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明細書 :加齢性白髪のモデル動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6043988号 (P6043988)
公開番号 特開2013-146243 (P2013-146243A)
登録日 平成28年11月25日(2016.11.25)
発行日 平成28年12月14日(2016.12.14)
公開日 平成25年8月1日(2013.8.1)
発明の名称または考案の名称 加齢性白髪のモデル動物
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
C07K  14/705       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
FI A01K 67/027 ZNA
C07K 14/705
C12N 15/00 A
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
G01N 33/48 N
請求項の数または発明の数 13
全頁数 17
出願番号 特願2012-010573 (P2012-010573)
出願日 平成24年1月23日(2012.1.23)
審査請求日 平成26年11月4日(2014.11.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】加藤 昌志
【氏名】飯田 真智子
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査官 【審査官】川口 裕美子
参考文献・文献 国際公開第2007/004337(WO,A1)
特開2003-189849(JP,A)
RONIT LAHAV,Int. J. Dev. Biol.,2005年,Vol.49,pp.173-180
Marina. A. F. MacKenzie, et al,DEVELOPMENTAL BIOLOGY,1997年,Vol.192,pp.99-107
調査した分野 C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
エンドセリンレセプターB遺伝子をヘテロ型に欠損することによってエンドセリンレセプターBの機能が抑制されており、変異型c-kit遺伝子をヘテロ型に保有することによってc-kitの機能が抑制されており、加齢性白髪を発症する齧歯類遺伝子改変動物。
【請求項2】
前記変異型c-kit遺伝子がWv変異型遺伝子である、請求項1に記載の遺伝子改変動物。
【請求項3】
齧歯類がマウスである、請求項1又は2に記載の遺伝子改変動物。
【請求項4】
遺伝子型がEdnrb(+/-);WV/+のマウスである、請求項1に記載の遺伝子改変動物。
【請求項5】
遺伝子型がEdnrb(+/-);Wv/+; dct-LacZ/oのマウスである、請求項1に記載の遺伝子改変動物。
【請求項6】
毛周期依存的な白髪化を示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物。
【請求項7】
加齢性白髪が、毛根メラノサイト幹細胞の消失に伴う白髪化である、請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物。
【請求項8】
以下の(a)~(d)のいずれかの方法からなる、加齢性白髪を発症するマウスの作製方法:
(a) Ednrb(+/-)マウスとWV/+マウスを交配して生まれたEdnrb(+/-);WV/+マウスを選抜する;
(b) Ednrb(+/-);WV/+マウスと野生型マウスを交配して生まれたEdnrb(+/-);WV/+マウスを選抜する;
(c) Ednrb(+/-);WV/+マウスとEdnrb(+/-)マウスを交配して生まれたEdnrb(+/-);WV/+マウスを選抜する;
(d) Ednrb(+/-);WV/+マウスとWV/+マウスを交配して生まれたEdnrb(+/-);WV/+マウスを選抜する。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物を用いることを特徴とする、白髪の予防又は改善に有効な物質のスクリーニング方法。
【請求項10】
以下のステップ(1)及び(2)を含んでなる、請求項9に記載のスクリーニング方法:
(1)請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物に被験物質を投与するステップ;
(2)前記遺伝子改変動物が発症する白髪に対して被験物質が予防又は改善効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
【請求項11】
ステップ(2)における評価が、白髪化のスピード、白髪化の程度、白髪化のスピードの変化、白髪から黒毛等の有色毛への変化、メラニン量の変化、メラノサイト・メラノサイト幹細胞の変化、ヘアサイクルの変化、白髪に伴う脱毛の変化、白髪に伴う毛の光沢及び/又は弾性の変化、計測器を用いた毛髪の色調変化、白髪誘発処理(過酸化水素投与、氷水につける、或いは抗c-Kit抗体の投与等の処理)の後に発症した白髪が黒毛等の有色毛に戻るまでのスピード、からなる群より選択される一以上の項目についての評価である、請求項10に記載のスクリーニング方法。
【請求項12】
以下のステップ(i)~(iii)を含んでなる、請求項9に記載のスクリーニング方法:
(i)請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物の体毛の一部を脱毛するステップ;
(ii)ステップ(i)の前及び/又は後に、前記遺伝子改変動物に被験物質を投与するステップ;
(iii)前記遺伝子改変動物における、脱毛後に生えてきた体毛における白髪化を評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
【請求項13】
以下のステップを更に含んでなる、請求項12に記載のスクリーニング方法:
(iv)ステップ(iii)で有効性を示した被験物質を、請求項1~のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物に投与するステップ;
(v)前記遺伝子改変動物が発症する白髪に対して被験物質が予防又は改善効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子改変動物に関する。詳しくは、ヒトの白髪(加齢性白髪)を再現する遺伝子改変動物及びその用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
白髪は加齢の象徴であり、50歳の人の50%が50%程度の白髪を保有すると考えられている(Keogh EV and Walsh RJ, 1965)。現時点での白髪に対する解決策としては白髪染めが最も一般的である。しかし、白髪染めの主成分であるパラフェニレンジアミン(PPD)はアレルギー誘発性や発癌毒性等があることから(Fukunaga T. et al., 1996; Sahoo B, 2000)、一般使用が禁止されている国もある。また、加齢とともにPPDに対する感受性が上がるという報告もある(Almeida PJ et al., 2011)。従って、より健康で安全な白髪対策は、白髪になる前に予防するか、白髪初期の状態を改善することである。しかし、現時点で科学的根拠基づいた白髪予防効果のある製品は存在しない。白髪予防剤/改善剤の開発においては、本来ならばヒトでスクリーニングを行うのが最善だが、白髪は数十年という非常に長い期間かけて進行するため、ヒトで薬剤の白髪予防・改善の効能を検証するのは大変困難である。さらに、ヒトでの試験は、安全性の問題や個人差の問題が大きく、現実的ではない。
【0003】
一方、ヒトの白髪を再現する白髪発症モデル動物が存在すれば、例えば白髪予防効果のある食品や薬剤をスクリーニングすることができる。本発明者らの研究グループは、活性化型RET遺伝子がヘテロに遺伝子導入され、かつ、Ednrb遺伝子がヘテロ型に欠損する遺伝子型(RET/+・Ednrb(+/-))をもつ加齢性白髪モデルマウスの作製を報告した(特許文献1)。当該マウスは、人為的に作製された活性型RETのコンストラクトが導入されたトランスジェニックマウスであり、ヒトには存在しないタイプのRET癌遺伝子(活性型RET遺伝子)を保有する(非特許文献1)。また、このRET/+・Ednrb(+/-)マウスは、RET癌遺伝子の働きにより皮膚や目にメラノーマ(悪性黒色腫)等の腫瘍を発症する(非特許文献2)。さらに、RET/+・Ednrb(+/-)マウスは、皮膚に異所性のメラノサイト・メラニン・メラノファージが大量に存在するので、メラノサイトを対象とした解析の障害になるだけでなく、ヒトの白髪の生理的状態とは異なる。ヒトに存在するタイプのRET遺伝子は、色素細胞に発現することは知られていないことを合わせて考えると、RET/+・Ednrb(+/-)マウスに発症する白髪はヒトの白髪とは発症機構が異なった非生理的な状態であると考えられる。
【0004】
他にも、ヒトの白髪化に関連する遺伝子をターゲットに作製された白髪モデルマウスが存在する。例えば、Mitfvit/vitマウス(非特許文献3、4)が該当するが、このマウスは加齢性に白髪を発症するものの、もともと大きな白斑が腹部から背部にかけて存在するため、白髪予防剤等のスクリーニングには適さない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第2007/004337号パンフレット
【0006】

【非特許文献1】Kato M, Takahashi M, Akhand AA, Liu W, Dai Y, Shimizu S, Iwamoto T, Suzuki H, Nakashima I. Transgenic mouse model for skin malignant melanoma. Oncogene. 17(14):1885-8, 1998.
【非特許文献2】Kumasaka MY, Yajima I, Hossain K, Iida M, Tsuzuki T, Ohno T, Takahashi M, Yanagisawa M, Kato M. A novel mouse model for de novo Melanoma. Cancer Res. 70(1):24-9, 2010.
【非特許文献3】Nishimura EK, Granter SR, Fisher DE. Mechanisms of hair graying: incomplete melanocyte stem cell maintenance in the niche. Science. 307(5710):720-4, 2005.
【非特許文献4】Kurita K, Nishito M, Shimogaki H, Takada K, Yamazaki H, Kunisada T. J. Suppression of progressive loss of coat color in microphthalmia-vitiligo mutant mice. Invest Dermatol. 125(3):538-44, 2005.
【非特許文献5】Matsushima Y, Shinkai Y, Kobayashi Y, Sakamoto M, Kunieda T, Tachibana M. A mouse model of Waardenburg syndrome type 4 with a new spontaneous mutation of the endothelin-B receptor gene. Mamm Genome. 13(1):30-5, 2002.
【非特許文献6】Cable J, Jackson IJ, Steel KP. Mutations at the W locus affect survival of neural crest-derived melanocytes in the mouse. Mech Dev. 50(2-3):139-50, 1995.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、ヒトでも起こりえる遺伝子変異により、生理的な状態でヒトの加齢性白髪を良好に再現し、白髪の予防ないし改善剤のスクリーニング等に有用なモデル動物を提供することを課題とする。また、当該モデル動物の用途を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
研究を進める中で本発明者らはエンドセリンリセプターB(Ednrb)とc-kitに着目した。Ednrb及びc-kitは、胎生期におけるメラニン色素産生細胞(メラノサイト)の移動、増殖、生存に重要な働きをしていることが知られている。Ednrb及びc-kitの当該機能に注目し、加齢性白髪を発症するモデル動物の創出を目指して検討を重ねた。その結果、Ednrb遺伝子がヘテロ型にノックアウトされるともに、c-kitのWvヘテロ突然変異を遺伝子型にもつマウス(Ednrb(+/-);Wv/+マウス)の作製に成功した。当該遺伝子改変マウスの表現型を調べたところ、加齢性の白髪を発症すること、即ち、ヒトの白髪と同様に、若年時の有色毛が、加齢性に白髪化が進行することが判明した。また、白髪の毛根においてメラノサイト幹細胞の消失を認めるとともに毛周期依存的な白髪化が観察され、白髪化の原因においてもヒトの白髪との類似性を示した。このように本発明者らは、ヒトの加齢性白髪を良好に再現するモデル動物の開発に成功した。一方、当該モデル動物の開発を通して、Ednrbの機能及びc-kitの機能を抑制することがヒトの加齢性白髪を再現するという表現型の形成に有効である、との知見が得られた。尚、Ednrb遺伝子のホモノックアウトマウスは生まれつき白毛を有する(非特許文献5)。また、生まれつき大部分の体毛が白毛の表現型を示すc-kit突然変異マウスが報告されている(非特許文献6)。これらのマウスは、先天性に白髪を発症するモデル動物としては有効であるが、ヒトの加齢性白髪モデル動物としては適当ではない。また、Ednrb遺伝子のヘテロノックアウトマウスおよびWv/+マウスは若年~老齢時まで黒毛等の有色毛が維持され、加齢により白髪は発症しない。
以下に示す本発明は、主として、上記の成果に基づく。
[1]エンドセリンレセプターBの機能及びc-kitの機能が抑制されており、加齢性白髪を発症する齧歯類遺伝子改変動物。
[2]エンドセリンレセプターB遺伝子をヘテロ型に欠損することによってエンドセリンレセプターBの機能が抑制されており、変異型c-kit遺伝子をヘテロ型に保有することによってc-kitの機能が抑制されている、[1]に記載の遺伝子改変動物。
[3]前記変異型c-kit遺伝子がWv変異型遺伝子である、[2]に記載の遺伝子改変動物。
[4]齧歯類がマウスである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物。
[5]遺伝子型がEdnrb(+/-);WV/+のマウスである、[1]に記載の遺伝子改変動物。
[6]遺伝子型がEdnrb(+/-);Wv/+; dct-LacZ/oのマウスである、[1]に記載の遺伝子改変動物。
[7]毛周期依存的な白髪化を示す、[1]~[6]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物。
[8]加齢性白髪が、毛根メラノサイト幹細胞の消失に伴う白髪化である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物。
[9]以下の(a)~(d)のいずれかの方法からなる、加齢性白髪を発症するマウスの作製方法:
(a) Ednrb(+/-)マウスとWV/+マウスを交配して生まれたEdnrb(+/-);WV/+マウスを選抜する;
(b) Ednrb(+/-);WV/+マウスと野生型マウスを交配して生まれたEdnrb(+/-);WV/+マウスを選抜する;
(c) Ednrb(+/-);WV/+マウスとEdnrb(+/-)マウスを交配して生まれたEdnrb(+/-);WV/+マウスを選抜する;
(d) Ednrb(+/-);WV/+マウスとWV/+マウスを交配して生まれたEdnrb(+/-);WV/+マウスを選抜する。
[10][1]~[8]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物を用いることを特徴とする、白髪の予防又は改善に有効な物質のスクリーニング方法。
[11]以下のステップ(1)及び(2)を含んでなる、[10]に記載のスクリーニング方法:
(1)[1]~[8]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物に被験物質を投与するステップ;
(2)前記遺伝子改変動物が発症する白髪に対して被験物質が予防又は改善効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
[12]ステップ(2)における評価が白髪化のスピード、白髪化の程度、白髪化のスピードの変化、白髪から有色毛への変化、メラニン量の変化、メラノサイト・メラノサイト幹細胞の変化、ヘアサイクルの変化、白髪に伴う脱毛の変化、白髪に伴う毛の光沢及び/又は弾性の変化、計測器を用いた毛髪の色調変化、白髪誘発処理(過酸化水素投与、氷水につける、或いは抗c-Kit抗体の投与等の処理)の後に発症した白髪が有色毛に戻るまでのスピード、からなる群より選択される一以上の項目についての評価である、[11]に記載のスクリーニング方法。
[13]以下のステップ(i)~(iii)を含んでなる、[10]に記載のスクリーニング方法:
(i)[1]~[8]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物の体毛の一部を脱毛するステップ;
(ii)ステップ(i)の前及び/又は後に、前記遺伝子改変動物に被験物質を投与するステップ;
(iii)前記遺伝子改変動物における、脱毛後に生えてきた体毛における白髪化を評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
[14]以下のステップを更に含んでなる、[13]に記載のスクリーニング方法:
(iv)ステップ(iii)で有効性を示した被験物質を、[1]~[8]のいずれか一項に記載の遺伝子改変動物に投与するステップ;
(v)前記遺伝子改変動物が発症する白髪に対して被験物質が予防又は改善効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Ednrb(+/-); Wv/+マウスが白髪を発症することを示す図。a) 7ヶ月齢におけるWTマウス、Ednrb(+/-)マウス、Wv/+マウス、Ednrb(+/-); Wv/+マウスの外観。b) 7ヶ月齢における体毛の拡大図。c) 7ヶ月齢におけるWTマウス、Ednrb(+/-)マウス、Wv/+マウス、Ednrb(+/-); Wv/+マウスの白髪率。WTマウスに対する有意差をUnpaired-T-testで評価した。 *:P<0.05、**:P<0.001v/+;dct-lacZ/oマウスが加齢性に白髪を発症することを示す図。a) 1ヶ月齢(1M)、3ヶ月齢(3M)、7ヶ月齢(7M)における、WT;dct-lacZ/oマウス、Ednrb(+/-);dct-lacZ/oマウス、Wv/+;dct-lacZ/oマウス、Ednrb(+/-); Wv/+;dct-lacZ/oマウスの外観。b) 7ヶ月齢における体毛の拡大図。c)各月齢におけるWT;dct-lacZ/oマウス、Ednrb(+/-);dct-lacZ/oマウス、Wv/+;dct-lacZ/oマウス、Ednrb(+/-); Wv/+;dct-lacZ/oマウスの白髪率。M:月齢。WTマウスに対する有意差をUnpaired-T-testで評価した。 *:P<0.05、**:P<0.001 尚、図1および図2の結果より、Ednrb(+/-); W/+ マウスおよびEdnrb(+/-); Wv/+;dct-lacZ/oマウスとも、dct-lacZ/o遺伝子の導入の有無にかかわらず、加齢性の白髪が発症することが認められたため、図3以下では、Ednrb(+/-); Wv/+;dct-lacZ/oマウスを用いて、メラノサイトの動態にかかわるより詳細な検討をすすめた。
【図3】Ednrb(+/-); Wv/+;dct-lacZ/oマウスの白髪ではメラノサイト幹細胞が消失していることを示す図。7ヶ月齢のWTマウス、Ednrb(+/-)マウス、Wv/+マウス、Ednrb(+/-); Wv/+マウスのDct-lacZ染色像。上段はバルジ(bulge)の染色、下段は毛球部(hair bulb)の染色。青色のシグナル(矢印)がDct-lacZ陽性細胞を表す。
【図4】Ednrb(+/-); Wv/+マウス;dct-lacZ/oに認められる、毛周期依存的な白髪化の促進を示す図。a)5ヶ月齢のEdnrb(+/-); Wv/+;dct-lacZ/oマウスの体毛を脱毛した後に生えた白毛。b)非脱毛部と脱毛部の白髪率。脱毛前は、約20%であった白髪率が、脱毛後には約70%となった。点線は脱毛部を示す。Paired-T-testで評価した。 **:P<0.01【0010】
1.遺伝子改変動物
本発明の第1の局面は齧歯類遺伝子改変動物に関する。ヒトの白髪は加齢とともに徐々に進行する。本発明では、慣例に従い、当該特徴を「加齢性白髪」と表現する。本発明の遺伝子改変動物は加齢性白髪を発症する(換言すれば、ヒトの白髪を良好に再現する)ものであり、ヒト加齢性白髪モデルとして有用である。例えば、後述の通り、加齢性白髪の予防や改善に有効な薬剤・医薬の開発用ツール、或いは加齢性白髪の発症ないし進展メカニズムの解析ないし研究用ツールとして、本発明の遺伝子改変動物を利用可能である。更には、本発明の遺伝子改変動物は、白髪の治療法の開発におけるモデル動物としての利用価値も有する。例えば、メラノサイト幹細胞(MSCs)が消失した箇所に誘導多能性幹細胞(iPS細胞)を移植して白髪を治療又は改善するといった医療手段の開発において、本発明の遺伝子改変動物を利用可能である。

【0011】
本発明の遺伝子改変動物の第1の特徴は、エンドセリンレセプターB(Ednrb)の機能が抑制されていることである。好ましい一態様では、Ednrb遺伝子をヘテロ型に欠損することによってEdnrbの機能が抑制されている。Ednrbの機能が抑制されている限りにおいて、その原因は特に限定されない。例えば、変異型Ednrb遺伝子を保有することによってEdnrbの機能が抑制されていてもよい。変異型Ednrb遺伝子の例はEdnrbsl/slである(Gariepy CE et al., 1996)。

【0012】
Ednrb遺伝子は、マウスでは14番目の染色体に位置し、巨大結腸症の発症や色素細胞の発生・分化・増殖に関与している。Ednrb遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1に示す。Ednrb遺伝子がヘテロ型に欠損している遺伝子改変動物は例えばジーンターゲティングを利用して作製できる。ジーンターゲティングは遺伝子の相同組換えを利用してゲノムに改変を加える技術である。ジーンターゲティングを利用すれば、特定の遺伝子が欠損した遺伝子改変動物(ノックアウト動物)、特定の遺伝子が導入された遺伝子改変動物(ノックイン動物)等を作製することができる。ジーンターゲティングを利用した遺伝子改変動物(ノックアウト動物、ノックイン動物)の作製法は、マウスの場合を例にとれば、大別して(a)ターゲティングベクターの構築、(b)ES細胞へのターゲティングベクターの導入及び相同組換え体の同定、(c)ブラストシストへの相同組み換え体の注入、(d)仮親の子宮内への胚移植及び出産(キメラ仔マウス)、(e)キメラ仔マウスと野生型マウスの交配(F1世代であるヘテロ接合体マウスの産出)、及び(f)F1世代同士の交配(F2世代であるホモ接合体マウスの産出)からなる。ラットなど、他の齧歯類を用いた場合も同様の手順で遺伝子改変動物を得ることができる。尚、ジーンターゲティングによる遺伝子改変動物の作製法については例えばJoyner, A. L.:Gene Targeting (IRL press)、Capeccchi, M. R., Science, 244, 1288-1292 (1989)、Hua Gu, et al., Science, 265, 103-106 (1994)、McHugh, T. J. et al., Cell, 87, 1339-1349 (1996)、Shibata, H. et al., Science, 278, 120-123 (1997)等が参考になる。

【0013】
本発明の遺伝子改変動物の第2の特徴はc-kitの機能が抑制されていることである。好ましい一態様では、変異型c-kit遺伝子を保有することによってc-kitの機能が抑制されている。c-kitの機能を抑制するという表現型を実現可能な限りにおいて、変異型c-kit遺伝子の種類は特に限定されない。マウスでは、c-kit遺伝子の突然変異体としてWvミュータント、W42W37ミュータント、W55ミュータント(Tan JC et al.,1990; Reith AD et al.1990)などが知られている。好ましくは、Wvミュータントに対応する変異型c-kit遺伝子(本明細書では「Wv変異型遺伝子」と呼ぶ)を本発明の遺伝子改変動物は保有し、これによってc-kitの機能が抑制されることになる。尚、Wv変異型遺伝子の配列を配列番号2に示す。変異型c-kit遺伝子はヘテロ型に保有される。

【0014】
上記の通り、本発明の遺伝子改変動物は加齢性白髪を発症する。c-kitおよびEdnrbは、もともとヒトにも存在する遺伝子である。さらに、KIT変異遺伝子を持つ患者、およびEDNRB遺伝子変異を持つ患者(WS4患者)では生下時より白髪を伴うことが知られている(Flischam R. A. et al., 1991, 1992, Spritz., et al., 1992, 1993, Puffenberger, E.G. et al., 1994, Edery. P., et al., 1996)。本発明の遺伝子改変動物が発症する加齢性白髪は、典型的には、毛根メラノサイト幹細胞の消失に伴う白髪化である。また、典型的には、本発明の遺伝子改変動物では、毛周期依存的な白髪化が観察される。これらの特徴はヒトの白髪の特徴と共通するものであり、本発明の遺伝子改変動物の有用性を示すものであるとともに、本発明の遺伝子改変動物と従来の白髪モデル動物とを峻別する。

【0015】
齧歯類は特に限定されず、マウス、ラット、モルモット、ハムスター及びウサギを含む。好ましくはマウスである。

【0016】
本発明の遺伝子改変動物は例えば交配によって作製することができる。例えば、本発明の遺伝子改変動物に該当する、EndrB遺伝子がヘテロ型に欠損し且つWv変異型遺伝子をヘテロ型に保有するマウス(遺伝子型がEdnrb(+/-);Wv/+)であれば、Ednrb(-/-)マウス(Matsushima Y, et al. , 2002)をもとに作製したEdnrb(+/-)とWv/+マウス(Little CC 1937)を交配することによって作製することができる。Ednrb(-/-)マウスは米国のJackson Labより入手することができる。また、Wv/+マウスについては市販されており、例えば日本エスエルシーから購入することができる。Ednrb(+/-);Wv/+マウスを作製する方法は上記のものに限定されない。例えば、遺伝子改変技術(ジーンターゲティングなど)を利用すれば、交配によることなく、Ednrb遺伝子及びc-kit遺伝子に所望の改変(欠損或いは変異)が施されたマウスなどを作製することが可能である。

【0017】
Ednrb(+/-)とWv/+マウスの交配によってEdnrb(+/-);Wv/+マウスを作製する方法の詳細は実施例の欄に示す。尚、一度Ednrb(+/-);Wv/+マウスが作製されたならば、次のいずれかの交配を1回行うだけでルーティンに繁殖させることができる。
(1)Ednrb(+/-);Wv/+マウスと野生型(WT)マウスの交配
(2)Ednrb(+/-);Wv/+マウスとEdnrb(+/-)マウスの交配
(3)Ednrb(+/-);Wv/+マウスとWv/+マウスの交配

【0018】
本発明の遺伝子改変動物の好ましい一態様はEdnrb(+/-);Wv/+; dct-LacZ/oマウスである。当該マウスは、メラノサイト特異抗原であるdopachrometautomerase(Dct)のプロモーター下にレポーター遺伝子であるlacZ遺伝子をつないだdct-lacZコンストラクトを保有する(詳細は後述の実施例を参照)。この特徴によって、メラノサイトの動態を簡便に調べることができ(メラノサイトを簡便に染色可能)、白髪の予防又は改善に有効な物質のスクリーニング等に極めて有用である。Ednrb(+/-);Wv/+; dct-LacZ/oマウスは、例えば、上記の方法で作製したEdnrb(+/-);Wv/+マウスとdct-lacZ-トランスジェニックマウスを交配することによって得ることができる。

【0019】
2.遺伝子改変動物の用途
本発明の第2の局面は上述の遺伝子改変動物の用途に関する。典型的な用途として白髪の予防又は改善に有効な物質のスクリーニング方法が提供される。本発明のスクリーニング法は以下のステップ(1)及び(2)を含む。
(1)本発明の遺伝子改変動物に被験物質を投与するステップ
(2)前記遺伝子改変動物が発症する白髪に対して被験物質が予防又は改善効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ

【0020】
ステップ(1)では、本発明の遺伝子改変動物に被験物質を投与する。被験物質の投与方法(投与経路)は特に限定されない。例えば、被験物質又はそれを含む組成物(溶液など)を用意し、これを投与する。投与方法として皮膚への塗布、皮膚内、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内又は腹腔内注射、噴霧投与、経鼻投与、経気管投与を例示することができる。被験物質を含む餌又は飲料水を用意し、これを摂取させることにしてもよい(経口投与)。また、経口投与の方法としては、ゾンデを用いた強制投与法も有効である。被験物質を複数回投与することにしてもよい。その場合には各回の投与量は同一であっても異なっていても良い。

【0021】
被験物質としては様々な分子サイズの有機化合物又は無機化合物を用いることができる。有機化合物の例として、核酸、ペプチド(ダイペプチド、トリペプチド等のオリゴペプチドやポリペプチド)、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド、ポリフェノール、カテキン、ビタミン(B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、A、D、E等)を例示できる。被験物質は天然物由来であっても、或いは合成によるものであってもよい。後者の場合には例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なスクリーニング系を構築することができる。尚、細胞抽出液、培養上清などを試験物質として用いてもよい。また、既存の薬剤を被験物質としてもよい。

【0022】
試験群及び対照群に含まれる個体数は特に限定されない。一般に使用する個体数が多くなるほど信頼性の高い結果が得られるが、多数の個体を同時に取り扱うことは使用する個体の確保や操作(飼育を含む)の面で困難を伴う。そこで例えば各群に含まれる個体数を1~50、好ましくは2~30、さらに好ましくは3~20とする。

【0023】
ステップ(2)では、遺伝子改変動物が発症する白髪に対して被験物質が予防又は改善効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定する。有効性が認められた複数の被験化合物を用いて再度ステップ(1)及び(2)を行い、有効性の高い物質の絞り込みを行うことにしてもよい。ここでの評価は、被験物質の予防又は改善効果の指標になる項目に関するものである。採用可能な評価項目として、白髪化のスピード、白髪化の程度、白髪化のスピードの変化、白髪から有色毛への変化(当該評価項目は、前期の予防効果だけでなく、治療効果も調べたいときに特に有用である)、メラニン量の変化、メラノサイト・メラノサイト幹細胞の変化、ヘアサイクルの変化、白髪に伴う脱毛の変化(当該評価項目は、白髪はしばしば脱毛を伴うとの理由に基づく)、白髪に伴う毛の光沢及び/又は弾性の変化(当該評価項目は、白髪はコラーゲン組成の変化により、一般にツヤや張りがなくなるとの理由に基づく)、計測器を用いた毛髪の色調変化、白髪誘発処理(過酸化水素投与、氷水につける、或いは抗c-Kit抗体の投与等の処理)の後に発症した白髪が黒毛等の有色毛に戻るまでのスピード、を挙げることができる。白髪化のスピードは経時的に白髪の量又は割合を測定することによって評価可能である。白髪化の程度は、特定の時点(例えば1ヶ月齢~12ヶ月齢の間)における白髪の量又は割合、或いは毛根内のメラニン量を定量することによって評価可能である。また、毛の色味は色彩色差計によって、脱毛は面積辺りの毛の本数の計数によって、それぞれ評価可能である。毛の光沢や弾性については、走査電子顕微鏡や荷重・伸長法によって評価可能である。尚、評価の正確性や信頼度を高めるため、二つ以上の評価項目を併用することが好ましい。

【0024】
被験物質の投与によって予防又は改善効果を認めた場合、被験物質が有効であると判定されることになる。例えば、評価項目として「白髪化のスピード」を採用した場合、白髪化のスピードが対照群に比較して試験群で遅いようであれば、被験物質が白髪の発症を抑制ないし阻害したと評価でき、被験物質の有効性(特に予防効果に関する有効性)を推認する。評価項目として「白髪の程度」を採用した場合にあっては、白髪の程度が対照群よりも試験群の方で低い(白髪の量又は割合が少ない)のであれば、被験物質が白髪を抑制ないし阻害したと評価でき、被験物質の有効性(特に予防効果に関する有効性)を推認する。

【0025】
本発明の一態様では、本発明の遺伝子改変動物が示す毛周期依存的な白髪化に注目し、以下のステップ(i)~(iii)を行う。当該態様によれば、効率的なスクリーニングが可能であり、被験物質の有効性を迅速に判定することができる。また、試験開始のタイミングを設定しやすい(任意のタイミングで試験を開始できる)上に、個体間のばらつきを抑えることができ(各個体の試験開始点を合わせやすい)、より信頼性の高い評価結果を得ることができる。
(i)本発明の遺伝子改変動物の体毛の一部を脱毛するステップ
(ii)ステップ(i)の前及び/又は後に、前記遺伝子改変動物に被験物質を投与するステップ
(iii)前記遺伝子改変動物における、脱毛後に生えてきた体毛における白髪化を評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ

【0026】
ステップ(i)において脱毛する部位は特に限定されない。但し、ステップ(iii)での評価が容易になるように、観察に適した箇所(例えば、背中)を脱毛部位とすることが好ましい。脱毛には脱毛剤(脱毛ワックス)、剃刀、電気カミソリ、ハサミなどを利用できるが、信頼性が高い評価結果を得るためには、脱毛に伴う刺激や負荷などが少ない手段を採用することが好ましい。

【0027】
ステップ(ii)では、脱毛処理を受ける遺伝子改変動物(即ち、本発明の遺伝子改変動物)に被験物質を投与する。この投与はステップ(i)の前又は後に行われる。被験物質の投与をステップ(i)の前と後の両方で行うことにしてもよい。投与方法や被験物質等は上記ステップ(1)と同様である。

【0028】
ステップ(i)及び(ii)の後、脱毛後に生えてきた体毛における白髪化を評価する(ステップ(iii))。ここでの評価は、上記ステップ(2)と同様の評価項目・評価基準で行うことができる。但し、脱毛部位における体毛が評価対象となる。

【0029】
ステップ(iii)によって有効性が認められ、その結果選抜された被験物質を更なる評価に供し、有効性の高い物質の絞り込みを行うことにしてもよい。ここでの更なる評価の具体例では、以下のステップ(iv)及び(v)を行う。尚、ステップ(iv)は上記ステップ(1)に準じて行えばよい。また、ステップ(v)は上記ステップ(2)と実質的に同一であるためその説明を省略する。
(iv)ステップ(iii)で有効性を示した被験物質を、本発明の遺伝子改変動物に投与するステップ;
(v)前記遺伝子改変動物が発症する白髪に対して被験物質が予防又は改善効果を示すか否かを評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ

【0030】
有効な物質の迅速な選抜を可能にするステップ(i)~(iii)に加えて、毛の再生を人為的に早めることがない(即ち、より自然な状態での評価が可能な)ステップ(iv)及び(v)を組み合わせることによって、有効性の高い物質を極めて効率的にスクリーニングすることが可能になる。

【0031】
以上で説明した各スクリーニング方法は個体(生体)を用いるもの(in vivoスクリーニング)であり、信頼性の高い評価結果をもたらす。従って、それ自体、白髪の予防剤又は改善剤の開発用ツールとして有用である。但し、被験物質の種類が膨大な場合等、より効率的なスクリーニングが要求される場合には、細胞レベルのスクリーニング(in vitroスクリーニング)を先行して行い、そこで選抜された被験物質の中から有効性の高い(或いは、真に有効な)物質を見出すための手段として上記のスクリーニング方法を実施することが好ましい。in vitroスクリーニング方法の例を以下に示す。

【0032】
in vitro スクリーニング1(マウスEdnrbおよびc-kitのプロモーター活性で評価)
手間・コスト・時間を考慮すれば、膨大な候補物質から有効な物質をスクリーニングする場合、最初のステップとしては、培養メラノサイトを用いたin vitroのシステムを用いて候補薬剤を選別するとよい。Ednrb遺伝子とc-kit遺伝子の機能が抑制されることによって加齢性の白髪を発症した事実(Ednrb(+/-);WV/+のマウスの表現型)に従えば、Ednrb遺伝子及びc-kit遺伝子の発現を上昇させる物質には白髪予防・改善効果を期待できる。そこで、例えば、Ednrb遺伝子/c-kit遺伝子のプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したベクターを用いたプロモーターアッセイを採用する。このアッセイは、ルシフェラーゼ遺伝子産物の発光を利用するものであり、遺伝子の転写活性を制御するプロモーター活性をルシフェラーゼの発光強度により評価する方法である。このベクターを導入したメラノサイト細胞株に被験物質を添加し、ルシフェラーゼ発光強度を測定する。Ednrb遺伝子/c-kit遺伝子のプロモーター活性の上昇は、高いルシフェラーゼ発光強度として検出される。

【0033】
in vitroスクリーニング2(ヒトEDNRB及びKITのプロモーター活性で評価)
ヒトへの応用を考慮すれば、in vitroスクリーニング1に続いて、又はin vitro スクリーニング1に代えて、ヒトEDNRB遺伝子及びKIT遺伝子を用いた同様のin vitroスクリーニングを行うとよい。

【0034】
本発明のスクリーニング方法によって選択された物質が十分な薬効を有する場合には、当該物質をそのまま医薬や医薬部外品或いは化粧料の有効成分として使用することができる。一方で十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で、医薬等の有効成分として使用することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。

【0035】
本明細書で特に言及しない事項(条件、操作方法など)については常法に従えばよく、例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)、Current protocols in Immunology, John Wiley& Sons Inc等を参考にすることができる。
【実施例】
【0036】
A.方法
1.モデル動物の作製
(1)マウスの用意
米国のJackson Labおよび熊本大学動物資源開発研究部門(CARD)より入手可能なEdnrb(-/-);DBH-Ednrb/ DBH-Ednrb -マウス(Laghmani et al., 2001)と日本エスエルシーより購入したWv/+-マウス(Little CC 1937)を用意した。これらのマウスを用い、以下の方法(交配1~3)によってモデルマウス(Ednrb(+/-);Wv/+マウス)を作製した。尚、以下に示す方法は一例であり、Ednrb(+/-);Wv/+マウスを作製する方法はこれに限定されない。また、後述の交配1によって作製されるEdnrb(+/-)マウスは、Ednrb遺伝子のノックアウトマウスであるが、Ednrbの機能が抑制されているものであれば、これ以外にも使用可能である。Ednrbの機能が抑制されているマウスの例は、Ednrbの突然変異体(例えばEdnrbsl/sl(Gariepy CE et al., 1996))である。一方、Wv/+マウスはc-kitの機能が抑制された突然変異体(Wvミュータント)である。他の変異体を用いることも可能である。c-kit抑制型変異体として、例えば、W42W37, W55 (Tan JC et al.,1990; Reith AD et al.1990)などがある。
【実施例】
【0037】
(2)交配
(交配1)
Ednrb(-/-);DBH-Ednrb/DBH-Ednrb-マウス(Laghmani K, 2001)と野生型(WT)マウスを交配し、Ednrb(+/-);DBH-Ednrb/o-マウスを得た。DBH-Ednrbとは、腸管神経に発現するdopamine beta-hydroxylase(DBH)遺伝子のプロモーター下でEdnrbを強制発現するようにした遺伝子コンストラクトである。Endrbは腸管神経の発達にも重要であるため、Ednrbを完全に欠損したEdnrb(-/-)マウスは、巨大結腸症を発症し、生後数週間で死亡する(Matsushima Y, et al. , 2002)。目的のEdnrb(+/-);Wv/+マウスを作製するにあたり、巨大結腸症を抑える必要があるため、DBH-Ednrb遺伝子を導入したマウス(皮膚のEdnrbは完全にノックアウトされるが、巨大結腸症により死亡することのないマウス)を使用した(Laghmani et al., 2001)。
【実施例】
【0038】
(交配2)
Ednrb(+/-);DBH-Ednrb/o-マウスにWTマウスを交配し、Ednrb(+/-)マウスを得た。Ednrb(+/-)マウスは、Ednrbが半分正常であるため、巨大結腸症にはならない。そこで、交配1で導入したDBH-Ednrb/oを持たないマウスだけを以降の交配に用いた。
【実施例】
【0039】
(交配3)
交配2で作製したEdnrb(+/-)マウスにWv/+マウスを交配し、目的のEdnrb(+/-);Wv/+マウスを得た。
【実施例】
【0040】
2.Dct-LacZ染色
メラノサイトを簡便に染色するために。メラノサイト特異抗原であるdopachrometautomerase(Dct)のプロモーター下にレポーター遺伝子であるlacZ遺伝子をつないだdct-lacZコンストラクトをもつdct-lacZ-トランスジェニックマウス(Mackenzie et al., 1997)をEdnrb(+/-);Wv/+マウスと交配し、Ednrb(+/-);Wv/+; dct-LacZ/oマウスを得た。LacZ遺伝子の産物であるβ-ガラクトシダーゼがメラノサイト特異的に発現するため、β-ガラクトシダーゼの基質であるX-galを添加することでメラノサイトが青色に染色される。染色法は文献(Nishimura et al.,2002)を参照した。
【実施例】
【0041】
3.脱毛
背中の一部について、休止期の皮膚の毛を刈り、脱毛ワックス(イミュ株式会社)により、毛を抜毛した。
【実施例】
【0042】
B.結果
1.Ednrb(+/-); Wv/+マウスは、加齢性に白髪を発症する。
Ednrb(+/-)とWv/+マウスの交配により得られたEdnrb(+/-);Wv/+マウスは加齢性に白髪を発症した。図1a、bは、7ヶ月齢の写真を示す。WTマウス、Ednrb(+/-)マウス、Wv/+マウス、Ednrb(+/-); Wv/+マウスの7ヶ月齢における白髪率は、それぞれ約3%、3.6%、12.7%、62.8%であった(図1c)。加齢性の白髪発症は、図2で示すEdnrb(+/-);Wv/+;dct-lacZマウスと同等であった。
【実施例】
【0043】
2.Ednrb(+/-);Wv/+;dct-lacZマウスは、加齢性に白髪を発症する。
詳しくは、Ednrb(+/-);Wv/+マウスは1ヶ月齢で約10%、3ヶ月齢で約28%、5ヶ月齢で38%、7ヶ月齢では52%の白髪を発症した(図2a,b,c)。対照的に、WT;dct-lacZマウス及びEdnrb(+/-);dct-lacZマウスは殆ど白髪を発症することはなく、7ヶ月齢でも白髪の割合は約3%に過ぎなかった(図2c)。また、Wv/+;dct-lacZマウスは生まれつき約10%の白髪を保有するが、その後、加齢性に白髪を発症することはなかった(図2c)。
【実施例】
【0044】
3.Ednrb(+/-); Wv/+マウスの白髪ではメラノサイト幹細胞が消失している
毛の色を形成するメラニンは、毛根の毛球部(hair bulb)に存在するメラノサイトによって産生される。そのメラノサイトは、バルジ(bulge)に存在するメラノサイト幹細胞によって供給される(Nishimura et al., 2002)。Ednrb(+/-); Wv/+マウスにおける、メラノサイト幹細胞とメラノサイトの分布を調べるために、7ヶ月齢マウスの皮膚切片を作製しDct-lacZ染色を行った(図3)。
【実施例】
【0045】
WT;dct-lacZ/oマウス、Ednrb(+/-);dct-lacZ/oマウス及びWv/+;dct-lacZ/oマウスでは、bulge領域におけるメラノサイト幹細胞もhair bulbにおけるメラノサイトもdct-LacZ染色陽性(青色)として検出された。一方、Ednrb(+/-); Wv/+;dct-lacZ/oマウスの有色毛ではWT;dct-lacZマウス、Ednrb(+/-);dct-lacZ/oマウス及びWv/+;dct-lacZ/oマウスと同様に、メラノサイトおよびメラノサイト幹細胞が確認されたが、Ednrb(+/-); Wv/;dct-lacZ/oマウスの白毛ではメラノサイト幹細胞もメラノサイトも消失していた(図3)。
【実施例】
【0046】
4.毛周期依存的な白髪化の促進
Ednrb(+/-); Wv/+;dct-lacZ/oマウスの白髪では、メラノサイト幹細胞とその子孫細胞であるメラノサイトが消失していた(図3)。ヒトの白髪化の原因はbulgeメラノサイト幹細胞の異常にあると考えられている(Nishimura et al., 2005)。メラノサイト幹細胞は、成長期の開始期に分裂してメラノサイトをhair bulbに供給する(Nishimura et al.,2002)。もし、Ednrb(+/-); Wv/+マウスでも、メラノサイト幹細胞に異常があるならば、毛周期依存的に白髪が亢進すると考えられる(Inoue-Narita et al., 2008)。このことを確かめるため、人為的に毛周期を回転させる実験を行った。休止期毛をワックスによって脱毛すると成長期が開始され、メラノサイト幹細胞が正常であれば分裂して毛球部メラノサイトを供給する(Hamilton E and Potten., 1974; Nishimura et al., 2002)。実験の結果、ワックス脱毛を行った領域では白髪化が促進した(図4)。
【実施例】
【0047】
C.まとめ
本発明者らは、Ednrb(+/-)とWv/+の両方の遺伝型を併せ持つマウス(Ednrb(+/-);Wv/+マウス)が加齢性に白髪を発症することを見出した。Ednrb(+/-)マウス(Wv/+の遺伝型はもたない)、あるいはWv/+マウス(Ednrb(+/-)の遺伝型はもたない)では、加齢に伴う白髪化は観察されない。一方で、ホモで遺伝子に変異が生じた場合(Ednrb(-/-)マウス、あるいはWv/Wvマウス)では、生まれたときからほぼ全身の体毛が白毛である先天性の白髪である(Matsushima Y, et al. ,2002; Cable et al., 1995)。従って、これらの2つの遺伝子機能を半分ずつ、かつ、同時に抑制することが、加齢性の白髪発症の再現に重要であると考えられる。
【実施例】
【0048】
ヒトの白髪は、加齢とともに徐々に進行する。過去に報告されたモデルマウスの多くは、先天性の白髪であるか(Matsushima, et al.,2002; Cable J et al.,1995)、比較的若い時期に白髪を発症する若白髪のモデルである(Nishimura et al.,2005)。対照的にEdnrb(+/-);Wv/+マウスでは、ヒト白髪と同様に加齢性に白髪化が進む。ヒト白髪の原因はメラノサイト幹細胞の消失にあると考えられている(Nishimura et al, 2005)が、Ednrb(+/-);Wv/+でも、白髪毛根でのメラノサイト幹細胞の消失と毛周期依存的な白髪化が観察された。従って、Ednrb(+/-);Wv/+マウスは加齢性に白髪が進むという外観だけでなく、少なくともメラノサイト幹細胞の消失という点において、ヒトと共通の白髪化の原因を保有していると考えられる。
【実施例】
【0049】
ところで、ヒトEDNRBとヒトKITはヒト色素異常症関連遺伝子として報告されており、KIT変異遺伝子を持つ患者では先天性の白斑および白髪などの色素異常を伴うことが知られている(Flischam R. A. et al., 1991, 1992, Spritz., et al., 1992, 1993)。また、EDNRB遺伝子変異を持つ患者(WS4患者)でも、先天性の白斑および白髪などの色素異常を伴うことが知られている(Puffenberger, E.G. et al., 1994, Edery. P., et al., 1996)。本発明者らの検討によって今回明らかになった知見を踏まえれば、これらの報告は、EDNRBとKITがヒトでも加齢性白髪化に関与している可能性を示唆しているといえる。
【実施例】
【0050】
上述の通り、本発明者らの研究グループは、活性化型RET遺伝子がヘテロに遺伝子導入され、かつ、Ednrb遺伝子がヘテロ型に欠損する遺伝子型(RET/+・Ednrb(+/-))をもつ加齢性白髪モデルマウスの開発を報告している(特許文献1)。このRET/+・Ednrb(+/-)マウスに対する、Ednrb(+/-);Wv/+マウスの最大の優位性は、より生理的な白髪発症機構をもつということである。RET/+・Ednrb(+/-)マウスは、人為的に作製された活性型RETのコンストラクトが導入されたトランスジェニックマウスであり、ヒトには存在しないタイプの活性型RET遺伝子を保有する(非特許文献1)。このRET/+・Ednrb(+/-)マウスは、RET癌遺伝子の働きにより皮膚や目にメラノーマ(悪性黒色腫)等の腫瘍を発症する。さらに、RET/+・Ednrb(+/-)マウスは、皮膚に異所性のメラノサイト・メラニン・メラノファージが大量に存在するので、メラノサイトを対象とした解析の障害になるだけでなく、ヒトの白髪の生理的状態とは異なる。対照的に、今回開発したEdnrb(+/-);Wv/+マウスは、もともとマウスに存在する遺伝子であるEdnrb遺伝子とc-kit遺伝子の働きを各々半分抑制することで白髪を発症するものであり、遺伝子の過剰発現を伴うモデル動物ではない。また、皮膚や目にメラノーマを発症することもない。更には、Ednrb遺伝子とc-kit遺伝子はヒトにも存在する遺伝子(EDNRB、KIT)であるため、Ednrb(+/-);Wv/+マウスの方が、ヒトの生理的状態に一層近い加齢性白髪発症モデルであるといえる。
【実施例】
【0051】
一方、RET/+・Ednrb(+/-)の他にも、加齢性に白髪を発症するマウスが知られているが、Ednrb(+/-);Wv/+マウスは白髪予防剤等のスクリーニング方法に極めて適したものであり(例えばMitfvit/vitマウスは、もともと大きな白斑が腹部から背部にかけて存在するため、白髪予防剤等のスクリーニングには適さない)、その有用性、価値は比較にならないほど高い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の遺伝子改変動物はヒトの白髪(加齢性白髪)を良好に再現する。本発明の遺伝子改変動物は加齢性白髪のモデルとして極めて有用であり、加齢性白髪の予防剤や改善剤の開発に利用可能である。アンチエイジング効果を示した化粧品やサプリメントが数多く存在する中、科学的根拠をもとに白髪予防・改善効果を示した薬剤はこれまでに存在しない。本発明のモデル動物は、候補物質の予防・改善効果を生体レベルで評価することを可能にするものであり、その価値は極めて高い。生体(モデル動物)を利用した薬剤評価は、より信頼性の高い薬剤開発に繋がる。なぜならば、メラニン産生を行うメラノサイトは、実際には周囲の毛根表皮細胞との緻密に制御された相互作用によってその恒常性を維持しているからである(Tanimura et al., 2011)。生体(モデル動物)を用いれば、塗布・注射・飲用などによる試験法が可能であるため、外用剤・注射剤・内服薬・サプリメント等、様々な形態に対応した予防・治療改善剤の開発が可能である。
【0053】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
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図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3