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明細書 :複素環化合物、酸化触媒及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5659191号 (P5659191)
公開番号 特開2013-237650 (P2013-237650A)
登録日 平成26年12月5日(2014.12.5)
発行日 平成27年1月28日(2015.1.28)
公開日 平成25年11月28日(2013.11.28)
発明の名称または考案の名称 複素環化合物、酸化触媒及びその使用
国際特許分類 C07D 401/14        (2006.01)
B01J  31/22        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07F  15/02        (2006.01)
FI C07D 401/14 CSP
B01J 31/22 Z
C07B 61/00 300
C07F 15/02
請求項の数または発明の数 6
全頁数 20
出願番号 特願2012-112606 (P2012-112606)
出願日 平成24年5月16日(2012.5.16)
審査請求日 平成26年7月7日(2014.7.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】人見 穣
【氏名】荒川 健吾
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査官 【審査官】清水 紀子
参考文献・文献 国際公開第02/034048(WO,A1)
国際公開第2005/104848(WO,A1)
末本直哉ら,日本化学会講演予稿集,2011年,91st, No.2,p.254
HITOMI,Y. et al,An Iron(III)-Monoamidate Complex Catalyst for Selective Hydroxylation of Alkane C-H Bonds with Hydro,Angewandte Chemie, International Edition,2012年 4月 2日,Vol.51, No.14,p.3448-3452
HUNTER,A.D. et al,Synthesis and characterization of polyaromatic azine derivatives of (η5-C5H5)Fe(CO)2 and (η5-C9H7),Journal of Organometallic Chemistry,1996年,Vol.526, No.1,p.1-14
調査した分野 C07D 401/14
B01J 31/22
C07B 61/00
C07F 15/02
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される、複素環化合物。
【化1】
JP0005659191B2_000026t.gif
(式中、R1クロロ基であり、R2及びR6はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基であり、R3及びR7はそれぞれ独立して水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、C1~C6アルコキシ基又はC1~C6ジアルキルアミノ基であり、R4及びR8はそれぞれ独立して水素原子、C1~C6アルキル基又はC1~C6アルコキシカルボニル基であり、R5及びR9はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基である。)
【請求項2】
2~R9が水素原子である、請求項1に記載の複素環化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表される金属錯体からなり、sp3C-H結合の酸化反応に用いられる、酸化触媒
【化2】
JP0005659191B2_000027t.gif
(式中、Mは鉄、マンガン又はコバルトであり、Lはアセトニトリル、ヒドロキソ、クロライド、トリフラート又はアクアであり、Xは対イオンであり、nは1又は2であり、R1はニトロ基又はクロロ基であり、R2及びR6はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基であり、R3及びR7はそれぞれ独立して水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、C1~C6アルコキシ基又はC1~C6ジアルキルアミノ基であり、R4及びR8はそれぞれ独立して水素原子、C1~C6アルキル基又はC1~C6アルコキシカルボニル基であり、R5及びR9はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基である。)
【請求項4】
Mが鉄であり、Lがアセトニトリルであり、XがClO4-であり、nが2であり、R1がニトロ基であり、R2~R9が水素原子である、請求項3に記載の酸化触媒
【請求項5】
請求項3又は4に記載の酸化触媒を用いてsp3C-H結合を酸化する、酸化触媒の使用方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の酸化触媒を用いてsp3C-H結合を酸化することによりアルコールを生成する、アルコールの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環化合物、酸化触媒及びその使用に関し、詳しくは、構造中に金属に配位可能な複数の窒素原子を有する新規な複素環化合物と、複素環化合物を配位子とする酸化触媒と、その使用方法及びアルコールの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
sp3C-H結合は不活性であり、これを酸化することは一般に困難であるが、生体内では、このような酸化反応が温和な条件で進行している。シトクロム450やメタンモノオキシゲナーゼが関与する生体内の酸化反応はその好例である。
このような生体内でのsp3C-H結合の酸化反応のメカニズムを元に、sp3C-H結合の酸化を触媒する金属錯体触媒の設計が種々試みられている(例えば、特許文献1参照)。
また、本発明者らは、アルカンC-H結合を過酸化水素で選択的に水酸化するための金属錯体触媒として、2-[ビス(ピリジン-2-イルメチル)]アミノ-N-キノリン-8-イル-アセトアミダートの鉄(III)錯体が優れていることについて報告している(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0221083号明細書
【0004】

【非特許文献1】人見穣、外3名、「An Iron(III) Monoamidate Complex Catalyst for Selective Hydroxylation of Alkane C-H Bonds with Hydrogen Peroxide」、Angewandte Chemie International Edition、2012、51(14)、p.3448-3452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の金属錯体触媒では、sp3C-H結合の酸化反応の選択性において、未だ改良の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、選択性の高い酸化触媒を与える複素環化合物及び複素環化合物を用いた酸化触媒と、該酸化触媒の使用方法及びアルコールの製造方法とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、2-[ビス(ピリジン-2-イルメチル)]アミノ-N-キノリン-8-イル-アセトアミダートの配位部位のうち、キノリン骨格を有するアミダート部位において、このキノリン骨格の5位に特定の置換基を導入したものを酸化触媒に適用したとき、酸化の選択性がさらに高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかる複素環化合物は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0009】
【化1】
JP0005659191B2_000002t.gif

【0010】
(式中、R1クロロ基であり、R2及びR6はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基であり、R3及びR7はそれぞれ独立して水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、C1~C6アルコキシ基又はC1~C6ジアルキルアミノ基であり、R4及びR8はそれぞれ独立して水素原子、C1~C6アルキル基又はC1~C6アルコキシカルボニル基であり、R5及びR9はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基である。)
【0011】
本発明にかかる金属錯体触媒は、下記一般式(2)で表されることを特徴とする。
【0012】
【化2】
JP0005659191B2_000003t.gif

【0013】
(式中、Mは鉄、マンガン又はコバルトであり、Lはアセトニトリル、ヒドロキソ、クロライド、トリフラート又はアクアであり、Xは対イオンであり、nは1又は2であり、R1はニトロ基又はクロロ基であり、R2及びR6はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基であり、R3及びR7はそれぞれ独立して水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、C1~C6アルコキシ基又はC1~C6ジアルキルアミノ基であり、R4及びR8はそれぞれ独立して水素原子、C1~C6アルキル基又はC1~C6アルコキシカルボニル基であり、R5及びR9はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基である。)
【0014】
本発明にかかる酸化触媒の使用方法は、上記酸化触媒を用いてsp3C-H結合を酸化することを特徴とする。
【0015】
本発明にかかるアルコールの製造方法は、上記酸化触媒を用いてsp3C-H結合を酸化することによりアルコールを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、sp3C-H結合の酸化を高い選択性で触媒することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる複素環化合物、金属錯体触媒及びその使用に関し、その好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。

【0018】
〔複素環化合物〕
本発明の複素環化合物は、下記一般式(1)で表される。

【0019】
【化3】
JP0005659191B2_000004t.gif

【0020】
1はニトロ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はC1~C6アルコキシカルボニル基である。
本発明において、これらの置換基が有効であるのは次のような理由によるものと推察される。
すなわち、まず、R1が置換しているキノリン骨格を有するアミダート部位は、金属錯体を形成したとき、アミダートアニオンとして金属に配位するものであり、配位される金属の電子状態の制御にきわめて重要な働きをしているものと推測される。そして、電子吸引性の強い上記いずれかの置換基をキノリン骨格の5位に導入すると、金属の電子状態がより適切に制御されることとなり、酸化反応の際、反応活性が強い(したがって選択性の低下を招く)ラジカルの発生が抑制され、結果として、所望の選択性が発揮されるものと考えられる。

【0021】
2~R9は、アニオンとして金属に配位するアミダート部位に結合したキノリン骨格に導入されるR1と比べると、金属錯体触媒として酸化反応に供した際の選択性への影響は大きくない。したがって、水素原子に限らず、下記に列挙する種々の置換基を導入したものであっても、従来技術に対する本発明の優位性を損なうものではない。

【0022】
2及びR6はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基である。

【0023】
3及びR7はそれぞれ独立して水素原子、ニトロ基、ハロゲン原子、C1~C6アルコキシ基又はC1~C6ジアルキルアミノ基である。ハロゲン原子としては塩素原子、フッ素原子が好ましい。

【0024】
4及びR8はそれぞれ独立して水素原子、C1~C6アルキル基又はC1~C6アルコキシカルボニル基である。

【0025】
5及びR9はそれぞれ独立して水素原子又はC1~C6アルキル基である。

【0026】
上記において、R1~R9を炭素数が6以下の置換基に限定しているのは、立体障害による触媒の失活を防ぐためである。

【0027】
上記のなかでも、特に、R2~R9の全てが水素原子であるもの、または、これらが下表で示される組合せであるものが好ましく挙げられる。

【0028】
【表1】
JP0005659191B2_000005t.gif

【0029】
上記表1に記載の各組合せが好ましい理由は以下のとおりである。
組合せ1が好ましい理由は、立体障害と酸化耐性による触媒回転数の向上にある。
組合せ2が好ましい理由は、立体障害と酸化耐性による触媒回転数の向上にある。
組合せ3が好ましい理由は、溶解度の向上と立体障害による触媒回転数の向上にある。
組合せ4が好ましい理由は、立体障害と酸化耐性による触媒回転数の向上にある。
組合せ5が好ましい理由は、溶解度の向上と立体障害による触媒回転数の向上にある。
組合せ6が好ましい理由は、立体障害と酸化耐性による触媒回転数の向上にある。
組合せ7が好ましい理由は、溶解度の向上にある。
組合せ8が好ましい理由は、溶解度の向上にある。

【0030】
〔複素環化合物の製造方法〕
本発明の複素環化合物について、好ましい製造方法の一例を挙げる。ただし、本発明の複素環化合物は、下記の製造方法で得られるものに限定されるものではない。

【0031】
本発明の複素環化合物の製造方法では、例えば、下記一般式(3)で表されるように、8-アミノキノリン又はその5位が置換された5-置換体を出発原料として用いる。

【0032】
【化4】
JP0005659191B2_000006t.gif

【0033】
本発明の複素環化合物におけるR1が、ニトロ基など、複素環化合物の基本骨格を形成した後でも容易に導入することができるものであれば、8-アミノキノリン(R10=H)を出発原料とすればよいが、R1が、ハロゲン原子など、複素環化合物の基本骨格を形成した後に導入することが困難なものであれば、出発原料として、5位がR1で置換された8-アミノキノリンの5-置換体(R10=R1)を用いることが好ましい。R10として、容易にR1に置換し得る官能基を導入し、後からR1に置換するようにしても良い。
上に述べたことは、R2~R9の種類によっても変わり得るものであって、目的物の種類に応じて、適宜決定すればよい。

【0034】
なお、上記8-アミノキノリンの5-置換体は、例えば、2-ニトロアニリンの5位がR10で置換された2-ニトロアニリンの5-置換体から、デーブナー・フォン=ミラー(Doebner-von Miller)キノリン合成法やスクラウプ(Skraup)キノリン合成法などの公知のキノリン合成法により8-ニトロキノリンの5-置換体を製造し(下記反応(4))、さらにその8位のニトロ基をアミノ基に還元することで容易に得ることができる(下記反応(5))。

【0035】
【化5】
JP0005659191B2_000007t.gif

【0036】
次に、上記一般式(3)で表される化合物を用いて、例えば、下記反応(6)、(7)を行う。

【0037】
【化6】
JP0005659191B2_000008t.gif

【0038】
【化7】
JP0005659191B2_000009t.gif

【0039】
ここで、X1、X2はハロゲン原子であり、好ましくはいずれもが臭素原子である。
反応(6)はアミノ基のアミド化反応であり、反応(7)はハロゲン化アルキルによるアミンのN-アルキル化反応である。

【0040】
反応(7)で用いるアミンは、2,2’-ジピコリルアミン(R2~R9の全てが水素原子の場合)又はその誘導体である。R2~R9は、一般式(1)で表される上記複素環化合物におけるR2~R9に対応する。

【0041】
出発原料として8-アミノキノリン(R10=H)を用いた場合は、このR10の位置にR1を導入する。この方法は、従来公知の一般的なもので良く、例えば、R1としてニトロ基を導入するには、硫酸と硝酸もしくは硝酸塩を用いた一般的なニトロ化反応が採用できる。

【0042】
〔金属錯体触媒〕
本発明の金属錯体触媒は、下記一般式(2)で表される。

【0043】
【化8】
JP0005659191B2_000010t.gif

【0044】
Mは鉄、マンガン又はコバルトである。高活性である点で鉄が好ましい。
Lはアセトニトリル、ヒドロキソ、クロライド、トリフラート又はアクアである。高活性である点でアセトニトリルが好ましい。
Xは対イオンであり、例えば、ClO4-、Cl-、Br-、AcO-、TfO-、CF3CO2-、BF4-、ReO4-、AsF6-、SbF6-などが好ましく挙げられる。高活性である点でClO4-が特に好ましい。
nは1又は2である。
1~R9については、上記本発明の複素環化合物と同様であり、説明を割愛する。

【0045】
〔金属錯体触媒の製造方法〕
本発明の金属錯体触媒は、上記本発明の複素環化合物を金属に配位させることで得ることができ、その方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。

【0046】
例えば、溶剤中、錯体を形成し得る条件で本発明の複素環化合物と所定の金属イオンとを共存させればよく、具体的には、本発明の複素環化合物を、塩基性化合物とともに溶剤に溶解し、ここに、所定の金属イオン溶液を添加することにより、錯体の微結晶を形成することができる。

【0047】
ここで、前記溶剤としては、メタノール、アセトニトリルなどの極性有機溶剤が好適である。前記塩基性化合物としては、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどが好適である。

【0048】
錯体形成後に、メタノールなどの溶剤で洗浄することで高純度の金属錯体触媒を得ることができる。

【0049】
〔金属錯体触媒の使用〕
本発明の金属錯体触媒は、不活性なsp3C-H結合の選択的酸化を触媒することができる。
ここで、選択的とは、具体的には、特定のsp3C-H結合が他のsp3C-H結合に優先して酸化されることを意味する。このとき、複数のsp3C-H結合のうち、いずれのsp3C-H結合が酸化されるかは、通常、各sp3C-H結合における結合解離エネルギーの大きさによって決まる。すなわち、通常、結合解離エネルギーが小さいsp3C-H結合が優先して酸化される。

【0050】
酸化反応を行うための酸化剤としては、例えば、過酸化水素、オゾン、m-クロロ過安息香酸(CPBA)、2-ヨードキシ安息香酸エステル(IBXエステル)、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどが挙げられる。副生物が酸素や水などの環境負荷が少ないものである点で、過酸化水素やオゾンが好ましく挙げられる。

【0051】
また、酸化反応における溶剤としては、例えば、アセトニトリル、ジメチルアセトアミドなどが挙げられ、中でも、高活性である点でアセトニトリルが好ましい。

【0052】
本発明の金属錯体触媒は、選択性に優れ、かつ、触媒回転数も十分であるので、少量の添加で効率的かつ経済的に酸化反応を行うことができる。
例えば、酸化条件や原料の種類にもよるが、モル基準で、金属錯体触媒:基質(酸化対象となる物質)=1:20~50:1000程度とすることができる。

【0053】
本発明の金属錯体触媒を用いた酸化反応によれば、例えば、アルコールを製造することができる。また、さらに酸化反応を進めてケトンを製造することもできる。
特に、アルコールは、その水酸基を反応基点としてエステルやエーテルなどの誘導体を容易に製造することができ、さらに、ビニル基を有する酸でエステル化するなどすれば、モノマーとしての展開も可能であり、多様な応用展開が期待できる。このように、アルカンからアルコールを直接かつ高選択的に合成することの意義は極めて大きい。

【0054】
より具体的な例を挙げれば、例えば、アダマンタン誘導体は医薬やフォトレジスト材料などの用途においての有用性が注目されているが、本発明の金属錯体触媒によれば、アダマンタンから、1-アダマンタノールを選択的に高い収率で得ることができ、さらに、その水酸基を反応基点として、様々なアダマンタン誘導体を効率的に製造することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて、本発明にかかる複素環化合物、金属錯体触媒及びその使用について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、下記一般式(8)で表わされる複素環化合物を「H-dpaqR」と略記する。
【実施例】
【0056】
【化9】
JP0005659191B2_000011t.gif
【実施例】
【0057】
〔複素環化合物に係る実施例〕
<実施例1:H-dpaqNO2の合成>
まず、下記反応(9)により、H-dpaqHを合成した。
【実施例】
【0058】
【化10】
JP0005659191B2_000012t.gif
【実施例】
【0059】
具体的には、反応容器に炭酸ナトリウム(2.02g、19.4mmol)と8-アミノキノリン(2.00g、13.9mmol)を加え、アルゴン雰囲気下にした後、脱水アセトニトリル40mLを加えた。反応容器を氷浴にて0℃にした後、撹拌下、ブロモアセチルブロミド(3.36mL、16.6mmol)を10分かけて加えた。20分後、白色固体を「Celite500」(登録商標)を用いた吸引濾過によって除去し、濾液をエバポレーターによって濃縮後、真空乾燥し、桃色固体を得た。
得られた桃色固体3.54gと炭酸ナトリウム(2.06g、19.4mmol)を反応容器に入れ、アルゴン雰囲気下にした後、脱水アセトニトリル40mLを加えた。氷浴にて0℃にした後、撹拌下、2,2’-ジピコリルアミン(3.31mL、16.6mmol)を20分かけて加えた。一晩撹拌させた後、セライトを用いて白色固体を吸引濾過によって除去し、濾液をエバポレーターによって濃縮後、真空乾燥した。粗生成物はアルミナカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)にて精製し、白色固体を得た。
【実施例】
【0060】
得られた白色固体は、収量4.6g、収率86%であり、下記の同定結果からH-dpaqHであることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ3.53(s,2H),4.01(s,4H),7.14(dd,J=4.9Hz,J=7.2Hz,2H),7.55-7.50(m,3H),7.64(ddd,J=1.5Hz,J=7.5Hz,2H),7.97(d,J=8.0Hz,2H),8.19(dd,J=1.2Hz,J=8.6Hz,1H),8.51(d,J=5.1Hz,2H),8.76(dd,J=2.6Hz,J=6.0Hz,1H),8.93(dd,J=1.4Hz,J=4.3Hz,1H),11.6(s,1H)
13CNMR(125.8MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ59.6(s),61.3(s),116.8(s),121.8(s),121.9(s),122.6(s),123.6(s),127.7(s),128.3(s),134.7(s),136.6(s),136.8(s),139.1(s),148.3(s),149.4(s),158.5(s),169.8(s)
元素分析による同定結果は以下のとおりである。
計算値(C23215O):C,72.04;H,5.52;N,18.26
測定値:C,72.25;H,5.45;N,18.36
【実施例】
【0061】
次に、上記H-dpaqHを用いて、下記反応(10)によりH-dpaqNO2を合成した。
【実施例】
【0062】
【化11】
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【実施例】
【0063】
具体的には、まず、200mLナスフラスコに、上記H-dpaqH(1.50g、3.92mmol)を入れ、濃硫酸75mLに溶解させた。撹拌下、硝酸カリウム(0.474g、4.68mmol)を少量ずつ加えた後、15℃で反応溶液を3時間撹拌した。氷浴下、過剰量のアンモニア水に反応溶液を滴下し、塩基性にした後、ジクロロメタンを用いて分液抽出を行った。有機層をエバポレーターによって濃縮し、真空乾燥した結果、黄色の固体が得られた。
【実施例】
【0064】
得られた黄色固体は、収量1.4g、収率81.6%であり、下記の同定結果からH-dpaqNO2であることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ3.61(s,2H),4.04(s,4H),7.16(dd,J=1.7Hz,J=6.7Hz,2H),7.64(dd,J=1.9Hz,J=7.7Hz,2H),7.79(dd,J=4.3Hz,J=8.9Hz,1H),7.82(d,J=7.5Hz,2H),8.54-8.52(m,3H),8.83(d,J=9.2Hz,1H),9.03(dd,J=1.4Hz,J=4.3Hz,1H),9.31(dd,J=1.7Hz,J=9.2Hz,1H),11.9(s,1H)。
13CNMR(125.8MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ59.5(s),61.4(s),114.0(s),122.2(s),122.7(s),123.6(s),124.8(s),128.1(s),133.5(s),136.8(s),138.1(s),138.9(s),140.9(s),149.0(s),149.5(s),158.0(s),170.9(s)
【実施例】
【0065】
<実施例2:H-dpaqClの合成>
まず、下記反応(11)により、5-クロロ-8-ニトロキノリンを合成した。
【実施例】
【0066】
【化12】
JP0005659191B2_000014t.gif
【実施例】
【0067】
具体的には、まず、100mL三角フラスコにリン酸5.03gと塩酸55mLを加えた後、5-クロロ-2-ニトロアニリン(5.02g、29.1mmol)を溶解した。撹拌下、80℃でアクロレイン(5.0mL、74.8mmol)を30分かけてゆっくりと滴下した後、90℃で3.5時間更に撹拌した。室温まで冷却後、100gの氷水に反応液を注ぎ、生じた沈殿物を吸引濾過により除去した。濾液にアンモニア水を加え、アルカリ性(pH13)にした後、析出した固体を吸引濾過し、真空乾燥した。
【実施例】
【0068】
得られた生成物は、収量3.4g、収率56%であり、下記の同定結果から5-クロロ-8-ニトロキノリンであることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ7.69(dd,J=8.8Hz,4.5Hz,1H),7.72(d,J=8.0Hz,1H),8.00(d,J=8.0Hz,1H),8.69(dd,J=8.8Hz,1.6Hz,1H),9.14(dd,J=4.5Hz,1.6Hz,1H)
13CNMR(125.8MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ123.7(s),123.8(s),125.6(s),127.3(s),133.5(s),135.8(s),140.4(s),147.4(s),153.4(s)
【実施例】
【0069】
次に、5-クロロ-8-ニトロキノリンを用いて、下記反応(12)により、5-クロロ-8-アミノキノリンを合成した。
【実施例】
【0070】
【化13】
JP0005659191B2_000015t.gif
【実施例】
【0071】
具体的には、まず、100mL二口ナス型フラスコに5-クロロ-8-ニトロキノリン(2.016g、9.83mmol)を入れ、エタノール40mLに溶解した。反応容器を窒素置換した後、塩化第一錫(11.1g、49.1mmol)を加え、室温で2時間半撹拌した。撹拌下、冷水、更に飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え、塩基性にした後、ジクロロメタンを用いて分液抽出した。有機層をエバポレーターを用いて濃縮し、真空乾燥し褐色の固体を得た。
【実施例】
【0072】
得られた褐色固体は、収量1.1g、収率67%であり、下記の同定結果から5-クロロ-8-アミノキノリンであることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ5.01(br,2H),6.84(d,J=8.0Hz,1H),7.39(d,J=8.0Hz,1H),7.49(dd,J=8.6Hz,4.2Hz,1H),8.47(dd,J=8.6Hz,1.7Hz,1H),8.79(dd,4.2Hz,1.7Hz,1H)
13CNMR(125.8MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ109.7(s),118.3(s),122.3(s),126.7(s),127.4(s),133.1(s),139.0(s),143.5(s),148.0(s)
【実施例】
【0073】
さらに、上記5-クロロ-8-アミノキノリンを用いて、下記反応(13)により、H-dpaqClを合成した。
【実施例】
【0074】
【化14】
JP0005659191B2_000016t.gif
【実施例】
【0075】
具体的には、まず、反応容器に炭酸ナトリウム(0.85g、8.1mmol)と5-クロロ-8-アミノキノリン(1.07g、6.0mmol)をいれアルゴン雰囲気下にした後、脱水アセトニトリル40mLを加えた。反応容器を氷浴にて0℃にした後、撹拌下、ブロモアセチルブロミド(0.62mL、7.1mmol)を10分かけて加えた。3時間後、セライトを用いて白色沈殿を吸引濾過によって除去し、濾液をエバポレーターによって濃縮後、真空乾燥した。
得られた桃色固体1.96gと炭酸ナトリウム(0.99g、9.3mmol)を反応容器に入れ、アルゴン雰囲気下にした後、脱水アセトニトリル50mLを加えた。氷浴にて0℃にした後、撹拌下、2,2’-ジピコリルアミン(1.29mL、7.1mmol)を20分かけて加えた。一晩撹拌させた後、セライトを用いて白色固体を吸引濾過によって除去し、濾液をエバポレーターによって濃縮後、真空乾燥した。粗生成物はアルミナカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)にて精製し、黄色固体を得た。
【実施例】
【0076】
得られた黄色固体は、収量1.0g、収率38%であり、下記の同定結果からH-dpaqClであることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ3.55(s,2H),4.02(s,4H),7.15(d,J=8.4Hz,1H),7.59(dd,J=8.5Hz,4.3Hz,1H),7.63(dd,J=7.6Hz,1.2Hz,2H),7.91(d,J=7.7Hz,2H),8.52(dd,J=5.7Hz,1.2Hz,2H),8.60(dd,J=8.5Hz,1.6Hz,1H),8.71(d,J=8.4Hz,1H),8,98(dd,J=4.2Hz,1.6Hz,1H),11.6(s,1H)
13CNMR(125.8MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ59.5(s),61.3(s),111.7(s),122.5(s),122.6(s),123.5(s),124.6(s),126.3(s),127.5(s),133.6(s),133.9(s),136.7(s),139.6(s),148.7(s),149.4(s),158.3(s),169.9(s)
【実施例】
【0077】
<比較例1:H-dpaqOMeの合成>
実施例2の記載に準じて反応(11)により5-クロロ-8-ニトロキノリンを合成した後、これを用いて、下記反応(14)により、5-メトキシ-8-ニトロキノリンを合成した。
【実施例】
【0078】
【化15】
JP0005659191B2_000017t.gif
【実施例】
【0079】
具体的には、まず、二口ナスフラスコに5-クロロ-8-ニトロキノリン(0.87g、4.21mmol)、ナトリウムメトキシド(0.95g、17.65mmol)を加え窒素下にし、脱水メタノールを30ml加えた。70℃で5時間反応させたのち、エバポレーターで溶媒を除去し、ジクロロメタンと水を用いて分液し有機層に抽出した。有機層を塩水で洗浄した後に、硫酸ナトリウムを加えて脱水をし、溶媒を除去すると褐色の油状物質を得た。その油状物質を、アルミナカラム(展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)を用いて精製し、エバポレーターで溶媒を除去させた結果、黄土色固体が得られた。
【実施例】
【0080】
得られた黄土色固体は、収量0.484g、収率67%であり、下記の同定結果から5-メトキシ-8-ニトロキノリンであることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ5.01(s,3H),6.84(d,J=8.0Hz,1H),7.39(d,J=8.0Hz,1H),7.50(dd,J=4.2Hz,8.6Hz,1H),8.47(dd,J=8.6Hz,1.7Hz,1H),8.80(dd,J=4.2Hz,1.7Hz,1H)
【実施例】
【0081】
次に、上記5-メトキシ-8-ニトロキノリンを用いて、下記反応(15)により、5-メトキシ-8-アミノキノリンを合成した。
【実施例】
【0082】
【化16】
JP0005659191B2_000018t.gif
【実施例】
【0083】
具体的には、まず、二口ナスフラスコに5-メトキシ-8-ニトロキノリン(0.4g、2.33mmol)を加え窒素下にした後に脱水エタノールを50ml加え溶かした。水素下でパラジウムカーボン(0.04g)を加え常温で撹拌した。6時間後セライトを用いて濾過し、濾液をエバポレーターで濃縮すると黄色の固体を得た。
【実施例】
【0084】
得られた黄色固体は、収量0.333g、収率83%であり、下記の同定結果から5-メトキシ-8-アミノキノリンであることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ3.94(s,3H),4.63(s,2H),6.73(d,J=8.0Hz,1H),6.87(d,J=8.0Hz,1H),7.38(dd,J=4.1,8.6Hz,1H),8.51(dd,J=1.7,8.6Hz,1H),8.80(dd,J=1.7,4.1Hz,1H)
【実施例】
【0085】
さらに、上記5-メトキシ-8-アミノキノリンを用いて、下記反応(16)により、H-dpaqOMeを合成した。
【実施例】
【0086】
【化17】
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【実施例】
【0087】
具体的には、まず、反応容器に炭酸ナトリウム(0.285g、2.7mmol)と5-メトキシ-8-アミノキノリン(0.33g、1.91mmol)をいれアルゴン雰囲気下にした後、脱水アセトニトリル5mLを加えた。反応容器を氷浴にて0℃にした後、撹拌下、ブロモアセチルブロミド(0.2mL、2.3mmol)を10分かけて加えた。3時間後、セライトを用いて白色沈殿を吸引濾過によって除去し、濾液をエバポレーターによって濃縮後、真空乾燥した。
得られた橙色固体0.5gと炭酸ナトリウム(0.25g、1.9mmol)を反応容器に入れ、アルゴン雰囲気下にした後、脱水アセトニトリル15mLを加えた。氷浴にて0℃にした後、撹拌下、2,2’-ジピコリルアミン(0.36mL、2mmol)を20分かけて加えた。一晩撹拌させた後、セライトを用いて白色固体を吸引濾過によって除去し、濾液をエバポレーターによって濃縮後、真空乾燥した。粗生成物はアルミナカラム(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)にて精製し、黄色固体を得た。
【実施例】
【0088】
得られた黄色固体は、収量0.615g、収率78%であり、下記の同定結果からH-dpaqOMeであることが確認できた。
1HNMR(500MHz,CDCl3)による同定結果は以下のとおりである。
δ3.51(s,2H),3.99(s,3H),4.00(s,4H),6.84(d,J=8.59Hz,1H),7.16(ddd,J=6.59Hz,4.01Hz,1.72Hz,2H),7.51(dd,J=4.01Hz,8.59Hz,1H),7.66(ddd,J=8.02Hz,7.45Hz,1.72Hz,2H),8.01(d,J=8.02Hz,2H),8.53(d,J=4.01Hz,2H),8.62(dd,J=8.59Hz,1.72Hz,1H),8.69(d,J=8.59Hz,1H),8.95(dd,J=4.58Hz,1.72Hz,1H),11.4(s,1H)
【実施例】
【0089】
〔金属錯体触媒に係る実施例〕
<実施例3:[FeIII(dpaqNO2)CH3CN](ClO42の合成>
実施例1で得られたH-dpaqNO2を用いて、下式(17)で表される[FeIII(dpaqNO2)CH3CN](ClO42を合成した。
【実施例】
【0090】
【化18】
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【実施例】
【0091】
すなわち、実施例1で得られたH-dpaqNO2(0.50g、1.15mmol)およびトリエチルアミン(0.12g、1.20mmol)をメタノール4mLに溶解させ、過塩素酸第二鉄(Fe(ClO43・6H2O、0.63g、1.80mmol)のメタノール溶液4mLを加えた。反応溶液は緑色に変化した。2時間撹拌した後、メンブランフィルターを用いて沈殿を濾集、真空乾燥し、緑黒色固体を得た。得られた固体をアセトニトリルに溶解させ酢酸エチルを貧溶媒とし気液拡散法によって再結晶すると、空気中で安定なブロック状の緑黒色結晶が得られた。収量0.66g、収率78%であった。
【実施例】
【0092】
<実施例4:[FeIII(dpaqCl)CH3CN](ClO42の合成>
実施例2で得られたH-dpaqClを用いて、下式(18)で表される[FeIII(dpaqCl)CH3CN](ClO42を合成した。
【実施例】
【0093】
【化19】
JP0005659191B2_000021t.gif
【実施例】
【0094】
すなわち、実施例2で得られたH-dpaqCl(0.31g、0.72mmol)およびトリエチルアミン(0.08g、0.79mmol)をメタノール5mLに溶解させ、過塩素酸第二鉄(Fe(ClO43・6H2O、0.31g、0.86mmol)のメタノール溶液2mLを加えた。反応溶液は緑色に変化した。2時間撹拌した後、メンブランフィルターを用いて沈殿を濾集、真空乾燥し、緑黒色固体を得た。得られた固体をアセトニトリルに溶解させ酢酸エチルを貧溶媒とし気液拡散法によって再結晶すると、空気中で安定なブロック状の緑黒色結晶が得られた。収量0.40g、収率76%であった。
【実施例】
【0095】
<比較例2:[FeIII(dpaqH)CH3CN](ClO42の合成>
H-dpaqHを用いて、下式(19)で表される[FeIII(dpaqH)CH3CN](ClO42を合成した。
【実施例】
【0096】
【化20】
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【実施例】
【0097】
すなわち、H-dpaqH(0.10g、0.26mmol)およびトリエチルアミン(0.03g、0.30mmol)をメタノール1.0mLに溶解させ、過塩素酸第二鉄(Fe(ClO43・6H2O、0.11g、0.31mmol)のメタノール溶液1.0mLを加えた。反応溶液は緑色に変化した。2時間撹拌した後、メンブランフィルターを用いて沈殿を濾集、真空乾燥し、緑黒色固体を得た。得られた固体をアセトニトリルに溶解させ酢酸エチルを貧溶媒とし気液拡散法によって再結晶すると、空気中で安定なブロック状の緑黒色結晶が得られた。収量0.14g、収率78%であった。
なお、H-dpaqHは実施例1に記載した方法で製造した。
【実施例】
【0098】
<比較例3:[FeIII(dpaqOMe)CH3CN](ClO42の合成>
比較例1で得られたH-dpaqOMeを用いて、下式(20)で表される[FeIII(dpaqOMe)CH3CN](ClO42を合成した。
【実施例】
【0099】
【化21】
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【実施例】
【0100】
すなわち、比較例1で得られたH-dpaqOMe(0.61g、1.5mmol)およびトリエチルアミン(0.16g、1.6mmol)をメタノール7.0mLに溶解させ、過塩素酸第二鉄(Fe(ClO43・6H2O、0.63g、1.8mmol)のメタノール溶液5.0mLを加えた。反応溶液は緑色に変化した。2時間撹拌した後、メンブランフィルターを用いて沈殿を濾集、真空乾燥し、緑黒色固体を得た。得られた固体をアセトニトリルに溶解させ酢酸エチルを貧溶媒とし気液拡散法によって再結晶すると、空気中で安定なブロック状の緑黒色結晶が得られた。収量0.68g、収率64%であった。
【実施例】
【0101】
〔金属錯体触媒の使用に係る実施例〕
<実施例5,6:アダマンタンの酸化反応>
実施例3,4の各鉄錯体触媒を用いて、下記反応(21)により、アダマンタンの酸化反応を行った。下記反応(21)において、生成物(A)は目的生成物であり、生成物(B)は副生成物である。
【実施例】
【0102】
【化22】
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【実施例】
【0103】
具体的には、鉄錯体触媒を含むアセトニトリル溶液(1mM、1mL、1μmol)にアダマンタン(500μmol)を溶解した後、シリンジポンプを用いて過酸化水素のアセトニトリル溶液(0.4mM、0.5mL、20μmol)を30分かけて加えた。過酸化水素の添加開始から35分後、反応溶液にニトロベンゼンのアセトニトリル溶液(0.2M、0.1mL、20μmol)を加え、ガスクロマトグラフィーを用いて定量を行った。
機器:ガスクロマトグラフ「GC2014」(島津製作所製)
カラム:キャピラリーカラム「InertCap」(60m×0.25mm)(ジーエルサイエンス社製)
測定条件:初期温度100℃で5分間保持、その後220℃まで10℃/minで昇温、220℃に到達後11分間保持
【実施例】
【0104】
<比較例4,5:アダマンタンの酸化反応>
比較例2,3の各鉄錯体触媒を用いて、実施例5,6と同様にしてアダマンタンの酸化反応を行った。
【実施例】
【0105】
<実施例7,8:1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタンの酸化反応>
実施例3,4の各鉄錯体触媒を用いて、下記反応(22)により、1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタンの酸化反応を行った。下記反応(22)において、生成物(C)は目的生成物であり、生成物(D)は副生成物である。
【実施例】
【0106】
【化23】
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【実施例】
【0107】
具体的には、鉄錯体触媒を含むアセトニトリル溶液(1mM、5mL、5μmol)に1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタン(500μmol)を溶解した後、シリンジポンプを用いて過酸化水素のアセトニトリル溶液(3mM、0.2mL、600μmol)を30分かけて加えた。過酸化水素の添加開始から35分後、反応溶液にニトロベンゼンのアセトニトリル溶液(0.2M、0.1mL、20μmol)を加え、ガスクロマトグラフィーを用いて定量を行った。
機器:ガスクロマトグラフ「GC2014」(島津製作所製)
カラム:キャピラリーカラム「InertCap」(60m×0.25mm)(ジーエルサイエンス社製)
測定条件:初期温度100℃で5分間保持、その後220℃まで10℃/minで昇温、220℃に到達後11分間保持
【実施例】
【0108】
<比較例6,7:1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタンの酸化反応>
比較例2,3の各鉄錯体触媒を用いて、実施例7,8と同様にして1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタンの酸化反応を行った。
【実施例】
【0109】
〔金属錯体触媒の選択性の評価〕
<評価1:アダマンタンの酸化反応における選択性>
実施例5,6及び比較例4,5におけるアダマンタンの酸化反応において、目的生成物(A)と、副生成物(B)の生成比は以下のとおりであった。
実施例5:(A)/(B)=27
実施例6:(A)/(B)=20
比較例4:(A)/(B)=19
比較例5:(A)/(B)=16
【実施例】
【0110】
上記に見るとおり、本発明に係る実施例3,4の金属錯体触媒を用いた実施例5,6の酸化反応では、比較例2,3の金属錯体触媒を用いた比較例4,5の酸化反応と比べて、高い選択性で目的生成物を得ることができた。特に、実施例3の金属錯体触媒を用いた実施例5の酸化反応において、選択性の向上効果が顕著であった。
【実施例】
【0111】
<評価2:1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタンの酸化反応における選択性>
実施例7,8及び比較例6,7における1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタンの酸化反応において、目的生成物(C)と、副生成物(D)の生成比は以下のとおりであった。
実施例7:(C)/(D)=18
実施例8:(C)/(D)=15
比較例6:(C)/(D)=15
比較例7:(C)/(D)=12
【実施例】
【0112】
上記に見るとおり、本発明に係る実施例4の金属錯体触媒を用いた実施例8の酸化反応は、比較例2の金属錯体触媒を用いた比較例6の酸化反応との間では、選択性に有意な差が認められなかったものの、比較例3の金属錯体触媒を用いた比較例7の酸化反応と比べた場合には、高い選択性で目的生成物を得ることができていた。実施例3の金属錯体触媒を用いた実施例7の酸化反応については、比較例6,7の酸化反応のいずれと比較しても、選択性の明らかな向上が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明にかかる複素環化合物及び金属錯体触媒は、sp3C-H結合の選択的酸化に好適に利用することができる。