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明細書 :熱電変換素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5126723号 (P5126723)
公開番号 特開2011-077536 (P2011-077536A)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発行日 平成25年1月23日(2013.1.23)
公開日 平成23年4月14日(2011.4.14)
発明の名称または考案の名称 熱電変換素子及びその製造方法
国際特許分類 H01L  35/14        (2006.01)
H01L  35/18        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
FI H01L 35/14
H01L 35/18
H01L 35/34
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願2010-261107 (P2010-261107)
分割の表示 特願2004-371428 (P2004-371428)の分割、【原出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
出願日 平成22年11月24日(2010.11.24)
審査請求日 平成22年11月25日(2010.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】小柳 剛
【氏名】岸本 堅剛
審査官 【審査官】羽鳥 友哉
参考文献・文献 特開2001-114508(JP,A)
特開2001-048517(JP,A)
調査した分野 H01L 35/14
H01L 35/18
H01L 35/34
特許請求の範囲 【請求項1】
下記組成式(1)で表されるクラスレート化合物の焼結体よりなる熱電変換素子。
46-X (但し、0<x≦10) (1)
但し、Aは7B族元素、Bは5B族元素、Cは4B族元素である。
【請求項2】
請求項1記載のクラスレート化合物において、Bはアンチモンであることを特徴とする請求項1記載の熱電変換素子。
【請求項3】
請求項1記載のクラスレート化合物において、Cはゲルマニウム又はスズであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱電変換素子。
【請求項4】
請求項1記載のクラスレート化合物において、Aはヨウ素であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の熱電変換素子。
【請求項5】
クラスレート化合物を構成するA,B及びCの各成分元素をメカニカルアロイング工程において、混合し、その後焼結することを特徴とする請求項1乃至4記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のメカニカルアロイング工程において、各成分のうち2種又は3種の元素よりなる化合物を含む原料を用いることを特徴とする請求項5記載の熱電変換素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、クラスレート化合物よりなる熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼーベック効果を利用した熱電変換素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することを可能とする。その性質を利用し、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、熱電変換素子は、環境問題に配慮した省エネルギー技術として注目されている。
【0003】
ゼーベック効果を利用した熱電変換素子に用いられる熱電変換材料の性能指数ZTは、下記式(A)で表すことができる。
ZT=ασT/κ(A)
ここで、α、σ、κ及びTは、それぞれ、ゼーベック係数、電気伝導度、熱伝導度及び測定温度を表す。
【0004】
上記式(A)から明らかなように、熱電変換素子の性能を向上させるためには、素子に用いられる材料のゼーベック係数、電気伝導度を大きくすること、及び、熱伝導度を小さくすることが重要である。
【0005】
一方、性能指数ZTにおけるZは、有効質量(m)、移動度(μ)及び熱伝導度(κ)との間に式(B)で表される比例関係を有する。
Z∝m*3/2μ/κ(B)
上記式(B)から、Zを向上させるためには有効質量と移動度とを向上させることが重要であることがわかる。
【0006】
高い性能指数を示す熱電変換材料として、従来から、ビスマス・テルル系材料、シリコン・ゲルマニウム系材料、鉛・テルル系材料などが知られている。さらに、アルミニウムをドープした酸化亜鉛粉を成形、焼成してなる熱電変換材料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2002-118296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規なクラスレート化合物よりなる熱電変換素子を提供することを目的とする。さらに本発明は、新規な熱電変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、次の各発明を包含する。
【0010】
本願の請求項1に記載の発明は、下記組成式(1)で表されるクラスレート化合物の焼結体よりなる熱電変換素子である。
46-X (但し、0<x≦10) (1)
但し、Aは7B族元素、Bは5B族元素、Cは4B族元素である。
【0011】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載のクラスレート化合物において、Bはアンチモンであることを特徴とする請求項1記載の熱電変換素子である。
【0012】
同様に請求項3に記載の発明は、請求項1記載のクラスレート化合物において、Cはゲルマニウム又はスズであることを特徴とする請求項1又は2記載の熱電変換素子である。
【0013】
また請求項4に記載の発明は、請求項1記載のクラスレート化合物において、Aはヨウ素であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の熱電変換素子である。
【0014】
更に請求項5に記載の発明は、クラスレート化合物を構成するA,B及びCの各成分元素をメカニカルアロイング工程において、混合し、その後焼結することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱電変換素子の製造方法である。
【0015】
更にまた、請求項6に記載の発明は請求項5記載のメカニカルアロイング工程において、各成分のうち2種又は3種の元素よりなる化合物を含む原料を用いることを特徴とする請求項5記載の熱電変換素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新規クラスレート化合物を用いた熱電変換効率の高い熱電変換素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1~3で求められたクラスレート化合物のX線回折パターンを示す図である。
【図2】実施例4で求められたクラスレート化合物のX線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、新規な組成を有するクラスレート化合物及び該クラスレート化合物の新規な製造方法よりなる熱電変換素子である。

【0019】
以下に順次それらを詳細に説明する。
〈クラスレート化合物〉
本発明で用いられるクラスレート化合物は下記組成式(1)で表わされる。
46-X (但し、0<x≦10) (1)
但し、Aは周期律表の7B族元素、Bは5B族元素、Cは4B族元素である。

【0020】
組成式(1)におけるxが上記範囲外であると、クラスレート化合物が金属的な特性を示すようになり、熱電変換素子として適さなくなることがある。クラスレート化合物の原子濃度は約5×1022cm-3である。クラスレート化合物(例えば、ISn46など)の単位格子の構成原子は54個なので、54個中1個がアクセプタ(ドナー)原子であれば、キャリア濃度はおよそ1×1021cm-3となる。x<6、及びx>10の範囲ではキャリア密度が2×1021cm-3よりも大きくなり、金属的な特性を示すようになる。

【0021】
クラスレート化合物1において、xの好ましい範囲は7≦x≦9である。

【0022】
ここで、Aはハロゲン元素であり、特に塩素、臭素及びヨウ素が好適に用いられる。なかでも、特にヨウ素が好ましい。
またBは5族元素であり、特にヒ素又はアンチモンが好ましい。更にCは4B族元素であり、ケイ素、ゲルマニウム及びスズが好ましい。なかでも、スズが特に好適に用いられる。

【0023】
すなわち、好適に製造することが可能な組成は、次の組成式(2)及び(3)で示すことができる。
Si46-x 又は AGe46-x (0<x≦10) (2)
AsSn46-x 又は ASbSn46-x (0<x≦10) (3)
本発明に用いられるクラスレート化合物の製造において、メカニカルアロイング工程を少なくとも有することを必須とする。その場合、各原料は、それぞれ単体として混合してもよいし、また、その構成々分同士の化合物を使うこともできる。
メカニカルアロイングの動作時間としては、1h~200hが好ましく、20~100hがさらに好ましい。粉砕容器内のガス雰囲気としては、成分原料が気体元素である場合は、当該気体雰囲気、成分原料が固体の場合には、不活性ガスと水素との混合気体雰囲気であることが好ましい。不活性ガスと水素との混合気体を用いることにより、原材料又は合成物の酸化を防止する効果及び酸化物を還元して除去する効果が得られる。

【0024】
前記不活性ガスとしては、He,Ne,Ar等を用いることができ、これらの中でもArが好ましい。不活性ガス中の水素の含有量としては、5~10%が好ましい。
<熱電変換素子>
本発明の熱電変換素子は、本発明のクラスレート化合物を焼結することによって得られる。

【0025】
焼結工程においては、放電プラズマ焼結法、ホットプレス焼結法、熱間等方圧加圧焼結法等を用いて焼結することができる。

【0026】
放電プラズマ焼結法を用いる場合の焼結条件としては、温度は300~950℃が好ましく、300~700℃がより好ましい。焼結時問は、20~120分が好ましく、30~90分がより好ましい。圧力は、25~40MPaが好ましく、30~40MPaがより好ましい。

【0027】
本発明は、X線回折により確認することができる。具体的には、焼成後のサンプルがX線回折によりクラスレート相のみを示すものであれば、クラスレート化合物が合成されたことが確認できる。
(実施例)
以下、本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
〈熱電変換素子1(IGe38Sb)の製造〉
Ge38Sbの組成比になるように、8.28グラムのGeと4.02グラムの沃化アンチモンSbIと1.95グラムのSbを秤量した。それぞれは500μm以下に粉砕されている。それをメカニカルアロイング用の容積45ccのステンレス容器に入れた。同時に、直径10mmの窒化珪素のボール11個を入れた。それを10%水素希釈のアルゴン雰囲気中のグローブボックスで蓋を閉めた。それをグローブボックスから取り出し、フリッチュ社製遊星型ボールミル機P-7にセットした。スピード10で100h運転した。その後、粉砕粉を取り出し、それを放電プラズマ焼結装置を使って焼結した。焼結条件は、焼結温度600℃、雰囲気アルゴン0.6気圧、焼結保持時間30minとした。以上の工程により、熱電変換素子1を製造した。X線回折測定を行い、その回折パターンをシミュレーションした理論値を比較した結果、熱電変換素子1はクラスレート構造のIGe38Sbになっていることを確認した。その回折パターンをシミュレーション結果と合わせて、図1に示す。
【実施例2】
【0029】
〈熱電変換素子2(IGe38Sb)の製造〉
Ge38Sbの組成比になるように、8.28グラムのGeと3.05グラムのIと2.92グラムのSbを秤量した。それぞれは500μm以下に粉砕されている。それをメカニカルアロイング用の容積45ccのステンレス容器に入れた。同時に、直径10mmの窒化珪素のボール11個を入れた。それを10%水素希釈のアルゴン雰囲気中のグローブボックスで蓋を閉めた。それをグローブボックスから取り出し、フリッチュ社製遊星型ボールミル機P-7にセットした。スピード10で100h運転した。その後、粉砕粉を取り出し、それを放電プラズマ焼結装置を使って焼結した。焼結条件は、焼結温度600℃、雰囲気アルゴン0.6気圧、焼結保持時間30minとした。以上の工程により、熱電変換素子2を製造した。X線回折測定を行い、その回折パターンをシミュレーションした理論値を比較した結果、熱電変換素子2はクラスレート構造のIGe38Sbになっていることを確認した。その回折パターンをシミュレーション結果と合わせて、図1に示す。
【実施例3】
【0030】
〈熱電変換素子3(IGe38Sb)の製造〉
Ge38Sbの組成比になるように、7.84グラムのGeと2.92グラムのSbと3.48グラムの沃化ゲルマニウムGeIを秤量した。それぞれは500μm以下に粉砕されている。それをメカニカルアロイング用の容積45ccのステンレス容器に入れた。同時に、直径10mmの窒化珪素のボール11個を入れた。それを10%水素希釈のアルゴン雰囲気中のグローブボックスで蓋を閉めた。それをグローブボックスから取り出し、フリッチュ社製遊星型ボールミル機P-7にセットした。スピード10で100h運転した。その後、粉砕粉を取り出し、それを放電プラズマ焼結装置を使って焼結した。焼結条件は、焼結温度600℃、雰囲気アルゴン0.6気圧、焼結保持時間30minとした。以上の工程により、熱電変換素子3を製造した。X線回折測定を行い、その回折パターンをシミュレーションした理論値を比較した結果、熱電変換素子3はクラスレート構造のIGe38Sbになっていることを確認した。その回折パターンをシミュレーション結果と合わせて、図1に示す。
【実施例4】
【0031】
〈熱電変換素子4(ISn38Sb)の製造〉
Sn38Sbの組成比になるように、11.11グラムのSnと2.40グラムのSbと2.50グラムのIを秤量した。それぞれは500μm以下に粉砕されている。それをメカニカルアロイング用の容積45ccのステンレス容器に入れた。同時に、直径10mmの窒化珪素のボール11個を入れた。それを10%水素希釈のアルゴン雰囲気中のグローブボックスで蓋を閉めた。それをグローブボックスから取り出し、フリッチュ社製遊星型ボールミル機P-7にセットした。スピード10で50h運転した。その後、粉砕粉を取り出し、それを放電プラズマ焼結装置を使って焼結した。焼結条件は、焼結温度340℃、雰囲気アルゴン0.6気圧、焼結保持時間30minとした。以上の工程により、熱電変換素子4を製造した。X線回折測定を行い、その回折パターンをシミュレーションした理論値を比較した結果、熱電変換素子4はクラスレート構造のISn38Sbになっていることを確認した。その回折パターンをシミュレーション結果と合わせて、図2に示す。
図面
【図1】
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【図2】
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