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明細書 :薄膜作製用スパッタ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5300084号 (P5300084)
登録日 平成25年6月28日(2013.6.28)
発行日 平成25年9月25日(2013.9.25)
発明の名称または考案の名称 薄膜作製用スパッタ装置
国際特許分類 C23C  14/35        (2006.01)
C23C  14/34        (2006.01)
FI C23C 14/35 C
C23C 14/34 D
請求項の数または発明の数 19
全頁数 22
出願番号 特願2009-517758 (P2009-517758)
出願日 平成20年5月9日(2008.5.9)
国際出願番号 PCT/JP2008/058621
国際公開番号 WO2008/149635
国際公開日 平成20年12月11日(2008.12.11)
優先権出願番号 2007146575
2007182014
優先日 平成19年6月1日(2007.6.1)
平成19年7月11日(2007.7.11)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成23年3月7日(2011.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】諸橋 信一
個別代理人の代理人 【識別番号】110000626、【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開2004-052005(JP,A)
特開2003-183827(JP,A)
特開2002-146529(JP,A)
特開2003-013212(JP,A)
特開2001-335924(JP,A)
特開2005-179716(JP,A)
米国特許第04597847(US,A)
特開平06-192833(JP,A)
調査した分野 C23C 14/00-14/58
WPI
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置した薄膜作製用スパッタ装置であって、
前記ターゲットの裏面には、複数の磁石、または、磁石及びヨークからなる磁極群が配置され、
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークを含んでいることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項2】
前記磁極群の各々の磁石またはヨークは、隣り合う磁石またはヨーク同士で磁極方向が交互に異なるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項3】
前記多角柱型ターゲットホルダー一対の対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置された磁極群は、それぞれ極性が反対であることを特徴とする請求項1または2記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項4】
前記多角柱型ターゲットホルダー一対の対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置された磁極群は、それぞれ極性が同じであることを特徴とする請求項1または2記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項5】
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークが同心円状に配置されていることを特徴とする請求項1~4いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項6】
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークが市松模様状に配置されていることを特徴とする請求項1~4いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項7】
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットの裏面に配置された磁極群は、異なる磁極パターンのものを含んでおり、
前記多角柱型ターゲットホルダーを回転させることで、対向するターゲット間の磁場特性を変えられることを特徴とする請求項1~6いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項8】
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットは異なる材料により構成されていることを特徴とする請求項1~7いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項9】
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットは同じ材料により構成されており、前記多角柱型ターゲットホルダーを回転させることにより長時間スパッタが可能であることを特徴とする請求項1~7いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項10】
前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれ隣接するターゲット間に、薄膜作製時の前記ターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設けたことを特徴とする請求項1~9いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項11】
前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれ隣接するターゲット間に磁気シールド板を設けたことを特徴とする請求項1~10いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項12】
前記多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上の前記モジュールを配設したことを特徴とする、請求項1~11いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項13】
1つ以上の前記モジュールを設置した真空チャンバーを、単独あるいは1つ以上連結したことを特徴とする、請求項12記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項14】
前記ヨークは、
一端が、前記ターゲット裏面に接触または近接しており、
他端が、前記磁石のターゲットとは反対側の磁極に接続されていることを特徴とする請求項1~13いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項15】
前記ヨークの少なくとも一部は移動可能であり、
前記ヨークの少なくとも一部を移動させることにより、前記ターゲット裏面と前記磁石の少なくとも一方から前記ヨークを離間させることが可能であることを特徴とする請求項1~14いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項16】
前記ターゲット裏面と前記磁石との間に、前記磁石が作る磁束密度の均一性を高める磁極片を配置することを特徴とする請求項1~15いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項17】
前記ヨークのターゲット裏面側の端部は前記磁極片と近接しており、前記ヨークの少なくとも一部を移動させることで前記ヨークと前記磁極片とを離間させることが可能であることを特徴とする請求項16記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項18】
前記磁極群中のヨークの一部又は全部を移動させることで、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができることを特徴とする請求項1~17いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
【請求項19】
前記磁極群の前記ターゲットとは反対側に、背面ヨークが設けられていることを特徴とする請求項1~18いずれか記載の薄膜作製用スパッタ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜単層及び多層構造からなるエレクトロニクス、電子工業、時計工業、機械工業、光学工業において、欠くことのできない重要な薄膜作製用スパッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜単層及び多層構造からなる電子材料とその応用である電子デバイス作製において、真空状態下での薄膜作製用スパッタ装置は重要である。薄膜作製方法は大別して、蒸着、スパッタ、CVD(Chemical Vapor Deposition)がある。なかでもスパッタは、基板材料の種類を問わずどんな材質の膜でも有毒なガスを使用しないで安全に比較的簡単な装置で薄膜を堆積できることから、各方面において広く使用されている。
【0003】
スパッタの原理を以下、概略説明する。真空装置内でプラズマを発生させ、そのプラズマ中のイオンをターゲットに衝突させてターゲット表面の構成原子・分子をはじき飛ばして、基板上に堆積させて薄膜を作製する。スパッタ装置は、衝撃イオン源であるイオン化ガスまたは放電プラズマの発生方法、印加電源の種類、電極の構造から図1~5のような各種の方法がある。
【0004】
図1に示すイオンビームスパッタはイオン室で形成した照射イオンをスパッタ室へ導出してターゲットをスパッタして薄膜を堆積する。イオンを形成する方法の違いで熱陰極型のカウフマンイオン源、電子サイクロトロン共鳴(electron cyclotron resonance: ECR)型のECRイオン源がある。いずれもAr等のイオンビームを引きだしてターゲットに照射してスパッタする方法である。放電圧力が10-4Torr以下と低くてもスパッタが可能であり、薄膜への放電ガスの混入が少なくスパッタ粒子のもつ運動エネルギーが大きいために表面平滑性の優れた緻密な薄膜形成が可能となるが、薄膜堆積速度が小さいことが欠点である。
【0005】
図2に示す2極スパッタは、プラズマ内のイオンが陰極降下内で加速されてターゲットを衝撃してスパッタをおこし、対向した基板上にスパッタされた粒子が飛来して薄膜が形成される。印加電源の違いにより直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。装置構成は簡単なものの、1)プラズマ効率が悪くプラズマを起こすために導入するガス圧力を高くしなければならず、薄膜へのガス混入が大きい、2)プラズマ効率が悪く、結果的に薄膜堆積速度が小さい、3)ターゲットをイオンガスが衝撃するときに生成される高エネルギーのγ電子(2次電子)が正対している基板を直撃するために、基板温度が堆積中に数百度にも上昇してしまう、4)ターゲットと基板が正対しているために、ターゲットを衝撃したイオンの一部が基板を直撃する(反跳イオン)ために基板へのダメージ及び多成分の薄膜での組成ずれが起こる、等の欠点がある。
【0006】
2極スパッタの欠点を解決するために、マグネトロンスパッタが考案された。図3はその代表的なプレナーマグネトロンスパッタの原理図を示す。印加電源の違いにより直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。2極スパッタで述べた、ターゲットをイオンガスが衝撃するときに生成される高エネルギーのγ電子は基板直撃による基板温度上昇の大きな原因ではあるが、高エネルギーのためにガスをイオン化してプラズマ放電を維持するため上で重要な役割をしている。そこで、ターゲット裏面に図のようにマグネトロンを配置してターゲット表面に平行な磁界を作り、ターゲット表面から放出されたγ電子をターゲット表面近くに閉じこめるようにして雰囲気ガスとの衝突回数の増加を図ることによって、1)雰囲気ガスのイオン化を促進してプラズマ効率を高めること(高速スパッタ)、2)図のような閉じた移動経路により高エネルギーのγ電子の基板衝撃による基板温度上昇を抑制できること(低温スパッタ)、が特徴である。マグネトロン配置により2極スパッタの欠点は大幅に改善されたが、基板とターゲットが正対しているために、1)γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全には抑制することはできない、2)強磁性体をターゲットにした場合、マグネトロンの磁束が強磁性体の部分を通りγ電子を閉じこめるのに十分な大きさの磁界がターゲット表面に印加できないため、強磁性体の低温・高速スパッタが困難、であることが欠点である。しかしながら、構造が比較的簡単で高堆積速度で薄膜形成可能なために、プレナーマグネトロンスパッタは広く使用されている。
【0007】
図4に示す対向ターゲット式スパッタはマグネトロンスパッタのもつ欠点を、改善するために考案された。2つのターゲットが対向する位置にあり、それぞれのターゲット裏面には互いに反対磁極をもつようにマグネトロンが配置されている。雰囲気ガスのイオン化ガスのターゲット衝撃によりターゲット表面から放出された高エネルギーのγ電子は対向するターゲット間に閉じこめられ高密度プラズマを発生する。基板は対向するターゲットの横のプラズマ外に置かれているために、γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全に抑制することができ、低温・高速スパッタが可能となる。γ電子を閉じこめることによる高密度プラズマにより、雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能で(~10-4Torr台)、薄膜への雰囲気ガス混入も小さく、強磁性体の低温・高速スパッタも可能であるという特徴を持つ。印加電源の違いにより直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。
【0008】
しかしながら、図4の原理図と図3の原理図を比較して判るように、プレナーマグネトロンスパッタではターゲット裏面に配置された磁石の発生する磁束は閉じているのに対して、従来型の対向ターゲット式スパッタの場合のターゲット及びターゲット裏面の磁石と発生する磁束線の振舞いから判るように、従来型では対向するターゲット間の向き合う面の磁石の磁極は反対であるために、そこに発生する磁束線は閉じている。しかしながら図から明らかなように磁石のターゲット反対面は閉じた磁束線を形成できず、磁束線の漏洩が生じる。裏面に磁束が漏洩するということはその分だけ対向するターゲット面間に磁束が廻らないことを意味し、磁石から発生する磁束を有効に対向するターゲット面に導いていないことになり効率のよい磁石の使い方になっていない。この影響を小さくするために、ターゲットと反対側の磁極後ろには漏れ磁束を小さくするために厚い鉄ヨークを設置する必要があり、構造が大きくならざるを得ない欠点がある。対向するターゲット間の磁束はおよそ150~250 Oe(エルステッド)が必要である。対向するターゲット間に大きな磁束を発生させるためにネオジム磁石を用いるが、先に述べたようにターゲットと反対側の磁極での漏れ磁束の発生から、有効に磁束を導かないために磁石の厚さを厚くしなければならない。しかも鉄ヨークの飽和磁化は有限なので、鉄ヨークをあまり薄くすると磁気的に飽和してしまい、鉄ヨークの裏面に磁束を漏洩させてしまう。漏洩磁束を小さくするための鉄ヨークの厚みも厚く設計しなければならない。図3で示したマグネトロンスパッタでは磁束は磁石の表及び裏面両方とも閉じているために磁石+鉄ヨークの厚みは30~50ミリ程度で済むのに対して、従来型の対向ターゲット式スパッタでは結果的に、磁石+鉄ヨークの厚みは100ミリ程度になってしまうことが、欠点である。
【0009】
近年の電子素子あるいは光学薄膜は多層薄膜構造をとる場合が殆どであり、真空を破らずに多層薄膜構造を作製することが必要である。図4に示す対向ターゲット式スパッタで多層薄膜構造作製を行うには、図5に示すように対向ターゲットカソードを並列に配置しなければならず、対向ターゲット式スパッタを治める真空装置が大きくなるという問題が生じる。真空装置が大型になると同じ到達真空度を作るためにはより排気速度の大きな真空ポンプを装置に設置しなければならず、コスト面からも問題となる。
【0010】
従来型対向ターゲット式スパッタでは、スパッタ時に発生するγ電子がターゲット間を往復運動することで雰囲気ガスとの衝突確率が高くなり、結果的に高密度プラズマ化により雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能で(~10-4Torr台)、薄膜への雰囲気ガス混入も小さくできるという優れた特徴をもっている対向ターゲット式スパッタの特徴をもちながら、問題となる磁束漏洩の防止のために大型にならざるを得ない構造上の欠点を解消して、構造の小型化、多元化及びそれに伴う真空装置の小型化による、スループット向上も含めたコスト的に有利な多層薄膜構造を作製できる薄膜作製用スパッタ装置として、図6に示すボックス回転式対向ターゲット式スパッタが考案されている。
その特徴は以下の通りである。
・回転できる多角柱型の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向するように配置する。
・多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれのターゲット裏面に配置されている磁石の作る磁束線が、多角柱型ターゲットホルダー内側において完全に閉じるように、磁石の極性が交互に変わるように配置する。
・一対の多角柱型ターゲットホルダーにおいて、対向するターゲットの裏面に配置されている磁石の極性が反対のために対向するターゲット間で磁束線が閉じている。
・別の種類の薄膜を堆積するために、対向する多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ逆回転して別なターゲット面を対向させて堆積する。対向するターゲットの裏面に配置されているそれぞれの磁石の極性が回転前と反対で、磁束線の向きが回転前と反対になる。
・一対の多角柱型ターゲットホルダーをそれぞれ次々に回転することで多角柱型についているターゲット数だけの多層薄膜がIn-situで作製が可能になる。
【0011】
従来技術としては、特許文献1及び2が挙げられる。特許文献1及び2は、本発明の発明者による従来技術である。特許文献1及び2には、多角柱型ターゲットホルダーを対向配置させる点、及び、ターゲットの裏面に磁石を配置する点が記載されているが、各ターゲットの裏面に配置される磁石の磁極方向は一方向のみである。また、ヨークをターゲット裏面の磁極の一部として用いる点は記載されていない。

【特許文献1】特開2003-183827号公報
【特許文献2】特開2004-52005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図7に示すように、ボックス回転式対向ターゲット式スパッタの磁石配置においては、磁束線は確かにボックス内部の閉じた磁気回路を構成しているが、多角柱型ターゲットホルダー外側では閉回路を構成していない。これによって、図から明らかなように、対向するターゲット間で発生するプラズマが広がる傾向が生じる。高品質な薄膜作製のためにも更にプラズマ密度を高くすることが要求される。これを防ぐために、図8に示すように防着・磁気シールド板を設置する方法が考えられるが、完全に多角柱型ターゲットホルダー外側の漏れ磁束を防ぐことはできない。更には、基板大口径化に伴い、基板サイズより大きなターゲットサイズにする必要がある。それに伴いターゲット裏面に配置する磁石も大口径化にする必要が生じてくるが、磁石の大口径化は難しく、価格的にも高価になる。図9に示すように、小口径の磁石を敷き詰める方法も考えられるが、磁束線の均一性に問題が生じる。スパッタをすることでターゲットが減っていくが、その減り方がこの磁束線の不均一性のために不均一にへっていきターゲットの有効利用にならず、薄膜の膜厚不均一性の原因になる。しかも、多角柱型ターゲットホルダー外側の磁束線の問題は依然として解決してない。
【0013】
対向ターゲット式スパッタはターゲット裏面の磁極パターンを変えることによって、対向ターゲット間の磁束線パターンを変えることが可能である。用途や材料によっては磁極パターンを変えることによって効果的なスパッタが可能になることがあり、対向ターゲット間の磁束線パターンを変えるメリットは大きいが、従来の対向ターゲット式スパッタでは対向ターゲット間の磁束線パターンを変えることは非常に困難であった。また、磁束線パターンを変えられたとしても、極性を変える程度のことしかできず、限られた磁束線パターンしか選択できなかった。
【0014】
本発明は上記問題点を解決し、ターゲットホルダー外側の漏洩磁束を低減できるとともに、対向ターゲット間の磁束線パターンを容易に変化させることができ、多種な磁束線パターンを選択可能なボックス回転型多元対向スパッタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
回転できる多角柱体の回転軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置した薄膜作製用スパッタ装置であって、
前記ターゲットの裏面には、複数の磁石、または、磁石及びヨークからなる磁極群が配置され、
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークを含んでいることを特徴とする薄膜作製用スパッタ装置。
【0016】
また好ましくは、以下の実施態様を有しても良い。
前記磁極群の各々の磁石またはヨークは、隣り合う磁石またはヨーク同士で磁極方向が交互に異なるように配置されている。
前記多角柱型ターゲットホルダー一対の対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置された磁極群は、それぞれ極性が反対である。
前記多角柱型ターゲットホルダー一対の対向するそれぞれのターゲットの裏面に配置された磁極群は、それぞれ極性が同じである。
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークが同心円状に配置されている。
前記磁極群は、異なる磁極方向の磁石またはヨークが市松模様状に配置されている。
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットの裏面に配置された磁極群は、異なる磁極パターンのものを含んでおり、前記多角柱型ターゲットホルダーを回転させることで、対向するターゲット間の磁場特性を変えられる。
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットは異なる材料により構成されている。
前記多角柱型ターゲットホルダーの各ターゲットは同じ材料により構成されており、前記多角柱型ターゲットホルダーを回転させることにより長時間スパッタが可能である。
前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれ隣接するターゲット間に、薄膜作製時の前記ターゲットの表面汚染を防ぐための着脱可能な防御板を設ける。
前記多角柱型ターゲットホルダーのそれぞれ隣接するターゲット間に磁気シールド板を設ける。
前記多角柱型ターゲットホルダー一対を対向して配置する機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上の前記モジュールを配設する。
1つ以上の前記モジュールを設置した真空チャンバーを、単独あるいは1つ以上連結する。
前記ヨークは、一端が、前記ターゲット裏面に接触または近接しており、他端が、前記磁石のターゲットとは反対側の磁極に接続されている。
前記ヨークの少なくとも一部は移動可能であり、前記ヨークの少なくとも一部を移動させることにより、前記ターゲット裏面と前記磁石の少なくとも一方から前記ヨークを離間させることが可能である。
前記ターゲット裏面と前記磁石との間に、前記磁石が作る磁束密度の均一性を高める磁極片を配置する。
前記ヨークのターゲット裏面側の端部は前記磁極片と近接しており、前記ヨークの少なくとも一部を移動させることで前記ヨークと前記磁極片とを離間させることが可能である。
前記磁極群中のヨークの一部又は全部を移動させることで、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができる。
前記磁極群の前記ターゲットとは反対側に、背面ヨークが設けられている。
なお、前記ヨーク及び前記磁極片は磁性体であれば何でも良いが、通常は鉄が用いられる。
【発明の効果】
【0017】
磁極群の高機能な配置を施すことによって、従来のボックス回転式対向ターゲット式スパッタでは多角柱型ターゲットホルダー外側で磁束線が閉回路を構成していない構造上の欠点を解消して、対向するターゲット間で高プラズマ密度を実現して多元・コンパクト・低温スパッタが可能で、かつ基板大口径化にも容易に対応できる、高機能なボックス回転式多元スパッタ装置が実現できる。この装置を使用することで、ダメージを与えない低温スパッタを必要としている分野として、有機EL素子のみならず、同じディスプレイに属し、しかも熱に弱いためにダメージを与えることなく透明電極ITOを堆積する必要がある液晶、あるいは厚さが1nm(10億分の1メートル)のトンネルバリアを真ん中に両側を超伝導薄膜で挟み込む原子オーダーの界面制御を必要とする超伝導トンネル接合や、強磁性薄膜でトンネルバリアを挟み込む強磁性トンネル接合、70nmルール(64GbitDRAM)以降の半導体リソグラフイ技術として位置づけられている軟X線縮小投影リソグラフイ、或いは物性評価のX線顕微鏡に必要なX線ミラー多層膜、発光ダイオード分野など広範囲な分野の高品質・高性能な電子デバイス作製が可能となる。
【0018】
ボックス回転式多元対向ターゲット式スパッタにおいて、本発明は上記構成を採用したことにより、対向ターゲット間以外の部分を通る漏洩磁束線を大幅に低減することができる。これは、異なる磁極方向の磁石またはヨークを含む磁極群を対向させることにより、対向する磁極群間で磁気閉回路を形成することができ、多角柱型ターゲットホルダーの外側を通る漏洩磁束を大幅に低減できるからである。無駄な漏洩磁束線が無い分、対向ターゲット間に磁束を集中させることができ、高いスパッタ効果を得ることができる。また、多角柱型ターゲットホルダーの各面の磁極群の磁極パターンを異ならせることで、前記多角柱型ターゲットホルダーの回転により、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができ、用途やターゲット材質に応じた磁束線パターンを選択することができる。更には対向するターゲット間のヨークの一部または全部を可動させることで、可動前の磁石とヨークとからなる一連の磁極群の作る磁気閉回路とは異なった磁気閉回路を構成することで、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができ、用途やターゲット材質に応じた磁束線パターンを選択することができる。更には、ターゲット裏面と磁石との間に配置した磁極片は対向するターゲット間の磁束線の磁束密度の均一性を高める。また、磁極群のターゲットとは反対側に背面ヨークを設けることで、さらにターゲット間の磁束密度を高めることができる。
【0019】
すなわち、本発明のボックス回転型多元対向スパッタは、ターゲットホルダーの回転及びヨークの移動により、対向ターゲット間の磁束線パターンを以下の4つのモードの中から選択することができる。
(1)対向モード(対向ターゲット間の磁束線が平行なモード)
(2)マグネトロンモード(各々のターゲット表面で磁束線が閉じたモード)
(3)複合モード(対向モードとマグネトロンモードの複合モード)
(4)二極モード(対向ターゲット間に磁束線が存在しないモード)
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】イオンビームスパッタ原理図。
【図2】2極スパッタ原理図。
【図3】プレナーマグネトロンスパッタ原理図。
【図4】従来型対向ターゲット式スパッタ原理図。
【図5】従来型による4層薄膜作製用対向ターゲット式スパッタ概念図。
【図6】従来型ボックス回転式対向ターゲット式スパッタの概念図。
【図7】従来型ボックス回転式対向ターゲット式スパッタのボックス内側と外側の磁束線のつくる磁気回路の概念図。
【図8】防着・磁気シールド板を装着した従来型ボックス回転式対向ターゲット式スパッタ装置概念図。
【図9】基板大口径化(ターゲット大口径化)対応の防着・磁気シールド板を装着した従来型ボックス回転式対向ターゲット式スパッタ装置概念図。
【図10】実施形態1のボックス回転式4元スパッタ装置の複合モードスパッタ方式の場合の概念図。
【図11】実施形態1のボックス回転式4元スパッタ装置の複合モードスパッタ方式の防着・磁気シールド板を装着した場合の概念図。
【図12】実施形態1のボックス回転式4元スパッタ装置のマグネトロンモードスパッタ方式の場合の概念図。
【図13】実施形態1のボックス回転式4元スパッタ装置のマグネトロンモードスパッタ方式の防着・磁気シールド板を装着した場合の概念図。
【図14】実施形態1のボックス回転式6元スパッタ装置の複合モードスパッタ方式の防着・磁気シールド板を装着した場合の概念図。
【図15】基板大口径化(ターゲット大口径化)対応の防着・磁気シールド板を装着した実施形態1のボックス回転式4元スパッタ装置の複合モードスパッタ方式の防着・磁気シールド板を装着した場合の概念図。
【図16】小面積の基板対応、すなわち小面積ターゲットの場合の磁石群の配置の実施形態。図は多角柱型ターゲットホルダーの1面の、真横からみた場合とホルダー内側から見た場合の、ターゲット、ホルダー、磁石群の配置を示す。
【図17】中面積の基板対応、すなわち中面積ターゲットの場合の磁石群の配置の実施形態。図は多角柱型ターゲットホルダーの1面の、真横からみた場合とホルダー内側から見た場合の、ターゲット、ホルダー、磁石群の配置を示す。
【図18】大面積の基板対応、すなわち大面積ターゲットの場合の磁石群の配置の実施形態。図は多角柱型ターゲットホルダーの1面の、真横からみた場合とホルダー内側から見た場合の、ターゲット、ホルダー、磁石群の配置を示す。
【図19】大面積の長方形基板対応、すなわち長方形大面積ターゲットの場合の磁石群の配置の実施形態。図は多角柱型ターゲットホルダーの1面の、真横からみた場合とホルダー内側から見た場合の、ターゲット、ホルダー、磁石群の配置を示す。
【図20】大面積の基板対応、すなわち大面積ターゲットの場合のロッド状の磁石群を均一にしかも隣り合う磁石が反対磁極になるようした配置の実施形態。図は多角柱型ターゲットホルダーの1面の、真横からみた場合とホルダー内側から見た場合の、ターゲット、ホルダー、磁石群の配置を示す。
【図21】図10及び図12のボックス回転式4元スパッタ装置において、磁極群のターゲットとは反対側に背面ヨークを設けた概念図。
【図22】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置の複合モードスパッタ方式の場合の概念図。
【図23】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置の複合モードスパッタ方式の防着・磁気シールド板を装着した場合の概念図。
【図24】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置のマグネトロンモードスパッタ方式の場合の概念図。
【図25】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置の対向モードスパッタ方式の場合の概念図。
【図26】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置の対向モードスパッタ方式の場合(背面ヨーク移動)の概念図。
【図27】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置の複合モードスパッタ方式の場合の概念図。
【図28】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置の対向モードスパッタ方式の場合の概念図。
【図29】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置の対向モードスパッタ方式の場合の概念図。
【図30】実施形態2のボックス回転型多元対向スパッタ装置の2極モードスパッタ方式の場合の概念図。
【図31】実施形態3の磁極群の非平衡配置(背面ヨーク無)の概念図。
【図32】実施形態3の磁極群の非平衡配置(背面ヨーク有)の概念図。
【図33】実施形態3の磁極群の非平衡配置(磁極群の一部がヨーク)の概念図。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<実施形態1>
本発明の1つの実施形態の例として、磁極群として複数の磁石を用いた例(実施形態1)について説明する。実施形態1では、磁石群の高機能な配置を施すことによって、従来のボックス回転式対向ターゲット式スパッタでは多角柱型ターゲットホルダー外側で磁束線が閉回路を構成していない構造上の欠点を解消して、対向するターゲット間で高プラズマ密度を実現して多元・コンパクト・低温スパッタが可能で、かつ基板大口径化にも容易に対応できる、高機能なボックス回転式多元スパッタ装置を実現する。図10~20に本発明の実施形態を示す。
【0022】
図10は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転式多元スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。2つのボックスそれぞれにおいて、多角柱型ターゲットホルダー内側および外側において磁束線は閉じている。同時に対向する多角柱型ターゲットホルダーにおいて、磁石群の極性が反対で、対向するそれぞれの前記ターゲット間でも磁束線が閉じていることを特徴とする。スパッタ方式としては対向モードとマグネトロンモードの重ね合わせになる複合モードである。図11は図10に示す4元のボックス回転式多元スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着した場合を示す。
【0023】
図12は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転式多元スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。2つのボックスそれぞれにおいて、多角柱型ターゲットホルダー内側および外側において磁束線は閉じている。対向する多角柱型ターゲットホルダーにおいて、磁石群の極性が同じで、対向するそれぞれの前記ターゲット間で磁束線が反発していることを特徴とする。スパッタ方式としてはマグネトロンモードのみである。図13は図12に示す4元のボックス回転式多元スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着した場合を示す。
【0024】
図14は本発明の実施形態の1つである、6角柱型ターゲットホルダーの場合、すなわち6元ターゲットの場合の、スパッタ方式としては対向モードとマグネトロンモードの重ね合わせになる複合モードで、防着・磁気シールド板を装着した場合を示す。これ以外に磁束線が閉じていれば8角柱でも12角柱でも、あるいはそれ以上の多角柱型ターゲットホルダーでも可能である。マグネトロンモードのみの配置でも可能である。
【0025】
図15は本発明の実施形態の1つである、基板大口径化に対応する、すなわちターゲット大口径化の場合の、4元ターゲットの場合の、スパッタ方式としては対向モードとマグネトロンモードの重ね合わせになる複合モードで、防着・磁気シールド板を装着した場合を示す。マグネトロンモードのみの配置でも可能である。
【0026】
図16~20に本発明の場合の磁石群の配置の実施形態を示す。図は多角柱型ターゲットホルダーの1面の、真横からみた場合とホルダー内側から見た場合の、ターゲット、ホルダー、磁石群の配置を示している。図16では小面積の基板対応、すなわち小面積ターゲットの場合の磁石群の配置を、図17では中面積の基板対応、すなわち中面積ターゲットの場合の磁石群の配置を、図18で大面積の基板対応、すなわち大面積ターゲットの場合の磁石群の配置を、図19で大面積の長方形基板対応、すなわち長方形大面積ターゲットの場合の磁石群の、配置を示す。中心にロッド状の磁石が配置され、同心円状に円筒状の、ロッドの磁石とは反対磁極をもつ磁石が配置されている。面積が大きくなるにつれ、同心円状の円筒状磁石の数が多くなる。もちろん極性が反対磁極になるように配置する。この配置により多角柱型ターゲットホルダーの内側および外側の両方で閉じた磁気回路を構成できる。図20で大面積の基板対応、すなわち大面積ターゲットの場合のロッド状の磁石群を均一にしかも隣り合う磁石が反対磁極になるように配置した場合を示す。
【0027】
上記実施形態に対して、さらに、磁石群のターゲットとは反対側に背面ヨークを設けることで、ターゲット間の磁束密度の強度を高めることができる。図21に背面ヨークを設置した場合の例を示す。図21(A)は複合モード(対向モード+マグネトロンモード)、図21(B)はマグネトロンモードの例を示す。背面ヨークを設置することにより、ターゲット間の磁束密度が約12%高まる。
【0028】
対向する多角柱型ターゲットホルダーを互いに同回転あるいは逆回転することで、別の材料のターゲット面が向き合い、そのときのターゲット間でつくる磁束線の向きは回転前と反対向きになる。尚、本実施形態ではターゲットホルダーの回転面は水平面に平行で説明しているが、特許請求要件を満足していればその回転面の方向は問わない。また、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー間の距離は、それぞれの回転軸も含めた多角柱型ターゲットホルダーを平行移動することで調節できる。
【0029】
また、図11に示すように対向する一対の多角柱型回転式ターゲットホルダー機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上のモジュールを設置することで、多角柱型回転式対ターゲットホルダーに取付けられているターゲット数×モジュール数の多層薄膜作製が可能或いは、スループットの向上が期待できる。更には、1つ以上のモジュールを設置した真空チャンバーを単独あるいは1つ以上連結した構成により多層薄膜作製が可能或いは、スループットの向上が期待できる。
【0030】
印加する電源の違いにより、直流(DC)、交流(RF)スパッタが可能である。スパッタ中、基板はフロート状態でも、更にはバイアス電圧を印加してバイアススパッタも可能である。更には直流に交流を上乗するスパッタも可能である。
【0031】
本実施形態での薄膜スパッタの一例を述べると、Nbターゲットを用いて、ターゲットー基板間距離9cmでAr圧力2x 10-4Torr、DC印加電流2.0A、DC印加電圧350Vで、堆積速度125nm/minが得られた。Nbは超伝導材料で超伝導になる温度(Tc)は9.3Kであるが、酸素が1 at%混入しただけでそのTcは8.3Kに下がってしまうほど敏感である。上記の条件で作製したNb薄膜はTcが9.3Kと同じ値を示した。室温と10Kでの抵抗の比で表す残留抵抗比が約4と大きな値を示し、残留ガスの取込みの小さな高品質な薄膜が形成された。
【0032】
<実施形態2>
本発明の別の実施形態の例として、磁極群として磁石及びヨークを用いた例(実施形態2)について説明する。実施形態2では、磁石とヨークとからなる一連の磁極群の高機能な配置を施すことによって、従来のボックス回転型多元対向スパッタでは多角柱型ターゲットホルダー外側で磁束線が閉回路を構成していない構造上の欠点を解消して、対向するターゲット間で高プラズマ密度を実現して多元・コンパクト・低温スパッタが可能で、かつ多角柱ターゲットホルダーを回転あるいは、対向するターゲット間の磁石群中のヨークの一部あるいは全部を可動させることで、用途やターゲット材質に適した対向するターゲット間磁束線パターンを選択できる高機能なボックス回転型多元対向スパッタ装置を実現する。図22~29に本発明の実施形態を示す。
【0033】
図22は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転型多元対向スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。2つのボックスそれぞれにおいて、多角柱型ターゲットホルダー内側および外側において磁石とヨークとからなる一連の磁極群の磁束線は閉じている。同時に、対向する多角柱型ターゲットホルダーにおいて、磁石とヨークとからなる一連の磁極群の極性が反対で、対向するそれぞれの前記ターゲット間でも磁束線が閉じていることを特徴とする。スパッタ方式としては対向モードとマグネトロンモードの重ね合わせになる複合モードである。図23は図22に示す4元のボックス回転型多元対向スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着した場合を示す。また、本実施形態は4元スパッタで説明しているが、6角柱、8角柱あるいはそれ以上の多角柱ターゲットホルダーで磁気閉回路を構成する6元スパッタ、8元スパッタあるいはそれ以上の多元スパッタでもよい。なお、図22及び図23の左下の図は、ヨーク形状の例を示したものである。ヨークのターゲット裏面とは反対側の端部は、磁石との磁気回路を形成できれば形状は任意であり、本図では円と楕円の形状の例を示している。
【0034】
図24は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転型多元対向スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。2つのボックスそれぞれにおいて、多角柱型ターゲットホルダー内側および外側において磁石とヨークとからなる一連の磁極群の磁束線は閉じている。対向する多角柱型ターゲットホルダーにおいて、磁極群の極性が同じで、対向するそれぞれの前記ターゲット間で磁束線が反発していることを特徴とする。スパッタ方式としてはマグネトロンモードのみである。図23と同じく4元のボックス回転型多元対向スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着してもよい。
【0035】
図25は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転型多元対向スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。対向するターゲット間でのみ、可動ヨークを動かすことで、可動前の磁石とヨークとからなる一連の磁極群の作る磁気閉回路とは異なった磁気閉回路を構成し、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができることを特徴とする。スパッタ方式としては対向モードである。図22で対向するターゲット間のヨークのみが動いた場合と同じである。図23と同じく4元のボックス回転型多元対向スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着してもよい。すなわち、図25においてヨークをターゲット裏面に接触させた状態では磁束線パターンは図22のような「複合モード(対向モードとマグネトロンモードの複合モード)」となり、ヨークをターゲット裏面から離間させることにより図25のような磁束線パターン「対向モード(対向ターゲット間の磁束線が平行なモード)」となる。また、図25において少なくとも一方のターゲットホルダーを回転させることにより、対向するターゲットの裏面の磁極群の磁性パターンを同磁性(相互に反発する極性)にすることが可能であるが、この場合、ヨークがターゲット裏面に接触している場合は図11のような「マグネトロンモード(各々のターゲット表面で磁束線が閉じたモード)」となり、ヨークがターゲット裏面から離間している場合は磁束線がターゲット表面からほとんど出ないため「二極モード(ターゲット間に磁束線が存在しないモード)」となる。このように、ヨークの移動とターゲットホルダーの回転を組み合わせることで、様々な対向ターゲット間の磁束線パターンを選択できる。
図25の例では磁極用ヨークと背面ヨークとを一緒に動かした例を示したが、図26のように磁極用ヨークを動かさないで背面ヨークのみを動かしても、磁極用ヨークから発せられる磁束を大きく低減することができるので、図25と同等の効果が得られる。
【0036】
図27は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転型多元対向スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。図9に示した実施例と異なりターゲット直下に磁極片を配置することで、磁石の作る磁束均一性を高めることを特徴とする。スパッタ方式としては複合モードである。基板大口径化、すなわちターゲット大口径化に対応できる。可動ヨークと磁極片とは一体型ではなく分離していることを特徴とする。図23と同じく4元のボックス回転型多元対向スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着してもよい。
【0037】
図28は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転型多元対向スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。対向するターゲット間でのみ、可動ヨークを動かすことで、可動前の磁石とヨークとからなる一連の磁極群の作る磁気閉回路とは異なった磁気閉回路を構成することで、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができる。図25に示した実施形態とは異なり、ターゲット直下に磁極片を配置することで、磁石の作る磁束均一性を高めることを特徴とする。可動ヨークと磁極片は一体型ではなく分離していることを特徴とする。スパッタ方式としては対向モードである。基板大口径化、すなわちターゲット大口径化に対応できる。図23と同じく4元のボックス回転型多元対向スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着してもよい。
【0038】
図29は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転型多元対向スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。対向するターゲット間でのみ、ヨークを動かすことで、可動前の磁石とヨークからなる一連の磁石群の作る磁気閉回路とは異なった磁気閉回路を構成することで、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができる。図27、図28に示した実施例とは異なり、ターゲット直下の磁極片は分離していなくターゲット面積全面にわたっており、磁石の作る磁束均一性を高めることを特徴とする。可動ヨークと磁極片は一体型ではなく分離していることを特徴とする。可動ヨークの先端は磁極片と接触しておらず、しかしながら可動していない配置のときは磁極片と磁気閉回路をつくり、可動ヨークが可動したときは可動ヨーク自体は着磁していない配置をとることを特徴とする。スパッタ方式としては対向モードである。基板大口径化、すなわちターゲット大口径化に対応できる。図23と同じく4元のボックス回転型多元対向スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着してもよい。
【0039】
図30は本発明の実施形態の1つである、ボックス回転型多元対向スパッタ装置の4元ターゲットの場合を示す。図29と異なりヨークは磁石と接触した配置、すなわち着磁した状態を取っている。スパッタ方式としては2極モードである。2つのボックスそれぞれにおいて、多角柱型ターゲットホルダー内側および外側において磁石とヨークからなる一連の磁石群の磁束線は閉じている。対向するターゲット間でのみ、可動ヨークを動かすことで、可動前の磁石とヨークとからなる一連の磁極群の作る磁気閉回路とは異なった磁気閉回路を構成することで、対向するターゲット間の磁束線のパターンを変えることができる。図27、図28に示した実施形態とは異なり、ターゲット直下の磁極片は分離していなくターゲット面積全面にわたっており、磁石の作る磁束均一性を高めることを特徴とする。可動ヨークと磁極片は一体型ではなく分離していることを特徴とする。可動ヨークの先端は磁極片と接触しておらず、しかしながら可動していない配置のときは磁極片と磁気閉回路をつくり、可動ヨークが可動したときは可動ヨーク自体は着磁していない配置をとることを特徴とする。基板大口径化、すなわちターゲット大口径化に対応できる。図23と同じく4元のボックス回転型多元対向スパッタ装置に防着・磁気シールド板を装着してもよい。
【0040】
対向する多角柱型ターゲットホルダーを互いに同回転あるいは逆回転することで、別の材料のターゲット面が向き合い、そのときのターゲット間でつくる磁束線の向きは回転前と反対向きになる。なお、本実施形態ではターゲットホルダーの回転面は水平面に平行で説明しているが、特許請求の範囲の要件を満足していればその回転面の方向は問わない。また、対向する一対の多角柱型ターゲットホルダー間の距離は、それぞれの回転軸も含めた多角柱型ターゲットホルダーを平行移動することで調節できる。
【0041】
また、対向する一対の多角柱型回転式ターゲットホルダー機構を1つのモジュールとして、真空チャンバー内に1つ以上のモジュールを設置することで、多角柱型回転式対ターゲットホルダーに取付けられているターゲット数×モジュール数の多層薄膜作製が可能或いは、スループットの向上が期待できる。更には、1つ以上のモジュールを設置した真空チャンバーを単独あるいは1つ以上連結した構成により多層薄膜作製が可能或いは、スループットの向上が期待できる。
【0042】
印加する電源の違いにより、直流(DC)、交流(RF)スパッタが可能である。スパッタ中、基板はフロート状態でも、更にはバイアス電圧を印加してバイアススパッタも可能である。更には直流に交流を上乗するスパッタも可能である。
【0043】
<実施形態3>
極性の異なる複数の磁極群を用いて磁気回路を形成する場合、異なる極性で磁界の強さが平衡するように磁極群を平衡型配置にするのが一般的であるが、本発明ではこれに限られず、非平衡配置でも構わない。非平衡配置にすることにより、対向モード+マグネトロンモードの複合モードにおいて、対向モード分の磁束密度を大きくすることができる。図31及び図32に、磁石群を非平衡配置にした例を示す。図31は背面ヨークが無い例、図32は背面ヨークを配置した例である。また、それぞれの図の上図が複合モード、下図がマグネトロンモードになるように、磁石群を配置した例である。この例では、外側に配置されている磁石の強さを、内側に配置されている磁石の強さよりも大きくしている。外側に配置されている磁石の強さを大きくすることにより、複合モードにした際に、対向モード分の磁束密度を大きくすることができる。磁極群の一部にヨークを用いた場合でも同様である。図33に、磁極群の一部にヨークを用いた場合の非平衡配置の例を示す。
【0044】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。上述の実施形態ではターゲットが正対している例を示したが、これらに限られず、例えば、対向するターゲットのそれぞれを基板と向き合う方向に少し傾けることにより、基板の堆積速度を大きくすることができる。また、ターゲットホルダーの回転軸は平行である必要はなく、基板が設置される位置に応じてターゲットホルダーの回転軸を傾けても良い。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32