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明細書 :ポリマーステント

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5811580号 (P5811580)
公開番号 特開2011-251117 (P2011-251117A)
登録日 平成27年10月2日(2015.10.2)
発行日 平成27年11月11日(2015.11.11)
公開日 平成23年12月15日(2011.12.15)
発明の名称または考案の名称 ポリマーステント
国際特許分類 A61F   2/92        (2013.01)
FI A61F 2/92
請求項の数または発明の数 11
全頁数 24
出願番号 特願2011-103576 (P2011-103576)
出願日 平成23年5月6日(2011.5.6)
優先権出願番号 2010107421
優先日 平成22年5月7日(2010.5.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年2月17日(2014.2.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】南 和幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
審査官 【審査官】姫島 卓弥
参考文献・文献 特開2006-068250(JP,A)
特表2008-507349(JP,A)
特開2001-322667(JP,A)
特開2008-151245(JP,A)
米国特許第05984963(US,A)
調査した分野 A61F 2/92
A61M 29/02
F16B 2/08
特許請求の範囲 【請求項1】
頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記頭部において前記胴部が挿通され前記胴部の方向に略垂直な方向のスリットが形成され、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成され前記長辺の一方の側と対向する側において胴部の幅を縮小するように弾性的に変形可能なリンク形状による幅可変部が形成され、前記胴部の鈎状突起部の頂部から対向する側の幅可変部縁辺までの幅が前記頭部におけるスリットの縦方向長さよりも大きく、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部のスリットに挿入し各々のT字形ユニットをリング形状にする際に前記胴部における幅可変部の弾性的変形により前記鈎状突起部の部分がスリットを通過可能であり、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットの端側に当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたものであり、前記胴部の幅可変部は前記鈎状突起部が形成された前記長辺の一方の側と対向する側において外形が突出する台形状に形成され、両側の斜辺が胴部の長い辺に対して緩く傾斜していて前記頭部のスリットへの胴部の挿入が円滑になされるようにするものであることを特徴とするポリマーステント。
【請求項2】
頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記頭部において前記胴部が挿通され前記胴部の方向に略垂直な方向のスリットが形成され、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成され前記長辺の一方の側と対向する側において胴部の幅を拡大するように弾性的に変形可能なリンク形状による幅可変部が形成され、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記胴部の幅可変部が変形していない状態では前記鈎状突起部の頂部から対向する側の幅可変部縁辺までの幅が前記頭部におけるスリットの縦方向長さよりも小さく、各々の前記胴部を丸めて前記頭部のスリットに挿入し各々のT字形ユニットをリング形状にする際に幅可変部縁辺と接するスリットの辺部との摩擦作用により前記幅可変部における胴部の幅が拡大した時の前記鈎状突起部の頂部から対向する側の幅可変部縁辺までの幅が前記頭部におけるスリットの縦方向長さよりも大きく、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットの端側に当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたことを特徴とするポリマーステント。
【請求項3】
前記幅可変部における外側辺に鈎状突起部が形成され、該鈎状突起部は胴部の反対側の鈎状突起部とともに胴部のリング形状を縮径する方向への移動が係止されるように作用するものであることを特徴とする請求項2に記載のポリマーステント。
【請求項4】
頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記頭部において前記胴部が挿通され前記胴部の方向に略垂直な方向のスリットが形成され、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成され、前記胴部の鈎状突起部の頂部から対向する辺縁までの幅が前記頭部におけるスリットの縦方向長さよりも大きく、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記頭部において前記胴部を丸めて前記頭部のスリットに挿入した時に前記胴部において鈎状突起部が形成されていない側の辺縁が通過する側のスリットの端部側にスリットに垂直な方向の細溝孔が延設されるとともに該延設された細溝孔に平行にさらに他の細溝孔が間に細い帯状の連結部を介在して形成されて形成されて前記スリットとあわせて略〒形の通孔が形成され、各々の前記胴部を丸めて前記頭部におけるスリットに挿入しT字形ユニットの胴部をリング形状にする際に前記胴部において鈎状突起部が形成されていない側の辺縁の押圧作用により前記スリットに連接する細い連結部が弾性的に撓むことにより前記スリットの縦方向の長さが拡大して前記胴部が通過可能になり、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットに当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたことを特徴とするポリマーステント。
【請求項5】
頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成されており、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記頭部において前記胴部の幅方向に対して傾斜する方向で前記胴部の鈎状突起部が通過可能な長さのスリットが形成され、該スリットの周囲の大半部を周回する溝孔により半島状のタブ部が形成されるとともに、半島状のタブ部のつけ根部が胴部の幅方向で鈎状突起部側に偏倚していることにより前記胴部の鈎状突起部の斜辺部分がスリットを通過する際に傾斜したスリットが前記胴部の幅方向を向くように前記タブ部がそのつけ根部において弾性的に変形して前記胴部の鈎状突起部の部分が前記スリットを通過可能になり、鈎状突起部の通過後にタブ部のつけ根の変形が復元することによりスリットが傾斜する方向に戻り、鈎状突起部の直立辺部分がスリットに係止されるようにして前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動が係止され前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたことを特徴とするポリマーステント。
【請求項6】
頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成されており、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記頭部において前記胴部の長さ方向に対し全体として交差する方向である屈曲した形状のスリットが形成され、該スリットの前記胴部において鈎状突起部が形成されていない側の部分がこれを周回するように切り取り部で区画された細い帯状の連結部により包囲されていて少なくとも前記胴部の鈎状突起部が形成されていない側の前記スリットの部分を包囲する連結部が屈曲した形状であって弾性的に変形可能であるとともに、前記スリットの上端から下端までの高さが前記胴部における鈎状突起部の頂部から対向する辺縁までの幅よりも小さくされており、各々の前記胴部を丸めて前記頭部のスリットに挿入し各々のT字形ユニットをリング形状にする際に前記鈎状突起部が形成されていない側の胴部の辺縁部により前記スリットの下端側が押圧されこれを包囲する屈曲した連結部の形状が弾性的に変形し伸張することにより前記スリットの上端から下端までの高さが前記胴部の鈎状突起部の頂部から対向する辺までの幅より大きくなって前記胴部がスリットを通過可能であり、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットに当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたことを特徴とするポリマーステント。
【請求項7】
各々の前記頭部におけるスリットは、前記胴部の長辺の方向に対して略垂直な方向に形成されたスリット主部と前記胴部の鈎状突起部が形成されていない側に前記スリット主部に折曲する形状に連接して形成された折曲部とからなるように屈曲した形状のものであることを特徴とする請求項6に記載のポリマーステント。
【請求項8】
各々の前記頭部におけるスリットは、前記胴部の長辺の方向に対して略3字形状をなし前記胴部の鈎状突起部が形成されていない側の前記スリットの大半部が細い帯状の連結部に包囲されてその周囲の切り取り部に半島状に突出するように屈曲した形状であることを特徴とする請求項6に記載のポリマーステント。
【請求項9】
各々の前記頭部におけるスリットは前記胴部の長辺方向に略垂直な方向であって、前記スリットの前記胴部の鈎状突起部が形成されていない側における3方が前記スリットの縦方向の両側のジグザグ状に屈曲したばね部とその先端側を接続する連接部とからなる連結部で包囲され、該連結部の周囲の切り取り部において半島状に突出する形状であることを特徴とする請求項6に記載のポリマーステント。
【請求項10】
各々の頭部に形成された前記スリットの前記胴部の長さ方向に対し全体として交差する方向に平行にその方向の該スリットと前記切り取り部を合わせた長さより長くかつ平行な方向の補助スリットが各々の前記頭部に形成されていることを特徴とする請求項4,6~9のいずれかに記載のポリマーステント。
【請求項11】
頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記頭部において前記胴部が挿通され前記胴部の方向に略垂直な方向のスリットが形成され、各々の前記胴部の長辺の一方の側において前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットの端側に係止される直立辺部分とを有する山形形状の少なくとも1つの鈎状突起部が形成され、前記胴部の鈎状突起部が形成された側の前記スリットの端側に線状切り込み部が延設されて該切り込み部とスリットの端部とにより前記鈎状突起部の直立辺部を係止する爪部が形成され、前記スリットの長さは前記胴部の鈎状突起部のない部分が通過可能な大きさであるが胴部における鈎状突起部の頂部から対向辺縁までの幅よりは小さく、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットの端側の爪部に当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から前記線状切り込み部を通過することにより可能であり、前記頭部において前記スリットに平行に間隔をおいて前記胴部の側に前記スリット及び線状切り込み部を合わせた長さより長い補助スリットが形成されていることを特徴とするポリマーステント。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーステントに関し、特にポリマーフィルムを曲成し筒状にして管腔内に留置されるポリマーステントに関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞や脳梗塞など、血管の疾患による病気の治療法として、バルーンカテーテルにより血管を拡張しステントを留置することが行われる。一般的にはステントとして金属製のものを用いている。金属製のステントは永久的に体内に残留するものであり、そのため、体の大きさが変わる若年者への適用は可能ではなく、また、長時間にわたる力学的刺激により狭窄を再発する危険がある。
【0003】
ポリマー製のステントでは金属製の場合のこのような欠点がなく、生分解性ポリマーで作製されたステントにすれば、生体内にステントが永久的に存在することによるストレスを解消するという利点があり、最近ではポリマーステントも多く用いられている。
【0004】
ポリマー製ステントに関して以下の特許文献に示されるような技術があり、特許文献1には、相互ロックする一連の突出部及び孔を有しオーバラップ縁部を備え、ステントが管腔壁の一部を支持する開位置に拡大する時にラチェット作用をする円筒状シートからなる管腔内ステントについて記載されている。特許文献2には、複数の梯子状エレメントをシリーズに接続して形成され、各梯子状エレメントが2本の長尺リブとそれに固定された2本の端部横桟を備え長尺リブのスライドを可能にし、隣接する梯子状エレメントの端部横桟間に可変的な距離を形成することにより縮小径から拡張径に拡張可能であり縮小径にスライドバックするのを阻止する梯子型拡張可能ステントについて記載されている。
【0005】
特許文献3には、少なくとも一続きのスライド/固定半径要素と、1つの連接要素及び複数の停止部を有する少なくとも1つのラチェット機構で構成され、ラチェット機構は縮小時直径から拡張時直径への半径要素の一方向のスライドを許容するとともに拡張時直径から半径方向への反動を阻止するようにしたスライド/固定半径要素を有する拡張可能ステントについて記載されている。
【0006】
特許文献4は、本発明者によるものであるが、頭部と頭部から延長される胴部からなるT字形のユニット部が複数個連結されてなり、胴部の一側部または両側部に少なくとも一の突起部を有し、頭部は胴部を挿通して突起部を掛止する開口部を有するようにしたポリマーステントについて記載されている。
【0007】
特許文献1によるものでは、円筒形シートに形成されているため、ステントの剛性が高く、円筒形シートの端部が突出して管腔内において断面を円形になるようにすることが困難で管腔内に密着できない可能性があった。特許文献2による梯子型拡張可能ステントは形状・構造が複雑であるとともに、長尺リブに加わる抵抗が大きいためステントの直径を容易に可変とすることができない可能性があり、また、ステント径の縮小方向へのスライドを阻止するためのタブストップが長尺リブに設けられ、タブストップに端部横桟が係合し、長尺リブと端部横桟とが直角に構成されているために、長尺リブの動きによってタブストップが働くと端部横桟が歪んでステントが変形することが考えられるものである。
【0008】
特許文献3によるスライド/固定半径要素を有する拡張可能ステントは形状・構造が複雑であるため加工・製作において煩雑、困難な工程が不可避であり、また、縮小時の直径への反動を阻止するための停止部に掛止されるタブが小さいため、掛かり難いという問題点がある。
【0009】
特許文献4は、特許文献1~3等に示される従来技術によるポリマーステントにおける構造的な問題点を解消すべく本発明者が提案したものであり、これについて概略的に説明すると、次のようなものである。
【0010】
図16は特許文献4に示されるラチェット機構を備えたポリマーステントの展開図であり、このポリマーステントは、頭部Hと頭部から延設される細長い矩形状の胴部RからなるT字形のユニット部を複数個連結した1枚のシート状の部材として構成される。胴部Rには斜辺部分と直立辺部分とからなる鈎状の突起部Pが形成されており、頭部HにはスリットSLが形成されている。Nは接合部である。図16のポリマーステントの各ユニット部の胴部Rを丸め、先端をスリットSLに挿通して図17のように各ユニットをリング状にし、全体として円筒形のステントとなる。
【0011】
T字形のユニット部の1つを示すと図18(a)のようであり、頭部Hに形成されたスリットSLは胴部Rで鈎状突起部のない部分の幅の部分が挿通可能で鈎状突起部を合わせた幅の部分より小さい高さを有する開口部Qとその1辺の延長方向に続く線状切り込み部Lとからなり、図18(b)のように、線状切り込み部Lの長さは胴部Rの鈎状突起部Pが挿通可能な長さになっている。線状切り込み部Lとそれに隣接する開口部Qの上側の辺とで爪部が形成される。この爪部は突起部を係止する作用をなす。
【0012】
図18(c)のように頭部HのスリットSLに胴部Rを挿通した後に、リング状になった胴部Rが径を広げようとする作用が加わった場合に、鈎状突起部Pの斜辺部分からスリットSLの切り込み部Lを通過することになり、鈎状突起部PはスリットSLを通り抜けることができる。胴部Rが径を狭めようとする作用が加わった場合には鈎状突起部Pの直立辺部分がスリットSLの切り込み部Lを通過しようとしてもこの爪部が鈎状突起部Pを係止するため、鈎状突起部PはスリットSLを通過できない。
【0013】
図19(a),(b)はポリマーステントを血管などの管腔内に留置する状況を説明する図である。図19(a)は、図17のように筒状としたポリマーステントをさらに小さく縮径した状態で管腔内に挿入した状態を断面で示している。中心に縮小した状態のバルーンB(点線で示す)が挿入されており、バルーンBに縮径した状態のポリマーステントSTを装着し管腔内に挿入する。ポリマーステントSTを所定位置に挿入した後に、内側のバルーンBを膨らませると図19(b)のようになり、ポリマーステントSTを管腔の内径に合わせて拡張して固定した後に、バルーンBを抜き取ることにより、管腔内にポリマーステントが留置された状態になる。
【0014】
図20(a)に示すように、このポリマーステントは、各ユニット部におけるスリットSLの線状切り込み部Lとそれに隣接する開口部Qの上側の辺とで形成される爪部に胴部Rにおける鈎状突起部Pの直立辺部が係止されることにより、リング状の胴部が縮径する方向への移動(図で胴部Rの右方向への移動)が阻止され、リング状の胴部が拡張する方向への移動(図で胴部Rの左方向への移動)は可能になる。
【0015】
このように鈎状突起部Pがステントの径の縮小を阻止することにより、ポリマーステントを構成する各ユニット部のリング形状の大きさが維持され、管腔の径の縮小を防止する機能が与えられる。Nは複数のユニット部の胴部を連結する部材としての接合部であり、この部材を装着することによって筒状のポリマーステントの形状をより一層安定させることができる。接合部の装着に際しては、各ユニット部の胴部Rの先端に形成された切り込みに対応する接合部側の先端の切り込みをかみ合わせて固定し溶着する。
【0016】
管腔内に留置するためにバルーンカテーテルにより拡張されるポリマーステントは内側から強い圧力を受け、胴部RがスリットSLを通り抜ける箇所では頭部Hと胴部とが重なっており、この部分では内側からの圧力と胴部RをスリットSLに通すため張力によって生じる摩擦力を受けることから変形を生じ、図20(b)のようにスリットSLの線状切り込み部Lが拡張変形するということにもなり得る。このように線状切り込み部Lが拡張した形状になると、胴部Rの鈎状突起部Pの直立辺部はスリットSLに係止されず、ポリマーステントが縮径する方向への圧力に抗し得なくなり、管腔壁を支えられず、ステントとしての機能が損なわれることにもなるという問題があった。
【先行技術文献】
【0017】

【特許文献1】特開平7-531号公報
【特許文献2】特表2002-540841号公報
【特許文献3】特表2004-515307号公報
【特許文献4】特開2006-68250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
循環器系疾病に対して術後に管腔内に留置して用いられるステントとして、金属製ステントは強度的に優れるが柔軟性に劣り、体内に永久的に残留し、生体管路にストレスを与えるほか、金属製のステントが体内に残留したままであると、MRI(磁気共鳴イメージング)による画像に影響を与えるため、診断が困難になる。また、金属製のステントは柔軟性に乏しく、血管壁への力学的な刺激、ストレスを与えやすく、欠陥壁の肥厚を招き、再狭窄を発症させたりすることが考えられる。
【0019】
ポリマーステントでは金属製ステントにおいて問題となるストレスを解消するが、金属製ステントに比しポリマーは弾性率、強度が低いため収縮抑制力が小さく、またクリープ変形を起こし易いことから、長時間収縮状態に保持したり、縮小の割合を大きくしたりすると永久変形が生じ復元拡張ができなくなるという問題点があった。
【0020】
したがって、ポリマー製のステントでは金属製ステントのこのような欠点を補える反面、クリープ変形を生じ易いため、金属製の場合のような網目構造では必要な機能の実現は難しい。ポリマーステントを筒状にした状態を維持するため鈎状突起部がスリットに係止されるラチェット機構をもつポリマーステントでは金属製のものと同程度の形状保持の強度が得られるが、拡張時の強い力によるスリットの変形によりラチェット機構が作用しない状況になることもあった。
【0021】
特許文献4に示されるような、ラチェット機構による連結部を備えたポリマーステントでは金属製と同程度の強度が得られるが、ラチェットが機能せず収縮する場合があり、これは、摩擦力によるステント構造体、とりわけラチェット機構部の変形に起因すると考えられる。
【0022】
そのようなことから、ラチェット機構により筒状形状を維持するポリマーステントにおいて、形状・構造を簡易にし、加工・製作を容易にするとともに、ステントの拡張動作により摩擦力でラチェット機構部が変形してその機能が損なわれないようにすることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は前述した課題を解決すべくなしたものであり、本発明の請求項1によるポリマーステントは、頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記頭部において前記胴部が挿通され前記胴部の方向に略垂直な方向のスリットが形成され、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成され前記長辺の一方の側と対向する側において胴部の幅を縮小するように弾性的に変形可能なリンク形状による幅可変部が形成され、前記胴部の鈎状突起部の頂部から対向する側の幅可変部縁辺までの幅が前記頭部におけるスリットの縦方向長さよりも大きく、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部のスリットに挿入し各々のT字形ユニットをリング形状にする際に前記胴部における幅可変部の弾性的変形により前記鈎状突起部の部分がスリットを通過可能であり、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットの端側に当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたものであり、前記胴部の幅可変部は前記鈎状突起部が形成された前記長辺の一方の側と対向する側において外形が突出する台形状に形成され、両側の斜辺が胴部の長い辺に対して緩く傾斜していて前記頭部のスリットへの胴部の挿入が円滑になされるようにしたものである。
【0024】
本発明の請求項2によるポリマーステントは、頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記頭部において前記胴部が挿通され前記胴部の方向に略垂直な方向のスリットが形成され、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成され前記長辺の一方の側と対向する側において胴部の幅を拡大するように弾性的に変形可能なリンク形状による幅可変部が形成され、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記胴部の幅可変部が変形していない状態では前記鈎状突起部の頂部から対向する側の幅可変部縁辺までの幅が前記頭部におけるスリットの縦方向長さよりも小さく、各々の前記胴部を丸めて前記頭部のスリットに挿入し各々のT字形ユニットをリング形状にする際に幅可変部縁辺と接するスリットの辺部との摩擦作用により前記幅可変部における胴部の幅が拡大した時の前記鈎状突起部の頂部から対向する側の幅可変部縁辺までの幅が前記頭部におけるスリットの縦方向長さよりも大きく、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットの端側に当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたものである。
【0025】
本発明の請求項3によるポリマーステントは、請求項2によるポリマーステントにおいて、前記幅可変部における外側辺に鈎状突起部が形成され、該鈎状突起部は胴部の反対側の鈎状突起部とともに胴部のリング形状を縮径する方向への移動が係止されるように作用するものであるようにしたものである。
【0026】
本発明の請求項4によるポリマーステントは、頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記頭部において前記胴部が挿通され前記胴部の方向に略垂直な方向のスリットが形成され、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成され、前記胴部の鈎状突起部の頂部から対向する辺縁までの幅が前記頭部におけるスリットの縦方向長さよりも大きく、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記頭部において前記胴部を丸めて前記頭部のスリットに挿入した時に前記胴部において鈎状突起部が形成されていない側の辺縁が通過する側のスリットの端部側にスリットに垂直な方向の細溝孔が延設されるとともに該延設された細溝孔に平行にさらに他の細溝孔が間に細い帯状の連結部を介在して形成されて前記スリットとあわせて略〒形の通孔が形成され、各々の前記胴部を丸めて前記頭部におけるスリットに挿入しT字形ユニットの胴部をリング形状にする際に前記胴部において鈎状突起部が形成されていない側の辺縁の押圧作用により前記スリットに連接する細い連結部が弾性的に撓むことにより前記スリットの縦方向の長さが拡大して前記胴部が通過可能になり、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットに当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたものである。
【0027】
本発明の請求項5によるポリマーステントは、頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成されており、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記頭部において前記胴部の幅方向に対して傾斜する方向で前記胴部の鈎状突起部が通過可能な長さのスリットが形成され、該スリットの周囲の大半部を周回する溝孔により半島状のタブ部が形成されるとともに、半島状のタブ部のつけ根部が胴部の幅方向で鈎状突起部側に偏倚していることにより前記胴部の鈎状突起部の斜辺部分がスリットを通過する際に傾斜したスリットが前記胴部の幅方向を向くように前記タブ部がそのつけ根部において弾性的に変形して前記胴部の鈎状突起部の部分が前記スリットを通過可能になり、鈎状突起部の通過後にタブ部のつけ根の変形が復元することによりスリットが傾斜する方向に戻り、鈎状突起部の直立辺部分がスリットに係止されるようにして前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動が係止され前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたものである。
【0028】
本発明の請求項6によるポリマーステントは、頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記胴部の長辺の一方の側において少なくとも1つの鈎状突起部が形成されており、前記胴部に形成された鈎状突起部は前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットに係止される直立辺部分とを有する山形形状であり、各々の前記頭部において前記胴部の長さ方向に対し全体として交差する方向である屈曲した形状のスリットが形成され、該スリットの前記胴部において鈎状突起部が形成されていない側の部分がこれを周回するように切り取り部で区画された細い帯状の連結部により包囲されていて少なくとも前記胴部の鈎状突起部が形成されていない側の前記スリットの部分を包囲する連結部が屈曲した形状であって弾性的に変形可能であるとともに、前記スリットの上端から下端までの高さが前記胴部における鈎状突起部の頂部から対向する辺縁までの幅よりも小さくされており、各々の前記胴部を丸めて前記頭部のスリットに挿入し各々のT字形ユニットをリング形状にする際に前記鈎状突起部が形成されていない側の胴部の辺縁部により前記スリットの下端側が押圧されこれを包囲する屈曲した連結部の形状が弾性的に変形し伸張することにより前記スリットの上端から下端までの高さが前記胴部の鈎状突起部の頂部から対向する辺までの幅より大きくなって前記胴部がスリットを通過可能であり、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットに当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から通過することにより可能であるようにしたものである。
【0029】
本発明の請求項7によるポリマーステントは、請求項6によるポリマーステントにおいて、各々の前記頭部におけるスリットは、前記胴部の長辺の方向に対して略垂直な方向に形成されたスリット主部と前記胴部の鈎状突起部が形成されていない側に前記スリット主部に折曲する形状に連接して形成された折曲部とからなるように屈曲した形状のものとしたものである。
【0030】
本発明の請求項8によるポリマーステントは、請求項6によるポリマーステントにおいて、各々の前記頭部におけるスリットは、前記胴部の長辺の方向に対して略3字形状をなし前記胴部の鈎状突起部が形成されていない側の前記スリットの大半部が細い帯状の連結部に包囲されてその周囲の切り取り部に半島状に突出するように屈曲した形状としたものである。
【0031】
本発明の請求項9によるポリマーステントは、請求項6によるポリマーステントにおいて、各々の前記頭部におけるスリットは前記胴部の長辺方向に略垂直な方向であって、前記スリットの前記胴部の鈎状突起部が形成されていない側における3方が前記スリットの縦方向の両側のジグザグ状に屈曲したばね部とその先端側を接続する連接部とからなる連結部で包囲され、該連結部の周囲の切り取り部において半島状に突出する形状としたものである。
【0032】
本発明の請求項10によるポリマーステントは、請求項4,6~9のいずれかによるポリマーステントにおいて、各々の頭部に形成された前記スリットの前記胴部の長さ方向に対し全体として交差する方向に平行にその方向の該スリットと切り取り部を合わせた部分の長さより長くかつ平行な方向の補助スリットが各々の前記頭部に形成されているものである。
【0033】
本発明の請求項11によるポリマーステントは、頭部と該頭部から延設される細長い胴部からなるT字形ユニット部を複数個並設し前記頭部において相互に連結されるように一体的に形成してなり、各々の前記胴部を丸めて前記頭部に形成されたスリットに挿入係止してリング形状にし、全体として筒状にした状態で管腔内に留置されるポリマーステントであって、各々の前記頭部において前記胴部が挿通され前記胴部の方向に略垂直な方向のスリットが形成され、各々の前記胴部の長辺の一方の側において前記頭部におけるスリットを通過する側の斜辺部分とスリットの端側に係止される直立辺部分とを有する山形形状の少なくとも1つの鈎状突起部が形成され、前記胴部の鈎状突起部が形成された側の前記スリットの端側に線状切り込み部が延設されて該切り込み部とスリットの端部とにより前記鈎状突起部の直立辺部を係止する爪部が形成され、前記スリットの長さは前記胴部の鈎状突起部のない部分が通過可能な大きさであるが胴部における鈎状突起部の頂部から対向辺縁までの幅よりは小さく、前記胴部がそのリング形状を縮径する方向への移動は前記鈎状突起部の直立辺部分がスリットの端側の爪部に当接することにより係止されるとともに前記胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は前記鈎状突起部の斜辺部分から前記線状切り込み部を通過することにより可能であり、前記頭部において前記スリットに平行に間隔をおいて前記胴部の側に前記スリット及び線状切り込み部を合わせた長さより長い補助スリットが形成されたものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明においては、頭部と細長い胴部とからなるT字形のユニット部を複数個頭部において連結し、各ユニット部の胴部を丸めて頭部のスリットに挿入し筒状の形状として管腔内に留置されるポリマーステントにおいて、胴部の鈎状突起部が設けられる部分を弾性的に変形可能にしその部分の幅を可変にする形態とし、あるいは頭部のスリットの長さ、傾斜角度、形状、スリットを取り巻く部分等を変形可能な形態とすることにより、胴部をスリットに挿入可能にし、挿入後に胴部のリングの縮径する方向にはラチェット機能が生ずるとともに、胴部のリングの拡径方向には胴部がスリット内で移動可能であるようにすることにより、胴部をスリットに挿入した状態で鈎状突起部がスリットに係止され、ステントとしての筒状形状が保持されるものであり、頭部に作用する引張り力によりスリットが幅方向に変形し鈎状突起部による係止の機能が損なわれることはなく、長期にわたってステントのラチェット機能が維持されるものである。
【0035】
また、スリットの端側に線状切り込み部を延設し爪部を形成して胴部の鈎状突起部を係止する形態のものにおいてスリットに平行な補助スリットを形成することにより、線状切り込み部が広がって鈎状突起部を係止する機能が損なわれるのを防止することができる。本発明によるポリマーステントは形状・構造が簡易なものであり、加工・製作が易であり、それにより加工・製作に要する時間、経費を節減できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態による胴部に幅可変部を設けたポリマーステントを展開図で示したものである。
【図2】(a)は図1のポリマーステントの1つのT字形ユニット部を示す図であり、(b)は胴部を丸めて頭部のスリットに挿入する状況を示す図であり、(c)は鈎状突起部がスリットの端側に係止される状況を示す図であり、(d)は幅可変部が異なる形状のユニット部を示す図であり、(e)はさらに他の形状の幅可変部を有するユニット部を示す図である。
【図3】(a)は異なる形態の幅可変部を有するユニット部を示す図であり、(b)は(a)のユニット部の幅可変部においてリンク部が起立した状態を示す図である。
【図4】図3(a)のユニット部の幅可変部の他の形態を示す図である。
【図5】図3(a)のユニット部の幅可変部のさらに他の形態を示す図である。
【図6】頭部のスリットにおいて胴部の鈎状突起部の通過、係止のための機能を与える本発明の実施形態によるポリマーステントを展開図で示すものである。
【図7】(a)は図6の展開図によるポリマーステントの1つのT字形ユニット部を示す図であり、(b)はスリットに胴部を挿入する状況を示す図であり、(c)は鈎状突起部がスリットを通過する状況を示す図である。
【図8】(a)は頭部において他の形態のスリットが形成されたT字形ユニットを示す図であり、(b)は頭部を拡大して示した図であり、(c)は鈎状突起部がスリットを通過する状況を示す図であり、(d)は復元したスリットの位置において鈎状突起部が係止される状況を示す図である。
【図9】(a)は頭部において他の形態のスリットが形成されたT字形ユニットを示す図であり、(b)は頭部を示す図であり、(c)は鈎状突起部がスリットを通過する状況を示す図であり、(d)は復元したスリットの位置において鈎状突起部が係止される状況を示す図である。
【図10】a)は頭部において他の形状のスリットが形成されたT字形ユニットを示す図であり、(b)は鈎状突起部がスリットを通過する状況を示す図であり、(c)は復元したスリットの位置において鈎状突起部が係止される状況を示す図である。
【図11】a)は頭部において他の形状のスリットが形成されたT字形ユニットを示す図であり、(b)は頭部を拡大して示す図であり、(c)は鈎状突起部がスリットを通過する状況を示す図であり、(d)は復元したスリットの位置において鈎状突起部が係止される状況を示す図である。
【図12】図6において頭部に補助スリットが形成された形態のT字形ユニットを示す図である。
【図13】図9において頭部に補助スリットが形成された形態のT字形ユニットを示す図である。
【図14】図10において頭部に補助スリットが形成された形態のT字形ユニットを示す図である。
【図15】(a)は頭部において爪部が延設されたスリットとともに補助スリットが形成された形態のT字形ユニットを示す図であり、(b)はスリットの端部と線状切り込み部とにより構成された爪部が鈎状突起部を係止した状態を示す図である。
【図16】従前の技術による爪部が延設されたスリットが頭部と胴部とで構成されるポリマーステントを展開図で示すものである。
【図17】図16の展開図に示されるポリマーステントの胴部を丸めて頭部のスリットに挿入し係止し筒状にした状態を示す図である。
【図18】(a)は図16に展開図で示されるポリマーステントの1つのT字形ユニットを示す図であり、(b)は胴部の鈎状突起部が頭部のスリットを通過する状態を示す図であり、(c)は1つのT字形ユニットの胴部を丸めてスリットに挿入しリング状にした状態を示す図である。
【図19】(a)は縮径したポリマーステントをバルーンに装着して管腔内に挿入する状態を断面で示す図であり、(b)は管腔内でバルーンを膨らませポリマーステントを拡径した状態を断面で示す図である。
【図20】管腔内に留置されたポリマーステントにおけるスリットの状況を示す図であり、(a)は線状切り込み部が変形していない状態を示し、(b)は線状切り込み部が広がるように変形した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明によるポリマーステントの実施形態を以下に説明する。本発明の一実施形態によるポリマーステントの展開図を示すと、図1のようである。この展開図では頭部と胴部とからなるT字形のユニット部を複数個連結した1枚のシート状の部材とする構成の点では図11に示されるものと共通する。図1に示されるポリマーステントの展開図において、ポリマーステント1は頭部3とこれから延設される細長い矩形状の胴部4とからなるT字形のユニット部2を複数個連結した1枚のシート状の部材として構成される。

【0038】
胴部4には斜辺部分と直立辺部分とからなる鈎状の突起部5(同図では各ユニット部あたり3個)が形成されており、頭部3にはスリット6が形成されている。スリット6は略矩形状であり、シート状のポリマーステントの各ユニット部の胴部4を丸めてその先端部をスリット6に挿入し鈎状突起部5がスリット6の端側に係止されるラチェット機能を有する。

【0039】
ポリマーステント1を形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素樹脂フィルム、生体内吸収性ポリマーのフィルム等が用いられる。いずれも、シート状のものを丸めて円筒状に変形可能であり、円筒の状態で内外の圧力に抗する剛性と弾性を有するような厚さ等の条件のものとする。

【0040】
ポリマーステントの作製方法としては、ポリマーフィルムからカッティングプロッター等を用いて切り抜くことにより展開図によるパターンのステントを形成することができる。この切り抜きによる作製の過程でバリが発生するが、このバリはエッチャントを用いたエッチングにより除去する。エッチャントとしては、例えば特許文献4に示されているものが使用される。

【0041】
T字形のユニット部の1つを示すと図2(a)のようであり、ここでは各ユニット部2において4個の鈎状突起部5が形成されており、各鈎状突起部は頭部3に向かう側の斜辺部分と直立辺部分とを有する。頭部3には胴部の長さ方向に略直交する方向に長い略矩形のスリット6が形成されており、スリット6の縦方向長さはW、横幅はDとする。

【0042】
幅可変部7は胴部4において鈎状突起部5の形成された辺に対向する辺において外形が突出する台形状に形成され、両側の斜辺は胴部の長い辺に対して緩く傾斜していてスリット6への挿入が円滑になされるようにする。幅可変部7の台形の内側部分は三角形ないし台形状に切り取られ、外辺部分7aとリンク部7bとが残る形状になっている。図示の例の場合、切り取られた部分の内側の辺7cは外辺部分7aに平行であり、両辺の間がリンク部7bで連結された形状であり、この幅可変部7の形状で横方向の力を受けた場合に、幅可変部7は胴部の幅を縮減するように変形可能であり、力を受けなくなった時に、これに対して弾性によりもとの形状に復元する。対向する側の鈎状突起部5は横方向の力を受けても基本的に変形しない。

【0043】
胴部4の鈎状突起部5、幅可変部7が形成されていない部分の基本的な幅はWであり、この幅はポリマーステントが管腔内に留置された時に管腔壁を支える強度を与えることになり、この幅Wをできるだけ大きくとるのがよい。鈎状突起部5の頂点から幅可変部7の底部までの幅をWとすると、胴部4を頭部3のスリット6に挿入した後に鈎状突起部6による係止がなされるようにするために、W<Wとする。

【0044】
鈎状突起部5がスリット6の端側に確実に係止されるようにするためには、スリット6の縦方向の長さWより鈎状突起部5の頂点から幅可変部7の辺縁部までの幅Wをある程度大きくする必要があり、一方で幅可変部7を弾性的に変形して幅を縮小した状態では胴部4の鈎状突起部5が形成された部分がスリット6を通過可能であるような幅になるものとする。

【0045】
このような幅可変部7を有する胴部2を丸めて、図2(b)に示すように先端部をスリットに挿入する際に、鈎状突起部5がスリット6を通過できるように胴部4を図で下方に押しながら挿入していく。この時幅可変部7はスリット6の下側の辺に押し当てられて内方に変形し、それによって胴部4が下方に変位し鈎状突起部5の頂部がスリット6を通過できるようになる。図2(c)に示すように、幅可変部7がばね弾性により復元した状態になると、鈎状突起部5の頂点から幅可変部7の底部までの幅をWはスリット6の縦方向長さWより大きいので、胴部4の右方への移動(胴部リングの縮径方向)は鈎状突起部5の直立辺部分とスリット6の端側との当接により係止される。胴部4の左方への移動(胴部リングの拡径方向)は鈎状突起部5の斜辺部がスリット6に係止されないので可能である。

【0046】
胴部4がスリット6を通過し易いようにするためにはスリットの横幅Dをある程度大きくとるのがよい。スリット6の横幅Dが大きくなると、矩形状スリットの対角線方向長さは縦方向長さWに比してかなり長くなる。胴部4をスリット6に通過させる際に胴部4をスリット6の対角線方向になるように傾斜させた状態で通過させるようにすれば、鈎状突起部5の部分も容易に通過させられるようになる。鈎状突起部5がスリット6を通過しスリット6の端側により係止され管腔内に留置された状態では管腔内圧により胴部4はスリット6の縦方向辺に沿った状態になり、鈎状突起部5による係止は確実になされる。

【0047】
このように、各ユニット部2の胴部4において鈎状突起部5に対向する側に弾性により復元可能な幅可変部7を形成することにより、各ユニット部の胴部4を丸めて頭部のスリット6に挿入し筒状ステントとすることが容易であるとともに、鈎状突起部をスリットから延在する線状切り込み部に挿通させる係止の形態に比して、スリット近辺での摩擦を伴う拡張時のスリットの変形が多少生じても、鈎状突起部によるラチェット機能が保たれ、ステントの機能が維持されることになる。また、10は複数のユニット部の胴部4を連結する部材としての接合部であり、この部材を装着することによって筒状のポリマーステントの形状をより一層安定させることができる。

【0048】
図2(d)は幅可変部7の形状が異なるユニット部の例を示している。図2(a)の場合、幅可変部の台形の内側部分は三角形ないし台形状に切り取られて外辺部分7aと直線状リンク部7bとが残る形状になっているが、図2(d)に示される幅可変部7ではリンク部7bが曲線状に屈曲した形状になっているものである。この場合も外辺部分7の側方から内方への押圧作用により幅可変部が幅を縮小するように弾性的に変形する。

【0049】
図2(e)は幅可変部7として他の作用形態を与える例を示すものである。この例での胴部4の幅可変部7において、7aは外辺部分であり、く字状に屈曲したリンク部7bが胴部側に連結するように多数並列的に設けられ、リンク部7bの中間部を連結する形で縦貫連結部7dが形成されている。この幅可変部7の形態は胴部4の幅方向に弾性的に伸縮変形可能であることは前出の場合と同様であるが、図2(e)の形態においては、胴部4における幅可変部7の部分がスリット6を通過する際にスリット6の側辺部や頭部3などと胴部との接触により摩擦力を受け、特に幅可変部7においては縦貫連結部7dにおいて図で右方に作用する摩擦力により幅可変部の幅が縮小する方向への弾性的な変形作用が生じる。それにより、幅可変部7での胴部の幅が縮小するように変形がなされ、鈎状突起部5の部分でのスリット6の通過がなされる。

【0050】
図3(a),(b)は幅可変部7の異なる形態の例を示すものである。図3(a)において、幅可変部7は直線状の外辺部分7aが平行な斜辺状の多数のリンク部7bにより胴部4側に連結された形状であり、外辺部分7aの外縁が胴部4の下辺とほぼ同一線上になっている。頭部のスリット6の縦方向の長さはこの状態の胴部における鈎状突起部5の頂部から外辺部分7aの下縁までの幅以上の長さになっており、この状態で胴部4がスリット6を通過可能になる。

【0051】
胴部4を丸めて先端からスリット6に挿入し、鈎状突起部5の部分がスリット6を通過してT字形ユニット部の胴部4をリング形状にしてスリットが胴部の外辺部分7a上の位置にある状態ではスリットが前後の鈎状突起部の間にあってステントが筒状体として係止された状態となっている。この状態から胴部4がリング形状を縮径する方向に移動しようとすると、胴部の外辺部分7aとスリットの下端との接触により摩擦力が生じる。この摩擦力は斜辺状のリンク部7bが起立する方向に作用するものであり、その結果幅可変部7は図3(b)のような状態になる。

【0052】
この時に、図3(a)の時よりも外辺部分が外方に広がり、鈎状突起部5の頂部から外辺部分の下縁までの幅が拡大し、その時点でこの部分の胴部の幅は図2(a)のWに相当する。スリット6の縦方向の長さはこの時の鈎状突起部5の頂部から外辺部分7aの下縁までの幅より小さくなっており、この状態では鈎状突起部5の直立辺部分がスリット6の端側に当接した時点でそれ以上の移動(胴部のリングが縮径する方向への移動)が阻止される。また、胴部のリングが拡径する方向への移動は鈎状突起部5の斜辺部分がスリット6に接することから可能である。

【0053】
このように幅可変部の外辺部分が外方に広がる動作は、外辺部分7aの下縁部とスリット6の下端部との間で摩擦力が生じることによりなされものであり、そのために外辺部分7aの下縁部はある程度粗面化されていることが必要である。図3(a),(b)に示される形態のユニット部を有するポリマーステントの場合、幅可変部7の機能は、胴部4が頭部3におけるスリット6を通過する際に摩擦作用で幅を拡大し、それにより鈎状突起部5による係止作用が生じることになるものであり、図2(a),(d)に示される形態のものとは作用的に異なる面がある。

【0054】
図4は図3(a)におけるユニット部の構成において幅可変部7の外辺部分7aの下縁部辺に鈎状突起部7dを形成したものである。これは幅可変部7の外辺部分7aの下縁部に形成された鈎状突起部7dは鈎状突起部5とともに胴部のリングが縮径する方向への移動を阻止し、リングが拡径する方向への移動は許容するように作用する。

【0055】
図5は図3(a)の場合に比し、図で幅可変部7の左端部と胴部4側とをばね状部7fで連結したものである。リンク部7bにおいても素材の性質によりある程度の弾性はあるが、ばね状部7fで連結することにより、さらに外辺部分7aを初期状態に保持して確実にスリット6の下端部との摩擦力を発生させる作用を与える。胴部4をスリット6に挿入していく際に、外辺部分7aの下縁部とスリット6の下端部との摩擦力の作用とばね状部7fの弾性の両方により斜辺状のリンク部7bが起立する状態になる。

【0056】
図6は図1~5に示されるものとは異なるラチェット機構の形態のポリマーステントの例を展図で示すものである。図1に示されるポリマーステントの場合では胴部4に幅可変部7を形成しているのに比し、図6に示されるものでは胴部4には幅可変部を備えず、頭部3に形成されたスリット6の縦方向長さが胴部4の通過時に拡大可能になり鈎状突起部5がスリット6を通過後にラチェット機構が作用するようにする。

【0057】
図7(a)はポリマーステントにおける1つのT字形のユニット部2を示しており、頭部3においてスリット6は胴部4の長さ方向に略直交する方向に形成され、胴部4において鈎状突起部5が形成されていない側辺に対応する側のスリット6の端部において横方向(胴部の長い辺に平行な方向)の細溝孔6aが両方向に延設され、さらに間隔をおいて細溝孔6aと平行で同等の長さの細溝孔6bが形成されている。

【0058】
細溝孔6aと6bとの間は細い連結部6cとなり、スリット6、細溝孔6a、6bを合わせた形状は略〒形状(図では上下逆形状)になっている。連結部6cは図で上方からの力が作用した時に、下方に弾性的に屈撓するように変形可能である。

【0059】
図7(a)の形態のユニット部を有するポリマーステントにおいて、胴部4を丸めて頭部のスリット6に挿入する際の状況を示すと図7(b),(c)のようである。図7(c)のように胴部4を先端側からスリット6に挿入していく。胴部4の鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅はスリット6の縦方向長さよりも大きく、挿入方向では鈎状突起部5の直立辺部分がスリット6の端側に係止される。この状態から胴部4を図で下方に押しながらスリット6に挿入して行くと、図7(c)のように連結部6cが下方に弾性的に屈撓し、それによりスリット6の縦方向長さが拡大して胴部4が通過可能になる。

【0060】
胴部リングが形成された後に、連結部6cが変形していない状態では胴部の鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅がスリット6の縦方向長さより大きいために胴部がリング形状を縮径する方向への移動は鈎状突起部の直立辺部分がスリット6の端側に当接することにより係止されるというようにラチェット機構が作用し、胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動は鈎状突起部の斜辺部分から通過し連結部6cを弾性的に変形させながら通過可能となる。

【0061】
図7(a)においては、T字形ユニット部の頭部3にスリット6、細溝孔6a、6bが形成され合わせて略〒形状となるものが示されている。この形態において、連結部6cを介在させるように形成される細溝孔6bは図7(a)のように細溝孔6aに平行な基本的部分に加えて、例えばその両端側で上方に屈曲し細溝孔6aの側方に回り込む部分を有するように延設してもよい。このように細溝孔6bとして屈曲した延設部を含むことで、胴部4が挿入されその下辺側で押圧された時に連結部6cが屈撓し易くなり、スリットへの胴部の挿通が容易になる。

【0062】
図8(a)は頭部のスリットについての他の形態の例を示すものであり、1つのT字形のユニット部を示している。この例では、頭部3において略C字状の切り取り部6dが設けられることにより半島状のタブ部3aが形成され、タブ部3aにスリット6が設けられている。スリット6は胴部4の長さ方向に対し垂直な方向に対して傾斜して設けられている。図8(b)に示すように胴部の鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅はスリット6の長さより小さいが、胴部の長さ方向に対し垂直な方向へのスリット6の射影成分よりは大きく設定される。半島状のタブ部3aのつけ根は図で上側(胴部4に鉤状突起部5が形成されている側)に偏倚しており、このタブ部3aを図で左方(胴部と反対の方向)に引っ張る作用によりこのつけ根の部分が弾性的に曲げ変形を生じ、スリット6が胴部の長さ方向に垂直な方向を向くように変形可能である。

【0063】
胴部4を丸めて先端側からスリット6に通す際には、傾斜した状態のスリット6に対し垂直な方向に胴部4の先端を通していくようにする。胴部のリング形状が形成された後に、胴部がそのリング形状を拡径する方向への移動に際しては、図8(c)に示すように胴部の鈎状突起部の斜辺部分がスリット6の端側に接しつつ摩擦力をタブ部3aに与えることによりスリット6が胴部の長さ方向に垂直な方向を向くように半島状のタブ部3aのつけ根部分を弾性的に変形させていく。それにより胴部はリング形状を拡径する方向にはスリット6を通過可能になる。

【0064】
図8(d)に示すようにスリット6に対して鈎状突起部5のない胴部の部分が挿入されている状態ではタブ部3aはつけ根の部分が弾性的に変形しておらず、スリット6は胴部の長さ方向に対して傾斜している。この状態から胴部がそのリング形状を縮径する方向へ移動しようとすると鈎状突起部5の直立辺部分がスリット6の端側に当接し係止される。それにより胴部のリング形状を縮径する方向への移動に対してはラチェット機構が作用する。

【0065】
図9(a)は頭部のスリットについてのさらに他の形態の例を示すものであり、1つのT字形のユニット部を示している。この例では、図9(b)に示すように、頭部3におけるスリット6はその下側(胴部において鈎状突起部5が設けられていない側)の部分が屈曲した部分6eとして連接された形状になるように形成され、この屈曲した部分6eの周辺を囲むように切り取り部6fとして切除されており、その間の部分が細い連結部6gとしてスリット6の下側の屈曲した部分6eを取り囲み切り取り部6fの側に半島状に張り出す部分となっている。

【0066】
下側の屈曲した部分6eを合わせたスリット6の長さは胴部4における鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅より大きくされ、また、図9(b)における屈曲した部分がスリット6の方向に対して傾斜した状態での胴部4の長さ方向に対し垂直な方向に射影された長さとしては、鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅より小さくなるようにしてある。

【0067】
胴部4を丸めてスリット6に挿通させる際に、鈎状突起部5がスリット6を通過できるように胴部4を図で下方に押しながら挿入していく。この時に胴部4の鈎状突起部5のない側がスリットの屈曲した部分6eの端側を下方に押下することにより、図9(c)のように半島状の連結部6gが傾斜した状態から直立状態に弾性的に変形し、スリット6の下側の屈曲した部分6eもこれに合わせて直立した方向となり、屈曲した部分6eと合わせたスリット6は直線状になる。この時の胴部の長さ方向に垂直な方向への射影成分としてもスリット6の全体の長さは鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅より大きく、胴部4がスリット6を通過することができる。

【0068】
胴部4の鈎状突起部5のある部分がスリット6を通過後に鈎状突起部5がない部分においては図9(d)のようにスリット6の下側の屈曲した部分6eが傾斜した状態に復元する。それにより胴部の長さ方向に垂直な方向への射影成分としてのスリット6の長さは鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅より小さくなり、胴部4が図で右方に移動しようとすると鈎状突起部5の直立辺部分はスリット6の上端側に係止されることになる。胴部4が図で左方に移動する際には鈎状突起部5の斜辺部分がスリット6に当接しながら進み胴部の下側(鈎状突起部がない側)が屈曲した部分6eを下方に押下しつつ進むことによって連結部6gが直立する変形作用が与えられる。それにより胴部4が図で左方に移動することができる。このようにして、胴部のリングが拡径する方向の移動は可能であるが縮径する方向への移動に対してラチェット機能が生じる。

【0069】
図10(a)は頭部のスリットを他の形状とした例を示すものであり、1つのT字形のユニット部を示している。頭部2におけるスリット6は略3字形状をなしており、このスリット6の下側(胴部において鈎状突起部5が設けられていない側)の半分程度ないしそれ以上の部分は連結部6hにより囲まれている。連結部6hは細い帯状にスリット6を周回する形状であり、その周囲は頭部3における切り取り部6iが形成されている。このようにスリット6の下側部分を周回する連結部6hは切り取り部6iにおいて下側に半島状に張り出した形状になっており、この半島状形状部分は弾性的に変形し得るようになっている。連結部6hが弾性的に変形していない状態におけるスリット6の上端と下端との垂直方向(胴部の幅方向)の高さは胴部4における鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅より小さくなるようにしてある。

【0070】
図10(b)は胴部4を丸めて先端側から頭部3のスリット6に挿通させていく状態を示しており、胴部4を図で下方に押しながらスリット6に挿入していく。胴部4の下辺(鈎状突起部と対向する辺)でスリット6の下端を下方に押しつけてスリットを周回する連結部6hが変形してスリットの下端がさらに下方向に下がり、スリット6の上端から下端までの高さが拡大するように変形することにより、胴部の鈎状突起部5の部分がスリット6を通過することができる。

【0071】
胴部4の鈎状突起部5のある部分がスリット6を通過後には、図10(c)のようにスリットを周回する連結部6hの下側部分が復元してスリット6の上端から下端までの高さが鈎状突起部5の頂点から対向する辺縁までの幅より小さくなるため、図で鈎状突起部5の直立辺部分がスリット6の上端に係止される位置から胴部4が右方に移動できなくなる一方、図で胴部4の左方への移動は可能である。このようにして、胴部のリングが拡径する方向の移動は可能であるが縮径する方向に対してラチェット機能が生じる。スリットの形状としては、図9(a)~(d)のように折曲した形状や、図10(a)~(c)のように略3字形状のものについて説明したが、略C字形状等他の屈曲したスリットの形状であってもよい。

【0072】
図11(a)は頭部のスリットについてのさらに他の形態の例を示すものであり、1つのT字形のユニット部を示している。図10(b)は頭部3を拡大して示しており、スリット6を周回する連結部は図で左右の波状ないしジグザグ状に屈曲した細い帯状のばね部6jとその先端側の細い帯状の連接部6kとからなり、連続するこのばね部6j及び連接部6kの周囲は切り取り部6lとなっており、ばね部6jは弾性変形により図で縦方向に伸縮し得る。ばね部6j及び連接部6kからなる連結部の内側はスリット6として胴部4が通過可能な幅を有している。

【0073】
胴部4の通過の際に連接部6kが内側から下方に押圧されると屈曲したばね部6jが伸びて連接部6kが下方に下がり、スリット6の長さが拡大する。スリット6はばね部6jと連接部6kで囲まれる部分だけとしてもよいが、図のように上側の直線部分に連なるようにしてもよい。ばね部6jが弾性変形していない状態で、ばね部スリット6の上端から下端までの高さは胴部4における鈎状突起部5の頂部から対向する側の辺縁までの幅より小さくなるようにしてある。

【0074】
図11(c)は胴部4を丸めて先端側から頭部3のスリット6に挿通させていく状態を示しており、胴部4を図で下方に押しながらスリット6に挿入していく。胴部4の下辺(鈎状突起部と対向する辺)でスリット6の下端である連接部6kを下方に押しつけてスリットを周回する連結部のばね部6jが伸張するように変形させると連接部6kがさらに下方向に下がり、スリット6の上端から下端までの高さが拡大することにより、胴部の鈎状突起部5の部分がスリット6を通過することができる。

【0075】
胴部4の鈎状突起部5のある部分がスリット6を通過後には、図11(d)のようにスリットを周回する連結部のばね部6jが復元してスリット6の上端から下端までの高さが鈎状突起部5の頂点から対向する辺縁までの幅より小さくなるため、図で鈎状突起部5の直立辺部分がスリット6の上端に係止される位置から胴部4が右方に移動できなくなる一方、図で胴部4の左方への移動は可能である。このようにして、胴部のリングが拡径する方向の移動は可能であるが縮径する方向に対してラチェット機能が生じる。

【0076】
図9~11の例ではT字形ユニットの各々の頭部において全体として胴部の長さ方向に交差する方向に屈曲した形状のスリットが周囲を取り囲む弾性的に変形可能な細い帯状の連結部により形成されているものであるが、この各々の頭部に形成された屈曲した形状のスリットの側方でこれに平行に補助スリットを形成するようにしてもよい。この補助スリットの長さはスリットの上端から切り取り部の下、あるいは切り取り部の上端から下端までの高さのどちらか長い方の寸法より長くするのがよい。このように補助スリットを形成することにより、バルーンより拡径しようとする方向への移動の際に、胴部からの応力は補助スリット部に加わるようになり、スリット部などへは作用しなくなる。このためラチェット機能を果たすスリット部などの不整合な変形、あるいは必要な変形に対する妨害が抑制されるため、設計通りのラチェット機能が維持されるので好ましい。このような補助スリットは図6に示されるスリット、細溝孔が略〒字形をなすように形成されている場合において形成してもよい。これら補助スリットを頭部に形成したT字形ユニットの形態を図12~14に示す。

【0077】
また、図9~11の例では屈曲する形状のスリット6の下側部分を細い帯状の連結部が周回し連結部が弾性変形してスリットの屈曲形状が変化しスリットの上端から下端までの高さを変化させて胴部の鈎状突起部を通過させたり、係止したりするようにしてある。このような形態の場合の寸法例について示すと、スリットの上端から下端までの高さが2.25mm、幅が0.25mm、連結部(ばね部)が0.15mm等であるが、これらは材質等の条件によりある程度異なり得る。

【0078】
以上説明した本発明のポリマーステントにおいては、頭部と細長い胴部とからなるT字形のユニット部を複数個頭部において連結し、各ユニット部の胴部を丸めて頭部のスリットに挿入し筒状の形状として管腔内に留置されるポリマーステントにおいて、胴部の鈎状突起部が設けられる側と対向する側を弾性的に変形可能にしその部分の幅を可変にする形態とし、あるいは頭部のスリットの長さ、傾斜角度、形状、スリットを取り巻く部分等を変形可能な形態とすることにより、胴部をスリットに挿入可能にし、挿入後に胴部のリングの縮径する方向にはラチェット機能が生ずるとともに、胴部のリングの拡径方向には胴部がスリット内で移動可能であるようにするものである。

【0079】
これらのポリマーステントの形態において胴部において鈎状突起部が形成されている側のスリットの端部において鈎状突起部を係止するための線状切り込み部が延設されて係止用の爪部を形成する形態ではなく、線状切り込みによる爪部でラチェット機能を与える形態の場合に爪部が拡張変形してラチェット機能が損なわれるというようなことはない。

【0080】
図15(a),(b)は、スリットの端部において線状切り込み部が延設して係止用の爪部を形成する形態のポリマーステントにおいて、爪部が変形しないようにするものであり、(a)は頭部において爪部が延設されたスリットとともに補助スリットが形成された形態のT字形ユニットを示し、(b)はスリットの端部と線状切り込み部とにより構成された爪部が鈎状突起部を係止した状態を示すものである。

【0081】
頭部3には胴部4の長さ方向に略垂直な方向にスリット6が形成され、胴部に鈎状突起部5が形成されている側のスリット6の端部において線状切り込み部6mが延設されており、スリット6の端部と線状切り込み部6mとにより鈎状突起部を係止する爪部が構成されている。頭部3においてスリット6の右側(胴部4の側)でスリットと平行に、スリット6と線状切り込み部6mを合わせた長さよりも長い補助スリット6nが形成されている。この補助スリット6nが形成されていることにより、頭部3に対して矢印の方向の拡張方向の力が作用しても、補助スリット6が幅を拡大することを分担し、爪部が広がる作用は押さえられる。それによりスリットの端部に線状切り込み部を延設した爪部を形成した形態のポリマーステントにおいてもラチェット機能を確実に保持することができるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 ポリマーステント
2 T字形ユニット
3 頭部
3a タブ部
4 胴部
5 鈎状突起部
6 スリット
6a 細溝孔
6b 細溝孔
6c 連結部
6d 切り取り部
6e 屈曲した部分
6f 切り取り部
6g 連結部
6h 連結部
6i 切り取り部
6j ばね部
6k 連接部
6l 切り取り部
6m 線状切り込み部
6n 補助スリット
7 幅可変部
7a 外辺部分
7b リンク部
7c 内側の辺
7d 縦貫連結部
7e 鈎状突起部
7f ばね状部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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