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明細書 :静電アクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5283239号 (P5283239)
公開番号 特開2011-259698 (P2011-259698A)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
公開日 平成23年12月22日(2011.12.22)
発明の名称または考案の名称 静電アクチュエータ
国際特許分類 H02N   1/00        (2006.01)
FI H02N 1/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 13
出願番号 特願2011-171655 (P2011-171655)
分割の表示 特願2006-143875 (P2006-143875)の分割、【原出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
出願日 平成23年8月5日(2011.8.5)
審査請求日 平成23年8月10日(2011.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】南 和幸
審査官 【審査官】服部 俊樹
参考文献・文献 特開平06-217561(JP,A)
特開平05-344753(JP,A)
特開2005-216983(JP,A)
調査した分野 H02N 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に、一端が出力部と接続され、且つ両端部或いはこれら端部と一体化した部材を介して静電吸着用電極がそれぞれ設けられた弾性部材と第1電極及び第2電極よりなる一対の駆動用電極とが載置されており、該一対の駆動用電極は、電圧を印加することにより、静電引力を生じ相対的に距離を狭め前記弾性部材に歪みを与えエネルギーが蓄積される如く構成されており、更に基板上には前記静電吸着用電極に対向する位置にそれぞれ対極が設けられ、各電極には、静電気力を発生する手段(電圧印加手段)が接続されており、該駆動用電極に電圧を印加し弾性部材に歪みを与える時は、出力部が接続された弾性部材の端部にある静電吸着用電極とその対極間に電圧が印加され、出力部が接続された弾性部材の端部が基板に吸着固定され、他端の静電吸着用電極は解放された状態であり、また該駆動用電極の電圧が解放され弾性部材の歪みが復元する時は、出力部が接続している側の電圧は解放され他端の静電吸着用電極とその対極間に電圧が印加され吸着固定される機構を備えることを特徴とする静電アクチュエータ。
【請求項2】
基板上に、基板に沿って全長が伸長又は縮むと共にエネルギーを蓄積し得る弾性部材と、該弾性部材の一端(後方端)には、出力部が接続されており、且つ弾性部材の両端(後方端と先方端)あるいはこれと一体になった部材には、それぞれ第1の静電吸着用電極(後方端側)と第2の静電吸着用電極(先方端側)とが固定されており、且つ該弾性部材に歪を与えるための第1及び第2電極からなる駆動用の可動電極が存在するとともに、この少なくとも一方が該弾性部材に接続されており、各静電吸着用電極に対向して、それぞれ対極が基板上に設置されており、更に各電極及び対極間には、それぞれ独立して電圧を印加する手段が備えられた請求項1記載の静電アクチュエータ。
【請求項3】
前記弾性部材は、非線形ばねよりなることを特徴とする請求項1又は2記載の静電アクチュエータ。
【請求項4】
前記弾性部材が板ばねであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の静電アクチュエータ。
【請求項5】
前記弾性部材が弓幹状ばねであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の静電アクチュエータ。
【請求項6】
前記駆動用電極である第1電極及び第2電極が共に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の静電アクチュエータ。
【請求項7】
前記駆動用電極である第1電極及び第2電極のうち、一方が基板に固定され、他方が移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の静電アクチュエータ。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間の静電引力を効率良く機械的仕事に変換することができる超小型の静電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁アクチュエータの場合には電流を流し放しの状態となるのに対し、静電アクチュエータの場合には、初期の充電時のみに電流が流れるため省エネルギーにも寄与するものである。
【0003】
また、静電アクチュエータは、半導体製造技術を適用した、いわゆるMEMS(Micro Electro-Mechanical System)技術を適用することによって、低コスト、高精度の製作が期待できる。
【0004】
従来の平行平板型静電アクチュエータは、固定電極Kと可動電極Mとを対向配置し、両者に電圧を印加して電極間隔を小さくする方向の静電駆動力を得るものである。この場合の静電駆動力Feはεを比誘電率、真空の誘電率をε、dを電極間隔、Sを対向電極面積、Vを印加電圧とすれば、
Fe=ε・ε・S・V/2d ・・・・(1)
として表される。
【0005】
上記(1)式より明らかなように、静電引力は電極間隔が小さくなるにつれて、急激に増加していく特性を持っている。従来は静電引力を仕事に変換することができるポテンシャルを持ちながら、初期発生力が弱く、実際には十分な仕事量を取り出すことが出来ない問題を有していた。
【0006】
そして、変位量が極めて小さいためその適用範囲や用途が制限されていた。そこで、特許文献1では、大きな変位量を発生させることを目的として、ラチェット機構を含む板ばねのばね力を利用した静電式アクチュエータが開示されている。
【0007】
即ち、可動部材と、板ばねを持ち前記可動部材を第1の方向に変位させる1対の第1駆動部材と、板ばねを持ち前記可動部材を第2の方向に変位させる1対の第2駆動部材とを固定部材上に配置し、前記各駆動部材と固定部材との静電力を利用して可動部材を双方向に変位可能とし、前記固定部材と可動部材との間の静電力を利用して一定位置に保持させる静電式アクチュエータが開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1の装置では、駆動力が、可動部材を支持する部材の変形(弾性エネルギー)に消費されているため、外部に取り出せる力はどんどん弱くなるものである。そして、単に大きな変位を得ようとしたものであり、駆動の為の発生力に関しては考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平5-220680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、ばね、好ましくは非線形ばね、非線形伸び縮みばね、ゴム等の弾性体を支持体としてだけでなく、機械的エネルギーを蓄積する部材として利用することにより、静電引力による仕事を弾性エネルギーに変換してから仕事をさせることを可能とし、静電引力を効率良く機械的仕事に変換でき、大きな力と仕事を生成する事ができる小型の静電アクチュエータを提供することである。更に垂直方向の静電引力をばねに蓄え、出力時は静電引力の働く方向と直交する方向への取り出しを可能とし、省スペース化を図ることを目的とする。より詳しくは、第1電極と、前記第1電極に対向し、所定の間隔をもって配設された第2電極と、よりなる駆動用電極、該電極は、対向する方向に相対的に移動可能であり、且つ、前記第1電極と前記第2電極との間に静電引力を生成させるための静電気力生成手段と、前記第1電極と前記第2電極との間の静電引力による仕事を弾性エネルギーとして蓄積するための弾性部材と、前記弾性部材の前記弾性エネルギーの開放により駆動される出力部と、を備えた動作部と、前記動作部が表面上に配置された基板と、前記基板表面に沿っての前記動作部と前記基板との間欠的な相対的移動を制御する制御手段と、を備える静電アクチュエータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、請求項1に係る発明は、基板上に、一端が出力部と接続され、且つ両端部或いはこれら端部と一体化した部材を介して静電吸着用電極がそれぞれ設けられた弾性部材と第1電極及び第2電極よりなる一対の駆動用電極とが載置されており、該一対の駆動用電極は、電圧を印加することにより、静電引力を生じ相対的に距離を狭め前記弾性部材に歪みを与えエネルギーが蓄積される如く構成されており、更に基板上には前記静電吸着用電極に対向する位置にそれぞれ対極が設けられ、各電極には、静電気力を発生する手段(電圧印加手段)が接続されており、該駆動用電極に電圧を印加し弾性部材に歪みを与える時は、出力部が接続された弾性部材の端部にある静電吸着用電極とその対極間に電圧が印加され、出力部が接続された弾性部材の端部が基板に吸着固定され、他端の静電吸着用電極は解放された状態であり、また該駆動用電極の電圧が解放され弾性部材の歪みが復元する時は、出力部が接続している側の電圧は解放され他端の静電吸着用電極とその対極間に電圧が印加され吸着固定される機構を備えること特徴とする静電アクチュエータである。
請求項2に係る発明は、基板上に、基板に沿って全長が伸長又は縮むと共にエネルギーを蓄積し得る弾性部材と、該弾性部材の一端(後方端)には、出力部が接続されており、且つ弾性部材の両端(後方端と先方端)あるいはこれと一体になった部材には、それぞれ第1の静電吸着用電極(後方端側)と第2の静電吸着用電極(先方端側)とが固定されており、且つ該弾性部材に歪を与えるための第1及び第2電極からなる駆動用の可動電極が存在するとともに、この少なくとも一方が該弾性部材に接続されており、各静電吸着用電極に対向して、それぞれ対極が基板上に設置されており、更に各電極及び対極間には、それぞれ独立して電圧を印加する手段が備えられた請求項1記載の静電アクチュエータである。
請求項3に係る発明は、前記弾性部材は非線形ばねよりなることを特徴とする請求項1又は2記載の静電アクチュエータである。
請求項4に係る発明は、前記弾性部材が板ばねであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の静電アクチュエータである。
請求項5に係る発明は、前記弾性部材が弓幹状ばねであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の静電アクチュエータである。
請求項6に係る発明は、駆動用電極である第1電極及び第2電極が共に移動可能に構成されていることを特許とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の静電アクチュエータである。
更に、請求項7に係る発明は、前記駆動用電極である第1電極及び第2電極のうち一方が基板に固定され、他方が移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の静電アクチュエータである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により提供される静電アクチュエータによれば、静電引力による仕事をばね、特に非線形伸び縮みばね等を利用した弾性エネルギーに変換してから仕事をさせることが出来るため、静電引力を効率良く機械的仕事に変換でき、大きな力と仕事を生成する事ができ、しかも小型に作ることが可能である。
【0013】
上記(1)式において、電極面積を1mm、電圧10V、誘電率を空気の値にした場合の、電極間隔と仕事量との関係を図1に示す。通常の構造の静電アクチュエータにおいては、図1のように例えば初期電極間隔d=5μmの時には初期発生力が1.77×10-5Nであり、これ以上の負荷は動かせないからこれが利用できる最大の発生力となる。従ってこの力でdが減少する方向にアクチュエータが動くので、静電アクチュエータだけでできる仕事量W1は、領域W1で示される。一方、本発明による静電アクチュエータにおける静電引力から弾性エネルギーへの変換を用いた場合には、たとえばd=0.2μmからdが増加する方向にアクチュエータが動くことになるので、d=0.4μmまで動かす場合には2.77×10-3Nの負荷、d=1μmまで動かすなら4.43×10-4Nの負荷のものを動かすことが出来る。従って、その仕事量は、電極間隔の変化に応じて領域W2、領域W3のようになる。即ち、仕事量はW2/W1=4.16倍、W3/W1=6.5倍となり、静電引力のみよりかなり大きな仕事をすることが出来る。また、発生力は、それぞれ25倍、156倍にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る静電アクチュエータの発生力を示す図である。
【図2】本発明に係る第1実施例の静電アクチュエータ、及びその動作を示す図である。
【図3】本発明に係る第2実施例の静電アクチュエータ、及びその動作を示す図である。
【図4】本発明に係る第3実施例の静電アクチュエータ、及びその動作を示す図である。
【図5】本発明に係る第4実施例の静電アクチュエータ、及びその動作を示す図である。
【図6】本発明に係る第5実施例の静電アクチュエータ、及びその動作を示す図である。
【図7】本発明に係る第6実施例の静電アクチュエータ、及びその動作を示す図である。
【図8】本発明に係る第7実施例の静電アクチュエータに使用される非線形板ばねを説明する図である。
【図9】本発明に係る第8実施例の静電アクチュエータに使用される非線形板ばねの例を示す図である。
【図10】本発明に用いられる非線形板ばねの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特徴は、駆動用電極による静電引力による仕事を弾性部材の歪により蓄積し、弾性エネルギーとして効率よく機械的仕事に変換するものである。この場合、弾性部材としては、ばねやゴムなどの弾性体であり、特にばね中でも非線形ばねが好ましい。非線形ばねとは、変形(変位)量に従ってばね定数が変化するよう変形形状、板厚変化、ばね幅変化、複数のばねの組み合わせ等により実現出来る。図10のようにパンタグラフ式リンク機構などを利用して非線形伸び縮みばねを接続することも可能である。
本発明の基本的構造は、基板に載置された第1及び第2の2枚の駆動用電極が存在すること。勿論、基板上に載置とは、基板の表面上又は下に接するのみならず、その表面の空間中に所定の間隔で平行になるよう配設されることを意味する。すなわち、該駆動用電極の一対は、基板に対して垂直又は平行に所定の間隔をもって存在していることを意味する。
また、該駆動用電極間に弾性部材が配設されていること、該弾性部材の両端部には、静電吸着用電極が存在していること、但し、図2に示す如く出力部が、弾性部材に一方の駆動用電極が一体に構成されている場合は出口部側の静電吸着用電極は駆動用電極と一体化させることができる。
以下の実施例に示す通り、本発明の特徴は、駆動用電極による静電引力により該電極を移動させ、その力により、弾性部材、好ましくは非線形ばねを歪ませ、エネルギーを蓄積すると共に該弾性部材両端間の距離に変化を与え、該弾性部材に負荷された電圧が解放されることにより、歪として蓄えられたエネルギーが開放され弾性部材は元の形状に戻る。その時の弾性部材の長さの復元力により、出力部を駆動するのである。具体的には、弾性部材の両端に吸着電極を備え、また該弾性部材を支える基板には、前記弾性部材の各端部に存在する静電吸着用電極(第1及び第2)に対応する位置に、それぞれ対極となる電極を備えている。場合によっては、該対極は、一体化されていてもよいが、第2静電吸着用電極に対する対極は独立していることが好ましい。
また、該弾性部材に歪を与えるための駆動用電極並びに静電吸着用電極に対して静電気力発生手段が接続されているのである。
本発明のアクチュエータの作動方法は、例えばまず、弾性部材の両端にある吸着電極のうち、出力部を駆動させる側の端部にある吸着電極(第1の静電吸着用電極)及びその対極である基板上の電極間に電圧を印加し、弾性部材の当該端部を基板上に固定し、同時に又は、次いで駆動用電極間に電圧を印加し、弾性部材に歪を与えると共に該弾性部材の端部間の距離に変化を与える。その後、弾性部材の端部のうち、出力部の存在しない方の端部にある静電吸着用電極(第2の静電吸着用電極)及び、その対極である基板上の電極間に電圧を印加し、当該個所を固定する。次いで、第2の静電吸着用電極及び駆動用電極に印加されていた電圧を解放し、該弾性部材の復元力によって、出力部を駆動するのである。
以下に、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
図2は、本発明の代表的実施例である静電アクチュエータ20を示すもので、基板21上には固定電極27がベタ付けで全面的に設置されている。非線形弓幹状板ばね22には、中央部の弓幹形状部分から右端部にかけて可動電極23が形成されており、右端で第1の静電吸着用電極を兼ねている。弓幹状板ばねの左端部には、可動電極部分と分離した状態で弓幹状板ばねの端部を基板に固定する際に利用される第2の静電吸着固定用の電極24が形成されている。また、基板には対極が存在する。
【実施例1】
【0017】
そして、弓幹状板ばね22の右端には負荷として出力部28が固定されている。
【実施例1】
【0018】
次に、出力部28の動作を図2(イ)~図2(へ)を参照して詳述する。
【実施例1】
【0019】
図2(イ)では、全ての電極には電圧は印加されておらず、この状態では何らの作用も生じない。図2(ロ)(ハ)の如く、可動電極23と基板上の固定電極27との間に電圧を印加すると、可動電極23の右端は基板上に固定され、出力部28は動かなくなる。同時に、可動電極23は電極27との間の静電引力により引っぱられ、弓幹状板ばね22は左方側が滑りながらほぼ扁平状態になる。その後図2(ニ)の如く、左方進行方向端部の第2静電吸着用電極24と基板上の固定電極27との間に電圧を印加し、両者を吸着固定する。そして図2(ホ)の如く、可動電極23と基板上の固定電極27との間の電圧を解放すると弓幹状板ばね22に蓄積された弾性エネルギーが解放され、出力部28と共に左方へ移動する。その後は以上の図2(ロ)~(ヘ)の操作を繰り返すことにより、大きな力と仕事を生成する事が可能となる。
【実施例1】
【0020】
この実施例の静電アクチュエータ20は、SDA(スクラッチドライブアクチュエータ)と呼ばれているものに近い動きをするものである。そして、図2(ロ)の状態から図2(ハ),(ニ)の状態に移行する際に電極23と27の間に摩擦力が働くことが若干問題となる。
【実施例2】
【0021】
図3は、本発明の第2の実施例の静電アクチュエータ30を示すもので、基板31上には、実施例1と同様に固定電極37がベタ付けで全面的に設置されている。
【実施例2】
【0022】
非線形板ばね32は、2つの弓幹状板ばねを合わせた形状の中央部とそれから左右に延びる延長部からなる。中央部の弓幹状板ばねには可動電極33,34が設けられ、左右の延長部には、可動電極とは分離した状態でそれぞれラチェット電極35,36が設けられている。
【実施例2】
【0023】
そして、弓幹状板ばねの右端には負荷として出力部38が固定されている。
【実施例2】
【0024】
次に、出力部38の動作を図3(イ)~図3(ト)を参照して詳述する。
【実施例2】
【0025】
図3(イ)では、全ての電極には電圧は印加されておらず、この状態では何らの作用も生じない。図3(ロ)の如く、弓幹状板ばねの出力部38が固定されている側のラチェット電極36と固定電極37との間に電圧を印加すると、非線形板ばね32の右端は基板31上に固定され、出力部38は動かなくなる。その後可動電極33,34の間に電圧を印加すると静電引力により引き合い、2つの弓幹状板ばねは、扁平に押しつぶされ、非線形ばね32の右方は固定されているので、非線形ばね32は弾性エネルギーを蓄積しながら左方に移動する(図3(ハ)、(ニ))。この際の下方側の非線形ばね32と基板31上の固定電極37との間の摩擦は無視できる。次に、図3(ホ)の如く、左方側のラチェット電極35と固定電極37との間に電圧を印加した後に、図3(ヘ)の如く、可動電極33と可動電極34との間、及び右方側のラチェット電極36と固定電極37との間の電圧を解放すると非線形の板ばね32に蓄積された弾性エネルギーが解放され、右方側の延長部が出力部38と共に左方へ移動する。次に図3の(ト)の如く、ラチェット電極36と固定電極37の間に再び電圧を印加して、固定する。その後は以上の操作を繰り返すことにより、大きな力と仕事を生成する事が可能となる。
【実施例3】
【0026】
図4は、本発明の第3の実施例の静電アクチュエータ40を示すものである。この実施例は、より大きな静電引力を取り出す為に、電極をばね要素と一体化せず、その面積を大きくしたものである。すなわち、実施例2と同様な2つの弓幹状板ばねを合わせた形状の中央部とそれから左右に延びる延長部からなる一対の非線形板ばね42,42’、及び一対の非線形板ばね42,42’間を橋渡しする形態で対向する可動電極43及び可動電極44が設けられる。基板41上には、実施例2と同様に固定電極47がベタ付けで全面的に設置されている。
【実施例3】
【0027】
2つの非線形板ばね42,42’の左右の延長部には、一対の非線形板ばね42,42’の両端に設けられた第1及び第2の静電吸着用電極(以後、両電極をラチェット電極とも言う。)45,46が設けられている。
【実施例3】
【0028】
そして、静電吸着用電極46の右端には負荷として出力部48が固定されている。
【実施例3】
【0029】
次に、出力部48の動作を図4(イ)~図4(ト)を参照して詳述する。動作は実施例2と類似である。
【実施例3】
【0030】
図4(イ)では、全ての電極には電圧は印加されておらず、この状態では何らの作用も生じない。図4(ロ)の如く、一対の非線形板ばね42,42’の出力部48が固定されている側のラチェット電極46と固定電極47との間に電圧を印加すると、ラチェット電極46は基板41上に固定される。その後可動電極間43,44に電圧を印加すると、一対の非線形板ばね42,42’は、扁平に押しつぶされ、非線形板ばね42,42’の右方は固定されているので、非線形板ばね42,42’は弾性エネルギーを蓄積しながらつぶれてゆき、ラチェット電極45は左方に移動する(図4(ハ)、(ニ))。この際のラチェット電極45と基板41上の固定電極47との間の摩擦は無視できる。次に、図4(ホ)の如く、左方側のラチェット電極45と固定電極47との間に電圧を印加した後に、図4(ヘ)の如く、可動電極43と可動電極44との間、及び右方側のラチェット電極46と固定電極47との間の電圧を解放すると非線形板ばね42,42’に蓄積された弾性エネルギーが解放され、右方側の延長部が出力部48と共に左方へ移動する。その後は以上の操作を繰り返すことにより、大きな力と仕事を生成する事が可能となる。
【実施例4】
【0031】
図5は、本発明の第4の実施例の静電アクチュエータ50を示すものである。この実施例の静電アクチュエータ50は非線形板ばねが斜めに支持された湾曲した板ばねからなるものである。原理的には図5(イ)に示すように、斜めに支持された板ばねは、上方に荷重を加えて移動させられると支持部と荷重点の水平距離が大きくなることから、ばね定数kは低下し、逆に下方に移動させられると支持部からの水平距離が小さくなることから、ばね定数kは増加する。
【実施例4】
【0032】
静電アクチュエータ50には、基板51上の支持部52,53から可動電極54,55に向けて、非線形板ばね56,56’及び57,57’が設けられている。ここで、支持部52及び支持部53の下部と基板51には、それぞれ静電吸着用のラチェット電極(図示せず)が設けられている。支持部53には負荷としての出力部58が支持されている。
【実施例4】
【0033】
次に、出力部58の動作を、図5(ロ)~図5(ニ)を参照して詳述する。
【実施例4】
【0034】
図5(ロ)では、全ての電極には電圧は印加されておらず、この状態では何らの作用も生じない。図5(ハ)の如く、出力部58が接続された支持部53と基板51のラチェット電極に電圧を印加して支持部53を固定した状態で、可動電極54と可動電極55間に電圧を印加すると、両可動電極54,55は静電引力により接近し、同時に弧状の非線形板ばね56,56’及び弧状の非線形板ばね57,57’は弾性エネルギーを蓄えながら変形する。このとき、板ばねの変形に伴って支持部52は右方に進行する。次に、図5(ニ)の如く、進行方向後方の支持部52と基板51のラチェット電極に電圧を印加した後に、可動電極54と可動電極55間、および支持部53と基板51のラチェット電極の電圧を解放すると非線形板ばね56,56’,57,57’に蓄積された弾性エネルギーが解放され、可動電極54と可動電極55が離れると同時に、支持部53が出力部58を押しながら共に右方に移動進行する。その後は以上の操作を繰り返すことにより、大きな力と仕事を生成する事が可能となる。
【実施例4】
【0035】
また、前記可動電極54,55のいずれか一方を固定電極としても良いことは当然である。
【実施例4】
【0036】
本実施例の場合には、この縦置きの状態の静電アクチュエータ50を水平面上で90度横に倒した状態で使用することもできる。
【実施例5】
【0037】
図6は、本発明の第5の実施例の静電アクチュエータ60を示すものである。この実施例の静電アクチュエータ60は、実施例4の静電アクチュエータ50を改良したもので、仕事をする際に発生する可能性のある非線形板ばねの座屈の問題を解決したものである。
【実施例5】
【0038】
図6(イ)に示すように、基板67上に左右のコの字状枠体65,66が滑動自在に配され、枠体65,66の間に可動電極63,64が設けられている。枠体65及び枠体66の下部と基板67には、それぞれ静電吸着用のラチェット電極(図示せず)が設けられている。可動電極63は枠体65の上部と斜めに支持された弧状の非線形板ばね61で接続され、同様に枠体66の上部と弧状の非線形板ばね61’で接続されている。また、可動電極64は同様にして枠体65の下部と弧状の非線形板ばね62で接続され、枠体66の下部と弧状の非線形板ばね62’で接続されている。そして、枠体66には負荷としての出力部68が接続されている。
【実施例5】
【0039】
次に、出力部68の動作を図6(ロ)~図6(ニ)を参照して詳述する。動作は実施例4と類似である。
【実施例5】
【0040】
図6(ロ)では、全ての電極には電圧は印加されておらず、この状態では何らの作用も生じない。図6(ハ)の如く、出力部68が接続された枠体66と基板67のラチェット電極に電圧を印加した状態で、可動電極63と可動電極64間に電圧を印加すると、両可動電極63,64は静電引力で接近し、同時に弧状の非線形板ばね61,61’及び弧状の非線形板ばね62,62’は弾性エネルギーを蓄えながら変形する。このとき、進行方向の枠体65は左方に進行する。次に、図6(ニ)の如く、進行方向の枠体65と基板67のラチェット電極に電圧を印加した後に、可動電極63と可動電極64間の電圧および枠体66と基板67のラチェット電極の電圧を解放すると非線形板ばね61,61’,62,62’に蓄積された弾性エネルギーが解放され、可動電極63と可動電極64が離れると同時に、枠体66が出力部68と共に左方に移動進行する。その後は以上の操作を繰り返すことにより、大きな力と仕事を生成する事が可能となる。
【実施例5】
【0041】
また、前記可動電極63,64のいずれか一方を固定電極としても良いことは当然である。
【実施例5】
【0042】
本実施例の場合にも、実施例4と同様に、縦置きの状態の静電アクチュエータ60を水平面上で90度横に倒した状態で使用することもできる。
【実施例6】
【0043】
図7は、本発明の第6の実施例の静電アクチュエータ70を示すものである。
【実施例6】
【0044】
図7(イ)は静電アクチュエータ70の平面図である。図7(ロ)は図7(イ)のB-B線断面図である。
【実施例6】
【0045】
図7(イ)に示すように、右枠体72及び左枠体73は、相互に連結されて中空移動体74を構成している。この中空移動体74は基板71上に配され、中空移動体74の左枠体73及び右枠体72に対向して可動電極75が設けられ、左枠体73と可動電極75の間には、く字状の一対の非線形板ばね76,76’が配されている。ここで、右枠体72の下部と基板71には、それぞれ静電吸着用のラチェット電極(図示せず)が設けられている。また、右枠体72は固定電極として作用し、左枠体73には負荷としての出力部78が取り付けられている。
【実施例6】
【0046】
ここで、非線形板ばね74,74’をく字状とすることの理由は、図8に示すように、非線形板ばねに荷重が掛かった際に荷重点がずれることなく非線形性がでるからである。
【実施例6】
【0047】
次に、静電アクチュエータ70の動作を、図7(イ)、図7(ハ)~図7(ト)を参照して詳述する。
【実施例6】
【0048】
図7(イ)では、全ての電極には電圧は印加されておらず、この状態では何らの作用も生じない。図7(ハ)の如く、右枠体72と基板71のラチェット電極間に電圧を印加し、右枠体72を基板71に固定する。この状態で、図7(ニ)の如く、右枠体72と可動電極75間に電圧を印加すると、静電引力で、可動電極75は一対の非線形板ばね76,76’を伸張させながら右枠体72に引き寄せられる。その結果、図7(ホ)の如く、一対の非線形板ばね76,76’には弾性エネルギーが蓄積される。次に、図7(ヘ)の如く、可動電極75と基板71間に電圧を印可して、可動電極75を基板71に固定した状態で可動電極75と右枠体72との間の電圧を開放すると共に、右枠体72と基板71のラチェット電極間の電圧を開放する。すると、図7(ト)の如く、一対の非線形板ばね76,76’に蓄積された弾性エネルギーが開放され、中空移動体74が右方に移動するので、左枠体73に取り付けられた出力部78が移動する。その後は以上の操作を繰り返すことにより、大きな力と仕事を生成する事が可能となる。
【実施例6】
【0049】
図7では、左枠体73と可動電極75との間に一対の非線形板ばねが設けられている例で説明したが、右枠体72と可動電極75との間に圧縮ばねとして一対の非線形板ばねを設けてもよいことは当然である。この場合には、固定電極としての右枠体72と可動電極75との間の一対の非線形板ばねに蓄積される弾性エネルギーを利用することにより、上述と同様にして左枠体73に取り付けられた出力部78を移動させることができる。
【実施例6】
【0050】
図9に、図7に示した静電アクチュエータ70に使用され得る非線形ばねの例を示す。図9(イ)は、一対のく字状板ばねの両端部が互いに離れているタイプの例である。図9(ロ)は、一対のく字状板ばねの両端部が互いに結合され、いわゆる菱形形状のタイプの例である。図9(ハ)は、図9(ロ)の菱形の頂部に直線のばね部を設けたタイプのものである。図9(ニ)は、楕円形状の板ばねの長軸部の両端に直線のばね部を設けたタイプのものである。図9(ホ)は、楕円形状の板ばねのタイプのものである。
【実施例6】
【0051】
以上説明したように、本件発明によると、ラチェット機構を備えた板ばねの蓄積力を利用するようにしたので、簡単な構成で発生力、変位の大きい実用的で、かつ省エネルギー、超小型の静電アクチュエータを得ることが出来る。
【実施例6】
【0052】
さらに、弓幹状板ばねは、静電引力によりつぶれて行くに従い、該弓幹状板ばね両端部と他部材との接触域が増加するので、ばねに非線形性が出るものである。
【実施例6】
【0053】
また、非線形ばねを線形ばねとしても良いことは当然である。
【実施例6】
【0054】
本発明の静電アクチュエータは、例えば、医療用機器における内視鏡等の多自由度可撓管の駆動部、情報機器におけるHDDのピックアップ、携帯機器における携帯電話のカメラのレンズ移動機構、シャッター移動機構等、各種のアクチュエータに使用可能である。
【符号の説明】
【0055】
23,33,34,43,44、54,55,63,64,75 可動電極
22,32,42,42’,56,56’,57,57’,61,61’,62,62’,76,76’ 非線形板ばね
30,40,50,60,70 静電アクチュエータ
31,41,51,67 基板
24 電極
27,37,47 固定電極
28,48,58,68 出力部
35,36,46,45 静電固定用電極(ラチェット電極)
52,53 支持部
65,66 枠体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9