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明細書 :小動物用の脳測定用電極ユニットとそれを用いた測定システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5843201号 (P5843201)
登録日 平成27年11月27日(2015.11.27)
発行日 平成28年1月13日(2016.1.13)
発明の名称または考案の名称 小動物用の脳測定用電極ユニットとそれを用いた測定システム
国際特許分類 A61B   5/0492      (2006.01)
A61B   5/0478      (2006.01)
A61B   5/0408      (2006.01)
A61B   5/0476      (2006.01)
A61B   5/0402      (2006.01)
A61B   5/055       (2006.01)
G01R  33/48        (2006.01)
A01K  67/00        (2006.01)
FI A61B 5/04 300J
A61B 5/04 300D
A61B 5/04 320A
A61B 5/04 310A
A61B 5/05 382
A61B 5/05 390
G01N 24/08 510Y
A01K 67/00 D
請求項の数または発明の数 16
全頁数 30
出願番号 特願2012-511709 (P2012-511709)
出願日 平成23年4月21日(2011.4.21)
国際出願番号 PCT/JP2011/059876
国際公開番号 WO2011/132756
国際公開日 平成23年10月27日(2011.10.27)
優先権出願番号 2010098320
優先日 平成22年4月21日(2010.4.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年3月25日(2014.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】ホルヘ リエラ
【氏名】住吉 晃
【氏名】川島 隆太
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】湯本 照基
参考文献・文献 実開平01-167206(JP,U)
特開2002-272691(JP,A)
特開2006-149562(JP,A)
特開2006-318450(JP,A)
国際公開第2009/104644(WO,A1)
調査した分野 A61B 5/0408
A01K 67/00
A61B 5/0402
A61B 5/0476
A61B 5/0478
A61B 5/0492
A61B 5/055
G01R 33/48
特許請求の範囲 【請求項1】
小動物の頭皮又は脳表面に被覆され複数の貫通孔を有する基部と、複数の電極とを備え、
上記複数の電極のそれぞれは、上記複数の貫通孔のそれぞれに挿入され、
上記複数の電極のそれぞれは、絶縁性の内側の第1管と、該第1管を収容する絶縁性の外側の第2管と、該第1管内に設けられる電極部と、該電極部に接続されて外部に脳波信号を取り出す引き出し用導線と、上記管内に充填されるペーストと、を備え、
上記第1管及び第2管は上記頭皮又は脳表面に対して起立するよう上記貫通孔に取り付けられ、
上記第2管は、上記基部に固定され、
上記第1管は、上記小動物の頭皮又は脳表面の動きに従動して上記第2管内で軸方向へ移動可能であり、
上記電極部は線状に形成されて上記頭皮又は脳表面に対して起立するように上記第1管内に充填されたペースト内に設けられていることを特徴とする、小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項2】
前記第1管と前記第2管との動摩擦係数が0.05~0.4となるように、前記第1管の外径は、前記第2管の内径よりも小さく設定されることを特徴とする、請求項1に記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項3】
前記第1管の外径と前記第2管の内径との差は、0.01~0.1mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項4】
前記第2管の長さは、前記貫通孔と同程度の長さであり、前記基部に垂直から±15度の誤差範囲で固定されることを特徴とする、請求項1~3の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項5】
前記電極部は下端とその側面とが当該ペーストに接触していることを特徴とする、請求項1~4の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項6】
前記電極部の材料は、白金、金、銀、ステンレス、イリジウム、スズの何れかであることを特徴とする、請求項1~5の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項7】
前記ペーストは、脳波用ペーストと生理食塩水の混合物からなることを特徴とする、請求項1~6の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項8】
前記ペーストの伝導率は、0.01S/m~10S/mであることを特徴とする、請求項に記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項9】
前記基部は、さらに、皮質内計測用の電極が挿入される開孔部を備えることを特徴とする、請求項1~8の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項10】
さらに、前記管に光ファイバを備えることを特徴とする、請求項1~8の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニット。
【請求項11】
前記請求項1~10の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニットを用いたことを特徴とする、脳波測定システム。
【請求項12】
前記請求項1~10の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニットを用いたことを特徴とする、脳波及びf-MRI同時測定システム。
【請求項13】
前記請求項1~10の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニットを用いたことを特徴とする、脳波及びNIRS同時測定システム。
【請求項14】
前記請求項1~10の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニットを用いたことを特徴とする、脳波とf-MRIとNIRSとの同時測定システム。
【請求項15】
前記請求項1~10の何れかに記載の小動物用の脳測定用電極ユニットを用いたことを特徴とする、脳波と皮質内計測の同時測定システム。
【請求項16】
さらに、心電図測定ができることを特徴とする、請求項1115の何れかに記載の測定システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物用の脳測定用電極ユニットと、それを用いた測定システムに関する。さらに詳しくは、本発明は、小動物用の脳波測定用電極ユニットと、それを用いた脳波計測とf-MRIその他の計測とが同時に行える測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging、MRI)は、核磁気共鳴現象を用いて生体内の情報を画像化する方法である。さらに、近年f-MRIが開発されている。f-MRI(機能的磁気共鳴画像法)とは、機能的(functional)MRIの略称であり、MRIによる脳機能の画像化手法の一つである。脳の神経活動の発火に伴い、核磁気共鳴信号の変化が脳の局所部位に引き起こされる。これがf-MRIの原理である。
【0003】
さらに、従来から生体の脳波計測法(Electroencephalogram、EEG)が行われている。近年は、世界中の研究機関で生体のヒトを対象にしたEEG(脳波計測法)とf-MRIとの同時計測が数多く行われてきている。例えば、特許文献1には、ヒトの脳波測定用ヘルメツトが開示されている。特許文献2には、ヒトの脳波測定用の電極が開示されている。
【0004】
一方、ヒトに比べて脳の体積が小さいラットのような小動物の場合には、特許文献1及び2のような大きな電極は使用できない。小動物のEEGにおいては、限られた脳の空間に微小な電極を固定することが困難であることや頭皮と電極との間に生じるインピーダンスを低く保つのが困難である。このため、技術的な難しさから、現在まで小動物を対象としたEEG-fMRIの同時計測技術は殆ど報告されていない。
【0005】
従来の小動物を用いたEEGとfMRIとの同時計測の手法では、単に金属又は炭素電極を小動物の脳表面に置いて固定するだけであった。このため、小動物(ラットやマウスなど)を対象にしたEEGとf-MRIとの同時計測の成功例は、数えるほどしか存在しない(非特許文献1、非特許文献2参照)。しかも、このようなEEG-fMRIにおけるEEG測定は単一の電極を用いたものであり(非特許文献1参照)、部分的な脳波しか検出できないので脳全体を研究対象とする場合には、その効力を発揮しない。
特許文献3,4には、複数のEEG用の測定線或いは電極を用いた装置が開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平05-115451号公報
【特許文献2】特開2008-018017号公報
【特許文献3】国際公開第2007/59069号
【特許文献4】米国特許第6602220号明細書
【0007】

【非特許文献1】S. M. Mirsattari, J. R. Ives, L. S. Leung, and R. S. Menon, “EEG Monitoring during Functional MRI in Animal Models”, Epilepsia, Vol.48, pp.37-46, 2007
【非特許文献2】P. Megevand, C. Quairiaux, A. M. Lascano, J. Z. Kiss, and C. M. Michel,“A mouse model for studying large-scale neuronal networks using EEG mapping techniques”, NeuroImage, Vol. 42, pp.591-602, Feb. 2008
【非特許文献3】S. Ogawa, T. M. Lee, A. R. Kay, and D. W. Tank, “Brain magnetic resonance imaging with contrast dependent on blood oxygenation”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol.87, No.24, pp.9868-9872, Dec. 1990
【非特許文献4】P. Tallgren, S. Vanhatalo, K. Kaila, J. Voipio, “Evaluation of commercially available electrodes and gels for recording of slow EEG potentials”, Clinical Neurophysiology, Vol.116, pp.799-806, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3,4には、複数のEEG計測技術が開示されてはいるが、小動物の限られた脳表面などの装着面から最大限のEEG信号を検出するための電極の構成については何ら説明されていない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、小動物の限られた脳表空間から最大限のEEG信号を検出するために、小動物用の脳測定用電極ユニットと、これを用いた測定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1構成の小動物用の脳測定用電極ユニットは、小動物の頭皮又は脳表面に被覆され複数の貫通孔を有する基部と、複数の電極とを備え、複数の電極のそれぞれは、複数の貫通孔のそれぞれに挿入され、複数の電極のそれぞれは、絶縁性の管と、管内に設けられる電極部と、電極部に接続されて外部に脳波信号を取り出す引き出し用導線と、管内に充填されるペーストと、を備え、管は頭皮又は脳表面に対して起立するよう貫通孔に取り付けられ、電極部は線状に形成されて頭皮又は脳表面に対して起立するように管内に充填されたペースト内に設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第2構成の小動物用の脳測定用電極ユニットは、小動物の頭皮又は脳表面に被覆され複数の貫通孔を有する基部と、複数の電極とを備え、複数の電極のそれぞれは、上記複数の貫通孔のそれぞれに挿入され、複数の電極のそれぞれは、絶縁性の内側の第1管と、該第1管を収容する絶縁性の外側の第2管と、該第1管内に設けられる電極部と、該電極部に接続されて外部に脳波信号を取り出す引き出し用導線と、上記管内に充填されるペーストと、を備え、第1管及び第2管は上記頭皮又は脳表面に対して起立するよう上記貫通孔に取り付けられ、電極部は線状に形成されて上記頭皮又は脳表面に対して起立するように上記第1管内に充填されたペースト内に設けられていることを特徴としている。
上記構成において、管は、好ましくは貫通孔の軸方向に沿って移動できるように挿入される。さらに、電極部は下端とその側面とが当該ペーストに接触している。
管の外側に基部の貫通孔に固着される外側の管がさらに配設され、内側の管は、外側の管の軸方向に沿って移動できるように挿入されてもよい。
電解性のペーストは、好ましくは、脳波用ペーストと生理食塩水の混合物からなる。
基部は、さらに、皮質内計測用の電極が挿入される開孔部を備える。
管に、好ましくは、光ファイバを備える。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第3構成の脳波測定システム、脳波及びf-MRI同時測定システム、脳波及びNIRS同時測定システム、脳波とf-MRIとNIRSとの同時測定システム、脳波と皮質内計測の同時測定システムは、上記の小動物用の脳測定用電極ユニットを用いたことを特徴とする。
さらに、上記測定装置が、心電図測定を同時に測定できるようにすれば好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニットによれば、電極の金属部分の面積を必要最小限に抑えることができ、脳波測定用の電極を容易に多電極化することができる。
【0014】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いれば、小動物の脳波測定のみならず、MRI測定、f-MRI測定、心電図測定(ECG測定)、近赤外分光法による測定(Near Infrared Spectroscopy、NIRSと呼ぶ。)、皮質内測定との同時測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットの構造を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のI-I線に沿った断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットの変形例1の構造を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のII-II線に沿った断面図である。
【図3】小動物用の脳波測定用電極ユニットの変形例1に使用される管を示し、それぞれ、(A)は第1の管を、(B)は第2の管を示している。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例2に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットの構造を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のIII-III線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いた脳波測定装置の一構成例を示す模式図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の変形例に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いた脳波測定装置の一構成例を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットの基部を示す光学像である。
【図8】製作した小動物用の脳波測定用電極ユニットの外観を示す光学像で、(A)は表面側を、(B)は頭皮側を示す図である。
【図9】ウィスターラットの頭皮に小動物用の脳波測定用電極ユニットを装着した外観の光学像を示す図である。
【図10】製作した小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いて測定した脳波を示す図である。
【図11】製作した小動物用の脳波測定用電極ユニットの外観等を示す図であり、(A)は頭蓋側、(B)は表面側を表している。
【図12】市販の皮質内測定電極を示す模式図であり、それぞれ(A)は斜視図、(B)は電極部の拡大平面図である。
【図13】ウィスターラットの頭皮に小動物用の脳波測定用電極ユニットを装着した外観の光学像を示す図である。
【図14】製作した小動物用の脳波測定用電極ユニットで測定した16チャンネルの皮質内の脳波波形を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いた脳波及びf-MRIの同時測定装置の構成を示す模式図である。
【図16】ウィスターラットの右前足に電流パルスによる刺激を印加したとき、それぞれ(A)は小動物用の脳波測定用電極ユニットを装着しない場合のf-MRI画像を、(B)は小動物用の脳波測定用電極ユニットを装着した場合のf-MRI画像を示す図である。
【図17】ウィスターラットの右前足に900回の電流パルスによる刺激を印加したときの平均したEEG信号を示す図であり、それぞれ(A)は磁場走査部の外で記録した場合、(B)は磁場走査部の中で磁場走査をしないで記録した場合、(C)は磁場走査部の中でf-MRIとの同時測定を行った場合の信号を示している。
【図18】本発明の第4の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットの構造を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のIV-IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を具体的に説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態として、小動物用の脳波測定用電極ユニットについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニット1の構造を示しており、(A)は斜視図、(B)は(A)のI-I線に沿った断面図である。
図1に示すように、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1は、小動物の頭皮に被覆され複数の貫通孔2aを有する基部2と、複数の電極3(3a~3n)とを備えている。複数の電極のそれぞれは、複数の貫通孔2aのそれぞれに挿入されている。この複数の電極3のそれぞれは、絶縁性の管4と、管4内に設けられる電極部6と、電極部6に接続されて外部に脳波信号を取り出す引き出し用導線7と、管4内に充填されるペースト8と、から構成されている。

【0017】
基部2は、MRIやf-MRIでの使用が可能な磁化されない材質であることと、小動物の頭皮又は脳表面の形状に合わせて自由に形を変えられる材質が求められる。基部2の材料としては、樹脂を用いることができる。貫通孔2aの軸方向の長さは、ほぼ基部2の厚さであり、例えば1[mm]~5[mm]の範囲である。管4の軸方向の長さは、例えば5[mm]~2[cm]の範囲である。

【0018】
管4の外径は、基部2に配設された貫通孔の直径よりもごくわずかに大きい寸法を有している。この寸法差は、0.01~0.1[mm]程度である。これにより、管4は、基部2に形成された貫通孔2a内で、貫通孔2aの軸方向に動かすことができる。基部2と管4は、高い動摩擦係数(μ)を有しながらも、取り扱いが容易な材質、例えばポリエチレンチューブが好ましい。動摩擦係数μは、例えば0.05~0.4程度とすればよい。

【0019】
(第1の実施形態の変形例1)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニットの変形例1の構造を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のII-II線に沿った断面図である。
図2(A)に示すように、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1aは、小動物の頭皮に被覆され複数の貫通孔2aを有する基部2と、この複数の貫通孔2aのそれぞれに挿入される複数の電極3(3a~3n)と、を備えている。脳波測定用電極ユニット1aは、脳波測定用電極ユニット1に、さらに、管4の外側に管5が追加された構成を有している。基部2は、管5の外側が固定される土台部分となる。内側の管4を第1の管、外側の管5を第2の管とも呼ぶ。

【0020】
図2(B)に示すように、脳波測定用電極ユニット1aにおいて、内側の第1の管4に電極部6と、この電極部6に接続された引き出し用導線7と、内側の第1の管4内に充填されるペースト8とが配設される構成は、脳波測定用電極ユニット1と同じである。

【0021】
図3は、小動物用の脳波測定用電極ユニット1aに使用される第1の管4と第2の管5とを示す図であり、それぞれ、(A)は第1の管4を、(B)は第2の管5を示している。図3(A)に示すように、第1の管4において、引き出し用導線7は第1の管4のキャップ部4aに固定されてもよい。キャップ部4aは、引き出し用導線7が引き出される第1の管4の上端側の開口4bを閉塞する。図3(B)に示すように、第2の管5の外周部が基部2に形成された貫通孔2aに挿入されて、接着材等によって基部2に固定される。例えば、第2の管5は脳表面に対して管5の軸が垂直に位置するように配設され、その誤差範囲は±15度程度とするとよい。第2の管5は内側に第1の管4を固定するために、第2の管5の内径は第1の管4の外径とほぼ等しく、例えば、第1の管4の外径は、第2の管5の内径よりもごくわずかに小さい寸法を有している。この寸法差は、0.01~0.1[mm]程度である。第1の管4の直径は1[mm]~5[mm]、第2の管5の直径は1.1[mm]~5.1[mm]の範囲で寸法が選定される。

【0022】
第1の管4の長さは、例えば5[mm]~2[cm]の範囲である。第2の管5の長さは、基部2の貫通孔2aの長さと同程度の例えば1[mm]~5[mm]の範囲である。なお、図2(B)では、第1の管4と第2の管5とが同じ寸法例を表している。

【0023】
これにより、第1の管4は、第2の管5内で、第2の管の軸方向に動かすことができる。これらの第1の管4と第2の管5は、高い動摩擦係数(μ)を有しながらも、取り扱いが容易な材質が好ましい。動摩擦係数μは、例えば0.05~0.4程度とすればよい。このような材質としては、例えばポリエチレンチューブが挙げられる。具体的には、第1及び第2の管4,5としては、ポリエチレンの円筒状チューブを使用することができる。

【0024】
電極部6は細長い形状、具体的には図示例のように線状に形成されている。この電極部6の長さは5[mm]~2[cm]の範囲とすることができる。電極部6の直径は、0.1[mm]~3[mm]の範囲とすることができる。電極部6に用いる金属材料には、高い導電性と優れた電解特性とが求められる。電極部6の材料としては、白金、金、銀、ステンレス、イリジウム、スズ等を用いることができる(非特許文献4参照)。電極部6の表面積は、電極部6とペースト8による電解反応の固液界面を充分に保証する大きさとする。

【0025】
電極部6の表面積は、電極部6とペースト8による電解反応の固液界面を充分に保証する大きさとする。その表面積は、例えば1.6[mm]~30[mm]とすればよい。この面積範囲は通常のヒトに用いられる皿型の脳波測定(EEGとも呼ぶ。)用の電極とほぼ同程度の表面積に相当し、頭皮と電極部6との間に生じるインピーダンスを限りなく低く保つことができる。1つの電極3に1本の電極部6が設けられ、基部2全体では例えば10~40本程度が設けられるが、電極部6の数はこれらに限定されるものではない。

【0026】
電極部6と後述する脳波信号(EEG信号とも呼ぶ)計測用の増幅器とを接続する引き出し用導線7は、電気抵抗の小さい線であればどのような材料でもよいが、金属材料や導電性プラスチック材料を用いればよい。金属6の材料としては、銅、青銅、金、銀、白金、アルミニウム等の材料を用いることができる。

【0027】
複数本の引き出し用導線7を用いる場合には、各引き出し用導線7は絶縁材料や絶縁材料からなるチューブで被覆されていてもよい。これにより、各引き出し用導線7が互いに接触して短絡することを防止できる。絶縁材料からなるチューブとしては、ビニールチューブが挙げられる。このような引き出し用導線7は、所謂ビニール線でもよい。

【0028】
第1の管4の内部は電解質からなるペースト8で満たされている。このペースト9は0.01~10[S/m]の伝導率が設けられる。さらにペースト8は、第1の管4の内部に流し込むために、半固形状の性質が求められる。粘度としては、2,000~10,000[Pa・s]とすることができる。このようなペースト8としては、市販の脳波用ペースト(EEGペーストとも呼ぶ)と生理食塩水の混合物を使用することができる。表1に市販の標準EEGペーストを示した。例えばBiotach(GE Maequette Medical System社製)と食塩水とを、2:1の体積割合で混合した電解性ペーストを使用することができる。
【表1】
JP0005843201B2_000002t.gif

【0029】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1aでは、電極部6は第1の管4内でペースト8に囲繞され、その円筒表面を含む前述の1.6[mm]~30[mm]の表面がペースト8に接触している。図示例では、電極部6は第1の管4内に充填されたペースト8に埋没して、電極6の下端とその側面の円筒状の表面とがペースト8に接触している。また、第1の管4に充填したペースト8は当該管4の下端の開口4c(図3(B)参照)或いはその周辺まで充填しており、小動物の脳表面などに接触可能に配設されている。これにより、電極部6と小動物の脳表面での接触面、即ち測定面との電気抵抗を限りなく低く保つことができる。

【0030】
上記のような細長い電極部6とした場合には、電極部6と電解質のペースト8との接触表面を増加させることができる。また、電極部6の長さや直径は、脳波測定に求められる要求性能を満たすように選定することができる。ペースト8の伝導率が0.01[S/m]~10[S/m]の場合には、電極部6と小動物の脳表面での測定面との電気抵抗、つまりインピーダンスを例えば50[kΩ]以下の極めて小さい値とすることができる。

【0031】
電気抵抗を下げるために、脳波測定の前に小動物の脳表面の処理も要求される。頭皮で計測する際は、小動物の毛髪を注意深く剃り落とし、アルコール等の有機溶媒を用いて油脂を除去すればよい。頭蓋上の計測の際は、頭皮と同じ伝導率を有するペーストを頭蓋に塗布する。

【0032】
伝導性のペースト8は内側の第1の管4にだけ注入される必要がある。伝導性のペースト8は、内側の第1の管4に注射器を用いて注入することができる。伝導性のペースト8によって隣接する電極間で短絡するのを防止するために、伝導性のペースト8が第1の管4からはみ出して小動物の脳表面に広がらないようにしなければならない。

【0033】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1aにおいて、小動物の脳表面への基部2の裏面側の固定方法は、輪ゴムによる固定、外科手術による縫合、歯科用セメントを用いた接着等を使用することができる。これらの固定方法以外でも、脳波測定状況に合わせて任意に変更することが可能である。

【0034】
(第1の実施形態の変形例2)
本発明の第1の実施形態の変形例2として、小動物用の脳波測定用電極ユニット1bについて説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態の変形例2に係る小動物用の脳波測定用電極ユニット1bの構造を示すもので、(A)は斜視図、(B)は(A)のIII-III線に沿った断面図である。
図4(A)に示すように、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1bは、図3に示した脳波測定用電極ユニット1aの基部2に、さらに開孔部9を設けた構造を有している。図4(B)に示すように、開孔部9は基部2の表面から裏面に貫通する孔状の形状を有している。この開孔部9は後述する脳波の皮質内測定のための皮質内測定電極を挿入する孔として使用することができる。開孔部9は円形の形状だけではなく、基部2の最外周部から基部2の内部に切り込まれたコ字状の形状を有していてもよい。

【0035】
これにより、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1a,1bは、導電性の高い金属からなる線状の電極部6を樹脂製の第1の管4で囲うと共に、この管4内を電解質のペースト8で満たして、電極部6と電解質ペースト8との接触表面を増加させることによって電極部6と小動物の脳の測定面との電気抵抗を限りなく低く保つことができる。
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1a,1bによれば、線状の電極部6が脳表面に対して起立するよう基部2に保持されるため、脳表面に対向する電極部6の金属部分の面積を必要最小限に抑えることができ、脳波測定用電極ユニット1,1a,1bを容易に多電極化、つまり複数チャンネル設けることができる。

【0036】
よって、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1a,1bによれば、例えば32チャンネルという多数の電極本数を実現できる。従来の小動物の脳波測定は、脳又は頭皮に直接に金属もしくは炭素電極を小動物の脳表面に置いて固定するだけであった。このように電極を固定しているため電極本数が著しく少なかった従来の方法に比較して、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1a,1bを用いると、小動物の多チャンネル脳波計測を行うことが可能となる。さらに、後述するように、f-MRIやNIRSと脳波との同時測定、及び脳波と脳波の皮質内測定との同時計測も可能になる。

【0037】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1bによれば、開孔部9に皮質内測定電極を挿入し、脳波の皮質内測定つまり頭蓋内の脳波測定ができる。このため、小動物用の脳波測定用電極ユニット1bによれば、頭皮上及び皮質内の脳波測定を同時に計測することが可能になる。

【0038】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態として、小動物用の脳波測定用電極ユニット1を用いた脳波測定システムについて説明する。以下の説明では、脳波測定用電極ユニット1aを利用した脳波測定システムを説明するが、脳波測定用電極1,1bも同様に脳波測定システムに適用できる。
第2の実施形態に係る脳波測定システムは、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1aと市販のヒト用の脳波測定装置とから構成することができる。つまり、小動物の脳又は頭部に本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを装着し、この脳波測定用電極ユニット1aからの脳波に関する信号を市販のヒト用の脳波測定装置に入力することによって小動物の脳波を容易に測定できる。

【0039】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る脳波測定システム100の一構成例を示す模式図である。脳波測定システム100は、前述の脳波測定用電極ユニット1aと脳波測定装置10とを備えている。
図5に示すように、脳波測定装置10は、小動物12の頭部に装着された小動物用の脳波測定用電極ユニット1aからの脳波信号が多チャンネルで入力が可能な増幅器14と、コンピュータ16と、この増幅器14からの出力信号15をコンピュータ16に入力するインターフェース回路18と、から構成されている。コンピュータ16としては、パーソナルコンピュータ等を使用できる。インターフェース回路18は、例えばA/Dコンバータである。

【0040】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1aによれば、電極部6と小動物12の脳の測定面との電気抵抗を限りなく低く保つことができ、脳波測定用の電極部6を容易に多電極化することができる。

【0041】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1aによれば、外径の異なる2本の円筒形チューブ、つまり第1の管4及び第2の管5(以下、それぞれチューブと呼ぶ場合がある。)を用い、外側の第2のチューブ5は基部2の貫通孔2aの孔壁に固着され、内側の円筒形チューブ4は外側のチューブ5内で軸方向へ移動可能に挿入される。したがって、電極部6を内包した内側のチューブ4を頭皮に対して垂直方向に接触させることができる。従って、小動物12が脳波測定中に動いても、チューブ下端の開口4c(図3(a)参照)を脳表面に当接させた内側チューブ4が小動物の動きに従動して外側チューブに対して移動するため、安定した脳波測定を行うことができる。このため、小動物12の脳波測定を効率良く行うことができる。

【0042】
(第2の実施形態の変形例)
本発明の第2の実施形態の変形例として、小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いた脳波測定(EEG)装置に、さらに心電図測定(ECG)装置を備えた測定装置10aについて説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを用いた脳波測定装置10aの一構成例を示す模式図である。脳波測定用電極ユニット1aに代えて、脳波測定用電極ユニット1、1bを利用できることは勿論である。
図6に示す脳波測定装置10aは、小動物12に装着した心電図測定用電極19からの信号を増幅する心電図測定用(ECG用とも呼ぶ)の増幅器22と、このECG用の増幅器22からの信号をパーソナルコンピュータ16に入力させるインターフェース回路18aを備えている点が、図5に示す脳波測定装置10と異なっている。インターフェース回路18aは、例えばA/Dコンバータである。脳波測定用の増幅器14が多チャンネルの入力可能な増幅器である場合には、心電図測定用電極19からの信号を多チャンネルの入力可能な増幅器14aに入力し、増幅器14aの出力をインターフェース回路18に出力してもよい。

【0043】
図6の脳波測定装置10aによれば、小動物12の脳及び心臓の動作を経時的に測定することができる。この場合、脳波信号に混入してくる心臓からの信号による雑音、所謂心臓由来のアーチファクトを効果的に防止することができる。

【0044】
心臓由来のアーチファクトは、例えば心電図信号(ECG信号と呼ぶ)の周期的な信号を参照信号として、パーソナルコンピュータ16で演算処理を行うことによって除去する
ことができる。

【0045】
次に、脳波測定用電極ユニット1,1a,1bの製造方法について説明する。
(脳波測定用電極ユニット1の基部2の製作方法)
(1)希望する基部2の形状の図面を作成する。
(2)粘土を用いて鋳型を作成する。
(3)熱可塑性の樹脂を用いて、この樹脂を鋳型に挿入し、基部2を作成する。
(4)樹脂を鋳型から取り外し、最後に樹脂の形状を整える。

【0046】
(脳波測定用電極ユニット1aの基部2の製作方法)
脳波測定用電極ユニット1aの場合には、基部2の貫通孔2aに第2の管5を挿入して、接着剤等を用いて固定する。第2の管5としては、一例としてポリエチエレンからなる管を使用した。第2の管5の内径を1.4mm、外径を1.6mm、長さを6mmとした。

【0047】
(脳波測定用電極ユニット1bの基部2の製作方法)
脳波測定用電極ユニット1bの場合には、脳波測定用電極ユニット1aの場合にさらに、基部2に皮質内測定電極を挿入する孔となる開孔部9を設けることによって製作することができる。

【0048】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニット1aの基部2を示す光学像である。図7から、図示されない31個の貫通孔2aに第2の管5が配設されていることが分かる。基部2に用いた樹脂は、例えばMR用樹脂である(太陽電機産業株式会社製、HB-100S-B1)。

【0049】
(脳波測定用電極ユニット1の電極部6の製作方法)
(1)希望する電極部6の形状の図面を作成し、電極部6を作製する。
電極部6は白金線を使用した。寸法の一例は、直径を0.3mm、長さを0.8mmとした。表面積は7.67mmである。
(2)電極部6に用いる金属部分と引き出し用導線7を半田付けする。
(3)引き出し用導線7を信号用の増幅器14に固定する。
(4)電極部6を第1の管4に通し固定する。
第1の管4としては、ポリエチエレンからなる管を使用した。管4の直径を1.33mm、長さを10mmとした。
上記では、手作業による小動物の脳波測定用電極ユニット1の製作方法を示したが、市販の3Dプリンターにより自動で製作することも可能である。脳波測定用電極ユニット1a,1bの電極部6も、脳波測定用電極ユニット1の電極部6と同様に製作することができる。

【0050】
図8は、製作した小動物用の脳波測定用電極ユニット1aの外観を示す光学像であり、(A)は表面側を、(B)は頭皮側を示す図である。図8に示すように、31本の電極部6が形成されていることが分かる。

【0051】
次に、製作した小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを、小動物12としてウィスターラットのオスの頭皮にゴムバンドで装着した。
図9は、ウィスターラット12aの頭皮に小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを装着した外観を示す光学像である。図9から、小動物用の脳波測定用電極ユニット1aがウィスターラット12aの頭部に装着できるほど小面積であることが分かる。

【0052】
(脳波測定及び心電図測定の測定装置10aによる計測例)
脳波測定及び心電図測定の測定装置10aは、図6と類似の構成を用いた。ECG電極となる針状電極(米国、SA Instruments社製)19を、ウィスターラット12aの右後足に挿入した。小動物用の脳波測定用電極ユニット1aからの31本の導線と1本のECG電極とは、32チャンネルの電池式増幅器(独、Brain Products社製)14aを介してA/Dコンバータ(米国、ナショナルインスツルメンツ社製、USB-6221)18に接続した。A/Dコンバータ18は、ソフトウェア(米国、MATLAB社製、data acquisition toolbox)で制御した。脳波は、脳波測定用ソフトウェア(独、Brain Products社製、BrainRecord、Ver.1.4)を用いて測定した。

【0053】
脳波測定のサンプリング周波数は5000Hz、小動物用の脳波測定用電極ユニット1aのインピーダンスは50kΩ以下、接地インピーダンス及び参照インピーダンスは50kΩ以下であった。

【0054】
図10は、製作した小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを用いて測定した脳波を示す図である。図10の横軸は時間(秒)、縦軸は脳波の振幅(マイクロボルト)である。図10から明らかなように、脳波は、雑音がなく、つまりS/Nが高い状態で測定されていることが分かる。

【0055】
(脳波の皮質内計測)
次に、脳波の皮質内計測について説明する。
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1bを用いると、小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1aを頭皮側もしくは頭蓋上に装着した脳波測定と共に、さらに頭蓋内の脳波測定を行うことができる。頭蓋内とは、頭蓋の下部の脳波測定であり、脳波の皮質内計測(intracranial recording)とも呼ばれている。
図11は、製作した小動物用の脳波測定用電極ユニット1bの外観等を示す図であり、(A)は頭蓋側、(B)は表面側を示している。
図11から明らかなように、小動物用の脳波測定用電極ユニット1bには27本の電極部6が形成されていることが分かる。さらに、皮質内計測用の電極部6を設置するために、図11(A)に示す脳波測定用電極ユニット1bには開孔部9が存在する。これにより、頭蓋上の脳波測定と皮質内計測との同時計測を可能にしている。

【0056】
図12は、市販の皮質内測定電極42を示す模式図であり、それぞれ(A)は斜視図、(B)は電極部42aの拡大平面図を示している。
図12(A)に示すように、小動物用の脳波測定用電極ユニット1bの開孔部9に挿入される皮質内計測用電極42の一端側は、針状形状を有しており、先端部に所定のチャンネル数、例えば16チャンネルの電極部42aが形成されている。皮質内計測用電極42の左側上部の他端は電極部42aの端子部42bであり、プリント基板上に電極部42aの半田付け可能なパターンがチャンネル数分だけ形成されている。図12(B)に示すように、電極部42aの先端に設けられている電極12c間の間隔は例えば50μmであり、各電極12cの面積は例えば177μm程度である。

【0057】
図13は、ウィスターラット12aの頭皮に小動物用の脳波測定用電極ユニット1bを装着した外観を示す光学像を示している。
図13から、ウィスターラット12aには引き出し用導線7が装着され、右上方には、皮質内計測用電極42(NeuroNexus Technologies 社製、a1×16-5mm-177)が頭蓋上に挿入されていることが分かる。図12に示した皮質内計測用電極42の先端が尖った形状の電極部42aは、ウィスターラット12aの頭蓋骨をくり抜き、さらに、硬膜を剥がして脳の皮質内に差しこまれている。図13に示す脳波測定用電極ユニット1bの右上部が皮質内計測用電極42の端子部42bである。この端子部42bには16個のボール状の半田層が形成されている。

【0058】
図14は、製作した小動物用の脳波測定用電極ユニット1bで測定した16チャンネルの皮質内の脳波波形を示す図である。図14の横軸は時間(秒)、縦軸は16チャンネルの皮質内の脳波振幅(任意目盛り)である。
図14から明らかなように、皮質内の脳波は雑音がなく、つまりS/Nが高い状態で測定されていることが分かる。また、頭皮上から測定される脳波の波形は、図10に示した小動物用の脳波測定用電極ユニット1aで測定した脳波波形と同様であった。これから、頭蓋上のEEG測定も、頭皮側に装着した場合と同様に測定できることが分かった。これは、本発明者等の知見によれば従来実現できなかった測定である。

【0059】
これにより、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1bによれば、小動物12の頭皮上からの脳波測定と皮質内計測との同時計測も行うことができる。

【0060】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態として、小動物用の脳波測定用電極ユニット1を用いた測定システムとして、脳波測定とf-MRIとの同時測定ができるシステムについて説明する。以下の説明では、脳波測定用電極ユニット1を利用した測定システムを説明するが、脳波測定用電極ユニット1aや1bも測定システムに同様に適用できる。
図15は、本発明の第3の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニット1を用いた脳波及びf-MRIの同時測定システム200の構成を示す模式図である。
同時測定システム200は、前述の脳波測定用電極ユニット1と同時測定装置30とを備えている。
図15に示すように、小動物用の脳波測定用電極ユニット1を用いた脳波測定及びf-MRIの同時測定装置30は、脳波測定装置10とf-MRI装置32とから構成されている。小動物12の頭部には、小動物用の脳波測定用電極ユニット1が装着されている。

【0061】
f-MRI装置32は、通常のMRI装置にさらに脳が刺激を受けた場合に、この刺激を受けた部位の血流の増加を検知する機能を備えている。f-MRI装置32は、磁場を被観察物となる小動物12へ印加する磁場走査部32aと、磁場走査部32aの制御やNMR信号を取得する制御部32bと、制御部32bからのNMR信号を受け取り画像データを作成するパーソナルコンピュータ32c等と、を備えている。f-MRI装置32で画像表示されるT1は、核・BR>・気共鳴における縦緩和時間であり、物質の環境依存的な値である。同様に、T1と共にMRIで画像表示されるT2は、核磁気共鳴における横緩和時間であり、物質固有の値である。

【0062】
f-MRI装置32においては、脳に刺激を受けた小動物12の血流が増加すると、血流中の常磁性体である還元ヘモグロビンの濃度低下と共に磁化率も減少し、T2が延長するようになる。

【0063】
このため、小動物12の血流が増加してT2が延長した場合には、T2強調画像において刺激が加えられる領域、即ち刺激の賦活部位で増加するf-MRI信号として検知される。このf-MRI信号は小川氏等により見出され、BOLD(blood-oxygen-level-dependent)効果と呼ばれている(非特許文献3参照)。このf-MRI信号は、従来のMRI信号であるT2に磁場の不均一性を考慮したT2スター強調像(T2と表記される。)の値を用いて通常は測定される。

【0064】
脳波は、小動物12の脳波測定用電極ユニット1から電池式の増幅器14に入力され、この増幅器14からの出力信号15は、例えば光ファイバ36によってA/Dコンバータ18に入力される。A/Dコンバータ18の出力は、EEG信号用のパーソナルコンピュータ16等で処理されて脳波信号がデータ化される。

【0065】
ここで、第1の実施形態の変形例で説明したように、脳波測定における小動物12の心臓からのアーチフェクト除去のためにECG測定を行ってもよい。ECG測定を行うには、図6に示すように、心電図測定用電極19からの信号を増幅する増幅器22と、インターフェース回路18aを備えていればよい。図15の場合には、EEG信号とECG信号は、多チャンネルが入力可能な増幅器14aに入力され、A/Dコンバータ18を介して、信号処理用のパーソナルコンピュータ16に接続されている。さらに、脳波及びf-MRIの同時測定装置30は、小動物12の呼吸用に換気装置37や、終末呼気CO濃度
のモニタ装置38を備えていてもよい。

【0066】
図15に示す小動物用の脳波測定用電極ユニット1を用いた脳波測定及びf-MRIの同時測定ができる装置30によれば、小動物用の脳波測定用電極ユニット1を用いたことにより例えば31チャンネルに及ぶ脳波測定を行うことができる。

【0067】
これにより、脳波測定より得られる1ボクセルレベル、例えば200μm×200μmでの神経活動を短時間で測定することができる。さらに、刺激を与えた小動物12のf-MRI測定より得られる血行動態反応に基づいたBOLD効果を測定することができる。EEG計測システムは、MRI装置30の外における測定も可能である。小動物12への刺激は、刺激装置35から小動物12に印加される。

【0068】
(脳波測定及びf-MRI同時測定例)
脳波測定及びf-MRI同時測定例について説明する。
f-MRI測定装置32としては、直径が38[mm]の超伝導コイルを有している市販の装置を用いた(独、Bruker Biospin社製、70/16 PharmaScan)。磁場勾配は、最大300[mT/m]である。f-MRIの画像をエコープラナー法(EPIと呼ぶ)によって作成した。f-MRIを測定するソフトウェアとしては、Paravision 5.0を用いた。

【0069】
実際に小動物用の脳波測定とf-MRIとの同時測定を行う前に、小動物用の脳波測定用電極ユニット1aのf-MRI測定に対する影響を調べた。
基準画像を取得するために、直径が2[cm]で長さが6[cm]の円柱状のポリエチレン容器にNiCl等を含む水溶液を封入した生体測定用の擬似物体、所謂ファントムを用意した。このファントムをf-MRI装置32の磁場走査部32a、つまりガントリに挿入した。ファントムに小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを装着した場合と装着しない場合のf-MRI測定を行った。基準画像としてEPI画像、T2画像、T2マッピング、T2マッピング等の取得を行った。これらのデータからは、ファントムに小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを装着した場合と装着しない場合とのf-MRI測定結果に差がないことが判明した。

【0070】
小動物12としては、ウィスターラット12aのオスを用いた。ウィスターラット12aの右前足に印加する刺激としては、刺激装置35から発生したパルス電流を用いた。具体的には、ウィスターラット12aの右前足に3[mA]のパルス電流を30秒印加し、次に40秒停止するという1サイクルを、10回以上繰り返した。

【0071】
図16は、ウィスターラット12aの右前足に電流パルスによる刺激を印加したとき、それぞれ、(A)は小動物用の脳波測定用電極ユニットを装着しない場合のf-MRI画像を、(B)は小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを装着した場合のf-MRI画像を示す図である。図16には、f-MRI解析用ソフトウェア(英、Wellcome Department of Imaging Neuroscience 社製, SPMソフトウェア)を用いて解析したBOLD信号のt検定のスコアも示している。
図16(A)は、ウィスターラット12aの右前足に電流パルスによる刺激を10回繰り返して印加したときにf-MRI装置で観察されるBOLD信号の変化を示す図であり、ウィスターラット12aの右前足に加えられる電流刺激時間に対応して、BOLD信号が増加していることが分かる。

【0072】
図16(A)に示すように、小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを装着しない場合にBOLD信号が増加した位置は、Paxinos等によるラットの脳地図では、XYZ表記で下記のように表される。
X=-36.8±4.1mm
Y=1.5±4.5mm
Z=-23.5mm±3.7mm

【0073】
一方、図16(B)に示すように、小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを装着した場合にBOLD信号が増加した位置は、Paxinos等によるラットの脳地図では、XYZ表記で下記のように表される。
X=-35.7±3.9mm
Y=4.0±3.8mm
Z=-23.3mm±3.3mm

【0074】
また、図16(A)に示すように、脳波測定用電極ユニット1aを装着しない場合のSPMソフトウェアによるBOLD信号のt検定(p<0.001、ここでPは有意確率である)のスコアは、13.0±2.8であった。
一方、図16(B)に示すように、脳波測定用電極ユニット1aを装着した場合のSPMソフトウェアによるBOLD信号のt検定(p<0.001)のスコアは、10.7±2.7であった。

【0075】
上記結果から、ウィスターラット12aの右前足に電流パルスによる刺激を印加したとき、小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを装着しない場合と装着した場合において、脳地図のほぼ同様のX,Y,Zの位置で脳が刺激を受けていることが分かった。さらに、そのBOLD信号は、SPMソフトウェアの解析からほぼ同様の信号強度を与えることが分かった。

【0076】
図17は、ウィスターラット12aの右前足に900回の電流パルスによる刺激を印加したときの平均したEEG信号を示す図であり、それぞれ、(A)は磁場走査部32aの外で記録した場合、(B)は磁場走査部32aの中で磁場走査をしないで記録した場合、(C)は磁場走査部32aの中でf-MRIとの同時測定を行った場合の信号を示している。図17の横軸は時間(秒)を示し、図17の縦軸は脳波信号電圧(mV)を示している。各図は、30本の電極部6からのデータを重ね合わせて示している。
図17(C)のEEG信号は、BOLD信号の取得に関わるEPI画像のスキャニングアーチファクトを周期的な信号を参照信号として、パーソナルコンピュータ16で演算処理を行うことによって、除去した結果である。

【0077】
上記結果から、ウィスターラット12aの右前足に900回の電流パルスによる刺激を印加したときに、平均したEEG信号は、磁場走査部32aの外で記録した場合(図17(A)参照)、磁場走査部32aの中で磁場走査をしないで記録した場合(図17(B)参照)及び磁場走査部32aの中でf-MRIとの同時測定を行った場合(図17(C)参照)の何れも、ほぼ同様のEEG信号を与えることが明らかになった。

【0078】
上記したように、図16に示したBOLD信号及び図17に示したEEG信号の実験から、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1aを用いることにより、多数チャンネルの脳波測定及びf-MRIとの同時測定が良好に行えることが分かった。これは、本発明者等の知見によれば従来実現できなかった測定である。

【0079】
本発明は、小動物12を対象とし、脳波測定とf-MRIとの同時計測を行うことができる。脳波測定を用いることで高い時間分解能(time resolution)で神経活動の計測を行うことができる。f-MRIを用いることで高い空間分解能(space resolution)での神経活動を同時に計測することができる。このため、脳波測定及びf-MRIの同時測定は、互いの長所と短所を補うような理想的な非侵襲的脳活動計測装置を提供することができる。また、後述するように、電極を近赤外分光法(Near Infrared Spectroscopy、NIRSと呼ぶ)用のプローブに変えることも可能である。

【0080】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニット50について説明する。
図18は、本発明の第4の実施形態に係る小動物用の脳波測定用電極ユニット50の構造を示し、(A)は斜視図、(B)は(A)のIII-III線に沿った断面図である。
図18(A)に示すように、本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット50は、頭皮又は脳表面に被覆される基部2と、この基部2に挿入されている複数の電極53(53a~53n)とから構成されている。

【0081】
図18(B)に示すように、一つの電極53aは、内側の第1の管4と、外側の第2の管5と内側の第1の管4に挿入される電極部6及び光ファイバ54と、この電極部6の引き出し用導線7と、内側の第1の管4内に充填されるペースト8と、から構成されている。

【0082】
図18に示す小動物用の脳波測定用電極ユニット50は、図1及び図2の小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1aと異なり、さらに内側の第1の管4に挿入される光ファイバ54を備えている。1つの電極53に1本の電極部6が設けられ、基部2全体に設ける電極53の本数は任意に決定することができる。電極53の本数は例えば30~40本程度とすることができる。光ファイバ54の本数は、電極53の本数と同じでも異なっていてもよい。光ファイバ54の本数は、後述する近赤外分光法に合わせて決定することができる。小動物用の脳波測定用電極ユニット50の光ファイバ54の一端は、電極部6と同様に小動物12の脳又は頭皮に接触して近赤外光を脳の内部まで深く照射する。光ファイバ54以外の構成は図1で説明したので省略する。なお、図18(B)は、電極部6が光ファイバ54と同様に頭皮に接触するよう内側の管4内に深く差し込まれた構成を示しているが、本実施形態において電極部6は図1,2,4に示す電極部6のように、つまり管4の下方の開口4cから距離を置いた管内で下端が位置するように短く寸法が選定されて構成してもよいことは勿論である。

【0083】
小動物用の脳波測定用電極ユニット50の光ファイバ54は近赤外分光を行うための光ファイバであって、脳内のヘモグロビンや酸素等の吸収分光ができる波長、例えば800nmで損失の少ない光ファイバである。このような光ファイバ54としては、光通信用の石英ガラスや樹脂からなる光ファイバ54を使用することができる。

【0084】
光ファイバ54の他端は所謂近赤外の分光器に接続され、分光用の赤外光が小動物の脳に照射され、その反射光が検出される。

【0085】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット50によれば、脳波測定と同時に近赤外分光法(NIRS)の測定を行うことができる。さらに、心電図測定も同時に行うことができる。

【0086】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の小動物用の脳波測定用電極ユニット1,1a,1b,50を用いて、例えば脳波測定及びf-MRIの同時測定を行うことによって、ヒトではできないような、例えば、特定遺伝子のノックアウトマウス、酵素阻害剤等の薬理学的スクリーニングなどを小動物に対して行うことができる。さらに既存の脳の免疫染色、蛍光染色、電気生理学的手法ともデータの相互互換可能な点が大きなメリットである。
【0088】
本発明の脳波測定及びf-fMRIの同時測定は、例えば種々の薬理学的手法や遺伝学的手法とも組み合わせることが可能であり、脳神経学の基礎的研究分野のみならず、製薬産業界においても新機軸の薬物評価システムになる。
【符号の説明】
【0089】
1,1a,1b,50:小動物用の脳波測定用電極ユニット
2:基部
2a:貫通孔
3:電極部
4:第1の管
4a:キャップ
4b:第1の管の上側の開口
4c:第1の管の下側の開口
5:第2の管
6:電極
7:引き出し用導線
8:ペースト
9:開孔部
10:小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いた脳波測定装置
10a:小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いた脳波及び心電図測定装置
12:小動物
12a:ウィスターラット
14,14a:増幅器
15:増幅器からの出力信号
16:コンピュータ
18,18a:インターフェース回路
19:心電図測定用電極
22:ECG用の増幅器
30:小動物用の脳波測定用電極ユニットを用いた、脳波及び機能的MRIの同時測定装置
32:f-MRI装置
32a:磁場走査部
32b:制御部
32c:コンピュータ
35:刺激装置
36:光ファイバ
37:換気装置
42:皮質内計測用電極
42a:電極部
42b:端子部
42c:電極
38:終末呼気CO濃度のモニタ装置
53:複数電極部
54:光ファイバ
100:脳波計測システム
200:脳波及びf-MRIの同時測定計測システム
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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