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明細書 :抗菌性消臭剤および抗菌性消臭剤の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-218486 (P2014-218486A)
公開日 平成26年11月20日(2014.11.20)
発明の名称または考案の名称 抗菌性消臭剤および抗菌性消臭剤の製造方法
国際特許分類 A01N  59/16        (2006.01)
A01P   3/00        (2006.01)
A01N  25/08        (2006.01)
A01N  25/00        (2006.01)
B01J  20/18        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
A61L   9/01        (2006.01)
C01B  39/16        (2006.01)
FI A01N 59/16 A
A01P 3/00
A01N 25/08
A01N 25/00 101
B01J 20/18 D
B01J 20/30
A61L 9/01 B
A61L 9/01 M
C01B 39/16
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2013-100769 (P2013-100769)
出願日 平成25年5月10日(2013.5.10)
発明者または考案者 【氏名】横川 善之
出願人 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100118924、【弁理士】、【氏名又は名称】廣幸 正樹
審査請求 未請求
テーマコード 4C080
4G066
4G073
4H011
Fターム 4C080AA05
4C080BB02
4C080BB05
4C080HH05
4C080JJ04
4C080KK08
4C080LL03
4C080MM04
4C080NN01
4C080QQ03
4G066AA62B
4G066BA09
4G066CA02
4G066CA24
4G066DA03
4G066FA03
4G066FA05
4G066FA21
4G066FA34
4G073BA11
4G073BA49
4G073CB07
4G073CZ02
4G073FB19
4G073FB26
4G073FB36
4G073FD08
4G073UB33
4H011AA02
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA02
4H011DC05
4H011DD00
4H011DD07
4H011DF02
4H011DG03
要約 【課題】ゼオライトは、吸着能を有し、Ag、Cu、Znといった抗菌性金属成分を含有させることで、抗菌性を有する点も、すでに知られている。しかし、水中に曝される環境で使用される場合は、継時的にこれらの抗菌性金属成分が脱離するという課題が生じる。抗菌性金属成分の脱離は、抗菌能力の低下を招くだけでなく、環境負荷の原因ともなる。
【解決手段】水酸化ナトリウムとメタ珪酸ナトリウムからLTA型ゼオライトを調製する工程と、前記LTA型ゼオライトのナトリウムイオンを抗菌性金属イオンに交換する工程と、前記抗菌性金属イオンの一部をカルシウムイオンに交換する工程を有することを特徴とする抗菌性消臭剤の製造方法によって提供される抗菌性消臭剤は、水に曝される環境中での金属イオン放出が抑制される。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
水酸化ナトリウムとメタ珪酸ナトリウムからLTA型ゼオライトを調製する工程と、
前記LTA型ゼオライトのナトリウムイオンを抗菌性金属イオンに交換する工程と、
前記抗菌性金属イオンの一部をカルシウムイオンに交換する工程を有することを特徴とする抗菌性消臭剤の製造方法。
【請求項2】
前記ナトリウムイオンを抗菌性金属イオンに交換する工程は、複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載された抗菌性消臭剤の製造方法。
【請求項3】
さらに、リン酸カルシウムで全体をコーティングする工程を有することを特徴とする請求項1または2のいずれかの請求項に記載された抗菌性消臭剤の製造方法。
【請求項4】
前記抗菌性金属イオンは銀イオンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の請求項に記載された抗菌性消臭剤の製造方法。
【請求項5】
抗菌性金属イオンとカルシウムイオンを有するLTA型ゼオライトの表面をリン酸カルシウムでコーティングしたことを特徴とする抗菌性消臭剤。
【請求項6】
前記抗菌性金属イオンは銀であることを特徴とする請求項5に記載された抗菌性消臭剤。
【請求項7】
前記LTA型ゼオライトは、βサイトにCaイオン、αサイトにCaイオンとAgイオン、γサイトにAgイオンが含まれ、前記αサイトのCaイオンはAgイオンより多いことを特徴とする請求項5乃至6のいずれか1の請求項に記載された抗菌性消臭剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、抗菌消臭剤に関するものであり、特に抗菌性金属成分が水中に溶出しない抗菌性消臭剤および抗菌性消臭剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、抗菌消臭剤として、抗菌性金属成分をゼオライトに担持した抗菌消臭剤は公知であるとされている。この抗菌消臭剤は、樹脂、塗料、繊維、皮革、家具類、化粧品などに添加または塗布して用いられる。しかし、従来公知であるとされていた抗菌性金属成分を担持したゼオライトは、継時的に徐々に変色したり、透明性が得られないという課題があった。
【0003】
特許文献1はこのような課題に対して、平均一次粒子径(D1)が20~200nmの範囲にあり、平均二次粒子径(D2)が20~400nmの範囲にあり、(D2)/(D1)が1~5の範囲にあるコロイド状フォージャサイト型ゼオライトに、銀、銅、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム、水銀から選ばれる1種または2種以上の金属イオンおよび/または金属錯イオンを含むことを特徴とする抗菌消臭剤を開示している。
【0004】
また、ゼオライト中にAgやCaを含ませることで、ヨウ素129の吸蔵性が高くなり、またヨウ素を吸蔵させた後、表面をアパタイトでコーティングすることで、ヨウ素を封じ込める発明が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-209089号公報
【特許文献2】特開2009-098083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゼオライトは、多孔質性を有しており、吸着能を有している点はよく知られている。これにAg、Cu、Znといった抗菌性金属成分を含有させることで、抗菌性を有する点も、上記のようにすでに知られている。
【0007】
これらの抗菌性金属成分は、ゼオライトのSiとAlの電荷の差によって、-1価になるサイトにイオン交換によって吸着されている。そのため、特に水中に曝される環境で使用される場合は、継時的にこれらの抗菌性金属成分が脱離するという課題が生じる。抗菌性金属成分の脱離は、抗菌能力の低下を招くだけでなく、環境負荷の原因ともなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題に鑑み、液相中でも抗菌性金属成分が溶出することのない、抗菌性消臭剤を提供する。
【0009】
より具体的に、本発明の抗菌性消臭剤の製造方法は、
水酸化ナトリウムとメタ珪酸ナトリウムからLTA型ゼオライトを調製する工程と、
前記LTA型ゼオライトのナトリウムイオンを抗菌性金属イオンに交換する工程と、
前記抗菌性金属イオンの一部をカルシウムイオンに交換する工程を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る抗菌性消臭剤は、
抗菌性金属イオンとカルシウムイオンを有するLTA型ゼオライトの表面をリン酸カルシウムでコーティングしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る抗菌性消臭剤は、抗菌性金属成分をLTA型ゼオライトに含有させ、その周囲をCaでコーティングしたので、抗菌性金属成分の溶出量を抑制することができる。また、コーティングしたCaの周囲をさらにアパタイトでコーティングしたものは、より抗菌性金属成分の溶出を抑制することができる。また、抗菌性金属成分を有しているので、抗菌能を有する消臭剤を提供できる。
【0012】
また、本発明に係る抗菌性消臭剤は、水分中でも抗菌剤および消臭剤として効果を有する。すなわち、水分を含む雰囲気中でも持続して効果を発揮する消臭剤として用いることができ、また、水分を含む雰囲気中でも持続して効果を発揮する抗菌剤として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】気相中での吸着を調べる実験装置の構成を示す図である。
【図2】気相中で各試料の硫化水素の吸着結果を示すグラフである。
【図3】気相液相共存下で各試料の硫化水素吸着を調べる実験装置の構成を示す図である。
【図4】気相液相共存下で各試料の気相中の硫化水素ガスの吸着結果を示すグラフである。
【図5】Ag-LTAを用いた場合に、溶液中に発生した微粒子のSEM写真である。
【図6】液相中で各試料の硫化水素の吸着を調べる実験装置の構成を示す図である。
【図7】気相液相共存下で各試料の液相中の硫化水素ガスの吸着結果を示すグラフである。
【図8】LTA型ゼオライトの結晶構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下は本発明の一例を示すのであり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、以下の実施形態および実施例を変更しても本発明の技術的範囲に含まれるのは言うまでもない。

【0015】
本発明に係る抗菌性消臭剤は、LTA型ゼオライトを用いる。そして、通常LTA型は、Na(ナトリウム)イオンを有する形で得られるが、このNaを抗菌性金属イオンに交換する。ここで、抗菌性金属は、Ag(銀)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)が好適に利用することができる。ゼオライトは結晶の形によって、特性が大きく変わることが知られている。悪臭となるアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等の物質(以後、「悪臭物質」と呼ぶ。)を吸着できるほどの細孔を有する。

【0016】
本発明に係る抗菌性消臭剤は、この抗菌性金属イオンでイオン交換されたゼオライトの抗菌性金属イオンの一部をCa(カルシウム)イオンにイオン交換する。また、Caをイオン交換したものにアパタイト(リン酸カルシウム)コーティングを行う。このようにすることで、悪臭物質は吸着し、なおかつ液中への抗菌性金属イオンの溶出が抑制される。また、このようなアパタイトコーティングを行っても、抗菌性は保持される。以下、実施例に基づいて本発明に係る抗菌性消臭剤を説明する。

【0017】
<イオン交換ゼオライト>
(LTAの合成)
LTA型ゼオライトを以下の手順で合成した。超純水(ミリQ水、Millipore製、Direct-Qより採取)80mlをメスシリンダーで秤量し、上皿天秤(sefi製、IBA-200)で秤量した水酸化ナトリウム(キシダ化学、特級)0.723gをガラス棒で攪拌して溶解させ水酸化ナトリウム溶液を得た。メスシリンダーで等量の水酸化ナトリウム溶液を秤量し、二つの三角フラスコにわけた。

【0018】
片方の溶液(溶液A)に、アルミン酸ナトリウム(和光純薬工業、一級)8.258gを、もう片方の溶液(溶液B)にメタ珪酸ナトリウム5水和物(STREM CHEMICALS)15.480gを、それぞれ加えた。三角フラスコ中に攪拌子を入れ、ホットスターラー(アズワン製、RSH-10)で攪拌子を600rpmで回転させてアルミン酸ナトリウムとメタ珪酸ナトリウムを溶解させた。

【0019】
次に、溶液Aに溶液Bを速やかに加え、80℃でホットスターラーを用い500rpmで攪拌した。得られた溶液をポリプロピレン容器(250mL)に入れ、100℃に設定した水浴(アズワン製、ANALOG BATH EW-100 )中で4時間湯煎した。

【0020】
得られた溶液を遠心分離器(Kubota製、6900)を用いて、1000rpmで5分間、遠心分離し、固液分離した。デカンテーションで上澄み液を除去し、固形物をシャーレに移し、プログラム定温乾燥器(アズワン製、DOV-450P)中、90℃で24時間乾燥し、白色粉末を得た。これをNa-LTA型ゼオライト(以下単に「Na-LTA」とも呼ぶ。)とした。

【0021】
<イオン交換型ゼオライトの作製>
(Ag置換型ゼオライトの作製)
上記のNa-LTAのNaイオンに対して、Agイオン交換反応を以下のように行った。ミリQ水をメスシリンダーで1L秤量し、2Lビーカー中に入れた。ついで硝酸銀(和光純薬工業、特級)を0.850gを秤量して加え、ホットスターラー(RSH-10、アズワン製)上で500rpmで攪拌、溶解して0.005M硝酸銀水溶液を得た。

【0022】
得られた0.005M硝酸銀水溶液1Lに、Na-LTAの1.000gを秤量して加え、50℃に保持し、攪拌子を用いて、ホットスターラー上で、500rpmで1時間攪拌した。生成した固形物は、ろ紙(KIRIYAMA製、5C)と吸引ろ過機(KIRIYAMA製)でろ別し、ミリQ水を用いて十分に水洗し、未反応物質を除去した。上述と同様に、遠心分離、デカンテーションで、上澄み液を除去した固形物はシャーレに移し、プログラム定温乾燥器(DOV-450P、アズワン製)中、90℃で24時間乾燥し、灰色粉末を得た。

【0023】
0.005M硝酸銀水溶液中での攪拌、ろ別、遠心分離、デカンテーション、乾燥の作業をn(最大5)回繰り返した。得られた試料をAg-LTA[n]とした。ここで、「[n]」は、0.005M硝酸銀水溶液中での攪拌、ろ別、遠心分離、デカンテーション、乾燥の作業の回数後の試料を意味する。

【0024】
(Ca置換型ゼオライトの作製)
上記のNa-LTAのNaイオンに対して、Caイオン交換反応を以下のように行った。塩化カルシウム(和光純薬工業、特級)11.000gをミリQ水200mlにガラス棒で溶解して0.5M塩化カルシウム水溶液を得た。Na-LTAを1.000g秤量し、0.5M塩化カルシウム水溶液200ml中に入れ、ホットスターラー(RSH-10、アズワン製)上で50℃、攪拌子を用い、500rpmで24時間攪拌した。

【0025】
得られた固形物を吸引ろ過によりろ別し、さらにミリQ水を用いて十分に水洗し、未反応物質を除去した。上述と同様に、遠心分離、デカンテーションで上澄み液を除去した固形物をシャーレに移し、プログラム定温乾燥器(DOV-450P、アズワン製)中、90℃で24時間乾燥し、白色粉末を得た。得られた試料をCa-LTAとした。

【0026】
(Ca-Ag置換型ゼオライトの作製)
Ag-LTA[5]1.000gを塩化カルシウム水溶液(0.005M)1L中に分散して陽イオン交換反応を以下のように行った。塩化カルシウム(和光純薬工業、特級)0.550gをミリQ水1Lに溶かし塩化カルシウム水溶液を得た。ホットスターラー(RSH-10、アズワン製)上で50℃、攪拌子を用い500rpmで1時間攪拌した。

【0027】
得られた固形物を吸引ろ過によりろ別し、ミリQ水を用いて十分に水洗し、未反応物質を除去した。上述と同様に、遠心分離、デカンテーションで上澄み液を除去した固形物をシャーレに移し、プログラム定温乾燥器(DOV-450P、アズワン製)中、90℃で24時間乾燥し、Agイオンの一部をCaイオンに置換したAg-LTAを得た。得られた試料をCa-Ag-LTAとした。

【0028】
(Ag-Ca置換型ゼオライトの作製)
Ca-LTA1.000gを硝酸銀水溶液(0.005M)1L中に分散して陽イオン交換反応を以下のように行った。硝酸銀(和光純薬工業、特級)0.850gをミリQ水1Lに溶かし、硝酸銀水溶液を得た。ホットスターラー(RSH-10、アズワン製)上で50℃、スターラーを用い500rpmで1時間攪拌した。

【0029】
得られた固形物を吸引ろ過によりろ別し、ミリQ水を用いて十分に水洗し、未反応物質を除去した。上述と同様に、遠心分離、デカンテーションで上澄み液を除去した固形物をシャーレに移し、プログラム定温乾燥器(DOV-450P、アズワン製)中、90℃で24時間乾燥し、Caイオンの一部をAgイオンに置換したCa-LTAを得た。得られた試料をAg-Ca-LTAとした。

【0030】
(リン酸カルシウムコーティング)
Ca-Ag-LTAをリン酸アンモニウム水溶液(2M)100ml中に入れ、密栓したポリ瓶をプログラム定温乾燥器(DOV-450P、アズワン製)中、80℃で8時間保持した。得られた固形物を吸引ろ過によりろ別し、ミリQ水を用いて十分に水洗し、未反応物質を除去した。

【0031】
上述と同様に、遠心分離、デカンテーションで上澄み液を除去した固形物をシャーレに移し、プログラム定温乾燥器中、90℃で24時間乾燥し、試料を得た。得られた試料をAP-Ca-Ag-LTAとした。なお、リン酸アンモニウム水溶液は、リン酸アンモニウム(和光純薬工業、特級)23.000gをミリQ水100mlに溶かしたものを用いた。

【0032】
<イオン交換による硫化水素ガス吸着の効果>
図1に硫化水素ガスの吸着実験装置を示す。吸着容器1は、容量が10Lのつぼ型蓋付きガラス容器である。吸着容器1内部には、シャーレ10が配置されている。吸着容器1の蓋2には、吸着容器1の中の気体を採取するためのセプタム3と、吸着容器1内に硫化水素ガスを注入する注入口4と、試料を吸着容器1内部のシャーレ10に投入できるすり合わせガラスコック付分液ロート5が設けられている。

【0033】
実験方法は、以下の通りである。まず、吸着容器1内を脱気し、窒素ガスでパージした。次に硫化水素ガスをシリンジ6で吸着容器1内に注入した。硫化水素ガスは、吸着容器1内の硫化水素濃度が30±2ppmになるように注入した。次にガラスコック付分液ロート5を介して、試料をシャーレ10中に導入した。なお、シャーレ10中の試料を符号7で示した。試料投入後0.5時間、1時間、1.5時間、2時間後にセプタム3から吸着容器1内の気体をシリンジ6で採取した。採取した気体は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GCMS QP5000:島津製作所株式会社製)を用いて硫化水素ガス濃度を測定した。

【0034】
図2にNa-LTAと、Ag-LTA[1]、Ag-LTA[3]、Ag-LTA[5](Ag-LTA)の硫化水素ガス吸着能力の結果を示す。横軸は時間(h)であり、縦軸は硫化水素濃度(%)である。縦軸は実験開始の初期濃度と経過時間後の濃度の割合を示す。コントロールとして、何も入れない状態をBlankとして入れた。

【0035】
図2を参照して、NaをAgに置換することにより、吸着能が向上していることがわかる。また、Agのイオン交換の作業は、回数を増やす毎に吸着能が向上している。また、NaをAgに交換することで、細孔径が大きくなり、硫化水素を吸着しやすくなると考えられる。

【0036】
次に、これらの試料の気相液相共存下での気相中の硫化水素吸着について調べた。図3に実験装置を示す。使用する吸着容器1は、図1で説明したものと同じものである。同じ部分には同様の符号を付し、説明を省略する。吸着容器1の中には、超純水150mlを入れたビーカー11が配置されている。また、ビーカー11の中には、攪拌子12が入れられており、吸着容器1外からマグネチックスターラー(図示せず)で、回転させることができる。

【0037】
実験は以下のようにして行った。まず、吸着容器1内を超純水が室温で沸騰しない程度まで減圧し、その後窒素ガスでパージした。次に吸着容器1内に48.5ppmの硫化水素ガスを注入口4から導入する。吸着容器1内の硫化水素ガスが均一になったら、ガラスコック付分液ロート5から、試料0.2gを吸着容器1内のビーカー11に投入する。以後ビーカー11内の液体を溶液13と呼ぶ。投入後0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間後に、セプタム3から吸着容器1内部の気体をシリンジ6で採取する。採取したガス中の硫化水素濃度を炎光光度検出器付ガスクロマトグラフ(GC-FPD)によって測定した。

【0038】
(気相液相共存下での気相中の硫化水素吸着実験の結果)
Na-LTA、Ag-LTA、Ca-LTA、Ag-Ca-LTA、Ca-Ag-LTA、AP-Ca-Ag-LTAをそれぞれ用い、吸着容器1内の硫化水素濃度変化を図4に示す。図4は横軸が時間(h)で、縦軸が吸着容器1内の硫化水素濃度(%)を表す。なお、コントロールとして吸着材を入れていないものを「Blank」として入れている。

【0039】
Na-LTA、Ag-LTA、Ag-Ca-LTA、Ca-Ag-LTAは、4時間以内に吸着容器1内の硫化水素濃度がゼロになった。アパタイトコーティングしたAP-Ca-Ag-LTAは12時間後には、硫化水素濃度がゼロになった。

【0040】
Na-LTAの場合、試料を吸着容器1内に投入してから2時間後に、硫化水素濃度は0ppmになった。吸着容器1内に所定濃度の硫化水素水がある場合、吸着容器1内の硫化水素濃度は迅速に低下した。吸着容器1内では、硫化水素は気相と液相で平衡状態になっていると思われる。

【0041】
Na-LTAは硫化水素水中に投入するが、Na-LTAは水分子とともに水中の硫化水素を吸着し、吸着容器1内の気相と液相の平衡状態が崩れ、気相中の硫化水素濃度が低下したと思われる。また、水中ではNa-LTAの交換性カチオンであるNaが溶解し、pHがアルカリ性に傾き、その結果、硫化水素が溶液13の中に溶け込んだと考えられる。よって、今回Na-LTAでの硫化水素吸着実験において硫化水素濃度が大幅に減少したのは、Na-LTAの吸着能と溶液13のpHの変化による溶液13への硫化水素溶解のためと考えられる。

【0042】
Ag-LTAの場合、試料を投入してから0.75時間(45分)後、硫化水素濃度は0ppmになった。銀の置換工程を5回繰り返したAg-LTAの場合、NaはほとんどAgに置換している。したがって、Na溶出によるpH変化は乏しいと思われる。

【0043】
一方、Ag-LTAで気相液相共存下での硫化水素吸着実験を行なった場合、1.0~1.5時間を過ぎたあたりから、溶液13の上に銀色のものが浮き始め、次第に増えていった。24時間吸着実験を行った後に、遠心分離機を用いて回収し、洗浄、ろ過を繰り返し、乾燥させた。このようにして得られた試料をSEMおよびEDXにて観察した(図5および表1参照)。

【0044】
【表1】
JP2014218486A_000002t.gif

【0045】
この結果からAgSが析出していることが考えられる。また、後述する銀イオン溶出において示されるように、Ag-LTAを溶液に入れた際、Agイオンが溶出している結果となった。溶出したAgイオンと硫化水素が反応し、AgSとして析出し、硫化水素濃度が下がったと考えられる。気相液相共存下においてもAg-LTAが高い硫化水素吸着能を示したのは、Ag-LTAの硫化水素吸着能によって硫化水素を吸着、溶出するAgイオンによって硫化水素を吸着したことが主要因と考えられる。

【0046】
Ca-LTAの場合、試料を投入してから1時間後まで硫化水素濃度が減少していた。その後、12時間後まで次第に硫化水素濃度が上昇した。12時間後の硫化水素濃度が11.2ppmで、24時間後の硫化水素濃度が11.3ppmであったことから、ほぼ平衡に達したと考えられた。Na-LTAと比較すると、実験を開始してから1時間後までは、Na-LTAと同様に硫化水素濃度は低下した。Na-LTAを用いた場合より、硫化水素濃度の低下はやや早かった。その要因としては、Ca-LTAの方がNa-LTAよりも細孔径が大きいために、硫化水素を吸着しやすかったと考えられる。

【0047】
また、アルカリ金属のNaと比べ、アルカリ土類金属のCaの溶出量、pH低下の程度が異なることも、原因と考えられる。しかし、Agイオンのように、硫化水素吸着能を大幅に上昇させるような効果は見られなかった。実験を開始してから1時間後が経過したあたりから硫化水素濃度が上昇したのは、Ca-LTA内部のCaイオンおよび、Ca-LTAから溶出したCaイオンが原因と考えられる。硫化水素と水の共存下での水溶液中においては、下記の反応が進むことが報告されている。

【0048】
【化1】
JP2014218486A_000003t.gif

【0049】
この反応によりいったん吸着した硫化水素が気体となって出て行き、硫化水素濃度が上昇したと考えられる。

【0050】
Ca-Ag-LTAの場合、試料を投入してから4時間後に、硫化水素濃度は0(ゼロ)になった。硫化水素濃度が0になった時間は正確ではないが、ほぼ傾向を把握することができた。Na-LTAと比較すると、硫化水素濃度の減少が小さかった。これは、Na-LTAに比べてpHの変化があまりなかったのではないかと考えられる。また、Ca-LTAにおいて、Caイオンによる硫化水素濃度上昇が考えられる。Ca-Ag-LTAでは、Caイオンが含まれているにも関わらず硫化水素濃度は減少し続け、上昇することはなかった。これは、Caイオンによる硫化水素濃度上昇よりもAgイオンによる硫化水素吸着の方が勝ったためだと考えられる。

【0051】
Ag-Ca-LTAの場合、試料を投入してから0.75時間(45分)後、硫化水素濃度は0ppmになった。Ag-LTAと比較すると、硫化水素吸着能が劣っていることがわかる。これは、Agの総量がAg-LTAよりもAg-Ca-LTAの方が少なかったためと考えられる。また、Caイオンの影響については、Ca-Ag-LTAと同様の理由で影響がでなかったと考えられる。

【0052】
AP-Ca-Ag-LTAの場合、試料を投入してから12時間後、硫化水素濃度は0ppmになった。硫化水素濃度が0ppmになった時間は正確ではないが、ほぼ傾向を把握することができた。Ca-Ag-LTAと比較すると、AP-Ca-Ag-LTAの方が硫化水素濃度の低下が遅い。

【0053】
また、リン酸カルシウムでゼオライトが被覆されることにより、硫化水素吸着能が減少したとも考えられる。リン酸カルシウムは様々なカチオン、アニオンをイオン交換で取り込むことが知られているが、硫化物に関しては、リン酸カルシウムが持つリン酸や炭酸と硫化物とはサイズや価数が異なるため、それほど取り込むことはないと考えられる。また、Agが溶出しても、リン酸カルシウムに取り込まれると思われる。溶液13の中にAgイオンが溶出していないため、Ag-LTAやCa-Ag-LTA、Ag-Ca-LTAよりも硫化水素吸着能が劣ったとも考えられる。

【0054】
次にこれら試料の液相中(溶液中)での硫化水素の吸着に関して調べた。図6に実験装置を示す。実験装置20は、二ッ口ガラスフラスコ22に、コック付漏斗23を密着させたものである。側管口26には、セプタム25を介して、シリンジ27の針を二ッ口ガラスフラスコ22内に浸入させ、内部の気体30もしくは液体32を抽出することができる。

【0055】
気相液相共存下での硫化水素吸着は以下のように実験を行った。まず、超純水中に硫化水素水ガスを導入し、硫化水素水を作製した。この硫化水素水を超純水で希釈し、所定濃度の硫化水素水を調製した。次に、二ッ口ガラスフラスコ22に、硫化水素水を側管口26の下まで満たし密閉した。これで、セプタム25を介して、二ッ口ガラスフラスコ22内の液体(以下「溶液」とも呼ぶ。)32の両方をシリンジ27で採取可能にした。なお、二ッ口ガラスフラスコ22内の溶液32がない部分はヘッドスペースと呼ぶ。ヘッドスペース中の気体を気体30と呼ぶ。

【0056】
そして、コック付漏斗23から、試料0.2gを、二ッ口ガラスフラスコ22内に投入した。投入後0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間後に、セプタム25から、二ッ口ガラスフラスコ22内の溶液32をシリンジ27で採取した。採取した溶液32中の硫化水素濃度を炎光光度検出器付ガスクロマトグラフ(GC-FPD)で測定した。

【0057】
(溶液中の硫化水素濃度測定の結果)
Na-LTA、Ag-LTA、Ca-LTA、Ag-Ca-LTA、Ca-Ag-LTA、AP-Ca-Ag-LTAをそれぞれ用い、溶液32中の硫化水素濃度の経時変化を図7に示す。図7は横軸が時間(h)であり、縦軸は溶液の硫化水素濃度(%)を表す。なお、それぞれの初期濃度を表2に示す。図7の縦軸は%表示であるので、それぞれの試料で具体的な濃度の値が異なる。以下の説明では、濃度(ppm)表示した物で、図7に記載されているものは、表2の初期値に基づいて%表示を括弧で示す。

【0058】
【表2】
JP2014218486A_000004t.gif

【0059】
Blankでも、24時間後硫化水素濃度が57.2ppm(97.6%)に減少した.マイクロシリンジでの採取の際に大気が入り込んだため、あるいは、容器内壁へ硫化水素が吸着したためと考えられる。

【0060】
Na-LTAの場合、実験を開始してから1時間後まで溶液32の硫化水素濃度が27.9ppm(50.4%)まで減少し、2時間後一旦41.4ppm(74.7%)まで上昇し、その後また減少した。12時間後の溶液32の硫化水素濃度が34.7ppm(62.6%)で24時間後の硫化水素濃度が34.1ppm(61.6%)であることから、濃度平衡は確認されなかったと考えられる。

【0061】
図3および図4の気相液相共存下における硫化水素実験のNa-LTAの結果では、2時間後に、気体の硫化水素濃度が0ppmになった。その要因として、水の中にNa-LTAが入ると、溶液13(図3参照)のpHがアルカリ性に傾き、その結果、硫化水素が溶液13(図3参照)の中に溶け込んだと考えられた。これを考慮に入れると、図6および図7の実験を開始してから2時間後Na-LTAの硫化水素濃度が、一旦上昇した理由としては、溶液32中の硫化水素濃度が減少した際に、ヘッドスペースから硫化水素が溶液32に溶け込んだためと考えられる。

【0062】
図7において、実験を開始してから4時間後以降、Na-LTAの硫化水素濃度が減少したのは、図3および図4に示す気相液相共存下における硫化水素実験のNa-LTAの結果より、ヘッドスペースの硫化水素がすべて溶液32の中に溶け込んでいると考えられるので、Na-LTAによる硫化水素吸着が行われたと考えられる。

【0063】
Ag-LTAの場合、実験を開始してから2時間後の時点で、溶液32の硫化水素濃度は0ppmになった。実験を開始してから1時間後の時点で、溶液32の硫化水素濃度は、0.7ppm(0.1%)になっていた。その為、実験を開始してから2時間後までに溶液32の硫化水素濃度が0ppmになっている可能性が高い。硫化水素濃度が0ppmになった時間は正確ではないが、ほぼ傾向を把握することができた。

【0064】
図3および図4に示した気相液相共存下における硫化水素実験のAg-LTAにおいて、Ag-LTAが高い硫化水素吸着能を示したのは、Ag-LTAの硫化水素吸着能によって硫化水素を吸着、溶出するAgイオンによって硫化水素を吸着、またpHの変化による溶液13への硫化水素溶解これらが要因と考えられた。しかし、図6および図7に示す液相の実験では、溶液32の硫化水素濃度が0ppmになっていることからpHの変化による溶液32への硫化水素溶解は考えにくいことがわかった。すなわち、Ag-LTAが高い硫化水素吸着能を示したのは、Ag-LTAの硫化水素吸着能によって硫化水素を吸着、溶出するAgイオンによって硫化水素を吸着によるものだと考えられる。

【0065】
Ca-LTAの場合、実験を開始してから1時間後まで溶液32の硫化水素濃度が31.2ppm(56.4%)まで減少し、2時間後一旦45.0ppm(81.4%)まで上昇し、その後また減少した。4時間後の溶液32の硫化水素濃度が44.0ppm(79.6%)で24時間後の硫化水素濃度が44.9ppm(81.2%)であり、濃度平衡に達したと考えられる。

【0066】
図3および図4に示した気相液相共存下における硫化水素実験のCa-LTAの結果では、2時間後から8時間後にいたるまで、気体の硫化水素濃度が上昇していた。これは、Ca-LTA内部のCaイオンおよび、Ca-LTAから溶出したCaイオンが硫化水素と反応し、再度硫化水素を発生し、硫化水素濃度が上昇すると考えられた。図6および図7に示した実験の溶液32の硫化水素濃度が4時間後以降ほとんど変化しなかった(図7参照)ことを考えると、4時間後から8時間後まではヘッドスペースに硫化水素が出て行く反応の方が多く起こり、その後、濃度平衡に達したと考えられる。

【0067】
以上の事からNa-LTAと同じような挙動を示しているが、挙動のメカニズムは異なっていると考えられる。また、図3および図4に示した気相液相共存下における硫化水素吸着実験において、Ca-LTAがNa-LTAよりも吸着能が少し高い要因として、Ca-LTAの方がNa-LTAよりも細孔径が大きいために、硫化水素をより多く吸着したと考えられた。しかし、図6および図7の実験における溶液32の硫化水素濃度測定において、2時間後以降の挙動をみると、Na-LTAの方が溶液32の硫化水素濃度が減少している。これについては、Ca-LTAの方が細孔径が大きいために、水溶液の水分子をより多く吸着し、硫化水素濃度が上昇した可能性が考えられる。

【0068】
Ca-Ag-LTAの場合、実験を開始してから1時間後まで溶液32の硫化水素濃度が13.4ppm(25.0%)まで減少し、2時間後一旦32.6ppm(60.8%)まで上昇し、その後また減少した。12時間後の溶液32の硫化水素濃度が26.4ppm(49.2%)で24時間後の硫化水素濃度が25.8ppm(48.1%)であることから、濃度平衡は確認されなかったと考えられる。

【0069】
図3および図4の気相液相共存下における硫化水素吸着実験のCa-Ag-LTAの結果では、実験を開始してから4時間後の時点で、硫化水素濃度は0ppmになった。また、気相液相共存下における硫化水素吸着実験において、Na-LTAと比較すると、硫化水素濃度があまり減少していなかった。これは、Na-LTAに比べてpHの変化があまりなかったのではないかと考えられた。

【0070】
しかし、図6および図7の液相の吸着実験では、溶液32の硫化水素濃度測定では、Ca-Ag-LTAは、Na-LTAよりも硫化水素濃度が減少していた。pHの変化があまりなかったと考えると、Ca-Ag-LTAの内部のAgによって硫化水素が吸着され、Na-LTAよりも硫化水素濃度が減少したと考えられる。

【0071】
Ag-Ca-LTAの場合、実験を開始してから2時間後の時点で、溶液32の硫化水素濃度は0ppm(0%)になった。実験を開始してから1時間後の時点で、溶液32の硫化水素濃度は、1.0ppm(2.0%)になった。その為、実験を開始してから2時間後までに溶液32の硫化水素濃度が0ppm(0%)になっている可能性が高い。硫化水素濃度が0ppm(0%)になった時間は正確ではないが、ほぼ傾向を把握することができた。

【0072】
図3および図4の気相液相共存下における硫化水素吸着実験のAg-Ca-LTAの結果では、硫化水素吸着能が劣っているもののAg-LTAと同様の吸着反応がみられた。図6および図7の実験における溶液32の硫化水素濃度測定においても、硫化水素吸着能が劣っているもののAg-LTAと同様の吸着反応がみられた。どちらにおいても硫化水素吸着能が劣った要因は、Agイオンの割合がAg-LTAに比べ、Ag-Ca-LTAの方が少ないからだと考えられる。よって、内部にあるCaイオンは、硫化水素吸着反応には特に影響を与えないと考えられる。

【0073】
図6および図7に示す実験の場合、AP-Ca-Ag-LTAの場合、実験を開始してから12時間後と24時間後の硫化水素濃度は、それぞれ28.7ppm(55.4%)と27.1ppm(52.3%)であった。24時間後の方が硫化水素濃度は減少しており、少なくとも12時間後の時点では濃度平衡は確認されなかった。Ca-Ag-LTAと比べると、Ca-Ag-LTAのような一旦下がって一旦上がりまた下がるといった現象は起きなかった。よって、リン酸カルシウムが被覆されることによってpHの影響がなかったと考えられる。

【0074】
しかし、図3および図4の気相液相共存下における硫化水素吸着実験のAP-Ca-Ag-LTAの結果では、硫化水素吸着能が劣っているもののAg-LTAやAg-Ca-LTA、Ca-Ag-LTAと同様の吸着反応がみられ、12時間後には気体中の硫化水素濃度が0ppmになっていた。すなわち、pHの影響による溶液13への硫化水素溶解が十分に考えられる。

【0075】
図7の液相下での吸着におけるNa-LTAやCa-LTA、Ca-Ag-LTAで見られた、一旦下がって一旦上がる現象は、pH以外に要因があると考えられる。とくに、AP-Ca-Ag-LTAとCa-Ag-LTAとが大きく異なっているのは、Caイオンがアパタイトコーティングされているかどうかである。すなわち、アパタイトコーティングされることによって下記の反応が妨げられたと考えられる。

【0076】
【化2】
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【0077】
また、Naイオンに関しても、下記の反応がおこることが報告されている。

【0078】
【化3】
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【0079】
図6および図7に示した硫化水素吸着実験を行った際、溶液32のpHは酸性に傾いている。よって、上記の式は、右に進むと考えられる。しかし、試料を投入したことにより、pHがアルカリ性に傾くため、上記の反応式が左に進むと考えられる。そのため、一旦、硫化水素の濃度が減少し、その後一旦硫化水素濃度が増加したと考えられる。

【0080】
(銀イオン溶出実験)
次に、Ag-LTA、Ca-Ag-LTA、Ag-Ca-LTA、AP-Ca-Ag-LTAを用い、銀イオンの溶出実験を行った。超純水100mlに各試料1.0gを投入し、マグネチックスターターで24時間攪拌した。攪拌後の溶液をろ過し、ろ液を回収した。回収したろ液をFajans法を用いた滴定で銀濃度を決定した。結果を表3に示す。

【0081】
【表3】
JP2014218486A_000007t.gif

【0082】
Agの溶出量が最も大きいのは、Ag-LTAである。Ca-Ag-LTAと比べ、Ag-Ca-LTAの方が溶出量が多い。Ag-Ca-LTAの方がAgイオンの割合も多いためと思われる。一方、Ag-LTA、Ca-Ag-LTA、Ag-Ca-LTAそれぞれのAg含有量に比較して、Ca-Ag-LTAの溶出Ag量が多い。

【0083】
図8には、LTA型ゼオライトの結晶構造を示す。Ca-Ag-LTAは、βサイトにCaイオン、αサイトにCaイオンとAgイオン(存在量はCa>Ag)、γサイトにAgイオンが含まれていると考えられる。一方、Ag-Ca-LTAでは、βサイトにAgイオン、αサイトにAgイオンとCaイオン(存在量はAg>Ca)、γサイトにAgイオンが含まれている。

【0084】
Ag含有量に比例せず、Ca-Ag-LTAの溶出Ag量が多くなったのは、αサイトにあるCaイオンの影響によってαサイトのAgが多く溶出したと考えられる。

【0085】
Ca-Ag-LTAとAP-Ca-Ag-LTAを比較すると、AP-Ca-Ag-LTAの方がAg溶出量がかなり少ない。表面に析出したリン酸カルシウムの影響であると思われる。また、リン酸カルシウムは種々のイオンを結晶格子に取り込むことができるため、αサイトのAgの溶出を妨げたと考えられる。

【0086】
Ca-Ag-LTAは、βサイトにCaイオン、αサイトにCaイオンとAgイオン(存在量はCa>Ag)、γサイトにAgイオンが含まれていると考えられる。一方、Ag-Ca-LTAでは、βサイトにAgイオン、αサイトにAgイオンとCaイオン(存在量はAg>Ca)、γサイトにAgイオンが含まれている。

【0087】
なお、リン酸カルシウム(アパタイト)コートによって、Agイオンの流出は抑制されたが、Agイオンの存在によって、抗菌性は維持されている。むしろ、Agの溶出量が減少したために、抗菌性の持続期間が長くなることが期待される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る抗菌性消臭剤は、繊維、化粧品、塗料、建物、構造物といった場所で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 吸着容器
2 蓋
3 セプタム
4 注入口
5 ガラスコック付分液ロート
6 シリンジ
7 試料
10 シャーレ
11 ビーカー
12 攪拌子
13 溶液
20 実験装置
22 二ッ口ガラスフラスコ
23 コック付漏斗
25 セプタム
26 側管口
27 シリンジ
30 気体
32 液体(溶液)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7