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明細書 :ポリアクリロニトリル多孔質体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5717107号 (P5717107)
登録日 平成27年3月27日(2015.3.27)
発行日 平成27年5月13日(2015.5.13)
発明の名称または考案の名称 ポリアクリロニトリル多孔質体
国際特許分類 C08J   9/28        (2006.01)
FI C08J 9/28 CEY
請求項の数または発明の数 6
全頁数 16
出願番号 特願2012-513818 (P2012-513818)
出願日 平成23年5月2日(2011.5.2)
国際出願番号 PCT/JP2011/060515
国際公開番号 WO2011/138937
国際公開日 平成23年11月10日(2011.11.10)
優先権出願番号 2010107376
優先日 平成22年5月7日(2010.5.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年9月18日(2012.9.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
発明者または考案者 【氏名】宇山 浩
【氏名】辻本 敬
【氏名】岡田 圭介
【氏名】岡 達也
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査官 【審査官】松元 洋
参考文献・文献 特開平06-166116(JP,A)
特開昭63-145345(JP,A)
特表2004-501236(JP,A)
C.L. Renschler et al.,Novel forms of carbon from poly(acrylonitrile): Films and Foams.,Materials Science Forum,1990年 4月 2日,Vol. 52&53 ,pp.301-322
調査した分野 C08J 9/00 - 9/42
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体の製造方法であって、
前記ポリアクリロニトリルを加熱して溶媒に溶解させてポリアクリロニトリル溶液を得、
前記ポリアクリロニトリル溶液を冷却して析出した成形体を得、
前記成形体を別の溶媒に浸漬させて、前記溶媒を前記別の溶媒と置換させ、主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体を得る工程を含み、
前記溶媒が、ポリアクリロニトリルに対する貧溶媒と、ポリアクリロニトリルに対する良溶媒とを含み、
前記別の溶媒が、水、炭素数1~6を有する低級アルコール、アセトンおよびアセトニトリルからなる群から選択される1以上であり、
前記貧溶媒は、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選択される1以上であり、
前記良溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN-メチルピロリドンからなる群から選択される1以上である
製造方法。
【請求項2】
前記多孔質体の厚みが、1mm以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒を100体積%とする場合、良溶媒の含有量が、10~95体積%である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアクリロニトリル溶液におけるポリアクリロニトリルの濃度が、40~300mg/mlである請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体を得る工程において、前記溶媒を前記別の溶媒と置換させた後に、更に、得られた成形体を減圧下に乾燥する工程を含む請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
炭素化多孔質体の製造方法であって、
請求項1~5のいずれかに記載の製造方法により得られた多孔質体を、焼成する工程を含む方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体は分離剤、吸着剤等として多方面で多く用いられている。無機系多孔質体は、シリカ系多孔質体に関して膨大な研究がなされている。シリカ系多孔質体の中でも多孔質体シリカ粒子を作成する技術が一般的である。この多孔質体シリカ粒子は、分析用材料として実用化されている。一方、高分子系多孔質体としては、ビニルモノマーの懸濁重合時に適切な希釈剤を加えて多孔質体粒子を得る技術が知られている。この高分子系多孔質体は、高分子材料の軽量性という特徴を活かして、各種吸着剤や分離剤として実用化されている。
【0003】
連続した骨格と空隙が互いに絡み合った構造を有する一塊の材料は、モノリスと呼ばれる。シリカ系多孔質体には、厚みのある成形体であるモノリスを作成する技術も知られている。高分子系多孔質体としては、ビニルポリマーのモノリスについては、重合法による合成技術が報告されているが、構造制御が容易ではないため、実用化に至っていない。
【0004】
高分子材料として、ポリアクリロニトリル(以下、PANと呼ぶことがある)は、衣類、包装材料、分離膜等の材料として広く用いられている。このPANは、溶媒耐性や強度が優れているが、このPANを材料とした多孔質体の製造方法は、PANを一部含む樹脂組成物からなる多孔質フィルムや(例えば、特許文献1)、PANを溶解した有機溶剤から調製されたドープを、この有機溶剤とPANの凝固剤とからなる溶液の凝固浴を用いて凝固させるPAN多孔質体の製造方法(例えば、特許文献2)が知られている。
【0005】
しかしながら、これらの公知技術により得られる多孔質体は、例えば繊維であるため、主成分としてPANを含む多孔質体の製造方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2002-194133号公報
【特許文献2】特公平8-22934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、ポリアクリロニトリルの多孔質体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体の製造方法であって、
前記ポリアクリロニトリルを加熱して溶媒(第1の溶媒)に溶解させてポリアクリロニトリル溶液を得、
前記ポリアクリロニトリル溶液を冷却して析出した成形体を得、
前記成形体を別の溶媒(第2の溶媒)に浸漬させて、前記溶媒(第1の溶媒)を前記別の溶媒(第2の溶媒)と置換させ、主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体を得る工程を含み、
前記溶媒が、ポリアクリロニトリルに対する貧溶媒と、ポリアクリロニトリルに対する良溶媒とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ポリアクリロニトリルの多孔質体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1を示した写真である。
【図2】図2は、実施例1で得られたPAN多孔質体のSEM写真である。
【図3】図3(a)は、実施例2においてPAN濃度120mg/mLで得られた多孔質体のSEM写真であり、図3(b)は、実施例2においてPAN濃度160mg/mLで得られた多孔質体のSEM写真である。
【図4】図4は、実施例4において得られた焼成後の多孔質体のSEM写真である。
【図5】図5は、実施例5において得られた多孔質体のSEM写真である。
【図6】図6は、実施例6において得られた多孔質体のSEM写真である。
【図7(a)】図7(a)は、比較例において得られた繊維のSEM写真である。
【図7(b)】図7(b)は、比較例において得られた繊維のSEM写真である。
【図7(c)】図7(c)は、比較例において得られた繊維のSEM写真である。
【図8】図8は、実施例16において得られた多孔質体のSEM写真である。
【図9】図9は、実施例17において得られた多孔質体のSEM写真である。
【図10】図10は、実施例18において得られた多孔質体のSEM写真である。
【図11】図11は、実施例19において得られた多孔質体のSEM写真である。
【図12】図12は、実施例20において得られた多孔質体のSEM写真である。
【図13】図13は、実施例21において得られた多孔質体のSEM写真である。
【図14】図14は、実施例22において得られた多孔質体のSEM写真である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の多孔質体の特徴の一つはその厚みが、繊維や膜より厚みがある点である。この多孔質体の形状は限定されないが、この多孔質体の縦横高さの3つの方向のうち、最も短いものを便宜的に厚みと呼ぶ。本発明の多孔質体の厚みは、例えば1mm以上であり、好ましくは1.5mm以上であり、より好ましくは2mm以上である。
【0012】
本発明において、ポリアクリロニトリルとは、アクリロニトリルを主成分として、例えば、85重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは92重量%以上含むポリマーを意味する。このポリアクリロニトリルは、主成分としてアクリロニトリルを、他の成分としてアクリロニトリル以外のモノマーを含むことができる。他の成分としては、アクリロニトリル以外のモノマーであれば限定されないが、例えば、メチルアクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。ポリアクリロニトリルは分子量は限定されないが、平均分子量が、例えば、1万~500万であり、好ましくは2万~400万であり、より好ましくは3万~300万である。
【0013】
本発明における製造方法では、前記のように、ポリアクリロニトリルを加熱して溶媒(第1の溶媒)に溶解させてポリアクリロニトリル溶液を得る。この加熱温度は、例えば70~95℃で、好ましくは70~90℃である。ポリアクリロニトリルを溶媒に溶解させる際、物理的刺激を与えて行ってもよい。その物理的刺激としては、例えば、攪拌、振とう、超音波処理等が挙げられる。
【0014】
前記溶媒(第1の溶媒)は、前記のように、ポリアクリロニトリルに対する貧溶媒と、ポリアクリロニトリルに対する良溶媒とを含む。前記ポリアクリロニトリルに対する貧溶媒と前記ポリアクリロニトリルに対する良溶媒は、それぞれ、1種類以上の混合物であってもよい。なお、本願において前記貧溶媒とは、前記ポリアクリロニトリルを溶かす能力の小さい溶媒のことを意味する。具体的には、前記貧溶媒1Lに対してポリアクリロニトリル1g以上が、好ましくは0.8g以上が、より好ましくは0.5g以上が溶解しないことを意味する。また、本願において前記良溶媒とは、前記ポリアクリロニトリルを溶かす能力の大きい溶媒のことを意味する。具体的には、前記良溶媒1Lに対してポリアクリロニトリル10g以上が、好ましくは15g以上が、より好ましくは20g以上が溶解することを意味する。ポリアクリロニトリルに対する貧溶媒は、例えば、水、アセトニトリル、エチレングリコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選択される1以上であり、好ましくは、水、アセトニトリルおよびエチレングリコールからなる群から選択される1以上である。また、ポリアクリロニトリルに対する良溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN-メチルピロリドンからなる群から選択される1以上であり、好ましくはジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドからなる群から選択される1以上である。
【0015】
前記溶媒(第1の溶媒)を100体積%とする場合、良溶媒の含有量は、例えば10~95体積%、好ましくは20~90体積%、より好ましくは80~90体積%である。
【0016】
また、前記ポリアクリロニトリル溶液におけるポリアクリロニトリルの濃度は、例えば40~300mg/ml、好ましくは50~200mg/ml、より好ましくは60~200mg/mlである。
【0017】
本発明における製造方法においては、次に、前記ポリアクリロニトリル溶液を冷却して析出した成形体を得る。この冷却温度は、例えば-20~60℃であり、好ましくは15~45℃であり、より好ましくは15~40℃である。この冷却時間は、例えば1分~24時間であり、好ましくは1分~1.5時間であり、より好ましくは2分~1時間である。
【0018】
本発明における製造方法においては、次に、前記成形体を別の溶媒(第2の溶媒)に浸漬させて、前記溶媒(第1の溶媒)を前記別の溶媒(第2の溶媒)と置換させ、主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体を得る。
【0019】
前記別の溶媒(第2の溶媒)は、水、低級アルコール、アセトンおよびアセトニトリルからなる群から選択される1以上が好ましく、水、メタノール、アセトン、アセトニトリルがより好ましい。前記低級アルコールとしては、炭素数1~6を有する低級アルコールが挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、t-アミルアルコール、n-ヘキサノールが挙げられる。
【0020】
本発明の製造方法は、例えば、主成分としてポリアクリロニトリルを含み、厚みが1mm以上である多孔質体の製造方法であって、
前記ポリアクリロニトリルを70~95℃で加熱して溶媒に溶解させてポリアクリロニトリル溶液を得、
前記ポリアクリロニトリル溶液を-20~60℃で1分~24時間冷却して析出した成形体を得、
前記成形体を別の溶媒に浸漬させて、前記溶媒を前記別の溶媒と置換させ、主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体を得る工程を含み、
前記溶媒が、ポリアクリロニトリルに対する貧溶媒と、ポリアクリロニトリルに対する良溶媒とを含み、
前記貧溶媒は、水、アセトニトリル、エチレングリコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選択される1以上であり、
前記良溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびN-メチルピロリドンからなる群から選択される1以上である。
【0021】
前記溶媒(第1の溶媒)を前記別の溶媒(第2の溶媒)と置換させた後、得られた成形体を乾燥して多孔質体を得てもよい。前記乾燥は、例えば0~90℃、好ましくは0~80℃で行う。また、前記乾燥は、例えば減圧~常圧、好ましくは減圧で行う。また、前記乾燥は、凍結乾燥によって行ってもよい。
【0022】
本発明の多孔質体は、前記のようにポリアクリロニトリルを主成分として含み、前記多孔質体は、例えば孔径0.1~15μmの孔を有し、前記孔の骨格径は、例えば0.05~8μmであり、かつ、多孔質体の厚みが1mm以上である。このような多孔質体は、例えばフィルター、吸着材等として、用いることができる。孔径および骨格径は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した画像より求めることができる。なお、ポリアクリロニトリルを主成分として含む多孔質体とは、多孔質体の原料ポリマーに対し、例えば85重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは92重量%以上をポリアクリロニトリルが占めることを意味する。
【0023】
また、本発明は、炭素化多孔質体の製造方法であって、本発明の主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体の製造方法により得られた多孔質体を、焼成する工程を含む。
【0024】
前記焼成は、例えば、1000~1400℃、好ましくは1100~1400℃で行う。
【0025】
また、本発明は、主成分としてポリアクリロニトリルを含む多孔質体である。前記多孔質体の厚みは、例えば1mm以上である。
【0026】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
PAN:ポリアクリロニトリル
P(AN-MA):ポリ(アクリロニトリル-コ-メチルアクリレート)
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
CHCN:アセトニトリル
【0027】
本明細書において、測定機器は以下の機器を用いた。
走査型電子顕微鏡:日立S-3000N(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)
イオンスパッタ:日立E-1010
BET:マイクロメリティックス トライスター3000(島津製作所製)
サンプル脱ガス装置:マイクロメリティックス バキュプレップ061LB(島津製作所製)
デジタルマルチメーター:SANWA CD770
本明細書において孔径および骨格径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像より求めた。
【実施例1】
【0028】
PAN(平均分子量Mw=150,000、Aldrich製)をDMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒に80mg/mlの濃度で加え、90℃で攪拌した。完全に溶解させた後、攪拌子を取り出して、20℃の水浴で60分間静置した。冷却後、相分離が起こり、サンプル管(円柱状)の形状の成形体が得られた(図1参照)。この成形体をメタノール(別の溶媒)中に浸して、バイオシェーカー中20℃で24時間振とうした。24時間中にメタノールを3回交換して溶媒のDMSOと水をメタノールに置換した。その後4時間常温で減圧乾燥を行い、メタノールを除去して多孔質体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がPANである)。
【0029】
<SEM観察>
15.0mAの放電電流で150sスパッタリングを行った後、15.0kVから25.0kVの印加電圧でSEM観察を行った。
【0030】
得られた多孔質体のSEM写真を図2に示す。図2に示すように、多孔質体は、骨格径が0.4~0.6μmおよび孔径0.8~2.1μmの共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。なお、孔が共連続構造であることは、複数の多孔質体サンプルのSEM写真において、孔の形状が同一または類似の形状であることから推測できた。
【0031】
<BET比表面積測定>
サンプル脱ガス装置を用い、窒素気流下60℃で40分間脱気した後、BET3点法による比表面積測定を行った。得られたBET法による比表面積値は、1.6×10/gであった。この値から十分に大きい比表面積を有する多孔質体であることが確認できた。
【実施例2】
【0032】
PAN濃度を、120mg/mLおよび160mg/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして行って多孔質体を得た(PAN濃度120mg/mlの場合の寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は0.4~1.0μmおよび孔径1.3~3.5μm;PAN濃度160mg/mlの場合の寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は0.2~0.5μmおよび孔径1.4~2.0μm、両者とも、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がPANである)。PAN濃度120mg/mLで得られた多孔質体のSEM写真を図3(a)に、PAN濃度160mg/mLで得られた多孔質体のSEM写真を図3(b)示す。図3に示すように、これらの多孔質体は、ハニカム様の構造の多孔質体であることが確認できた。
【実施例3】
【0033】
別の溶媒として、メタノールの代わりに、水、アセトン、またはアセトニトリルを用いた以外は、実施例1と同様にして行って多孔質体を得た。いずれの場合にも、SEM観察からメタノールを用いた場合と同様の多孔構造を有するPAN多孔質体が得られることが確認できた。
【実施例4】
【0034】
実施例1で得たPAN多孔質体を、まず高純度空気中230℃で60分加熱した。次に、窒素雰囲気で25℃から1,300℃まで240℃/hの昇温速度で加熱した。得られた円柱状の多孔質体の直径、高さをノギスを用いて測定し、計算により体積を求めた。重量は電子天秤により測定した。得られた多孔質体の元素分析、体積変化、重量変化および比表面積値を表1に示す。焼成後に得られた多孔質体のSEM写真を図4に示す。
【0035】
【表1】
JP0005717107B2_000002t.gif

【0036】
焼成した後の多孔質体は、BET法による比表面積値が19m/gと焼成前の約9分の1に減少しており、これは焼成による収縮によるものと考えられる。
【実施例5】
【0037】
PAN(分子量=150,000)をDMSO/CHCN/HO(67/24/9vol%)混合溶媒に80mg/mlの濃度で加え、70℃で攪拌した。完全に溶解させた後、攪拌子を取り出して、20℃の水浴で60分間静置した。冷却後、相分離が起こり、容器の形状(サンプル管であれば円柱状)の成形体が得られた。この成形体をメタノール(別の溶媒)中に浸して、バイオシェーカー中20℃で24時間振とうした。24時間中にメタノールを3回交換して溶媒のDMSOおよびCHCNと水をメタノールに置換した。その後4時間常温で減圧乾燥を行い、メタノールを除去して多孔質体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は1.2~3.0μmおよび孔径3.0~7.0μm、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がPANである)。
【0038】
得られた多孔質体のSEM写真を図5に示す。図5に示すように、これらの多孔質体は、共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。
【実施例6】
【0039】
DMSO/CHCN/HO(67/24/9vol%)混合溶媒をDMSO/CHCN/HO(50/40/10vol%)混合溶媒に変更した以外は、実施例5と同様にして行って多孔質体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は0.2~0.3μmおよび孔径0.2~0.3μm、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がPANである)。得られた多孔質体のSEM写真を図6に示す。図6に示すように、これらの多孔質体は、ハニカム様の構造の多孔質体であることが確認できた。
【0040】
[比較例]
PAN(分子量=150,000)をDMSOに20℃で溶解させ、100mg/mlの濃度のドープを調製した。このドープをシリンジ(針サイズ:30G)を使用して20℃の水浴中へ押し出した。水浴中で生成した繊維を引き上げ、水洗後、20℃で乾燥させた(繊維径40μm)。得られた繊維のSEM写真を図7(a)~(c)に示す。図7に示すように、このようにして得られた繊維は、表面には孔が無く、内部に不定形に孔が形成されていることが確認できた。
【実施例7】
【0041】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMF/HO(75/25vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から80℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例8】
【0042】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMF/HO(80/20vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から80℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例9】
【0043】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMF/HO(85/15vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から80℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例10】
【0044】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMF/HO(85/15vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から80℃へ変更し、PANの濃度を80mg/mlから120mg/mlへ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例11】
【0045】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMF/HO(90/10vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から70℃へ変更し、PANの濃度を80mg/mlから200mg/mlへ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例12】
【0046】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMSO/CHCN(20/80vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から70℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例13】
【0047】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMSO/CHCN(30/70vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から70℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例14】
【0048】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMSO/エチレングリコール(70/30vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から70℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例15】
【0049】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMSO/エチレングリコール(80/20vol%)混合溶媒に変更し、攪拌温度を90℃から70℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして行い、相分離による成形体を得た。
【実施例16】
【0050】
PAN(分子量=150,000)をDMSO/HO(90/10vol%)混合溶媒に80mg/mlの濃度で加え、70℃で攪拌した。完全に溶解させた後、攪拌子を取り出して、20℃の水浴で60分間静置した。冷却後、相分離が起こり、容器の形状(サンプル管であれば円柱状)の成形体が得られた。この成形体を水(別の溶媒)中に浸して、バイオシェーカー中20℃で24時間振とうした。24時間中に水を3回交換して溶媒のDMSOを水に置換した。その後24時間常温で凍結乾燥を行い、水を除去して多孔質体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状)。得られた多孔質体のSEM写真を図8に示す。図8に示すように、多孔質体は、骨格径は0.5~1.0μmおよび孔径0.8~2.2μmの共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。なお、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がPANである。
【実施例17】
【0051】
P(AN-MA)(アクリロニトリル含有量94重量%以上、Aldrich製)をDMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒に50mg/mlの濃度で加え、90℃で攪拌した。完全に溶解させた後、攪拌子を取り出して、20℃の水浴で60分間静置した。冷却後、相分離が起こり、サンプル管(円柱状)の形状の成形体が得られた(図9参照)。この成形体をメタノール(別の溶媒)中に浸して、バイオシェーカー中20℃で24時間振とうした。24時間中にメタノールを3回交換して溶媒のDMSOと水をメタノールに置換した。その後4時間常温で減圧乾燥を行い、メタノールを除去して多孔質体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状。骨格径は0.32~0.72μmおよび孔径0.70~1.82μm、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がP(AN-MA)である)。
【0052】
得られた多孔質体のSEM写真を図9に示す。図9に示すように、これらの多孔質体は、共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。
【実施例18】
【0053】
P(AN-MA)濃度を、100mg/mLに変更した以外は、実施例17と同様にして行って多孔質体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は0.31~0.77μmおよび孔径0.87~2.25μm、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がP(AN-MA)である)。得られた多孔質体のSEM写真を図10に示す。図10に示すように、これらの多孔質体は、共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。
【実施例19】
【0054】
P(AN-MA)(アクリロニトリル含有量94重量%以上、Aldrich製)をDMSO/CHCN/HO(50/40/10vol%)混合溶媒に50mg/mlの濃度で加え、85℃で攪拌した。完全に溶解させた後、攪拌子を取り出して、20℃の水浴で60分間静置した。冷却後、相分離が起こり、容器の形状(サンプル管であれば円柱状)の成形体が得られた。この成形体をメタノール(別の溶媒)中に浸して、バイオシェーカー中20℃で24時間振とうした。メタノールを3回交換して溶媒のDMSOおよびCHCNと水をメタノールに置換した。その後4時間常温で減圧乾燥を行い、メタノールを除去して多孔質体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は0.46~1.01μmおよび孔径1.00~2.67μm、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がP(AN-MA)である)。
【0055】
得られた多孔質体のSEM写真を図11に示す。図11に示すように、これらの多孔質体は、共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。
【実施例20】
【0056】
DMSO/CHCN/HO(50/40/10vol%%)混合溶媒をDMSO/CHCN/HO(65/25/10vol%)混合溶媒に変更した以外は、実施例19と同様にして行って多孔質体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は0.41~1.26μmおよび孔径0.96~3.52μm、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がP(AN-MA)である)。得られた多孔質体のSEM写真を図12に示す。図12に示すように、これらの多孔質体は、共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。
【実施例21】
【0057】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMF/HO(80/20vol%)混合溶媒に変更した以外は、実施例17と同様にして行い、相分離による成形体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は0.47~0.94μmおよび孔径1.31~2.45μm、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がP(AN-MA)である)。多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がP(AN-MA)である。
【0058】
得られた多孔質体のSEM写真を図13に示す。図13に示すように、これらの多孔質体は、共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。
【実施例22】
【0059】
DMSO/HO(85/15vol%)混合溶媒をDMF/HO(85/15vol%)混合溶媒に変更した以外は、実施例17と同様にして行い、相分離による成形体を得た(寸法:直径15mm、厚み15mmの略円柱状、骨格径は0.49~1.12μmおよび孔径1.17~2.26μm、多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がP(AN-MA)である)。多孔質体の原料ポリマーに対し100重量%がP(AN-MA)である。
【0060】
得られた多孔質体のSEM写真を図14に示す。図14に示すように、これらの多孔質体は、共連続構造を有する多孔質体であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の方法により得られたPAN多孔質体は、連続孔を有し、フィルター、吸着材等として応用できる可能性がある。また、本発明の方法により得られたPAN多孔質体を炭素化したものは共連続構造を保持しているため、その疎水性やグラファイト構造によるπ-π相互作用などを利用した吸着材として応用できる可能性がある。また、多孔質の炭素材料としての特性を活かした電極などの電池材料への利用も期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
6
【図7(b)】
7
【図7(c)】
8
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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