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明細書 :ホログラフィック顕微鏡、微小被写体のホログラム画像記録方法、高分解能画像再生用ホログラム作成方法、および画像再生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5444530号 (P5444530)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
発明の名称または考案の名称 ホログラフィック顕微鏡、微小被写体のホログラム画像記録方法、高分解能画像再生用ホログラム作成方法、および画像再生方法
国際特許分類 G02B  21/00        (2006.01)
G03H   1/04        (2006.01)
G03H   1/08        (2006.01)
FI G02B 21/00
G03H 1/04
G03H 1/08
請求項の数または発明の数 20
全頁数 37
出願番号 特願2012-523912 (P2012-523912)
出願日 平成23年7月7日(2011.7.7)
国際出願番号 PCT/JP2011/065531
国際公開番号 WO2012/005315
国際公開日 平成24年1月12日(2012.1.12)
優先権出願番号 2010155024
優先日 平成22年7月7日(2010.7.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年12月28日(2012.12.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】513099603
【氏名又は名称】公立大学法人兵庫県立大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 邦弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100084375、【弁理士】、【氏名又は名称】板谷 康夫
審査官 【審査官】堀井 康司
参考文献・文献 特開2007-114552(JP,A)
米国特許第6411406(US,B1)
特開2010-517102(JP,A)
調査した分野 G02B 21/00
G03H 1/04
G03H 1/08
特許請求の範囲 【請求項1】
ホログラフィック顕微鏡であって、
球面波光(LまたはL2)を照明光として用いて微小被写体を照明して微小被写体のオフアクシスホログラム(IOR)を取得し、前記オフアクシスホログラム(IOR)から複素振幅インラインホログラム(JOL)を生成して記録する画像記録部と、
前記画像記録部によって記録された前記複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生部と、を備え、
前記画像記録部は、
コヒーレント光を放射する光源と、
照明光、参照光、および物体光の伝播を行う光学系と、
参照光および物体光の光強度を記録する受光素子と、
前記光源と前記光学系とが作るインライン球面波光(L)とオフアクシス参照光(R)との干渉縞(ILR)を前記受光素子で記録し、前記記録した干渉縞(ILR)に空間周波数フィルタリングを適用して前記オフアクシス参照光(R)を記録した複素振幅インラインホログラム(JLR)を求める参照光波取得部と、
前記光源と前記光学系とによって、前記インライン球面波光(L)と同じ焦点を持つ球面波光(LまたはL2)を照明光として用いて微小被写体を照明し、その微小被写体から放たれる物体光(O)を、前記オフアクシス参照光(R)を用いて前記受光素子により記録したオフアクシスホログラム(IOR)に、空間周波数フィルタリングを適用して複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)を求める複素振幅取得部と、を備え、
前記複素振幅取得部で求めた複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)のデータを前記参照光波取得部で取得した複素振幅インラインホログラム(JLR)のデータによって除算処理することにより前記複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)から参照光(R)成分を除去した複素振幅インラインホログラム(JOL)を生成して記録することを特徴とするホログラフィック顕微鏡。
【請求項2】
前記画像再生部は、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす画素数増大部と、
前記画素数増大部によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調部と、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)をフーリエ変換した結果である変換関数(G)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および前記変換関数(G)を用いて前記物体光(O)を平面波展開する平面波展開部と、を備えてホログラム面またはその前後の任意位置における光波(h)を生成することを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項3】
前記平面波展開部は、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割部と、
前記分割部によって得られた各微小ホログラム(g)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ)を生成する合成部と、を備え、
前記合成部によって生成された合成微小ホログラム(Σ)をフーリエ変換することにより前記変換関数(G)を求めることを特徴とする請求項2に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項4】
前記画像再生部は、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)を分割して複数枚の微小ホログラムを生成した後に前記各微小ホログラムの空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした微小ホログラムを生成するか、または、前記複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした後に前記画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)を複数枚の微小ホログラム(g’)に分割する分割補間部と、
前記分割補間部によって画素数を増やした各微小ホログラム(g’)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(L)成分を除去し、ホログラム面における物体光を表す、前記各微小ホログラム(g’)の各々に対する物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調部と、
前記空間変調部によって得られた各物体光複素振幅インラインホログラム(g)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ)を生成するホログラム合成部と、
前記ホログラム合成部によって生成された合成微小ホログラム(Σ)をフーリエ変換した結果である変換関数(G)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および前記変換関数(G)を用いて前記物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項5】
前記画像再生部は、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調部と、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割部と、
前記インライン球面波光(LまたはL2)の焦点位置から前記各微小ホログラム(g)の中心に向かう平行光(L)の位相(φ)を用いて前記各微小ホログラム(g)毎に空間ヘテロダイン変調を行うことにより空間周波数を下げた低周波数化微小ホログラム(g・exp(-iφ))を生成する周波数低減部と、
前記各低周波数化微小ホログラム(g・exp(-iφ))をそれぞれ離散フーリエ変換した結果である分割変換関数(G’)を求めるフーリエ変換部と、
前記各分割変換関数(G’)に空間ヘテロダイン変調を行うことにより空間周波数を上げた分割変換関数(G’・exp(iφ))を生成し、これらの全体から構成される変換関数(G)および平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)を用いて前記物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項6】
前記画像再生部は、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調部と、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割部と、
前記各微小ホログラム(g)をそれぞれ離散フーリエ変換した結果である分割変換関数(G)を求めるフーリエ変換部と、
前記各分割変換関数(G)の全体から構成される変換関数(G)および平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)を用いて前記物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項7】
前記画像記録部は、パルスレーザをホログラム取得用のコヒーレント光源として用いることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項8】
前記画像記録部は、互いに波長領域の異なる複数のレーザを用いて前記オフアクシスホログラム(IOR)を取得することにより、カラーの複素振幅インラインホログラム(JOL)を生成して記録し、
前記画像再生部は、前記カラーの複素振幅インラインホログラム(JOL)からカラーの画像を再生することを特徴とする請求項7に記載のホログラフィック顕微鏡。
【請求項9】
微小被写体のホログラム画像記録方法において、
インライン球面波光(L)とオフアクシス参照光(R)とが作る干渉縞(ILR)を受光素子で記録し、記録した干渉縞(ILR)に空間周波数フィルタリングを適用して前記オフアクシス参照光(R)を記録した複素振幅インラインホログラム(JLR)を求める参照光波取得工程と、
前記インライン球面波光(L)と同じ焦点を持つ球面波光(LまたはL2)を照明光として用いて微小被写体を照明し、その微小被写体から放たれる物体光(O)を前記オフアクシス参照光(R)を用いてオフアクシスホログラム(IOR)として前記受光素子によって記録する撮像工程と、
前記オフアクシスホログラム(IOR)に空間周波数フィルタリングを適用して複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)を求める複素振幅取得工程と、
前記複素振幅取得工程で求めた複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)のデータを前記参照光波取得工程で取得した複素振幅インラインホログラム(JLR)のデータによって除算処理することにより前記複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)から参照光(R)成分を除去した複素振幅インラインホログラム(JOL)を生成して記録する画像記録工程と、を備えることを特徴とする微小被写体のホログラム画像記録方法。
【請求項10】
前記オフアクシス参照光(R)は球面波であることを特徴とする請求項9に記載の微小被写体のホログラム画像記録方法。
【請求項11】
前記物体光(O)は、前記照明された微小被写体の透過光であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の微小被写体のホログラム画像記録方法。
【請求項12】
前記物体光(O)は、前記照明された微小被写体からの反射光であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の微小被写体のホログラム画像記録方法。
【請求項13】
インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から分解能を高めた画像を再生するための高分解能画像再生用ホログラム作成方法において、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす画素数増大工程と、
前記画素数増大工程によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、を備えることを特徴とする高分解能画像再生用ホログラム作成方法。
【請求項14】
前記画素数増大工程において、3次式によるデータ補間、またはsinc関数によるデータ補間を行うことを特徴とする請求項13に記載の高分解能画像再生用ホログラム作成方法。
【請求項15】
インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生方法において、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす画素数増大工程と、
前記画素数増大工程によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)をフーリエ変換した結果である変換関数(G)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および前記変換関数(G)を用いて前記物体光(O)を平面波展開する平面波展開工程と、を備えてホログラム面またはその前後の任意位置における光波(h)を生成することを特徴とする画像再生方法。
【請求項16】
前記平面波展開工程は、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割工程と、
前記分割工程によって得られた各微小ホログラム(g)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ)を生成する合成工程と、を備え、
前記合成工程によって生成された合成微小ホログラム(Σ)をフーリエ変換することにより前記変換関数(G)を求めることを特徴とする請求項15に記載の画像再生方法。
【請求項17】
インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生方法において、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)を分割して複数枚の微小ホログラムを生成した後に前記各微小ホログラムの空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした微小ホログラムを生成するか、または、前記複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした後に前記画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)を複数枚の微小ホログラム(g’)に分割する分割補間工程と、
前記分割補間工程によって画素数を増やした各微小ホログラム(g’)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(L)成分を除去し、ホログラム面における物体光を表す、前記各微小ホログラム(g’)の各々に対する物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、
前記空間変調工程によって得られた各物体光複素振幅インラインホログラム(g)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ)を生成するホログラム合成工程と、
前記ホログラム合成工程によって生成された合成微小ホログラム(Σ)をフーリエ変換した結果である変換関数(G)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および前記変換関数(G)を用いて前記物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成工程と、を備えることを特徴とする画像再生方法。
【請求項18】
前記画素数増大工程において、3次式によるデータ補間、またはsinc関数によるデータ補間を行うことを特徴とする請求項15乃至請求項17のいずれか一項に記載の画像再生方法。
【請求項19】
インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生方法において、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割工程と、
前記インライン球面波光(LまたはL2)の焦点位置から前記各微小ホログラム(g)の中心に向かう平行光(L)の位相(φ)を用いて前記各微小ホログラム(g)毎に空間ヘテロダイン変調を行うことにより空間周波数を下げた低周波数化微小ホログラム(g・exp(-iφ))を生成する周波数低減工程と、
前記各低周波数化微小ホログラム(g・exp(-iφ))をそれぞれ離散フーリエ変換した結果である分割変換関数(G’)を求めるフーリエ変換工程と、
前記各分割変換関数(G’)に空間ヘテロダイン変調を行うことにより空間周波数を上げた分割変換関数(G’・exp(iφ))を生成し、これらの全体から構成される変換関数(G)および平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)を用いて前記物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成工程と、を備えることを特徴とする画像再生方法。
【請求項20】
インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生方法において、
前記複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、前記インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、
前記物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割工程と、
前記各微小ホログラム(g)をそれぞれ離散フーリエ変換した結果である分割変換関数(G)を求めるフーリエ変換工程と、
前記各分割変換関数(G)の全体から構成される変換関数(G)および平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)を用いて前記物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成工程と、を備えることを特徴とする画像再生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、球面波光を照明光とするオフアクシスホログラフィに基づくホログラフィック顕微鏡、微小被写体のホログラム画像記録方法、高分解能画像再生用ホログラム作成方法、および画像再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の光学顕微鏡を改善するものとして、ディジタルホログラフィを用いるホログラフィック顕微鏡が種々提案されている(例えば、非特許文献1参照)。通常の光学顕微鏡は、焦点深度が極めて浅いので観察点の位置が変化すると結像レンズの焦点距離を調節する必要があり、3次元空間中で頻繁に移動したり、運動したりしている微生物などの微小被写体を光学顕微鏡によって観察することはあまり容易ではない。ホログラフィック顕微鏡では、観察物体からの物体光の振幅および位相の空間分布を受光素子を用いてデジタル的にホログラムとして記録し、記録したホログラムを用いて、任意の焦点距離における観察物体の画像を数値計算によって再生することができる。また、ホログラフィック顕微鏡は、物体光の位相分布を再生できるので、光透過物体の定量的分析に応用することができる。
【0003】
ところで、ホログラフィック顕微鏡は、被写体と受光素子の間に結像レンズを挟むものと、結像レンズを使わないものとに大別される。結像レンズを使って微小被写体の3次元像を受光素子の手前で拡大することにより、拡大3次元像をホログラムとして記録でき、この記録ホログラムから高分解能画像が容易に得られる。しかしながら、結像レンズを使って像を拡大すると、記録可能な空間の奥行きが制限されたり、拡大像の焦点深度が浅くなったりする。また、拡大像にはレンズによる何がしかの歪みやボケが生じるので、正しい形状の画像が得られない。さらに、通常、レンズはレンズ境界における空気との屈折率差によって機能するので、空気と異なる、例えば水中ではそのまま用いることができない。つまり、顕微鏡の結像レンズは、空気中の被写体やカバーガラスで覆われた厚さの薄い被写体の観察を前提にして設計されているので、空気と異なる、例えば水の中の深い位置に存在する被写体を、そのようなレンズを通して記録すると、歪やボケのある像となる。
【0004】
結像レンズを使わないものとして、球面波光を用いるホログラフィック顕微鏡が知られている(例えば、非特許文献2、特許文献1参照)。これらのホログラフィック顕微鏡は、ピンホールから広がる1つの球面波光を被写体に照射し、非散乱透過光と散乱透過光とが作る干渉縞を記録する、Gabor型インラインホログラフィ方式の透過型顕微鏡である。このホログラフィック顕微鏡は、結像レンズを使わないで開口数(NA)の大きい物体光を記録するので、奥行きのある空間に存在する微小被写体の3次元像をホログラムとして記録でき、また、水のような媒質中の微小被写体の記録も可能になる。また、特許文献1は、大開口数ホログラムから無歪高分解能画像を再生するために、ヘルムホルツ方程式の厳密解を用いて無歪画像を再生する方法を示している。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】イチロウ ヤマグチ(Ichirou Yamaguchi)、ジュン-イチ・カトウ(Jun-ichi Kato)、ソーゴ・オータ(Sohgo Ohta)、およびジュン・ミズノ(Jun Mizuno)著 「イメージ フォーメイション イン フェイズ-シフティング ディジタル ホログラフィ アンド アプリケーション トウ マイクロスコピイ(Image formation in phase-shifting digital holography and application to microscopy)」、アプライド・オプティクス(APPLIED OPTICS)Vol.40,No.34,pp6177-6186(2001)
【非特許文献2】フウ(W. Xu)、ジェリコ(M. H. Jericho)、マイナーツアーゲン(I. A. Meinertzhagen)、およびクロイツエル(H. J. Kreuzer)著 「ディジタル イン-ライン ホログラフィ オブ マイクロスフェアズ(Digital in-line holography of microspheres)」、アプライド・オプティクス(APPLIED OPTICS)Vol.41,No.25,pp5367-5375(2002)
【0006】

【特許文献1】米国特許第6411406号明細書
【発明の開示】
【0007】
しかしながら、上述したような1つの球面波光を用いるホログラフィック顕微鏡においては、結像レンズを使用しないで済むものの、被写体に散乱されずに透過した光を参照光として用い、被写体で散乱される光を物体光として用いるので、観測可能な被写体は、空気中や媒質中に散在する微粒子のような被写体や光の透過率がきわめて1に近く厚さの薄い光透過物体に限定される。また、インライン方式のホログラフィであるので、物体光が0次光および共役光と重なって再生される。このため、再生画像の画質が劣化するだけでなく、再生物体光の位相分布を正確に求めることは困難である。
【0008】
ところで、ホログラフィック顕微鏡を用いて高速にホログラムを記録することができれば、微小被写体の動画を記録することができる。また、ホログラムから高速に画像を再生することができれば、リアルタイムで微小被写体の動きを観察することができる。奥行きのある空間を動いている微小被写体を高速かつ高分解能で記録するには、開口数(NA)の大きい複素振幅インラインホログラムをワンショット記録すればよい。ところが、一般に、複素振幅インラインホログラムの記録方法として、位相シフトディジタルホログラフィ技術が用いられており、この技術は位相をシフトして複数枚のホログラムを逐次記録して1枚の複素振幅ホログラムを記録するのでワンショット記録とはならない。
【0009】
また、大開口数ホログラムから無歪な高分解能画像を再生するためには、ヘルムホルツ方程式の厳密解を用いて大開口数複素振幅インラインホログラムから高分解能な物体光すなわち物体光分布を再生する必要がある。また、受光素子の画素間隔は、通常、光波長よりも大きいので、そのような受光素子で記録したホログラムからそのまま画像を再生すると、再生像の分解能は受光素子の画素間隔によって制限されるので光波長程度の高分解能を達成できない、という問題がある。なお、上述の特許文献1に示されている画像再生方法では、この問題を解決するために非線形な座標変換を導入しているが、この座標変換の導入によって画像再生の計算量が増大するので、画像再生の高速化は困難である。
【0010】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、開口数の大きい複素振幅インラインホログラムをワンショットでかつ結像レンズを用いることなく記録できる微小被写体のホログラム画像記録方法を提供し、受光素子の画素間隔による制限を超える分解能かつ歪みのない画像を再生できる高分解能画像再生用ホログラム作成方法を提供し、サンプリング点数の増加に伴う計算量の増大に対応することができる画像再生方法を提供し、さらにこれらの方法を用いて高速にホログラムを記録し再生して微小被写体の動きを観察することができるホログラフィック顕微鏡を提供することを目的とする。
【0011】
上記課題を達成するために、本発明のホログラフィック顕微鏡は、球面波光(LまたはL2)を照明光として用いて微小被写体を照明して微小被写体のオフアクシスホログラム(IOR)を取得し、オフアクシスホログラム(IOR)から複素振幅インラインホログラム(JOL)を生成して記録する画像記録部と、画像記録部によって記録された複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生部と、を備え、画像記録部は、コヒーレント光を放射する光源と、照明光、参照光、および物体光の伝播を行う光学系と、参照光および物体光の光強度を記録する受光素子と、光源と光学系とが作るインライン球面波光(L)とオフアクシス参照光(R)との干渉縞(ILR)を受光素子で記録し、記録した干渉縞(ILR)に空間周波数フィルタリングを適用してオフアクシス参照光(R)を記録した複素振幅インラインホログラム(JLR)を求める参照光波取得部と、光源と光学系とによって、インライン球面波光(L)と同じ焦点を持つ球面波光(LまたはL2)を照明光として用いて微小被写体を照明し、その微小被写体から放たれる物体光(O)を、オフアクシス参照光(R)を用いて受光素子により記録したオフアクシスホログラム(IOR)に、空間周波数フィルタリングを適用して複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)を求める複素振幅取得部と、を備え、複素振幅取得部で求めた複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)のデータを参照光波取得部で取得した複素振幅インラインホログラム(JLR)のデータによって除算処理することにより複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)から参照光(R)成分を除去した複素振幅インラインホログラム(JOL)を生成して記録することを特徴とする。
【0012】
このホログラフィック顕微鏡において、画像再生部は、複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす画素数増大部と、画素数増大部によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調部と、物体光複素振幅インラインホログラム(g)をフーリエ変換した結果である変換関数(G)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数(G)を用いて物体光(O)を平面波展開する平面波展開部と、を備えてホログラム面またはその前後の任意位置における光波(h)を生成するものとすることができる。
【0013】
上記平面波展開部は、物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割部と、分割部によって得られた各微小ホログラム(g)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ)を生成する合成部と、を備え、合成部によって生成された合成微小ホログラム(Σ)をフーリエ変換することにより変換関数(G)を求めるものとすることができる。
【0014】
このホログラフィック顕微鏡において、画像再生部は、複素振幅インラインホログラム(JOL)を分割して複数枚の微小ホログラムを生成した後に各微小ホログラムの空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした微小ホログラムを生成するか、または、複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした後に画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)を複数枚の微小ホログラム(g’)に分割する分割補間部と、分割補間部によって画素数を増やした各微小ホログラム(g’)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(L)成分を除去し、ホログラム面における物体光を表す、各微小ホログラム(g’)の各々に対する物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調部と、空間変調部によって得られた各物体光複素振幅インラインホログラム(g)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ)を生成するホログラム合成部と、ホログラム合成部によって生成された合成微小ホログラム(Σ)をフーリエ変換した結果である変換関数(G)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数(G)を用いて物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成部と、を備えるものとすることができる。
【0015】
このホログラフィック顕微鏡において、画像再生部は、複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調部と、物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割部と、インライン球面波光(LまたはL2)の焦点位置から各微小ホログラム(g)の中心に向かう平行光(L)の位相(φ)を用いて各微小ホログラム(g)毎に空間ヘテロダイン変調を行うことにより空間周波数を下げた低周波数化微小ホログラム(g・exp(-iφ))を生成する周波数低減部と、各低周波数化微小ホログラム(g・exp(-iφ))をそれぞれ離散フーリエ変換した結果である分割変換関数(G’)を求めるフーリエ変換部と、各分割変換関数(G’)に空間ヘテロダイン変調を行うことにより空間周波数を上げた分割変換関数(G’・exp(iφ))を生成し、これらの全体から構成される変換関数(G)および平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)を用いて物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成部と、を備えるものとすることができる。
【0016】
このホログラフィック顕微鏡において、画像再生部は、複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調部と、物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割部と、各微小ホログラム(g)をそれぞれ離散フーリエ変換した結果である分割変換関数(G)を求めるフーリエ変換部と、各分割変換関数(G)の全体から構成される変換関数(G)および平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)を用いて前記物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成部と、を備えるものとすることができる。
【0017】
このホログラフィック顕微鏡において、画像記録部は、パルスレーザをホログラム取得用のコヒーレント光源として用いることが好ましい。
【0018】
このホログラフィック顕微鏡において、画像記録部は、互いに波長領域の異なる複数のレーザを用いてオフアクシスホログラム(IOR)を取得することにより、カラーの複素振幅インラインホログラム(JOL)を生成して記録し、画像再生部は、カラーの複素振幅インラインホログラム(JOL)からカラーの画像を再生するものとすることができる。
【0019】
本発明の微小被写体のホログラム画像記録方法は、インライン球面波光(L)とオフアクシス参照光(R)とが作る干渉縞(ILR)を受光素子で記録し、記録した干渉縞(ILR)に空間周波数フィルタリングを適用してオフアクシス参照光(R)を記録した複素振幅インラインホログラム(JLR)を求める参照光波取得工程と、インライン球面波光(L)と同じ焦点を持つ球面波光(LまたはL2)を照明光として用いて微小被写体を照明し、その微小被写体から放たれる物体光(O)をオフアクシス参照光(R)を用いてオフアクシスホログラム(IOR)として受光素子によって記録する撮像工程と、オフアクシスホログラム(IOR)に空間周波数フィルタリングを適用して複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)を求める複素振幅取得工程と、複素振幅取得工程で求めた複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)のデータを参照光波取得工程で取得した複素振幅インラインホログラム(JLR)のデータによって除算処理することにより複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)から参照光(R)成分を除去した複素振幅インラインホログラム(JOL)を生成して記録する画像記録工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
この微小被写体のホログラム画像記録方法において、オフアクシス参照光(R)は球面波であることが好ましい。
【0021】
この微小被写体のホログラム画像記録方法において、物体光(O)は、照明された微小被写体の透過光であってもよい。
【0022】
この微小被写体のホログラム画像記録方法において、物体光(O)は、照明された微小被写体からの反射光であってもよい。
【0023】
本発明の高分解能画像再生用ホログラム作成方法は、インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から分解能を高めた画像を再生するための高分解能画像再生用ホログラム作成方法において、複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に細分化して成るサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす画素数増大工程と、画素数増大工程によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、を備えることを特徴とする。
【0024】
上記画素数増大工程において、3次式によるデータ補間、またはsinc関数によるデータ補間を行うことが好ましい。
【0025】
本発明の画像再生方法は、インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生方法において、複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす画素数増大工程と、画素数増大工程によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、物体光複素振幅インラインホログラム(g)をフーリエ変換した結果である変換関数(G)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数(G)を用いて物体光(O)を平面波展開する平面波展開工程と、を備えてホログラム面またはその前後の任意位置における光波(h)を生成することを特徴とする。
【0026】
この画像再生方法において、平面波展開工程は、物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割工程と、分割工程によって得られた各微小ホログラム(g)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ)を生成する合成工程と、を備え、合成工程によって生成された合成微小ホログラム(Σ)をフーリエ変換することにより変換関数(G)を求めるものとすることができる。
【0027】
本発明の画像再生方法は、インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生方法において、複素振幅インラインホログラム(JOL)を分割して複数枚の微小ホログラムを生成した後に各微小ホログラムの空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした微小ホログラムを生成するか、または、複素振幅インラインホログラム(JOL)の空間サンプリング間隔を細分化すると共に、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やした後に画素数を増やした複素振幅インラインホログラム(JOL)を複数枚の微小ホログラム(g’)に分割する分割補間工程と、分割補間工程によって画素数を増やした各微小ホログラム(g’)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(L)成分を除去し、ホログラム面における物体光を表す、各微小ホログラム(g’)の各々に対する物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、空間変調工程によって得られた各物体光複素振幅インラインホログラム(g)を互いに重ね合わせて合成微小ホログラム(Σ)を生成するホログラム合成工程と、ホログラム合成工程によって生成された合成微小ホログラム(Σ)をフーリエ変換した結果である変換関数(G)を求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数(G)を用いて物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成工程と、を備えることを特徴とする。
【0028】
上記画素数増大工程において、3次式によるデータ補間、またはsinc関数によるデータ補間を行うことが好ましい。
【0029】
本発明の画像再生方法は、インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生方法において、複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割工程と、インライン球面波光(LまたはL2)の焦点位置から各微小ホログラム(g)の中心に向かう平行光(L)の位相(φ)を用いて各微小ホログラム(g)毎に空間ヘテロダイン変調を行うことにより空間周波数を下げた低周波数化微小ホログラム(g・exp(-iφ))を生成する周波数低減工程と、各低周波数化微小ホログラム(g・exp(-iφ))をそれぞれ離散フーリエ変換した結果である分割変換関数(G’)を求めるフーリエ変換工程と、各分割変換関数(G’)に空間ヘテロダイン変調を行うことにより空間周波数を上げた分割変換関数(G’・exp(iφ))を生成し、これらの全体から構成される変換関数(G)および平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)を用いて物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成工程と、を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の画像再生方法は、インライン球面波光(LまたはL2)を用いて求められた微小被写体の複素振幅インラインホログラム(JOL)から画像を再生する画像再生方法において、複素振幅インラインホログラム(JOL)に対し、インライン球面波光(LまたはL2)の予め求めた位相(φ)を用いて空間ヘテロダイン変調を行うことによりインライン球面波光(LまたはL2)成分を除去してホログラム面における物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラム(g)を生成する空間変調工程と、物体光複素振幅インラインホログラム(g)を複数枚の微小ホログラム(g)に分割する分割工程と、各微小ホログラム(g)をそれぞれ離散フーリエ変換した結果である分割変換関数(G)を求めるフーリエ変換工程と、各分割変換関数(G)の全体から構成される変換関数(G)および平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)を用いて物体光(O)を平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における画像を生成する画像生成工程と、を備えることを特徴とする。
【0031】
本発明のホログラフィック顕微鏡、微小被写体のホログラム画像記録方法、高分解能画像再生用ホログラム作成方法、および画像再生方法によれば、照明光として球面波光を用いて記録したオフアクシスホログラムに、空間ヘテロダイン変調の処理を含む除算処理によって参照光成分を除去するので、開口数の大きい複素振幅インラインホログラムをワンショットで記録できる。また、結像レンズを用いないので、画像に歪みがなく、受光素子の画素間隔による分解能の制限を超える画像拡大ができ、微小ホログラムへの分割と合成によってサンプリング点数の縮約を行うので計算量を削減して高速に画像を再生できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る微小被写体のホログラム画像記録方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は同記録方法を光が透過する微小被写体に適用するためのホログラム画像記録装置の模式的構成図である。
【図3】図3(a)は同装置によるホログラム画像記録の様子を受光素子への入射光について示す側面図であり、(b)は同画像記録の際に行う参照光の記録の様子を受光素子への入射光について示す側面図である。
【図4】図4は同記録方法における物体光の記録の際に行われる空間周波数フィルタリングを説明するための空間周波数スペクトルの図である。
【図5】図5は同記録方法における参照光の記録の際に行われる空間周波数フィルタリングを説明するための空間周波数スペクトルの図である。
【図6】図6は同記録方法を光が透過しない微小被写体に適用するためのホログラム画像記録装置の模式的構成図である。
【図7】図7(a)は同装置によるホログラム画像記録の様子を受光素子への入射光について示す側面図であり、(b)は同画像記録の際に行う参照光の記録の様子を受光素子への入射光について示す側面図である。
【図8】図8は本発明の一実施形態に係る高分解能画像再生用ホログラム作成方法を示すフローチャートである。
【図9】図9(a)は同作成方法において処理対象とするホログラムの部分図であり、(b)は同ホログラムにおける空間サンプリング間隔を増やす様子を示すホログラムの部分図である。
【図10】図10は本発明の一実施形態に係る画像再生方法を示すフローチャートである。
【図11】図11(a)は本発明の一実施形態に係る他の画像再生方法に適用される再生用ホログラムの概念図であり、(b)は同ホログラムを分割して重ね合わせた概念図であり、(c)は(b)のホログラムを合成したホログラムの概念図である。
【図12】図12は同再生方法が適用される単一の再生用ホログラムと再生像の概念図である。
【図13】図13は同再生方法の原理を説明するために複数の再生用ホログラムと再生された複数の像とを示す概念図である。
【図14】図14は同再生方法を示すフローチャート。である
【図15】図15は本発明の一実施形態に係る更にさらに他の画像再生方法を示すフローチャートである。
【図16】図16は本発明の一実施形態に係るホログラフィック顕微鏡のブロック構成図である。
【図17】図17は同顕微鏡の動作を示すフローチャートである。
【図18】図18(a)は同顕微鏡を用いて記録したテストターゲットの干渉縞の画像であり、(b)は同顕微鏡を用いて記録した参照光の干渉縞の画像である。
【図19】図19(a)は図18(a)(b)に示した干渉縞から作成したインラインホログラムの画像であり、(b)は同インラインホログラムから作成した高分解能画像再生用ホログラムの画像である。
【図20】図20は図19(b)に示したホログラムによる再生像の画像である。
【図21】図21は図20に示した再生像を拡大した画像である。
【図22】図22(a)は同顕微鏡を用いて記録し再生したトンボの翅の画像であり、(b)~(e)は同トンボの翅の一部を0.1mmずつ異なる焦点距離のもとで再生した画像である。
【図23】図23は同記録方法を光が透過する微小被写体に適用するためのホログラム画像記録装置の他の例を示す模式的構成図である。
【図24】図24(a)はガラス板で覆ったテストターゲットの像を同顕微鏡を用いてホログラムに記録し、ガラス板の存在を考慮しないでホログラムから再生した画像であり、(b)は同ホログラムをガラス板の存在を考慮に入れて再生した画像である。
【図25】図25(a)は水が入ったガラス容器内を遊泳しているゾウリムシの像を同顕微鏡を用いて記録した1枚のホログラムから深さ奥行き0.69mmの位置を遊泳しているゾウリムシに焦点を合わせて再生した画像であり、(b)は奥行き1.49mmの位置を遊泳しているゾウリムシに焦点を合わせて再生した画像である。
【図26】図26は本発明の一実施形態に係る高速化した画像再生方法を示すフローチャートである。
【図27】図27は同画像再生方法を画素数増大工程を含む再生方法と比較して示す概念説明図である。
【図28】図28は本発明の一実施形態に係る他の高速化した画像再生方法を示すフローチャートである。
【図29】図29は同画像再生方法の概念説明図である。
【図30】図30は本発明の一実施形態に係るホログラフィック顕微鏡の他の例を示すブロック構成図である。
【図31】図31は本発明の一実施形態に係るホログラフィック顕微鏡のさらに他の例を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る、球面波光を照明光とするオフアクシスホログラフィに基づく微小被写体のホログラム画像記録方法、高分解能画像再生用ホログラム作成方法、画像再生方法、およびホログラフィック顕微鏡について、図面を参照して説明する。

【0034】
(微小被写体のホログラム画像記録方法)
図1乃至図7は微小被写体のホログラム画像記録方法(本記録方法ともいう)について示し、これらの図のうち図2、図3は微小被写体が光透過性の場合を示し、図6、図7は微小被写体が光を反射する場合を示す。このホログラム画像記録方法は、図1に示すように、参照光Rの情報を記録する参照光波取得工程(S1)と、物体光Oの情報を記録する撮像工程(S2)および複素振幅取得工程(S3)と、物体光Oの情報から参照光Rの情報を除去した複素振幅インラインホログラムを生成して記録する画像記録工程(S4)と、を備えている。ここで、この画像記録方法を実施するための装置構成を説明し、その後に画像記録の各工程を詳細に説明する。なお、本明細書において、「波面」の用語は、「等位相面」の意味の他に、ある面に到達した「光波」の意味としても用いられている。

【0035】
本記録方法の実施に用いられる記録装置10は、図2に示すように、光源としてのレーザ20と、光の伝播を行う光学系2と、光が透過する微小被写体3からの光を参照光とともに受光して光強度を記録する受光素子4と、光強度の信号を処理して記憶する計算機5と、を備えている。なお、微小被写体3の微小とは、被写体そのものが微小という意味ではなく、画像を記録する対象領域が微小という意味である。光学系2は、レーザ20からの光の径を拡大するレンズ21,22と、拡大した光を分岐するビームスプリッタBSと、各光の向きを変えるミラーM1,M2と、各ミラーM1,M2からの光を収束させる集光レンズ23,24とを備えている。集光レンズ24の先には、さらにミラーM3が備えられている。受光素子4は、例えばCCDである。ミラーM1と集光レンズ23を経由した光は、集光レンズ23によって球面波に変換され、インライン球面波光Lとして受光素子4に向けて投光される。微小被写体3は、集光レンズ23と受光素子4との間に置かれて、背後から照明される。インライン球面波光Lの焦点P(球面波の中心点)は、集光レンズ23と受光素子4との間に存在する。本図の例では、焦点Pが微小被写体3を透過した直後の位置に設定されている。なお、焦点Pの位置は、微小被写体3の位置またはその前後の任意の位置に設定することができるが、照明された領域が大きくなり過ぎないようにする必要がある。これは、例えば、後述の図4に示すように、スペクトルが重ならないようにするためであり、スペクトルが重ならないことにより空間周波数フィルタリングが可能となる。

【0036】
インライン球面波光Lが、照明光として微小被写体3に照射されると、微小被写体3によって位相や進行方向などが変化して成る物体光Oと、素通りしたインライン球面波光Lとが混じった光(L+O)となって、受光素子4に受光される。ミラーM2、集光レンズ24、およびミラーM3を経由した光は、集光レンズ24によって、上記の焦点Pの近くに焦点を有する球面波に変換され、オフアクシス参照光Rとして受光素子4に向けて投光される。図3(a)(b)は受光素子4の近傍の要部を示し、図3(b)では、微小被写体3が置かれていない状態を示している。また、図3(b)に示されている焦点Pと受光素子4との間の距離ρは、光学系2の設定によって決定される量であり、インライン球面波光Lの位相φの導出に用いられる(後述)。

【0037】
ここで、画像記録を数式表現によって説明する。微小被写体のホログラム画像記録には、照明光、参照光、物体光などが関与する。そこで、受光素子4の表面における位置座標(x,y)を用いて、物体光O(x,y,t)、オフアクシス参照光R(x,y,t)、およびインライン球面波光L(x,y,t)を、それぞれ一般的な形で、下式(1)(2)(3)のように表す。これらの光は、互いにコヒーレントな角周波数ωの光である。各式中の係数、引数、添え字などは、一般的な表現と意味に解釈される。また、以下の各式において、位置座標(x,y)の明示などは、適宜省略される。

【0038】
【数1】
JP0005444530B2_000002t.gif

【0039】
上式におけるO(x,y,t)とR(x,y,t)とが作る合成光の光強度IOR(x,y)、およびL(x,y,t)とR(x,y,t)とが作る合成光の光強度ILR(x,y)は、それぞれ下式(4)(5)で表される。

【0040】
【数2】
JP0005444530B2_000003t.gif

【0041】
上式(4)(5)において、右辺の第1項は物体光Oまたはインライン球面波光Lの光強度成分、第2項はオフアクシス参照光Rの光強度成分である。また、各式の第3項と第4項は、それぞれ物体光Oまたはインライン球面波光Lがオフアクシス参照光Rによって変調されて作られる直接像成分と共役像成分とを表す。

【0042】
空間周波数フィルタリングを適用して式(4)(5)の第3項のみを取り出すと、物体光を記録した複素振幅ホログラムJORとインライン球面波光を記録した複素振幅ホログラムJLRが、それぞれ下式(6)(7)のように求められる。

【0043】
【数3】
JP0005444530B2_000004t.gif

【0044】
空間周波数フィルタリングは、各式(4)(5)を空間周波数空間における表現にするフーリエ変換と、バンドパスフィルタWによるフィルタリングと、その後の、逆フーリエ変換とによって行われる。図4はIOR(x,y)に対する空間周波数フィルタリングの様子を示し、図5はILR(x,y)に対する空間周波数フィルタリングの様子を示す。オフアクシス参照光Rとして球面波を用いると、空間周波数空間において、光強度成分および共役像成分から、直接像成分を分離することが容易となるが、参照光Rが必ずしも球面波でなくても直接像成分を分離することができる。なお、受光素子4における画素が画素ピッチdで2次元配列されているとすると、受光素子4を用いて記録可能なホログラムの最高空間周波数帯域幅は、空間周波数f=1/dとなる。

【0045】
上記の式(6)を式(7)で割る除算処理を行うと、式(6)からオフアクシス参照光Rの振幅Rと位相φとを取り除くことができ、インライン球面波光Lに対する複素振幅インラインホログラムJOLが下式(8)のように求められる。

【0046】
【数4】
JP0005444530B2_000005t.gif

【0047】
次に、上述の各式と図1における画像記録の各工程との関連を説明する。参照光波取得工程(S1)は、上式(7)の複素振幅ホログラムJLRを取得して記録する工程である。具体的には、図3(b)に示すように、微小被写体3を配置しない状態で、インライン球面波光Lとオフアクシス参照光Rとが作る干渉縞ILRを受光素子4で記録する。なお、オフアクシス参照光Rが球面波であると仮定して説明するが、一般的には、球面波に限定されず、任意波面の光波を用いることができる。記録された干渉縞ILRは、計算機5によって、空間周波数フィルタリングが適用され、オフアクシス参照光Rを記録した複素振幅インラインホログラムJLRとされる。

【0048】
撮像工程(S2)は、上式(4)のオフアクシスホログラムIORを記録する工程である。具体的には、図3(a)に示すように、微小被写体3を配置した状態で、インライン球面波光Lを照明光として用いて微小被写体3を裏面側から照明し、その微小被写体3の表面側から放たれる物体光Oをオフアクシス参照光Rを用いてオフアクシスホログラムIORとして受光素子4によって記録する。

【0049】
複素振幅取得工程(S3)は、上式(4)のオフアクシスホログラムIORに空間周波数フィルタリングを適用して、上式(6)の複素振幅オフアクシスホログラムJORを求める工程である。この工程は、計算機5において、ソフトウエア処理によって行われる。

【0050】
画像記録工程(S4)は、上式(8)の複素振幅インラインホログラムJOLを生成して記録する工程である。具体的には、計算機5におけるソフトウエア処理によって、式(6)を式(7)で割ること、すなわち、複素振幅オフアクシスホログラム(JOR)のデータを参照光波取得工程で取得した複素振幅インラインホログラム(JLR)のデータによって除算処理することによって行われる。この割り算の処理は、空間ヘテロダイン変調の処理であると共に強度に対する処理でもあり、複素振幅オフアクシスホログラムJORから、参照光R成分(強度と位相の両方)を除去する処理となっている。この複素振幅インラインホログラムJOLが、微小被写体のホログラム画像記録方法によって、最終的に記録されるホログラム画像である。なお、上記のことから分かるように、参照光波取得工程(S1)で記録された参照光Rの情報(JLR)は、画像記録工程(S4)で使用されるので、参照光波取得工程(S1)は少なくとも画像記録工程(S4)よりも前に行えばよい。つまり、参照光波取得工程(S1)と、撮像工程(S2)および複素振幅取得工程(S3)とは、互いに順番を入れ替えることができる。

【0051】
次に、図6、図7により、微小被写体が反射する光を物体光とする場合、例えば、微小被写体を光が透過しない場合における微小被写体のホログラム画像記録方法を説明する。この場合に、照明光は反射光が物体光Oとなるように微小被写体を照明するので、インライン球面波光L(x,y,t)をそのまま照明光とすることはできない。しかしながら、上述した式(1)~(8)は、この場合においても、そのまま用いることができる。本記録方法を実施するための記録装置10は、図6に示すように、図2に示した記録装置10に類似して、レーザ20と、光学系2と、微小被写体3からの光を参照光とともに受光して光強度を記録する受光素子4と、光強度の信号を処理して記憶する計算機5と、を備えている。光学系2は、拡径用のレンズ21,22と、拡径した光を分岐するビームスプリッタBSと、一方の光の向きを変えるミラーM4,M5と、ミラーM5からの光を収束させる集光レンズ23と、他方の光を収束させる集光レンズ24とを備えている。集光レンズ23の先には、さらにハーフミラーHMが備えられている。受光素子4は、例えばCCDである。集光レンズ23は、光軸が受光素子4の受光面に平行となるように配置され、集光レンズ24は、光軸が受光素子4の受光面と垂直になるように配置されている。

【0052】
ビームスプリッタBSによって分岐された一方の光は、ミラーM4,M5と集光レンズ23を経由して球面波に変換され、インライン球面波光L2として、ハーフミラーHMの前方に配置されている微小被写体3に向けて投光される。微小被写体3は、インライン球面波光L2によって照明されて物体光Oを放射する。物体光Oは、ハーフミラーHMによって受光素子4に向けて反射され、受光素子4に受光される。インライン球面波光L2の焦点P(球面波の中心点)は、微小被写体3の直近手前側に設定されているが、その位置は特に限定されず、微小被写体3の背後側でもよい。ビームスプリッタBSを直進した他方の光は、焦点PのハーフミラーHMに関する鏡像点P0(図7(b)参照)の近くに焦点を結んだ後、オフアクシス参照光Rとして受光素子4に向けて投光される。

【0053】
図7(a)(b)は受光素子4の近傍の要部を示し、図7(b)では、微小被写体3が置かれていない状態を示している。また、図7(b)では、式(5)の合成光の光強度ILR(x,y)を得るために、照明光であるインライン球面波光L2とは異なるインライン球面波光Lが用いられている。インライン球面波光Lは、インライン球面波光L2と同じ焦点Pを有する球面波光であり、焦点Pに至る経路が互いに逆であるという点で、互いに異なる。しかしながら、インライン球面波光L,L2のいずれも、ハーフミラーHMによって受光素子4に向けて反射されて受光素子4に受光される点で、互いに同じである。

【0054】
本記録方法によると、インライン球面波光Lを記録したオフアクシスホログラムILRから複素振幅ホログラムJLRを求めておけば、物体光Oを記録した複素振幅ホログラムJORから、容易に複素振幅インラインホログラムJOLを求めることができる。この複素振幅インラインホログラムJOLは、結像レンズを用いていないので、記録画像にはレンズに起因する歪みは一切含まれてなく、従って、画像を拡大して再生する際に歪みが顕在化するという不具合も発生しない。すなわち、複素振幅インラインホログラムJOLは、無歪画像再生に用いることができる。本記録方法によると、干渉縞ILRを記録するワンショットと、オフアクシスホログラムIORを記録するワンショットとの2回のワンショット記録によって、複素振幅インラインホログラムJOLを求めて記録することができる。また、複素振幅ホログラムJLRは1回だけ求めておけばよく、実質的に複素振幅インラインホログラムJOLをワンショット記録することができる。また、本記録方法は、照明光としてインライン球面波光Lを用いており、さらに結像レンズを用いていないので、大開口数(NA)の画像を記録することができる。また、本記録方法は、照明された微小被写体3の透過光、または照明された微小被写体3からの反射光のいずれを物体光Oとする場合にも適用することができる。

【0055】
(高分解能画像再生用ホログラム作成方法)
図8、図9(a)(b)は高分解能画像再生用ホログラム作成方法を示す。上述した微小被写体のホログラム画像記録方法によって記録された複素振幅インラインホログラムJOLは、インライン球面波光LまたはL2を用いて、結像レンズを用いることなく求められている。従って、空間サンプリング間隔を細分化して光波長程度まで小さくするように画像を拡大しても歪みは発生しない。この高分解能画像再生用ホログラム作成方法は、図8に示すように、実質的に画素数を増やす画素数増大工程(S11)と、インライン球面波光LまたはL2成分を除去した物体光複素振幅インラインホログラムgを生成する空間変調工程(S12)とを備えている。

【0056】
画素数増大工程(S11)では、まず、図9に示すように、受光素子4の画素ピッチdに対応する空間サンプリング間隔dを有する複素振幅インラインホログラムJOLに対して、空間サンプリング間隔dを細分化して空間サンプリング間隔δとする。その後、細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行って実質的に画素数を増やす。データ補間の方法として、画像処理における周知の3次式によるデータ補間やsinc関数によるデータ補間を用いることができる。データ補間としてsinc補間を用いれば、3次式を用いた補間に比べて数値計算に時間がかかるが、より正確な結果を得ることができる。複素振幅インラインホログラムJOLに対してデータ補間によって画素数を増やした結果を複素振幅インラインホログラムKOLとする。複素振幅インラインホログラムKOLを表す式は、上式(8)におけるJOLをKOLに置き換えた式である。なお、受光素子4の画素ピッチdは、画素の配列方向(xy方向)で互いに異なってもよく、空間サンプリング間隔δも画素の配列方向で互いに異なるものとすることができる。

【0057】
空間変調工程(S12)では、画素数増大工程(S11)によって画素数を増やした複素振幅インラインホログラムKOLに対し、インライン球面波光LまたはL2の予め求めた位相φを用いて空間ヘテロダイン変調を行う。インライン球面波光Lの受光素子4の受光面における位相φ(x,y)は、前述した図3(b)に示した距離ρと、光が球面波であることと、を用いて容易に関数式の形に求めることができる。また、インライン球面波光L2に対する位相φ(x,y)も、前述した図7(b)に示した焦点Pから受光面までの光路に基づいて、インライン球面波光Lの場合と同様に、容易に関数式の形に求めることができる。位相φを用いる空間ヘテロダイン変調は、上述した式(8)(ただしJOLをKOLに置き換えた式)に、exp(iφ(x,y))を乗じることで実施される。この空間ヘテロダイン変調の結果、下式(9)に示す物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)が得られる。

【0058】
【数5】
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【0059】
この物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)は、受光素子4の受光面における物体光波面、すなわち、受光面の法線方向にz座標軸をとり、受光面の位置をz=0としたときのz=0における物体光の光波分布を表す。この物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)は、画素数増大工程(S11)の処理を行わない場合のホログラムに較べて、上述の画素ピッチdと空間サンプリング間隔δとの比に基づいて、歪みなしで倍率d/δ倍に拡大された像、すなわち、分解能を高めた画像を再生することができる。

【0060】
ここで、空間サンプリング間隔δについて説明する。球面波照明光と球面波参照光とを用いて大開口数でホログラムを記録することにより、球面波照明光と非球面波参照光とを用いる場合よりも、空間周波数帯域を狭くすることができる。また、大開口数では、物体光を表す物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)の空間周波数帯域は広くなる。物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)の空間変化は、ホログラム中心から離れるにつれて大きくなりホログラムの端で最大になる。ホログラムの開口数をNAとし、sqr(*)を*の平方根の関数としてパラメータK=sqr(1+(1/NA))および光波長λを用いると、物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)の最大空間周波数は、1/(λK)で表される。そして、この広帯域の物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)を離散値で表すためには、空間サンプリング間隔δをλK/2以下の値に設定する必要がある。また、狭い帯域の複素振幅インラインホログラムJOLは、受光素子4の画素ピッチdで緩やかに変化するので、データ補間においては3次式を用いた高速計算が可能である。

【0061】
(画像再生方法)
図10は画像再生方法を示す。この画像再生方法は、上述した微小被写体のホログラム画像記録方法によって記録された複素振幅インラインホログラムJOLから画像を再生する方法である。この画像再生方法では、図10に示すように、画素数増大工程(S21)および空間変調工程(S22)を経た後、平面波展開工程(S23)を行う。画素数増大工程(S21)と空間変調工程(S22)は、それぞれ上述の画素数増大工程(S11)および空間変調工程(S12)と同等の工程である。

【0062】
平面波展開工程(S23)は、物体光複素振幅インラインホログラムgをフーリエ変換した結果である変換関数Gを求め、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数Gを用いて物体光Oを平面波展開する工程である。電磁波に関するヘルムホルツ方程式の厳密解として平面波がある。この厳密解である平面波を用いて、物体光Oを記録したホログラムを展開することによって、正確な光波面を再生することができる。そこで、まず、上式(9)におけるg(x,y)をフーリエ変換して、z=0における変換関数Gを、下式(10)のように求める。この変換関数Gは、物体光Oの空間周波数スペクトルである。

【0063】
【数6】
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【0064】
次に、平面波の分散関係を満たす空間周波数(u,v,w)および変換関数Gを用いて、下式(11)のように、z=zにおけるx-y平面上の物体光Oである光波h(x,y)を求めることができる。つまり、物体光Oの空間周波数スペクトルである変換関数Gの重み付けのもとで平面波を重ね合わせる(これを物体光Oの平面波展開という)ことにより、光波h(x,y)が求められる。また、zは正数に限らず任意の値とすることができる。なお、(u,v,w)におけるu,vはそれぞれx,y方向の空間周波数である。また、z方向の空間周波数wは、下式(12)に示すように、平面波の分散式から求められる。式(12)におけるλは光波長である。

【0065】
【数7】
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【0066】
上述の式(11)の光波h(x,y)は、受光素子4の受光面における境界条件g(x,y)を満たすヘルムホルツ方程式の厳密解である。この光波h(x,y)を、その絶対値の二乗|h(x,y)|によって各画素毎の光の強度を求めて、電子ディスプレイに画面表示することにより、平面波展開を用いた無歪高分解能の画像を見ることができる。式(11)におけるz=zの値を変えることにより、記録された3次元画像中の任意の位置(焦点位置)の画像を表示することができる。また、その画像は、歪みなしで倍率d/δ倍に拡大された像、すなわち、分解能を高めた画像となっている。画像の大きさ(絶対寸法)は、画素ピッチdを物差しとして計測される。

【0067】
(他の画像再生方法)
図11乃至図14は計算量を削減できる他の画像再生方法を示す。上述のように、複素振幅インラインホログラムJOLから高分解能な物体光を再生することができるが、平面波展開を用いて高分解能画像を再生するために、空間サンプリング間隔を光波長程度まで狭くする。このとき、例えば、高速フーリエ変換(FFT)を用いて、妥当な計算時間のもとで数値計算が可能となる範囲に、サンプリングデータ数を抑える必要がある。逆に、計算時間の短縮が図られるならば、サンプリングデータ数を増加させることができ、より高分解能の無歪画像を再生することができる。ところで、互いに周波数帯域の異なるデータは、波の重ね合わせの原理によると、互いに足し合わせた状態で計算処理をすることができる。すなわち、異なる周波数帯域に記録されたそれぞれの情報は空間的に重ねても失われずに保存され、このことを利用することにより、広帯域のホログラムを重ねて広い帯域の「微小ホログラム」を作成することができる。また、複素振幅インラインホログラムJOLや物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)は、分割した各領域に画像を再生するための情報を保持している。

【0068】
そこで、図11(a)に示すように、物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)を幅Δ,Δ’の数枚の微小ホログラムgに分割し、図11(b)(c)に示すように、各微小ホログラムgを互いに重ね合わせて合成微小ホログラムΣを生成する。この合成微小ホログラムΣに対して、上述の式(10)(11)(12)に基づく計算を行えば、計算時間の短縮が図られる。図12は、幅Dの物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)を幅Δの微小ホログラムg1,g2,g3に分割する様子を示す。この物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)は、1枚で再生像30を再生する。このような物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)を、図13に示すように、幅Δだけずらしながら重ねたホログラムは、幅Δの周期的なホログラムになり、多数の同じ再生像30を幅Δの間隔ごとに再生することができる。計算点数は、重ね合わせた微小ホログラムgの枚数の逆数分に圧縮される。つまり、n枚重ねると、計算量は、1/nになる。

【0069】
図14は、このような処理に基づく画像再生方法を示している。この画像再生方法における画素数増大工程(S31)および空間変調工程(S32)は、それぞれ図8や図10に示した画素数増大工程および空間変調工程と同等の工程である。これらの工程を経た後、分割工程(S33)において、物体光複素振幅インラインホログラムgを複数枚の微小ホログラムgに分割する。その後、合成工程(S34)において、各微小ホログラムgを互いに重ね合わせる(重なった画素の画素値を足し算する)ことによって合成微小ホログラムΣを生成する。展開工程(S35)では、上述した式(9)における物体光複素振幅インラインホログラムgを合成微小ホログラムΣに置き換えて、上述の式(10)(11)(12)に基づいて、変換関数Gなどの計算を行う。フーリエ変換による変換関数G(u,v)を一度求めておけば、任意の距離z=zにおける光波h(x,y)は式(11)より求められる。また、再生光の光強度はh(x,y)を使って、その絶対値の二乗|h(x,y)|から計算できる。

【0070】
このような画像再生方法によると、FFTを用いた数値計算により、微小被写体の自由焦点画像を、容易かつ精度良く、高速に再生することができる。微小ホログラムgの幅Δは、物体光複素振幅インラインホログラムg(x,y)の大きさ(幅D)や形状(例えば、円形、長方形など)とは無関係に再生画像の大きさに合わせて設定することができる。分割の幅Δが、再生画像の大きさより小さくなると、再生像が隣同士で重なって再生される。従って、例えば、微小被写体3の寸法が0.5mmならば、幅Δは0.5mmよりは大きな寸法にする。

【0071】
(さらに他の画像再生方法)
図15はさらに他の画像再生方法を示す。この画像再生方法は、上述した図14における画素数増大工程(S31)、空間変調工程(S32)、および分割工程(S33)の順番を相互に変更したものである。すなわち、分割工程(S41a)の後に画素数増大工程(S42a)を行うか、または、画素数増大工程(S41b)の後に分割工程(S42b)を行って、その後に、空間変調工程(S43)を行うことができる。空間変調工程(S43)では、画素数増大工程(S42a)、または分割工程(S42b)を通して生成された微小ホログラムg’に対し、上述の式(9)を導いた処理と同様の空間ヘテロダイン変調を行って、物体光複素振幅インラインホログラムgを生成する。この微小ホログラムg’を生成する工程は、一般的なホログラムを分割して複数枚の微小ホログラムを生成する分割工程および一般的なホログラムの空間サンプリング間隔を細分化すると共に細分化によって生じた新たなサンプリング点に対してデータ補間を行う画素数増大工程を、複素振幅インラインホログラムJOLに任意の順で適用して、実質的に画素数を増やした微小ホログラムg’を生成する工程(この工程を分割補間工程という)である、と表現することができる。

【0072】
空間変調工程(S43)に続くホログラム合成工程(S44)では、物体光複素振幅インラインホログラムgを互いに重ね合わせることによって合成微小ホログラムΣを生成する。その後の画像生成工程(S45)は、上述の図14に示した展開工程(S35)と同様であり、変換関数Gを用いて物体光Oを平面波展開することにより、ホログラム面またはその前後の任意位置における光波hを生成する。

【0073】
(ホログラフィック顕微鏡)
図16、図17はホログラフィック顕微鏡を示す。図16に示すように、ホログラフィック顕微鏡1は、微小被写体のホログラム画像を取得して記録する画像記録部10と、記録された画像を再生する画像再生部11と、これらを制御する制御部12と、各データやプログラムを記憶するメモリ13と、を備えている。画像記録部10は、光源10a、光学系10b、受光素子10c(これらを総称して、光学部10h)、および計算部10dを備えている。また、計算部10dは、参照光波を取得する際の計算を行う参照光波取得部10eと、複素振幅を取得する計算を行う複素振幅取得部10fとを備えており、これらはソフトウエアによって構成されている。画像記録部10は、上述の図2、図6に示した記録装置10に相当する。従って、光源10aはレーザ20に、光学系10bは光学系2に、受光素子10cは受光素子4に、計算部10dは計算機5に、それぞれ相当する。

【0074】
画像再生部11は、画素数増大部11a、空間変調部11b、分割部11c、合成部11d、平面波展開部11e、および表示部11fを備えている。表示部11fは、液晶表示装置などの一般的な、画像を表示できるディスプレイである。また、画像再生部11は、さらに、分割補間部14a、空間変調部14b、ホログラム合成部14c、および画像生成部14dを備えている。画像再生部11の各部11a~11eおよび各部14a~14dは、コンピュータ上のソフトウエアによって構成される。上述の計算部10d、画像再生部11、制御部12、およびメモリ13は、これらをまとめた装置として、一般的な入出力装置を備えたコンピュータで構成することができる。

【0075】
画像記録部10は、上述の図1乃至図7に基づいて説明した微小被写体のホログラム画像記録方法を用いて複素振幅インラインホログラムJOLを生成して記録する。すなわち、画像記録部10における、光学部10hおよび参照光波取得部10eは、上述の図1における参照光波取得工程(S1)の処理を行う。また、画像記録部10における、光学部10hおよび複素振幅取得部10fは、図1における撮像工程(S2)、複素振幅取得工程(S3)の処理を行い、計算部10dが画像記録工程(S4)の処理を行う。

【0076】
また、画像再生部11は、上述の図10、図14、図15に基づいて説明した画像再生方法を用いて、画像記録部10によって記録された複素振幅インラインホログラムJOLから画像を再生する。例えば、上述の図14における各処理を行う。すなわち、画素数増大部11aは画素数増大工程(S31)の処理を行い、空間変調部11bは空間変調工程(S32)の処理を行い、分割部11cは分割工程(S33)の処理を行い、合成部11dは合成工程(S34)の処理を行い、平面波展開部11eは展開工程(S35)の処理を行う。また、平面波展開部11eは、上述の図10における平面波展開工程(S23)の処理を行うこともできる。

【0077】
また、画像再生部11の各部14a~14dは、例えば、上述の図15における各処理を行う。すなわち、分割補間部14aは、分割工程(S41aまたはS42b)と画素数増大工程(S42aまたはS41b)の処理を行う分割部と画素数増大部(共に不図示)を備えて分割補間工程の処理を行い、空間変調部14bは空間変調工程(S43)の処理を行い、ホログラム合成部14cはホログラム合成工程(S44)の処理を行い、画像生成部14dは画像生成工程(S45)の処理を行う。

【0078】
画像記録部10は、パルスレーザをホログラム取得用のコヒーレント光源10aとして用いてもよい。また、画像記録部10は、互いに波長領域の異なる複数のレーザを光源10aとして用いてオフアクシスホログラムIORを取得することにより、カラーの複素振幅インラインホログラムJOLを生成して記録するようにしてもよい。また、画像再生部11は、カラーの複素振幅インラインホログラムJOLからカラーの画像を再生するようにしてもよい。このようなホログラフィック顕微鏡1によると、大開口数ホログラムをワンショットで記録し、再生することができる。ホログラフィック顕微鏡1は、図2や図6に示した構成により、透過型顕微鏡や反射型顕微鏡とすることができる。

【0079】
ホログラフィック顕微鏡1の動作および使用方法の例を説明する。光源10aは、例えば、パルスレーザ光発振器である。レーザ光は、ビームスプリッタで分岐された後、それぞれ平行平面波レーザ光から球面波光に変換され、オフアクシス参照光Rおよび照明光LまたはL2とされる(図2、図6参照)。照明光LまたはL2で受光素子4の正面に置かれた微小被写体3を照射すると、3次元画像情報を含んだ物体光Oが微小被写体3から放射される。なお、上述したように、微小被写体3の微小とは、被写体そのものが微小という意味ではなく、画像を記録する対象領域が微小という意味である。また、この微小とは、受光素子4の寸法に較べて微小という意味である。また、記録する対象領域は、インライン球面波光LまたはL2による照明光が照射される領域として規定される。このことは、図2、図6などにおける焦点Pの位置、および、集光レンズで集光される光の広がり角度に関係する。光学系10bは、光源10aと受光素子10cまでの参照光と物体光の経路長の差がレーザ光のコヒーレンス長内に収まるように設定されている。参照光Rと物体光Oとが作る干渉縞を大開口数のオフアクシスホログラムIORとして受光素子10cにより記録する。記録されたホログラムデータはコンピュータ(制御部12)に送られ、画像再生部11において数値計算によって再生され、画像がディスプレイ(表示部11f)上に表示される。

【0080】
ホログラフィック顕微鏡1は、図17に示すように、初期設定工程(#0)として参照光波取得工程を1回行った後、記録工程(#1)とその後の再生工程(#2)とを、使用者による微小被写体3の観察継続の間(#3でNo)、繰り返し、観察停止により(#3でYes)、終了する。なお、図17中に、各工程の主たる動作主体が、図16における各部の符号を引用して示されている。初期設定工程(#0)では、観察者による微小被写体3の準備等が行われた後、微小被写体3を取り除いた状態で、画像記録部10によって、複素振幅インラインホログラムJLRを取得する参照光波取得工程が行われる。また、この初期設定工程(#0)では、種々のパラメータ入力、例えば、位相φを設定するための距離ρ、分割の幅Δを設定するための微小被写体3の寸法等の入力が行われる。この工程は、光学系2を変更するまでは繰り返して行う必要はなく、複素振幅インラインホログラムJLRは、1回取得したものを以下の工程で繰り返し使用することができる。

【0081】
記録工程(#1)では、観察者による微小被写体3のセットの後、画像記録部10によって、オフアクシスホログラムIORを取得する撮像工程(#11)、IORから複素振幅オフアクシスホログラムJORを生成して取得する複素振幅取得工程(#12)、およびJORから複素振幅インラインホログラムJOLを生成、取得して記録する画像記録工程(#13)が行われる。再生工程(#2)では、画像再生部11によって、JOLからデータ補間された複素振幅インラインホログラムKOLを生成、取得する補間工程(#21)、KOLから物体光複素振幅インラインホログラムgを生成する空間変調工程(#22)、gを分割して成る微小ホログラムgを生成する分割工程(#23)、各gを互いに合成して合成微小ホログラムΣを生成するホログラム合成工程(#24)、Σから変換関数Gを求めて物体光Oを平面波展開して光波hを求め、その絶対値の二乗|h|によって画像をディスプレイに表示する画像生成工程(#25)が行われる。

【0082】
(第1の実施例)
図18乃至図21は第1の実施例を示す。ホログラフィック顕微鏡1によって、USAFテストターゲットの画像記録および画像再生を行った。レーザ20として緑色の半導体励起固体レーザ(波長532nm,出力50mW)を使用した。また、ホログラム記録用の受光素子4としてモノクロのカメラリンクCCDカメラを使用した。CCDカメラの前方約5cmの位置に被写体としてUSAFテストターゲットを置いて物体光Oとオフアクシス参照光R(球面波光)が作る干渉縞を記録した。次に、被写体のUSAFテストターゲットを取り除いたときのインライン球面波光Lとオフアクシス参照光RとがCCD上に作る干渉縞を記録した。記録した2枚の干渉縞から複素振幅インラインホログラムJOLを求め、それを16×16分割して256枚の分割記録ホログラムを得た。各分割記録ホログラムに対してデータ補間と空間ヘテロダイン変調を行った後に、分割ホログラム(微小ホログラムg)の重ね合わせを行って画像再生用の微小ホログラム(合成微小ホログラムΣ)を求めた。画像は、合成微小ホログラムΣに対してFFTを用いた数値計算を行って再生した。

【0083】
図18(a)はホログラフィック顕微鏡1を用いて記録したUSAFテストターゲットの干渉縞を示し、図18(b)はインライン球面波光Lと参照光Rの干渉縞を示す。これら2枚の干渉縞に対してそれぞれ空間周波数フィルタリングを行って複素振幅ホログラムを求め、それらのホログラムを用いて図19(a)に示す複素振幅インラインホログラムJOLを得た。この複素振幅インラインホログラムJOLを16×16分割し、微小分割ホログラムそれぞれにデータ補間と位相変換およびホログラムの重ね合わせを行って、図19(b)に示す画像再生のための合成微小ホログラムΣを得た。

【0084】
図20は、合成微小ホログラムΣ、つまり複素振幅インラインホログラムJOLから再生したUSAFテストターゲットの再生画像を示す。また、図21は、USAFテストターゲットの部分拡大再生画像を示す。図20における大きな矩形領域a1、その中の矩形領域a2、さらにその中の矩形領域a3、および、図21における矩形領域a2,a3の外形には歪みが見られない。すなわち、各矩形領域a1,a2,a3の外形が直線で構成されていることが確認でき、再生画像に全く歪が生じてないことが分かる。また、図21におけるラインアンドスペースL/S=1.5μmのパターンが潰れていないことなどから、再生画像の分解能を約1μmと見積もることができる。

【0085】
(第2の実施例)
図22は第2の実施例を示す。図22(a)はホログラフィック顕微鏡1を用いて記録して再生したトンボの翅の微小部分の画像を示し、図22(b)~(e)は図22(a)における翅の縁における繊毛部分(領域A)をさらに拡大して示す。また、図22(b)~(e)は、焦点距離を変えて、すなわち、式(11)におけるzを52.0mmから順に0.1mmずつ遠くして、再生した画像である。このように焦点距離を変えると焦点の合った繊毛部分の位置(図中○印部分)が順次変化している様子が分かる。図22の画像の結果から、ホログラフィック顕微鏡1によると、焦点深度の大きい3次元像の記録と再生が可能であることを確認できた。また、焦点が合った繊毛部分の画像から、分解能として約1μmの値が得られた。

【0086】
本発明のホログラフィック顕微鏡1によれば、結像レンズを使用しないで被写体から放たれる透過物体光または反射物体光を大開口数の複素振幅インラインホログラムとしてワンショットで記録することができる。従って、奥行きのある空間を動いている微小被写体の無歪3次元像を瞬時記録できる。記録用レーザ光源としてパルスレーザを用いることにより、動いている3次元像を高速記録または実時間記録することが可能になり、空気中の被写体だけでなく、水のような液体中の被写体、例えば、微小動物体を実時間で記録することができる。また、平面波展開の方法により、ヘルムホルツ方程式の厳密解を用いて物体光を再生するので、歪の無い自由焦点画像を光波長に近い高分解能のもとで高速再生することができる。さらに、再生方法として微小分割ホログラムの重ね合わせの手法を用いることにより、計算点数を圧縮して、より高分解能で、より高速に画像再生を行うことができる。このような再生画像を用いて微小被写体の形状の変化や位置の変化、振動現象などを高精度で記録して計測することが可能になる。さらに、物体光の位相分布を再生できるので、光を透過する被写体を透過した物体光(物体から影響を受けた照明光)の位相分布から、透過物体の物質構成などの定量的解析などが可能になる。なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、球面波光L,L2,Rとして楕円面波光を用いることもできる。

【0087】
(媒質中の物体光伝搬と画像再生)
次に、真空や空気以外の媒質中の物体光伝搬と画像再生について説明する。表面が平面で滑らかな水やガラスのような一様透明媒質を考え、その屈折率をnで表す。ここで、例えば、空気中に置かれた受光素子4によって水中の微小被写体3のホログラム画像を記録し再生する状況を想定する。媒質表面(空気と水の界面)をx-y平面とし、空気中から水中へ入射する平面波の空気中の空間周波数を(u,v,w)、水中の透過平面波の空間周波数を(u’,v’,w’)と表す。すると、x-y平面においてu=u’およびv=v’が成り立つ。水中のz方向空間周波数w’は平面波の分散関係により、下式(13)によって求められる。式(13)は、上述した式(12)において、λを、(λ/n)に置き換えた式である。また、界面における入射波と透過波の位相は一致する。

【0088】
【数8】
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【0089】
従って、入射平面波の振幅と位相が分かれば媒質中を伝搬する平面波を求めることができる。そこで、物体光をz=0において記録した複素振幅ホログラムg(x,y)から、媒質中の任意位置z=z0における媒質中画像再生面上の物体光h’(x,y)を計算によって再生するために、まず、式(10)(11)(12)を使って媒質表面位置z=zBにおける物体光h(x,y)を求める。位置z=zBは、例えば、媒質表面を示す目印となる被写体を予め配置し、その目印を含むように画像を取得し、その目印に焦点を合わせて画像を再生することにより、その焦点位置から求めることができる。なお、媒質表面位置z=zBの精度は、光波長程度のような高精度は要求されず、その精度が悪い場合の影響は、焦点位置のずれとして現れる。次に、式(13)を用いて媒質中の光伝搬計算を行い、h(x,y)からh’(x,y)を求める。z=z0における再生画像は、光振幅の二乗|h’(x,y)|より計算できる。媒質や界面が複数存在する場合、例えば、2枚の板ガラスで挟まれた液体中の物体の場合については、空気とガラスおよび液体の中における物体光の伝搬を順次計算することにより物体の画像を再生することができる。本方法は、受光素子4に対して既知の任意の配置と形状の一般的な界面の場合にも、容易に拡張して対応することができる。

【0090】
(ハーフミラーを用いた透過型顕微鏡の光学系)
次に、図23により、透過型顕微鏡の光学系2の他の例を説明する。この記録装置10の光学系2は、上述の図2に示した記録装置10の光学系2における小さなミラーM3の代わりにハーフミラーHM2を用いるものである。光学系2は、レーザ20からの光の径を広げるレンズ21,22と、拡大した光を分岐するビームスプリッタBSと、各光を収束させる集光レンズ23,24とを備えている。ビームスプリッタBSと集光レンズ23との間には2つのミラーM6,M7が備えられ、ビームスプリッタBSによって分岐された光は、ミラーM6,M7によって180°偏向されて、集光レンズ23に入射する。集光レンズ24の前方には、例えば、45゜に傾斜配置されたハーフミラーHM2を介して、受光素子4があり、集光レンズ24が受光素子4の受光面に正対している。受光素子4は、例えばCCDである。この配置において、レーザ20、集光レンズ24、および受光素子4の各光軸は一致し、これらの光軸に対し、集光レンズ23の光軸が直交している。集光レンズ23を経由した光は、集光レンズ23によって球面波に変換され、ハーフミラーHM2によって反射されて、インライン球面波光Lとして受光素子4に向けて投光される。微小被写体3は、集光レンズ23とハーフミラーHM2との間に置かれて、背後から照明される。インライン球面波光Lの焦点P(球面波の中心点)は、集光レンズ23とハーフミラーHM2との間に存在する。集光レンズ24を経由した光は、集光レンズ24によって上記の焦点Pの鏡像点の近くに焦点を有する球面波に変換され、ハーフミラーHM2を透過して、オフアクシス参照光Rとして受光素子4に向けて投光される。

【0091】
この光学系2は、ハーフミラーHM2を用いることにより、2つの対物レンズ(集光レンズ23,24)を互いに垂直向きに設定することができるので、上述の図2に示したようなミラーM3を用いる場合の光学系2と比べて、2つの参照光R,Lの開口数を大きく取ることができる。また、ハーフミラーHM2を各対物レンズの焦点位置よりも、受光素子4寄りに配置できるので、光学系2の設計や調節が容易になり、微小被写体3を配置するスペースも広くできる。ところで、ハーフミラーHM2を用いる場合、これを透過したオフアクシス参照光Rは、ハーフミラーHM2を構成するガラス板の影響によって球面波から歪むことになる。しかしながら、上述した式(8)からも分かるように、最終的に得られる複素振幅インラインホログラムは参照光Rに依存しないので、ガラス板の影響はインラインホログラムに現れることはない。これらの点から、ミラーM3を用いる図2の光学系2よりも、ハーフミラーHM2を用いる図23の光学系2の方が透過型顕微鏡にとって、より有利といえる。

【0092】
(媒質中3次元像の記録再生の結果)
図24(a)(b)は、屈折率1.523、厚さ1.5mmのガラス板で覆ったUSFAテストターゲットの像を上述の図23に示した透過型の構成の光学系によって記録再生した画像である。図24(a)はガラス板の存在を無視して空気中の物体として再生した画像であり、図24(b)はガラス板の存在を考慮してガラス中の光伝搬の計算を行って再生した画像である。図24(a)に示すように、ガラス中の光伝搬を考慮しない再生画像では、ガラス板の存在によって画像の歪みやボケが発生し、再生画像の中心から外れて周辺に近付くほど、歪やボケが大きくなっている。歪みやボケが小さい中心部においても、ガラス板によって分解能が低下していることが分かる。ガラス板の存在を考慮した光伝播の計算を行って再生した画像では、図24(b)に示すように、ガラス板の存在による影響をなくすことができ、歪みの無い高分解能画像を再生することが可能になる。

【0093】
図25(a)(b)は、1枚のホログラムから再生した水中ゾウリムシの画像を示す。厚さ0.015mmの上下2枚の板ガラスで作った間隔が2mmの隙間を水で満たし、その水中を移動するゾウリムシを、CWレーザ光で照射して0.7msecの露光時間で瞬時記録した。光学系は図23に示した透過型の構成であり、微小被写体3は2枚の板ガラスに挟まれた水中のゾウリムシである。大開口数の記録オフアクシスホログラムから複素振幅インラインホログラムを取り出し、その複素振幅インラインホログラムを用いて、空気、ガラス、および水を伝搬する物体光を数値計算で求めて再生画像を得た。図25(a)はガラス表面から奥行き0.69mmの位置に焦点を合わせた再生画像であり、図25(b)はガラス表面から奥行き1.49mmの位置に焦点を合わせた再生画像である。媒質中における物体光の伝搬を考慮して数値計算することにより、ガラス容器や水などの媒質による収差をなくすことができ、これらの図に示すように、歪やぼけの無い高分解能な画像が得られる。本発明のレンズレス顕微鏡を用いて時系列ホログラムの連続記録と高速画像再生を行うことにより、例えば、培養液中の微生物や流体媒質中の微粒子の動きを実時間で3次元記録して観察することが可能になる。

【0094】
(画像再生の高速化)
次に、図26、図27を参照して、画像再生の高速化の他の方法を説明する。まず、上述した平面波展開による高分解能画像再生方法を見直す。上述の再生方法では、空間サンプリング間隔の細分化とインラインホログラムのデータ補間およびホログラムの分割と重ね合せを行って再生用合成微小ホログラムΣを作成し、この合成微小ホログラムΣをフーリエ変換して式(10)の変換関数Gを求めた。つまり、上述の再生方法は、高分解能画像を再生するために空間サンプリング点を増やし、空間サンプリング点の増加による計算負荷の増加を解消するためにホログラムの分割と重ね合せを行っている。しかしながら、サンプリング間隔の細分化とデータ補間およびホログラムの重ね合せの計算は時間を要する。そこで、サンプリング間隔の細分化を行うことなく、上記合成微小ホログラムΣの変換関数Gに対応する変換関数を求めることができれば、その分、画像再生の高速化を図ることが可能になる。このような画像再生方法は、図26に示すように、空間変調工程(S51)と、分割工程(S52)と、周波数低減工程(S53)と、フーリエ変換工程(S54)と、画像生成工程(S55)とを備えるものとなる。以下、各工程順に説明する。

【0095】
(空間変調工程S51、分割工程S52)
上述の式(9)で表される物体光複素振幅ホログラムg(x,y)は、図8における画素数増大工程(S11)の処理を経ることなく、式(8)のJOL(x,y)から直接求めたホログラムの式とみなすことができる。すなわち、式(8)のJOLに、exp(iφ(x,y))を乗じることによって、式(9)のgが得られる。そこで、以下に説明するホログラムgおよびこれを分割した微小ホログラムg(これらを、関数g,gとも称する)は、画素数を増大していないものとする。ホログラムgは、球面波光を用いて取得されたことに起因して、例えば、ニュートンリングのように中央部から端に行くほどその空間周波数が単調増加的に高くなる。ここで、このホログラムgを画素数N×N毎に分割した複数の微小ホログラムgを考える。

【0096】
(周波数低減工程S53)
球面波光Lの焦点P(またはP0)から各分割ホログラムgの中心に向けて照射した平行光L(平面波)を考えると、各分割微小ホログラムg内における物体光Oと平行光Lとのなす角度は小さくなる。そこで、平行光Lの位相をφ(x,y)で表し、各微小ホログラムgにexp(-iφ)を乗じると、空間周波数を下げた低周波数化微小ホログラムg・exp(-iφ)が生成される。一般に、変数α,βに対し、exp(iα)・exp(iβ)は変数間の足し算を意味し、exp(iα)/exp(iβ)は変数間の引き算を意味する。画素数N×Nの微小ホログラムgにおける画素(k,l)の中心座標(x,y)を、画素のピッチdを用いて、x=kd,y=ldと表し、微小ホログラムgの法線と平行光Lとがなすx方向とy方向の入射角を、それぞれθix,θiyと表す。すると、画素(k,l)=(0,0)を基準とした一般の画素(k,l)における平行光Lの位相φ(k,l)は、下式(14)および(15)(16)によって表すことができる。

【0097】
【数9】
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【0098】
上式(15)(16)における関数INT(*)は*の値を整数化する関数である。また、Ndは微小ホログラムgの寸法であり、m,nはその寸法内に含まれている平行光Lの波の数を示し、2πm/N,2πn/Nはそれぞれx方向、y方向における離散的な位相変化の単位となる。このm,nは、微小ホログラムgがホログラムgの中心から離れた端に位置するものであればあるほど、大きくなる。また、上式(15)(16)の整数化によりm,nは整数であり、mk+nlも整数である。従って、式(14)から分かるように、各分割微小ホログラムg上の各画素における位相φ(k,l)は、式(15)(16)のm,nを用いることにより、2π/Nの整数倍の離散値となる。

【0099】
(フーリエ変換工程S54)
離散サンプリング点(k,l),k=0,1,..,N-1,l=0,1,..,N-1において低周波数化微小ホログラムg・exp(-iφ)を離散フーリエ変換した結果である分割変換関数G’(m,n)と、その逆変換の結果であるg(k,l)・exp(-iφ(k,l))は、それぞれ、下式(17)(18)で表される。

【0100】
【数10】
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【0101】
上式(17)のG’(m,n)は、m,nに対して周期Nの周期関数である。例えば、mをm+Nに置き換えても、式の値は変わらず、G’(m+N,n)=G’(m,n)である。同様に、関数g(k,l)もk,lに対して周期Nの周期関数である。空間周波数の低い関数g・exp(-iφ)の最大空間周波数Fは、不等式F<1/(2d)を満たす。従って、サンプリング定理より、-N/2<m<N/2、および、-N/2<n<N/2(これらの各項をdで割った式は空間周波数帯を表す)を満たす整数m,nを変数とする分割変換関数G’(m,n)を用いて、周期関数g・exp(-iφ)を正確に記述することができる。すなわち、周期関数g・exp(-iφ)の離散フーリエ変換として分割変換関数G’(m,n)が得られる。また、式(18)の両辺にexp(i2π(mk+nl)/N)を乗じて左辺からexp項を除去することにより、空間周波数の高い関数g(k,l)の展開式が得られる。この場合、-N/2+m<m<N/2+m、および、-N/2+n<n<N/2+n(これらの各項をdで割った式は空間周波数帯を表す)を満たす整数m,nを変数とする分割変換関数G’(m-m,n-n)を用いて、関数gを正確に記述することができる。すなわち、関数gの離散フーリエ変換として分割変換関数G’(m-m,n-n)が得られる。この分割変換関数G’(m-m,n-n)は、分割変換関数G’(m,n)にexp(iφ)を乗じて空間ヘテロダイン変調を行うことによって空間周波数を上げたものである。つまり、G’(m-m,n-n)=G’(m,n)exp(i2π(mk+nl)/N)であり、関数G’(m,n)が、周波数空間において、波数を表すパラメータm,nによってシフトされている。

【0102】
(画像生成工程S55)
上記によって求められた各微小ホログラムgの分割変換関数G’(m-m,n-n)は、周波数空間においてパラメータm,nによってシフトされており、互いに重なり合わない。この、互いに重なり合わないことは重要である。すなわち、複数の分割変換関数G’(m-m,n-n)の総体として、言い換えれば、周波数空間における領域接続あるいは張り広げ操作としての合成により、変換関数Gを求める。すると、この変換関数Gは周波数空間の広い範囲を占めることになる。このことは、周波数空間における変換関数Gを用いて、実空間における光波を高分解能で再生することができる、ということを意味する。つまり、広い周波数帯域に分布する各々のG’(m-m,n-n)を合成することによって、合成微小ホログラムΣをフーリエ変換して得た式(10)の変換関数Gと同等の高分解能画像再生用の変換関数Gを求めることができる。このような変換関数Gを用いて、上述と同様に、式(11)により、光波h(x,y)を求めて、画像を再生することができる。

【0103】
図27に示すように、ここで述べた画像再生の方法によると、サンプリング間隔の細分化やデータ補間を行う必要がないので、その分、変換関数Gを高速に計算でき、画像の高速再生が可能になる。すなわち、本方法では、サンプリング間隔の細分化による画素数増大と重ね合わせの計算を行うことなく、合成微小ホログラムΣの変換関数Gに対応する変換関数を求めることができる。なお、パラメータm,nがNの整数倍でなければ、領域接続した結果である変換関数Gにおいて、領域間の重なりや隙間が発生する。また、ホログラムgを画素数N×N毎に分割する代わりに、画素数N×M(ただしN≠M)毎に分割することもできる。この場合、各関数は、x方向とy方向に関し、それぞれ異なる周期N,Mを有する。微小ホログラムgのサイズは、図11乃至図14に関連して説明したように、見たい物体のサイズよりも大きくすればよい。全体の計算速度は、ホログラムgの分割数(微小ホログラムgの枚数)を増やしても、あまり変化しない(FFTの特性から、分割数を増やすほど速くなる)。また、分解能は、もとのホログラムgのサイズで決まるので、分割数には依存しない。

【0104】
(画像再生の他の高速化)
次に、画像再生の高速化のさらに他の方法を説明する。この画像再生方法は、図28、図29に示すように、上述の図26における周波数低減工程(S53)を備えない点が異なり、他は上述の高速化の方法と同様である。上記方法では、分割変換関数G’(m,n)を計算する際に、不等式F<1/(2d)を満足させるために高周波数の関数gを低周波数の関数g・exp(-iφ)に変換した。ここでは、下式(19)で与えられる、関数gのサンプリング値g(k,l)に対する離散フーリエ変換である分割変換関数G(m,n)を考える。

【0105】
【数11】
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【0106】
関数gは高周波数の関数であり、その最大空間周波数Fは不等式F<1/(2d)を満たすとは限らない。従って、区間-N/2<m<N/2、および、-N/2<n<N/2における分割変換関数G(m,n)を用いて関数gを正確に表すことができるとは限らない。しかしながら、G(m,n)は、式(19)から分かるように、m,nに対して周期Nの周期関数である。また、式(17)(19)を用いて、等式G(m,n)=G’(m-m,n-n)が得られる。従って、高周波数の関数gを、-N/2+m<m<N/2+m、および、-N/2+n<n<N/2+nにおけるG’(m-m,n-n)、つまりG(m,n)を用いて正確に表すことが可能である。すなわち、最大空間周波数Fが不等式F<1/(2d)を満たさない場合においても、G(m,n)の周期性と式(19)とを使って、-N/2+m<m<N/2+m、および、-N/2+n<n<N/2+nにおける関数gの周波数成分G(m,n)を直接的に求めることができる。また、上記と同様に、各々のG(m,n)を合成することによって、合成微小ホログラムΣをフーリエ変換して得た式(10)の変換関数Gと同等の高分解能画像再生用の変換関数Gを求めることができる。このような変換関数Gを用いて光波h(x,y)を求めて画像を再生することができる。式(19)は式(17)と比較して、さらに簡単であり、式(19)を用いることにより、計算をより高速化することができる。

【0107】
(ホログラフィック顕微鏡の他の例)
図30はホログラフィック顕微鏡の他の例を示す。このホログラフィック顕微鏡1は、画像再生部11の構成が上述の図16に示したホログラフィック顕微鏡1と異なり、他は同様である。画像記録部10の構成については説明を省略する。画像再生部11は、空間変調部15a、分割部15b、周波数低減部15c、フーリエ変換部15d、画像生成部15e、および表示部11fを備えている。表示部11fは、上述と同様である。この画像再生部11は、上述の図26、図27に基づいて説明した画像再生方法を用いて、画像記録部10によって記録された複素振幅インラインホログラムJOLから画像を再生する。すなわち、空間変調部15aは空間変調工程(S51)の処理を行い、分割部15bは分割工程(S52)の処理を行い、周波数低減部15cは周波数低減工程(S53)の処理を行い、フーリエ変換部15dはフーリエ変換工程(S54)の処理を行い、画像生成部15eは画像生成工程(S55)の処理を行う。

【0108】
(ホログラフィック顕微鏡のさらに他の例)
図31はホログラフィック顕微鏡のさらに他の例を示す。このホログラフィック顕微鏡1は、画像再生部11の構成が上述の図16に示したホログラフィック顕微鏡1と異なり、他は同様である。画像記録部10の構成については説明を省略する。画像再生部11は、空間変調部16a、分割部16b、フーリエ変換部16c、画像生成部16d、および表示部11fを備えている。表示部11fは、上述と同様である。この画像再生部11は、上述の図28、図29に基づいて説明した画像再生方法を用いて、ホログラムから画像を再生する。すなわち、空間変調部16aは空間変調工程(S61)の処理を行い、分割部16bは分割工程(S62)の処理を行い、フーリエ変換部16cはフーリエ変換工程(S63)の処理を行い、画像生成部16dは画像生成工程(S64)の処理を行う。この顕微鏡1は、上述の図30に示した顕微鏡1とは、周波数低減部15cを備えていない点で異なる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る球面波光を照明光とするオフアクシスホログラフィに基づく微小被写体のホログラム画像記録方法、高分解能画像再生用ホログラム作成方法、画像再生方法、およびホログラフィック顕微鏡(3次元顕微境)は、結像レンズを用いない無歪物体光波面のワンショット記録、パルスレーザを用いた高速記録または実時間記録、透過物体光または反射物体光の記録、厳密解を用いた無歪自由焦点画像の再生、FFTを用いた高速画像再生、波の位相分布を用いた光透過物体の定量的解析など、多くの利点を有する。従って、本発明は、これらの利点を活かした広い用途に適用できる。従来の技術に対する本発明の新規性と優位性として、水中遊泳微生物や培養液中生体組織の大深度高分解能4次元(実時間+3次元空間)計測を可能にする点、低エネルギー照射により生きたままで生体組織の連続計測を可能にする点、光位相分布を使った透明生体組織の計測を可能にする点、が挙げられる。
【0110】
具体的な用途例として、生きた生体細胞や媒質中を動く微小物を観察するための無歪高分解能実時間3次元顕微鏡、動いている微小被写体の位置や変位、振動および表面形状を非接触かつ非破壊で計測するための高速精密実時間3次元光計測装置、微小空間で生じる瞬間的な現象を高速撮像するための高速3次元撮像装置、などが挙げられる。この他に、生体組織内部を細胞レベルの高分解能で計測するための高分解能断層撮像装置などへの新たな応用にも適用できる。
【0111】
本願は日本国特許出願2010-155024に基づいており、その内容は、上記特許出願の明細書及び図面を参照することによって結果的に本願発明に合体されるべきものである。
【符号の説明】
【0112】
1 ホログラフィック顕微鏡
10 画像記録装置、画像記録部
10a 光源
10b 光学システム
10c 受光素子
10d 計算部
10e 参照光波取得部
10f 複素振幅取得部
11 画像再生部
11a 画素数増大部
11b 空間変調部
11c 分割部
11d 合成部
11e 平面波展開部
14a 分割補間部
14b 空間変調部
14c ホログラム合成部
14d 画像生成部
20 レーザ(光源)
3 微小被写体
4 受光素子
g 物体光複素振幅インラインホログラム
微小ホログラム
’ 微小ホログラム
物体光複素振幅インラインホログラム
h 光波(複素振幅ホログラム)
G 変換関数
G’ 分割変換関数
分割変換関数
LR 干渉縞
LR 複素振幅インラインホログラム
OR オフアクシスホログラム
LR 複素振幅インラインホログラム
OR 複素振幅オフアクシスホログラム
OL 複素振幅インラインホログラム
L インライン球面波光
L,L2 照明用のインライン球面波光
O 物体光
P 焦点
R オフアクシス参照光
φ インライン球面波光(LまたはL2)の位相
Σ 合成微小ホログラム
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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