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明細書 :蛍光標識ペプチド化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-027961 (P2015-027961A)
公開日 平成27年2月12日(2015.2.12)
発明の名称または考案の名称 蛍光標識ペプチド化合物
国際特許分類 C07K  14/38        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C07K   7/08        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/533       (2006.01)
G01N  33/566       (2006.01)
FI C07K 14/38 ZNA
C07K 7/06
C07K 7/08
G01N 33/53 W
G01N 33/533
G01N 33/566
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2013-157759 (P2013-157759)
出願日 平成25年7月30日(2013.7.30)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 陽
【氏名】蝦名 敬一
出願人 【識別番号】500132214
【氏名又は名称】学校法人明星学苑
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA50
4H045CA15
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA20
4H045GA21
4H045GA31
要約 【課題】酸化LDL認識能がさらに向上した酸化LDL認識ペプチドを提供する。
【解決手段】(a)特定のアミノ酸配列の2位Lysから、C末端が第16位Aspから第29位Lysのいずれかまで、または(b)特定のアミノ酸配列の第10位Lysから、C末端が第16位Aspから第29位Lysのいずれかまで、からなる酸化LDL認識ペプチドの第1位Lysのε-アミノ基に蛍光物質が結合されており、非酸化LDLに対してよりも酸化LDLに対して10倍以上強く結合することを特徴とする蛍光標識ペプチド化合物。蛍光物質がフルオレセインイソチオシアネートであり、6-アミノカプロン酸からなるリンカー物質を介して、酸化LDL認識ペプチドに結合している。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
以下のアミノ酸配列:
(a)配列番号1の第2位Lysから、C末端が第16位Aspから第29位Lysのいずれかまで、または
(b)配列番号1の第10位Lysから、C末端が第16位Aspから第29位Lysのいずれかまで、
からなる酸化LDL認識ペプチドの第1位Lysのε-アミノ基に蛍光物質が結合されており、非酸化LDLに対してよりも酸化LDLに対して10倍以上強く結合することを特徴とする蛍光標識ペプチド化合物。
【請求項2】
酸化LDL認識ペプチドが配列番号9のアミノ酸配列からなる請求項1の蛍光標識ペプチド化合物。
【請求項3】
蛍光物質がフルオレセインイソチオシアネートである請求項1または2の蛍光標識ペプチド化合物。
【請求項4】
蛍光物質がリンカー物質を介して結合している請求項1から3のいずれかの蛍光標識ペプチド化合物。
【請求項5】
リンカー物質が6-アミノカプロン酸である請求項4の蛍光標識ペプチド化合物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の蛍光標識ペプチド化合物を有効成分して含有する酸化LDL検出試薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、動脈硬化症などの主な原因物質である酸化低密度リポタンパク質(酸化LDL)に対して高い結合能を有する蛍光標識ペプチド化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活をはじめとする生活習慣の変化や急速な人口の高齢化に伴って、動脈硬化症は増加の一途を辿っている。動脈硬化症に起因した死亡率は全体の約3割を占めており、極めて深刻な問題となっていることから、その予防・早期発見のための対策が極めて重要となる。従来の動脈硬化症の診断・治療には、各種血液成分の臨床化学的検査による間接的な診断、血液造影やX線CT(コンピュータ断層撮影)などの機器による診断、さらにはPTCA(経皮径管冠動脈拡張術)などが用いられている。しかし、これらの方法はいずれも正確性に欠けること、初期診断が不可能なこと、侵襲性が高いことなどの欠点を有しており、動脈硬化症が発見されたときには既に治療困難な場合が多い。従って、動脈硬化症の新たな診断や、動脈硬化病巣部位および動脈硬化進展度の非侵襲的な診断のための薬剤が強く望まれている。
【0003】
動脈硬化症、特にアテローム性動脈硬化症は、動脈の内側に不安定プラークと呼ばれる隆起が発生し、その破裂によって血栓が形成されると、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患を引き起こすと考えられている。この不安定プラークには酸化LDLが蓄積されており、それに伴って血液中の酸化LDL濃度が上昇することから、血液中の酸化LDL濃度を測定する技術、もしくは不安定プラークに蓄積する酸化LDLを特異的に検出する技術が開発されれば、動脈硬化症の早期診断、予防、治療、悪化・再発予防、病態解析、創薬開発などにつながり、患者の生活の質(QOL)向上や死亡率の低下につながると考えられる。
【0004】
酸化LDLの検出方法としては、酵素免疫測定法(ELISA)を用いた血中酸化LDL濃度測定法が開発され、酸化LDLおよび酸化LDLの一種であるマロンジアルデヒド(MDA)-LDLを検出するキットが市販されている。しかし、この手法は抗原抗体反応であるためその測定に時間がかかること、そのコストは極めて高価であること、またその検出感度や特異性には限界があることから(非特許文献1)、現在は体外診断用としての利用にとどまっている。
【0005】
一方、酸化LDLを認識するペプチドを動脈硬化症の診断に利用する技術が開発されている。本発明者らは、以下の条件からなる酸化LDL認識ペプチド:
(1)配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド;
(2)配列番号8のアミノ酸配列(YKDG:配列番号1の第12-15位)からなるペプチド;
(3)配列番号1におけるYKDG配列の前後少なくとも1アミノ酸を含むペプチド、
を発明し(具体的には配列番号1~8の各アミノ酸配列からなるペプチド)、そしてこれら酸化LDL認識ペプチドに標識物質を結合させて動脈硬化症の診断を行う技術を開発している(特許文献1)。さらに本発明者らは、特許文献1に開示された各種ペプチドの酸化LDL認識能(非酸化LDLと酸化LDLとに対する結合比)を詳しく報告している(非特許文献2)。また特許文献2は、酸化LDL認識ペプチドの1種であるKWYKDGDペプチド(配列番号9)のN末端K残基にベンゾイル基を用いて放射性ヨウ素を結合させた酸化LDL認識用の放射性ヨウ素標識ペプチドを開示している。
【0006】
このような酸化LDL認識ペプチドは、非侵襲的かつ安全な動脈硬化症の早期診断を可能とし、ひいては動脈硬化症の予防、治療、悪化・再発予防、病態解析、創薬開発などにも大きく寄与するものと期待されている。
【0007】
なお、本発明者らは、酸化LDL認識ペプチドのN末端をビオチニル化修飾したペプチド(ビオチニル化ペプチド化合物)が、酸化LDLおよびその主要構成脂質であるリゾホスファチジルコリン(1-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、lysophosphatidylcholine: LPC)、さらにはLPCと活性・構造の点で類似する血小板活性化因子(1-O-アルキル-2-アセチル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、platelet-activating factor: PAF)と特異的に結合することも明らかにしている(特許文献3、非特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2002-53598号公報
【特許文献2】特開2012-82166号公報
【特許文献3】特開2012-193166号公報
【0009】

【非特許文献1】長谷川ら、日本臨床、57巻12号、1999年、118-122
【非特許文献2】Kumagai, T., et al., Biol. Pharm. Bull., 28:1381-1384, 2005
【非特許文献3】Sato, A., et al., Chem. Biol. Drug Des., 80: 417-425, 2012
【非特許文献4】Sato, A., et al., Eur. J. Pharmacol., 685: 205-212, 2012
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
酸化LDL認識ペプチドを用いて動脈硬化症の診断等を行うためには、酸化LDL認識ペプチドが酸化LDLと非酸化LDLを正しく区別可能であることが前提となる。特許文献1には酸化LDL認識ペプチドの認識能が具体的に記載されていないが、非特許文献2によればペプチドP21(配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド)が最も酸化LDL認識能が高く、非酸化LDLよりも酸化LDLに対して約4倍強く結合する。
【0011】
一方、特許文献2の放射性ヨウ素標識ペプチドは、特許文献1のP21ペプチドよりも酸化LDL認識能が高く、非酸化LDLに対するよりも酸化LDLに対して約6倍強く結合することが記載されている。また、特許文献3のビオチニル化ペプチド化合物は酸化LDLの他にLPCおよびPAFとの結合能を有することが明らかになっている。従って、酸化LDL認識ペプチドを何らかの形で修飾することによって、酸化LDL認識能のさらなる向上が期待される。
【0012】
本発明は、酸化LDL認識能がさらに向上した酸化LDL認識ペプチドを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、特に酸化LDL認識ペプチドの使用時の利便性や安全性を考慮して、その修飾について鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(A)酸化LDL認識ペプチド(配列番号1~8の各アミノ酸配列からなるペプチド)のN末端に蛍光物質の一種であるフルオレセインチオイソシアネート(fluorescein isothiocyanate: FITC)を結合した場合、このFITC標識ペプチドは酸化LDLおよび非酸化LDLのいずれにも結合性を示さないこと。
(B)N末端がLys(K)である配列番号9の酸化LDL認識ペプチド(KWYKDGD)のN末端K残基のε-アミノ基にFITCを結合した場合、このFITC標識ペプチドは非酸化LDLに対してよりも酸化LDLに対して10倍以上強く結合すること。
【0014】
すなわち本発明者らは、特許文献1に開示された酸化LDL認識ペプチドのうち、そのN末端がLys(K)であるペプチドは、そのN末端K残基のε-アミノ基にFITCを結合することによって、その酸化LDL認識能が優れて高くなることを見出した。
【0015】
本発明は、以上のとおりの新規な知見に基づき、前記の課題を解決するものとして以下を提供する。
(1)以下のアミノ酸配列:
(a)配列番号1の第2位Lysから、C末端が第16位Aspから第29位Lysのいずれかまで、または
(b)配列番号1の第10位Lysから、C末端が第16位Aspから第29位Lysのいずれかまで、
からなる酸化LDL認識ペプチドの第1位Lysのε-アミノ基に蛍光物質が結合されており、非酸化LDLに対してよりも酸化LDLに対して10倍以上強く結合することを特徴とする蛍光標識ペプチド化合物。
(2)酸化LDL認識ペプチドが配列番号9のアミノ酸配列からなる前記発明(1)の蛍光標識ペプチド化合物。
(3)蛍光物質がフルオレセインイソチオシアネートである前記発明(1)または(2)の蛍光標識ペプチド化合物。
(4)蛍光物質がリンカー物質を介して結合している前記発明(1)から(3)のいずれかの蛍光標識ペプチド化合物。
(5)リンカー物質が6-アミノカプロン酸である前記発明(4)の蛍光標識ペプチド化合物。
(6)前記発明(1)から(5)のいずれかに記載の蛍光標識ペプチド化合物を有効成分して含有する酸化LDL検出試薬。
【0016】
なお、「ペプチド」とは、アミド結合(ペプチド結合)または非天然の残基連結によって互いに結合した複数個のアミノ酸残基から構成された分子を意味する。
【0017】
また「蛍光標識ペプチド」とは、FITCをはじめとする可視蛍光色素、あるいは生体分子による妨害を受けず生体透過性に優れた近赤外蛍光色素、などの各種蛍光物質がペプチドに結合した状態を言う。
【0018】
本願発明における用語や概念は、発明の実施形態の説明や実施例において詳しく規定する。また本願発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献などに基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、本願発明の薬剤(医薬組成物)の調製はRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990などに、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M., et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995などに記載されている。さらに、この発明における用語は基本的にはIUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるものであり、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
【発明の効果】
【0019】
前記発明(1)から(5)によれば、酸化LDLに対して極めて高い結合能を有する蛍光標識ペプチド化合物が提供される。具体的には、非酸化LDLと酸化LDLとに対するそれぞれの結合比が特許文献1の酸化LDL認識ペプチドが約4倍、特許文献3の放射性ヨウ素標識ペプチドが約6倍であるのに対して、発明(1)から(5)の蛍光標識ペプチド化合物は10倍以上と極めて高い。またこの蛍光標識ペプチド化合物は、例えば特許文献3の放射性ヨウ素標識ペプチドに比べて使用時の利便性や安全性に優れている。
【0020】
また、前記発明(6)によれば、血液中の酸化LDL濃度測定、さらには生体内酸化LDL特異的検出技術などに応用することにより、非侵襲的な診断法による動脈硬化症の早期診断、予防、治療、悪化・再発予防、病態解析、創薬開発などに有用な試薬が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】各実施例で使用した2種類の蛍光標識ペプチド化合物、(FITC)KP6および(FITC-AC)KP6の配列ならびに構造を示す。
【図2】実施例1において、ポリアクリルアミド電気泳動による、酸化時間の異なる酸化LDLに対する(FITC)KP6の結合性の結果を示す。(A)は非酸化LDLおよび酸化時間の異なるLDLと(FITC)KP6の結合を示したものであり、その結合体バンド領域の蛍光強度は酸化時間とともに増加している。(B)は(A)の結果をもとにして各結合体の蛍光強度を算出し、非酸化LDLと(FITC)KP6の結合体バンド領域の蛍光強度を1としたときの、各酸化時間における酸化LDLと(FITC)KP6の結合体バンド領域の蛍光強度の比を示したものである。
【図3】実施例1において、ポリアクリルアミド電気泳動による、酸化時間の異なる酸化LDLに対する(FITC-AC)KP6の結合性の結果を示す。その結合体バンド領域の蛍光強度は酸化時間とともに増加している。
【図4】実施例2において、ポリアクリルアミド電気泳動による、各用量の4時間酸化LDLに対する(FITC)KP6の結合性の結果を示す。(A)は各用量の酸化LDLと(FITC)KP6の結合を示したものであり、その結合体バンド領域の蛍光強度は酸化LDLの用量に依存して増加している。(B)は(A)の結果をもとにして各結合体バンド領域の蛍光強度を算出し、酸化LDL無添加(= 0 μg)における同領域の蛍光強度を1としたときの各用量酸化LDLと(FITC)KP6の結合体バンド領域の蛍光強度の比を示したものである。
【図5】実施例2において、ポリアクリルアミド電気泳動による、各用量の4時間酸化LDLに対する(FITC-AC)KP6の結合性の結果を示す。(A)は各用量の酸化LDLと(FITC-AC)KP6の結合を示したものであり、その結合体バンド領域の蛍光強度は酸化LDLの用量に依存して増加している。(B)は(A)の結果をもとにして各結合体バンド領域の蛍光強度を算出し、酸化LDL無添加(= 0 μg)における同領域の蛍光強度を1としたときの各用量酸化LDLと(FITC-AC)KP6の結合体バンド領域の蛍光強度の比を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明の蛍光標識ペプチド化合物に使用する酸化LDL認識ペプチドは、配列番号1におけるYKDG配列の前後少なくとも1アミノ酸を含むペプチドのうち、N末端がLys(K)であるペプチドである。配列番号1のアミノ酸配列には、その第2位と第10位にLys残基が存在し、第12位から第15位にYKDG配列が存在することから、本願発明に使用する酸化LDL認識ペプチドは、具体的には以下のアミノ酸配列からなるペプチドである。
(a)配列番号1の第2位Lysから、C末端が第16位Aspから第29位Lysのいずれかまでのペプチド。
(b)配列番号1の第10位Lysから、C末端が第16位Aspから第29位Lysのいずれかまでのペプチド。

【0023】
その一例は、配列番号9のアミノ酸配列(Lys-Trp-Tyr-Lys-Asp-Gly-Asp:配列番号1の第11位から第16位に相当)からなるペプチドである。このアミノ酸配列は、特許文献1の酸化LDL認識ペプチドP6(配列番号7:Trp-Tyr-Lys-Asp-Gly-Asp)のN末端にLys(K)が付加されたものであるから、以下この配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチドを「KP6」と記載することがある。

【0024】
これらのペプチドは、遺伝子組換え技術を用いて組換えペプチドとして調製することもできるが、好ましくは市販のペプチド合成機(例えば、Applied Biosystems A431またはA433など)を使用して化学的に合成することができる。合成は公知の方法に従って、例えばアミノ酸誘導体を用いてペプチドのC末端から実施する。アミノ酸誘導体としては、結合に必要とされるアミノ末端基がフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基で誘導体化されているものを用いることが好ましい。用いるアミノ酸の反応性側基は、ペプチド合成の完了後に容易に切断可能な保護基、例えば、トリフェニルメチル、t-ブチルエーテル、t-ブチルエステル、t-ブトキシカルボニル(Boc)または2,2,5,7,8-ペンタ-メチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)などを含むようにする。またこれらのペプチドは、20種類の天然アミノ酸に加えて、非天然のアミノ酸やアミノ酸アナログなど(例えば、Hunt, The Non-Protein Amino Acids: Chemistry and Biochemistry of the Amino Acids, Barrett, Chapman and Hall,1985を参照)を含んでいてもよい。
蛍光物質は、FITCなどの可視蛍光色素、あるいは生体分子による妨害を受けず生体透過性に優れた近赤外蛍光色素などの各種蛍光物質である。これらの蛍光物質は、公知の方法に従って、前記ペプチドのN末端Lys(K)残基のε-アミノ基に結合される。本発明に係る蛍光標識ペプチド化合物は、例えば、上述の方法により合成したペプチドに公知の方法を用いて蛍光物質を付加した後、残りの保護基を脱保護して精製することによって得ることができる。精製は、公知の方法を用いる事ができ、逆相HPLCを好ましく用いることができる。
蛍光物質は、また、リンカー物質を介してペプチドのN末端Lys(K)残基のε-アミノ基に結合させてもよい。リンカー物質としては、6-アミノカプロン酸(6-AC)の他、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、4-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸等を使用することができる。リンカー物質を介しての蛍光物質の結合は、上述の方法により合成したペプチドに公知の方法を用いて6-ACなどのリンカーならびに蛍光物質を付加した後、残りの保護基を脱保護して精製することによって得ることができる。

【0025】
以下、酸化LDL認識ペプチドKP6にFITCが結合されたペプチド化合物を「(FITC)KP6」、6-アミノカプロン酸(6-AC)を介してFITCが結合されたペプチド化合物を「(FITC-AC)KP6」と記載することがある。

【0026】
発明(6)の酸化LDL検出試薬は、前記の蛍光標識ペプチド化合物の他、例えば安定化剤、塩溶液、ブドウ糖溶液あるいはこれらの混合物からなる担体などを用いて調製することができる。また、この酸化LDL検出試薬を用いて被験者の酸化LDLを検出するには、以下の方法が例示できる。例えば、被験者より採血した血液から遠心分離して得た血漿を、本願発明の酸化LDL検出試薬と混合した後、酸化LDL-試薬複合体を電気泳動等の手法を用いて蛍光検出することにより、血液中の酸化LDL濃度を測定することが可能となる。さらには、本願発明の酸化LDL検出試薬を静脈内注射等によって被験者に投与し、不安定プラークに蓄積する酸化LDLの局在・分布を画像診断により分析することが可能となる。

【0027】
以下、実施例を示して本願発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本願発明は以下の例に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
実施例で使用した材料は以下のとおりである。
蛍光標識ペプチド化合物:
蛍光物質としてFITCを用い、酸化LDL認識ペプチドKP6のN末端Lysのε-アミノ基に直接FITCを結合したペプチド化合物(FITC)KP6、およびKP6のN末端Lysのε-アミノ基に6-アミノカプロン酸(AC)を介してFITCを結合したペプチド化合物(FITC-AC)KP6をそれぞれ合成し、純度95 %以上として精製した(高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析により確認)。図1には、(FITC)KP6および(FITC-AC)KP6の配列および構造を示した。なお、これらペプチド化合物はいずれも10 mg/mlになるように生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム溶液)または0.5%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む生理食塩水で溶解して-20℃で保存し、実験使用時には解凍して5分間の超音波破砕を行った。
LDLおよび酸化LDL:
20歳代の健常者から得た血液を用いた。具体的には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)採血にて得た血液から3,000 rpm、10分間の遠心により血漿を分離し、さらにこの血漿から臭化ナトリウムを用いた段階的浮上分画法により、16℃で100,000 rpm、2時間および3時間の計2回の超遠心を行うことにより、LDL画分(比重:1.006~1.063 g/cm3)を単離した。得られたLDLは、終濃度0.3 mM EDTAを含むpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline: PBS)中で4℃、12時間透析し、次いでEDTAを含まないpH 7.4のPBS中で4℃、24時間透析して、そのタンパク質濃度をLowry法により定量した。
【実施例】
【0029】
酸化LDLは、PBS(pH 7.4)で0.2 mg/ml濃度に溶解したLDL溶液に終濃度5 μMの硫酸銅溶液を添加して、37℃で1、2、4、8または12時間インキュベーションすることにより作成した。この反応は、終濃度0.3 mM EDTAおよび25 μMのブチルヒドロキシトルエン(BHT)の添加により停止した。LDLの酸化度はチオバルビツール酸蛍光法を用いて確認した。作成した酸化LDLは実験使用時まで4℃で保存し、1週間以内に使用した。
【実施例1】
【0030】
非酸化LDLおよび酸化時間の異なる酸化LDLに対する各種蛍光標識ペプチド化合物の結合性評価
非酸化LDLおよび酸化時間の異なる酸化LDLに対する各種蛍光標識ペプチド化合物の結合性評価は、ポリアクリルアミド電気泳動により行った。具体的には、10 mg/ml濃度の(FITC)KP6または(FITC-AC)KP6を1 μl (= 10 μg)と0.2 mg/ml濃度の非酸化LDLまたは酸化時間(1、2、4、8および12時間)の異なる0.2 mg/ml濃度の酸化LDL 16 μl(= 3.2 μg)を混合して37℃で90分間インキュベーション後、等量のNativeサンプルバッファー(Bio-Rad、161-0738)を添加し反応を停止した。その混合物は4%のポリアクリルアミドゲル(還元剤・変性剤はいずれも無添加)にて電気泳動により分離し、そのゲルをルミノイメージアナライザー(LAS-3000、GEヘルスケア社(FujiFilm))およびMulti Gauge(Version 3.1、FujiFilm)を用いて解析することにより、非酸化LDLまたは酸化LDLに対する各種ペプチド化合物の結合性を調べた。
【実施例1】
【0031】
結果は図2および図3に示したとおりであり、(FITC)KP6、(FITC-AC)KP6はいずれも酸化LDLに対する特異的結合性を示し、その結合量(結合体バンドの蛍光強度)は酸化時間とともに増加した。特に、図2に示したとおり、(FITC)KP6は非酸化LDLに対するよりも酸化LDLに対して2時間後には約10倍結合、4時間後移行は約15倍結合した。
【実施例2】
【0032】
各用量の酸化LDLに対する各種蛍光標識ペプチド化合物の結合性評価
各用量の非酸化LDLおよび酸化LDLに対する各種蛍光標識ペプチド化合物の結合性評価は、ポリアクリルアミド電気泳動により行った。具体的には、10 μgの(FITC)KP6または(FITC-AC)KP6と各用量(0、0.25、0.5、1、2および3.2 μg)の酸化LDLを混合して37℃で90分間インキュベーション後、等量のNativeサンプルバッファー(Bio-Rad、161-0738)を添加し反応を停止した。その混合物は4%のポリアクリルアミドゲル(還元剤・変性剤無添加)にて電気泳動により分離し、そのゲルをルミノイメージアナライザー(LAS-3000、GEヘルスケア社(FujiFilm))およびMulti Gauge(Version 3.1、FujiFilm)を用いて解析することにより、各用量の酸化LDLに対するペプチド化合物の結合性を評価した。
【実施例2】
【0033】
結果は図4および図5に示したとおりであり、いずれの蛍光標識ペプチド化合物も酸化LDLの用量に依存した結合性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本願発明の蛍光標識ペプチド化合物は、酸化LDLに対して極めて高い結合能を有し、利便性および安全性に優れることから、動脈硬化症の主な原因物質である酸化LDLの血中濃度測定、さらには低分子プローブとしての優位性から不安定プラークに蓄積する酸化LDLの特異的検出技術への応用、またそれによる非侵襲的かつ安全な動脈硬化症の早期診断、予防、治療、悪化・再発予防、病態解析、創薬開発などに有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4