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明細書 :形状磁気異方性を有する磁性体を用いた光プローブ電流センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-014494 (P2015-014494A)
公開日 平成27年1月22日(2015.1.22)
発明の名称または考案の名称 形状磁気異方性を有する磁性体を用いた光プローブ電流センサ
国際特許分類 G01R  15/22        (2006.01)
FI G01R 15/07 Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2013-140477 (P2013-140477)
出願日 平成25年7月4日(2013.7.4)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 敏郎
【氏名】曽根原 誠
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100092624、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴田 準一
【識別番号】100114018、【弁理士】、【氏名又は名称】南山 知広
【識別番号】100151459、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 健一
審査請求 未請求
テーマコード 2G025
Fターム 2G025AA08
2G025AB00
2G025AB10
2G025AC01
要約 【課題】従来の光プローブ電流センサにおいては、磁性体の面内方向に誘導磁気異方性あるいはまた結晶磁気異方性を用いて磁気異方性を付与させ、センサ感度を得ているが、自動車の内部等、200℃程度の環境下におかれると、磁性体の磁気モーメントの方向が変化してしまい、センサ感度が変化してしまうという問題が生じていた。
【解決手段】本発明の光プローブ電流センサは、測定対象である電流が流れる導体の近傍に配置され、形状磁気異方性を備え、磁化容易軸方向に沿った部分の長さが磁化困難軸方向に沿った部分の長さより長い磁性体と、磁性体に光を照射する光源と、磁性体で反射された反射光の偏光状態に基づいて磁性体に印加された磁界を検出する磁界検出部と、磁界検出部が検出した磁界に基づいて、導体に流れる電流を算出する電流算出部と、を有することを特徴とする。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
測定対象である電流が流れる導体の近傍に配置され、形状磁気異方性を備え、磁化容易軸方向に沿った部分の長さが磁化困難軸方向に沿った部分の長さより長い磁性体と、
前記磁性体に光を照射する光源と、
前記磁性体で反射された反射光の偏光状態に基づいて前記磁性体に印加された磁界を検出する磁界検出部と、
前記磁界検出部が検出した磁界に基づいて、導体に流れる電流を算出する電流算出部と、
を有することを特徴とする光プローブ電流センサ。
【請求項2】
前記磁性体の磁化困難軸方向に沿った部分の長さは、前記光源からの光が前記磁性体上に照射される領域における磁化困難軸方向の長さより大きい、請求項1に記載の光プローブ電流センサ。
【請求項3】
前記磁性体は、磁化容易軸方向に沿って1つまたは複数の溝を有する、請求項1または2に記載の光プローブ電流センサ。
【請求項4】
前記1つまたは複数の溝のうちの少なくとも1つの溝の深さは、前記磁性体の厚さ以下である、請求項3に記載の光プローブ電流センサ。
【請求項5】
導体を流れる電流の方向が、前記磁性体の磁化容易軸方向と一致している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光プローブ電流センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光プローブ電流センサに関し、特に形状磁気異方性を有する磁性体を備えた光プローブ電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品、電気/ハイブリッド自動車など各種電子機器には、電流量を観測するための電流センサが多く利用されている。特に近年は、外部から伝搬する電磁ノイズあるいは機器自身から発生するノイズが測定電流に与える影響が問題視されており、S/N比が良い高精度な電流センサが要求されている。
【0003】
しかしながら、従来利用されているホール素子を用いた電流センサは、センサに接続された導線(ワイヤハーネス)にノイズが誘導されることにより、高精度な電流測定ができないという問題が生じていた。そこで、光磁気ディスクの技術を応用した磁性体における磁気カー(Kerr)効果を利用した光プローブ電流センサが報告されている(例えば、特許文献1)。これは電磁ノイズの影響を受けない光をプローブとしているため、劣悪な電磁ノイズ環境下でも高精度な電流検出が可能であるというものである。
【0004】
図1に従来の光プローブ電流センサの構成を示す。図1(a)は導体に電流を流していない状態を示し、図1(b)は導体に電流を流した状態を示す。図1(a)に示すように、導体2の近傍に磁性体100を配置して導体2に流れる電流によって生じる磁界を検出する。磁性体100は磁気異方性を有しており、初期の磁気モーメントの方向mp0を導体2に流れる電流の向きと一致させておく。磁性体100には、例えば誘導磁気異方性あるいはまた結晶磁気異方性を利用して磁気異方性を付与している。
【0005】
磁性体100には、光源11から偏光プリズム12を通して直線偏光を含む入射光Liを照射する。入射光Liは磁性体100の表面で反射され、反射光Lrとして磁界検出部20へ出射される。磁界検出部20において、反射光Lrは1/2波長板あるいは1/4波長板13で方位調整されたのち、偏光ビームスプリッタ14に入射され、S偏光LsとP偏光Lpに分離される。S偏光Ls及びP偏光Lpはそれぞれ第1受光素子15及び第2受光素子16に入射され、それぞれの出力電圧がオペアンプ17の反転入力端子と非反転入力端子に入力され両者の差分が検出される。オペアンプ17の出力電圧は導体2に流れる電流と相関関係があるため、電流算出部30においてオペアンプ17の出力電圧に基づいて導体2に流れる電流を算出することができる。
【0006】
ここで、導体2に電流が流れていない場合には、反射光Lrは直線偏光のままであり、1/2波長板あるいは1/4波長板13を通った光は円偏光を示す。従って、P偏光Lp及びS偏光Lsの大きさは同一であり、電流は検出されない。
【0007】
一方、図1(b)に示すように、導体2に電流Iが流れる場合は、電流Iによって生じた磁界mにより、磁性体100の磁気モーメントの方向がmp0からmpへ変化する。磁性体100に光を照射する様子を図2に示す。導体2の上に磁性体100が配置されており、導体2には矢印yの方向に電流Iが流れているとする。また、磁性体100は幅w0、長さlo、厚さt0の大きさを有するものとする。長さlo及び幅w0は入射光Liの照射領域10に比べて十分大きい。光源11から出射された光Liは矢印diの方向から入射し、磁性体100の表面上の照射領域10で反射されて矢印drの方向へ反射光Lrとして反射される。このとき、照射領域10において磁性体100の磁気モーメントの方向がmp0からmpに変化しているため、反射光Lrは楕円偏光となる。このように、磁化した磁性体の表面に直線偏光を照射した場合に、反射光が楕円偏光となる現象を「磁気カー効果」という。
【0008】
反射光Lrが楕円偏光となると、P偏光Lp及びS偏光Lsの大きさに差が生じ、差分に比例した電流が検出される。このようにして、光を利用して電流を検出できるため、電磁波等のノイズが存在する環境下においても正確に電流を検出することができる。
【0009】
電流センサは様々な環境下において使用されることが要求されており、特に電気/ハイブリッド自動車において利用する場合には、周囲温度が200℃程度まで高温になってもセンサ感度や特性が変わらないことが要求されている。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2012-193981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の光プローブ電流センサにおいては、磁性体の面内方向に誘導磁気異方性あるいはまた結晶磁気異方性を用いて磁気異方性を付与させ、センサ感度を得ているが、自動車の内部等、200℃程度の環境下に置かれると、磁性体の磁気モーメントの方向が変化してしまい、センサ感度が低下してしまうという問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光プローブ電流センサは、測定対象である電流が流れる導体の近傍に配置され、形状磁気異方性を備え、磁化容易軸方向に沿った部分の長さが磁化困難軸方向に沿った部分の長さより長い磁性体と、磁性体に光を照射する光源と、磁性体で反射された反射光の偏光状態に基づいて磁性体に印加された磁界を検出する磁界検出部と、磁界検出部が検出した磁界に基づいて、導体に流れる電流を算出する電流算出部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光プローブ電流センサによれば、形状磁気異方性を利用して磁性体に磁気異方性を付与しているため、周囲温度が変化してもセンサ感度に影響する磁気異方性が変化せず、温度特性の良い光プローブ電流センサを構成することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の光プローブ電流センサの構成を示す図である。
【図2】従来の光プローブ電流センサに用いられる磁性体の斜視図である。
【図3】本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサに用いられる磁性体の斜視図及び断面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサを構成する磁性体のサイズと反磁界係数との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサの温度特性を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例2に係る光プローブ電流センサに用いられる磁性体の斜視図及び断面図である。
【図9】本発明の実施例3に係る光プローブ電流センサに用いられる磁性体の斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る光プローブ電流センサについて説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。

【0016】
〔実施例1〕
本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサについて説明する。図3に本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサの構成を示す。図3(a)は導体2に電流が流れていない状態を示し、図3(b)は導体2に電流が流れている状態を示している。また、図4に、本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサに用いられる磁性体の斜視図及び断面図を示す。本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサは、測定対象である電流Iが流れる導体2の近傍に配置された磁性体であって、形状磁気異方性を備え、磁化容易軸方向Aeに沿った部分の長さlmが磁化困難軸方向Ahに沿った部分の長さwsより長い磁性体1と、磁性体1に光Liを照射する光源11と、磁性体1で反射された反射光Lrの偏光状態に基づいて磁性体1に印加された磁界を検出する磁界検出部20と、磁界検出部20が検出した磁界に基づいて、導体2に流れる電流Iを算出する電流算出部30と、を有する。

【0017】
光源11は、直線偏光を含む光を出力する光源である。例えば、He-Neレーザ等の気体レーザや半導体レーザなどのレーザ光を出力するレーザ光源を用いることができる。光源11が出力する光は例えば直径が100μm程度である。

【0018】
光源11から出力された光は、偏光子12に入射され、偏光子12は光源11から出射される光を所定の偏光軸方向を有する直線偏光に偏光する。直線偏光した光は磁性体1に入射されるため、これを入射光Liと呼ぶ。偏光子12として、例えば、グラントムソン偏光プリズムやグランテーラー偏光プリズムを用いることができる。

【0019】
本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサに用いられる磁性体の斜視図及び断面図をそれぞれ図4(a)及び図4(b)に示す。図4(b)の断面図は、図4(a)のA-Aにおいて、導体2の水平面に対して垂直方向に切った断面図である。磁性体1は測定対象である電流が流れる導体2の近傍に配置されるが、接している必要はない。また、磁性体1は導体2上に直接配置してもよいが、SiO2膜等の層間絶縁膜(図示せず)を磁性体1と導体2との間に設けてもよい。

【0020】
磁性体1は、形状磁気異方性を備え、いわゆる短冊状の形状を備えている。磁性体1は、Fe、Co、Ni、Gdのうちの少なくとも一種を含む軟磁性体であり、例えばイットリウム-鉄-ガーネット(YIG:Yttrium-Iron-Garnet)フェライト単結晶である。形状磁気異方性を備えた磁性体は、磁化容易軸方向と磁化困難軸方向を有するが、「短冊状」とは、磁性体1の磁化容易軸方向Aeに沿った部分の長さlmが、磁化困難軸方向Ahに沿った部分の長さwsより長いことを意味している。磁性体を短冊状に加工することで、結晶磁気異方性などに対して周囲温度の影響を受け難い形状磁気異方性が支配的になる。その結果、磁性体の異方性磁界(センサ感度)の温度特性が改善する。

【0021】
図3(a)に示すように、導体2に電流が流れていない状態、即ち、磁性体1に磁界が印加されていない状態における磁性体1の磁気モーメントの方向mp1は磁化容易軸方向Aeと一致している。磁性体1の厚さをtmとすると、tmは入射光Liが透過しない程度に厚ければよく、例えば0.1μm程度あれば十分である。

【0022】
磁性体1には、入射光Liがdiの方向から入射し、照射領域10でdrの方向に反射光Lrとして反射される。入射光Liの全てが磁性体1の表面で反射されるためには、磁性体1の磁化困難軸方向Ahの長さwsが、照射領域10の幅以上であればよい。即ち、磁性体の磁化困難軸方向Ahに沿った部分の長さwsは、光源からの光が磁性体1上に照射される領域における磁化困難軸方向の長さより大きいことが好ましい。例えば、入射光Liが磁性体1に対して角度θで入射し、円形状の入射光Liの径がφである場合は、ws≧φ/sinθを満たすようにwsを決めればよい。

【0023】
磁界検出部20は、磁気カー効果を利用して磁性体1に印加される外部磁界の磁界強度を検出するものである。磁界検出部20は、1/2波長板あるいは1/4波長板13と、偏光ビームスプリッタ14と、第1受光素子15と、第2受光素子16と、オペアンプ17と、を備えている。1/2波長板あるいは1/4波長板13は、反射光Lrの偏光方向を微調整する。偏光ビームスプリッタ14は、反射光LrをS偏光Ls及びP偏光Lpに分離する。S偏光Lsは第1受光素子15によって受光され、P偏光Lpは第2受光素子16によって受光される。第1受光素子15及び第2受光素子16として、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、またはCCDセンサを用いることができる。第1受光素子15及び第2受光素子16は、それぞれオペアンプ17の反転入力端子及び非反転入力端子に光電変換した信号を出力する。電流算出部30は、オペアンプ17の出力結果である差分値に基づいて導体2に流れる電流を算出する。

【0024】
次に、本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサの動作について、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、磁性体1に外部磁界が印加されていない状態で、光プローブ電流センサの調整を行うために、導体2に電流を流さない状態(I=0[A])とする(S101)。

【0025】
次に、ステップS102において、1/4波長板(あるいは1/2波長板)13でP・S偏光の強度を揃える。具体的には以下のように調整する。導体2に電流が流れていない場合、即ち磁性体1に印加される磁界がゼロである場合に、偏光ビームスプリッタ14で分離される2つの偏光成分Ls、Lpの強度が等しくなるように、1/2波長板あるいは1/4波長板13の遅相軸の角度を調整する。具体的には、1/2波長板あるいは1/4波長板13の遅相軸を入射光Liの偏光面に対して45度傾けることにより、偏光ビームスプリッタ14で分離される2つの偏光成分LsとLpの光強度をほぼ等しくする。このように調整することにより、LsとLpの強度の差分を検出することにより、磁性体1における磁界の大きさを検出することができる。導体2に電流が流れていない状態では、オペアンプ17の差動出力Vは0[V]となる(S103)。

【0026】
次に、ステップS104において、導体2に電流Iを流す(I=I[A])。導体2に流れる電流Iの向きは矢印yの方向であり、磁性体1の磁化容易軸方向Ae、即ち、短冊状の磁性体1の長尺方向と一致している。図3(b)に示すように、導体2に電流Iが矢印yの方向に流れた場合、導体2の周りに磁界mが発生する。その結果、磁性体1の磁気モーメントはmp2の方向に変化する。この状態で、磁性体1に入射光Liを照射すると、入射光Liが磁性体1の磁化ベクトルmp2により磁気カー効果を受けて偏光面が回転し、反射光Lrは楕円偏光となる(S105)。その結果、その旋光角の大きさに応じて2つの偏光成分LsとLpの間に強度差が生じ、P・S偏光の強度差から差動出力V=Vo[V]を検出することができる(S106)。次に、ステップS107において、電流算出部30が差動出力Voから導体2に流れる電流Iを算出する。

【0027】
次に、本発明の実施例1に係る光プローブ電流センサに用いる磁性体の形状の設計方法について説明する。磁性体の形状は、磁性体に生じる異方性磁界Hkに基づいて設計することができる。形状磁気異方性による反磁界Hdが優勢である場合、異方性磁界Hkは概ねHdに一致する。図4(a)のように磁性体1を短冊状に加工した場合、反磁界Hdは次式で表される。
Hd=NMs・・・・・・・・・(1)
ここで、Nは反磁界係数、Msは磁性体の飽和磁化である。飽和磁化Msは、磁性体材料に固有の値であるので、磁性体の形状と反磁界係数Nとの関係が重要である。反磁界係数Nは次式で表される(ただし、lm≫ws≧tm)。

【0028】
【数1】
JP2015014494A_000003t.gif
上式を用いることにより、一例として以下のような組み合わせが得られる。

【0029】
【表1】
JP2015014494A_000004t.gif
この場合、反磁界係数NはN = 0.0099と算出される。
式(1)より反磁界Hdは
Hd = 0.0099 × 2.15 × 104 ≒ 213 [Oe] = 16.9 [kA/m] (純鉄の場合)
と求められる。

【0030】
式(2)を用いることにより、反磁界係数Nから磁性体1の形状を決定することができる。例えば、磁性体1の磁化容易軸方向の長さlmをパラメータとした場合の反磁界係数Nと磁性体1の磁化困難軸方向の長さwsとの関係を図6に示す。ここで、磁性体1の厚さtmは0.1[μm]としている。反磁界係数Nは、wsの増加に伴って単調に減少するが、lmが5または10[μm]の場合は、wsの増加に伴って増加する場合が現れる。この結果から、磁性体1の短冊形状の長手方向の長さ、即ち、磁化容易軸方向の長さlmは10[μm]より大きいことが望ましいと言える。

【0031】
図7に、実施例1に係る光プローブ電流センサに用いられる磁性体の温度特性のグラフを示す。同図には、磁性体を配置した環境の温度を25℃から150℃まで変化させたときの印加磁界強度H[Oe]と磁化4πM[kG]との関係を示している。温度を25℃から150℃まで変化させても磁気特性に大きな変化は見られないことから、実施例1に係る光プローブ電流センサに用いる磁性体を利用することにより、少なくとも150℃まで環境温度を上昇させても磁気特性が変動しないことがわかる。この結果から、本発明のように磁性体の形状を磁化容易軸方向に沿った部分の長さが磁化困難軸方向に沿った部分の長さより長くなるようにして形状磁気異方性を付与することにより、高温の環境下においても正確に磁界を測定することができ、ひいては正確な電流測定が可能であることがわかる。

【0032】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2に係る光プローブ電流センサについて説明する。測定システムや測定手順は実施例1と同様であるので詳細な説明は省略する。実施例2の光プローブ電流センサが、実施例1の光プローブ電流センサと異なっている点は、磁性体が、磁化容易軸方向に沿って1つまたは複数の溝を有する点である。図8に本発明の実施例2に係る光プローブ電流センサに用いられる磁性体の斜視図及び断面図を示す。図8(b)は図8(a)のB-B線で導体2の水平面に対して垂直方向に切断した断面図である。磁性体1´には、磁化容易軸方向Aeに沿って溝1aが設けられている。溝1aは磁性体1´の厚さ(t)方向に向かって貫通するように形成されている。溝1aは磁性体1´の磁化容易軸方向Aeの全ての領域に渡って形成されている必要はないが、形状磁気異方性が十分に現れる長さであることが好ましい。溝1aが磁性体1´の磁化容易軸方向Aeの全ての領域に渡って形成されている場合は、2つの磁性体を並列させて配置したのと同じ状態となる。

【0033】
また、図8(a)、(b)には溝1aを1つだけ形成した例を示したが、これには限られず、溝を複数設けてもよい。さらに、同図には、溝1aを入射光Liの反射領域10と重なるように形成した例を示したが、これには限られず、wsを反射領域10の磁化困難軸方向の長さよりも十分大きくして、反射領域10の外部に設けるようにしてもよい。

【0034】
実施例2に係る光プローブ電流センサによれば、形状磁気異方性を備えた磁性体に1つまたは複数の溝を設けているので、溝を形成していない場合に比べて形状磁気異方性を強く出現させることができる。また、磁性体の形状磁気異方性のレベルは磁化容易軸方向の長さと磁化困難軸方向の長さの比によって決まるため、溝を設けることによって、実効的な磁化困難軸方向の長さを短縮し、磁化容易軸方向の長さも短縮することができるため、磁性体のサイズを縮小することができる。

【0035】
〔実施例3〕
次に、本発明の実施例3に係る光プローブ電流センサについて説明する。測定システムや測定手順は実施例1と同様であるので詳細な説明は省略する。実施例3の光プローブ電流センサが、実施例1の光プローブ電流センサと異なっている点は、磁性体が、磁化容易軸方向に沿って1つまたは複数の溝を有し、1つまたは複数の溝のうちの少なくとも1つの溝の深さdは、磁性体の厚さt以下である点である。図9に本発明の実施例3に係る光プローブ電流センサに用いられる磁性体の斜視図及び断面図を示す。図9(b)は図9(a)のC-C線で導体2の水平面に対して垂直方向に切断した断面図である。磁性体1´´には、磁化容易軸方向Aeに沿って溝1bが設けられている。溝1bは磁性体1´´の厚さ方向に向かって形成されているが、貫通はしていない。溝1bは磁性体1´´の磁化容易軸方向Aeの全ての領域に渡って形成されている必要はないが、形状磁気異方性が十分に現れる長さであることが好ましい。

【0036】
また、図9(a)、(b)には溝1bを1つだけ形成した例を示したが、これには限られず、溝を複数設けてもよい。溝を複数設けた場合には、溝が磁性体の厚さ方向に向かって貫通しているもの(d=t)と貫通していないもの(d<t)とを混在させてもよい。さらに、同図には、溝1bを入射光Liの反射領域10と重なるように形成した例を示したが、これには限られず、磁性体の磁化困難軸方向の長さwsを反射領域10の大きさよりも十分大きくして、溝1bを反射領域10の外部に設けるようにしてもよい。

【0037】
実施例3に係る光プローブ電流センサによれば、形状磁気異方性を備えた磁性体に1つまたは複数の溝を設けているので、溝を形成していない場合に比べて形状磁気異方性を強く出現させることができる。さらに溝を磁性体の厚さ方向に貫通させないようにすることにより、入射光Liが磁性体から漏れることを防止することができる。

【0038】
以上のように、磁性体に形状磁気異方性を付与させる方法として、磁性体を細長い短冊状に形成する構成について説明したが、磁性体の面内の一方向に細長い針状の結晶構造を有するようにしてもよい。

【0039】
また、以上の実施例においては磁性体を光プローブ電流センサに応用した例について説明したが、これには限られず、上述した磁性体を用いて磁界を検出する他の用途にも応用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 磁性体
2 導体
11 光源
12 偏光子
13 1/2波長板あるいは1/4波長板
14 偏光ビームスプリッタ
15 第1受光素子
16 第2受光素子
17 オペアンプ
20 磁界検出部
30 電流算出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8