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明細書 :トリブロモシランの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5688653号 (P5688653)
公開番号 特開2012-166965 (P2012-166965A)
登録日 平成27年2月6日(2015.2.6)
発行日 平成27年3月25日(2015.3.25)
公開日 平成24年9月6日(2012.9.6)
発明の名称または考案の名称 トリブロモシランの製造方法
国際特許分類 C01B  33/107       (2006.01)
FI C01B 33/107 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2011-027034 (P2011-027034)
出願日 平成23年2月10日(2011.2.10)
審査請求日 平成25年12月11日(2013.12.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】中山 雅晴
【氏名】友野 和哲
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開昭63-129011(JP,A)
米国特許出願公開第2010/0032630(US,A1)
調査した分野 C01B 33/00-33/193
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
シリコン及び臭化水素を380~450℃で反応させるトリブロモシランの製造方法であって、
不活性ガスで希釈した臭化水素を用いることを特徴とするトリブロモシランの製造方法。
【請求項2】
380~430℃で反応させることを特徴とする請求項1記載のトリブロモシランの製造方法。
【請求項3】
ガス流量を、反応させるシリコン1gあたり20ml/min以上に調整することを特徴とする請求項1又は2記載のトリブロモシランの製造方法。
【請求項4】
シリコンが金属グレードシリコンであることを特徴とする請求項1~のいずれか記載のトリブロモシランの製造方法。
【請求項5】
シリコン及び臭化水素を反応させた後、蒸留によりトリブロモシランを分離回収することを特徴とする請求項1~のいずれか記載のトリブロモシランの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの製造原料として有用なトリブロモシランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンの製造原料として一般的に用いられているトリクロロシランの製法としては、例えば、金属珪素と塩化水素とを、これらからトリクロロシランを生成する触媒活性を有する触媒成分及びアルカリ金属化合物の共存下に反応させる方法が提案されている(特許文献1参照)。他方、トリブロモシランも多結晶シリコンの製造原料として使用できることは知られているが(特許文献2参照)、製造コストの観点からほとんど研究がなされていないのが現状である。
【0003】
ブロモシランについては、例えば、シリコンと臭化水素を反応させてブロモシランを製造することについて報告がなされている(非特許文献1参照)。この場合、トリブロモシラン(SiHBr)とテトラブロモシラン(SiBr)が同時に反応生成物として得られる。しかしながら、非特許文献1は、主としてテトラブロモシランを得ることを目的とするものであって、多結晶シリコンの製造原料として有用なトリブロモシランを積極的に得ようとするものではない。また、反応に関して重要な臭化水素は、白金触媒を利用して水素ガスと臭素ガスの反応(H+Br→2HBr)により供給をおこなっているために、反応の最適化に必要な臭化水素の流量に関する積極的な検討は行われていない。すなわち、トリブロモシランを高選択率で得る手法は十分に明らかにされていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平10-95606号公報
【特許文献2】特開昭63-129011号公報
【0005】

【非特許文献1】W. C. Schumb and R. C. Young, “A Study of the Reaction of Hydrogen Bromide with Silicon”, J. Am. Chem. Soc. 52, 1464 (1930).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、多結晶シリコンの製造原料であるトリブロモシランを高い選択率で得ることができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、製造コストが大きな弊害となり従来あまり研究の行われていなかったトリブロモシランの製造方法に関し、製造コストの点については、多結晶シリコンの製造過程において副生する臭化水素を回収し再利用する(クローズドループプロセス)ことにより解決することができることに着目し、その製造方法について鋭意研究した結果、所定条件で製造することにより、工業的にも有利な高い選択率でトリブロモシランを製造することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するためのトリブロモシランを製造する方法は、反応温度を380℃~450℃の範囲に調整して、臭化水素とシリコンを反応させることを特徴とする。さらには、反応温度を380℃~430℃の範囲に調整することを特徴とする。
また、臭化水素は不活性ガスで希釈し、その総流量を、反応させるシリコン1gあたり20ml/min以上に調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、多結晶シリコンの製造原料であるトリブロモシランを高い選択率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】反応温度に対する、臭化水素の転換率及びトリブロモシラン/テトラブロモシランの選択率の結果を示す図である。
【図2】臭化水素と不活性ガス(窒素ガス)の総流量に対する、臭化水素の転換率及びトリブロモシラン/テトラブロモシランの選択率の結果を示す図である。
【図3】臭化水素の希釈率に対する、臭化水素の転換率及びトリブロモシラン/テトラブロモシランの選択率の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のトリブロモシランの製造方法としては、シリコン及び臭化水素を380~450℃で反応させる方法であれば特に制限されるものではなく、380~430℃で反応させることがさらに好ましい。380~450℃で反応させることにより、約50%以上の高い選択率でトリブロモシランを得ることができ、380~430℃で反応させることにより、約70%以上の高い選択率でトリブロモシランを得ることができる。なお、臭化水素の転換率が低い場合は、反応器から導出したガスを蒸留・分離し、回収した臭化水素を再利用するプロセスを構築しておくことにより、この問題を解決することができる。したがって、工業的には高い選択率を追求することが有利となる。

【0012】
本発明におけるシリコンとしては、例えば純度98~99%程度の金属グレードシリコンを挙げることができ、また、半導体グレードシリコンのインゴット切削時に発生する廃シリコンのような混合物を用いることもできる。実際に反応させるシリコンの形状としては、顆粒、球体、ペレット、ハニカム等任意の形状のものを使用することができる。

【0013】
本発明における反応形式としては、固定床、流動床、移動床のいずれの方式であってもよいが、シリコン及び臭化水素を効率的に接触させるべく、流動床方式であることが好ましい。すなわち、シリコン粒子が収容された縦型反応器の下部から臭化水素を導入して、シリコン粒子を流動させながら反応させることが好ましい。なお、原料シリコンは反応器に随時追装されるので、通常反応器内のシリコン量はほぼ一定に保たれている。

【0014】
また、臭化水素は、希釈することなく反応器に導入してもよいが、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで希釈させて反応器に導入することが、不活性ガスのキャリア性により反応を停滞させることなく臭化水素を効率的にシリコンに接触させて、臭化水素の転換率を向上させることができることから好ましい。例えば、臭化水素割合が、5~35%であることが好ましく、5~15%であることがより好ましい。

【0015】
上記のように臭化水素は不活性ガスで希釈して反応器に導入することが好ましいが、かかる混合ガスの反応器内におけるガス流量は、反応させるシリコン1gあたり20ml/min以上に調整することが好ましく、80ml/min以上に調整することがより好ましい。ガス流量の上限は特に制限されないが、例えば120~150ml/min程度である。従来、ガス流量を増加させることにより、テトラブロモシランの選択率(生成比)が高くなり、トリブロモシランの選択率が低くなることが知られていたが(例えば、非特許文献1参照)、本発明においては、これとは反対の事象、すなわち、ガス流量を増加させることにより、トリブロモシランの選択率が高くなることを見いだした。これは、トリブロモシラン及びテトラブロモシランの生成が競争的な発熱反応であるところ、本発明では、非特許文献1のように臭化水素の供給量を増加させるのではなく、混合ガスとしてのガス総流量を増加させ、これにより、ブロモシランの生成熱による局所温度の上昇を抑制して、トリブロモシランが生成しやすい温度に維持し、結果として、トリブロモシランの選択率を向上させることに成功したものと考えられる。

【0016】
シリコン及び臭化水素を反応させた後、主としてトリブロモシラン及びテトラブロモシランが生成するが、これらの混合物は、蒸留によりトリブロモシランを分離回収することができる。トリブロモシラン及びテトラブロモシランは常温で液体であり、塩素系に比較して沸点差も大きいため蒸留により容易に分離することができる。

【0017】
このように製造されたトリブロモシランは、多結晶シリコンの原材料として有用である。このトリブロモシランを出発原料とした多結晶シリコンの析出プロセスは、従来のトリクロロシランを出発原料としたプロセスに比して、対応する各反応のギブズエネルギーが小さく、低温で操業できるという利点がある。また、トリブロモシランは、クロロシラン系に比べ、シリコンの高析出収率の達成が可能であり、また、爆発性重合体やシリコンダストの形成が少ないという利点もある。
【実施例1】
【0018】
内径20mmの石英ガラス管反応容器(縦型)に、メジアン径d50である210μmの金属グレードシリコン(鉄0.25wt%,アルミニウム0.26wt%,カルシウム0.037wt%,チタン0.021wt%を含有する)1gを充填し、反応器を400℃に保持した。続いて、臭化水素ガス(10ml/min)及び窒素ガス(30ml/min)からなる混合ガスを反応器底部から流通させシリコンと接触させた。反応系に組み込んだガスクロマトグラフで反応器出口ガスをサンプリング、分析した。反応は、混合ガスの反応器への供給を開始してから50分後にほぼ定常状態に達した。臭化水素ガスの減少量に基づいて臭化水素の転換率(%)を決定し、トリブロモシラン及びテトラブロモシランのガスクロピークのエリア比に基づいて選択率(%)を決定した。また、反応温度を変更する以外は同様の方法でシリコン及び臭化水素の反応を実施した。
【実施例1】
【0019】
反応が定常状態に達した後の臭化水素転換率とトリブロモシラン/テトラブロモシランの選択率の結果を表1及び図1に示す。
【実施例1】
【0020】
【表1】
JP0005688653B2_000002t.gif
【実施例1】
【0021】
表1及び図1から明らかなように、380~450℃で反応させることにより、約50%以上の高い選択率でトリブロモシランを得ることができる。また、380~430℃で反応させることにより、約70%以上の高い選択率でトリブロモシランを得ることができ、380~410℃で反応させることにより、約80%以上の高い選択率でトリブロモシランを得ることができる。なお、臭化水素を回収することで臭化水素転換率が低くても問題ないが、臭化水素転換率(収率)も考慮した場合には、390~450℃で反応させることにより、約50%以上の高い選択率であることに加えて、約80%以上の高い臭化水素の転換率を実現でき、390~420℃で反応させることにより、約70%以上の高い選択率及び臭化水素の高転換率を実現することができる。
【実施例2】
【0022】
試験例3において、混合ガスの総流量を変更する以外は同様の方法でシリコン及び臭化水素の反応を実施した。その結果を表2及び図2に示す。
【実施例2】
【0023】
【表2】
JP0005688653B2_000003t.gif
【実施例2】
【0024】
表2及び図2から明らかなように、20ml/min以上で反応させることにより、約80%以上の高い選択率でトリブロモシランを得ることができ、80ml/min以上で反応させることにより、約90%以上の高い選択率でトリブロモシランを得ることができる。
【実施例2】
【0025】
試験例3において、臭化水素の希釈率を変更する以外は同様の方法でシリコン及び臭化水素の反応を実施した。その結果を表3及び図3に示す。
【実施例2】
【0026】
【表3】
JP0005688653B2_000004t.gif
【実施例2】
【0027】
表3及び図3に示すように、臭化水素割合5~35%のいずれの割合においても高い選択率でトリブロモシランを得ることができ、特に臭化水素割合が5~14.3%の場合、高い選択率でトリブロモシランを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、半導体シリコンや太陽電池用シリコン等の製造に用いられる多結晶シリコンの原料として有用なトリブロモシランの製法に関するものであり、産業上の有用性は高い。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2