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明細書 :生分解性と生体親和性に優れたナノ繊維の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5835743号 (P5835743)
登録日 平成27年11月13日(2015.11.13)
発行日 平成27年12月24日(2015.12.24)
発明の名称または考案の名称 生分解性と生体親和性に優れたナノ繊維の製造方法
国際特許分類 D01F   6/86        (2006.01)
D01F   6/62        (2006.01)
D01D   5/06        (2006.01)
C08G  65/332       (2006.01)
C08G  63/08        (2006.01)
C08L 101/16        (2006.01)
FI D01F 6/86 301A
D01F 6/62 303J
D01D 5/06 ZBPZ
C08G 65/332
C08G 63/08
C08L 101/16
請求項の数または発明の数 25
全頁数 22
出願番号 特願2012-531863 (P2012-531863)
出願日 平成23年8月29日(2011.8.29)
国際出願番号 PCT/JP2011/069439
国際公開番号 WO2012/029710
国際公開日 平成24年3月8日(2012.3.8)
優先権出願番号 2010192223
優先日 平成22年8月30日(2010.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年7月30日(2014.7.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】小野 努
【氏名】木村 幸敬
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査官 【審査官】岩本 昌大
参考文献・文献 特開平01-108226(JP,A)
国際公開第1996/021056(WO,A1)
特開平07-165896(JP,A)
特開2007-186831(JP,A)
特開2007-325543(JP,A)
国際公開第2010/101240(WO,A1)
北中萌恵他,溶媒拡散法を用いたポリ乳酸系ナノファイバーの調製,高分子学会予稿集,日本,2010年 9月 1日,Vol.59 No.2 Disk 1,Page 5278-5279
調査した分野 D01F 1/00- 6/96
C08G 81/00
C08L 101/16
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)脂肪族ポリエステル樹脂(A0)、または脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる油溶性低ブロック共重合体(A)と、有機溶媒(S1)とを含む有機溶媒溶液(S)を、界面活性剤(SF)と水とを含む水溶液(W)中に線状に押し出す押出工程、および
(2)前記工程(1)で線状に押し出された有機溶媒溶液(S)を引き取るとともに、当該有機溶媒溶液(S)中の有機溶媒(S1)を水溶液(W)中に拡散または抽出させることにより、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A0)または油溶性低ブロック共重合体(A)からなる繊維を形成させる紡糸工程
を含むことを特徴とする、ナノ繊維の製造法。
【請求項2】
前記押出工程(1)において、前記有機溶媒溶液(S)と水溶液(W)とを二重管マイクロノズル流路により供給する、請求項記載のナノ繊維の製造法。
【請求項3】
前記油溶性低ブロック共重合体(A)が、1種または2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと1種または2種以上の親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる、油溶性のジまたはトリブロック共重合体(A)である、請求項またはに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックが、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロックを含む、請求項のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項5】
前記油溶性低ブロック共重合体(A)のGPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~3.00の範囲にある、請求項のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A0)または脂肪族ポリエステル樹脂(A1)のGPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある、請求項のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項7】
前記親水性高分子(A2)のGPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある、請求項のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項8】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A0)または脂肪族ポリエステル樹脂(A1)が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂である、請求項のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項9】
前記親水性高分子(A2)が、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の親水性高分子である、請求項のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項10】
前記油溶性低ブロック共重合体(A)の構成比率が、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(A2)由来のブロックの重合度が0.1~100部となる範囲である、請求項のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項11】
油溶性低ブロック共重合体(A)のHLB値が0.4以上10以下である、請求項10のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項12】
前記界面活性剤(SF)が非イオン界面活性剤である、請求項11のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項13】
前記界面活性剤(SF)が、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックと親水性高分子(B2)由来のブロックとからなる水溶性低ブロック共重合体(B)である、請求項12のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項14】
前記水溶性低ブロック共重合体(B)が、1種または2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックと1種または2種以上の親水性高分子(B2)由来のブロックとからなる、水溶性のジまたはトリブロック共重合体(B)である、請求項13に記載のナノ繊維の製造法。
【請求項15】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックが、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロックを含む、請求項13または14に記載のナノ繊維の製造法。
【請求項16】
前記水溶性低ブロック共重合体(B)のGPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある、請求項1315のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項17】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)のGPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある、請求項1316のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項18】
前記親水性高分子(B2)のGPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にある、請求項1317のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項19】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂である、請求項1318のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項20】
前記親水性高分子(B2)が、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性高分子である、請求項1319のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項21】
前記水溶性低ブロック共重合体(B)の構成比率が、前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(B2)由来のブロックの重合度が100~100,000部となる範囲である、請求項1320のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項22】
前記水溶性低ブロック共重合体(B)のHLB値が8以上20未満である、請求項1321のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項23】
前記有機溶媒(S1)が、油溶性低ブロック共重合体(A)を溶解するエステル、エーテル、ケトン、芳香族化合物アルコール、ハロゲン化炭化水素および炭酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒である、請求項22のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項24】
前記有機溶媒溶液(S)の粘度(ηs)と外相である水溶液(W)の粘度(ηw)の比(ηr=ηs/ηw)が50~50,000である、請求項23のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
【請求項25】
さらに、前記工程(2)により形成された繊維を、非延伸下または延伸下に巻き取る巻き取り工程(3)を含む、請求項24のいずれかに記載のナノ繊維の製造法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂(生分解性樹脂)により形成される、ナノレベルの繊維幅を有する「ナノ繊維」およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでナノファイバーの作製には、「電界紡糸(エレクトロスピニング,ES)法」が広く用いられている。1998年頃から米国NTC(全米テキスタイルセンター)を中心にES法によるナノファイバー製造技術の開発が始まり、2002年から急激に国のプロジェクトが立ち上がり、(2003年当時で)250億円以上の研究予算を投入し全米29研究機関以上が官民挙げてナノファイバー技術開発に取り組んでいる。本手法は高電圧を印加した空間内を帯電した液体が表面張力に打ち勝ちスプレーされる現象を利用したものであり、不織布や紙状の製品が容易に作成できる方法である。その他にも、国内では東レ等が「溶融ナノ分散紡糸技術」によってナノファイバーを生産している。
【0003】
一方、ポリ乳酸繊維の製造法として、湿式紡糸法の開発は、経済産業省「技術戦略マップ2009」においても2011年までを目標に掲載されている。湿式紡糸法は広く用いられてきた高分子繊維製造手法であるが、ポリ乳酸の製造法に適用された例は多くない(特許文献1、非特許文献1,2)。特に、ナノファイバー製造のための湿式紡糸方法はこれまでに前例がない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2003-328229号公報(特許第3749502号公報)
【0005】

【非特許文献1】K. D. Nelson et al., Tissue Eng., 9, 1323 (2003)
【非特許文献2】M. J. D. Eenink et al., J. Controlled Release, 6, 225 (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
「ES法」は様々な高分子のナノファイバー化が可能であるが、高電圧を印加するため、操作に危険が伴い、不織布状態の回収がほとんどである。また、「溶融ナノ分散紡糸法」は、高分子溶液を事前に溶融させておく必要があり、また、ナノサイズのファイバーを作製するためには延伸操作が不可欠である。
【0007】
本発明は、延伸操作等の煩雑な工程を必要とせず、また常温での操作が可能であるなど、従来よりも生産性に優れた、脂肪族ポリエステル系樹脂(生分解性樹脂)のナノ繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ナノ繊維の材料となる油溶性の樹脂、代表的には脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロック(疎水性の部位)と親水性高分子由来のブロック(親水性の部位)とを有する油溶性ジブロック共重合体が溶解した有機溶媒溶液(油相)を、界面活性剤、代表的には上記油溶性ジブロック共重合体と類似の構造を有する水溶性ジブロック共重合体が溶解した水溶液(水相)中に線状に押し出し、油相中の有機溶媒を水相中に拡散させ、油溶性ジブロック共重合体からナノ繊維を形成させることにより、延伸操作を必要とせず、また常温でナノ繊維を製造できる「溶媒拡散法」を開発し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は一つの側面において、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる油溶性低ブロック共重合体(A)から構成され、繊維の平均断面径がナノサイズであることを特徴とするナノ繊維を提供する。
【0010】
前記ナノ繊維の平均断面径は、通常は50~1000nmの範囲にある。
前記油溶性低ブロック共重合体(A)は、たとえば、1種または2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと1種または2種以上の親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる、油溶性のジまたはトリブロック共重合体(A)であり、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックは、たとえば、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロックを含むものである。
【0011】
前記油溶性低ブロック共重合体(A)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~3.00の範囲にあるものが好ましい。
【0012】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあるものが好ましい。
【0013】
前記親水性高分子(A2)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあるものが好ましい。
【0014】
また、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
【0015】
前記親水性高分子(A2)としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の親水性高分子が好ましい。
【0016】
前記油溶性低ブロック共重合体(A)の構成比率は、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(A2)由来のブロックの重合度が0.1~100部となる範囲が好ましい。
【0017】
前記油溶性低ブロック共重合体(A)のHLB値は、0.4以上10以下が好ましい。
本発明は、たとえば、上記のナノ繊維からなる細胞培養・増殖用スカフォールドをあわせて提供する。
【0018】
本発明はもう一つの側面において、
(1)脂肪族ポリエステル樹脂(A0)、または脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる油溶性低ブロック共重合体(A)と、有機溶媒(S1)とを含む有機溶媒溶液(S)を、界面活性剤(SF)と水とを含む水溶液(W)中に線状に押し出す押出工程、および
(2)前記工程(1)で線状に押し出された有機溶媒溶液(S)を引き取るとともに、当該有機溶媒溶液(S)中の有機溶媒(S1)を水溶液(W)中に拡散または抽出させることにより、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A0)または油溶性低ブロック共重合体(A)からなる繊維を形成させる紡糸工程
を含むことを特徴とする、ナノ繊維の製造法を提供する。
【0019】
前記押出工程(1)において、前記有機溶媒溶液(S)と水溶液(W)とは、二重管マイクロノズル流路により供給することが好ましい。
前記油溶性低ブロック共重合体(A)は、たとえば、1種または2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと1種または2種以上の親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる、油溶性のジまたはトリブロック共重合体(A)であり、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックは、たとえば、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロックを含むものである。
【0020】
前記油溶性低ブロック共重合体(A)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~3.00の範囲にあるものが好ましい。
【0021】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A0)または脂肪族ポリエステル樹脂(A1)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあるものが好ましい。
【0022】
前記親水性高分子(A2)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあるものが好ましい。
【0023】
また、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A0)または脂肪族ポリエステル樹脂(A1)としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
【0024】
前記親水性高分子(A2)としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の親水性高分子が好ましい。
【0025】
前記油溶性低ブロック共重合体(A)の構成比率は、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(A2)由来のブロックの重合度が0.1~100部となる範囲が好ましい。
【0026】
油溶性低ブロック共重合体(A)のHLB値は、0.4以上10以下が好ましい。
一方、前記界面活性剤(SF)としては、非イオン界面活性剤が好ましく、特に、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックと親水性高分子(B2)由来のブロックとからなる水溶性低ブロック共重合体(B)が好ましい。
【0027】
前記水溶性低ブロック共重合体(B)は、たとえば、1種または2種以上の脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックと1種または2種以上の親水性高分子(B2)由来のブロックとからなる、水溶性のジまたはトリブロック共重合体(B)であり、前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックは、たとえば、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロックを含むものである。
【0028】
前記水溶性低ブロック共重合体(B)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが500~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが500~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあるものが好ましい。
【0029】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあるものが好ましい。
【0030】
前記親水性高分子(B2)としては、GPCで測定した数平均分子量Mnが100~200,000の範囲にあり、重量平均分子量Mwが100~200,000の範囲にあり、かつ分子量分布Mw/Mnが1.00~2.00の範囲にあるものが好ましい。
【0031】
また、前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸およびポリブチレンサクシネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
【0032】
前記親水性高分子(B2)としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性高分子が好ましい。
【0033】
前記水溶性低ブロック共重合体(B)の構成比率は、前記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックの重合度100部に対して親水性高分子(B2)由来のブロックの重合度が100~100,000部となる範囲が好ましい。
【0034】
前記水溶性低ブロック共重合体(B)のHLB値は、8以上20未満が好ましい。
前記有機溶媒(S1)としては、油溶性低ブロック共重合体(A)または脂肪族ポリエステル樹脂(A0)を溶解するエステル、エーテル、ケトン、芳香族化合物、アルコール、ハロゲン化炭化水素および炭酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒が好ましい。
【0035】
前記有機溶媒溶液(S)の粘度(ηs)と外相である水溶液(W)の粘度(ηw)の比(ηr=ηs/ηw)は、たとえば50~50,000であることが好ましい。
上記のナノ繊維の製造法は、さらに、前記工程(2)により形成された繊維を、非延伸下または延伸下に巻き取る巻き取り工程(3)を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明のナノ繊維の製造方法は、常温で、高い電圧場や延伸操作を必要とせずに実施することができる、従来のES法とは大きく異なる新規の製造方法であり、紡糸された(不織布状態でない)ナノ繊維を効率的に製造できるようになる。また、内外相の流速によってナノ繊維の断面径を制御することが可能であり、所望の繊維幅を有するナノ繊維の製造が容易になる。このような本発明のナノ繊維の製造方法は、PEG鎖のような親水性高分子に由来するブロックを有する(したがって得られる繊維の表面はそのような親水性高分子で修飾されたものとなる)ポリ乳酸系樹脂からなるナノ繊維のみならず、内相用の有機溶媒に溶解するその他の樹脂からなるナノ繊維の製造に応用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】[a]本発明(実施例)で用いられる、シリンジ2を備えた二重管型マイクロノズル装置1の概略図。枠線部:内管120から押し出された有機溶媒溶液(S)21の有機溶媒(S1)20は水溶液(W)10中で拡散し、それが除去されることで析出した油溶性低ブロック共重合体(A)22同士が凝集してナノ繊維30を形成する。[b]当該装置の二重管マイクロノズル100の開口部の拡大平面図。
【図2】実施例で製造されたナノ繊維のSEM画像(A:外相流速4,000 μL/min、内相流速5 μL/min)。
【図3】実施例で製造されたナノ繊維のSEM画像(B:外相流速7,000 μL/min、内相流速5 μL/min)。
【図4】実施例で製造されたナノ繊維のSEM画像(C:外相流速10,000 μL/min、内相流速5 μL/min)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
- 油溶性低ブロック共重合体(A) -
本発明では、ナノ繊維の製造原料として、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロック(構成単位)および親水性高分子(A2)由来のブロックからなる油溶性低ブロック共重合体(A)を用いる。上記脂肪族ポリエステル樹脂(A1)に由来するブロックは疎水性の部位となり、上記親水性高分子(A2)に由来するブロックは文字通り親水性の部位となるが、これらのブロックが連結した形態の油溶性低ブロック共重合体(A)は全体的には油溶性になっていて有機溶媒(S1)に可溶である。このような油溶性低ブロック共重合体(A)は、本発明のナノ繊維を構成するものであり、その製造方法において有機溶媒溶液(S)中に溶存している。

【0039】
本発明における「低ブロック共重合体」(油溶性低ブロック共重合体(A)および水溶性低ブロック共重合体(B)の両方が含まれる)は、脂肪族ポリエステル樹脂由来の1種または2種以上のブロックと親水性高分子由来の1種または2種以上のブロックとからなる、数種類のブロックからなる共重合体、たとえばジまたはトリブロック共重合体をいう。下記式で表されるジブロック共重合体は、本発明における代表的な低ブロック共重合体である。このような低ブロック共重合体における脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロックと親水性高分子由来のブロックの配置は、後述する本発明のナノ繊維の製造方法において紡糸性等に悪影響を及ぼすことなく使用できる限り任意であるが、一般的には、低ブロック共重合体の一方の側を脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロックのみが占め、もう一方の側を親水性高分子由来のブロックのみが占めるようにする。

【0040】
【化1】
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なお、本発明において、「脂肪族ポリエステル樹脂由来のブロック」および「親水性高分子由来のブロック」は、前者の樹脂に由来する疎水性の部位(ユニット)および後者の樹脂に由来する親水性の部位(ユニット)が、低ブロック共重合体中にブロック状に存在させるためのものであればよい。すなわち、本発明には、脂肪族ポリエステル樹脂および親水性高分子が、それぞれ1種の単量体から合成される単独重合体であり、それらが連結して狭義のブロック共重合体としての低ブロック共重合体を形成する態様が含まれる。しかしながら、本発明には、脂肪族ポリエステル樹脂および親水性高分子の少なくとも一方が、2種以上の単量体ないしプレポリマーから合成されるランダム共重合体(たとえばプレポリマーであるポリ乳酸およびポリグリコール酸から合成されるランダム共重合体)であり、それらが連結して広義のブロック共重合体としての低ブロック共重合体を形成する態様も含まれる。

【0041】
油溶性低ブロック共重合体(A)の、GPCで測定した数平均分子量Mnは500~200,000が好ましく、重量平均分子量Mwは500~200,000が好ましく、分子量分布Mw/Mnは1.00~3.00が好ましい。

【0042】
ナノ繊維の製造原料として用いる油溶性低ブロック共重合体(A)は、1種単独の上記のような低ブロック共重合体からなるものであっても、2種以上の上記のような低ブロック共重合体の混合物であってもよい。

【0043】
なお、本発明における、「油溶性」低ブロック共重合体(A)および「水溶性」低ブロック共重合体(B)は、少なくとも、それぞれ選択された油相(有機溶媒)または水相に溶解しうるものであればよく、「油溶性」低ブロック共重合体(A)が水に多少溶解すること、逆に「水溶性」低ブロック共重合体(B)が有機溶媒に多少溶解することも妨げられるものではない。

【0044】
・脂肪族ポリエステル樹脂(A1)ブロック
油溶性低ブロック共重合体(A)の一部のブロックを構成する脂肪族ポリエステル樹脂(A1)としては、公知の各種の脂肪族ポリエステル樹脂を用いることができる。油溶性低ブロック共重合体(A)は、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックとして、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)に由来する1種類のブロックのみを含むものであってもよいし、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)に由来する2種類以上のブロックを含むものであってもよい。

【0045】
脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックは、たとえば、構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6であるもの、なかでも生分解性ポリマーとして周知慣用のポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸、ポリブチレンサクシネートなどに由来するブロックを含むないしそれらのみからなるものであることが好適である。これらの樹脂は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0046】
炭素原子数が2~6のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸、あるいはこれらと共重合するジアルコールは、脂肪族ポリエステル樹脂の製造原料として用いることができるものであれば特に限定されるものではない。たとえば、炭素原子数が2~6のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸(C2)、乳酸(C3)、3-ヒドロキシ酪酸(C4)、4-ヒドロキシ酪酸(C4)、4-ヒドロキシ吉草酸(C5)、5-ヒドロキシ吉草酸(C5)、6-ヒドロキシカプロン酸(C6)などが挙げられる。なお、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が不斉炭素を有する場合、L体、D体、およびその混合物(ラセミ体)のいずれであってもよい。炭素原子数が2~のジカルボン酸としては、シュウ酸(C2)、マロン酸(C3)、コハク酸(C4)、グルタル酸(C5)、アジピン酸(C6)などが挙げられる。ジアルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0047】
また、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸のホモポリマー(たとえばポリ乳酸、ポリグリコール酸)およびコポリマー(たとえば乳酸とグリコール酸とのコポリマー);脂肪族ジアルコールと脂肪族ジカルボン酸とのコポリマー(たとえばポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ブタンジオールとコハク酸およびアジピン酸とのコポリマー、エチレングリコールおよびブタンジオールとコハク酸とのコポリマー);脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族ジアルコールおよび/または脂肪族ジカルボン酸とのコポリマー(たとえばポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとのブロックコポリマー)のいずれを用いてもよい。

【0048】
脂肪族ポリエステル樹脂(A1)のGPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましい。重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましい。分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。なお、上記規定における脂肪族ポリエステル樹脂(A1)は、油溶性低ブロック共重合体(A)中に複数の種類の脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックが存在する場合は、それらが連結された疎水性部分を構成するブロック共重合体を指すものとする。

【0049】
・親水性高分子(A2)ブロック
油溶性低ブロック共重合体(A)の一部のブロックを構成する親水性高分子(A2)としては、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)ブロックと結合しうる各種の親水性高分子を用いることができる。油溶性低ブロック共重合体(A)は、親水性高分子(A2)由来のブロックとして、親水性高分子(A2)に由来する1種類のブロックのみを含むものであってもよいし、親水性高分子(A2)に由来する2種類以上のブロックを含むものであってもよい。

【0050】
親水性高分子(A2)としては、たとえば、ポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール:PEG)、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの親水性高分子は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0051】
親水性高分子(A2)のGPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましい。重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましい。分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。なお、上記規定における親水性高分子(A2)は、油溶性低ブロック共重合体(A)中に複数の種類の親水性高分子(A2)由来のブロックが存在する場合は、それらが連結された親水性部分を構成するブロック共重合体を指すものとする。

【0052】
・HLB値
脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックのような疎水性の部位と、親水性高分子(A2)由来のブロックのような親水性の部位とを有する油溶性低ブロック共重合体(A)の油溶性の度合いは、HLB値によって表すことができる。なお、本発明では、HLB値は下記式で表されるグリフィン法により定義することとする。下記式からわかるように、HLB値が0に近いほど油溶性(疎水性)の度合いが高く、逆にHLB値が20に近いほど水溶性(親水性)の度合いが高い。
HLB=20×(親水性高分子のMn)/(低ブロック共重合体のMn)
本発明における油溶性低ブロック共重合体(A)は、本発明のナノ繊維の製造方法において油相を形成する有機溶媒に溶解し、本発明のナノ繊維を形成できるようであれば、そのHLB値(油溶性)は適宜調整することができるが、HLB値は通常0.4以上10以下、好ましくは0.4以上3以下である。

【0053】
・調製方法
脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる油溶性低ブロック共重合体(A)は、公知の方法に従って合成することができる。典型的には、末端に脂肪族ポリエステル樹脂(A1)からなるブロックを導入するための官能基(たとえば水酸基)を備えた親水性高分子(A2)をあらかじめ調製しておき、ついで、当該官能基を基点とする脂肪族ポリエステル樹脂(A1)の重合反応を進行させることにより、上記のような油溶性低ブロック共重合体(A)を合成することができる。この際の合成条件は、得られる油溶性低ブロック共重合体(A)が適切な数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwおよび分子量分布Mw/MnならびにHLB値を有するものとなるよう、好ましくはそれぞれ前述のような所定の範囲のものとなるよう、適切に調整することができる。

【0054】
たとえば、HLB値は、油溶性低ブロック共重合体(A)中の、疎水性の部分である脂肪族ポリエステル樹脂(A1)ブロックの分子鎖の長さと、親水性の部分である親水性高分子(A2)ブロックの分子鎖の長さの割合によって調整することができる。一般的に、親水性高分子(A2)ブロックの分子鎖を短くする、すなわち、油溶性低ブロック共重合体(A)を合成する際の、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)のMnに対する親水性高分子(A2)のMnの比率を比較的小さくすることにより、油溶性低ブロック共重合体(A)のHLB値は低くなる。より具体的には、たとえば、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックの重合度100部に対して、親水性高分子(A2)由来のブロックの重合度が0.1~100部の割合となる範囲で調整することにより、HLB値が0.4以上10以下の溶性低ブロック共重合体(A)を調製することができる。

【0055】
- 脂肪族ポリエステル樹脂(A0) -
本発明(特に本発明のナノ繊維の製造方法)では、ナノ繊維の製造原料として、上述のような脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックおよび親水性高分子(A2)由来のブロックからなる油溶性低ブロック共重合体(A)の代わりに、脂肪族ポリエステル樹脂(A0)を用いることもできる。この脂肪族ポリエステル樹脂(A0)は、本発明のナノ繊維の製造方法で用いられる有機溶媒に可溶であり油相を構成することができるものであれば、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)と同様の脂肪族ポリエステル樹脂、たとえば構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6であるものを用いることもできるし、それ以外の公知の各種の脂肪族ポリエステル樹脂を用いることもできる。また、脂肪族ポリエステル樹脂(A0)は、1種の単量体から合成される重合体であってもよいし、2種以上の単量体から合成される重合体であってもよい。すなわち、脂肪族ポリエステル樹脂(A0)は、単独重合体であってもよいし、ランダム重合体であってもよいし、単独重合体同士、ランダム共重合体同士、もしくは単独重合体とランダム共重合体とが連結した形態の狭義ないし広義のブロック共重合体であってもよい。

【0056】
このような脂肪族ポリエステル樹脂(A0)としては、たとえば、油溶性低ブロック共重合体(A)の合成に用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A1)と同様、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸、ポリブチレンサクシネートなどが好適である(つまり、これらの脂肪族ポリエステル樹脂を、低ブロック共重合体の合成に供するのではなく、そのまま用いる)。これらの樹脂は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0057】
また、脂肪族ポリエステル樹脂(A0)は、油溶性低ブロック共重合体(A)の合成に用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A1)と同様、GPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましく、重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましく、分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0058】
- 水溶性低ブロック共重合体(B) -
本発明のナノ繊維の製造方法では、水相に添加する界面活性剤(乳化剤)として、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックおよび親水性高分子(B2)由来のブロックからなる水溶性低ブロック共重合体(B)を用いることが望ましい。上記脂肪族ポリエステル樹脂(B1)に由来するブロックは疎水性の部位となり、上記親水性高分子(B2)に由来するブロックは文字通り親水性の部位となるが、これらのブロックが連結した形態の水溶性低ブロック共重合体(B)は全体的には水溶性になっていて水(ないし水性溶媒)に可溶である。このような水溶性低ブロック共重合体(B)は、本発明のナノ繊維の製造方法において界面活性剤(SF)として水溶液(W)中に溶存し、油溶性低ブロック共重合体(A)が溶解した有機溶媒溶液(S)が当該水溶液(W)中に押し出されてきた際に、界面張力を下げる効果をもたらす。

【0059】
水溶性低ブロック共重合体(B)の、GPCで測定した数平均分子量Mnは500~200,000が好ましく、重量平均分子量Mwは500~200,000が好ましく、分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0060】
なお、界面活性剤(SF)として用いる水溶性低ブロック共重合体(B)は、1種単独の上記のような低ブロック共重合体からなるものであっても、2種以上の上記のような低ブロック共重合体の混合物であってもよい。

【0061】
・脂肪族ポリエステル樹脂(B1)ブロック
水溶性低ブロック共重合体(B)の一部のブロックを構成する脂肪族ポリエステル樹脂(B1)については、前述した油溶性低ブロック共重合体(A)の調製のために用いられる脂肪族ポリエステル樹脂(A1)もしくは(A0)と同様のことが適用できるため、ここでの重複した説明は省略する。主要な点のみを記載すれば、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)としても、たとえば、一般的な生分解性樹脂であるポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロン酸、ポリブチレンサクシネートなどが好適である。また、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)の、GPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましく、重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましく、分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0062】
なお、界面活性剤(SF)として用いられる水溶性低ブロック共重合体(B)を調製するための脂肪族ポリエステル樹脂(B1)と、脂肪族ポリエステル樹脂(A0)あるいはナノ繊維を構成する油溶性低ブロック共重合体(A)を調製するための脂肪族ポリエステル樹脂(A1)とが同一であることは必要とされず、異なるものであってもよい。

【0063】
・親水性高分子(B2)ブロック
水溶性低ブロック共重合体(B)の一部のブロックを構成する親水性高分子(B2)については、前述した油溶性低ブロック共重合体(A)の調製のために用いられる水溶性高分子(A2)と同様のことが適用できるため、ここでの重複した説明は省略する。主要な点のみ記載すれば、親水性高分子(B2)としても、たとえば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル共重合体の部分加水分解物、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアスパラギン酸、多糖類、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、およびこれらの誘導体などが好適である。また、親水性高分子(B2)の、GPCで測定した数平均分子量Mnは100~200,000が好ましいく、重量平均分子量Mwは100~200,000が好ましく、分子量分布Mw/Mnは1.00~2.00が好ましい。

【0064】
なお、界面活性剤として用いられる水溶性低ブロック共重合体(B)を調製するための水溶性高分子(B2)と、ナノ繊維を構成する油溶性低ブロック共重合体(A)を調製するための水溶性高分子(A2)が同一であることは必要とされず、異なるものであってもよい。

【0065】
・HLB値
脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックのような疎水性の部分と、親水性高分子(B2)由来のブロックのような親水性の部位とを有する水溶性低ブロック共重合体(B)の水溶性の度合いも、前述した油溶性低ブロック共重合体(A)の油溶性の度合いと同様、特にグリフィン法により定義された、HLB値によって表すことができる。

【0066】
本発明における水溶性低ブロック共重合体(B)は、本発明のナノ繊維の製造方法において水相を形成する水に溶解し、界面活性剤として所定の機能を発揮できるようであれば、そのHLB値(水溶性)は適宜調整することができるが、HLB値は通常8以上20未満、好ましくは15以上20未満である。

【0067】
・調製方法
脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックと親水性高分子(B2)由来のブロックとからなる水溶性低ブロック共重合体(B)も、公知の方法に従って合成することができ、その調製方法には前述した油溶性低ブロック共重合体(A)と同様のことが適用できるため、ここでの重複した説明は省略する。主要な点のみを記載すれば、一般的に、親水性高分子(B2)ブロックの分子鎖を長くする、たとえば、水溶性低ブロック共重合体(B)を合成する際の、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)のMnに対する親水性高分子(B2)のMnの比率を比較的大きくすることにより、水溶性低ブロック共重合体(B)のHLB値は高くなる。より具体的には、たとえば、脂肪族ポリエステル樹脂(B1)由来のブロックの重合度100部に対して、親水性高分子(B2)由来のブロックの重合度が100~100,000部の割合となる範囲で調整することにより、HLB値が8以上20未満の水溶性低ブロック共重合体(B)を調製することができる。

【0068】
- ナノ繊維-
本発明のナノ繊維(特に本発明のナノ繊維の製造方法により得られるもの)は、脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる油溶性低ブロック共重合体(A)から構成され、繊維の平均断面径がナノサイズであるものである。

【0069】
・断面径
本発明のナノ繊維の断面径(繊維幅)は、ナノサイズ、つまりだいたいが1μm未満であれば特に限定されるものではなく、用途に応じて調整することができる。特に本発明では、後述するような本発明の製造方法、とりわけ二重管マイクロノズル流路を使用してナノ繊維を製造することができるため、ナノ繊維の平均断面径は、通常は50~1000nmの範囲で調整することができ、好ましくは100~500nmの範囲で調整することができる。このような平均断面径の条件を満たすナノ繊維を製造するためには、特に後述するような二重管マイクロノズル流路を使用することが望ましく、たとえば、内外相の流速および流速比を変化させることにより、ナノ繊維の平均断面径を上記の範囲で調節することができる。

【0070】
なお、ここでいう平均断面径は、断面径の数平均値のことであり、たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて所定の数(たとえば50本)のナノ繊維を観察することにより算出することができる。

【0071】
- ナノ繊維の製造方法 -
本発明のナノ繊維の製造方法は、以下に説明するような工程(1):押出工程、および工程(2):紡糸工程を含むものであり、必要に応じて工程(3):巻き取り工程やその他の工程をさらに含んでいてもよい。なお、これらの工程(1)~(3)は、通常は連続的に同時進行で行われるものである。また、以下の説明における油溶性低ブロック共重合体(A)および水溶性低ブロック共重合体(B)は、前述した通りのものである。

【0072】
・装置
本発明のナノ繊維の製造方法における押し出しや巻き取りなどの操作は、従来の湿式二重紡糸法に用いられる装置、たとえば前掲の特許文献1に記載された、繊維幅がナノサイズではない中空糸の製造方法に用いられるような二重湿式紡糸装置を、必要に応じて本発明のナノ繊維の製造により適合するよう改変したものを用いて行うことができる。

【0073】
特に、本発明のナノ繊維の製造方法は、有機溶媒溶液(S)と水溶液(W)とを供給する二重管マイクロノズル流路を備えた「二重管マイクロノズル装置」を使用して行うことが望ましい(図1参照)。この装置には、それぞれ有機溶媒溶液(S)および水溶液(W)を収容した2本のシリンジ(ないし類似の手段)が流路を介して連結されており、二重管ノズルの内管から有機溶媒溶液(S)を、外管から水溶液(W)を、それぞれ所定の速度で押し出すようにする。内管径および外管径は、製造しようとするナノ繊維の繊維幅や有機溶媒溶液(S)の性状などに応じて調整することができるが、内管径は通常50~300μmであり、外管径は通常200~2000μmである。

【0074】
・内相および外相
本発明の製造方法では、油溶性低ブロック共重合体(A)が溶解した有機溶媒溶液(S)をいわゆる油相として、また界面活性剤が溶解した水溶液(W)をいわゆる水相として用いる。以下に説明する二重管型マイクロノズル装置において、有機溶媒溶液(S)は内側の円管(内相)に流し、一方の水溶液(W)は外側の円管(外相)に流す。

【0075】
水溶液(W)に溶解させる界面活性剤(SF)は、有機溶媒溶液(S)中の有機溶媒(S1)が水溶液(W)中に拡散または抽出されることを補助するための添加剤である。本発明における界面活性剤(SF)としては、そのような機能を有する公知の各種の界面活性剤から選択されたものを用いることができるが、非イオン界面活性剤、特に水溶性低ブロック共重合体(B)またはそれに類似した化学的構造を有する(ポリアルキレンオキシド鎖を有する)界面活性剤を用いることが好適である。

【0076】
油溶性低ブロック共重合体(A)または脂肪族ポリエステル樹脂(A0)が溶解した有機溶媒溶液(S)を構成する有機溶媒としては、エステル(酢酸エチルなど)、エーテル、ケトン、芳香族化合物(ベンゼン,キシレンなど)、アルコール、ハロゲン化炭化水素および炭酸エステルなどの中から選択された適切なものを用いることができる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を組み合わせて混合有機溶媒にして用いてもよい。油溶性低ブロック共重合体(A)または脂肪族ポリエステル樹脂(A0)の溶解性がよく、さらに水相中に押し出されたときに水溶液(W)に添加される界面活性剤(SF)、特に水溶性低ブロック共重合体(B)の働きにより良好に拡散または抽出される有機溶媒が好ましい。

【0077】
一方、界面活性剤、特に水溶性低ブロック共重合体(B)が溶解した水溶液(W)を構成する溶媒としては、基本的に水のみが用いられ、必要であれば水と相溶性の高い他の溶媒を組み合わせて用いてもよい。

【0078】
有機溶媒溶液(S)および水溶液(W)は、本発明の製造方法に供する前に、上記の所定の溶媒および成分を常法に従って混合して調製しておけばよい。また、油溶性低ブロック共重合体(A)および水溶性低ブロック共重合体(B)も、前述したような方法によりあらかじめ合成しておけばよい。

【0079】
有機溶媒溶液(S)中の油溶性低ブロック共重合体(A)または脂肪族ポリエステル樹脂(A0)の濃度は、有機溶媒(S1)に対する溶解度や得ようとするナノ繊維の性状、本発明の製造方法における紡糸性などを考慮しながら調整することができるが、通常5~30重量%、好ましくは7~20重量%の範囲で調整すればよい。

【0080】
一方、水溶液(W)中の界面活性剤(SF)、特に水溶性低ブロック共重合体(B)の濃度は、前述したような界面活性剤としての所定の機能を果たすことができる範囲で調整することができるが、通常0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%の範囲で調整すればよい。

【0081】
さらに、内相である有機溶媒溶液(S)の粘度(ηs)と外相である水溶液(W)の粘度(ηw)の比(ηr=ηs/ηw)を適切な範囲、たとえば50以上に調整することが好ましい。水溶液(W)の粘度は水の粘度以下には下げにくいので、通常は有機溶媒溶液(S)の粘度により上記の比(ηr)を調整するようにする。上記の比(ηr)の上限は、紡糸性などを考慮して設定することができるが、たとえば50,000とすることができる。

【0082】
<工程(1):押出工程>
本発明の製造方法における工程(1):押出工程は、脂肪族ポリエステル樹脂(A0)、または構成成分のヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸の炭素原子数が2~6である脂肪族ポリエステル樹脂(A1)由来のブロックと親水性高分子(A2)由来のブロックとからなる油溶性低ブロック共重合体(A)と、有機溶媒(S1)とを含む有機溶媒溶液(S)を、界面活性剤(SF)と水(S2)とを含む水溶液(W)中に線状に押し出す工程である。

【0083】
この押出工程において、有機溶媒溶液(S)および水溶液(W)を押し出す速度(流速)およびその速度の比率(流速比)を変化させることにより、得られるナノ繊維の断面径を調整することができる。通常は、水溶液(W)の速度の方が有機溶媒溶液(S)の速度よりも速くなるよう設定され、一般的に、後者の速度に対する前者の速度の比率を高める(相対的に水溶液(W)の速度を速くする)と、次の紡糸工程で説明する有機溶媒(S1)の拡散または抽出の速度も速くなり、得られるナノ繊維の断面径は細くなる傾向にある。有機溶媒溶液(S)および水溶液(W)を押し出す速度(流速)およびその速度の比率(流速比)は、この工程に用いる装置に応じて適切な範囲で調整され、特に限定されるものではない。たとえば、後述するような二重管型マイクロノズル装置を用いる場合は、内相である有機溶媒溶液(S)の流速は、通常1~50μL/分、好ましくは1~10μL/分;外相である水溶液(W)の流速は、通常1000~20000μL/分、好ましくは4000~10000μL/分;後者の前者に対する比率は、通常100~20000、好ましくは1000~2000の範囲で調整される。

【0084】
<工程(2):紡糸工程>
本発明の製造方法における工程(2):紡糸工程は、前記工程(1)で線状に押し出された有機溶媒溶液(S)を引き取るとともに、当該有機溶媒溶液(S)中の有機溶媒(S1)を水溶液(W)中に拡散または抽出させることにより、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A0)または油溶性低ブロック共重合体(A)からなる繊維を形成させる工程である。なお、「拡散」は、主に水溶液(W)に対する有機溶媒(S1)の飽和溶解度に達するまで、有機溶媒(S1)が内相である有機溶媒溶液(S)から外相の水溶液(W)へ移行することを指し、「抽出」は、主に界面活性剤、特に水溶性低ブロック共重合体(B)の働きにより上述の水溶液(W)に対する有機溶媒(S1)の飽和溶解度を上昇させて、より多くの有機溶媒(S1)を水溶液(W)中へ移行させることをいう。本発明では拡散の作用が主体的であると考えられるが、拡散および抽出の両方の作用が同時に起きていてもよく、界面活性剤(SF)はどちらの作用にも寄与しうる。

【0085】
有機溶媒溶液(S)中の有機溶媒(S1)が水溶液(W)中に拡散または抽出されるにつれて、有機溶媒溶液(S)に溶解していた脂肪族ポリエステル樹脂(A0)または油溶性低ブロック共重合体(A)が析出して樹脂化し、これらの樹脂からなる繊維が形成される。前記工程(1)で線状に押し出された有機溶媒溶液(S)ないし初期に形成された繊維を引き取ることにより、このような繊維化を連続的に進行させることができる。この工程における引き取り(実際上、次の工程(3)における「巻き取り」によって行うことができる)の操作は、公知の湿式紡糸法で用いられているような手法に準じて、適切な手法およびそのための装置ないし器具を用いて行えばよい。

【0086】
<工程(3):巻き取り工程>
本発明の製造方法において、任意で設けてもよい工程(3):巻き取り工程は、上記工程(2)により形成された繊維を、非延伸下または延伸下に巻き取る工程である。用途を考慮したときにナノ繊維を巻き取った方が好都合であれば、このような巻き取り工程を設ければよい。

【0087】
本発明の製造方法では、延伸しなくてもナノサイズの繊維幅を有するナノ繊維を製造することができるため、この工程において延伸しながら巻き取る必要はないが、所望であれば延伸しながら巻き取るようにしてもよい。上記工程(1)における水溶液(W)の押出速度(流速)よりも速い速度で繊維を巻き取ることにより、その繊維を延伸することができる。この工程における巻き取りの操作は、公知の湿式紡糸法で用いられているような手法に準じて、適切な手法およびそのための装置ないし器具を用いて行えばよい。

【0088】
- ナノ繊維の用途 -
本発明のナノ繊維は、生分解性樹脂(脂肪族ポリエステル樹脂)で形成され、またナノオーダーの繊維幅を有するという特性を活用することができる、多様な用途を有する。そのようなナノ繊維の用途としては、たとえば、再生医療,細胞培養担体,生体埋め込み材料,DDS,縫合糸,人工血管,濾過・フィルター,繊維,塗布剤,衣料,繊維強化プラスチック,電池材料・セパレータなどが挙げられる。代表的には、本発明のナノ繊維は、その表面にPEG鎖を呈示したポリ乳酸系樹脂で形成された、生体適合性に優れた繊維であるため、細胞培養・増殖用スカフォールド(細胞培養担体)のような医用材料として用いることが好適である。
【実施例】
【0089】
[1]油溶性ジブロック共重合体(A)の合成
MeO-PEG(Mw = 4,600, Mw/Mn = 1.06)を開始剤とするD,L-lactideの開環重合にてジブロック共重合体(PEG-PLA)の合成を行った。この際、MeO-PEG濃度を15 mol%として、仕込み量10 gのスケールで重合を行った。重合の触媒としてはTin (II) 2-ethylhexanoate / toluene(濃度0.4 g/ 5 mL)溶液を50 μL用いた。重合は、オイルバス中で130℃、24時間行った。得られた生成物はクロロホルムに溶解させ、ヘキサンに再沈殿させることで触媒を生成物から除去した。また、2-プロパノールに再沈殿させることで、未反応モノマーを除去し、その後、遠心分離(15,000 rpm, 5 min)によって生成物を回収した。回収後の生成物を1晩減圧乾燥させることで、油溶性ジブロック共重合体(Mw = 100,000 (PEG 4,600+PLA 95,400), Mw/Mn = 1.60, HLB = 0.92)を得た。収率は68.9 wt%であった。
【実施例】
【0090】
[2]水溶性ジブロック共重合体(B)の合成
MeO-PEG(Mw = 4,600, Mw/Mn = 1.06)を開始剤とするD,L-lactideの開環重合にてジブロック共重合体(PEG-PLA)の合成を行った。この際、MeO-PEG濃度を15 mol%として、仕込み量10 gのスケールで重合を行った。重合の触媒としてはTin (II) 2-ethylhexanoate / toluene(濃度0.4 g/ 5 mL)溶液を50 μL用いた。重合は、オイルバス中で130℃、24時間行った。得られた生成物はクロロホルムに溶解させ、ヘキサンに再沈殿させることで触媒を生成物から除去した。また、2-プロパノールに再沈殿させることで、未反応モノマーを除去し、その後、遠心分離(15,000 rpm, 5 min)によって生成物を回収した。回収後の生成物を1晩減圧乾燥させることで、水溶性ジブロック共重合体(Mw = 5,700 (PEG 4,600+PLA 1,100), Mw/Mn = 1.05, HLB = 18.2)を得た。収率は73.3 wt%であった。
【実施例】
【0091】
[3]ナノファイバーの製造
1)上記[1]で合成した油溶性ジブロック共重合体を0.2 gサンプル瓶に量りとった。2)サンプル瓶へoil blue Nを0.03 g加え、酢酸エチルを加えて全体で2 gとした(油溶性ジブロック共重合体の濃度は10 wt%である)。
3)その溶液へアセトンを1 g加え、スターラーで撹拌して、これを内相である有機溶媒溶液(S)として用いた。この有機溶媒溶液(S)の粘度は140mPa・sであった。4)上記[2]で合成した水溶性ジブロック共重合体を1.0 gサンプル瓶に量りとり、超純水を加えて50 gとした(水溶性ジブロック共重合体の濃度は2 wt%である)。これを外相である水溶液(W)として用いた。この水溶液(W)の粘度は1.6mPa・sであった。
5)二重管マイクロノズル装置(図1参照、内相のマイクロ流路の幅(内管径)は130μm、外相のマイクロ流路の幅(外管径)は200μm)において、上記の有機溶媒相(S)を外相として、水溶液(W)を内相としてそれぞれシリンジポンプで送流し、得られるジェットおよびファイバーを観察した。下記A~Cに示す3通りの組みあわせで、外相および内相の流速を変化させた。それぞれの場合に得られたナノ繊維のSEM写真を図2~4に示す。得られたファイバーは200~500 nmほどの径を有するものであった。
A:外相流速4,000 μL/min、内相流速5 μL/min
B:外相流速7,000 μL/min、内相流速5 μL/min
C:外相流速10,000 μL/min、内相流速5 μL/min
【符号の説明】
【0092】
1:二重管型マイクロノズル装置
2:シリンジ
10:水溶液(W)
20:有機溶媒溶液(S)
21:有機溶媒(S1)
22:油溶性低ブロック共重合体(A)
30:ナノ繊維
100:二重管マイクロノズル
110:外管
120:内管
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3