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明細書 :UVB-UVAハイブリッド型紫外線吸収剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-231101 (P2013-231101A)
公開日 平成25年11月14日(2013.11.14)
発明の名称または考案の名称 UVB-UVAハイブリッド型紫外線吸収剤
国際特許分類 C09K   3/00        (2006.01)
A61K   8/41        (2006.01)
A61Q  17/04        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
FI C09K 3/00 104D
A61K 8/41
A61Q 17/04
A61Q 19/00
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2012-102736 (P2012-102736)
出願日 平成24年4月27日(2012.4.27)
発明者または考案者 【氏名】吉原 利忠
【氏名】木村 知代
【氏名】金子 亜希
【氏名】飛田 成史
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査請求 未請求
テーマコード 4C083
Fターム 4C083AC551
4C083AC552
4C083BB46
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC11
4C083CC19
4C083EE17
4C083FF01
要約 【課題】新たな紫外線吸収剤を提供する。
【解決手段】一般式B-L-Aで表される構造を有する化合物。(式中、Aは、320nm~400nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表し;Bは、280nm~320nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表し;Lは、必要により存在する連結基を表し、mは、1~6の整数を表し;nは、1~6の整数を表す;A及びBは、分子内エネルギー移動が可能な様式で連結されている。)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)で表される構造を有する化合物。
m-L-An (I)
(式中、Aは、320nm~400nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表し;
Bは、280nm~320nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表し;
Lは、必要により存在する連結基を表し、
mは、1~6の整数を表し;
nは、1~6の整数を表す;
A及びBは、分子内エネルギー移動が可能な様式で連結されている。)
【請求項2】
Bは、Aと連結されないときは320nm~400nmに蛍光を発する化合物の残基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aは、光熱交換効率が、内部変換量子収率として0.95以上の紫外線吸収性残基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Aは、下記一般式(II)で表される紫外線吸収性残基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【化1】
JP2013231101A_000007t.gif
(式中、R1は、炭素数1~6のアルキルを表し、
2は、ヒドロキシ、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のアルコキシ、炭素数1
~3のアシルオキシ、シアノ、カルボキシ、アミドを表す。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物を含有する、紫外線吸収剤。
【請求項6】
請求項5に記載の紫外線吸収剤を含有する、皮膚外用剤。
【請求項7】
サンスクリーン用である、請求項6に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
紫外線吸収性残基A及び紫外線吸収性残基Bを連結させる工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤の開発技術に関し、詳しくはUVB吸収を示す化合物と、UVA吸収および高い効率で光熱変換反応を示す化合物を連結した化合物、それを用いた紫外線吸収剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光は生命活動維持において必要不可欠な要素の1つであると同時に、時として、生命活動に対して危機的に作用することもある。特に紫外線は、皮膚中のさまざまな物質と光化学反応を起こし、日焼けだけでなく、皮膚がんや光老化(しわ、しみ)を誘発することが知られている。紫外線は波長領域からA領域紫外線(UVA)(400-320nmの紫外線)、B領域紫外線(UVB)(320-280nmの紫外線)、C領域紫外線(UVC)(280nm以下の紫外線)に区別される。この中で、UVA、UVBは地表まで到達する紫外線であり、UVAは曇り空においても地表まで到達する。また、UVBは表皮に作用するのに対して、UVAは波長が長く真皮にまで作用し、UVBと比較して20倍以上含まれる。このような紫外線から皮膚を防御するために、サンスクリーン剤が開発されている。
【0003】
サンスクリーン剤は、紫外線散乱剤と紫外線吸収剤に大別される。前者はナノ粒子化された酸化チタンや酸化亜鉛などの無機化合物が主に使用されており、後者は紫外光領域に吸収を示す有機化合物が使用されている。近年、ナノ粒子が人体へ及ぼす悪影響について研究が進められており、また、酸化チタンや酸化亜鉛は、皮膚に塗ると皮膚が白くなるなどの問題点が指摘されている。このため、無機化合物を中心とした紫外線散乱剤の使用は減少傾向にあり、それに伴い有機化合物を中心とした紫外線吸収剤の重要性が増している。
【0004】
現在、使用されているサンスクリーン剤は、以下に示すUVBを主に吸収するメトキシケイ皮酸エチルヘキシルエルテル、ジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、UVAを主に吸収するオキシベンゾン3、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンが主である。これらの化合物は、吸収した紫外線エネルギーをシス-トランス異性化反応、分子内電荷移動、分子内プロトン移動反応によって高効率で熱エネルギーに変換する特徴を有する。これらの反応には副反応が含まれており、化合物の光安定性を減少させているが、このような高い光熱変換を示す化合物が少ないため、現状の化合物の使用に止まっている。
【0005】
【化1】
JP2013231101A_000002t.gif

【0006】
新規な紫外線吸収剤を開発すべく、特許文献1では、UVBを吸収する化合物とUVAを吸収する化合物を連結した化合物を、紫外線吸収剤として用いることが記載されている。特許文献1の技術は、UVBを吸収する化合物とUVAを吸収する化合物を連結して幅広い紫外線領域を吸収する紫外線吸収剤を得る技術である。しかし、UVBを吸収する化合物とUVAを吸収する化合物間のエネルギー移動については、記載されていないし、UVBを吸収する化合物としてUVA領域に蛍光を発する化合物は生体への悪影響のため使用できない。
【0007】
特許文献2では、UV吸収分子と、UV吸収分子からの一重項励起状態エネルギーを受け入れて一重項励起状態をクエンチする化合物を含む、光安定化された光活性組成物が記載されている。特許文献2の技術は、UVB又はUVAを吸収する分子と、同分子の一重項励起状態をクエンチするアルコキシクリレン化合物を混合して、光安定化された光活性組成物を得る技術である。しかし、この方法では複数の化合物を配合するため調製が煩雑であり、また、アルコキシクリレン化合物の生体への影響も十分検討されていない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-96984号公報
【特許文献2】特表2010-535779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような背景において、より紫外線吸収能及び光熱変換効率が高く、安定性が高い紫外線吸収剤の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、UVB吸収を示す化合物(UVB吸収剤)と、UVA吸収および高い効率で光熱変換反応を示す化合物(UVA吸収剤)を連結することにより、UVB吸収剤においてUVB吸収により得られたエネルギーを、分子内エネルギー移動反応によって、UVA吸収剤に移動させ、熱失活させる化合物を開発した。これにより、UVB吸収に使用できる化合物は、光熱変換反応を示す必要がなくなり、UVBに吸収を示す全ての化合物が紫外線吸収剤の候補となり、新しい紫外線吸収剤の開発につながる。
すなわち、上記の課題に合致した紫外線吸収剤及び紫外線吸収剤の開発を可能にする技術が達成されることを知見し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
<1> 下記一般式(I)で表される構造を有する化合物。
m-L-An (I)
(式中、Aは、320nm~400nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表し;
Bは、280nm~320nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表し;
Lは、必要により存在する連結基を表し、
mは、1~6の整数を表し;
nは、1~6の整数を表す;
A及びBは、分子内エネルギー移動が可能な様式で連結されている。)
<2> Bは、Aと連結されないときは320nm~400nmに蛍光を発する化合物の残基である、<1>に記載の化合物。
<3> Aは、光熱交換効率が、内部変換量子収率として0.95以上の紫外線吸収性残基である、<1>または<2>に記載の化合物。
<4> Aは、下記一般式(II)で表される紫外線吸収性残基である、<1>~<3>のいずれかに記載の化合物。
【0013】
【化2】
JP2013231101A_000003t.gif

【0014】
(式中、R1は、炭素数1~6のアルキルを表し、
2は、ヒドロキシ、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のアルコキシ、炭素数1
~3のアシルオキシ、シアノ、カルボキシ、アミドを表す。)
<5> <1>~<4>のいずれかに記載の化合物を含有する、紫外線吸収剤。
<6> <5>に記載の紫外線吸収剤を含有する、皮膚外用剤。
<7> サンスクリーン用である、<6>に記載の皮膚外用剤。
<8> 紫外線吸収性残基A及び紫外線吸収性残基Bを連結させる工程を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、光熱変換効率の高いUVA吸収剤とUVB吸収剤を連結することにより、UVB吸収剤が吸収した紫外線エネルギーを、分子内エネルギー移動反応を利用し、UVA吸収剤に移動させる。これにより、UVB吸収剤に求められていた高い光熱変換効率は必要となくなり、UVBに吸収を示す様々な化合物(例えば蛍光性化合物)が新しい紫外線吸収剤の候補となる。すなわち、新たな紫外線吸収剤を開発するための技術が提供される。
また、上記のとおり、本発明の化合物としては、UVB吸収剤には高い光熱変換効率は必須ではない。また、高い光安定性についても必須ではない。したがって、高い紫外線吸収効率を有する化合物であれば、光熱変換効率や光安定性を必須とすることなく、紫外線吸収剤の候補とすることが可能である。したがって、様々な化合物から、より紫外線吸収能の高い紫外線吸収剤、あるいは紫外線吸収能以外の特性(例えば透明性、皮膚刺激性低減等)に優れた紫外線吸収剤を開発することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、UVA吸収剤、UVB吸収剤及びUVA-UVBハイブリッド型化合物の紫外線吸収、蛍光、蛍光励起スペクトルを示す図である。実線は紫外線吸収スペクトル、点線は蛍光スペクトル、太線は蛍光励起スペクトルを示す。
【図2】図2は、UVA吸収剤、UVB吸収剤及びUVA-UVBハイブリッド型化合物の紫外線吸収、蛍光、蛍光励起スペクトルを示す図である。実線は紫外線吸収スペクトル、点線は蛍光スペクトル、太点線は蛍光励起スペクトルを示す。
【図3】図3は、UVB吸収剤及びUVA-UVBハイブリッド型化合物の紫外線吸収性残基Bの蛍光スペクトルを示す図である。実線はUVB吸収剤のスペクトル、点線はハイブリッド型化合物のスペクトルを示す。
【図4】図4Aは、UVA-UVBハイブリッド型化合物と従来のサンスクリーン剤の光照射前後の吸光度を示す図である。上から光照射前、光照射1時間後、光照射2時間後のプロットである。図4Bは、光照射前の吸光度に対する光照射後の吸光度の割合を示す図である。
【図5】図5Aは、UVB吸収剤、並びにUVA吸収剤及びUVB吸収剤の混合物の吸光度を示す図である。図5Bは、UVB吸収剤、並びにUVA吸収剤及びUVB吸収剤の混合物の蛍光スペクトルを示す図である。実線はUVB吸収剤、点線はUVA吸収剤及びUVB吸収剤の混合物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)化合物
本発明は、下記一般式(I)で表される構造を有する化合物に関する。
m-L-An (I)
(式中、Aは、320nm~400nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表し;
Bは、280nm~320nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表し;
Lは、必要により存在する連結基を表し、
mは、1~6の整数を表し;
nは、1~6の整数を表す;
A及びBは、分子内エネルギー移動が可能な様式で連結されている。)

【0018】
一般式(I)における紫外線吸収性残基Bは、280nm~320nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表す。
上記のとおり、本発明の化合物においては、光熱変換効率の高いUVA吸収性残基(紫外線吸収性残基A)とUVB吸収性残基(紫外線吸収性残基B)を連結することにより、紫外線吸収性残基Bが吸収した紫外線エネルギーを、分子内エネルギー移動反応を利用し、紫外線吸収性残基Aに移動させる。すなわち、紫外線吸収性残基Bとしては、光熱変換
効率や光安定性を必須とすることなく、高い紫外線吸収効率を有する化合物であれば使用できる。
なお、紫外線吸収性残基Bから紫外線吸収性残基Aへのエネルギー移動の方向は、吸収波長の範囲からみて、紫外線吸収性残基Bのエネルギーが紫外線吸収性残基Aよりも高くなることから明らかである。
このことにより、従来UVB吸収剤として使用されている化合物はもちろん、従来UVB吸収剤として使用することができなかった、例えば、ビフェニル誘導体、ナフタレン誘導体等の、単独では320nm~400nmに蛍光を発する蛍光性物質等であっても、本発明の化合物においては、使用することができる。

【0019】
紫外線吸収性残基Bとしては、280nm~320nmに極大吸収を有する化合物であればよい。例えば、紫外線吸収性残基Bは、紫外線吸収性残基Bに水素原子が1つ付加した化合物の極大吸収波長におけるモル吸光係数が10000以上、20000以上、30000以上である化合物であり得る。モル吸光係数は、市販の分光光度計により、極大吸収波長における吸光度を測定し、その数値及びモル濃度から求めることが可能である。紫外線吸収性残基Bとしては、蛍光量子収率0.05以上である化合物の残基であり得る。蛍光量子収率は、市販の分光光度計により、蛍光強度を測定し、その数値及び標準物質との対比から求めることが可能である。

【0020】
紫外線吸収性残基Bとしては、従来UVB吸収剤として使用されている化合物も用いることができ、例えばトリアジン系(トリアジン構造を含む化合物:以下同様)、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、シアノアクリレート系、安息香酸エステル系等の化合物が挙げられる。

【0021】
一般式(I)における紫外線吸収性残基Aは、320nm~400nmに極大吸収を有する紫外線吸収性残基を表す。
例えば、紫外線吸収性残基Aは、紫外線吸収性残基Aに水素原子が1つ付加した化合物の極大吸収波長におけるモル吸光係数が5000以上、10000以上、20000以上である化合物であり得る。

【0022】
本発明の化合物において、紫外線吸収性残基Aは、紫外線吸収性残基Bが吸収した紫外線エネルギーを、分子内エネルギー移動反応を利用し、受け入れ、紫外線吸収性残基Aにおける光熱交換反応により、熱失活させる機能を有する。すなわち、紫外線吸収性残基Aとしては、高い光熱変換効率を有するものが好適に使用できる。
例えば、紫外線吸収性残基Aは、紫外線吸収性残基Aに水素原子が1つ付加した化合物の光熱変換効率が、内部変換量子収率として0.95以上、0.97以上、0.99以上である化合物であり得る。内部変換量子収率は、市販の量子収率測定装置により、蛍光量子収率を測定し、また、光音響測定法を用いて、項間交差量子収率を決定し、それらの値を1から引くことにより、求めることが可能である。

【0023】
紫外線吸収性残基Aとしては、上記の条件を満たすものであれば、従来UVA吸収剤として使用されている化合物も用いることができ、例えばトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、p-アミノ安息香酸系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、インドール系化合物、ベンザルマロネート系、サリチル酸系、シュウ酸アニリド系、ホルムアミジン系、ベンゾジチオール系、アセトフェノン系等の化合物が挙げられる。

【0024】
紫外線吸収性残基Aとして、具体的には、下記一般式(II)で表される紫外線吸収性残基であり得る。

【0025】
【化3】
JP2013231101A_000004t.gif

【0026】
(式中、R1は、炭素数1~6のアルキルを表し、
2は、ヒドロキシ、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のアルコキシ、炭素数1
~3のアシルオキシ、シアノ、カルボキシ、アミドを表す。)
ここで、R1は、炭素数1~6のアルキル、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3の
アルキル(メチル)であってよい。
なお、本発明の効果を妨げない限り、一般式(II)で表される紫外線吸収性残基は、ベンゼン環に置換基を有してもよい。置換基としては、ヒドロキシ、炭素数1~3(好ましくは1又は2)のアルキル、炭素数1~3(好ましくは1又は2)のアルコキシ、炭素数1~3のアシルオキシ、シアノ、カルボキシ、アミド(カルバモイル)等が挙げられる。

【0027】
一般式(I)における連結基Lは、紫外線吸収性残基Bが吸収した紫外線エネルギーを、紫外線吸収性残基Aへ分子内エネルギー移動が可能な様式で、紫外線吸収性残基A及びBを連結するものである。分子内エネルギー移動が可能かどうかについては、後記のように、例えば得られた化合物の蛍光励起スペクトルを測定することにより、確認することができる。
このような条件を満たすものであれば、特に限定されず、例えば、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルキニル、重合度2~50のポリエチレングリコール、アミノ酸残基1~10のオリゴペプチドであり得る。
なお、連結基Lは、紫外線吸収性残基A及び紫外線吸収性残基Bが、連結基を有さずに直接連結可能な構造を有する場合には、存在しなくてもよい。
本明細書において、紫外線吸収性残基Aと連結基Lを合わせて紫外線吸収性残基Aと呼ぶことがある。また、紫外線吸収性残基Bと連結基Lを合わせて紫外線吸収性残基Bと呼ぶことがある。

【0028】
本発明の化合物としては、本発明の効果を妨げない限り、すなわち、紫外線吸収性残基Bから紫外線吸収性残基Aへの分子内エネルギー移動が可能である限り、以下の構造であり得る。

【0029】
【化4】
JP2013231101A_000005t.gif

【0030】
(式中、mは1~6の整数を表し;
nは1~6の整数を表し、
xは1~10の整数を表し;
yは1~10の整数を表す。)

【0031】
(2)紫外線吸収剤及び皮膚外用剤
本発明の化合物は、紫外線吸収能や光安定性の高い化合物とすることが可能であり、紫外線吸収剤として有用である。
すなわち、本発明のさらなる形態は、本発明の化合物を含有する、紫外線吸収剤に関する。
また、本発明は、本発明の紫外線吸収剤を含有する、皮膚外用剤に関し、特にサンスクリーン用皮膚外用剤に関する。

【0032】
本発明の皮膚外用剤の形態は、本発明の効果が発揮されるものであれば特に限定されない。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液等のスキンケア化粧料、下地用化粧料、ファンデーション、口紅、フェイスカラー、アイライナー等のメーキャップ化粧料等が挙げられる。
本発明の紫外線吸収剤を皮膚外用剤に配合する場合、その配合量は目的とする紫外線吸収能に応じて適宜決定すればよいが、通常組成物中0.001~20重量%、又は0.01~10重量%であってよい。紫外線吸収剤としては、本発明の化合物から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0033】
本発明の皮膚外用剤には、上記必須成分の他に、通常化粧品や医薬品に配合可能な成分、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、被膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、アミノ酸類、有機アミン類、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、酸化防止剤、香料、粉体、色材、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
本発明の皮膚外用剤には、本発明の化合物以外の有機化合物系紫外線吸収剤、又は無機化合物系紫外線散乱剤等を必要に応じて適宜配合することができる。

【0034】
また、本発明にかかる紫外線吸収剤は、耐紫外線材料として、皮膚外用剤以外の製品、例えば、塗料、染料、顔料、各種樹脂、合成ゴム、ラテックス、フィルム、繊維等に配合することができる。
本発明の紫外線吸収剤を皮膚外用剤に配合する場合、その配合量は、通常0.001~20重量%、又は0.01~10重量%であってよい。

【0035】
(3)製造方法
本発明は、紫外線吸収性残基A及び紫外線吸収性残基Bを連結させる工程を含む、本発明の化合物の製造方法に関する。
すなわち、本発明の化合物は、一般式(I)で表される構造を有する化合物であり、本発明の化合物の製造方法としては、必要に応じて連結基Lを介して、紫外線吸収性残基A及び紫外線吸収性残基Bを分子内エネルギー移動が可能な様式で連結させる工程を含むものである。

【0036】
紫外線吸収性残基A及び紫外線吸収性残基Bの連結は、紫外線吸収性残基A、紫外線吸収性残基B及び連結基Lの種類等に応じて、適当な溶媒の存在又は非存在下、紫外線吸収性残基A及び紫外線吸収性残基B並びに必要に応じて連結基Lを混合し、有機合成化学においてよく知られている種々の結合形成反応を利用し、適当な温度、時間等の反応条件下行うことができる。例えば、エステル結合形成反応、炭素-炭素結合形成反応、エーテル結合形成、アミド結合形成反応等が挙げられる。まず紫外線吸収性残基A又はBと連結基Lを連結し、その後、紫外線吸収性残基B又はAと連結してもよい。反応後、適当な方法で精製してもよい。

【0037】
このような本発明の製造方法によって得られた化合物は、紫外線吸収性残基Bが吸収した紫外線エネルギーを、分子内エネルギー移動反応を利用し、紫外線吸収性残基Aに移動可能である。このような構造上の特徴により、本発明の効果を奏する。
得られた化合物において分子内エネルギー移動が可能かどうかについては、例えば得られた化合物の蛍光励起スペクトルを測定することにより、確認することができる。通常紫外線吸収性残基Bで蛍光が認められない観測波長において蛍光励起スペクトルを測定し、紫外線吸収性残基Aの吸収波長領域に加えて、紫外線吸収性残基Bの吸収波長領域においても励起が確認された場合、紫外線吸収性残基Bから紫外線吸収性残基Aへの分子内エネルギー移動が起こっていることが確認できる。蛍光励起スペクトルは、市販の分光光度計により、観測波長における蛍光強度を励起波長を変えて測定することで測定することが可能である。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
<実施例1>MBCE-HEAAP(4-メトキシビフェニル-4'-カルボン酸エチルエステル-N-ヒドロキシエチル-o-アミノアセトフェノン)、MNCE-HEAAP(2-メトキシナフタレン-6-カルボン酸エチルエステル-N-ヒドロキシエチル-o-アミノアセトフェノン
)、BDCE-HEAAP(ビフェニル-4,4'-ジカルボン酸エチルエステル-N-ヒドロキ
シエチル-o-アミノアセトフェノン)の合成
以下に示す化合物を合成した。UVA吸収剤は、励起状態近接効果により高い内部変換量子収率(Φic>0.99,n-ヘキサン中)を示すo-アミノアセトフェノン誘導体(HEAAP)を用いた。UVB吸収剤には、ビフェニル、メトキシビフェニル、メトキシナフタレン誘導体を用いた。
内部変換量子収率は、市販の量子収率測定装置(浜松ホトニクス製;C9920-02)により、蛍光量子収率を測定し、また、光音響測定法を用いて、項間交差量子収率を決定し、それらの値を1から引くことにより、決定した(溶媒:n-ヘキサン、測定条件:室温)。
【実施例】
【0040】
(合成方法)
N-ヒドロキシエチル-o-アミノアセトフェノン(HEAAP)の合成
HEAAPは、ジメチルホルミアミド(DMF)を溶媒(10mL)、炭酸カリウム(K2CO3,20g)
を塩基として用いて、o-AAP(2.2g)とヨードエタノール(25g)を100℃で4時間撹拌することで得た。粗生成物の精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開剤:ヘキサン:酢酸エチル(1:1 v/v))およびGPC(展開剤:クロロホルム)を用いて行った(収量:1.34g,収率:45%)。化合物の同定は、1H-NMRで行った。
【実施例】
【0041】
1H-NMR (300 Mz, CDCl3, TMS, RT):δ 9.02(1H, br), 7.77-7.74(1H, d), 7.39-7.34(1H,
t), 6.78-6.75(1H, d), 6.64-6.59(1H, t), 3.89-3.86(2H, t), 3.45-3.42(2H, t), 2.58(3H, s)
【実施例】
【0042】
MBCE-HEAAPの合成
MBCE-HEAAPは、DMFを溶媒(80mL)、EDC塩酸塩(767mg)を縮合剤、N,N-ジメチルアミ
ノピリジン(DMAP,489mg)を添加剤として用いて、HEAAP(717mg)と4'-メトキシビフェニル-4-カルボン酸(Alfa Aesar製)(913mg)を室温にて20時間撹拌することで得た。粗生成物の精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開剤:クロロホルム)およびGPC(展開剤:クロロホルム)を用いて行った(収量:1.08g,収率:69%)。化合物の同
定は、1H-NMRで行った。
【実施例】
【0043】
1H-NMR (300 Mz, CDCl3, TMS, RT):δ 9.19(1H, br), 8.11-8.09(2H, d), 7.78-7.75(1H,
d), 7.63-7.55(4H, q), 7.41-7.36(1H, t), 7.00-6.98(2H, d), 6.85-6.82(1H, d), 6.66-6.61(1H, t), 4.57-4.53(2H, t), 3.85(3H, s), 3.68-3.63(2H, q), 2.59(3H, s)
【実施例】
【0044】
MNCE-HEAAPの合成
MNCE-HEAAPは、DMFを溶媒(20mL)、EDC塩酸塩(202mg)を縮合剤、N,N-ジメチルアミ
ノピリジン(DMAP,128mg)を添加剤として用いて、HEAAP(186mg)と2-メトキシナフタ
レン-6-カルボン酸(東京化成製)(205mg)を室温にて20時間撹拌することで得た。粗生成物の精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開剤:クロロホルム)およびGPC(展開剤:クロロホルム)を用いて行った(収量:283mg,収率:65%)。化合物の同定
は、1H-NMRで行った。
【実施例】
【0045】
1H-NMR (300 Mz, CDCl3, TMS, RT):δ 9.22(1H, br), 8.56(1H, s), 8.05-8.02(1H, d), 7.85-7.74(3H, m), 7.40(1H, s), 7.20-7.15(2H, m), 6.88-6.85(1H, d), 6.67-6.62(1H,
t), 4.58-4.56(2H, d), 3.94(3H, s), 3.70-3.68(2H, d), 2.56(3H, s)
【実施例】
【0046】
BDCE-HEAAPの合成
BDCE-HEAAPは、DMF(40mL)を溶媒、EDC塩酸塩(257mg)を縮合剤、N,N-ジメチルアミ
ノピリジン(DMAP,150mg)を添加剤として用いて、HEAAP(216mg)とビフェニル-4,4'-
ジカルボン酸(東京化成製)(132mg)を室温にて20時間撹拌することで得た。粗生成物
の精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開剤:クロロホルム)およびGPC(
展開剤:クロロホルム)を用いて行った(収量:112mg,収率:37%)。化合物の同定は、1H-NMRで行った。
【実施例】
【0047】
1H-NMR (300 Mz, CDCl3, TMS, RT):δ 9.19(2H, br), 8.16-8.13(4H, d), 7.79-7.76(2H, d), 7.70-7.67(4H, d), 7.43-7.38(2H, t), 6.85-6.82(2H, d), 6.67-6.61(2H, t), 4.58-4.54(4H, t), 3.69-3.64(4H, q), 2.59(6H, s)
【実施例】
【0048】
【化5】
JP2013231101A_000006t.gif
【実施例】
【0049】
(分子内エネルギー移動の確認)
MBCE-HEAAP、MNCE-HEAAP、BDCE-HEAAPのn-ヘキサン中における紫外線吸収、蛍光、蛍光励起スペクトルおよびMBCE、MNCE、BDCE、HEAAPの紫外線吸収、蛍光スペクトルを、分光光度計(日立製;F-7000)に
て測定(溶媒:n-ヘキサン、光路長1cm)した。
【実施例】
【0050】
図1にMBCE-HEEAP、MNCE-HEAAPのn-ヘキサン中における吸収、蛍光、蛍光励起スペクトルおよびMBCE、MNCE、HEAAPの吸収、蛍光スペクトルを示す。図2に、BDCE-HEAAPのn-ヘキサン中における吸収、蛍光、蛍光励起スペクトルおよびBDCE、HEAAPの吸収、蛍光スペクトルを示す。それぞれの化合物でUVB領域にMBCE、MNCE、BDCEに由来する吸収、およびUVA領域にHEAAPに由来する吸収が観測された。
【実施例】
【0051】
ハイブリッド型化合物において紫外線吸収性残基Bから紫外線吸収性残基Aに分子内エネルギー移動が起きているか確認するために、HEAAPの蛍光を観測波長(480nm)として蛍光励起スペクトルを測定した。測定された蛍光励起スペクトルは、HEAAPの吸収波長領域に加えて、紫外線吸収性残基Bの吸収波長領域においても観測されているため、分子内エネルギー移動が起きていることが確認された。
【実施例】
【0052】
(分子内エネルギー移動効率の決定)
分子内エネルギー移動効率の決定は、UVB吸収剤の蛍光強度とハイブリッド型化合物の紫外線吸収性残基Bを光励起して得られた蛍光強度を比較することで行った。測定装置及び条件については、上記と同様である。
図3に蛍光スペクトルを示す。MBCE-HEAAP、MNCE-HEAAP、BDCE-HEAAPは、結果を分かりやすく示すため、蛍光強度をそれぞれ500倍、100倍、500倍として示した。MBCE-HEAAP、MNCE-HEAAP、BDCE-HEAAPの蛍光強度はともにMBCE、MNCE、BDCEの蛍光強度と比較して、1/1000に減少している。これより、電子移動反応など他の過程が無いと仮定すると、分子内エネルギー移動効率は、99.9%以上となり、蛍光性化合物を非蛍光性化合物に変換できることが明らかとなった。
【実施例】
【0053】
(光安定性の評価)
光安定性の評価は、ソーラシミュレータ(株式会社コスモステクニカルセンター)を用いて行った。MBCE-HEAAP及び対照化合物[Uvinul(登録商標) A plus B(BASF製;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルエルテルの混合品)]をセバシン酸ジエチルに溶解させ、溶液をPMMA板に均一塗布し光照射(照射機:ATLAS Suntest CPS+,5061.6kJ/m2,2時間)を行った。ハイブリッド型化合物及び対照化合物の吸収スペクトルを測定
した。測定装置及び条件については、上記と同様である。
【実施例】
【0054】
図4にハイブリッド型化合物及び対照化合物の吸収スペクトル変化及び照射時間に対する吸収面積(290-320nm)のプロットを示す。MBCE-HEAAPの光安定性は、市販されているサンスクリーン剤Uvinul A plus Bの光安定性とほぼ同程度であり、本発明の概念が新しいサンスクリーン剤の開発に有効であることが明らかとなった。
【実施例】
【0055】
(ハイブリッド型化合物による分子内エネルギー移動の確認)
UVA吸収剤及びUVB吸収剤を連結せずに混合しただけではエネルギーが伝わらず、ハイブリッド型化合物により分子内エネルギー移動が起こることを裏付けるため、以下の実験を行った。
【実施例】
【0056】
図5Aに示すように、混合物とUVB吸収剤の290nmでの吸光度を等しくして、蛍光スペクトルを測定した。測定装置及び条件については、上記と同様である。
その結果、蛍光強度(図5B)にほとんど変化がないことが確認された。混合物でもエ
ネルギー移動が起きていれば、混合物の蛍光強度が小さくなるはずである。また、セルや光学系の影響を避けるために蛍光寿命の測定も行った。蛍光寿命も混合物とUVB吸収剤で同じ値が得られた。
以上のように、混合物及びUVB吸収剤の蛍光強度、蛍光寿命がほとんど変化していないため、UVA吸収剤及びUVB吸収剤の混合物では分子間のエネルギー移動は起きていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
UVB-UVAハイブリッド型紫外線吸収剤として、化粧品、医療品、耐紫外線材料等に利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4