TOP > 国内特許検索 > ストリップ線路型の右手/左手系複合線路または左手系線路とそれらを用いたアンテナ > 明細書

明細書 :ストリップ線路型の右手/左手系複合線路または左手系線路とそれらを用いたアンテナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5120896号 (P5120896)
登録日 平成24年11月2日(2012.11.2)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
発明の名称または考案の名称 ストリップ線路型の右手/左手系複合線路または左手系線路とそれらを用いたアンテナ
国際特許分類 H01P   3/08        (2006.01)
H01Q  13/22        (2006.01)
H01Q   3/00        (2006.01)
FI H01P 3/08
H01Q 13/22
H01Q 3/00
請求項の数または発明の数 13
全頁数 17
出願番号 特願2008-524749 (P2008-524749)
出願日 平成19年6月27日(2007.6.27)
国際出願番号 PCT/JP2007/062853
国際公開番号 WO2008/007545
国際公開日 平成20年1月17日(2008.1.17)
優先権出願番号 2006194046
優先日 平成18年7月14日(2006.7.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年2月2日(2010.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】真田 篤志
個別代理人の代理人 【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
【識別番号】100106770、【弁理士】、【氏名又は名称】円城寺 貞夫
【識別番号】100139789、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 光信
審査官 【審査官】岸田 伸太郎
参考文献・文献 特開平04-113708(JP,A)
特許第3978502(JP,B2)
特許第3978503(JP,B2)
特許第3978504(JP,B2)
特許第3978505(JP,B2)
松沢晋一郎(外3名),「ビ-ム走査可能なW帯右手/左手系漏れ波アンテナ」,2006年電子情報通信学会総合大会講演論文集,2006年 3月 8日,通信 1,pp.61,B-1-61
松沢晋一郎(外2名),「液晶を用いたミリ波帯左手系漏れ波アンテナ」,2005年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会講演論文集1,2005年 9月 7日,通信ソサイエティ,pp.180,B-1-180
調査した分野 H01P 3/08
H01Q 3/00
H01Q 13/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一部あるいは全部を誘電率可変材料とした誘電体からなる平板状の基板(11)と、
前記基板(11)の中間面に配置され、一定方向に周期的に配置された複数の導体パターン(4)と、
前記基板(11)の表面および裏面に配置された接地導体(2,3)とを有し、
前記導体パターン(4)は、他の導体パターン(4)および前記接地導体(2,3)とは直流的に絶縁されて設けられたものであり、
電磁波を右手系領域および左手系領域で伝搬可能なストリップ線路型右手/左手系複合線路。
【請求項2】
請求項1に記載したストリップ線路型右手/左手系複合線路であって、
伝搬する電磁波の位相定数をβ、前記導体パターン(4)の配列周期寸法をa、円周率をπとしたときに、値βa/πが-1.0~1.0の範囲内になるようにしたストリップ線路型右手/左手系複合線路。
【請求項3】
一部あるいは全部を誘電率可変材料とした誘電体からなる平板状の基板(11)と、
前記基板(11)の中間面に配置され、一定方向に周期的に配置された複数の導体パターン(4)と、
前記基板(11)の表面および裏面に配置された接地導体(2,3)とを有し、
前記導体パターン(4)は、他の導体パターン(4)および前記接地導体(2,3)とは直流的に絶縁されて設けられたものであり、
電磁波を左手系領域で伝搬可能なストリップ線路型左手系線路。
【請求項4】
請求項3に記載したストリップ線路型左手系線路であって、
伝搬する電磁波の位相定数をβ、前記導体パターン(4)の配列周期寸法をa、円周率をπとしたときに、値βa/πが-1.0~0の範囲内になるようにしたストリップ線路型左手系線路。
【請求項5】
一部あるいは全部を誘電率可変材料とした誘電体からなる平板状の基板(11)と、
前記基板(11)の中間面に配置され、一定方向に周期的に配置された複数の導体パターン(4)と、
前記基板(11)の表面または裏面の一方に配置され、複数の開口(5)が設けられた開口付接地導体(2)と、
前記基板(11)の表面または裏面の他方に配置され、前記開口付接地導体(2)とは直流的に絶縁されて設けられた接地導体(3)と、
前記開口付接地導体(2)と前記接地導体(3)とに直流電圧を印加して前記誘電率可変材料の誘電率を変更制御する誘電率制御手段(7)とを有し、
前記導体パターン(4)は、他の導体パターン(4)、前記開口付接地導体(2)および前記接地導体(3)とは直流的に絶縁されて設けられたものであり、
前記基板(11)、前記導体パターン(4)、前記開口付接地導体(2)および前記接地導体(3)からなるストリップ線路型伝送路に電磁波を伝搬させ、前記誘電率制御手段(7)によって放射電磁波の方向を制御するようにしたストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
【請求項6】
請求項5に記載したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナであって、
伝搬する電磁波の位相定数をβ、前記導体パターン(4)の配列周期寸法をa、円周率をπとしたときに、値βa/πが-1.0~1.0の範囲内になるようにしたストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
【請求項7】
請求項5に記載したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナであって、
伝搬する電磁波の位相定数をβ、前記導体パターン(4)の配列周期寸法をa、円周率をπとしたときに、値βa/πが-1.0~0の範囲内になるようにしたストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
【請求項8】
請求項5に記載したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナであって、
前記ストリップ線路型伝送路に伝搬させる電磁波の周波数を一定として、前記誘電率制御手段(7)によって前記誘電率可変材料の誘電率を変更して放射電磁波の方向を制御するようにしたストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
【請求項9】
請求項5に記載したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナであって、
前記ストリップ線路型伝送路に伝搬させる電磁波の周波数を変更するとともに、前記誘電率制御手段(7)によって前記誘電率可変材料の誘電率を変更して放射電磁波の方向を制御するようにしたストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか1項に記載したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナであって、
それぞれの前記開口(5)からの電磁波放射量を調整するために、前記開口(5)の面積をそれぞれ異なるものとしたストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
【請求項11】
請求項10に記載したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナであって、
それぞれの前記開口(5)からの電磁波放射量をほぼ一定とするように、前記開口(5)の面積を電磁波入力端子(6)に近いものほど小さく遠いものほど大きく設定したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
【請求項12】
請求項11に記載したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナであって、
前記開口(5)はスロット形状であるストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
【請求項13】
請求項12に記載したストリップ線路型伝送路を用いたアンテナであって、
前記開口(5)の長さ寸法と幅寸法の一方または両方を順次変更して、前記開口(5)の面積をそれぞれ異なるものとしたストリップ線路型伝送路を用いたアンテナ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体に液晶等に代表される誘電率可変材料を用い、メタマテリアルとして構成されたストリップ線路型の右手/左手系複合線路または左手系線路とそれらを用いたアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
金属、誘電体、磁性体、超伝導体などの小片(単位セル)を、波長に対して十分短い間隔(波長の10分の1程度以下)で並べることで自然にはない性質を持った媒質を人工的に構成することができる。このような媒質を、自然界にある媒質のカテゴリに比べてより大きいカテゴリに属する媒質と言う意味で、メタマテリアル(metamaterials)と呼んでいる。メタマテリアルの性質は、単位セルの形状、材質およびそれらの配置により様々に変化する。
【0003】
中でも、等価的な誘電率εと透磁率μとが同時に負となるメタマテリアルは、その電界と磁界と波数ベクトルが左手系をなすことから「左手系媒質(LHM:Left-Handed Materials)」と名付けられた。これに対して、等価的な誘電率εと透磁率μとが同時に正となる通常の媒質は「右手系媒質(RHM:Right-Handed Materials)」と呼ばれる。これら誘電率εおよび透磁率μと媒質の種類との関係は、図1で示される。誘電率εの正負および透磁率μの正負に応じて第1象限~第4象限の媒質に分類できる。右手系媒質は第1象限の媒質であり、左手系媒質は第3象限の媒質である。
【0004】
特に、左手系媒質は、波の群速度(エネルギーの伝播する速度)と位相速度(位相の進む速度)の符号が逆転している波(バックワード波と呼ばれる)の存在や、非伝播領域で指数関数的に減衰する波であるエバネセント波の増幅等の特異な性質を持つものである。そして、左手系媒質によるバックワード波を伝送する線路を人工的に構成することができる。このことは、下記の非特許文献1、非特許文献2に記載されている。
【0005】
この左手系媒質構成の概念に基づき、金属パターンからなる単位セルを周期的に並べてバックワード波を伝播させる線路が提案されている。これまで、その伝送特性が理論的に取り扱われ、この線路が左手系伝送帯域を持つこと、左手系伝送帯域と右手系伝送帯域との間にバンドギャップが生じること、そのバンドギャップ幅は単位セル中のリアクタンスによりコントロールすることができること等が理論的に明らかになっている。また、左手系伝送帯域と右手系伝送帯域を同時に伝送できる線路は右手/左手系複合線路と呼ばれている。これらに関しては、下記の非特許文献3に記載されている。
【0006】
図2は、従来から一般的に利用されているマイクロストリップ線路の構成を示す図である。図2(A)はマイクロストリップ線路の斜視図であり、図2(B)はマイクロストリップ線路を伝搬する電磁波の電磁界の概略を示す断面図である。マイクロストリップ線路は、誘電体からなる厚さdの基板1の表面に伝送路としての導体4を設け、基板1の裏面には接地導体3を配置したものである。このマイクロストリップ線路を伝搬する電磁波の電界Eおよび磁界Hは、図2(B)に示すようになる。マイクロストリップ線路では、線路の片側(上面側)の半空間が開放されているため、放射領域 (線路の伝搬波の位相定数が真空中の波数よりも小さくなる領域) において空間への放射が起こる。
【0007】
このようなマイクロストリップ線路型の伝送路構成に基づく右手/左手系線路が既に作製されており、このマイクロストリップ線路型右手/左手系線路の伝送特性が実験的に実証されている。これに関しては、非特許文献2,3に記載されている。マイクロストリップ線路型右手/左手系線路は、図2(A)の導体4として、互いに絶縁された導体からなる単位セルをz方向に周期的に配列したものである。
【0008】
このマイクロストリップ線路型の右手/左手系線路は、波の位相定数が真空中の波数に比べて小さくなる周波数領域において伝送エネルギーの一部を放射する性質をもつため、この性質を利用して、右手/左手系線路をアンテナとして使用できることが確認されている。これに関しても、非特許文献2,3に記載されている。
【0009】
マイクロストリップ線路とともに従来から利用されている伝送線路としてはストリップ線路がある。図3はストリップ線路の構成を示す図である。図3(A)はストリップ線路の斜視図であり、図3(B)はストリップ線路を伝搬する電磁波の電磁界の概略を示す断面図である。ストリップ線路は、誘電体からなる厚さsの基板1の表面および裏面に接地導体2,3を配置し、基板1の中間面(厚さs/2の位置の面)に伝送路としての導体4を設けたものである。このストリップ線路を伝搬する電磁波の電界Eおよび磁界Hは、図3(B)に示すようになる。ストリップ線路では表裏両面が接地導体2,3に囲まれているため本質的に放射を生じない。
【0010】
本発明者は、このようなストリップ線路型の伝送路構成に基づく右手/左手系複合線路と左手系線路を既に提案している。それは、図4(A),(B)に示す伝送路である。図4(A)は伝送路を構成する導体のみを表示した斜視図であり、図4(B)は伝送路の断面図である。この伝送路は、誘電体からなる厚さsの基板1の表面および裏面に接地導体2,3を配置し、基板1の中間面(厚さs/2の位置の面)に伝送路としての導体パターン4を設けたものである。導体パターン4は、互いに絶縁された導体からなる単位セルを伝送方向に周期的に配列したものである。
【0011】

【非特許文献1】D. R. Smith, W. J. Padilla, D. C. Vier, S. C. Nemat-Nasser, and S. Schultz,“Composite medium with simultaneously negative permeability and permittivity”, Phys. Rev. Lett., vol.84, no.18, pp.4184-4187, May 2000
【非特許文献2】C. Caloz, and T. Itoh,“Application of the transmission line theory of left-handed(LH) materials to the realization of a microstrip LH line”, IEEE-APS Int'l Symp. Digest, vol.2, pp.412-415, June 2002
【非特許文献3】Atsushi Sanada, Chritophe Caloz and Tatsuo Itoh,“Characteristics of the Composite Right/Left-Handed Transmission Lines”, IEEE Microwave and Wireless Component Letters, Vol.14, No.2, pp.68-70, February 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のマイクロストリップ線路型の右手/左手系線路を漏波アンテナとして使用する場合、伝搬させる電磁波の周波数を変化させることにより、放射電磁波の方向を変更することができる。しかし、周波数の可変範囲が小さい場合には放射電磁波の方向を広範囲に変更制御することはできなかった。また、ストリップ線路型の右手/左手系線路に電磁波放射用の構成を付加して漏波アンテナとして使用する場合も同様であり、周波数の可変範囲が小さい場合には放射電磁波の方向を広範囲に変更制御することはできなかった。
【0013】
そこで、本発明は、伝搬波の位相定数が真空中の波数よりも小さくなる領域でも放射なく信号伝送を行うことができ、伝送エネルギーの損失がないストリップ線路型伝送路を提供することを目的とする。また、左手系伝送帯域と右手系伝送帯域との間にバンドギャップが生じることがなく、基板の誘電率を変更制御することで伝送特性を広範囲に変更制御することのできるストリップ線路型右手/左手系複合線路とストリップ線路型左手系線路を提供することを目的とする。さらに、本発明は、これらのストリップ線路型伝送線路を用い、電磁波の周波数を一定としても放射方向を容易に変更制御することができるストリップ線路型伝送路を用いたアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のストリップ線路型右手/左手系複合線路は、一部あるいは全部を誘電率可変材料とした誘電体からなる平板状の基板と、前記基板の中間面に配置され、一定方向に周期的に配置された複数の導体パターンと、前記基板の表面および裏面に配置された接地導体とを有する。前記導体パターンは、他の導体パターンおよび前記接地導体とは直流的に絶縁されて設けられたものである。このストリップ線路型右手/左手系複合線路は、電磁波を右手系領域および左手系領域で伝搬可能なものである。
【0015】
また、上記のストリップ線路型右手/左手系複合線路において、伝搬する電磁波の位相定数をβ、前記導体パターンの配列周期寸法をa、円周率をπとしたときに、値βa/πが-1.0~1.0の範囲内になるようにすれば、電磁波を右手系領域および左手系領域で伝搬可能となる。
【0016】
また、本発明のストリップ線路型左手系線路は、一部あるいは全部を誘電率可変材料とした誘電体からなる平板状の基板と、前記基板の中間面に配置され、一定方向に周期的に配置された複数の導体パターンと、前記基板の表面および裏面に配置された接地導体とを有する。前記導体パターンは、他の導体パターンおよび前記接地導体とは直流的に絶縁されて設けられたものである。このストリップ線路型左手系線路は、電磁波を左手系領域で伝搬可能なものである。
【0017】
また、上記のストリップ線路型左手系線路において、伝搬する電磁波の位相定数をβ、前記導体パターンの配列周期寸法をa、円周率をπとしたときに、値βa/πが-1.0~0の範囲内になるようにすれば、電磁波を左手系領域で伝搬可能となる。
【0018】
また、本発明のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナは、一部あるいは全部を誘電率可変材料とした誘電体からなる平板状の基板と、前記基板の中間面に配置され、一定方向に周期的に配置された複数の導体パターンと、前記基板の表面または裏面の一方に配置され、複数の開口が設けられた開口付接地導体と、前記基板の表面または裏面の他方に配置され、前記開口付接地導体とは直流的に絶縁されて設けられた接地導体と、前記開口付接地導体と前記接地導体とに直流電圧を印加して前記誘電率可変材料の誘電率を変更制御する誘電率制御手段とを有する。前記導体パターンは、他の導体パターン、前記開口付接地導体および前記接地導体とは直流的に絶縁されて設けられたものである。このストリップ線路型伝送路を用いたアンテナは、前記基板、前記導体パターン、前記開口付接地導体および前記接地導体からなるストリップ線路型伝送路に電磁波を伝搬させ、前記誘電率制御手段によって放射電磁波の方向を制御するようにしたものである。
【0019】
また、上記のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナにおいて、伝搬する電磁波の位相定数をβ、前記導体パターンの配列周期寸法をa、円周率をπとしたときに、値βa/πが-1.0~1.0の範囲内になるようにすることができる。
【0020】
また、上記のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナにおいて、伝搬する電磁波の位相定数をβ、前記導体パターンの配列周期寸法をa、円周率をπとしたときに、値βa/πが-1.0~0の範囲内になるようにすることができる。
【0021】
また、上記のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナにおいて、前記ストリップ線路型伝送路に伝搬させる電磁波の周波数を一定として、前記誘電率制御手段によって前記誘電率可変材料の誘電率を変更して放射電磁波の方向を制御することが好ましい。
【0022】
また、上記のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナにおいて、前記ストリップ線路型伝送路に伝搬させる電磁波の周波数を変更するとともに、前記誘電率制御手段によって前記誘電率可変材料の誘電率を変更して放射電磁波の方向を制御することもできる。
【0023】
また、上記のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナにおいて、それぞれの前記開口からの電磁波放射量を調整するために、前記開口の面積をそれぞれ異なるものとすることが好ましい。
【0024】
また、上記のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナにおいて、それぞれの前記開口からの電磁波放射量をほぼ一定とするように、前記開口の面積を電磁波入力端子に近いものほど小さく遠いものほど大きく設定することが好ましい。
【0025】
また、上記のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナにおいて、前記開口はスロット形状であることが好ましい。
【0026】
また、上記のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナにおいて、前記開口の長さ寸法と幅寸法の一方または両方を順次変更して、前記開口の面積をそれぞれ異なるものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0028】
ストリップ線路型右手/左手系複合線路では、基板の一部あるいは全部に誘電率可変材料を用い、接地導体間に直流電圧を印加することで、基板の誘電率を容易に変更することができ、伝送路の分散特性などの伝送特性を容易に変更制御することができる。また、伝搬波の放射を生じさせず、放射による損失のない信号伝送およびエネルギー伝送を行うこと可能である。そして、左手系伝送帯域と右手系伝送帯域との間にバンドギャップのない右手/左手系複合線路を実現できる。さらに、表面および裏面の接地導体を誘電率可変材料の誘電率制御用の電極として用いることで、直流電圧印加のための余分な電極が不要となり、構造が簡単になると同時に設計も容易となる。
【0029】
ストリップ線路型左手系線路では、基板の一部あるいは全部に誘電率可変材料を用い、接地導体間に直流電圧を印加することで、基板の誘電率を容易に変更することができ、伝送路の分散特性などの伝送特性を容易に変更制御することができる。また、伝搬波の放射を生じさせず、放射による損失のない信号伝送およびエネルギー伝送を行うこと可能である。さらに、表面および裏面の接地導体を誘電率可変材料の誘電率制御用の電極として用いることで、直流電圧印加のための余分な電極が不要となり、構造が簡単になると同時に設計も容易となる。
【0030】
ストリップ線路型伝送路を用いたアンテナでは、接地導体間に直流電圧を印加して基板の誘電率を変更制御し、放射ビームの放射角度を広範囲に変更制御することが可能である。また、放射電磁波の周波数を一定にして放射角度を変更制御できるため、放射角度を変更するための制御回路が簡単化されるとともに、送受信回路も簡単化される。さらに、基板両面の接地導体を誘電率可変材料の誘電率制御用の電極として用いることで、直流電圧印加のための余分な電極が不要となり、構造が簡単になると同時に設計も容易となる。
【0031】
ストリップ線路型伝送路を用いたアンテナでは、複数の開口の面積をそれぞれ異なるものとしてそれぞれの開口からの電磁波放射量を任意に調整することができる。
【0032】
ストリップ線路型伝送路を用いたアンテナでは、開口の面積を電磁波入力端子に近いものほど小さく遠いものほど大きく設定して、それぞれの開口からの電磁波放射量をほぼ一定とし、アンテナの指向特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】誘電率ε、透磁率μの正負領域と媒質との関係を示す図である。
【図2】従来のマイクロストリップ線路の構成を示す図である。
【図3】従来のストリップ線路の構成を示す図である。
【図4】従来のストリップ線路型右手/左手系複合線路の構成を示す図である。
【図5】本発明のストリップ線路型右手/左手系複合線路の構成を示す図である。
【図6】導体パターン4の単位セルの構成を示す拡大図である。
【図7】単位セルの等価回路を示す図である。
【図8】電磁界シミュレーションによる伝送線路の分散特性を示すグラフである。
【図9】本発明の伝送路を用いたアンテナの構成を示す図である。
【図10】誘電率を変化させたときの伝送線路の分散特性を示すグラフである。
【図11】位相定数βと放射角度θの関係を示すベクトル図である。
【図12】本発明のアンテナの放射指向特性を示すグラフである。
【図13】本発明のアンテナの動作を示す模式図である。
【図14】試作したアンテナの構成を示す図である。
【図15】伝送路を伝搬するエネルギーと放射量とを示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 基板
2 接地導体
3 接地導体
4 導体パターン
5 開口
6 入力ポート
7 誘電率制御回路
11 基板
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明のストリップ線路型右手/左手系複合線路と、ストリップ線路型左手系線路は、図5(A),(B)に示すような伝送路である。図5(A)は伝送路を構成する導体のみを表示した斜視図であり、図5(B)は伝送路の断面図である。
【0036】
この伝送路は、誘電率可変材料からなる厚さsの基板11の表面および裏面に接地導体2,3を配置し、基板1の中間面(厚さs/2の位置の面)に伝送路としての導体パターン4を設けたものである。この中間面は基板11の表面および裏面と平行な平面である。導体パターン4は、互いに絶縁された導体からなる単位セルを伝送方向に周期的に配列したものである。接地導体2,3および導体パターン4はそれぞれ導体(典型的には金属)からなるものである。
【0037】
基板11の上下両面を囲む接地導体2,3間は直流的には絶縁されている。そして、接地導体2,3間を十分大きな静電容量(図示せず)で接続する。その静電容量は、伝搬波の周波数の信号が十分な低インピーダンスで透過可能な容量とする。そして、接地導体2,3間に誘電率制御回路7から直流電圧を印加して誘電率可変材料である基板11の誘電率を変更制御する。基板11の誘電率を変更することによって、伝送路の分散特性などの伝送特性を容易に変更制御することができる。
【0038】
なお、ここでは基板11の全体を誘電率可変材料で形成したものを示しているが、基板11の一部を誘電率可変材料としてもよい。一部だけを誘電率可変材料としても、誘電率可変材料の誘電率を変更することで基板11全体の等価的な誘電率を変更することができるので、前述の説明と同様に機能する。誘電率可変材料としては、印加する電界によって誘電率が変化する液晶などが使用できる。この伝送路を漏波アンテナとして使用する場合には、片側(例えば、上面側)の接地導体にスロット状の複数の開口を設ける。
【0039】
図6は、導体パターン4の単位セルの構成を示す拡大図である。各単位セル同士は直流的に絶縁されている。この導体パターンはビアを用いない構成となっている。すなわち、導体パターン4の各単位セルは、接地導体2,3と直流的に絶縁されている。ビアを用いない伝送路とする理由は、ビアを用いた伝送路の場合には、上下の接地導体が直流的に接続されてしまい、上下の接地導体間に誘電率変更用の直流電圧を印加することができないからである。
【0040】
図6の単位セルは、隣り合う単位セル間に静電容量を挿入するための電極となる導体ストリップAと、左右2片の導体ストリップAを互いに接続する導体ストリップBを有する。また、導体ストリップBの中央部には横方向(図の上下方向)に延びる導体ストリップCが接続されており、その導体ストリップCの先端側は幅広の導体ストリップDに接続されている。
【0041】
導体ストリップDは接地導体2,3との間に大きな静電容量をもたらし、導体ストリップCの先端側が接地導体2,3に接続されたのと同様の効果を得る。導体ストリップCは接地導体との間に挿入されたインダクタンスとなる。導体ストリップDにより、ビアを用いることなく接地導体との間にインダクタンスを挿入でき、伝送路を左手系線路として機能させることができる。
【0042】
図7は単位セルの等価回路を示す図である。図7(A)には単位セルの各部分と等価素子とを重ねて表示している。図7(B)には各等価素子を接続した等価回路を示している。この等価回路において、静電容量CおよびインダクタンスLが左手系線路として機能するための等価素子要素である。
【0043】
このような単位セルを伝送方向に周期的に多数配列した伝送線路は、中間面の導体パターン4に電界が集中するストリップ線路型の伝送モードを基本モードとして持つものである。すなわち、図5に示すようなストリップ線路の伝送モードの電磁界は、図3(B)に示す電磁界と同様になり、伝送線路の表裏両面が接地導体2,3に囲まれているため本質的に放射を生じない。
【0044】
次に、図5に示すような伝送線路が、右手/左手系複合線路または左手系線路となる理由を説明する。右手/左手系複合線路では分散特性(位相定数βと角周波数ωとの関係)をうまく設計することでバンドギャップをなくし、狭い周波数範囲で位相定数βを負(左手系)から正(右手系)の値に連続的に変化させることができる。なお、伝搬波の波数は、伝送線路上のような固定した方向に伝搬する波に対しては通常「位相定数」と称されるので、本明細書でもそのように記す。
【0045】
図7(B)に示す単位セルの等価回路に基づいて、この周期構造線路の分散特性を計算すると、次の式1のようになる。
β=1/a・cos-1[1+Z(ω)Y(ω)] ・・・ 式1
ここで、βは伝搬波の位相定数、ωは伝搬波の角周波数、aは単位セルの配列周期寸法(配列ピッチ)である。また、Z(ω),Y(ω)は次式によって表される。
Z(ω)=1/2[1/(jωCL)+jωLR
Y(ω)=1/[jωLL+1/(jωCg)]+jωCR
【0046】
また、分散特性は、電磁界シミュレーション計算によっても求めることができる。図8は、本発明の単位セルの構造に基づいて周期境界条件を与え、三次元有限要素法による電磁界シミュレーション計算を行って得られた伝送線路の分散特性を示すグラフである。横軸は伝搬波の位相定数βを値(π/a)で規格化した値を示し、縦軸は周波数fを示す。なお、aは単位セルの配列周期寸法であり、πは円周率である。また、周波数fは角周波数ωとω=2πfの関係にある。伝搬波の分散特性は、図示のように滑らかな曲線となり、β=0においても連続な曲線となっている。
【0047】
なお、図8の分散特性は、単位セルの各部の寸法および伝送線路の諸数値が以下の値であるものとして計算したものである。ここで、各部の寸法を表す符号は図6に示されている符号である。
w=1.5mm,ph=2.4mm,cw=0.5mm,cl=6.0mm
l1=2.8mm,lw1=1.0mm,ll2=1.8mm,lw2=0.5mm
単位セルの配列周期:a=4.0mm
基板の厚さ:s=1.016mm
基板の比誘電率:εr=2.17
【0048】
一方、真空中の波数k0 は、角周波数ωおよび光速c0 と次の式2の関係にある。
0 =±ω/c0 ・・・ 式2
すなわち、波数k0 は、角周波数ωと比例関係にあり、周波数fとも比例関係にある。波数k0 と周波数fの関係が、図8に示された直線(Air line)である。この直線(Air line)に関しては、図8の横軸は波数k0 を値(π/a)で規格化した値となっている。
【0049】
図8で、-1≦(βa/π)<0である9.5GHzから10.2GHzの周波数範囲において、位相速度(ω/β)は負であり、分散曲線の傾きで表わされる群速度(∂ω/∂β)は正である。すなわち、位相速度と群速度の符号が逆転しており、これは伝搬波がバックワード波であることを示している。これはこの媒質が左手系特性を示す媒質であることの証拠である。
【0050】
また、0<(βa/π)≦+1である10.2GHzから11.8GHzの周波数範囲では、位相速度(ω/β)と群速度(∂ω/∂β)が共に正である。つまり、位相速度と群速度が同符号であり、この領域では媒質が右手系特性を示す。図8では、左手系(LH)と右手系(RH)のそれぞれの伝送周波数帯が周波数fγ=10.2GHzにおいて連続しており、それらの間にバンドギャップが存在しないことも分かる。
【0051】
このように、本発明のストリップ線路型右手/左手系複合線路は、伝搬波の位相定数βを値(π/a)で規格化した値が-1.0~1.0となる範囲で機能させることにより実現することができる。この右手/左手系複合線路では、左手系伝送帯域と右手系伝送帯域との間にバンドギャップが生じることなく連続的に伝送帯域を推移させることができる。また、基板11の全部または一部が誘電率可変材料からなるので、接地導体2,3に直流電圧を印加して基板11の誘電率を変更制御することで、伝送線路の伝送特性を広範囲に変更制御することができる。
【0052】
また、本発明のストリップ線路型左手系線路は、伝搬波の波数βを値(π/a)で規格化した値が-1.0~0となる範囲で機能させることにより実現することができる。また、基板11の全部または一部が誘電率可変材料からなるので、接地導体2,3に直流電圧を印加して基板11の誘電率を変更制御することで、伝送線路の伝送特性を広範囲に変更制御することができる。
【0053】
以上のように、本発明のストリップ線路型右手/左手系複合線路とストリップ線路型左手系線路は、基板の表裏両面を接地導体で囲んでいるため、伝搬波の波数(位相定数)が真空中の波数よりも小さくなる領域でも放射が発生しない。したがって、本発明の伝送線路では、放射による損失をなくして効率良く信号伝送を行うことができる。
【0054】
次に、本発明の伝送線路を用いたアンテナについて説明する。本発明のアンテナは、図9に示すように、本発明の伝送線路の片面側(ここでは上面側)の接地導体2に周期的に複数の開口5を設けている。また、開口5の面積を順次変化させることで放射量を容易に調整することができる。開口の形状は、スロット形状またはスリット形状でよく、あるいはこれらと同様な機能を有する形状でもよい。
【0055】
このアンテナの伝送線路としての他の構成は、図5に示すものと同様である。誘電率可変材料からなる厚さsの基板11の表面および裏面に開口付接地導体2および接地導体3を配置し、基板11の中間面(厚さs/2の位置の面)に伝送路としての導体パターン4を設けたものである。この中間面は基板11の表面および裏面と平行な平面である。導体パターン4は、互いに絶縁された導体からなる単位セルを伝送方向に周期的に配列したものである。開口付接地導体2、接地導体3および導体パターン4はそれぞれ導体(典型的には金属)からなるものである。
【0056】
そして、開口付接地導体2と接地導体3間を十分大きな静電容量(図示せず)で接続する。その静電容量は、伝搬波の周波数の信号が十分な低インピーダンスで透過可能な容量とする。直流的には、開口付接地導体2と接地導体3とは絶縁されており、それらの接地導体には誘電率制御回路7が接続されている。誘電率制御回路7により開口付接地導体2と接地導体3の間に直流電圧を印加し、誘電率可変材料である基板11の誘電率を変更制御する。
【0057】
図14は、実際に試作した本発明のアンテナの構成を示す図である。図14(A)は開口付接地導体2の構成を示し、図14(B)は導体パターン4の構成を示す。このアンテナの端部には放射電磁波を導入するための入力ポート6を設けている。開口付接地導体2に形成された開口5はスロット形状であり、長さ(図14における上下方向の寸法)が幅(図14における左右方向の寸法)よりも十分に大きい長方形形状である。そして、開口5の長さを入力ポート6に近いものほど短く、逆に遠いものほど長くしてある。
【0058】
このように開口5の長さを順次変更することにより、それぞれの開口5からの放射量をほぼ一定とし、かつサイドローブレベルをほぼ対称にすることができる。なお、ここでは開口5の長さを変化させているが、要するに開口5の面積を変化させれば放射量を調整することができる。開口5の面積を変化させるには、開口5の長さと幅のいずれか一方または両方を変化させればよい。すなわち、開口5の長さのみを変化させてもよく、開口5の幅のみを変化させてもよく、開口5の長さと幅の両方を変化させてもよい。
【0059】
図15に示すように、入力ポート6から入力され伝送路を伝搬されるエネルギーは、入力ポート6に近いほど大きく、入力ポート6から遠くなるほど小さくなる。アンテナの各開口からの放射量を一定とするには、各開口での放射の割合を入力ポート6に近いほど小さく、遠いほど大きくなるように設定すればよい。すなわち、各開口5の面積を、入力ポート6に近いものほど小さく、遠いものほど大きくすればよい。
【0060】
また、アンテナの用途によっては、各開口5からのエネルギー放射量を一定とすることなく、エネルギー放射量を各部で自由に制御する必要がある。その場合は、アンテナの開口面積を適宜設定することにより、開口からのエネルギー放射量を各部で自由に制御して所望のアンテナ特性とすることができる。
【0061】
ストリップ線路型左手系線路からなるアンテナと、ストリップ線路型右手/左手系複合線路からなるアンテナとの区別を、図8の分散特性を参照して説明する。分散曲線の傾きが常に正になるように分散曲線を描く場合(伝搬波のエネルギー伝搬方向を座標系の正方向とする場合)は、以下のように区別される。
(A)位相定数βが負となる周波数範囲で用いれば左手系線路のアンテナ
(B)位相定数βが正となる周波数範囲で用いれば右手系線路のアンテナ
(C)位相定数βが正負にまたがる領域で用いれば右手/左手系複合線路のアンテナ
【0062】
次に、本発明のアンテナとして利用する伝送線路の分散特性の変更による放射角度の変更制御について説明する。本発明の伝送線路を用いたアンテナは、誘電率可変材料からなる基板11の誘電率を変更することによって、広角度ビームスキャンが可能である。
【0063】
図9に示すように、伝送線路の開口付接地導体2に複数の開口5が形成されているので、これらの開口5から電磁波ビームが放射される。電磁波ビームの放射角度は、一般にブロードサイド方向(放射正面方向)からの角度で表す。本発明の伝送線路を用いたアンテナでは、ブロードサイド方向は伝送線路の伝送方向と直交する方向である。ビームの放射角度θは、伝搬波の位相定数βと真空中の波数k0 とから、次の式3によって求められる。この式3は、さらに式4のようになる。
π/2-θ=cos-1(β/k0 ) ・・・ 式3
θ=sin-1(β/k0 ) ・・・ 式4
【0064】
図10は、本発明の伝送線路の分散特性を、図8と同様の電磁界シミュレーション計算によって求めたものである。ただし、図10の分散特性は、基板11の比誘電率εr を2.62,2.80,3.10の3通りに変化させて求めている。εr =2.80の分散曲線が基準となるものであり実線で示している。εr =2.62の分散曲線は基準曲線より上方に示される点線で示す曲線である。εr =3.10の分散曲線は基準曲線より下方に示される点線で示す曲線である。真空中の波数k0 と周波数fの関係は、図8と同様に直線(Air line)で示されている。
【0065】
例えば、周波数fが9.1GHzの場合に着目する。この周波数f=9.1GHzは、図10において細実線で表示された水平の直線で示されている。基板11の比誘電率εr =2.80の場合には、β/k0 =0であり、式4より放射角度θ=0となる。すなわち、電磁波ビームは放射正面方向に放射する。εr =2.62の場合は、β/k0 =-1となり、放射角度θ=-π/2となる。また、εr =3.10の場合は、β/k0 =1となり、放射角度θ=π/2となる。すなわち、比誘電率εr を2.62から3.10まで変化させると、放射角度θは、伝送方向後方の-90度から伝送方向前方の90度まで、180度の範囲で変化することが分かる。
【0066】
図11は、位相定数βと真空中の波数k0 と放射角度θの関係を示すベクトル図である。位相定数βが-k0 とk0 の間の任意の値の場合の放射角度θは、このベクトル図からも分かる。真空中の波数k0 を一定として、位相定数βがβ1 ,β2 ,β3 と変化すると、ブロードサイド(放射正面方向)からの角度であるビームの放射角度θはそれぞれθ1 ,θ2 ,θ3 と変化する。同様に、位相定数βの-k0 とk0 の間の任意の値に対して放射角度θを求めることができる。
【0067】
図13は、本発明のアンテナの動作を示す模式図である。放射される電磁波は入力ポート6(図14参照)から入力され、図13に示すようにアンテナを構成する伝送路を伝搬する。伝送路の基板11の誘電率を変更することにより、ビームの放射角度θを、伝搬方向に対して後方となる-90°≦θ<0°の範囲から、伝搬方向に対して直交するθ=0°、伝搬方向に対して前方となる0°<θ≦90°の範囲まで、広範囲に変化させることができる。
【0068】
本発明のアンテナでは、誘電率の変化により伝送路の分散特性が大きく変化するため、原理的にわずかな誘電率の変化で放射角度θを大きく変化させることができる。例えば、誘電率可変材料を液晶として、比誘電率εr を2.62~3.10の範囲で変化させたときも、-90°≦θ≦90°にわたる広角度のビーム走査が可能となっている。また、放射電磁波の周波数を一定にして放射角度θを変更制御できるため、ビームスキャンのための制御回路が簡単化されるとともに、送受信回路も簡単化される。
【0069】
図12は、本発明のアンテナの放射指向特性を示すグラフである。このグラフは本発明のアンテナに対してモーメント法に基づく電磁界解析により得られた放射パターンの計算結果を極形式で示したものである。スロット状の開口の数を9個とし、接地導体2,3に印加した直流電圧を変化させて誘電率可変材料の比誘電率εr が2.62から3.10まで変化した場合を想定した。また、バンドギャップが完全になくなるように伝送路の構造を調整している。
【0070】
図12のグラフには、比誘電率εr が2.62,2.70,2.75,2.80,2.90,2.95,3.10の各値に対する放射パターンを示している。ただし、各放射パターンの強度は、ブロードサイドの中心強度を0dBとする規格化利得として表している。このグラフは、半径軸が規格化利得を表し、角度軸が放射角度を表している。
【0071】
ストリップ線路型右手/左手系複合線路では分散特性(位相定数βと角周波数ωとの関係)をうまく設計することでバンドギャップをなくし、狭い周波数範囲で位相定数βを負(左手系)から正(右手系)の値に急激に変化させることができる。このため、放射電磁波の周波数を変更制御してビームの放射角度θを前方および後方の両方向に広角度に振ることができる。図8を参照すると、周波数fをfx1~fx2の範囲で変化させることにより、ビームの放射角度θを後方から前方まで変更できることが分かる。
【0072】
本発明のアンテナでは、放射電磁波の周波数を一定にして放射角度θを変更制御できるため、放射電磁波の周波数を変更する必要はない。ただし、基板の誘電率の変更と放射電磁波の周波数変更を併用することもできる。特に、誘電率可変材料の誘電率変更範囲が小さい場合などには、誘電率変更と放射電磁波の周波数変更を併用して、放射角度θを変更範囲を拡大することができる。この場合でも、周波数変更のみによる放射角度制御に比べれば、誘電率変更を併用することで放射電磁波の周波数の変更範囲が小さくて済むという利点がある。
【0073】
一方、従来の漏波アンテナでは、導波管を利用した方式、周期的擾乱体を付加して空間高調波成分を利用した方式や線路の高次伝播モードを利用した方式などがある。いずれも放射電磁波の周波数を変更してビームの放射角度θを変更するものである。このため、実用的な周波数可変範囲(例えば、比帯域約10%の範囲)では、真空中の波数k0 の変化に対して位相定数βの変化を大きく取ることができず、β/k0 を大きく変化させることはできない。
【0074】
このため放射角θの変化は非常に限られたものとなる。さらに、周波数を変化させて位相定数βを正から負へと連続的に変化させことはできず、その結果ビームの放射方向は前方のみあるいは後方のみに限られるものであった。これに対し、本発明の伝送路を用いたアンテナにおける放射ビームの放射角度θの変更可能範囲は、従来のものに比べて大幅に広くなっている。
【0075】
また、周期的な複数の開口5の面積を全て同じにすると、入力ポート6に近い方の開口5からの放射エネルギーが多くなり、入力ポート6から遠い開口5からの放射エネルギーが少なくなってしまう。そこで、図14に示すように、本発明のアンテナでは、複数の開口5の面積を入力ポート6に近い方から遠い方へ向かって順次変化させて設定し、開口5の面積を変化させることで電磁波の放射量を容易に調整することができるようにした。
【0076】
また、アンテナの用途によっては、各開口5からのエネルギー放射量を一定とすることなく、エネルギー放射量を各部で自由に制御する必要がある。その場合は、アンテナの開口面積を適宜設定することにより、開口からのエネルギー放射量を各部で自由に制御して所望のアンテナ特性とすることができる。例えば、アンテナ面上の放射の割合を適正に設定すると、サイドローブの値を一定に低く抑えるチェビシェフ型の放射指向特性とすることもできる。
【0077】
以上のように、本発明のストリップ線路型右手/左手系複合線路およびストリップ線路型左手系線路は、誘電率可変材料である基板11の誘電率を変更することによって、伝送路の分散特性などの伝送特性を容易に変更制御することができる。また、誘電率の変更は接地導体2,3間への直流電圧の印加によって容易に行うことができる。
【0078】
そして、本発明のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナは、放射ビームの放射角度を広範囲に変更することが可能である。また、放射電磁波の周波数を一定にして放射角度を変更制御できるため、放射角度を変更するための制御回路が簡単化されるとともに、送受信回路も簡単化される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のストリップ線路型右手/左手系複合線路およびストリップ線路型左手系線路は、マイクロ波の伝送線路、結合器、共振器、分配器等に応用できる。また、本発明のストリップ線路型伝送路を用いたアンテナは、周波数を一定として放射ビームの方向を制御することができ、自動車や歩行用ロボットの障害物検知用のアンテナとして用いることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14