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明細書 :放射能遮蔽材料およびそれを用いた放射能遮蔽版の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-081872 (P2015-081872A)
公開日 平成27年4月27日(2015.4.27)
発明の名称または考案の名称 放射能遮蔽材料およびそれを用いた放射能遮蔽版の製造方法
国際特許分類 G21F   1/08        (2006.01)
G21F   1/12        (2006.01)
G21F   1/04        (2006.01)
FI G21F 1/08
G21F 1/12
G21F 1/04
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2013-220691 (P2013-220691)
出願日 平成25年10月24日(2013.10.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】橋本 忍
【氏名】武田 はやみ
【氏名】松井 浩夢
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
要約 【課題】コンクリートと同等以上の放射線遮蔽能を有する放射能遮蔽板を提供する。
【解決手段】非晶質アルミノシリケート相を含む原料、水ガラスおよびアルカリ溶液を混合して固化させて固形物を得る工程と、前記固形物を粉砕する工程と、前記粉砕された固形物を所定条件にて加熱及び加圧することにより前記粉砕された固形物を一体成形してジオポリマー組成物からなる放射能遮蔽板を得る。非晶質アルミノシリケートとしてフライアッシュを用いる。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
中性子線遮蔽率が3%/cm以上であるジオポリマー組成物からなる放射能遮蔽材料。
【請求項2】
前記ジオポリマー組成物がアルミニウムとシリコンとを含むジオポリマーである請求項1に記載の放射能遮蔽材料
【請求項3】
圧縮強度が80MPa以上である請求項1または2に記載の放射能遮蔽材料。
【請求項4】
非晶質アルミノシリケート相を含む原料、水ガラスおよびアルカリ溶液を混合して固化させて固形物を得る工程と、前記固形物を粉砕する工程と、前記粉砕された固形物を同時に加熱及び加圧することにより、前記粉砕された固形物を一体成形する工程とを含む放射能遮蔽版の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕された固形物を一体固化して板状に成形する工程が、80~250℃の温度で100MPa以上の圧力を付与して行う請求項4に記載の放射能遮蔽板の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は中性子線等の放射線の遮蔽に利用され得る材料に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線の遮蔽率の向上、強度向上、あるいは軽量化等の観点から、コンクリート材料の検討および構造等の検討がなされ、例えば、特許文献1あるいは特許文献2に開示されている。これら放射線遮蔽技術に使用されているコンクリートの耐久性は数十年であるため、長期間の保管には不向きである。また、水溶性硬化物であるコンクリートは、フレッシュなものは水分を多く含むので中性子線の遮蔽能に優れているが、年月を経ると炭酸化によって水分が放出され、中性子遮蔽能が下がる。よって、放射性物質を保管する容器としては耐久性に優れたもの、また、中性子線等の放射線の遮蔽に関しては、経年による含水量の低下の起こらないものが望まれている。
【0003】
ジオポリマーは、非晶質アルミノシリケイト相を主成分とする固化体であり、セメント
を製造する場合と比べて二酸化炭素の排出量が少ないと言われている。また、比較的高い機械的強度および化学的耐久性を有するので、セメントの代替構造物として期待され、試作品から実際の建築構造物への適用が始まっている。ジオポリマーを作製するための最適な原料は、石炭火力発電所から排出されるフライアッシュと呼ばれる産業廃棄物であり、それをアルカリ溶液と混ぜるだけでジオポリマーは容易にかつ安価に作製される(特許文献3参照)。一方、本発明者らは、一度固化したジオポリマー含む固形物を粉砕した粉砕物を再固化して、ジオポリマー組成物にする試みを行い、比較的高い圧縮強度を有するジオポリマーを得ている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2001-201596号公報
【特許文献2】特開2013-167495号公報
【特許文献3】特開平8-301639号公報
【特許文献3】特開2012-188329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、環境負荷が少なく、安価であるジオポリマーを放射線遮蔽材として用いることを想到し、コンクリートと同等以上の放射線遮蔽能を有するジオポリマーを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ジオポリマーを再固化させる条件を検討することにより、上記課題を
解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の放射能遮蔽材料およびそれを用いた放射能遮蔽版の製造方法が提供される。
【0007】
[1]中性子線遮蔽率が3%/cm以上であるジオポリマー組成物からなる放射能遮蔽材
料。
【0008】
[2]前記ジオポリマー組成物がアルミニウムとシリコンとを含むジオポリマーである前記[1]に記載の放射能遮蔽材料。
【0009】
[3]圧縮強度が80MPa以上である前記[1]または[2]に記載の放射能遮蔽材料。
【0010】
[4]非晶質アルミノシリケート相を含む原料、水ガラスおよびアルカリ溶液を混合して固化させて固形物を得る工程と、前記固形物を粉砕する工程と、前記粉砕された固形物を同時に加熱及び加圧することにより、前記粉砕された固形物を一体成形する工程とを含む放射能遮蔽版の製造方法。
【0011】
[5]前記粉砕された固形物を一体固化して成形する工程が、80~250℃の温度で100MPa以上の圧力を付与して行う前記[4]に記載の放射能遮蔽板の製造方法。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】加圧時の温度を変えた場合のジオポリマー成形体の圧縮強度を示す図である(圧力:200MPa、加圧時間30分)。
【図2】加圧時間を変えた場合のジオポリマー成形体の圧縮強度およびみかけ密度を示す図である(圧力:200MPa、温度130℃)。
【図3】ジオポリマー原料のフライアッシュ、温間加圧前のスラリーを乾燥させたもの、本発明の温間加圧で作製したジオポリマー、および通常法(温度50℃、相対湿度80%の環境で24時間養生して得られたジオポリマー)で作製したジオポリマーのAl(図3(a))とSi((図3(b))のNMRスペクトルを示す図である。
【図4】本発明の温間加圧により作製したジオポリマーと通常法(温度50℃、相対湿度80%の環境で24時間養生して得られたジオポリマー)で作製したジオポリマーの細孔径分布を示す図である。
【図5】本発明の温間加圧により新たな化学結合が生成されること説明する図である。
【図6】本発明の温間加圧により作製したジオポリマーと通常法(温度50℃、相対湿度80%の環境で24時間養生して得られたジオポリマー)で作製したジオポリマーの気孔率と圧縮強度の関係を示す図6(a)とジオポリマーの気孔率と圧縮強度の関係がバルシン式で表すことができることを示す図6(b)である。
【図7】セメント、古コンクリート、通常法(温度50℃、相対湿度80%の環境で24時間養生して得られたジオポリマー)により作製したジオポリマー、温間加圧により作製したジオポリマー(圧力:20MPa)、および温間加圧により作製したジオポリマー(圧力:200MPa)の中性子線遮蔽率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0014】
本発明の放射線遮蔽材料を構成するジオポリマー組成物は、ジオポリマーを含む固形物
を粉砕した粉砕物を再度固化して得られることを特徴とする。本発明でいうジオポリマーを含む固形物には、ジオポリマーそれ自体、ジオポリマーとゼオライトのハイブリッド材料、ジオポリマーモルタル、ジオポリマー軽量コンクリート等をあげることができる。ジオポリマーを含む固形物は、非晶質アルミノシリケート相を含む原料と水ガラスおよびアルカリ溶液を混合し固化して得られた固形物が好ましい。固形物形成後直ちに使用してもよいが、長期間経過したものであっても良い。

【0015】
非晶質アルミノシリケートとしては、フライアッシュ、カオリン等が使用される。その中でも特にフライアッシュが好適に使用される。水ガラスは、アルカリケイ酸塩の濃厚水溶液であり、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムがある。それらは単一の化合物ではなくSiO2(無水ケイ酸)とNa2O(酸化ソーダ)あるいはKO(酸化カリウム)がいろいろな比率で混合している液体である。混合比は日本工業規格:JIS K1408で規格されている。水ガラスの中でも珪酸ナトリウム塩が大量に生産され、安価であるので通常用いられる。アルカリ活性剤水溶液は、少なくとも水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムのいずれかを含み、水酸化ナトリウムが特に好ましい。

【0016】
ジオポリマー作製の出発試料として、非晶質アルミノシリケート:水ガラス:アルカリ活性剤水溶液=1~10:1~10:0.01~2.0(重量%)を混合することが好ましい。非晶質アルミノシリケート相を含む原料、水ガラスおよびアルカリ水溶液を混合後、0.5~24時間で固化するので、その後固形物を粉砕して用いることができる。ジオポリマーを含む固形物は、10~1000μm、より好ましくは、100~500μmに粉砕し、粉砕された粒子を再固化することが好ましい。

【0017】
前記粉砕物の固化の条件は、粉砕物のジオポリマー粒子が再結合してジオポシマー組成物を生成する方法であれば、特にこだわらないが、通常は、前記粉砕物を温間加圧(ウォームプレス)、すなわち加熱及び加圧を同時にすることにより前記粉砕物を再固化することができる。前記粉砕物を再固化する温間加圧の条件は、80~250℃の温度で100MPa以上の圧力、より好ましくは200MPa以上の圧力を与えて、0.5~5時間加圧することが好ましい。より具体的には、粉砕した試料を円柱金型に詰め、ウォームプレス機にセットし、ウォームプレス機の上下の台座から金型へ熱を伝え、円柱金型が所定の温度(室温~300℃)に到達後、100MPa以上の圧力で一軸加圧する。特に、加温加圧の条件は、100~200℃、200MPa以上が特に好ましい。温間加圧の加圧時間は0.5~5時間が好ましく、1~2時間が特に好ましい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定
されない。
【実施例】
【0019】
(ジオポリマーの作製)
ジオポリマーの原料であるフライアッシュの組成を表1に示す。また、水ガラスの組成は二酸化ケイ素36~38質量%、水酸化ナトリウム17~18質量%である。フライアッシュ、水ガラスおよび水酸化ナトリウム水溶液をフライアッシュ:水ガラス:水酸化ナトリウム=2:1:0.56[重量%]として混合してスラリーを作製した。次に作製したスラリーをアクリル製の型枠へ流し込み、温度50℃、相対湿度80%の環境で24時間養生することで、平均圧縮強度が35MPaのジオポリマーを作製した。作製したジオポリマーをアルミナ乳鉢で500μm以下に粉砕した。
【実施例】
【0020】
【表1】
JP2015081872A_000003t.gif
【実施例】
【0021】
(実施例1:再固化と圧縮強度評価)
粉砕したジオポリマーを種々の温度(75℃~140℃)で温間加圧して再固化させた(加圧:200MPa、加圧時間:30分)。圧縮強度の測定は、試験片サイズ:φ15mm×30mm、試験条件はクロスヘッドスピード:0.1mm/minである。圧縮強度の測定結果を図1に示す。温度が高くなるにしたがって、圧縮強度は大きくなり、130℃で最も大きくなり、80MPa以上、平均で100MPaの圧縮強度となった。
【実施例】
【0022】
(実施例2:再固化と圧縮強度評価)
粉砕したジオポリマーを温間加圧する際の加圧時間(印加時間)を10分~60分に変えて再固化させた(加圧:200MPa、温度:130℃)。圧縮強度の測定は実施例1と同じである。圧縮強度、およびみかけ密度の測定結果を図2に示す。加圧時間が長くなるにしたがい、圧縮強度およびみかけ密度が大きくなる。しかし、加圧時間30分程度で圧縮強度およびみかけ密度はともにほぼ一定値となり、平均100MPa以上の圧縮強度となった。
【実施例】
【0023】
(再固化品の構造評価)
原料のフライアッシュ、原料を混合したスラリーの乾燥後(温間加圧前)、本発明の温間加圧して得られたジオポリマー(加圧:200MPa、温度:130℃、加圧時間60分)また比較として通常法(温度50℃、相対湿度80%の環境で24時間養生して得られたジオポリマー)、以上4種類のNMRスペクトルを測定した。NMR測定は、Varian社製のUNITY Inova 400 plusにて行い、表2の条件にて測定した。測定結果を図3に示す。フライアッシュを除いてNMRスペクトルは近似しており、圧縮強度の増大は密度上昇によってもたらされたと考えられる。
【実施例】
【0024】
【表2】
JP2015081872A_000004t.gif
【実施例】
【0025】
(再固化品の細孔径分布評価)
上記構造評価を行った、本発明の温間加圧して得られたジオポリマーのサンプルおよび通常法により得られたサンプルの細孔径分布を評価した。その結果を図4に示す。本発明のジオポリマーのサンプルは5μm以下の細孔が大部分であり、5μm~50μmの細孔がほとんどないことがわかった。温間加圧により緻密化が進んだことがわかる。以上の結果より、図5に示すように、温間加圧により水酸基が脱離して新たな結合が生まれ、緻密化が促進されたと推測される。
【実施例】
【0026】
(圧縮強度と気孔率の関係)
実施例1および実施例2で得られた多数のサンプル、および通常法で得られた比較サンプルの圧縮強度と気孔率(p)をプロットしたものを図6(a)に示す。一方、これをもとに圧縮強度と充填率(1-p)の関係をプロットしたものを図6(b)に示す。この結果より、ジオポリマー材料の圧縮強度と気孔率の関係は、多孔質コンクリートと同様にバルシンの式で表すことができる。
【実施例】
【0027】
(中性子線遮蔽率の測定)
セメント、作製後30年経過したコンクリート、通常法により作製したジオポリマー、ウォームプレス法(加圧:20MPa、温度:130℃、加圧時間60分)により作製したジオポリマー、および圧力を大きくしたウォームプレス法(加圧:200MPa、温度:130℃、加圧時間60分)により作製したジオポリマーの中性子線遮蔽率(吸収率)を測定した結果を図7に示す。中性子線遮蔽率はフレッシュなセメントが最も高い。しかし、セメントは炭酸化によって脱水するため、古くなると遮蔽率が低くなる。通常法で作製したジオポリマーはセメントより遮蔽率が劣るが、圧力を200MPaとしたウォームプレス法では遮蔽率が向上し、セメントの遮蔽率に近い値となった。
【実施例】
【0028】
(水分測定)
次に、セメント、作製後30年経過したコンクリート、通常法(温度50℃、相対湿度80%の環境で24時間養生して得られたジオポリマー)により作製したジオポリマー、および本発明によるジオポリマーの新品と作製後2年経過したもの、以上5種類の含水量を測定した。その結果を表3に示す。コンクリートは置かれた環境にもよるが、一般的に言われているように、水分量が減るという経時変化がある。一方、本願発明のジオポリマー(加圧:200MPa、温度:130℃、加圧時間60分)は水分変化が少なく、中性子線遮蔽能の経時変化が少ないことが期待できる。
【実施例】
【0029】
【表3】
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【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のジオポリマー組成物は、コンクリートやモルタル等のセメント組成物の代替と
して、放射遮蔽材料として利用できる。また、ジオポリマーの循環利用により、資源循環
型社会への対応が可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6