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明細書 :酸化チタンナノ粒子の合成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-081211 (P2015-081211A)
公開日 平成27年4月27日(2015.4.27)
発明の名称または考案の名称 酸化チタンナノ粒子の合成方法
国際特許分類 C01G  23/053       (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
FI C01G 23/053
B82Y 30/00
B82Y 40/00
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2013-219727 (P2013-219727)
出願日 平成25年10月23日(2013.10.23)
発明者または考案者 【氏名】シャンムガム サラバナン
【氏名】曽我 哲夫
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G047
Fターム 4G047CA02
4G047CB05
4G047CC01
4G047CC02
4G047CC03
4G047CD03
4G047CD07
要約 【課題】従来の強酸等の薬品を用いる代わりに、環境にやさしい原材料を用い、同じ原料系で、ルチル(正方晶系)、アナターゼ(正方晶系)の結晶系の酸化チタンの合成を行う。
【解決手段】三塩化チタン水溶液に花の抽出液を滴下し、攪拌することにより合成する酸化チタンナノ粒子の合成方法であり、三塩化チタン水溶液に添加する花の抽出液の量や乾燥温度を変化させてアナターゼとルチルの割合を変える酸化チタンナノ粒子の合成方法である。抽出液としては黄炎木の花の抽出液が好適である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
三塩化チタン水溶液に花の抽出液を滴下し、攪拌することにより合成する酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項2】
三塩化チタン水溶液に添加する花の抽出液の量を変化させて、合成されるアナターゼとルチルの割合を変える請求項1に記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項3】
三塩化チタン水溶液への花の抽出液の滴下を40℃~200℃で行う、請求項1または2に記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項4】
1mL~50mLの三塩化チタンを水で100mLに希釈した水溶液に5mL~160mLの花の抽出液を滴下する、請求項1~3のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項5】
前記抽出液が黄炎木の花の抽出液である、請求項1~4のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項6】
前記合成された酸化チタンナノ粒子を60℃~90℃で乾燥させる、請求項1~5のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項7】
前記合成された酸化チタンナノ粒子を300℃~800℃で焼成させる、請求項1~6のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項8】
前記合成されたアナターゼ型酸化チタンナノ粒子を、600℃~1000℃で焼成してルチル型酸化チタンナノ粒子を得る、請求項1~7のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項9】
前記花から取り出す抽出液の抽出を40℃~95℃で行なう、請求項1~8のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【請求項10】
前記花から取り出した抽出液をフィルタでろ過する、請求項9に記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料、光触媒、太陽電池、誘電体材料、あるいは光学材料等の幅広い分野で使用される酸化チタンの合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン(TiO)は3つの結晶構造、すわわち、ルチル(正方晶系)、アナターゼ(正方晶系)およびブルッカイト(斜方晶系)を有する。ルチルは顔料等に、アナターゼは光触媒材料に、ブルッカイトはより性能が高い光触媒材料として、それぞれ利用され、また今後の展開が注目されている。上記3つのタイプの酸化チタンはその結晶構造の違いから、用途に応じて製造され、用いられる。例えば、空気中で安定であり、取扱いが簡便な三塩化チタン(TiCl)水溶液を出発原料として、ブルッカイトを製造する方法が開示されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1に示されるように、ブルッカイト単相しか得られず、その他の相を得るには別の出発原料および別の反応系を用いる必要があった。すなわち、所望する相に応じて出発原料および反応プロセスを変更することは、製造プロセスを複雑にして、コスト高になるという問題が生じる。
【0003】
そこで、同様の出発原料から、ルチル、アナターゼおよびブルッカイトの相制御を行う製造方法として、三塩化チタンと酸化剤とpH調製剤とを混合し、三塩化チタンの濃度、酸化剤の種類、および混合溶液のpH値との組み合わせを変える技術が特許文献2に開示されている。しかし、酸化剤は過硫酸アンモニウム、過塩素酸、硝酸、および過酸化水素という強酸から選択しており、これら薬品の処理が必要であり、環境に良くない。またコスト高でもある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2005‐336015
【特許文献2】特開2007‐230809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来の強酸等の薬品を用いる代わりに、環境にやさしい原材料を用いい、同じ原料系で、前記複数種類の結晶系の酸化チタンの合成を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、強酸等に代わり、花の抽出液を用いることを発案した。そしてより具体的には、黄炎木の花の抽出液を用いることを検討し、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の方法が提供される。
【0007】
[1]三塩化チタン水溶液に花の抽出液を滴下し、攪拌することにより合成する酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0008】
[2]三塩化チタン水溶液に添加する花の抽出液の量を変化させて、合成されるアナターゼとルチルの割合を変える前記[1]に記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0009】
[3]三塩化チタン水溶液への花の抽出液の滴下を40℃~200℃で行う、前記[1]または[2]に記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0010】
[4]1mL~50mLの三塩化チタンを水で100mLに希釈した水溶液に5mL~160mLの花の抽出液を滴下する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0011】
[5]前記抽出液が黄炎木の花の抽出液である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0012】
[6]前記合成された酸化チタンナノ粒子を60℃~90℃で乾燥させる、前記[1]~[5]のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0013】
[7]前記合成された酸化チタンナノ粒子を300℃~800℃で焼成させる、前記[1]~[6]のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0014】
[8]前記合成されたアナターゼ型酸化チタンナノ粒子を、600℃~1000℃で焼成してルチル型酸化チタンナノ粒子を得る、前記[1]~[7]のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0015】
[9]前記花から取り出す抽出液の抽出を40℃~95℃で行なう、前記[1]~[8]のいずれかに記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。
【0016】
[10]前記花から取り出した抽出液をフィルタでろ過する前記[9]に記載の酸化チタンナノ粒子の合成方法。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】三塩化チタン水溶液に添加する黄炎木の花の抽出液の量を変化させた時の酸化チタンナノ粒子のX線回折パターンを示す図である。
【図2】三塩化チタン水溶液に添加する黄炎木の花の抽出液の量を変化させた時の酸化チタンナノ粒子のラマン散乱を示す図である。
【図3】焼成する温度を変化させた時の酸化チタンナノ粒子のX線回折パターンを示す図である。
【図4】焼成温度を600℃、抽出液滴下温度50℃で、花の抽出液5mLを加えた時の酸化チタンナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】焼成温度を600℃、抽出液滴下温度50℃で、花の抽出液40mLを加えた時の酸化チタンナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】焼成温度を600℃、抽出液滴下温度70℃で、花の抽出液40mLを加えた時の酸化チタンナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】焼成温度を600℃、抽出液滴下温度90℃で、花の抽出液40mLを加えた時の酸化チタンナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0019】
本発明では、三塩化チタンの水溶液に花の抽出液を滴下し、撹拌して酸化チタンを合成する。抽出する花としては特にマメ科の黄炎木(コウエンボク、学名「Peltophorum pterocarpum」の花が好ましい。前記花から取り出す抽出液の抽出を40℃~95℃で行ない、花から取り出した抽出液を100μm程度のフィルタでろ過することが好ましい。9mLの三塩化チタンに水を加えて100mLとした溶液に、黄炎木の抽出液を5mL~160mL滴下することが好ましく、滴下する際の三塩化チタン水溶液の温度は40℃~200℃が好ましく、50℃~90℃がより好ましい。三塩化チタンに対する花の抽出液の量を増加させることにより、合成される酸化チタンをルチル型酸化チタンからアナターゼ型酸化チタンに変化させる。滴下する時間は滴下量にも依存するが、例えば、毎分1mL~5mLの滴下速度で行って、酸化チタンを合成する。

【0020】
酸化チタンが合成された水溶液から酸化チタンを取り出し、その後60℃~90℃で乾燥させる。乾燥した酸化チタン粒子を300℃~800℃で焼成して粒径が20nm~50nmの酸化チタン粒子を得る。なお、前述したように、三塩化チタンに対する花の抽出液の量を増やすとルチル型酸化チタンに対するアナターゼ型酸化チタンの相対量が増えるが、所定比率以上になるとアナターゼ型酸化チタンのみとなる。また、アナターゼ型酸化チタンを600℃~1000℃の酸素を含む雰囲気中、例えば大気中で焼成することにより、ルチル型酸化チタン粒子を得ることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
本実験に用いる黄炎木の花の抽出は80℃の水に花を入れて30分程度煮沸した。なお、抽出液には雑物が混じっていることが多いので100μmのフィルタで濾過して雑物を除去した。一方、三塩化チタン(LOBACHEMIE Fine chemicals製)9mLに水を加えて100mLに希釈した水溶液を作製した。この水溶液を50~90℃に保持し、5mL~40mLの黄炎木の花の抽出液の滴下を行い、滴下中はマグネチックスターラーで撹拌した。水溶液中から合成した酸化チタン粒子を取り出し、洗浄して、60℃~90℃で乾燥させた。
【実施例】
【0023】
黄炎木の花の抽出液の滴下量を変えて合成される粉末粒子のX線回折評価を行った。なお、合成後の乾燥温度は60℃である。粉末X線回折(XRD)測定(型番RINT2100/RIGAKU社製)により行った。図1にその結果を示す。滴下する抽出液の量を5mLから80mLに多くしたところ、5mLではルチル型酸化チタンのみの回折パターンが得られたが、抽出液の量を増やすとアナターゼ型酸化チタンの量が相対的に増加し、80mLの滴下ではアナターゼ型酸化チタンのみの回折パターンが得られた。合成されたルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンとの重量比を表1に示す。
【実施例】
【0024】
【表1】
JP2015081211A_000003t.gif
【実施例】
【0025】
一方、滴下する抽出液の量を変えたサンプル(抽出液量:5mL、40mL、80mL)のラマン分光スペクトルを測定した。ラマン分光装置(型番NRS-1500W/日本分光社製)を使用した。その結果を図2に示す。この結果からも、抽出液の量を増やすとアナターゼ型酸化チタンの量が相対的に増加することが確認された。
【実施例】
【0026】
次に、アナターゼ型酸化チタンのみの粉末を大気中の600℃~1000℃で熱処理を行ったところ、図3の熱処理温度によるX線回折パターン変化でわかるように、600℃の熱処理ではアナターゼ型酸化チタンであったが、熱処理温度が高くなるとルチル型酸化チタンの比率が高くなり、1000℃の熱処理ではルチル型酸化チタンのみとなった。
【実施例】
【0027】
焼成温度を600℃とし、抽出液滴下温度と抽出液添加量を変化させた時の酸化チタン粒子の透過電子顕微鏡写真をそれぞれ図4~図7に示す。この結果より、滴下温度が高くなると、粒子径が小さくなり、90℃では粒子径は10~20nmであるが、50℃では粒子径が40~100nmあるいはそれ以上となることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の酸化チタン粒子はその粒子径が10~200nmと小さく、顔料、光触媒、太陽電池、誘電体材料、あるいは光学材料等に利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6