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明細書 :右手/左手系複合導波管

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5322223号 (P5322223)
公開番号 特開2010-273170 (P2010-273170A)
登録日 平成25年7月26日(2013.7.26)
発行日 平成25年10月23日(2013.10.23)
公開日 平成22年12月2日(2010.12.2)
発明の名称または考案の名称 右手/左手系複合導波管
国際特許分類 H01P   3/00        (2006.01)
FI H01P 3/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2009-123974 (P2009-123974)
出願日 平成21年5月22日(2009.5.22)
審査請求日 平成24年3月13日(2012.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】真田 篤志
審査官 【審査官】赤穂 美香
参考文献・文献 特開平05-063407(JP,A)
特開2001-284912(JP,A)
特開2007-081825(JP,A)
特開2009-253940(JP,A)
特開2009-212828(JP,A)
特開2010-258905(JP,A)
多恵馬 大祐、真田 篤志、久保 洋,遮断領域導波管と短絡スタブによる左手系導波管の伝送特性,電子情報通信学会総合大会講演論文集,日本,一般社団法人電子情報通信学会 ,2008年 3月 5日,2008年_エレクトロニクス(1),107
調査した分野 H01P 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の単位構造体(31)が電磁波を伝送する方向に配列された構造の右手/左手系複合導波管であって、
前記単位構造体(31)は、幅寸法に比べて厚さ寸法が1/5以下の平板形状の主導波管(11)と、前記主導波管(11)から分岐され先端側が短絡された先端短絡スタブ(21)とからなり、
前記先端短絡スタブ(21)は、前記主導波管(11)からの分岐位置の近傍で前記主導波管(11)とほぼ平行になるように折り曲げられた構造のものである右手/左手系複合導波管。
【請求項2】
複数の単位構造体(32)が電磁波を伝送する方向に配列された構造の右手/左手系複合導波管であって、
前記単位構造体(32)は、幅寸法に比べて厚さ寸法が1/5以下の平板形状の主導波管(11)と、平板状の前記主導波管(11)の上下面の一方の面から分岐され先端側が短絡された第1先端短絡スタブ(21)と、前記主導波管(11)の上下面の他方の面から分岐され先端側が短絡された第2先端短絡スタブ(22)とからなり、
前記第1先端短絡スタブ(21)および前記第2先端短絡スタブ(22)は、前記主導波管(11)からの分岐位置の近傍で前記主導波管(11)とほぼ平行になるように折り曲げられた構造のものである右手/左手系複合導波管。
【請求項3】
複数の単位構造体(32)が電磁波を伝送する方向に配列された構造の右手/左手系複合導波管であって、
前記単位構造体(32)は、幅寸法に比べて厚さ寸法が1/5以下の平板形状の主導波管(11)と、平板状の前記主導波管(11)の上下面の一方の面から分岐され先端側が短絡された第1先端短絡スタブ(21)と、前記主導波管(11)の上下面の他方の面から分岐され先端側が短絡された第2先端短絡スタブ(22)とからなり、
前記第1先端短絡スタブ(21)および前記第2先端短絡スタブ(22)は、前記主導波管(11)からの分岐位置の近傍で前記主導波管(11)とほぼ平行になるように折り曲げられた構造のものであり、
前記第2先端短絡スタブ(22)は、外部空間に電磁波を放射する放射開口(221)が設けられたものである右手/左手系複合導波管。
【請求項4】
平板状の金属からなる第1層(411)と、
平板状の金属に前記先端短絡スタブ(21)の電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第2層(412)と、
平板状の金属に先端短絡スタブ(21)の分岐部となるべき接続開口(111)を形成した第3層(413)と、
平板状の金属に主導波管(11)の電磁波伝送空間となるべき空洞部(11)を形成した第4層(414)と、
平板状の金属からなる第5層(415)とを、
前記第1層(411)から前記第5層(415)の順に互いに積層して接合し、前記先端短絡スタブ(21)を前記主導波管(11)からの分岐位置の近傍で前記主導波管(11)とほぼ平行になるように折り曲げられた構造とするとともに、全体を薄型の導波管としたものである右手/左手系複合導波管。
【請求項5】
平板状の金属からなる第1層と、
平板状の金属に第1先端短絡スタブ(21)の電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第2層と、
平板状の金属に前記第1先端短絡スタブ(21)の分岐部となるべき接続開口を形成した第3層と、
平板状の金属に主導波管(11)の電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第4層と、
平板状の金属に第2先端短絡スタブ(22)の分岐部となるべき接続開口(112)を形成した第5層と、
平板状の金属に前記第2先端短絡スタブ(22)の電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第6層と、
平板状の金属に、外部空間に電磁波を放射するための放射開口(221)を形成した第7層とを、
前記第1層から前記第7層の順に互いに積層して接合し、前記第1先端短絡スタブ(21)および前記第2先端短絡スタブ(22)を前記主導波管(11)からの分岐位置の近傍で前記主導波管(11)とほぼ平行になるように折り曲げられた構造とするとともに、全体を薄型の導波管としたものである右手/左手系複合導波管。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波を伝播させるための導波管であって右手系伝送路としても左手系伝送路としても動作可能な複合導波管およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、主導波管と先端短絡スタブとからなる単位構造体を周期的に配列した構造を有し、低損失かつ高耐電力であり、低コストで製造可能であるとともに、全体の構造を薄型の平板状にできる右手/左手系複合導波管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属、誘電体、磁性体、超伝導体などの小片(単位構造体)を、波長に対して十分短い間隔(波長の10分の1程度以下)で並べることで自然にはない性質を持った媒質を人工的に構成することができる。この媒質を自然にある媒質のカテゴリに比べてより大きいカテゴリに属する媒質と言う意味でメタマテリアル(metamaterials)と呼んでいる。メタマテリアルの性質は、単位構造体の形状、材質およびそれらの配置により様々に変化する。
【0003】
中でも、等価的な誘電率εと透磁率μとが同時に負となるメタマテリアルは、その電界と磁界と波数ベクトルが左手系をなすことから「左手系媒質(LHM:Left-Handed Materials)」と名付けられた。この左手系媒質を本明細書においては左手系メタマテリアルと呼ぶ。これに対して、等価的な誘電率εと透磁率μとが同時に正となる通常の媒質は「右手系媒質(RHM:Right-Handed Materials)」と呼ばれる。これら誘電率ε、透磁率μと媒質との関係領域は、図1に示すように、誘電率εの正負および透磁率μの正負に応じた第1象限~第4象限の媒質に分類できる。右手系媒質は第1象限の媒質であり、左手系媒質は第3象限の媒質である。
【0004】
特に、左手系メタマテリアルは、波の群速度(エネルギーの伝播する速度)と位相速度(位相の進む速度)の符号が逆転している波(バックワード波と呼ばれる)の存在や、また、非伝播領域で指数関数的に減衰する波であるエバネセント波の増幅、等の特異な性質を持つものである。そして、左手系メタマテリアルによるバックワード波を伝送する線路を人工的に構成することができる。このことは、下記の非特許文献1、非特許文献2にも記載されているように公知である。
【0005】
この左手系媒質構成の概念に基づき、金属パターンからなる単位セルを周期的に並べてバックワード波を伝播させる線路が提案されている。これまで、その伝送特性が理論的に取り扱われ、この線路が左手系伝送帯域を持つこと、左手系伝送帯域と右手系伝送帯域との間にバンドギャップが生じること、そのバンドギャップ幅は単位セル中のリアクタンスによりコントロールすることができること等が理論的に明らかになっている。これらに関しては、下記の非特許文献3に記載されている。
【0006】
また、左手系媒質の特性を有する導波管としては、下記の非特許文献4、非特許文献5に記載されたものが提案されている。非特許文献4には、伝送する電磁波の周波数において伝搬領域となる主導波管と、主導波管中に設けた絞り(誘導性窓)と、主導波管から分岐した先端短絡スタブとを備えた周期構造の左手系導波管が記載されている。また、非特許文献5には、伝送する電磁波の周波数において遮断領域となる主導波管と、主導波管から分岐した先端短絡スタブとを備えた周期構造の左手系導波管が記載されている。この非特許文献5の左手系導波管における先端短絡スタブ中には誘電体が挿入されている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】D.R.Smith,W.J.Padilla,D.C.Vier,S.C.Nemat-Nasser,andS.Schultz,“Composite medium with simultaneously negative permeability and permittivity”,Phys.Rev.Lett.,vol.84, no.18,p.4184-4187,May 2000
【非特許文献2】C.Caloz,and T.Itoh,“Application of the transmission line theory of left-handed (LH) materials to the realization of a microstrip LH line”,IEEE-APS Int'l Symp. Digest,vol.2,p.412-415,June 2002
【非特許文献3】Atsushi Sanada,Chritophe Caloz and Tatsuo Itoh,“Characteristics of the Composite Right/Left-Handed Transmission Lines”,IEEE Microwave and Wireless Component Letters,vol.14,no.2,p.68-70,February 2004
【非特許文献4】池田宇宙、榊原久二男、菊間信良、平山裕、“左手系導波管漏れ波スロットアレーアンテナのビーム走査特性”、2007年電子情報通信学会総合大会講演論文集(BS-1-6)、2007年3月、p.S21-S22
【非特許文献5】久保洋、笹井雅彦、真田篤志、“導波管型左手系線路とアンテナへの応用”、2007年電子情報通信学会総合大会講演論文集(BS-1-5)、2007年3月、p.S19-S20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
誘電体基板とその表面上の金属パターンとからなる平面型の左手系伝送線路は、誘電体による損失が比較的大きく、さらに基板の表面波モードとの結合によるエネルギー散逸があるという問題点があった。また、伝送し得る電力の上限値が小さい(低耐電力)という問題点があった。導波管型の左手系伝送路は、平面型の左手系伝送線路に比較して損失が小さく、伝送し得る電力の上限値を大きくすることができる。すなわち、低損失、高耐電力の伝送路とすることができる。
【0009】
ただし、非特許文献4の左手系導波管は、主導波管中に誘導性窓となる絞りを設ける必要があり、構造が複雑となるため製造コストも増大してしまうという問題点があった。また、非特許文献5の左手系導波管は、誘導性窓が必要なく構造自体は簡素化されているが、先端短絡スタブ中に誘電体を挿入する必要があるため、製造工程においても導波管構造を形成する工程に加えて誘電体を挿入する工程が必要となり、製造工程が複雑で製造コストも増大してしまうという問題点があった。さらに、挿入した誘電体により損失が増加してしまうという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、右手系伝送路としても左手系伝送路としても動作可能な低損失かつ高耐電力の複合導波管を低コストで提供することを目的とする。そして、そのような右手/左手系複合導波管の形態を薄型の平板状構造として、小型機器および薄型機器への実装も可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の右手/左手系複合導波管は、複数の単位構造体が電磁波を伝送する方向に配列された構造の右手/左手系複合導波管であって、前記単位構造体は、幅寸法に比べて厚さ寸法が1/5以下の平板形状の主導波管と、前記主導波管から分岐され先端側が短絡された先端短絡スタブとからなり、前記先端短絡スタブは、前記主導波管からの分岐位置の近傍で前記主導波管とほぼ平行になるように折り曲げられた構造のものである。
【0012】
また、本発明の右手/左手系複合導波管は、複数の単位構造体が電磁波を伝送する方向に配列された構造の右手/左手系複合導波管であって、前記単位構造体は、幅寸法に比べて厚さ寸法が1/5以下の平板形状の主導波管と、平板状の前記主導波管の上下面の一方の面から分岐され先端側が短絡された第1先端短絡スタブと、前記主導波管の上下面の他方の面から分岐され先端側が短絡された第2先端短絡スタブとからなり、前記第1先端短絡スタブおよび前記第2先端短絡スタブは、前記主導波管からの分岐位置の近傍で前記主導波管とほぼ平行になるように折り曲げられた構造のものである。
【0013】
また、本発明の右手/左手系複合導波管は、複数の単位構造体が電磁波を伝送する方向に配列された構造の右手/左手系複合導波管であって、前記単位構造体は、幅寸法に比べて厚さ寸法が1/5以下の平板形状の主導波管と、平板状の前記主導波管の上下面の一方の面から分岐され先端側が短絡された第1先端短絡スタブと、前記主導波管の上下面の他方の面から分岐され先端側が短絡された第2先端短絡スタブとからなり、前記第1先端短絡スタブおよび前記第2先端短絡スタブは、前記主導波管からの分岐位置の近傍で前記主導波管とほぼ平行になるように折り曲げられた構造のものであり、前記第2先端短絡スタブは、外部空間に電磁波を放射する放射開口が設けられたものである。
【0014】
また、本発明の右手/左手系複合導波管は、平板状の金属からなる第1層と、平板状の金属に前記先端短絡スタブの電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第2層と、平板状の金属に先端短絡スタブの分岐部となるべき接続開口を形成した第3層と、平板状の金属に主導波管の電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第4層と、平板状の金属からなる第5層とを、前記第1層から前記第5層をその順に互いに積層して接合し、前記先端短絡スタブを前記主導波管からの分岐位置の近傍で前記主導波管とほぼ平行になるように折り曲げられた構造とするとともに、全体を薄型の導波管としたものである。

【0015】
また、本発明の右手/左手系複合導波管は、開口が形成された平板状の金属からなる第1層と、平板状の金属に第1先端短絡スタブの電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第2層と、平板状の金属に前記第1先端短絡スタブの分岐部となるべき接続開口を形成した第3層と、平板状の金属に主導波管の電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第4層と、平板状の金属に第2先端短絡スタブの分岐部となるべき接続開口を形成した第5層と、平板状の金属に前記第2先端短絡スタブの電磁波伝送空間となるべき空洞部を形成した第6層と、平板状の金属に、外部空間に電磁波を放射するための放射開口を形成した第7層とを、第1層から第7層をその順に互いに積層して接合し、前記第1先端短絡スタブおよび前記第2先端短絡スタブを前記主導波管からの分岐位置の近傍で前記主導波管とほぼ平行になるように折り曲げられた構造とするとともに、全体を薄型の導波管としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0017】
本発明の右手/左手系複合導波管は、ミリ波領域以上の周波数において低損失かつ高耐電力の伝送路を実現するものである。また、本発明の右手/左手系複合導波管は構造が簡単であり、簡単な工程により製造することができ、製造コストも低減できる。さらに、右手/左手系複合導波管を極めて薄型に構成することができ、薄型機器や小型機器への実装にも適している。
【0018】
本発明の右手/左手系複合導波管に放射開口を設けることにより、低損失かつ高耐電力のビーム走査機能を有する漏れ波アンテナを実現することができる。この漏れ波アンテナも極めて薄型に構成することができ、薄型機器や小型機器への実装にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】誘電率ε、透磁率μの正負領域と媒質との関係を示す図である。
【図2】本発明の原型となった右手/左手系複合導波管4の構成を示す斜視図である。
【図3】右手/左手系複合導波管4を構成する単位構造体3の構造を示す図である。
【図4】右手/左手系複合導波管4の分散特性を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の形態の右手/左手系複合導波管41の側面図である。
【図6】右手/左手系複合導波管41を下方から見た底面図である。
【図7】本発明の第2の形態の右手/左手系複合導波管51の側面図である。
【図8】右手/左手系複合導波管51を上方から見た平面図である。
【図9】右手/左手系複合導波管41の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明の原型となった右手/左手系複合導波管について説明する。図2は、本発明の原型となった右手/左手系複合導波管4の構成を示す斜視図である。導体(典型的には金属)からなる断面が長方形の主導波管1には、周期的に配置された複数の先端短絡スタブ2が接続されている。図示のように、主導波管1の中心軸方向は、直交座標系(xyz座標)のz軸方向とされている。電磁波は、右手/左手系複合導波管4のz軸方向に伝搬する。

【0021】
導体(典型的には金属)からなる先端短絡スタブ2は、横方向(x軸方向)の寸法が主導波管1の横方向(x軸方向)の寸法よりも大きくなるように形成されている。先端短絡スタブ2と主導波管1の接続部は開口とされており、先端短絡スタブ2の先端側は短絡されている。先端短絡スタブ2は、z軸と直交するように配置されており、xy平面と平行に設けられている。主導波管1と先端短絡スタブ2は、z軸方向に周期性を有する周期構造体である。これは、1周期分の単位構造体3(図3参照)がz軸方向に周期的に密に配置されているのと等価である。

【0022】
右手/左手系複合導波管4は、左手系導波管として動作可能であるとともに右手系導波管としても動作可能である。左手系導波管として動作する場合は、主導波管1は、伝送する電磁波の周波数において遮断領域となる寸法となっている。これに対して、先端短絡スタブ2は、伝送する電磁波の周波数において伝搬領域となる寸法とされている。さらに、先端短絡スタブ2は、主導波管1から見て容量性インピーダンスを示すように、y軸方向の長さが設定されている。

【0023】
言い換えれば、主導波管1が遮断領域となり、先端短絡スタブ2が伝搬領域となり、また、主導波管1から見て先端短絡スタブ2が容量性インピーダンスを示すような周波数では、右手/左手系複合導波管4は、左手系導波管として動作するのである。

【0024】
右手/左手系複合導波管4が右手系導波管として動作する場合は、主導波管1および先端短絡スタブ2は、伝送する電磁波の周波数において伝搬領域となっている。また、先端短絡スタブ2は、主導波管1から見て誘導性インピーダンスを示すように、y軸方向の長さが設定されている。言い換えれば、主導波管1および先端短絡スタブ2が伝搬領域となり、主導波管1から見て先端短絡スタブ2が誘導性インピーダンスを示すような周波数では、右手/左手系複合導波管4は、右手系導波管として動作するのである。

【0025】
先端短絡スタブ2の内部の媒質は、主導波管1の内部の媒質と同一のものである。先端短絡スタブ2の横方向寸法が主導波管1の横方向寸法よりも大きくなるようにしているので、左手系導波管として動作させる場合でも動作条件を満足させることができる。

【0026】
図3は、右手/左手系複合導波管4を構成する単位構造体3の構造を示す図である。単位構造体3は、主導波管1および先端短絡スタブ2からなり、z軸方向の寸法Pは周期構造の周期(ピッチ)である。主導波管1と先端短絡スタブ2の接続部は開口12とされており、電磁界は開口12を通して相互に伝達される。先端短絡スタブ2の先端側は短絡されている。主導波管1の横方向(x軸方向)寸法をAとし、縦方向(y軸方向)寸法をBとする。先端短絡スタブ2の横方向(x軸方向)寸法をAsとし、縦方向(z軸方向)寸法をBsとする。また、先端短絡スタブ2の長さ(y軸方向寸法)をLsとする。

【0027】
右手/左手系複合導波管4は、このような構造の多数の単位構造体3がz軸方向にピッチPで周期的に配置されているのと等価である。寸法BsはピッチPより小さくされており、z軸方向に配列された先端短絡スタブ2と先端短絡スタブ2の間には寸法(P-Bs)の間隔が設けられる。このような単位構造体3の実際の寸法の例を次に示す。

【0028】
P=9.5[mm]
A=19.0[mm]
B=6.5[mm]
As=38.0[mm]
Bs=5.5[mm]
Ls=17.5[mm]
単位構造体3の各部の寸法を上記のようにした場合、右手/左手系複合導波管4が左手系導波管として動作するとともに、右手系導波管としても動作することが、電磁界シミュレーションによって確認されている。また、上記の寸法例の場合、左手系の伝送帯域と右手系の伝送帯域の間に非通過帯域(バンドギャップ)がなくなることが分かった。本発明では、このようにバンドギャップをなくすバランス型設計が可能である。

【0029】
図4に、右手/左手系複合導波管4の分散特性を示す。右手/左手系複合導波管4の単位構造体3の寸法は前述の通りである。図4の分散特性は、z軸方向に周期境界条件を与えて計算した有限要素法による電磁界シミュレーション結果である。図4のグラフの横軸はz軸方向の波数すなわち伝搬定数βを表すが、横軸目盛は伝搬定数βを(π/P)で規格化した値として表している。ただし、πは円周率、Pは単位構造体3のz軸方向の周期(ピッチ)である。図4のグラフの縦軸は伝送する電磁波の周波数である。

【0030】
図4の分散特性を示す曲線の接線の傾きが負である領域は、この領域で右手/左手系複合導波管4が左手系媒質の特性となっていることを示すものである。前述のような構造・寸法の右手/左手系複合導波管4は、図示のように7.18~7.86GHzの範囲で左手系媒質の特性を示し、7.86~12.0GHzの範囲で右手系媒質の特性を示す。この右手/左手系複合導波管4では、左手系伝送特性と右手系伝送特性とがバンドギャップ無しに接続しており、バランス型の右手/左手系複合導波管が実現できている。この場合のバランス周波数は7.86GHzである。

【0031】
なお、右手/左手系複合導波管4の前述の寸法例は一例であり、他の任意の寸法とすることができる。右手/左手系複合導波管4の構造・寸法を変更すれば、左手系媒質・右手系媒質の特性を示す周波数領域も変化する。

【0032】
図2のような右手/左手系複合導波管4を改良して薄型化可能な構造としたものが本発明の右手/左手系複合導波管である。図5および図6が本発明の第1の形態の右手/左手系複合導波管41の構成を示す図である。図5は右手/左手系複合導波管41の側面図であり、図6は右手/左手系複合導波管41を下方から見た底面図である。右手/左手系複合導波管41においても、主導波管11の中心軸方向を直交座標系(xyz座標)のz軸方向としている。電磁波は、右手/左手系複合導波管41のz軸方向に伝搬する。

【0033】
主導波管11は、導体(典型的には金属)からなる断面が長方形の導波管であるが、厚さ方向(y軸方向)の寸法(厚さ寸法)が横方向(x軸方向)の寸法(幅寸法)に比べて十分に小さくされ、薄型構造の導波管とされている。具体的には主導波管11の厚さ寸法が幅寸法の1/5以下である。

【0034】
主導波管11の下面側からは導体(典型的には金属)からなる先端短絡スタブ21が周期的(z軸方向に等間隔)に分岐している。先端短絡スタブ21の先端側は短絡されている。先端短絡スタブ21は、主導波管11からの分岐位置においてはz軸と直交するように(xy平面と平行に)分岐しているが、分岐位置の近傍で主導波管11の下面(xz平面)とほぼ平行になるように折り曲げられた構造となっている。これにより、右手/左手系複合導波管41の厚さ(y軸方向の寸法)を非常に小さく抑えることができ、薄型平板状の導波路や漏れ波アンテナを実現することができる。

【0035】
先端短絡スタブ21は、横方向(x軸方向)の寸法が主導波管11の横方向(x軸方向)の寸法よりも大きくなるように形成されている。先端短絡スタブ21と主導波管1の接続部は接続開口111とされており、主導波管11と先端短絡スタブ21は接続開口111によって結合されている。

【0036】
この右手/左手系複合導波管41は、z軸方向に周期性を有する周期構造体である。これは、1周期分の単位構造体がz軸方向に周期的に密に配置されているのと等価である。なお、図5、図6では、点線で示す境界線の間が単位構造体31を構成している。図示のように、単位構造体31がz軸方向にピッチPで密に配置されている。

【0037】
右手/左手系複合導波管41は、左手系導波管として動作可能であるとともに右手系導波管としても動作可能である。左手系導波管として動作する場合は、主導波管11は、伝送する電磁波の周波数において遮断領域となる寸法となっている。これに対して、先端短絡スタブ21は、伝送する電磁波の周波数において伝搬領域となる寸法とされている。さらに、先端短絡スタブ21は、主導波管11から見て容量性インピーダンスを示すように全体の長さが設定されている。

【0038】
言い換えれば、主導波管11が遮断領域となり、先端短絡スタブ21が伝搬領域となり、また、主導波管11から見て先端短絡スタブ21が容量性インピーダンスを示すような周波数では、右手/左手系複合導波管41は、左手系導波管として動作するのである。

【0039】
右手/左手系複合導波管41が右手系導波管として動作する場合は、主導波管11および先端短絡スタブ21は、伝送する電磁波の周波数において伝搬領域となっている。また、先端短絡スタブ21は、主導波管11から見て誘導性インピーダンスを示すように、全体の長さが設定されている。言い換えれば、主導波管11および先端短絡スタブ21が伝搬領域となり、主導波管11から見て先端短絡スタブ21が誘導性インピーダンスを示すような周波数では、右手/左手系複合導波管41は、右手系導波管として動作するのである。

【0040】
この構造の右手/左手系複合導波管41においても、左手系の伝送帯域と右手系の伝送帯域の間のバンドギャップをなくすバランス型設計が可能である。このようなバランス型の右手/左手系複合導波管41では、バランス周波数よりも低い周波数領域において左手系伝送特性を示し、バランス周波数よりも高い周波数領域において右手系伝送特性を示す。そして、バランス周波数において左手系伝送特性と右手系伝送特性とが連続的に接続されている。

【0041】
次に、本発明の第2の形態の右手/左手系複合導波管について説明する。図7および図8が本発明の第2の形態の右手/左手系複合導波管51の構成を示す図である。図7は右手/左手系複合導波管51の側面図であり、図8は右手/左手系複合導波管51を上方から見た平面図である。右手/左手系複合導波管51においても、主導波管11の中心軸方向を直交座標系(xyz座標)のz軸方向としている。電磁波は、右手/左手系複合導波管51のz軸方向に伝搬する。

【0042】
主導波管11は、導体(典型的には金属)からなる断面が長方形の導波管であるが、厚さ方向(y軸方向)の寸法(厚さ寸法)が横方向(x軸方向)の寸法(幅寸法)に比べて十分に小さくされ、薄型構造の導波管とされている。具体的には主導波管11の厚さ寸法が幅寸法の1/5以下である。

【0043】
主導波管11の下面側からは導体(典型的には金属)からなる先端短絡スタブ21が周期的(z軸方向に等間隔)に分岐している。先端短絡スタブ21の先端側は短絡されている。先端短絡スタブ21は、主導波管11からの分岐位置においてはz軸と直交するように(xy平面と平行に)分岐しているが、分岐位置の近傍で主導波管11の下面(xz平面)とほぼ平行になるように折り曲げられた構造となっている。

【0044】
先端短絡スタブ21は、横方向(x軸方向)の寸法が主導波管11の横方向(x軸方向)の寸法よりも大きくなるように形成されている。先端短絡スタブ21と主導波管1の接続部は開口とされている。

【0045】
この右手/左手系複合導波管51は、z軸方向に周期性を有する周期構造体である。これは、1周期分の単位構造体がz軸方向に周期的に密に配置されているのと等価である。なお、図7、図8では、点線で示す境界線の間が単位構造体32を構成している。図示のように、単位構造体32がz軸方向にピッチPで密に配置されている。

【0046】
以上の主導波管11および先端短絡スタブ21の構成は図5、図6に示した右手/左手系複合導波管41と同様である。右手/左手系複合導波管51では、それに加えて主導波管11の上面に第2の先端短絡スタブ22を設けている。第2の先端短絡スタブ22も、導体(典型的には金属)からなり、先端側が短絡されている。また、第2の先端短絡スタブ22も、主導波管11からの分岐位置においてはz軸と直交するように(xy平面と平行に)分岐しているが、分岐位置の近傍で主導波管11の上面(xz平面)とほぼ平行になるように折り曲げられた構造となっている。

【0047】
なお、図7、図8では、第2の先端短絡スタブ22と先端短絡スタブ21とがz軸方向の逆側に折り曲げられているが、必ずしもこのようにする必要はない。両方のスタブをz軸方向の同じ側に折り曲げられた構造としてもよい。

【0048】
この第2の形態の右手/左手系複合導波管51は、導波管を漏れ波アンテナとして応用する例であり、第2の先端短絡スタブ22の上面側には電磁波を放射するための放射スロット221が形成されている。放射スロット221は細長いスロット形状の開口である。この放射スロット221から特定の方向に電磁波を放射して、ビーム走査アンテナとして使用することができる。電磁波の周波数を変更することにより電磁波の放射方向を制御することができる。導波管の伝送特性が左手系伝送特性から右手系伝送特性まで連続的に変化するので、電磁波の放射方向を幅広く変化させることができる。

【0049】
第2の先端短絡スタブ22は、右手/左手系複合導波管51の伝送特性を狭帯域化するために設けられている。右手/左手系複合導波管51をビーム走査アンテナとして使用する場合には、伝送特性の帯域が広いと電磁波の放射方向を変更するために周波数を大きく変化させなければならなくなる。そこで、右手/左手系複合導波管51の伝送特性を狭帯域化することにより、周波数の変化が小さくても放射方向を幅広く変化させることができるようになる。検討の結果、誘導性の第2の先端短絡スタブ22を設けることにより、伝送特性を狭帯域化できることが分かった。

【0050】
第2の先端短絡スタブ22は、横方向(x軸方向)の寸法が主導波管11の横方向(x軸方向)の寸法よりも大きくなるように形成されている。第2の先端短絡スタブ22と主導波管1の接続部は接続開口112とされており、主導波管11と第2の先端短絡スタブ22は接続開口112によって結合されている。右手/左手系複合導波管51は、z軸方向に周期性を有する周期構造体である。これは、主導波管11、先端短絡スタブ21および第2の先端短絡スタブ22からなる1周期分の単位構造体32がz軸方向に周期的に密に配置されているのと等価である。

【0051】
右手/左手系複合導波管51は、左手系導波管として動作可能であるとともに右手系導波管としても動作可能である。左手系導波管として動作する場合は、主導波管11は、伝送する電磁波の周波数が遮断領域となっている。これに対して、先端短絡スタブ21は、伝送する電磁波の周波数が伝搬領域となっており、主導波管11から見て容量性インピーダンスを示す。第2の先端短絡スタブ22は、その周波数が伝搬領域であり、主導波管11から見て誘導性インピーダンスを示す。

【0052】
右手/左手系複合導波管51が右手系導波管として動作する場合は、主導波管11、先端短絡スタブ21および第2の先端短絡スタブ22は、伝送する電磁波の周波数において伝搬領域となっている。そして、先端短絡スタブ21および第2の先端短絡スタブ22は、主導波管11から見て誘導性インピーダンスを示す。

【0053】
この構造の右手/左手系複合導波管51においても、左手系の伝送帯域と右手系の伝送帯域の間のバンドギャップをなくすバランス型設計が可能である。この右手/左手系複合導波管51を漏れ波アンテナとして使用することにより、非常に薄型の平板状アンテナを実現することができる。右手/左手系複合導波管51に伝送される電磁波の周波数を変更することにより、漏れ波アンテナの放射特性を変更することができる。導波管が右手系となる周波数から左手系となる周波数まで連続的に変化させることで、電磁波の放射方向を前方から後方まで180度走査することができる。すなわち、右手/左手系複合導波管51によりビーム走査機能を有する漏れ波アンテナを実現できる。

【0054】
なお、ここでは第2の先端短絡スタブ22に放射スロット221を形成するようにしたが、放射スロット221は第2の先端短絡スタブ22に限らずどこに設けてもよい。例えば、放射スロットを主導波管11や先端短絡スタブ21に設けるようにしてもよい。さらには、放射スロット221を全く形成せずに漏れのない導波管とすることもできる。

【0055】
また、図8では各放射スロット221が全て同じ形状であるように表示しているが、各放射スロット221の幅や長さをz軸方向の位置に応じて順次変化させるようにしてもよい。各放射スロット221の幅や長さを順次変化させた場合は、全て同一形状の場合とは放射特性が異なってくる。望ましい放射特性となるように各放射スロット221の幅や長さを順次変化させることができる。

【0056】
次に、第1の形態の右手/左手系複合導波管41および第2の形態の右手/左手系複合導波管51の製造方法について説明する。図9は、右手/左手系複合導波管41の製造方法を示す図である。図5、図6に示すような構造の右手/左手系複合導波管41は、図9に示すように、5層の金属層から製造することができる。

【0057】
第1層411と第5層415は、開口も溝もない一様な金属板である。第2層412も金属板であるが、この第2層412には先端短絡スタブ21の電磁波伝送空間となるべき空洞部が形成されている。次の第3層413を構成する金属板には、主導波管11から先端短絡スタブ21が分岐するための接続開口111が形成されている。そして、第4層414の金属板には、主導波管11の電磁波伝送空間となるべき空洞部が形成されている。これらの第1層411から第5層415を、この順に互いに積層して接合すると、薄型の右手/左手系複合導波管41が製造できる。

【0058】
また、第2の形態の右手/左手系複合導波管51も、図9と同様の金属層の積層によって製造することができる。図9における第4層414と第5層415の間に、第2の先端短絡スタブ22が分岐するための接続開口112が形成された金属層と、第2の先端短絡スタブ22の電磁波伝送空間となるべき空洞部が形成された金属層を積層すればよい。そして、一番上面となる金属層には、外部空間に電磁波を放射するための放射スロット221を形成しておく。このように、右手/左手系複合導波管51は全部で7層の金属層から製造することができる。

【0059】
以上のような右手/左手系複合導波管41,51は、ミリ波領域以上の周波数において低損失かつ高耐電力の伝送路を実現するものである。また、右手/左手系複合導波管51のように放射スロットを設けることにより、低損失かつ高耐電力の漏れ波アンテナを実現することができる。また、本発明の右手/左手系複合導波管は、図9に示すような金属層の積層体により容易に製造することができ、製造コストも低減できる。このような右手/左手系複合導波管41,51は、極めて薄型に構成することができ、薄型機器や小型機器への実装にも適している。

【0060】
以上の右手/左手系複合導波管において、単位構造体はz軸方向に等間隔で周期的に配置されていることが望ましい。しかし、単位構造体の位置が厳密に正確な周期性を持っていなくとも右手/左手系複合導波管として機能するので、ある程度の範囲での位置ずれは許容される。すなわち、単位構造体の位置は、完全に等間隔で周期的な配置ばかりでなく周期的位置からのずれを含んでいてもよい。また、単位構造体の間隔を所定の数式や規則に従って変化させるような規則的な配置としてもよい。ここで、規則的な配置とは周期的な配置を含むものである。

【0061】
以上のような右手/左手系複合導波管の応用例としては、バックワード波を利用した位相器や全方向放射漏波アンテナ、分散性を利用したビームスキャンアンテナ、デュアルバンド回路、プレディストータ、パルス成形回路など、その他、強結合バックワードカプラ、零次共振器、デュアルバンド共振器等、数多くの種類の応用機器がある。

【0062】
さらに、右手/左手系の伝送特性の間にバンドギャップを持たないバランス型の右手/左手系複合導波管として設計することができる。バランス型とすることで、小さな周波数範囲の調整で大きな特性変化を得るデバイスを実現することができる。また、誘電率可変媒質、透磁率可変媒質、構造・寸法可変機構などを利用することにより、一定の周波数であっても波数を正負の範囲で大きく変更できるデバイスを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の右手/左手系複合導波管は、低損失かつ動作周波数が広帯域であり、広範囲の産業分野で利用できる。すなわち、本発明の右手/左手系複合導波管を利用して新規な機能を有するアンテナ、位相器、共振器、結合器などの種々の応用機器を実現することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,11 主導波管
2,21 先端短絡スタブ
3,31,32 単位構造体
4,41,51 右手/左手系複合導波管
12 開口
22 第2の先端短絡スタブ
111,112 接続開口
221 放射スロット
411 第1層
412 第2層
413 第3層
414 第4層
415 第5層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8