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明細書 :土壌の水分状態特定装置及びその方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5871237号 (P5871237)
登録日 平成28年1月22日(2016.1.22)
発行日 平成28年3月1日(2016.3.1)
発明の名称または考案の名称 土壌の水分状態特定装置及びその方法
国際特許分類 G01N  27/02        (2006.01)
FI G01N 27/02 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 19
出願番号 特願2012-520446 (P2012-520446)
出願日 平成23年6月14日(2011.6.14)
国際出願番号 PCT/JP2011/063545
国際公開番号 WO2011/158812
国際公開日 平成23年12月22日(2011.12.22)
優先権出願番号 2010138443
優先日 平成22年6月17日(2010.6.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年6月10日(2014.6.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】二川 雅登
【氏名】澤田 和明
個別代理人の代理人 【識別番号】100095577、【弁理士】、【氏名又は名称】小西 富雅
審査官 【審査官】蔵田 真彦
参考文献・文献 特開2004-271494(JP,A)
特開2009-92633(JP,A)
特開2008-14802(JP,A)
特開平6-58895(JP,A)
特開2005-121428(JP,A)
特開昭51-16994(JP,A)
米国特許第5442293(US,A)
米国特許第4652811(US,A)
米国特許第4646000(US,A)
調査した分野 G01N 27/00-27/10、27/14-27/24
特許請求の範囲 【請求項1】
溶媒に溶解しない不溶成分であって高い電気抵抗を有するものか若しくは絶縁体でありかつ前記溶媒よりも比誘電率が小さい不溶成分を前記溶媒に分散した分散系において、前記溶媒に含まれるイオン性の溶質の濃度を特定する方法であって、
前記分散系に第1の電極対を接触させ、
前記電極の一方へ交流の入力電気信号を印加し、
前記電極の他方からの出力電気信号の位相と前記入力電気信号の位相とを比較し、
前記位相の比較結果に基づき前記溶媒に含まれるイオン性の溶質の濃度を特定する、濃度特定方法。
【請求項2】
前記溶媒は水であり、前記不溶成分は空気成分及び土成分である、請求項1に記載の濃度特定方法。
【請求項3】
前記入力電気信号と前記出力電気信号との位相差に基づき、前記溶質の濃度を特定する、請求項1又は2に記載の濃度特定方法。
【請求項4】
前記分散系の電気伝導度を測定し、
得られた前記電気伝導度と請求項1~3の何れかに記載の濃度特定方法で特定されたイオン性溶質の濃度とに基づき、前記分散系中の溶媒量を特定する、分散系中の溶媒量特定方法。
【請求項5】
溶媒に溶解しない不溶成分であって高い電気抵抗を有するものか若しくは絶縁体でありかつ前記溶媒よりも比誘電率が小さい不溶成分を前記溶媒に分散した分散系に適用される溶媒量特定装置であって、
半導体基板と、
該半導体基板上に絶縁層を介して第1の電極対と第2の電極対とが配置され、
前記第1の電極対に接続されて、該第1の電極対間の位相変化を特定する位相変化特定部と、
前記半導体基板の特定位相変化に基づき、前記位相変化特定部で特定された位相変化を補正する位相変化補正部と、
前記第2の電極対に接続されて、該第2の電極対間の電気伝導度を特定する電気伝導度特定部と、
前記半導体基板の特定電気伝導度に基づき、前記電気伝導度特定部で特定された電気伝導度を補正する電気伝導度補正部と、
前記位相変化補正部で補正された位相変化に基づき前記溶媒に含まれるイオン性溶質の濃度を特定し、該特定されたイオン性溶質の濃度と前記電気伝導度補正部で補正された電気伝導度とに基づき、前記分散系中の溶媒量を特定する溶媒量特定部と、
を備える溶媒量特定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は土壌の水分状態特定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業の効率化や生産性の向上を図る見地から土壌の水分状態を特定する装置が求められている。特定すべき水分状態として水分量WC、電気伝導度EC、温度、pH、イオン濃度などがある。
既存の水分量センサとしてテンシオメータ、TDR、静電容量式センサなどが挙げられる(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特表2006-527356号公報
【特許文献2】特表平09-506165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土壌中の水分に含まれるイオン濃度を測定することは、農作物育成のための養分状態を知る上で重要な指標となる。
水溶液中のイオン濃度は電気伝導度σ(即ち、その抵抗率ρの逆数)から特定することができる。この電気伝導度は水溶液中に一対の電極を接触し、その間の電気抵抗を測定することにより得られる。しかしながら、土壌においては、全ての水分が連続しているとは限らない。従って測定された土壌の電気伝導度には土壌中の土や空気の量(即ち、単位体積当たりの土壌から水分量を除いた量)が影響し、土壌に電極を接触させてその間の電気抵抗を単に測定するだけでは土壌に含まれる水分の電気伝導度、ひいては土壌中の水分のイオン濃度を正確に特定できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、土壌に含まれる水分のイオン濃度を特定すべく鋭意検討を重ねてきた。
本発明者らは一対の電極間に印加する電気信号の位相変化に着目した。
その結果、当該位相変化は、水分量の如何にかかわらず、水分に含まれるイオン濃度と一定の関係を有することを見出した。
既述のように、土壌においては全ての水分が連続しているとかぎらないので、土壌に電極を接触させてその間の電気抵抗を単に測定するだけでは土壌に含まれる水分の電気伝導度、ひいては土壌中の水分のイオン濃度を正確に特定することはできない。
これに対し、位相変化を測定すれば、土壌における水分量の如何にかかわらず、水分に含まれるイオン濃度を特定できる。
【0006】
図1に示す一対の電極の下面を測定対象に接触させ、一方の電極へ所定周波数の入力電気信号を印加し、他方の電極から出力電気信号を検出する。そのときの、両者の位相変化θは次の式1で表わされる。
【数1】
JP0005871237B2_000002t.gif
ここにおいて、水溶液の特性は次のように表わされるものとする。
【数2-1】
JP0005871237B2_000003t.gif
【数2-2】
JP0005871237B2_000004t.gif
【数2-3】
JP0005871237B2_000005t.gif
但し、Zは水溶液のインピーダンス、Rは水溶液における電極間の抵抗、Cは水溶液における電極間の容量を示す。
【0007】
上記式1において、周波数が固定であればω及びεは定数となり、結果として、位相変化θは抵抗率ρのアークタンジェントに比例する。換言すれば、位相変化θは電気伝導度σ(=1/ρ)の逆数のアークタンジェントに比例する。電気伝導度σは水溶液中のイオン濃度に比例するので、結果として、位相変化θはイオン濃度の逆数のアークタンジェントに比例することとなる。このとき、インピーダンスZは何ら影響しない。
なお、より厳密にいえば、イオン濃度の変化に伴い水溶液の誘電率εも変化するが、その変化率は水自体の誘電率に比べて極めて小さいので無視することができる。
【0008】
図2は、周波数を固定したときの水分量に対する位相変化、イオン濃度に対する位相変化の測定結果である。
水分量1.0は水溶液の状態を示し、例えば水分量0.4は単位体積のロックウール対してその40容量%の水溶液を含浸させたこを示す。
図2の結果は、25μm×4mmのアルミニウムの一対を875μmの間隔で配置したもので測定した。
図2の結果は、位相変化θが水分量に依存せず、イオン濃度の逆数のアークタンジェントにのみ比例することを示している。
これにより、位相変化θに基づき土壌中の水分のイオン濃度を特定できることがわかる。
【0009】
土壌を水分中に土成分と空気とが分散しているものと考えれば、上記の知見は、水等の溶媒Aに他の成分Bを分散させた系において、溶媒Aに溶解したイオン性の溶質Cの濃度が位相変化から特定できることを意味する。ここに、成分Bと成分Aとは電気伝導度とが異なり、成分Bは成分Aに溶解していない。
水分量に無関係であるので、水溶液自体(即ち、何ら他の不溶成分を含まないもの)についてのイオン濃度を位相変化から求めることもできる。
【0010】
この発明の第1の局面は次のように規定される。
溶媒中に該溶媒に溶解しない不溶成分を分散した分散系において、前記溶媒に含まれる溶質の濃度を特定する方法であって、
前記分散系に一対の電極を接触させ、
前記電極の一方へ交流の入力電気信号を印加し、
前記電極の他方からの出力電気信号の位相と前記入力電気信号の位相とを比較し、
前記位相の比較結果に基づき、前記溶媒に含まれる溶質の濃度を特定する、濃度特定方法。
【0011】
上記において、溶媒は溶質を溶解できるものであれば特に限定されない。水の他、アルコールやエーテル等の油系の溶媒を用いることもできる。
溶質は溶媒に溶解してイオン化し、溶解量に応じて溶媒の電気伝導度を変化させるものとする。
不溶成分は溶媒に溶解せず、溶媒に対して物理的に独立して溶媒中に分散していれば気体、液体、固体を問わない。ただ、不溶成分は高い電気抵抗を有するものか若しくは絶縁体とする。不溶成分が導電性を備えると、分散系の電気伝導度が当該不溶成分に支配され、求めるところの溶媒の電気伝導度、ひいては溶質の濃度を得られないからである。また、不溶成分に対し溶媒の比誘電率は十分高いものとする。溶媒が不溶成分と同じ程度もしくは小さい比誘電率であった場合、不溶成分に支配され、求めるところの水分量に支配されない濃度の計測が得られないからである。
かかる不溶成分として、固体状の無機材料及び高分子材料、更には空気その他のガスを用いることができる。水を溶媒としたときは油成分を不溶成分とすることができ、また、その逆も可なりである。
【0012】
分散系として土壌を採用したときは、溶媒が水、溶質がリンやカリウム等のイオン、不溶成分は固体成分(粘土やその二次粒子等からなる無機物、生物の屍骸等からなる有機物)や固体成分の空隙に存在する空気からなる。上記固体成分をこの明細書で「土成分」とよび、間隙に存在する空気を「空気成分」とよぶ。
分散系において不溶成分は溶媒に対して必ずしも均一に分散していなくてもよい。
【0013】
分散系に接触させる電極は、分散系に対して化学的に安定とすることが好ましく、例えば、金、白金等の貴金属及びその合金や炭素で形成することができる。
入力電気信号は電極の一方(第1の電極)へ入力する。入力電気信号は交流信号であり、濃度測定時にはその周波数を一定にすることが好ましい。
電極の他方(第2の電極)からの出力電気信号を検出し、入力電気信号と出力電気信号との位相を比較する。比較の一態様として両者の位相差を検出する。
【0014】
土壌においてその水分量の特定も重要である。
ここに、汎用的な電気伝導度センサによる測定結果を図3に示す。
図3の結果より、電気伝導度(EC)センサの出力は水分量及びイオン濃度に比例することがわかる。
このことは、
【数3】
JP0005871237B2_000006t.gif
より明らかである。
1/ρ=σ(電気伝導度)のアークタンジェント∝イオン濃度であり、誘電率εは水分量に比例するからである。
【0015】
従って、イオン濃度が特定されれば、測定された電気伝導度より水分量を特定できることがわかる。
よって、位相変化θよりイオン濃度を特定し、特定されたイオン濃度を基準にして、測定された電気伝導度より土壌の水分量を特定できる。
水分量の特定においても土壌は分散系の一例に過ぎないことは既述の通りである。
【0016】
以上の知見に基づき、この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
前記分散系の電気伝導度を測定し、
得られた前記電気伝導度と第1~3局面の何れかに記載の濃度特定方法で特定された溶媒中のイオン性溶質の濃度とに基づき、前記分散系中の溶媒量を特定する、分散系中の溶媒量特定方法。
【0017】
上記、溶媒量特定方法を実行するための溶媒量特定装置として、第5の局面を提案する。
半導体基板と、
該半導体基板上に絶縁層を介して第1の電極対と第2の電極対とが配置され、
前記第1の電極対に接続されて、該第1の電極対間の位相変化を特定する位相変化特定部と、
前記半導体基板の特定位相変化に基づき、前記位相変化特定部で特定された位相変化を補正する位相変化補正部と、
前記第2の電極対に接続されて、該第2の電極対間の電気伝導度を特定する電気伝導度特定部と、
前記半導体基板の特定電気伝導度に基づき、前記電気伝導度特定部で特定された電気伝導度を補正する電気伝導度補正部と、
を備える溶媒量特定装置。
【0018】
本発明者らは土壌の水分に含まれるイオン濃度と水分量とを特定する他の方式も検討してきた。以下に説明する。
水分量は単位体積の土壌において土と空気の容積を差し引いた部分であるが、土壌中の水分にはカリウムイオン、リン酸イオン等をはじめてとして各種のイオンが含まれているので、電気信号を処理して水分量を特定する際には水分のイオン濃度(以下、単に「濃度」ということがある)を無視することができない。
土壌に含まれる水分のイオン濃度が特定できれば、水分量を特定する際に当該イオン濃度の影響を補正することができると考えられる。水分のイオン濃度は電気伝導度より特定可能であるが、土壌中において全ての水分が連続しているとは限らないので、換言すれば測定された土壌の電気伝導度には土壌中の土や空気の量(即ち、単位体積当たりの土壌から水分量を除いた量)が影響するので、土壌の電気伝導度を単に測定するだけでは土壌に含まれる水分のイオン濃度を正確に特定することはできない。
以上説明したように、水分量を特定する際には電気伝導度が影響し、電気伝導度を特定する際には水分量が影響する。よって、それぞれの特性を単独で測定しても、得られた値には誤差が含まれてしまう。
かかる課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた結果、これらの関係を水分量と電気伝導度の連立方程式と見立てることに気がついた。即ち、同じ土壌から実測した水分量(見掛け上の水分量WC1)と電気伝導度(見掛け上の電気伝導度EC1)を同時に処理することにより、土壌における真の水分量WC0及び真の電気伝導EC0とを推定できると考えた。
水分量を測定するときに利用する指標として電気伝導度の影響が比較的小さい静電容量値Qを用いることとした。なお、この明細書及び請求の範囲において静電容量を単に「容量」ということがある。
【0019】
本発明の第6の局面は次のように規定される。
半導体基板と、
該半導体基板上に絶縁層を介して第1の電極対と第2の電極対とが配置され、
前記第1の電極対に接続されて、該第1の電極対間の電気伝導度を特定する電気伝導度特定部と、
前記第2の電極対に接続されて、該第2の電極対間の静電容量を特定する静電容量特定部と、を備える土壌の水分状態特定装置。
【0020】
このように規定される第6の局面の水分状態特定装置によれば、電気伝導度ECを測定するための第1の電極対と静電容量を測定するための第2の電極対とが同一の半導体基板上に配置されるので、土壌に対して同一の条件でその電気伝導度と静電容量Qを測定できる。よって、実測された電気伝導度(見掛け上の電気伝導度EC1)及び静電容量Q(見掛け上の静電容量Q1;見掛け上の水分量WC1に対応))を処理して得られる真の電気伝導度EC0の推定値及び真の水分量WC0の推定値に高い信頼性を確保できる。
【0021】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、第6の局面に規定の装置において、前記第1の電極対の内側に前記第2の電極対が配置される。
このように規定される第7の局面の水分状態特定装置によれば、第1及び第2の電極対の配置を可久的に小さくできる。
なお、第1の電極対と第2の電極対は基板上において同一の空間を測定できれば、その配置態様は特に限定されるものではない。装置をコンパクトにする見地から第2の局面の構成を採用することが好ましいが、その他、第2の電極対の内側に第1の電極対を配置したり、互い違いに配置することもできる。更には、第1の電極対の向きと第2の電極対の向きとを直交させることもできる。
【0022】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、第6又は第7の局面に規定の装置において、前記第1及び第2の電極対は相互に絶縁層でアイソレートされ、該絶縁層の表面が親水化処理される。
このように絶縁層の表面を親水化処理することにより、各電極対に対する土壌中の水分のなじみやすくなり、測定レンジが拡大する。
親水化処理の方策は特に限定されるものではないが、絶縁層の表面に親水性の層(酸化シリコン膜等)を形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】位相変化の演算式1に用いられる電極構造を示す概念図である。
【図2】周波数を固定したときの水分量に対する位相変化、イオン濃度に対する位相変化の測定結果である。
【図3】周波数を固定したときの水分量に対する電気伝導度変化、イオン濃度に対する電気伝導度変化の測定結果である。
【図4】ヘッド部の構成を示す平面図である。
【図5】ヘッド部の構成を示す断面図である。
【図6】他の態様のヘッド部の構成を示す断面図である。
【図7】イオン濃度(電気伝導度)が一定の水溶液における水分量と水分状態特定装置で測定される静電容量との関係をしめすグラフである。
【図8】図5のヘッド20を用いた水分状態特定装置の構成を示す概念図である。
【図9】図8の測定装置の出力結果を示す。
【図10】測定装置を補正する原理を説明する図である。
【図11】位相変化補正部と電気伝導度補正部とを備えた実施の形態の水分状態特定装置の構成を示す概念図である。
【図12】他の実施の形態の水分状態特定装置の構成を示すブロック図である。
【図13】電気伝導度と静電容量との関係を示すグラフである。
【図14】水分量と電気伝導度との関係を示すグラフである。
【図15】電気伝導度と静電容量の実測値から真の水分量と電気伝導度を推定する方法を説明するグラフである。
【図16】同処理の方法を示すフローチャートである。
【図17】電気伝導度と静電容量の実測値から真の水分量と電気伝導度を推定する他の方法を説明するグラフである。
【図18】同処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図4に実施の形態のセンサのヘッド部20の平面図を示す。図5は同じくヘッド部20の構成を示す断面図である。
図5に示すヘッド部20は、シリコン基板21とその表面を酸化して形成した膜厚約0.5μmの酸化シリコン絶縁層22を備える。
絶縁層22の上に第1の電極対25と第2の電極対23とが積層される。
第2の電極対23は、図4に示すとおり、各電極の幅を約1mm、長さを約4mm、電極間の間隔を約2.5mmとしている。
この第2の電極対23の各電極はアルミニウムからなる第1層(膜厚:1μm)27の上にチタンからなる結合層28(膜厚:0.02μm)を介して白金層(膜厚:0.1μm)29を積層してなる。
第1の電極対25はアルミニウムからなる第1層31(膜厚:1μ)からなり、この第1層31は、第2の電極対23の第1層27と同時に形成できる。第1の電極対25の第1層31は幅25μm、電極間の間隔は875μmである。なお、第1の電極対25の各電極の上部保護膜(窒化シリコン膜や酸化シリコン膜など)の膜厚Dと電極間隔Wは、W/D>100とすることが好ましい。これは、幅Dが電極25上の保護膜の容量と関連し、間隔Wが測定対象物となる空間の容量と関連していることに起因する。WやDが小さくなると、それぞれの容量は大きくなる傾向となる。ここで、直列接続された場合の合成容量は、個々の容量の一番小さな値の容量に依存する(例えば、100pFと1pFを直列接続した場合、合成容量は約1pFとなる)ことと、比誘電率が水は保護膜の約100倍であることを考慮し、必ず測定対象物の空間の容量が保護膜の容量より小さくなるようにするためである。
これら電極を構成する金属層の材料は、その用途や目的に応じて、適宜選択できることは言うまでもない。

【0025】
各電極対23、25は第2の絶縁層33でアイソレートされている。
この例では第2の絶縁層33として酸化シリコン層35(膜厚:0.5μm)と窒化シリコン層36(膜厚:50nm)とを基板側から順に積層した。なお、窒化シリコン層36は第1の電極対25の表面をも被覆する。第1の電極対25は静電容量を測定するものであるのでその表面が薄い絶縁膜で被覆されていてもよく、また、絶縁膜で被覆することのよりアルミニウムからなる第1層31を保護できる。なお、第1の電極対25の表面を被覆する絶縁膜は10×W[Ω・m]以上とすることが好ましい。測定すべき静電容量の値から水分の電気伝導度の影響をできる限り排除するためである。

【0026】
図6に示すヘッド部40では、第2の絶縁層35の表面へ薄い酸化シリコンからなる親水化膜38(膜厚60nm)を積層することにより、ヘッド部40の表面を全体的に親水性としている。
この例では、第1の電極対25の表面には親水化膜38を設けていないが、この親水化膜38と窒化シリコン膜36との併せた膜厚が例えば50nm以下となれば、親水化膜38を第1の電極対25の上に積層してもよい。
なお、図5に示すヘッド部20及び図6に示すヘッド部40の各層は、任意の方法により形成可能であるが、例えば電極層はパターニングを伴うスパッタ法で形成でき、第2の絶縁層35及び親水化膜38はCVD法により形成できる。

【0027】
図7には、図5に示すヘッド部20と図6に示すヘッド部40とで土壌の静電容量を測定したときの結果を示す。図7の結果から、図6に示すヘッド部40では、水分量が30%程度までしか測定できないことがわかる。これは、測定に用いた土嬢が空間に占める割合が70%程度あり、水を含むことが出来る最大量が30%であるためである。
但し、本発明者らの検討によれば、人工的な土壌(ロックウール等)に対しては表面疎水性の図5に示すヘッド部20が有効になる。図6に示すタイプのヘッド部40より測定範囲が広くなる理由は、ロックウールの素材は空間に占める割合が5%程度と少なく、95%程度まで水を含ませることができることによる。

【0028】
水分量に対して広い検出レンジを備える図5のヘッド部の各電極23、25に対して、図8に示すように位相変化特定部100と電気伝導度特定部200を接続した。
位相変化特定部100は第1の電極25の一方へ所定の任意周波数の交流電気信号を印加し、その位相と他方の第1の電極25から得られる出力電気信号の位相との差(位相変化θ1)を特定し、出力する。
電気伝導度特定部200は第2の電極23、23間の抵抗率ρを特定し、これから電気伝導度σ1を得る。

【0029】
図2及び図3の結果を得た測定対象を図8に示した装置で測定したところ、結果(位相変化θ1、電気伝導度σ1)はそれぞれ図9(A)及び図9(B)となった。即ち、ノイズが入って理論通りに作動しなかった。
かかるノイズの原因は下記にあると考えられる。
測定対象のインピーダンス(振幅や位相など)を計測する場合、センサとして得られる信号には、界面酸化膜及び基板酸化膜のインピーダンスの影響が入る場合があるからである。

【0030】
このようなときには、以下に示すやり方で補正・算出をすることができる。
その前提として、測定対象である分散系(土壌)において位相変化が見られることは、電気回路的には、図10(A)に示す通り分散系に抵抗Rと静電容量Cとの並列回路が存在することを意味する。
この並列回路のインピーダンスZは次のように表わされる。
【数4】
JP0005871237B2_000007t.gif
他方、第1及び第2の電極23、25は半導体基板に配設されているので、図10(B)に示す通り、基板自体の抵抗及び静電容量が影響する。更には、基板と測定対象との間の抵抗及び静電容量も考慮しなければならない。
図10(B)に示す回路の全体のインピーダンスZtは次のように表わされる。
【数5】
JP0005871237B2_000008t.gif
ここに、
Zsは基板のインピーダンス、Zwは測定対象のインピーダンス、Ziは基板と測定対象との界面のインピーダンスである。

【0031】
Ztは直接センサとして計測できるものである。仮に、Zwがとても大きな値を持つ状態、すなわち対象物に触れずに空気のみとした場合、以下の式とすることができる。

Zt=Zs

このことより、Zsは実測により求めることができることが分かる。また、Zw<JP0005871237B2_000009t.gif
これは、Zt、Zsが既知であるため、Ziは計算により求めることができる。前述の式を変形すると、
【数7】
JP0005871237B2_000010t.gif
となる。

【0032】
実際の計測では、振幅の実効値からインピーダンスの絶対値|Z|が、位相から位相Θを測定するので、

【数8】
JP0005871237B2_000011t.gif
となる。ここで、
【数9】
JP0005871237B2_000012t.gif
であるため、次式が導き出せる。
【数10】
JP0005871237B2_000013t.gif
JP0005871237B2_000014t.gif

【0033】
この式からいえることは、界面のインピーダンスは、実測により真の値を算出できるということである。
界面及び基板はどのような測定対象物であっても不変であることから、あらかじめ界面及び基板のインピーダンスを算出することにより、真の測定対象物のインピーダンスをその都度算出することができることが分かる。

【0034】
水分量が不明な空間のインピーダンスZwの算出方法は以下となる。
【数11】
JP0005871237B2_000015t.gif
ここで、
【数12】
JP0005871237B2_000016t.gif
より、
JP0005871237B2_000017t.gif が求まることとなる。界面及び基板が影響を及ぼし、θt≠θwとなるデバイスであっても、上述の計算式を用いることにより、界面及び基板の影響を除去して真のθwを求めることができ、イオン濃度を算出することが可能となる。
同様に、電気伝導度においても、半導体基板自体の電気伝導度及び半導体基板と測定対象との界面における電気伝伝導度(以下、「特定電気伝導度σs」も予め定めることができる。

【0035】
以上より、図8の装置に、実測位相変化θ1から特定位相変化θsの影響を補正する位相変化補正部110と実測電気伝導度σ1から特定電気伝導度σsの影響を補正する電気伝導度補正部210を付設した(図11参照)。
図2及び図3の結果は、図11に示した装置で得た位相変化補正部110の出力θと電気伝導度補正部210の出力σをプロットしたものである。
なお、入力電気信号の周波数は500kHz、電圧(振幅)は250mVとし、標準イオン溶液を用い、不溶成分はロックウールである。

【0036】
この発明の第6の局面に対応する水分量特定装置1の構成を図12に示す。
この水分量特定装置1はヘッド部2、信号処理部3及び推定部4を備える。
ヘッド部2はシリコン等からなる半導体基板6の表面に第1の電極対7及び第2の電極対8を備える。ヘッド部2の詳細は図2及び図3に基づき後述する。
信号処理部3は実測電気伝導度EC1特定部9と実測静電容量Q1特定部とを備える。EC1特定部9は、第1の電極対7間の抵抗値に基づき土壌の電気伝導度を特定する。ここで得られた電気伝導度は水分量(即ち、土壌中の空気量や土の量)が影響しているので、土壌に含まれる水分のイオン濃度を正確に反映しているものではなく、見掛け上の電気伝導度EC1となる。

【0037】
同様に、Q1特定部10は、第2の電極対8の静電容量を特定するものであり、この例ではLCRメータを利用する。ここで得られた静電容量には水分のイオン濃度が影響しているので、土壌の水分量を正確に反映しているものではなく、見掛け上の静電容量Q1となる。
真の電気伝導度EC0及び真の水分量WC0推定部12は、EC1特定部9とQ1特定部10で特定された実測値EC1とQ1とに基づき、真の電気伝導度EC0と水分量WC0とを推定する。推定の手法については後述する。
ヘッド部には図5及び図6に示したものを用いられる。

【0038】
次に、EC1特定部9で特定された実測電気伝導度EC1とQ1特定部10で特定された実測静電容量Q1とに基づき真の伝導度EC0と真の水分量WC0を推定する方法について説明する。
最初に、本発明者らの検討により、土壌の電気伝導度、静電容量及び水分量には次の関係があることがわかった。
図13は電気伝導度と静電容量との関係を示す。図13において太線のデータは水溶液(水分量100%)における電気伝導度と静電容量との関係を示す。
電気伝導度が同じ場合は、静電容量と水分量は比例の関係にある(図13参照)。従って、各種水分量(80%、60%、40%、20%)における電気伝伝導度と静電容量との関係は図13において細線で表現される。
図14は水分量と電気伝導度との関係を示す。水分量100%のときの電気伝導度に対して、水分量が小さくなると電気伝導度は比例して小さくなる。


【0039】
以上の前提条件のもと、図12で測定された電気伝導度EC1(第1の電気伝導度)がA1、静電容量Q1(第1の静電容量)がBの値をとったとする(図16、ステップ1)。
値A1及びBを、図13のグラフにプロットする(図15参照)。
同じ電気伝導度(即ち同じイオン濃度)の水分に対して静電容量と水分量とは比例の関係にあるので(図7参照)、水溶液について予め得られている太線の関係(電気伝導度と静電容量との第1の関係、以下第1の検量線Pという)における電気伝導度A1に対応する静電容量C1を求め(ステップ3)、実測された静電容量Bと当該静電容量C1との比R1を求める(ステップ5)。既述のように、この比R1は水分量WCに対応する。例えば図15の例では、B/Cは0.6であるので、土壌の水分量WCを0.6と仮定する。
次に、電気伝導度が同じものであれば、水分量と電気伝導との間に比例関係が成立するので(図14)、実測された電気伝導度A1を比R1(=水分量WC)で割り算し、補正された電気伝導度A2を特定する(ステップ7)。この補正電気伝導度A2は水分量が100%と仮定したときの値である。

【0040】
次に、ステップ9、ステップ11を介してステップ1~ステップ13を繰り返す。
即ち、補正された電気伝導度A2に対応する検量線Pの静電容量C2を特定し、この静電容量C2と実測された静電容量Bとの比Rnを求める。A2は水分量100%と仮定されたときの電気伝導度であるため、この比Rnは水分量をより正確に反映するものとなる。
更に、補正電気伝導度A2を得られた比Rnで割り算し、更に補正された電気伝導度A3を特定し、この電気電度度A3に対応する検量線P上の静電容量C3を特定し、この静電容量C3と実測された静電容量Bとの比Rnを求める。この比Rnは水分量を更に正確に反映するものとなる。
以下、この処理を繰返し、補正処理前後の電気伝導度Anと電気伝導度An+1との差が所定の閾値以下となるまで行なう(ステップ13)。そのとき得られた電気伝導度Anと当該電気伝導度Anに対応する検量線P上の静電容量Cnと実測値Bとの比Rnとは、ともに土壌に含まれる水分の真の電気伝導度EC0と水分量WC0に近いものとなる(ステップ15)。

【0041】
上記の例では、実測された静電容量を基準にして、電気伝導度を補正することにより、真の電気伝導度及び水分量を推定している。静電容量を基準にしたのは、図13に示されるとおり、電気伝導度の変化を示す横軸はログ標記であり、換言すれば、電気伝導度の変化に対する静電容量の変化量が小さいからである。
実測された電気伝導度を基準にして静電容量を補正することにより、真の電気伝導度及び水分量を推定することも可能である。

【0042】
以上をまとめると、次のようになる。
(1) 土壌の水分状態を特定する方法であって、
測定対象土壌の電気伝導度を測定する電気伝導度測定ステップと、
前記測定対象土壌の静電容量を測定する静電容量測定ステップと、
前記電気伝導度測定ステップで測定された第1の電気伝導度と前記静電容量測定ステップで測定された第1の静電容量とを、濃度の異なる水溶液について予め定められている電気伝導度と静電容量との第1の関係に照らし、前記第1の電気伝導度における前記第1の関係上の静電容量と前記第1の静電容量との比を演算するステップと、
前記演算された比に基づき、前記第1の電気伝導度を補正して補正電気伝導度を特定する第1の電気伝導度特定ステップと、を含む土壌の水分状特定方法。
(2) 前記第1の静電容量と前記補正電気伝導度における前記第1の関係上の静電容量との比に基づき水分量を特定する水分量特定ステップを更に含む、(1)に記載の方法。
(3) 前記補正電気伝導度における前記第1の関係上の静電容量と前記第1の静電容量との比を演算し、演算された比に基づき前記補正電気伝導度を更に特定する第2の電気伝導度特定ステップと、
補正前後の電気伝導度の差が所定値以下になるまで前記第2の電気伝導度特定ステップを繰返す、(1)に記載の方法。
(4) (3)において補正前後の電気伝導度の差が所定値以下になったときの前記第2の電気伝導度特定ステップで特定された補正電気伝導度おける前記第1の関係上の静電容量と前記第1の静電容量との比に基づき水分量を特定するステップを更に備える、(4)に記載の方法。

【0043】
他の推定方法につき、図17及び図18に基づき説明をする。なお、図18において図16と同一のステップには同一の符号を付してその説明を省略する。
この推定方法の前提として、電気伝導度と静電容量との関係は、電気伝導度がある程度大きくなると(例えば10S/mを超えると)、静電容量が変化しなくなることに着目した。
図17に示すとおり、電気伝導度が10S/mのときの静電容量を基準Dとして、検量線Pについてその静電容量とDとの比Eを求め、保存しておく。
実測された電気伝導度がA1、静電容量がBのとき(ステップ1)、実測された電気伝導度A1に対応する比Eを静電容量Bへ掛け合わせて静電容量B1を求める(ステップ23)。この静電容量B1は基準となる水溶液(電気伝導度:10S/m)の静電容量である。即ち、土壌に含まれる水の電気伝導度が基準Dのものと仮定したとき、土壌の静電容量を静電容量B1とする。
電気伝導度が等しい水溶液については静電容量と水分量とは比例の関係にあるので、予め基準となる水溶液(電気伝導度:10S/m)につき、静電容量と水分量との検量線を求めておけば(図7参照)、この検量線に基づき静電容量B1に対応する水分量WC1を特定できる(ステップ25)。
水分量と電気伝導度にも比例関係が成立するので、特定された水分量WC1に基づき実測された電気伝導度A1を補正する。具体的には実測された電気電度度A1を水分量WC1で割り算する(ステップ27)。
このようにして得られた補正電気伝導度A2につき、それに対応する比Eを実測された静電容量Bへ掛け合わせて静電容量B2を求める。そして、上記と同様にして静電容量B2に対応する水分量WC2を特定する。この水分量WC2から補正電気伝導度A2を更に補正する。具体的には補正電気伝導度A2を水分量WC2で割り算し、補正電気伝導度A3とする。
上記処理を繰り返すことにより、得られる補正電気伝導度Anと水分量WCnはそれぞれの真値に近づく。

【0044】
以上の処理方法は次のように表現できる。
(10) 土壌の水分状態を特定する方法であって、
測定対象土壌の電気伝導度を測定する電気伝導度測定ステップと、
前記測定対象土壌の静電容量を測定する静電容量測定ステップと、
所定の電気伝導度の水溶液についての水分量と静電容量との第2の関係(図7)を予め保存するステップと、
所定の電気伝導度の水溶液の静電容量を基準静電容量Dとして、電気伝導度を変化させたときの静電容量(検量線P)と前記基準静電容量Dとの比Eを保存するステップと、
測定された電気伝導度A1と前記比Eとに基づき、前記所定の電気伝導度の水溶液における水分量WC1を特定するステップと、
特定された水分量WC1に基づき、前記測定された電気伝導度A1を補正し、補正電気伝導度A2を特定するステップと、を含む土壌の水分状態特定方法。
(11) 特定された補正電気伝導度A2と前記比Eとに基づき、前記所定の電気伝導度の水溶液における水分量WC2を特定するステップ、
特定された水分量に基づき、前記補正電気伝導度を再度補正する、(10)に記載の水分状態特定方法。

【0045】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
上記の例は、図4に示すヘッド部を用いて土壌の電気伝導度と静電容量とを同時に測定しているが、電気伝導度センサと静電容量センサとを別体として測定することを妨げるものではない。
土壌の例は、イオン性の溶質を溶解させた溶媒に不溶成分を分散させてなる分散系にひろく敷衍できる。
【符号の説明】
【0046】
1 水分状態特定装置
2、20、40 ヘッド部
3、21 基板
3 信号処理部
4 推定部
7、23 第1の電極対
8、25 第2の電極対
100 位相変化特定部
110 位相変化補正部
200 電気伝導度特定部
210 電気伝導度補正部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
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【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17