ガスの熱伝導性の差に応じて温度変化を検出するものであり、感度が低いという欠点がある。NDIR式は、様々なガスに対応でき、高感度及び長期間安定動作という利点があるが、光路長の確保に由来して装置が大型化してしまう欠点がある。
【0004】
特許文献1には、同文献の要約に記載のように、赤外線光源8の出力光の強度を一定に保つためにガスにより吸収されない波長の赤外線を光学フィルタ10Bを介して赤外線検出器9Bで検出して赤外線光源8の印加電圧を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-139299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NDIR方式に代表される光の減衰に応じてターゲットガス濃度を測定する方式には、検出感度の向上のために光路長を長く確保することが要求される欠点が内在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス検出装置は、吸収スペクトルにおいて吸収ピークを呈するターゲットガスが供給される空間と、少なくとも前記吸収ピークに属する波長の光を生成可能である光源と、前記光源から放射されて前記空間を伝播した光を検出可能である光検出部と、を備えるガス検出装置であって、前記吸収スペクトルの前記吸収ピークに対して透過スペクトルの透過ピークが波長軸上で重畳するように複数の光学的開口が規則的に配置された導電性薄膜を更に備え、当該導電性薄膜が、前記光源から前記光検出部に至る光路上に設けられ、かつ前記空間内の前記ターゲットガスに接触可能に設けられる。
【0008】
前記複数の光学的開口は、前記導電性薄膜の平面において互いに直交関係の第1及び第2方向に沿って所定間隔をあけて2次元状に配置される、と良い。
【0009】
前記複数の光学的開口が、前記第1方向に沿って前記光学的開口が配置された第1及び第2光学的開口列を含み、前記第2光学的開口列が、前記第1光学的開口列に対して前記第2方向に隣接して配置され、前記第2光学的開口列における前記光学的開口の配列位置が、前記第1光学的開口列における前記光学的開口の配列位置に対して前記所定間隔の半分の値だけ前記第1方向にシフトしている、と良い。
【0010】
前記第1方向に沿って前記光学的開口が配置された光学的開口列において隣接する前記光学的開口同士の間隔と、当該光学的開口列における前記光学的開口に対して斜め方向において隣接する他の光学的開口列における前記光学的開口との間隔とが等しい、と良い。
【0011】
前記複数の光学的開口は、各々、三角格子の構成単位の三角形の頂点に対応する位置に設けられる、と良い。
【0012】
前記導電性薄膜が前記光源の放射光に対して透光性を有する支持基板上に形成される、と良い。
【0013】
前記導電性薄膜が形成された前記支持基板は、前記空間への前記光源の放射光の伝播を中継する、若しくは前記空間を伝播した光の前記光検出部への伝播を中継する窓材である、と良い。
【0014】
前記導電性薄膜が、銀、金、銅、クロム、アルミニウム、及び鉄から成る群から選択される、と良い。
【0015】
前記空間が、ガス導入部及びガス排出部を有するガスセルにより画定される、と良い。
【0016】
前記空間が、ガス導入部及びガス排出部を有するガスセルにより画定され、当該ガスセルの反射性の内面には前記導電性薄膜が設けられる、と良い。
【0017】
前記空間が、反射性の球面により画定され、当該球面上に前記導電性薄膜が設けられる、と良い。
【0018】
本発明に係る光学部品は、吸収スペクトルにおいて吸収ピークを呈するターゲットガスの前記吸収ピークに属する波長の光に対して透光性を有する支持基板と、前記支持基板上に形成され、かつ前記吸収スペクトルの前記吸収ピークに対して透過スペクトルの透過ピークが波長軸上で重畳するように複数の光学的開口が規則的に配置された導電性薄膜と、を備える。
【0019】
前記複数の光学的開口が前記導電性薄膜の平面において互いに直交関係の第1及び第2方向に沿って所定間隔をあけて2次元状に配置される場合において、前記複数の光学的開口が、前記第1方向に沿って前記光学的開口が配置された第1及び第2光学的開口列を含み、前記第2光学的開口列が、前記第1光学的開口列に対して前記第2方向に隣接して配置され、前記第2光学的開口列における前記光学的開口の配列位置が、前記第1光学的開口列における前記光学的開口の配列位置に対して前記所定間隔の半分の値だけ前記第1方向にシフトしている、と良い。
【0020】
本発明に係るガス検出方法は、吸収スペクトルにおいて吸収ピークを呈するターゲットガスが供給される空間内に配置された導電性薄膜であって、前記吸収スペクトルの前記吸収ピークに対して透過スペクトルの透過ピークが波長軸上で重畳するように複数の光学的開口が規則的に設けられた導電性薄膜に対して少なくとも前記吸収ピークに属する波長の光を照射し、前記導電性薄膜を介して前記空間を伝播した光を検出する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、装置内の光路長に特に依存する事無く十分なガス検出感度を確保可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス検出装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るガス検出装置に組み込まれる窓材の概略的な構成を示す模式図であり、同図(a)にて窓材の部分的かつ概略的な上面構成を示し、同図(b)にて窓材の概略的な断面構成を示す。
【図3】本発明の第1実施形態に係るガス検出装置に組み込まれる窓材の製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るガス検出装置に組み込まれる窓材の上面を写した写真である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の光学的開口の間隔と透過スペクトルの透過ピークの最大透過率の波長(λmax)の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態に係るガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の透過スペクトルの対比を示すグラフである。
【図7A】本発明の第1実施形態に係るガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の透過スペクトルとターゲットガスの吸収スペクトルを同一波長軸にて示すグラフであり、透過スペクトルと吸収スペクトルとが重畳することを示す。
【図7B】本発明の第1実施形態に係るガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の透過スペクトルとターゲットガスの吸収スペクトルを同一波長軸にて示すグラフであり、λtrmaxとλabmaxが一致することを示す。
【図8】本発明の第1実施形態に係るターゲットガス濃度と出力電圧の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施形態に係るターゲットガス濃度と吸光度の変化の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態に係るガス検出装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係るガス検出装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係るガス検出装置に組み込まれる窓材の部分的かつ概略的な上面構成を示す模式図である。
【図13】本発明の実施例と比較例の比較結果を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例と比較例の比較結果を示すグラフである。
【図15】本発明の実施形態の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。各実施形態は、個々に独立したものではなく、過剰説明をするまでもなく、当業者をすれば、適宜、組み合わせることが可能であり、この組み合わせによる相乗効果も把握可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。

【0024】
<第1実施形態>
図1乃至図9を参照して第1実施形態について説明する。図1は、ガス検出装置の概略的な断面構成を示す模式図である。図2は、ガス検出装置に組み込まれる窓材の概略的な構成を示す模式図であり、同図(a)にて窓材の部分的かつ概略的な上面構成を示し、同図(b)にて窓材の概略的な断面構成を示す。図3は、ガス検出装置に組み込まれる窓材の製造方法を示す工程図である。図4は、ガス検出装置に組み込まれる窓材の上面を写した写真である。図5は、ガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の光学的開口の間隔と透過スペクトルの透過ピークの最大透過率の波長(λmax)の関係を示すグラフである。図6は、ガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の透過スペクトルの対比を示すグラフである。図7Aは、ガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の透過スペクトルとターゲットガスの吸収スペクトルを同一波長軸にて示すグラフであり、透過スペクトルと吸収スペクトルとが重畳することを示す。図7Bは、ガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の透過スペクトルとターゲットガスの吸収スペクトルを同一波長軸にて示すグラフであり、λtrmaxとλabmaxが一致することを示す。図8は、ターゲットガス濃度と出力電圧の関係を示すグラフである。図9は、ターゲットガス濃度と吸光度の変化の関係を示すグラフである。

【0025】
図1に示すようにガス検出装置10は、ターゲットガスのセル内空間130を画定する容器であるガスセル110、第1の窓材200、第2の窓材300、光源410、光検出部420、回路部510、及び表示部520を含む。ガス検出装置10は、セル内空間130に供給されるターゲットガスの濃度を測定するべく、光源410から放射されセル内空間130を伝播した光を光検出部420で検出する。なお、ガス検出装置10は、ターゲットガスの濃度を測定する場合に限らず、ターゲットガスの存在を検知するために用いられても良い。受光した伝播光の光強度の低下の検出からターゲットガスの存在を検知することができる。複数種類のガスを検出するようにガス検出装置を構成しても構わない。

【0026】
ターゲットガスは、本例では六フッ化硫黄SF6を例示するが、これに限らず、二酸化炭素等の他の温室効果ガスであっても良く、また、温室効果ガス以外の有害若しくは無害のガスであっても良い。今回着目する六フッ化硫黄SF6の吸収スペクトルの吸収ピークが10.5μmにて最大吸収を示す。六フッ化硫黄SF6の吸収ピークに応じて、本例に係る光源410は、10.5μmの波長を含む近赤外線を生成可能に構成される。本例に係る光検出部420は、10.5μmの波長を含む近赤外線を検出可能に構成される。なお、ターゲットガスが別の波長帯域に吸収ピークを有するものであれば、これに応じて光源410の放射光の波長/波長帯域と光検出部420の検出可能な波長/波長帯域が調整される。すなわち、本願の開示は、近赤外領域でのガス検出に限定されるべきものではない。

【0027】
図1に示したガスセル110のセル長L110が長ければ長いほどターゲットガスの濃度の十分な検出感度を確保することができる。光吸収は、分子固有の値×濃度×光路長により表現することができ、濃度が1/10になれば10倍の光路長が必要になる。ターゲットガス濃度のより十分な検出感度を確保するために、ガスセル110を長くすれば良いが、これに応じてガス検出装置10が大型化してしまう。後述の説明から明らかなように、本実施形態によれば、NDIR方式といった光の減衰に応じてターゲットガス濃度を測定する方式に内在するこの欠点を根本的に解決することが可能になる。

【0028】
光源410は、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークに属する波長の光を生成可能に構成される。本例では、光源410は、上述のように近赤外線を生成する。光源410の具体的な構成は任意であり、例えば、パルス光を生成する光源であり、また、平行光を生成する光源である。光検出部420で光強度を測定する関係から連続光源よりはパルス光源のほうが望ましいが、シャッター装置等を連続光源に併用しても構わない。レンズ、フィルタ、プリズム、ミラー等の光学系を光源410に組み込み、若しくはレンズ、フィルタ、プリズム、ミラー等の光学系を光源410に光学的に結合しても良い。光源410は、典型的には、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)等の発光素子若しくはランプである。蛍光材料を活用して放射光の波長を調整しても良い。シリコン半導体素子に限らず、化合物半導体素子を発光素子としても用いても良い。

【0029】
光検出部420は、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークに属する波長の光を検出可能に構成される。光検出部420の具体的な構成は任意である。レンズ、フィルタ、プリズム、ミラー等の光学系を光検出部420に組み込み、若しくはレンズ、フィルタ、プリズム、ミラー等の光学系を光検出部420に光学的に結合しても良い。光検出部420は、典型的には、赤外領域の光に感度を有するInGaAs等の化合物フォトダイオードであるが、必ずしもこの限りではなく、感熱素子を活用しても良い。

【0030】
光源410と光検出部420は軸線AX50沿いに同軸に配置され、つまり、光源410と光検出部420の間の光路が直線光路である。これにより、ガス検出装置10に内蔵の光学系を単純化することができ、製品の組み立ての簡素化及び製品単価の低減を図ることができる。

【0031】
ガスセル110はターゲットガスが供給される中空容器であり、ここに中空のガス導入部120と中空のガス排出部140が設けられる。ターゲットガスは、ガス導入部120を介してガスセル110内のセル内空間130に流入し、セル内空間130内を光源410側から光検出部420側へ流れ、ガス排出部140を介して外部へ排出される。ガスセル110、ガス導入部120、及びガス排出部140は、例えば、円筒状に構成されるが、必ずしもこの限りではない。

【0032】
窓材200及び窓材300も軸線AX50沿いに同軸上に配置される。窓材200は、光源410から放射光のセル内空間130側への伝播を中継/介在する部材であり、本例では、近赤外線に対して透光性を有するように構成される。窓材200は、光源410とセル内空間130の間に設けられ、セル内空間130を光源410側から画定する。窓材300は、セル内空間130を伝播した光源410の放射光の光検出部420側への伝播を中継/介在する部材であり、本例では、近赤外線に対して透光性を有するように構成される。窓材300は、セル内空間130と光検出部420の間に設けられ、セル内空間130を光検出部420側から画定する。窓材200、300の正面視形状は任意であり、例えば、円盤状や矩形状である。

【0033】
窓材200と窓材300の間の間隔を本例に係るガスセル110のセル長L110とする。セル長L110は、本例においては、図1においては長く図示されているが、実際には従来品と比べて極端に短く、数センチでも十分なターゲットガス濃度の検出感度を確保できる。本発明者らによるシミュレーションによれば、ガスセル110のセル長L110を10ミクロン程度まで短縮可能である。従って、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の活用によりガス検出装置10の小型化を図ることが期待できる。

【0034】
図2は、ガス検出装置10に組み込まれる窓材200の概略的な構成を示す模式図であり、同図(a)にて窓材200の部分的かつ概略的な上面構成を示し、同図(b)にて窓材200の概略的な断面構成を示す。なお、窓材300の構成は窓材200と略等しく、冗長な説明は省略する。

【0035】
図2に示すように、窓材200は、支持基板210上に導電性薄膜220が形成された光学部品であり、導電性薄膜220には複数の光学的開口222が2次元状に規則的に配置されている。支持基板210は、セル内空間130に晒される側の第1主面211と光源410に臨む側の第2主面212を有する。第1主面211と第2主面212は、互いに平行な平面であり、これらにより支持基板210の基板厚が規定される。第1主面211は、窓材200の光出射面でもあり、第2主面212は、窓材200の光入射面でもある。

【0036】
支持基板210の第1主面211に導電性薄膜220が形成され、導電性薄膜220がセル内空間130のターゲットガスに接触可能であり、かつ導電性薄膜220が光源410と光検出部420の間の光路上に設けられる。

【0037】
支持基板210は導電性薄膜220の支持基板であり、光源410の放射光に対して透光性を有し、本例では、近赤外線に対して透光性を有する。支持基板210の構成材料は、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークに属する光に透過性を有するものであれば任意である。本例では、支持基板210が、厚み450~550μmのシリコン基板である。シリコン基板の厚みが増加すると近赤外線が吸収されてしまうため、これを抑制するためにシリコン基板の厚みを薄くすることが望ましい。好適には、シリコン基板の厚みは、200~1000μmである。ゲルマニウム、サファイア、フッ化カルシウム等の他の基板を活用しても良い。

【0038】
導電性薄膜220は、金属に例示される導電性材料から成る薄膜であり、光学的開口222が規則的に設けられている。導電性薄膜220は、典型的には、銀、金、銅、クロム、アルミニウム、及び鉄から成る群から選択される材料から成る。導電性薄膜220の膜厚は、好適には、50nm~100nmである。光学的開口222は、典型的には導電性薄膜220が部分的に除去された空間であるが、透明材料が充填されていても構わない。光学的開口222の配置間隔は、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークに依存して変更され得る。光学的開口222の開口径若しくは最大開口幅は、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークに依存して変更され得る。光学的開口222の開口形状は図示の円形に限られるべきものではない。

【0039】
光学的開口222が規則的に設けられることにより導電性薄膜220の透過スペクトルの透過ピークが調整される。導電性薄膜の透過スペクトルの透過ピークは「異常透過現象」により説明できる。「異常透過現象」は、入射光と、規則的な開口の周期構造が設けられた導電材の表面上の表面プラズモンポラリトン(SPP(Surface Plasmon Polariton))との共鳴結合により、透過スペクトルに異常透過ピークが現れるものである。後述の説明から明らかなように、本願発明者らの検討によれば、導電性薄膜220の透過スペクトルの透過ピークをターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークに波長軸上で重畳させることにより、セル長L110を短縮する場合においてもターゲットガスの十分な検出感度を確保できることを見出した。SPPが励起される導電性薄膜220の表面、特に光学的開口222のエッジにおいてターゲットガスと光源410の放射光が強く相互作用する、すなわちターゲットガスが光源410の放射光をより多く吸収するためと推定される。

【0040】
光学的開口222同士の間隔が導電性薄膜220の透過スペクトルの透過ピークに影響するため、光学的開口222を四方格子状に配置するのではなく、三角格子状に配置して隣接する光学的開口222同士の間隔が平面内で等しくなるようにすることが好ましい。例えば、光学的開口222を四方格子状に隣接する場合、正方形において各辺の長さよりも対角線の長さが長いことに起因して導電性薄膜220の透過スペクトルに2つの透過ピークが表れてしまう。隣接する光学的開口222同士の間隔を平面内で等しくすることによりこの欠点を解消することができる。

【0041】
図2(a)を参照すると、図2の紙面を正面視した際の左右方向(第1方向)に一定間隔W7で配置された光学的開口222の列(光学的開口列)L1と、同左右方向に一定間隔W7で配置された光学的開口222の列(光学的開口列)L2がある。なお、列L1と列L2は、図2の紙面を正面視した際の上下方向(第2方向)において隣接している。列L1の光学的開口222に対して列L2の光学的開口222が図2を正面視して右方向にW7/2だけシフトしていることが分かる。

【0042】
各光学的開口222が三角格子状、つまり正三角形の各頂点に配置され、隣接する光学的開口222同士は間隔W7に統一される。換言すれば、光学的開口222は、列L1と列L2の間でジグザグに配置される。この点は、列L3と列L4等の他の列についても同様であり、例えば、列L3と列L4の間で斜め隣りに配置された光学的開口222同士の間隔も間隔W7である。なお、上述の第1方向及び第2方向が直交関係にあり、かつこれらにより導電性薄膜220の存在平面が規定される。

【0043】
窓材200の製造方法は任意である。例えば、図3に示すようにフォトリソグラフィー技術を活用して窓材200を製造しても良い。図3に示すように、支持基板210上に例えばレジストからなる犠牲層230を成膜し(同図(a)参照)、選択露光と洗浄により犠牲層230をパターニングし(同図(b)参照)、パターニングされた犠牲層230上に導電性薄膜220となるべき導電層220’を成膜し(同図(c)参照)、その後、導電層220’が堆積した状態の犠牲層230を支持基板210上から除去し(同図(d)参照)、これにより、図2に示した窓材200が得られる。なお、フォトリソグラフィー技術に代えてレーザー加工等を活用しても良い。

【0044】
図4に窓材200の導電性薄膜220の拡大写真を示す。

【0045】
図5は、ガス検出装置10に組み込まれる窓材200の導電性薄膜220の光学的開口222の間隔と透過スペクトルの透過ピークの最大透過率の波長(λmax)の関係を示すグラフである。図6は、ガス検出装置10に組み込まれる窓材200の導電性薄膜220の透過スペクトルの対比を示すグラフである。図5は、8個のサンプルの窓材を用いた結果を示し、8個のプロットが直線で近似されている。図6は、図5に係る8個のサンプルの各透過スペクトルを示す。

【0046】
図5に示すように光学的開口222の間隔を増加させると波長λmaxが長波長側にシフトする、すなわち、導電性薄膜220の透過スペクトルの透過ピークが長波長側にシフトする。ここで述べる光学的開口222の間隔は、例えば、図2に示した間隔W7である。μmレベルの間隔調整によりμmレベルの最大強度波長のシフトが生じていることが分かる。

【0047】
図6に示すように、各サンプルの窓材が、可視赤色から近赤外の帯域(650nm~1150nm)で透過率に単一の透過ピークを有することが分かる。

【0048】
図7A及び図7Bは、ガス検出装置に組み込まれる窓材の導電性薄膜の透過スペクトルとターゲットガスの吸収スペクトルを同一波長軸にて示すグラフである。本実施形態においては、図7A及び図7Bに示すように、導電性薄膜220の透過スペクトルの透過ピークが、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークに波長軸上で重畳している。換言すれば、導電性薄膜220の透過スペクトルの透過ピークの波長帯域とターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークの波長帯域が重畳、つまり共通の波長帯域を含む。本願発明者らの検討及びシミュレーション結果によれば、これにより、導電性薄膜の近傍、特段の限定を意図するものではなくより詳細に説明すれば、導電性薄膜の光学的開口を規定する側面の近傍、およびターゲットガスに晒される側の導電性薄膜の第1主面の表面近傍においてターゲットガスによる近赤外線の吸収が促進され、セル長L110の短縮にも関わらず十分な検出感度を確保できることが明らかになった。

【0049】
図7Aに示す場合、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークの最大吸収が生じる波長λabmaxが10.5μmであり、導電性薄膜220の透過スペクトルの透過ピークの最大透過率が生じる波長λtrmaxが10.46μmである。このように、波長λabmaxと波長λtrmaxの間にズレがあっても、吸収ピークに対する透過ピークの重なり合いが確保されれば十分である。

【0050】
例えば、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークの最大吸収が生じる波長=λabmax、導電性薄膜の透過スペクトルの透過ピークの最大透過率が生じる波長=λtrmaxとしたとき、λabmax×0.8≦λtrmax≦λabmax×1.2を満足し、好適には、λabmax×0.9≦λtrmax≦λabmax×1.1を満足し、より好適には、λabmax×0.95≦λtrmax≦λabmax×1.05を満足する。このような条件を満足する場合、透過スペクトルの透過ピークと吸収スペクトルの吸収ピークの十分な重なり合いを確保できるだろう。

【0051】
図7Bに示す場合、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークの最大吸収が生じる波長λabmaxが10.5μmであり、導電性薄膜220の透過スペクトルの透過ピークの最大透過率が生じる波長λtrmaxが10.5μmである。このように、λabmaxとλtrmaxを完全に一致させることが望ましい。図7Bに示す場合、吸収ピークの波長帯域幅が、透過ピークの波長帯域幅よりも十分に狭く、透過ピークの波長帯域幅内に吸収ピークが完全に含まれている。2種類以上のガスの混合ガスをターゲットガスとする場合、吸収ピークの波長帯域幅が透過ピークの波長帯域幅よりも広くなることも考えられる。

【0052】
図8は、本構成でターゲットガスとしてSF6を用いた場合において、ターゲットガスの濃度の増加に応じて電圧出力がリニアに変化することを示す。図9は、同じく、本構成でターゲットガスとしてSF6を用いた場合において、ターゲットガスの濃度の増加に応じて吸光度の変化(ΔABS)がリニアに変化することを示す。ターゲットガスのターゲットガス濃度のppmレベルの変動も精度よく検出可能であることが分かる。

【0053】
図1に示した光検出部420は、典型的には、フォトダイオード等の光検出素子、光検出素子に電気的に接続されるアナログ周辺回路、及びオプションとしてアナログ信号をデジタル信号に変化するA/D変換回路等を含んで構成される。光検出部420の出力信号が光検出部420での検出光の強度を示す。回路部510は、光検出部420の出力信号を処理するアナログ又はデジタル回路を含んで構成され、場合によってはCPUやメモリを含むコンピューターにより構成される。回路部510は、光検出部420の出力信号に基づいて上述の検出光の強度に対応するガス濃度値を決定して出力する。回路部510の出力信号が表示部520に伝達され、表示部520によりガス濃度値が表示される。検出光の強度とガス濃度値の関係は予め試験的に求めることができ、所望の演算式若しくはルックアップテーブルの活用により対応関係を求めることができる。

【0054】
ガス検出装置10の動作について説明する。ターゲットガスは、ガス導入部120を介してガスセル110のセル内空間130に供給され、ガス排出部140を介して排気される。光源410が近赤外線パルス光を出射すると、近赤外線パルス光が、窓材200の支持基板210を透過し、導電性薄膜220を透過し、セル内空間130を通過し、窓材300の導電性薄膜320を透過し、窓材300の支持基板310を透過し、そして光検出部420に入射する。近赤外線パルス光は、所定の割合で各窓材の支持基板により吸収される。近赤外線パルス光は、所定の割合で各窓材の導電性薄膜により反射される。近赤外線パルス光は、ガスセル110のセル内空間130に存在するターゲットガスの量/濃度に応じた割合でターゲットガスにより吸収される。

【0055】
光検出部420は、フォトダイオードの光電流の電流量に基づいて近赤外線の強度を検出する。光検出部420は、光電流を電流電圧変換し、光電流の電流量に応じた大きさの検出電圧を回路部510に出力する。回路部510は、検出電圧を処理、例えば、検出電圧からターゲットガス濃度値を決定して出力する。検出電圧値とターゲットガス濃度値との関係を予め試験的に求めることができることは当業者には理解できる(図8も参照)。表示部520は、回路部510から伝達されたターゲットガス濃度値を表示する。

【0056】
本実施形態においては、光学的開口222の周期構造が設けられた導電性薄膜220、320がターゲットガスに接するように光路上に設けられ、導電性薄膜220の近傍においてターゲットガスによる十分な光吸収を促進することができるため、ガスセル110のセル長L110に特に顕著に依存する事無く、ターゲットガスの十分な検出感度を確保することができる。従って、図1に示すガスセル110のセル長L110を従来と比べて格段に短縮しても十分なターゲットガスの検出感度を確保することができる。例えば、100ppm相当のターゲットガスを検出するために「20cm」以上の長さのターゲットガス流路の長さを確保することが既存のNDIR方式のガスセルでは要求されていた。本実施形態の場合においては、同様程度の感度を確保するために要求されるガスセル110のセル長L110が「2cm」程度であり、既存方式と比較して1/10のサイズダウンを図ることができた。

【0057】
更に本実施形態では、光源410から光検出部420に至る光路上に複数、本例では2つの導電性薄膜220、320を設ける。これにより導電性薄膜とターゲットガスの相互作用領域を十分に確保することができ、十分なターゲットガス濃度の検出感度を確保できる。光路上に配置される導電性薄膜の枚数は任意であり、2枚以上、例えば、4枚、8枚の如く設けて検出感度を確保しても良い。なお、導電性薄膜を8枚以下とすることにより、透過率の低下の悪影響を回避することができる。導電性薄膜の枚数の増加により全体の透過率が低減すること自体は上述の説明や図7A及び図7Bの開示から明らかである。もちろん、導電性薄膜を1枚のみ用いても構わない。

【0058】
導電性薄膜を窓材に設けることは必須ではなく、導電性薄膜を光源410と光検出部420の間の光路上の他の位置に設けても良い。例えば、窓材200と窓材300の間にこれらの窓材と同じ構成の光学部品を中継素子として設けても良い。すなわち、窓材は、光学部品の一例であるに過ぎない。

【0059】
<第2実施形態>
図10を参照して第2実施形態について説明する。図10は、ガス検出装置の概略的な断面構成を示す模式図である。本実施形態においては、ガスセル110の内面上に第1実施形態で説明したものに等しい導電性薄膜を設け、またこの導電性薄膜を光源410から光検出部420に至る光路上に配置する。これにより、導電性薄膜とターゲットガスのより十分な相互作用面積を確保することができる。本実施形態の場合にも第1実施形態と同様の効果を得ることができる。

【0060】
図10に示すように、ガスセル110の反射性の内面には第1実施形態で説明したものに等しい導電性薄膜240が設けられる。光源410の放射光が光路を伝播する過程で発散し、ガスセル110の内面の導電性薄膜240により反射され、また、これを透過してその反射性内面により反射される。ガスセル110の内面は十分な反射性を具備し、入射光がガスセル110自体を透過することが抑止される。本実施形態においても導電性薄膜240の透過スペクトルの透過ピークが、ターゲットガスの吸収スペクトルの吸収ピークに重畳されている。これにより、導電性薄膜240の近傍においてターゲットガスによる近赤外線の吸収が促進され、ガスセル110のセル長L110の短縮にも関わらずターゲットガスの十分な検出感度を確保できる。

【0061】
<第3実施形態>
図11を参照して第3実施形態について説明する。図11は、ガス検出装置の概略的な断面構成を示す模式図である。本実施形態においては、ガスセル110が積分球の如く球状の反射性の内面を有し、そのガスセル110の反射性の球面に第1実施形態で説明したものに等しい導電性薄膜を設ける。導電性薄膜は光源410から光検出部420に至る光路上に配置される。導電性薄膜とターゲットガスのより十分な相互作用面積を確保することができる。本実施形態の場合にも第1実施形態と同様の効果を得ることができる。

【0062】
図11に示すように、ガスセル110が中空のセル内空間130を有するように構成され、このセル内空間130が球面により画定される。なお、ガスセル110内のセル内空間130には不図示のターゲットガス供給部とターゲットガス排出部が接続されているものとする。図11の矢印で模式的に示すようにガスセル110内において光源410の放射光が導電性薄膜240により反射され、また、これを透過してガスセル110の反射性内面により反射される。ガスセル110の内面は十分な反射性を具備し、入射光がガスセル110自体を透過することが抑止される。ガスセル110の構成基材は、例えば、1以上のシリコン基板である。例えば、2つのシリコン基板の平板の半球状の窪みを対向させれば中空の球状空間を形成できる。

【0063】
<第4実施形態>
図12を参照して第4実施形態について説明する。図12は、ガス検出装置に組み込まれる窓材の部分的かつ概略的な上面構成を示す模式図である。上述の実施形態においては、導電性薄膜に設ける光学的開口の開口形状が円形であったが、これを多角形としても良い。多角形とする場合、エッジに光が局在しやすいという光のエッジ効果に由来して光学的開口のエッジにおいて光源410の放射光とターゲットガスの相互作用を十分に促進することが予測される。本実施形態の場合にも第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、円形の光学的開口が導電性薄膜に設けられた場合と比較して導電性薄膜の近傍でのターゲットガスと光の相互作用をより十分にすることが見込まれる。

【0064】
図12に示すように、多角形の一例として三角形状の光学的開口222が導電性薄膜220に設けられる。その他の点は、第1実施形態と同様である。三角形状ではなく四角形状、五角形状、六角形状等としても良い。

【0065】
<実施例>
図13及び図14は、実施例と比較例の比較結果を示すグラフである。■が、図1に示した構成に等しい実施例の評価結果を示し、これを実施例1とする。●が図1に示した構成において2枚の導電性薄膜のうち一方を支持基板のターゲットガスに接しない側に設けた実施例の評価結果を示し、これを実施例2とする。▲が、図1に示した構成において2枚の導電性薄膜の両方を支持基板のターゲットガスに接しない側に設けた比較例の評価結果を示す。

【0066】
実施例1の場合、ターゲットガスを5ppmから検出できた。実施例2の場合、ターゲットガスを50ppmから検出できた。比較例の場合、ターゲットガスを80ppmから検出できた。導電性薄膜をターゲットガスに晒すことの意義を確認することができた。また、導電性薄膜とターゲットガスの相互作用面積を十分に確保することの意義を確認できた。

【0067】
なお、用いたターゲットガスは、第1実施形態で説明したように六フッ化硫黄である。セル長は2cmである。ガス導入部120にガス混合装置を接続した。ガス混合装置には、窒素ボンベと窒素と六フッ化硫黄が混合したターゲットガスボンベを接続した。光検出部420の電圧出力をオシロスコープに接続し、出力電圧の変化をモニターした。光源、光検出部、オシロスコープには電源から必要な電力が供給される。

【0068】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。導電性薄膜を設ける部材は窓材に限られず、光路上の他の位置に設けても良い。

【0069】
本願には、次のガス検出方法も開示されていることは上述の説明から明らかである。本願に開示の例示のガス検出方法は、吸収スペクトルにおいて吸収ピークを呈するターゲットガスが供給される空間内に配置された導電性薄膜であって、前記吸収スペクトルの前記吸収ピークに対して透過スペクトルの透過ピークが波長軸上で重畳するように複数の光学的開口が規則的に配置された導電性薄膜に対して少なくとも前記吸収ピークに属する波長の光を照射するステップと、前記導電性薄膜を介して前記空間を伝播した光を検出するステップ、を含む。

【0070】
図15に示す如く、光源410と光検出部420を同じ側に設けても良い。この場合、図15に示すように、光源410の放射光がセル内空間130を介さずに光検出部420に入射することを抑制するための遮光部251を設けることが望ましい。例えば、ダイシングにより窓材200に開口を形成し、この開口に遮光部を挿入する。窓材200に対向した反射部材252を設け、これにより、セル内空間130を伝播した光源410の放射光を光検出部420に向けることができる。反射部材252に代替して窓材200と同じ構成の光学部品を配置しても良く、この場合、基板上の導電性薄膜が反射層として機能し、またターゲットガスとの光の相後作用を促進できる。図15の矢印に示すようなV字状の光路を設定することが好ましい。図15に示す場合、ガス検出装置10を顕著に小型化することができる。受光素子と発光素子が一体化した受発光素子は汎用された技術であり、これを活用して装置を構成しても良い。支持基板210を共通基板として半導体の積層体である受光素子や発光素子を半導体プロセスを活用して設けて究極的な集積化を図っても良い。
【符号の説明】
【0071】
10 ガス検出装置
110 ガスセル
120 ガス導入部
130 セル内空間
140 ガス排出部
200 窓材
210 支持基板
220 導電性薄膜
300 窓材
310 支持基板
320 導電性薄膜
410 光源
420 光検出部
510 回路部
520 表示部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7A】
6
【図7B】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図12】
12
【図13】
13
【図14】
14
【図15】
15