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明細書 :ホログラフィック表示デバイス及び3次元ホログラフィック表示装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-240861 (P2014-240861A)
公開日 平成26年12月25日(2014.12.25)
発明の名称または考案の名称 ホログラフィック表示デバイス及び3次元ホログラフィック表示装置
国際特許分類 G03H   1/26        (2006.01)
G03H   1/08        (2006.01)
G03H   1/04        (2006.01)
G02F   1/13        (2006.01)
G02B  27/22        (2006.01)
C08J   5/18        (2006.01)
FI G03H 1/26
G03H 1/08
G03H 1/04
G02F 1/13 505
G02B 27/22
C08J 5/18 CEY
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2013-122507 (P2013-122507)
出願日 平成25年6月11日(2013.6.11)
発明者または考案者 【氏名】堤 直人
【氏名】木梨 憲司
【氏名】川辺 豊
【氏名】夛田 量宏
【氏名】福澤 広大
出願人 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
【識別番号】100143122、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 功雄
審査請求 未請求
テーマコード 2H088
2H199
2K008
4F071
Fターム 2H088EA05
2H088HA05
2H088HA10
2H088HA20
2H088HA21
2H088HA24
2H088HA28
2H088MA20
2H199BA32
2H199BB23
2H199BB68
2K008AA00
2K008BB04
2K008CC03
2K008EE01
2K008FF07
2K008HH01
2K008HH13
2K008HH23
2K008HH26
4F071AA33
4F071AC12
4F071AE19
4F071AF29
4F071AG12
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
要約 【課題】信頼性が高く、ディスプレイの大面積化を容易にし、それと共にシステム構造を簡易にし、かつ工業的に量産化が可能なホログラフィック表示デバイス及び3次元ホログラフィック表示装置を提供する。
【解決手段】ホログラフィック表示デバイス2を構成するフォトリフラクティブポリマー複合体は、PMMAにNACzEを10wt%~45wt%の割合で含有させた組成を有しており、PMMAとNACzEを沸点100℃以上の溶媒に溶解させ、この溶液を塗布工法によって薄膜状に広げ、当該溶媒を除去することでホログラフィック表示デバイス2を製作する。これにより、フォトリフラクティブポリマー複合体を、膜厚:10nm~3000nmの薄膜状に形成し、フォトリフラクティブポリマー複合体の光学密度を0.5~1.5とした。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ホログラムを無電界下で書き換え可能とするフォトリフラクティブポリマー複合体と、このフォトリフラクティブポリマー複合体を支持する基材とを備えるホログラフィック表示デバイスであって、
前記フォトリフラクティブポリマー複合体は、膜厚:10nm~3000nmの薄膜状に形成されており、当該フォトリフラクティブポリマー複合体の次の数式(1)で表される光学密度ODが0.5~1.5であることを特徴とするホログラフィック表示デバイス。
(1)OD=log(I/I) I0:入射光の強度、I:出射光の強度
【請求項2】
前記フォトリフラクティブポリマー複合体は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に3-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-9H-カルバゾール-9-エタノール (NACzE)を10wt%~45wt%の割合で含有させた組成を有しており、
前記PMMAと前記NACzEを、沸点:100℃以上の溶媒に溶解させ、この溶液を塗布工法によって薄膜状に広げ、当該溶媒を除去することで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック表示デバイス。
【請求項3】
前記塗布工法は、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコートのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のホログラフィック表示デバイス。
【請求項4】
ホログラフィック表示デバイスと、
物体光及び参照光を前記ホログラフィック表示デバイスに同じ側から照射することによりホログラムを記録する記録機構と、
前記記録機構による前記ホログラムの記録と同時に、プローブ光を前記ホログラフィック表示デバイスに前記物体光及び前記参照光と同じ側から照射することにより前記記録機構で記録された前記ホログラムを表示する表示機構と、を備え、
前記ホログラフィック表示デバイスが請求項1~3のいずれかに記載のホログラフィック表示デバイスであることを特徴とする3次元ホログラフィック表示装置。
【請求項5】
前記記録機構は、
被写体を多数の視点からカメラで撮影した多視点画像データを取得する画像取得部と、
この画像取得部で取得した前記多視点画像データから前記物体光を生成し、この物体光を前記参照光と共に、間欠的に水平移動する前記ホログラフィック表示デバイスへ照射して複数の要素ホログラムを記録し、これら複数の要素ホログラムからホログラフィックステレオグラムを得る記録部と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の3次元ホログラフィック表示装置。
【請求項6】
前記記録部は、レーザー発振器から発振されたレーザービームを分割して2つの偏光レーザービームとするビームスプリッターと、分割された一方の偏光レーザービームの偏光状態を変換し前記多視点画像データから物体光を生成する空間光変調器と、この物体光を拡散させる拡散板と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の3次元ホログラフィック表示装置。
【請求項7】
前記画像取得部は、前記カメラの光軸を前記被写体に向けたままで当該カメラを水平移動させるか、又は固定した前記被写体に対して前記カメラを公転させるか、又は固定した前記カメラに対して前記被写体を自転させて前記多視点画像データを得る撮影用機器を備えることを特徴とする請求項5に記載の3次元ホログラフィック表示装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は静止画像又は動画像を3次元映像として立体表示させるためのホログラフィック表示デバイス及びこのホログラフィック表示デバイスを用いた3次元ホログラフィック表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な電荷輸送能を有する物質が知られており、その応用事例としてフォトリフラクティブ効果がある。フォトリフラクティブ効果とは、可視光レーザーを照射するとポッケルス効果によって物質の屈折率が変化することである。具体的には、例えば2本のコヒーレントなレーザー光をクロスさせて媒体に照射する場合が挙げられる。クロスしたビームは互いに干渉し、媒体に周期的な干渉縞が形成される。この干渉縞においては、明所・暗所が交互に交差し、明所では、媒体が光励起されて電荷キャリアが生成され、生成された電荷キャリアは媒体に印加された外部電場によって明所からドリフト移動し、暗所でトラップされる。これにより、媒体には周期的な電荷密度の分布が生じる。この周期的な電荷密度の分布は、ポッケルス効果を介して媒体に干渉縞に対応して屈折率の周期的な変化を誘起する。
【0003】
このようなフォトリフラクティブ効果を用いることで、位相共役、歪曲した媒体からのイメージング、実時間ホログラフィー、超多重ホログラム記録、3Dディスプレイ、3Dプリンター、さらには光増幅、光ニュートラルネットワークを含む非線形光情報処理、パターン認識、光リミッティング、高密度光データの記憶等への応用が期待されている。
【0004】
フォトリフラクティブ媒体を用いて3次元画像を記録及び再生する技術として、例えば以下のものが挙げられる。空間光変調器とホログラム記録媒体を備え、ホログラム記録媒体に、互いに統計的に独立な位相分布の複素共役を用いて位相符号化されたキャリアが重ねて記録され、ホログラム記録媒体から立体像を再生する光学装置が知られている(特許文献1)。
【0005】
空間光変調器をホログラム用物体光発生源として用い、空間光変調器に入射した光のうち空間光変調器を透過した0次光を遮断し、空間光変調器で回折された物体光のみを用いた三次元ホログラム表示装置が知られている(特許文献2)。この装置には、空間光変調器で作製した複数の物体光を、フォトリフラクティブ効果を有する記録媒体に逐次蓄積する機構と、蓄積された複数の物体光を一括再生する機構とが備えられている。ホログラムによる立体映像を表示する特許文献3に記載の立体映像表示装置も知られている。この装置は、光路分割機構と、ホログラム計算機構と、表示された像の反射光または透過光を散乱光として出射する表示機構と、フォトリフラクティブ効果を有するホログラム記録機構とを備えている。
【0006】
特許文献4には、画像データを2次元のスライス画像に分割して、それぞれのスライス画像を、コンピュータアルゴリズムを用いてホーゲルと呼ばれる画像分割データに再構築し、これによって得られた画像データを空間光変調器にアップロードするシステムが記載されている。特許文献5には、角度多重画像を別の部屋などの遠隔地で取得し、遠く離れた場所からの3D画像リモートコミュニケーションを行う技術が記載されている。この文献では、パルスレーザー光源を用いることによって0.1、0.5、1、30、60Hzのリフレッシュ速度に対応している。これら特許文献4及び特許文献5では、いずれも表示素子を支持するステージを動かしながら画像を書き込んでおり、表示素子を構成するフォトリフラクティブ物質には、フォトリフラクティブポリマーが用いられている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平7-181878号公報
【特許文献2】特許第3487499号公報
【特許文献3】特開2001-34148号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0046333号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2011/0228040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の光学装置、特許文献2の三次元ホログラム表示装置、及び特許文献3の立体映像表示装置の記録媒体には、無機材料のフォトリフラクティブ結晶が用いられている。フォトリフラクティブ結晶は普通、数cm程度のものであり、大型ディスプレイに使用できるような大面積の無機材料のフォトリフラクティブを作るのは非常に困難である。従って、特許文献1~3に記載のシステムを用いた場合、表示デバイスを大きくすることは現実的ではなく、ディスプレイの大面積化は非常に困難である。そのため信頼性、製造性などが障壁となり、大型の3Dディスプレイ装置を量産化することはできないといった欠点がある。
【0009】
フォトリフラクティブポリマーを用いた特許文献4及び特許文献5の技術では、特許文献1~3に比べると表示素子の大面積化の難易度は低いものの、表示素子に高電圧を印加する電界印加型のシステムである。これらのシステムでは、高電圧を印加するために膜厚を厚くして絶縁破壊を防止する必要があり、表示素子に50μm以上の膜厚のフォトリフラクティブポリマーを用いている。表示素子に高電圧を印加することはシステムの複雑化を招くと共に、信頼性が低く、商用、工業用のシステムを構築する際の大きな障壁となっている。それに加え、表示素子の厚みが大きいため、低コストで生産することが困難である。
【0010】
以上述べたように、ホログラフィック表示デバイスに電圧を印加することは不可欠である。従って、ホログラフィック表示デバイスを構成するフォトリフラクティブポリマーの両側面に、電圧印加用の透明電極を装備することが必要となる。ホログラフィック表示デバイスを製作するには、例えばITO透明電極付きのガラス板に、溶解させたフォトリフラクティブポリマーを塗布して溶媒を蒸発させた後、フォトリフラクティブポリマーの厚さを一定にするためのスペーサーを載置してから、もう1枚のITO電極付きのガラス板を被せ、熱をかけながら押圧する方法が考えられている。このような製法では、フォトリフラクティブポリマーの面積を大きくし、かつ当該フォトリフラクティブポリマーの膜厚を一定とすることは困難である。そのため、特許文献4及び特許文献5の表示素子を用いる場合では、歩留りが悪く高コストになり、膜厚の不均一性により信頼性が低下することは避けられない。そのため、大量生産化には至っていない。従って、これらの技術で構築された装置は信頼性が低く、高価格であるといった問題が依然存在する。
【0011】
そこで本発明は従来技術の問題点に鑑み、信頼性が高く、ディスプレイの大面積化を容易なものとし、それと共にシステム構造を簡易なものとし、かつ工業的に量産化が可能なホログラフィック表示デバイス及び3次元ホログラフィック表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために次の技術的機構を講じた。即ち、本発明のホログラフィック表示デバイスは、ホログラムを無電界下で書き換え可能とするフォトリフラクティブポリマー複合体と、このフォトリフラクティブポリマー複合体を支持する基材とを備えるホログラフィック表示デバイスであって、前記フォトリフラクティブポリマー複合体は、膜厚:10nm~3000nmの薄膜状に形成されており、当該フォトリフラクティブ複合体の次の数式(1)で表される光学密度ODが0.5~1.5であることを特徴とするホログラフィック表示デバイスである。
(1)OD=log(I/I) I0:入射光の強度、I:出射光の強度
【0013】
上記本発明によれば、ホログラムは電界を印加することなく書き換え可能とされているため、システムを簡易なものとすることができ、商用及び工業用のシステムを構築し易い。また、無電界下で書き換え可能とするフォトリフラクティブポリマー複合体の採用により、電界印加用の電極をホログラフィック表示デバイスに装備させる必要がない。そのため、ITO電極付きのガラス材で挟み込んだサンドイッチ型のホログラフィック表示デバイスとしなくてもよく、信頼性を高くでき、量産化に適応できる多様な製法を採用することができる。また、フォトリフラクティブポリマー複合体が膜厚:10nm~3000nmの薄膜状に形成されているため、信頼性が高くかつ安価な工業的な製法が採用でき、ホログラフィック表示デバイスの大面積化が容易であるばかりでなく、低コストで大量に生産することができる。これに加えて、フォトリフラクティブポリマー複合体は厚さ10nm~3000nmの薄膜状でありながら、0.5~1.5という大きい光学密度の数値範囲を有するので、フォトリフラクティブポリマー複合体の内部に干渉縞が効率的に形成される。これにより非常に明るいホログラム再生画像を得ることのできる3次元ホログラフィック表示装置を提供できる。
【0014】
前記フォトリフラクティブポリマー複合体は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に3-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-9H-カルバゾール-9-エタノール (NACzE)を10wt%~45wt%の割合で含有させた組成を有しており、前記PMMAと前記NACzEを、沸点:100℃以上の溶媒に溶解させ、この溶液を塗布工法によって薄膜状に広げ、当該溶媒を除去することで形成されていることが好ましい。ここで、NACzEが10wt%より小さくなっても、45wt%より大きくなっても、フォトリフラクティブポリマー複合体に干渉縞を効率よく記録することができない。溶媒の沸点が100℃未満になると、PMMAとNACzEの混合物を適切に溶解させることができず、塗布工法を採用することができないことを研究の結果、明らかにしている。
【0015】
従来は、サンドイッチ型とする製法が採られており非常に煩雑であったのに対し、本発明では塗布工法によってフォトリフラクティブポリマー複合体が形成されているので、簡便に、大きな面積のホログラフィック表示デバイスを大量に製作できる。そのため工業的な生産性に極めて優れたホログラフィック表示デバイスとすることができる。さらに、PMMAとNACzEを、沸点:100℃以上の溶媒に溶解させ、この溶液を塗布工法によって薄膜状に広げ、当該溶媒を除去することで形成されているため、非常に均一な厚みの薄膜状のフォトリフラクティブポリマー複合体を得ることができる。それに加えて、上記範囲の光学密度を容易に得ることができ、ホログラフィック表示デバイスの高い応答性と高い回折効率が得られ、電界を印加しなくてもリアルタイムで明るいホログラムを得ることができる。仮に、サンドイッチ型とする製法を用いて薄いホログラフィック表示デバイスを製作すると、フォトリフラクティブポリマー複合体の厚みのむらが生じ、nmオーダーまで薄くすると厚みのむらは、より顕著となり、明瞭なホログラムを得ることができない。これに対して、本発明で採用した条件を用いて、ホログラフィック表示デバイスを製作すると、フォトリフラクティブポリマー複合体をnmオーダーまで薄くしても、厚みのむらは殆ど生じることがなく明瞭なホログラムを得ることができる。従って、良好なホログラムが得られ、それと共に量産化が可能で、かつ大きな面積のホログラフィック表示デバイスとすることができる。
【0016】
前記塗布工法の具体例として、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコートが挙げられる。
【0017】
本発明の3次元ホログラフィック表示装置は、ホログラフィック表示デバイスと、物体光及び参照光を前記ホログラフィック表示デバイスに同じ側から照射することによりホログラムを記録する記録機構と、前記記録機構による前記ホログラムの記録と同時に、プローブ光を前記ホログラフィック表示デバイスに前記物体光及び前記参照光と同じ側から照射することにより前記記録機構で記録された前記ホログラムを表示する表示機構とを備え、前記ホログラフィック表示デバイスが上記のホログラフィック表示デバイスであることを特徴とする装置である。
【0018】
上記本発明によれば、大面積化が容易であり、工業的な量産化が可能な上記のフォトリフラクティブポリマー複合体を3次元ホログラフィック表示装置に用いているため、当該装置を簡易なものとすることができ、商用及び工業用として構築し易い。ホログラフィック表示デバイスの大面積化が容易であり、低コストで大量に生産できるため、3次元ホログラフィック表示装置の工業的な量産化を可能とすることができる。さらに、書き込み光である物体光及び参照光と、読み出し光であるプローブ光とを、ホログラフィック表示デバイスの同じ側から照射することとしているので、ホログラフィック表示デバイスの片側に各種の機器を配置させることで装置を小型化することができる。
【0019】
前記記録機構は、例えば被写体を多数の視点からカメラで撮影した多視点画像データを取得する画像取得部と、この画像取得部で取得した前記多視点画像データから前記物体光を生成し、この物体光を前記参照光と共に、間欠的に水平移動する前記ホログラフィック表示デバイスへ照射して複数の要素ホログラムを記録し、これら複数の要素ホログラムからホログラフィックステレオグラムを得る記録部とを備えるものとすればよい。
【0020】
この場合、被写体の多視点画像をリアルタイムでホログラフィックステレオグラムとして表示させることができる。コンピュータアルゴリズムを用いてホーゲルと呼ばれる画像分割データに再構築する先行技術では、非常に煩雑な計算を必要としていた。これに対し、本発明ではカメラで簡易に取得した画像データをホログラフィックステレオグラムとすることができるため、システムを比較的に簡単に構築でき、設計コスト及び生産コストを低減することができる。
【0021】
前記記録部は、例えばレーザー発振器から発振されたレーザービームを分割して2つの偏光レーザービームとするビームスプリッターと、分割された一方の偏光レーザービームの偏光状態を変換し前記多視点画像データから物体光を生成する空間光変調器と、この物体光を拡散させる拡散板とを備えるものとすればよい。このような構成を採用すれば、鮮明なホログラフィックステレオグラムを得ることができる。
【0022】
前記画像取得部として、前記カメラの光軸を前記被写体に向けたままで当該カメラを水平移動させるか、又は固定した前記被写体に対して前記カメラを公転させるか、又は固定した前記カメラに対して前記被写体を自転させて前記多視点画像データを得る撮影用機器を備えるようにすればよい。
【発明の効果】
【0023】
上記本発明によれば、ホログラムは電界を印加することなく書き換え可能とされているため、システムを簡易なものとすることができ、商用及び工業用のシステムを構築し易い。無電界下で書き換え可能とするフォトリフラクティブポリマー複合体の採用により、電極をホログラフィック表示デバイスに装備させる必要がない。そのためサンドイッチ型のホログラフィック表示デバイスとしなくてもよく、量産化に適応できる多様な製法を採用することができる。フォトリフラクティブポリマー複合体が膜厚:10nm~3000nmの薄膜状に形成されているため、大面積化が容易であるばかりでなく、高い信頼が得られ、かつ低コストで大量に生産することができる。フォトリフラクティブポリマー複合体が薄膜状でありながら、光学密度の範囲が0.5~1.5とされていることで、非常に明るいホログラムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る3次元ホログラフィック表示装置の概略構成図である。
【図2】画像取得部を変更した本発明の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図3】画像取得部を変更した本発明の第3実施形態を示す概略構成図である。
【図4】ホログラフィック表示デバイスの断面模式図である。
【図5】スピンコート法に用いる成膜機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る3次元ホログラフィック表示装置1の概略構成図である。この3次元ホログラフィック表示装置1は、ホログラムを記録かつ表示させるホログラフィック表示デバイス2と、物体光及び参照光をホログラフィック表示デバイス2に照射することによりホログラムを記録する記録機構3と、プローブ光をホログラフィック表示デバイス2に照射することにより、記録機構3で記録されたホログラムを表示する表示機構4と、記録機構3と表示機構4を制御する制御部5で主に構成されている。

【0026】
ホログラムを記録する本実施形態の記録機構3は、被写体100を多数の視点からカメラ10で撮影した多視点画像データを取得する画像取得部6と、この画像取得部6で取得した多視点画像データから物体光を生成して、この物体光を参照光と共にホログラフィック表示デバイス2へ照射してホログラムとする記録部7とを有する。

【0027】
画像取得部6は、被写体100が載置される撮影用機器としての被写体ステージ8と、この被写体ステージ8の前方に配置されたカメラ10と、このカメラ10に接続されたコンピュータ9で主に構成されている。被写体ステージ8は自転するようになっており、自転する被写体100を固定したカメラ10で撮影し、その画像がコンピュータ9に表示される。カメラ10は一般的なCCDカメラ又はCMOSカメラである。自転する被写体100の複数の角度からの多視点画像データを取得して、これらをコンピュータ9で表示させることができる。

【0028】
記録部7は、レーザーを発振するレーザー発振器11と、このレーザー発振器11から発振されたレーザービームの光軸上に配置された第1半波長板12と、この第1半波長板12を通過したレーザービームを反射させる第1固定ミラー13と、この第1固定ミラー13で反射したレーザービームのビーム径を拡大する第1光学系14と、この第1光学系14で拡大されたレーザービームを分割してp-偏光とs-偏光の第1、第2の偏光レーザービームB1、B2とするビームスプリッター15を備えている。本実施形態ではレーザー発振器11の光源としてCWレーザー光源又はパルスレーザー光源を用いた。

【0029】
記録部7は、さらにビームスプリッター15で分割された第1の偏光レーザービームB1の偏光状態を変換して物体光B11とする空間光変調器16と、この物体光B11を集光させる第2光学系17と、第2光学系17を通過した物体光B11の光路方向を変更する第2、第3固定ミラー18、19と、光路方向が変更された物体光B11を拡散させる拡散板20と、ホログラフィック表示デバイス2に向けて物体光B11の集光状態を変更する第3光学系21とを備えている。空間光変調器16にはコンピュータ9が接続されており、当該コンピュータ9の画面上に映し出される動画が当該空間光変調器16に表示されるようになっている。

【0030】
記録部7は、さらにビームスプリッター15で分割された第2の偏光レーザービームB2の光路方向を変更する第4、第5固定ミラー23、24と、これら2つの固定ミラー23、24間に配置されてビーム径を拡大する第5光学系25と、ホログラフィック表示デバイス2に向けて参照光B12の集光状態を変更する第1、第2のシリンドリカルレンズ26、27と、第2のシリンドリカルレンズ27の近傍に配置されたスリット28とを備えている。記録部7は、以上の構成に加え、ホログラフィック表示デバイス2を保持しながら水平方向に移動させるデバイスステージ29を有している。

【0031】
ホログラムを表示する表示機構4は、レーザーを発振するレーザー発振器30と、このレーザー発振器30から発振されたレーザービームの光軸上に配置され、当該レーザービームをプローブ光B13とするプローブ光用半波長板31と、プローブ光B13の集光状態を変更する第6光学系32と、プローブ光B13の光路方向を変更する第6固定ミラー33と、ホログラフィック表示デバイス2の前方に配置されたカラーフィルター34とを備えている。上記の各光学系はレーザービームの集光状態を変更する単数又は複数のレンズからなり、これらの光学系を構成するレンズの数、種類は限定しない。

【0032】
記録部7のレーザー発振器11から発振されたレーザービームは、第1半波長板12を通過後、第1固定ミラー13で反射する。反射したレーザービームのビーム径が第1光学系14で拡大される。拡大されたレーザービームはビームスプリッター15で分割され、p-偏光の第1の偏光レーザービームB1はビームスプリッター15を直進する。s-偏光の第2のレーザービームB2はビームスプリッター15で反射する。第1半波長板12を回転させることによって、ビームスプリッター15を直進するp-偏光の第1の偏光レーザービームB1と、ビームスプリッター15で反射するs-偏光の第2の偏光レーザービームB2の強度比を変えることができる。ビームスプリッター15で反射したs-偏光の第2のレーザービームB2は、第4光学系22、第4、第5固定ミラー23、24、2つの固定ミラー23、24間に配置された第5光学系25、第1、第2のシリンドリカルレンズ26、27、及びスリット28を経て参照光B12となる。

【0033】
ビームスプリッターを通過したp-偏光の第1の偏光レーザービームB1は空間光変調器16で反射する。空間光変調器16は例えば液晶ディスプレイからなる透過型の表示装置であり、コンピュータ9によって制御されており、コンピュータ9から送られた画像データに基づく画像を表示する。空間光変調器16の偏光特性によりp-偏光の第1の偏光レーザービームB1は、s-偏光のレーザービームに変換されて反射する。空間光変調器16で反射したs-偏光の第1の偏光レーザービームB1は、多視点画像データに基づく物体光B11となり、ビームスプリッター15に戻り、反射する。ビームスプリッター15で反射した物体光B11は、第2光学系17、第2、第3固定ミラー18、19、拡散板20、及び第3光学系21を経てホログラフィック表示デバイス2に照射される。

【0034】
物体光B11が参照光B12と共にホログラフィック表示デバイス2に照射されて、物体光B11に含まれる空間的な強度分布及び位相分布を干渉縞として、物体光B11の空間情報がホログラフィック表示デバイス2に書き込まれる。

【0035】
表示機構4のレーザー発振器30から発振されたレーザービームは、プローブ光B13となり、このプローブ光B13は第6光学系32で集光状態を変更された後、第6固定ミラー33で光路方向が変更されてホログラフィック表示デバイス2に照射される。このとき、ホログラフィック表示デバイス2に表示させるホログラムを明るくするため、プローブ光B13をプローブ光用半波長板31でp-偏光又はs-偏光に変換することができる。記録機構3によって書き込まれた空間情報がプローブ光B13によってホログラムとして読み出され、ホログラフィック表示デバイス2に表示される。

【0036】
物体光B11と参照光B12の波長、及び物体光B11と参照光B12の強度比を変更することによって応答速度が変化する。物体光B11と参照光B12の波長は450~700nmであることが好ましく、500~600nmがより好ましい。物体光B11と参照光B12の波長が450nmを下回るか、700nmを上回ると十分な応答速度が得られない。プローブ光B13の波長は、ホログラフィック表示デバイス2の吸収の少ない波長であることが好ましい。ホログラフィック表示デバイス2の吸収の少ない波長とは、すなわち物体光より長い波長である。本実施形態では物体光B11と参照光B12の波長と、プローブ光B13の波長とが異なっている。物体光B11と参照光B12の波長と、プローブ光B13の波長とを異なるものとすることで、記録と同時に表示を可能とすることができる。ホログラフィック表示デバイス2への物体光B11の入射強度を高くすることで応答速度を大きくすることができる。このとき、参照光B12の入射光の強度を、物体光B11の強度に比例させて大きくする。

【0037】
図1に示すように、書き込み光である、物体光B11及び参照光B12はホログラフィック表示デバイス2に同じ側から照射され、それと共に読み出し光であるプローブ光B13がホログラフィック表示デバイス2に物体光B11及び参照光B12と同じ側から照射されるようになっている。物体光B11及び参照光B12とプローブ光B13とは、ホログラフィック表示デバイス2に同時に照射される。物体光B11のホログラフィック表示デバイス2への照射方向は、当該ホログラフィック表示デバイス2に対して略垂直である。参照光B12のホログラフィック表示デバイス2への照射方向は、物体光B11の照射方向とは異なり、図1左側に傾いている。プローブ光B13のホログラフィック表示デバイス2への照射方向は、物体光B11及び参照光B12とは異なり、当該物体光B11よりも参照光B12寄りに傾いている。

【0038】
本実施形態では物体光B11及び参照光B12をs-偏光とし、プローブ光B13をs-偏光としているが、物体光B11及び参照光B12をs-偏光とし、プローブ光B13をp-偏光とすることもできる。

【0039】
記録機構3と表示機構4を制御する制御部5には、2つのレーザー発振器11、30、被写体ステージ8、デバイスステージ29、カメラ10、コンピュータ9などが接続されており、これらの機器が制御されるようになっている。特に本実施形態の記録部5では、画像取得部6で取得した多視点画像データから物体光B11を生成して、この物体光B11を参照光B12と共に、デバイスステージ29によって間欠的に水平移動するホログラフィック表示デバイス2へ照射して、複数の要素ホログラムが形成される。そして、これら複数の要素ホログラムによってホログラフィックステレオグラムが構成される。

【0040】
3次元画像を表示させる手法としてホログラフィックステレオグラムが知られている。ホログラフィックステレオグラムは、被写体を異なる視点から撮影することで得られた多数の画像データを、ホログラフィック表示デバイスに例えば短冊状の要素ホログラムとして順次記録することで作製される。本実施形態では水平方向に視差情報を有するホログラフィックステレオグラムが作製される。自転する被写体100を固定したカメラ10から順次撮影することで、短冊状の要素ホログラムがホログラフィック表示デバイスに順次記録される。これにより構成されたホログラフィックステレオグラムを、ある位置から見た場合、各要素ホログラムの一部の画像情報である二次元画像が見え、そこから目の位置を水平方向に動かせば、各要素ホログラムの別の部分の画像情報である二次元画像が見える。このホログラフィックステレオグラムを両目で見たとき、左右の目の位置が水平方向で異なり、それぞれで写る2次元画像は異なるものとなるため、視差を感じ、3次元画像として認識される。

【0041】
ホログラフィックステレオグラムを構成する複数の要素ホログラムは、干渉性の良いレーザー光源を分岐し、一方のレーザービームは空間光変調器で二次元画像変調された投影像である物体光とし、他方のレーザービームは参照光として、ホログラフィック表示デバイスに集光して干渉縞を記録することにより形成される。本実施形態では、短冊状の複数の要素ホログラムを1つのホログラフィック表示デバイス2上に記録することにより、水平方向の視差情報を持たせたホログラフィックステレオグラムとなる。なお、水平方向に換えて他の方向、例えば縦方向の視差情報を持たせたホログラフィックステレオグラムとなるようにしてもよい。

【0042】
多視点画像データの取得方法を変えた実施形態を図2及び図3に示す。図2は画像取得部6を変更した本発明の第2実施形態を示す概略構成図であり、図3は画像取得部6を変更した本発明の第3実施形態を示す概略構成図である。図2に示す3次元ホログラフィック表示装置40には、固定した被写体100に対して、常に被写体像がカメラアングル内の中央に位置するようにカメラ10を公転させる撮影機器としてのカメラ移動装置41が設けられている。この実施形態では、固定した被写体100を異なる視点から当該被写体100の周りを公転するカメラ10で順次撮影し、これにより、短冊状の要素ホログラムがホログラフィック表示デバイス2に順次記録される。図3に示す3次元ホログラフィック表示装置43には、カメラ10の光軸を被写体100に向けたままで当該カメラ10を水平移動させる撮影機器としてのカメラ移動装置44が設けられている。この実施形態では、固定した被写体100を異なる視点から当該被写体100に対して水平移動するカメラ10で順次撮影し、これにより、短冊状の要素ホログラムがホログラフィック表示デバイス2に順次記録される。

【0043】
制御部5は記録機構3を制御して、画像取得部6で取得した多視点画像データを、ホログラフィックステレオグラムとなるようにホログラフィック表示デバイス2に記録する。制御ソフトには、シグマ光機(株)製のSGVIEW(製品名)を用いた。制御ソフトで制御する工程は次のとおりである。まず、被写体ステージ8の被写体を撮影し、その画像データに基づく物体光B11がホログラフィック表示デバイス2に記録された後、被写体ステージ8を自転させて、別の角度から被写体100を撮影しつつ、デバイスステージ29を動かし、別の角度から撮影された被写体100の画像データに基づく物体光がホログラフィック表示デバイス2の別の箇所に記録する。これを順次繰り返すことでホログラフィック表示デバイス2上にホログラフィックステレオグラムが構成される。それと共に、制御部5は、表示機構4を制御してホログラフィック表示デバイス2上のホログラフィックステレオグラムを視認可能とする。

【0044】
上記のSGVIEW(製品名)又は同等の機能を有するソフトを用いて、さまざまな角度から取り込んだ100枚の被写体100の画像を、順次多視点画像としてホログラフィック表示デバイス2に記録するソフトを用いることもできる。このときホログラフィック表示デバイス2上での物体光B11及び参照光B12による記録時間は1ms~1000ms程度である。デバイスステージ29の移動速度は例えば80ms/step程度、デバイスステージ29の移動幅は例えば0.04mm~10mm程度である。要素ホログラムの数は例えば2~10000個である。ここで挙げた記録時間、移動速度、移動幅、要素ホログラムの数はプログラミング等によって変更可能である。

【0045】
以上の3次元ホログラフィック表示装置1、40、43によって、ホログラフィック表示デバイス2へ、記録機構3による物体光B11と参照光B12とを順次照射してホログラフィックステレオグラムを構成するのと同時に、表示機構4によるプローブ光B13を照射する。空間光変調器16に表示される多視点画像をホログラフィックステレオグラムとして当該ホログラフィック表示デバイス2に記録するのと同時に、そのホログラフィックステレオグラムをホログラフィック表示デバイス2へ表示させる。

【0046】
図4はホログラフィック表示デバイス2の断面模式図である。このホログラフィック表示デバイス2はホログラムを無電界下で書き換え可能とするフォトリフラクティブポリマー複合体46と、このフォトリフラクティブポリマー複合体46を支持する基材47とで構成されている。基材47の一例として、例えば四方形状に形成されたガラス製の板材を用いることができる。基材47は透明であればよく、基材47を構成する素材は限定されない。フォトリフラクティブポリマー複合体46はフォトリフラクティブポリマーの単体であるか、又はフォトリフラクティブポリマーに増感剤、非線形光学色素等を添加することによって得ることができる。

【0047】
以下、フォトリフラクティブポリマー複合体46を例示する。カルバゾールを側鎖に有するビニルポリマー類に、増感剤、非線形光学色素及び可塑剤等を配合したCzポリマー複合体が挙げられる。カルバゾールを側鎖に有するビニルポリマー類の代表的な化合物として、ポリビニルカルバゾ-ル(PVCz)が挙げられる。Czポリマー複合体は例えば特開2005-227311号公報、特開2009-57528号公報、特開2010-211191号公報、特開2003-322886号公報、特許第3973964号公報、Naoto Tsutsumi,Akihito Dohi,Asato Nonomura,and Wataru Sakai,J.Polym.Sci.Part
B:Polym.Phys.49,pp.414-420(2011).に記載されている。

【0048】
ポリ(ジフェニルアミノ)スチレン(PDAS)に、増感剤、非線形光学色素及び可塑剤等を配合したPDAS複合体が挙げられる。PDAS複合体は、例えばN.Tsutsumi, T. Murao, and W. Sakai, Macromolecules, 38(17)pp.7521-7523(2005).に記載されている。

【0049】
芳香族第3級アミンとアルデヒドとの付加重合体であるトリフェニルアミンポリマーに、増感剤、非線形光学色素を混合させた複合体が挙げられる。この複合体は特開2001-255566号公報に記載されている。

【0050】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)、又はポリエチルメタクリレート(PEMA)に、光導電性部位と非線形光学部位を一つの分子内に持つ分子である下記式(1)で表される3-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-9H-カルバゾール-9-エタノール (NACzE)を、配合したNACzE複合体が挙げられる。NACzE複合体は、A.Tanaka,J.Nishide,H.Sasabe、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,504,44-51(2009).に記載されている。

【0051】
【化1】
JP2014240861A_000003t.gif

【0052】
PVCz又はPMMAに、下記式(2)で表されるヘミシアニン色素を混合させたヘミシアニン色素系複合体が挙げられる。ヘミシアニン色素系複合体は、J.-W. Lee ら “Novel polymer composites with high optical gain based on pseudo-photorefraction”,Adv.Mater.14(2),pp.144-147(2002)に記載されている。

【0053】
【化2】
JP2014240861A_000004t.gif

【0054】
PMMA、NACzE及びイオン性液体を配合したイオン性複合体が挙げられる。イオン性複合体を用いれば、応答速度が極めて速くなりミリ秒オーダーの応答も可能とすることができる。イオン性液体の代表的なものとして下記式(3)で表される1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(BMIM)が挙げられる。

【0055】
【化3】
JP2014240861A_000005t.gif

【0056】
PMMA、BMIM及びモノシリック化合物を配合したモノシリック複合体が挙げられる。モノシリック化合物の代表的なものとして、下記式(4)に示す[4-(4-ニトロフェニルアゾ)-フェニル]-ジフェニルアミン(NATA)が挙げられる。

【0057】
【化4】
JP2014240861A_000006t.gif

【0058】
(増感剤)
増感剤は電子受容体としての性能を有しており、フォトリフラクティブ性を高めるために配合される。増感剤が配合されると、当該増感剤とフォトリフラクティブポリマーとによって電荷移動錯体が形成されてフォトリフラクティブ性が発現される。さらに、増感剤の配合により、分子配向の制御なし(無電界下)でのフォトリフラクティブ性を発現させることができる。

【0059】
増感剤の具体例として、(2、4、7-トリニトロ-9-フルレニィリデン)マロニトリル(TNF-DM)、[6,6]-フェニルC61ブタン酸メチルエステル(PCBM)、2、4、7-トリニトロ-9-フルオレノン(TNF)、フラーレンC60、フラーレンC70、テトラシアノベンゼン(TCBN)、テトラシアノキノジノメタン(TCNQ)、ベンゾキノン(BQ)、及びその誘導体、2、6-ジメチル-p-ベンゾキノン(MQ)、2、5-ジクロロ-p-ベンゾキノン(ClQ)、2、3、5、6-テトラクロロ-p-ベンゾキノン(クロラニル)、2、3-ジクロロ-5、6-p-ベンゾキノン(DDQ)等が挙げられる。これら具体例のうち、フォトリフラクティブポリマーに対する溶解性の点で、2、4、7-トリニトロ-9-フルオレノン(TNF)がより好ましい。増感剤は、一種のものを単独で使用してもよく、2種類以上のものを併用しても良い。

【0060】
増感剤の含有量としては、フォトリフラクティブポリマー100重量%に対して、下限値としては0.1重量%が好ましく、0.5重量%がさらに好ましく、1重量%が最も好ましく、上限値としては30重量%が好ましく、20重量%がさらに好ましく、10重量%が最も好ましい。増感剤の含有量が0.1重量%以下であると、無電界下でのフォトリフラクティブ性が低くなる。増感剤の含有量が30重量%よりも多いと、増感剤による電荷移動錯体の濃度が高くなるため、光の吸収の増大が招来されて光の透過度が顕著に低下してしまう。

【0061】
(非線形光学色素)
非線形光学色素とは2次の非線形光学特性を示すドナーアクセプター型分子、すなわち、電場によって屈折率が変化する材料(2次非線形光学材料)のことである。非線形光学色素の具体例として、2、5-ジメチル-4-(p-ニトロフェニルアゾ)アニソール(DMNPAA)、4-アミノ-4‘-ニトロアゾベンゼン(ANAB)、s-(-)-1-(4-ニトロフェニル)-2-ピロリジン-メタノール(NPP)、4-(ジエチルアミノ)-(E)-β-ニトロスチレン(DEANST)、(ジエチルアミノ)ベンツアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、PDCST、AODCST、[[4-(ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)フェニル]メチレン]プロパンジニトリル(7-DCST)、TDDCST、DCDHF-6等のアミノシアノスチレン類が挙げられる。非線形光学色素は、一種のものを単独で使用してもよく、2種類以上のものを併用しても良い。

【0062】
非線形光学色素の含有量としては、フォトリフラクティブポリマー100重量%に対して、下限値として20重量%が好ましく、25重量%がさらに好ましく、上限値として50重量%が好ましく、40重量%がさらに好ましく、30重量%が最も好ましい。非線形光学色素の含有量が20重量%よりも少ないと、フォトリフラクティブ効果に必要な回折効率や利得係数が得られない場合がある。非線形光学色素の含有量が、50重量%よりも多いと、他の成分との量比にアンバランスが生じて、フォトリフラクティブポリマー複合体46の設計に悪影響を及ぼす場合がある。

【0063】
(可塑剤)
可塑剤はマトリックスのガラス転移温度を低下させる役割を果たす。可塑剤の具体例として、エチルカルバゾール(ECZ)、又はプロピオン酸カルバゾイルエチル(CzEPA)、トリフェニルアミン(TPA)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCP)リン酸トリクレジル(TCP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、N-メチル-1-ピロリドン、N-オクチル-1-ピロリドン、N-ドデシル-1-ピロリドン等のN-アルキル-1-ピロリドン類、並びに2-(1、2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルプロピオネート (AX22)、2-(1、2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルブチレート、2-(1、2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルベンゾエート、2-(1、2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルアクリレート、2-(フタルイミド)エチルプロピオネート(AX23) 等のイミド化合物等が挙げられる。

【0064】
可塑剤の含有量としては、フォトリフラクティブポリマー100重量%に対して、下限値として10重量%が好ましく、15重量%がさらに好ましく、上限値として40重量%が好ましく、30重量%がさらに好ましく、20重量%が最も好ましい。可塑剤の含有量が10重量%よりも少ないと、可塑効果すなわちマトリックスのガラス転移温度が低下せず、フォトリフラクティブ効果に必要な回折効率や利得係数が得られない場合がある。可塑剤の含有量が40重量%よりも多いと、他の成分との量比にアンバランスが生じてフォトリフラクティブポリマー複合体46の設計に悪影響を及ぼす場合がある。

【0065】
(ホログラフィック表示デバイスの作製)
ホログラフィック表示デバイス2は凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコートなどの塗布工法によって作製することができる。図5はスピンコート法に用いる成膜機器200の概略図である。フォトリフラクティブ複合体46を構成するための物質を溶媒に溶解させて、ポリマー溶液300を調整する。基材として例えばガラス基板47を準備し、これをスピン回転装置201に装着する。スピン回転装置201に装着したガラス基板47の上に、ポリマー溶液300を滴下してまんべんなく広げる。その後、ガラス基板47をスピン回転装置201によって、所定回転数と所定時間で回転させる。スピンコートしたガラス基板47をスピン回転装置201から取り外した後、加熱、減圧などの方法で溶媒を除去する。これにより、フォトリフラクティブ複合体46が薄膜状に形成されたホログラフィック表示デバイス2を得る。スピンコートするための、回転数と時間は、フォトリフラクティブポリマー、溶媒、膜厚などに応じて適切な条件に変更すればよい。

【0066】
フォトリフラクティブポリマー複合体46は、PMMAにNACzEを10wt%~45wt%の割合で含有させた組成を有する複合体が好適である。NACzEが10wt%より小さくなっても、45wt%より大きくなっても、干渉縞を効率よく記録することができない。この場合、PMMAとNACzEを溶解させるために用いる溶媒は、沸点:100℃以上の溶媒が好ましい。沸点:100℃以上の溶媒としては、例えばジメチルホルムアルデヒド(DMF)が挙げられる。沸点:100℃以上の溶媒を用いる理由は、沸点が100℃より低いTHF又はアセトンのような溶媒を用いると、NACzEの凝集が起こり、NACzEを均一に含有させることができない。PMMAとNACzEをDMFに溶解させる際、DMF中における、PMMAとNACzEとを合わせた濃度は5wt%~30wt%であり、より好ましくは10wt%~20wt%であり、さらに好ましくは12wt%~15wt%である。濃度が5wt%よりも小さいと、フォトリフラクティブポリマー複合体の欠損ができ易く、濃度が30wt%よりも大きいと、NACzEの分散状態が不均一となり易い。

【0067】
上記のスピンコート法、又は凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコートなどの塗布工法によってフォトリフラクティブポリマー複合体46を膜厚:10nm~3000nmの薄膜状に形成する。フォトリフラクティブポリマー複合体46は、次の数式(1)で表される光学密度OD:0.5~1.5の物性値を有する。そのため、有効なフォトリフラクティブ性が発現する。
(1)OD=log(I/I) I0:入射光の強度、I:出射光の強度

【0068】
本実施形態のホログラフィック表示デバイス2及び3次元ホログラフィック表示装置1、40、43によれば、被写体100の多視点画像データに基づくホログラフィックステレオグラムがホログラフィック表示デバイス2に記録され、このホログラフィック表示デバイス2にフォトリフラクティブポリマー複合体46を用いているので、当該ホログラフィック表示デバイス2を容易に大面積化することができる。それに加え、本実施形態のホログラフィック表示デバイス2を用いることにより、ホログラフィックステレオグラムを無電界下で記録、再生でき、かつ書き換えが可能である。

【0069】
そのため、電界印加装置を構築する必要がなくシステムを簡易なものとすることができ、商用及び工業用のシステムを構築し易い。それと共にホログラフィック表示デバイス2を取り替えることなく、異なったホログラフィックステレオグラムを瞬時に表示させることができる。

【0070】
また、無電界下で書き換え可能とするフォトリフラクティブポリマー複合体46の採用により、電界印加用の電極をホログラフィック表示デバイス2に装備させる必要がない。そのため、ITO電極付きのガラス材で挟み込んだサンドイッチ型のホログラフィック表示デバイスとしなくてもよく、信頼性を高くでき、量産化に適応できる多様な製法を採用することができる。フォトリフラクティブポリマー複合体が膜厚:10nm~3000nmの薄膜状に形成されているため、大面積化が容易であるばかりでなく、低コストで大量に生産することができる。そして、ホログラフィック表示デバイス2を適用したディスプレイの形状を、平面形状は勿論であるが、円筒形状、球状などの曲面を有する形状とすることができ、適用範囲を格段に広げることができる。フォトリフラクティブポリマー複合体46は薄膜状でありながら、0.5~1.5という大きい光学密度の数値範囲を有するので、干渉縞がフォトリフラクティブポリマー複合体46に効率的に形成される。これにより非常に明るいホログラム再生画像を得ることのできる3次元ホログラフィック表示装置1を提供できる。

【0071】
従来は、サンドイッチ型とする製法が採られており非常に煩雑であったのに対し、本実施形態では、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット、熱転写印刷、ディスペンサ、スピンコート、ダイコート、マイクログラビアコート、ディップコート等の塗布工法によってフォトリフラクティブポリマー複合体46が形成されているので、簡便に、大きな面積のホログラフィック表示デバイス2を大量に製作できる。そのため工業的な生産性に極めて優れたホログラフィック表示デバイスとすることができる。PMMAとNACzEを、沸点:100℃以上の溶媒に溶解させ、この溶液をスピンコート法又はロールコート法によって薄膜状に広げ、当該溶媒を除去することで形成する場合、非常に均一な厚みの薄膜状のフォトリフラクティブポリマー複合体46を得ることができる。それに加えて、上記範囲の光学密度を容易に得ることができ、ホログラフィック表示デバイス2の高い応答性と高い回折効率が得られ、リアルタイムで明るいホログラムを得ることができる。サンドイッチ型とする製法を用いて薄いホログラフィック表示デバイスを製作すると、フォトリフラクティブポリマー複合体の厚みのむらが生じ、nmオーダーまで薄くすると厚みのむらはより顕著となり、明瞭なホログラムを得ることができない。これに対して、本実施形態で採用した条件を用いて、ホログラフィック表示デバイス2を製作すると、フォトリフラクティブポリマー複合体46をnmオーダーまで薄くしても、厚みのむらは殆ど生じることがなく明瞭なホログラムを得ることができる。従って、量産化可能で、かつ良好なホログラムが得られるホログラフィック表示デバイス2とすることができる。

【0072】
書き込み光である物体光B11及び参照光B12と、読み出し光であるプローブ光B13とを、ホログラフィック表示デバイス2の同じ側から照射しているので、ホログラフィック表示デバイス2の片側に各種の機器を配置させることで装置を小型化することができる。被写体100の多視点画像をリアルタイムでホログラフィックステレオグラムとして表示させることができ、カメラ10で簡易に取得した画像データをホログラフィックステレオグラムとすることができる。そのため、システムを比較的に簡単に構築でき、設計コスト及び生産コストを低減することができる。

【0073】
複数の要素ホログラムを記録してホログラフィックステレオグラムを形成する本実施形態の3次元ホログラフィック表示装置1、40、43を適用すれば、書き換え可能な3次元ホログラムをリアルタイムで構築できる。例えばインターネット回線を使用して、画像取得部6と、記録部7及び表示機構4とを繋げば、被写体の多視点画像データをある場所で取得して、別の遠隔地でリアルタイムにその3次元画像をホログラフィックステレオグラムとして表示させることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。第1実施形態と同じ3次元ホログラフィック表示装置を製作し、被写体の表面からの物体光と、参照光とをホログラフィック表示デバイスに順次照射して複数の要素ホログラムを記録し、ホログラフィックステレオグラムを形成する。それと同時にプローブ光をホログラフィック表示デバイスに照射して表示させる。
【実施例】
【0075】
ホログラフィック表示デバイスの作製は、図5の成膜機器200を用いて行った。フォトリフラクティブ複合体を構成する物質が14Wt%となるようにDMFに溶解させて、ポリマー溶液300を調整した。本実施形態では、フォトリフラクティブ複合体として、PMMAにNACzEを30wt%の割合で配合したNACzE複合体を用いた。なお、NACzE複合体中のNACzEの配合割合は10wt%~45wt%が好ましい。基材として100mm×100mmに形成したガラス板47を準備し、これをスピン回転装置201に装着した。スピン回転装置201に装着したガラス板47の上に、ポリマー溶液300を滴下してまんべんなく広げた。その後、ガラス板47をスピン回転装置201によって、1000rpmで7秒間スピン回転させ、引き続き2000rpmでさらに7秒間スピン回転させた。スピンコートしたガラス板47をスピン回転装置201から取り外した後、100℃で12時間乾燥させ、溶媒を除去し、薄膜状のフォトリフラクティブ複合体を有するホログラフィック表示デバイスを得た。
【実施例】
【0076】
レーザービームの照射条件は以下のとおりである。波長532nmのグリーンレーザー光源(1500mW)を用い、物体光の光強度22mW、参照光の光強度22mW(220mW/cm)でホログラムの記録を行う。同時に、波長594nmのレッドレーザー(100mW)をプローブ光とした。
【実施例】
【0077】
ホログラムの記録、表示、及び上書きのよる消去のそれぞれに要する時間は数秒であった。これらの結果から、秒単位でホログラムが記録され、それと同時に表示され、消去されていることが認められた。
【実施例】
【0078】
実施形態及び実施例は例示であり制限的なものではない。例えば他の装置や機器を3次元ホログラフィック表示装置に設けることができる。
【符号の説明】
【0079】
1、40、43 3次元ホログラフィック表示装置
2 ホログラフィック表示デバイス
3 記録機構
4 表示機構
5 制御部
6 画像取得部
7 記録部
8 被写体ステージ
9 コンピュータ
10 カメラ
11、30 レーザー発振器
15 ビームスプリッター
16 空間光変調器
20 拡散板
26 第1のシリンドリカルレンズ
27 第2のシリンドリカルレンズ
28 スリット
29 デバイスステージ
41、44 カメラ移動装置
46 フォトリフラクティブポリマー複合体
47 基材
100 被写体
200 成膜機器
B11 物体光
B12 参照光
B13 プローブ光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4