TOP > 国内特許検索 > マンガン酸化物の製造方法 > 明細書

明細書 :マンガン酸化物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5598844号 (P5598844)
公開番号 特開2011-207725 (P2011-207725A)
登録日 平成26年8月22日(2014.8.22)
発行日 平成26年10月1日(2014.10.1)
公開日 平成23年10月20日(2011.10.20)
発明の名称または考案の名称 マンガン酸化物の製造方法
国際特許分類 C01G  45/02        (2006.01)
H01M   4/50        (2010.01)
FI C01G 45/02
H01M 4/50
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2010-079233 (P2010-079233)
出願日 平成22年3月30日(2010.3.30)
審査請求日 平成24年11月28日(2012.11.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】中山 雅晴
【氏名】鈴木 一史
【氏名】真田 篤志
個別代理人の代理人 【識別番号】100082164、【弁理士】、【氏名又は名称】小堀 益
【識別番号】100105577、【弁理士】、【氏名又は名称】堤 隆人
審査官 【審査官】宮崎 園子
参考文献・文献 特開2000-211923(JP,A)
特開2000-272922(JP,A)
特開2006-076865(JP,A)
特開2006-225201(JP,A)
特開2005-314152(JP,A)
国際公開第2005/080254(WO,A1)
調査した分野 C01G 45/02
H01M 4/50
特許請求の範囲 【請求項1】
アルカリ金属イオン共存下で過マンガン酸イオン(MnO)を、アルカリ金属イオンの過マンガン酸イオンに対するモル濃度比を10~100の範囲にし且つ、電極に印加する電位を+0.17~-0.04V(対銀/塩化銀電極)の範囲にしてカソード還元することを特徴とする結晶性を有する層状マンガン酸化物の製造方法。
【請求項2】
電極基板として、ステンレス鋼、ステンレス鋼よりも貴な金属、酸化インジウムスズ被覆ガラス電極および炭素電極の群から選ばれる少なくとも1種の電極基板を使用することを特徴とする請求項1に記載の結晶性を有する層状マンガン酸化物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムニ次電池、スーパーキャパシタの電極材料、エレクトロクロミック材料、吸着材、イオン交換材料あるいは触媒として有用なバーネサイト型層状マンガン酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンガン酸化物はさまざまな結晶構造を有し、電子・カチオンの注入によって複数の酸化状態を取りうるため、二次電池、キャパシタなどの電荷貯蔵材料として活発に研究されてきた。層状マンガン酸化物は電子移行のための連続的な酸化物層とイオン移動のための連続的な空間をあわせもち、その特異なイオン交換特性や電気化学特性がさまざまな分野で注目されている。
【0003】
バーネサイトは海底マンガン団塊を形成している鉱物の一種であり、金属イオンに対する極めて大きな吸着容量が注目されてきた。バーネサイトはMnO正八面体ユニットが稜を共有することで二次元層構造を有している。Mnは主に4価で存在するが、一部が3価に置換されることでMn酸化物層(シート)は負に帯電しており、この負電荷を電気的に中和するためにカチオンがインターカレートしている。
【0004】
バーネサイト型層状マンガン酸化物の製造方法として、特許文献1には、有機第4アンモニウムイオンの存在下で2価のマンガン化合物を電気化学的に酸化することにより、該有機第4アンモニウムイオンをインターカレートした層状マンガン酸化物薄膜を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-076865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の層状マンガン酸化物電極は、良好な電流応答が得られないという欠点があった。
【0007】
また、前記特許文献1のアノード電解法では電極に腐食の問題が生じるため、高価な白金板を必要とし、安価なステンレス板のような金属板が使用できなかった。
【0008】
そこで、本発明は、カソード還元法により良好な電流応答が得られるとともに、安価なステンレス板を使用することができる、電荷貯蔵材料、触媒、吸着材、イオン交換体として有用な高い結晶性を有する層状マンガン酸化物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アルカリ金属イオン共存下で過マンガン酸イオン(MnO)を、アルカリ金属イオンの過マンガン酸イオンに対するモル濃度比を10~100の範囲にし且つ、電極に印加する電位を+0.17~-0.04V(対銀/塩化銀電極)の範囲にしてカソード還元することを特徴とする結晶性を有する層状マンガン酸化物の製造方法である。
【0010】
また、電極基板として、ステンレス鋼、ステンレス鋼よりも貴な金属、酸化インジウムスズ(ITO)被覆ガラス電極および炭素電極の群から選ばれる少なくとも1種の電極基板を使用することができる。具体的には、ステンレス鋼あるいはステンレス鋼よりも貴な金属からなる電極基板、例えば、白金、金などの不活性な貴金属電極以外にも、ステンレス鋼あるいはステンレス鋼よりも貴な金属、すなわち、チタン、ニッケル、タンタルならびにITO(酸化インジウムスズ)被覆ガラス電極、炭素電極が使用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカソード還元法により従来のアノード酸化法に比べて電流応答の優れたマンガン酸化物が得られる。
【0012】
本発明により、腐食の問題を回避しながらナノ層状マンガン酸化物を作製でき、電極基板として、安価なステンレス板の使用が可能となる。
【0013】
本発明により、電荷貯蔵材料、触媒、吸着材、イオン交換体として有用な高い結晶性を有する、ナノ層状マンガン酸化物を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】異なる電解液から白金基板に析出した膜のX線回折パターンを示す図である。
【図2】異なる電位を印加することにより白金基板に析出した膜のX線回折パターンを示す図である。
【図3】ステンレス基板に析出した膜のX線回折パターンを示す図である。
【図4】カソード法(図4A)とアノード法(図4B)により作製したマンガン酸化物フィルム被覆白金電極の電流応答である。
【図5】マンガン酸化物膜の比キャパシタンスを掃引速度の関数として示した図である。
【図6】本発明のマンガン酸化物の製造方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
マンガン酸化物の製造装置は、図6に示すように、電解セルに電解液(過マンガン酸カリウム、塩化カリウム)を入れ、白金板あるいはステンレス板などを作用極とし、白金板を対極として配置し、白金板に電位を印加した。電解時間は約30分であった。参照極には銀/塩化銀電極を用い、液絡を使ってセルと連結した。
【実施例1】
【0016】
(1)過マンガン酸カリウム2mMと塩化カリウム0~1000mMを混合した水溶液を50mL調製した。このとき、カリウムイオン/過マンガン酸イオンのモル濃度比は0~500となる。
(2)窒素バブリングにより(1)の水溶液の脱酸素を行った。
(3)作用極として白金板(1cm×1cm)電極、対極として白金板(lcm×1cm)を(1)の各溶液に浸漬した。参照極には銀/塩化銀電極を用い、液絡を使ってセルと連結した。
(4)開回路電位(自然電位)が一定値を示すまで静置した。
(5)0Vの電位を印加して電析を行った。通過電気量は0.6C/cmとした。
(6)得られた薄膜を自然乾燥しX線回折を行った。結果を図1に示す。
(7)図1b~f(カリウムイオン/過マンガン酸イオンのモル濃度比=10~100に対応する)において2θ=12.3°と24.7°にバーネサイト型の層状マンガン酸化物に特有な回折ピークが観察される。これらはそれぞれ001と002面に帰属され、Braggの式(nλ=2dsinθ)より、層間距離(=001面の格子定数)は0.72nmと見積もられた。
(8)図1a(カリウムイオン/過マンガン酸イオンのモル濃度比=0に対応する)では白金基板によるピーク以外観察されない。よって析出した膜は非晶質のマンガン酸化物である。
(9)図1gと図1h(それぞれカリウムイオン/過マンガン酸イオンのモル濃度比=250と500に対応する)では2θ=28°にβ-MnOに特有なピークが観察された。すなわち、この条件ではバーネサイト型層状マンガン酸化物とβ-MnOの混合物が生成する。
【実施例2】
【0017】
(1)過マンガン酸カリウム2mMと塩化力リウム50mMを混合した水溶液を50mL調製した。
(2)窒素バブリングにより(1)の水溶液の脱酸素を行った。
(3)作用極として白金板(1cm×1cm)電極、対極として白金板(1cm×1cm)を(1)の溶液に浸漬した。参照極には銀/塩化銀電極を用い、液絡を使ってセルと連結した。
(4)開回路電位(自然電位)が一定値を示すまで静置した。
(5)+0.25~-0.21Vの電位を印加して電析を行った。通過電気量は0.6C/cmとした。
(6)得られた薄膜を自然乾燥しX線回折を行った。結果を図2に示す。
(7)図2b~i(印加電位=+0.17~-0.04Vに対応する)において2θ=12.3°と24.7°にバーネサイト型の層状マンガン酸化物に特有な回折ピークが観察される。これらはそれぞれ001と002面に帰属され、Braggの式(nλ=2dsinθ)より、層間距離(=001面の格子定数)は0.72nmと見積もられた。
(8)図2a(印加電位=+0.25Vに対応する)では白金基板によるピーク以外観察されない。よって析出した膜は非晶質のマンガン酸化物である。
(9)図2j(印加電位=-0.21Vに対応する)では白金基板によるピーク以外観察されない。よって析出した膜は非晶質のマンガン酸化物である。
【実施例3】
【0018】
(1)過マンガン酸カリウム2mMと塩化カリウム50mMを混合した水溶液を50mL調製した。
(2)窒素バブリングにより(1)の水溶液の脱酸素を行った。
(3)作用極としてステンレス板(2cm×1cm)電極、対極として白金板(1cm×lcm)を(1)の溶液に浸漬した。参照極には銀/塩化銀電極を用い、液絡を使ってセルと連結した。
(4)開回路電位(自然電位)が一定値を示すまで静置した。
(5)0Vの電位を印加して電析を行った。通過電気量は0.6C/cmとした。
(6)得られた薄膜を自然乾燥しX線回折を行った。結果を図3に示す。
【実施例3】
【0019】
図3から図1b~fおよび図2b~iと同じバーネサイト型層状マンガン酸化物が得られたことがわかる。印加した電圧を0Vと低くしたので使用したステンレス板の表面には腐食は見られず、得られた前述の層状マンガン酸化物は、白金板を使用した場合と同様に良好であった。
【実施例4】
【0020】
MnOから本発明のカソード還元法により、また、Mnから従来のアノード酸化法により作製したマンガン酸化物フィルム被覆白金電極の電流応答を図4の(A)と(B)に示す。電位の掃引速度(Scan rate)は2~200 mV/sとした。
【実施例4】
【0021】
本発明のカソード法により得られたマンガン酸化物の電流応答は、キャパシタ挙動に特徴的な矩形の応答に+0.3~+0.7Vのブロードな酸化還元波が重なっている。掃引速度が大きくなってもこの電流応答波の形状は維持され、良好な速度特性をもつ。
【実施例4】
【0022】
これに対して従来のアノード法で得たマンガン酸化物の応答は本発明のカソード還元法のそれよりもはるかに小さく、速い掃引速度では矩形が歪んでいる。
【実施例4】
【0023】
下式より,それぞれの膜の比キャパシタンス(Specific Capacitance;F/g)を見積もった。2mV/sでの比キャパシタンスは本発明のカソード法で得られた膜が131.2F/g、従来のアノード法で得られた膜が58.3F/gであった。
【実施例4】
【0024】
Specific Capacitance = It/ΔEm
【実施例4】
【0025】
ここで Iは電流(A),tは時間(s)、ΔEは電位掃引幅(0.8V)、mは電極上のマンガン酸化物の質量(g)。
【実施例4】
【0026】
本発明のカソード還元法および従来のアノード酸化法により得られたマンガン酸化物膜の比キャパシタンスを掃引速度の関数として示す(図5)。
【実施例4】
【0027】
図5からいずれの掃引速度においてもカソード法の生成物の方が高い比キャパシタンスを示すことがわかる。これはカソード法により得られたマンガン酸化物の方が酸化状態が低く、固相の電子伝導性が高いこと、また、膜が嵩高く、対イオン(この場合ナトリウムイオン)が活性サイトにアクセスし易いためと考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5