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明細書 :電気粘着素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6006984号 (P6006984)
公開番号 特開2013-249348 (P2013-249348A)
登録日 平成28年9月16日(2016.9.16)
発行日 平成28年10月12日(2016.10.12)
公開日 平成25年12月12日(2013.12.12)
発明の名称または考案の名称 電気粘着素子及びその製造方法
国際特許分類 C10M 107/44        (2006.01)
C10M 107/50        (2006.01)
C10M 107/14        (2006.01)
F16F   9/53        (2006.01)
F16D  35/00        (2006.01)
C10N  40/14        (2006.01)
C10N  70/00        (2006.01)
FI C10M 107/44
C10M 107/50
C10M 107/14
F16F 9/53
F16D 35/00 631D
C10N 40:14
C10N 70:00
請求項の数または発明の数 12
全頁数 13
出願番号 特願2012-123607 (P2012-123607)
出願日 平成24年5月30日(2012.5.30)
審査請求日 平成27年5月15日(2015.5.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】柿沼 康弘
【氏名】久保 貴生
個別代理人の代理人 【識別番号】100080458、【弁理士】、【氏名又は名称】高矢 諭
【識別番号】100076129、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 圭佑
【識別番号】100089015、【弁理士】、【氏名又は名称】牧野 剛博
審査官 【審査官】菅野 芳男
参考文献・文献 特開2006-328281(JP,A)
特開2000-144165(JP,A)
特開平11-090215(JP,A)
微細網目構造を用いた電気粘着性表面の開発,2011年度精密工学会大会学術講演会講演論文集,2011年,N31, 1003-1004頁
調査した分野 C10M 107/44
C10M 107/00
C10M 107/50
C10M 155/02
F16F 9/53
C10N 40/14
C10N 70/00
F16D 35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
電極を有する基板と、基板上に規則的に密に配列・固定された、複数の棒状の微細な支柱と、基板上に支柱を埋め込むように充填された、粘弾性を有する高分子物質と、からなり、
前記支柱の基板とは反対側の、無数の突起を有する断面が前記高分子物質の表面に配列され
前記支柱の基板とは反対側の表面が電気粘着力を持つことを特徴とする電気粘着素子。
【請求項2】
前記支柱が、前記基板の表面に対して斜めに形成された互いに交わる傾斜した支柱であることを特徴とする請求項1に記載の電気粘着素子。
【請求項3】
前記傾斜した支柱の前記基板から最も遠い交点が、前記高分子物質の表面に一致して配列するようになされた三次元微細網目構造体であることを特徴とする請求項2に記載の電気粘着素子。
【請求項4】
前記支柱が前記基板の表面に対してなす構造角が30度以上90度未満とされていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気粘着素子。
【請求項5】
前記高分子物質が、シリコーンゲル、ウレタンゴム又はブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気粘着素子。
【請求項6】
前記基板が透明基板であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気粘着素子。
【請求項7】
前記基板が、一方の電極を兼ねる基板であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気粘着素子。
【請求項8】
基板上に規則的に密に配列・固定された、複数の棒状の微細な支柱を、裏面露光法により製造する工程と、
前記基板上に、粘弾性を有する高分子物質を前記支柱を埋め込むように充填する工程と、
を含むことを特徴とする、前記支柱の基板とは反対側の表面が電気粘着力を持つようにされた電気粘着素子の製造方法。
【請求項9】
前記基板の表面に対して斜めに形成された互いに交わる傾斜した支柱を有する単位ユニットが、基板の表面に沿って繰り返されてなる三次元微細網目構造体を、多重傾斜裏面露光法により製造することにより、前記支柱が形成されることを特徴とする請求項8に記載の電気粘着素子の製造方法。
【請求項10】
前記高分子物質が、シリコーンゲル、ウレタンゴム又はブタジエンゴムであることを特徴とする請求項8又は9に記載の電気粘着素子の製造方法。
【請求項11】
前記基板が、透明基板であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の電気粘着素子の製造方法。
【請求項12】
前記基板が、一方の電極を兼ねる基板であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の電気粘着素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気粘着素子及びその製造方法に係り、特にクラッチ、ダンパ、アクチュエータ等の動力伝達装置や制動装置等に適用して好適な電気粘着素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧を印加することにより見かけの粘度が上昇する、いわゆる電気レオロジー(以下、ERという)効果を発現するER流体が知られている。ER流体は、印加する電圧を変化させることによってその粘度を可逆的に変えることができ、しかも電圧の変化に対する応答性に優れていることから、このER流体を一対の電極間に配したER素子の形態で、クラッチ、ダンパ、アクチュエータ等の動力伝達装置や制動装置等に適用可能な電子部品として使用することが期待されている。
【0003】
ところが、ER流体は、通常、シリコーンオイル等の電気絶縁性分散媒中に分散相粒子(ER粒子)が分散した形態であるため、長期間静置しておくとER粒子が沈降・凝集してしまうことから、剪断応力にばらつきが生じ、安定したER効果が得られにくかった。
【0004】
そこで、より安定した性能が得られるように、ERゲルを用いて電気粘着効果(EA効果)が得られるようにした電気粘着素子が提案されている(例えば、特許文献1、2、非特許文献1参照)。
【0005】
このようなERゲルは、例えばシリコーンオイル等の電気粘性流体、即ち前記ER流体をゲル化することにより形成したシリコーンゲルに、有機無機複合ER粒子(例えば、アクリル樹脂の微粒子をコアとして半導体酸化スズをコーテンィングした粒子)を分散させた構造をとる(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
又、発明者等は、ポリマーメッシュシートを積層し、その間にシリコン樹脂等を充填した素子に、高電圧をかけると最表層のメッシュシートの間の樹脂が電気粘着力を持つことを見出している(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2005-255701号公報
【特許文献2】特開2008-266407号公報
【特許文献3】特開2001-26793号公報
【0008】

【非特許文献1】日本機械学会2009年度年次大会論文集(2)(2009年9月)109~110頁
【非特許文献2】精密工学会2011年度春季大会 学術講演会 講演論文集(2011年3月1日発行)1003~1004頁
【非特許文献3】H.Sato,T.Kakinuma,J.S.Go,S.Shoji,“In-channel 3-D micromesh structures using masklcss multi-angle exposure and their microfilter application”,Sensors&Actuators A,Voll.111(2004)pp87-92
【非特許文献4】H.Sato,T.Kakinuma,J.S.Go,S.Shoji,“A novel fabrication of in-channel 3-D micromesh structure using maskless multi-angle exposure and its microfilter application”,16th Int.Conf.On Micro Electro Mechanical
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前者の特許文献1~3や非特許文献1で用いられたERゲルは、シリコーンゲルに微粒子であるER粒子を分散させた構造をとるために、その分散の状態により性能にばらつきが生じやすく、しかもER粒子は前記のように特殊であるため、粒子そのもののコストが高いという問題があった。
【0010】
一方、後者の非特許文献2で提案したメッシュシートを用いた電気粘着シートは、安定した電気粘着効果を発現でき、しかも低コスト化を実現することが可能であるが、メッシュシートを用いて電気粘着シートの表面を数μm以内の凹凸で作り込むことは容易でなく、また熱処理によるメッシュシート自体の撓みもあって平坦度が高い表面が得られず、広い粘着面積が得られていなかった。
【0011】
又、非特許文献3や4には、フォトリソグラフィ技術を用いて、マイクロ・ナノ精度の三次元微細網目構造体を作成する多重傾斜裏面露光法が提案されているが、これらの文献では三次元微細網目構造体を、そのままマイクロフィルタやマイクロリアクタ等のマイクロ流体制御素子として用いることしか考えられていなかった。
【0012】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、表面精度が高い安定した機械的な構造を実現して、安定した電気粘着効果を発現することができる電気粘着素子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電極を有する基板と、基板上に規則的に密に配列・固定された、複数の棒状の微細な支柱と、基板上に支柱を埋め込むように充填された、粘弾性を有する高分子物質と、からなり、前記支柱の基板とは反対側の、無数の突起を有する断面が前記高分子物質の表面に配列され、前記支柱の基板とは反対側の表面が電気粘着力を持つことを特徴とする電気粘着素子により、前記課題を解決したものである。
【0014】
ここで、前記支柱を、前記基板の表面に対して斜めに形成された互いに交わる傾斜した支柱とすることができる。
【0015】
又、前記傾斜した支柱の前記基板から最も遠い交点が、前記高分子物質の表面に一致して配列するようになされた三次元微細網目構造体とすることができる。
【0016】
又、前記支柱が前記基板の表面に対してなす構造角を30度以上90度未満とすることができる。
【0017】
本発明は又、基板上に規則的に密に配列・固定された、複数の棒状の微細な支柱を、裏面露光法により製造する工程と、前記基板上に、粘弾性を有する高分子物質を前記支柱を埋め込むように充填する工程と、を含むことを特徴とする、前記支柱の基板とは反対側の表面が電気粘着力を持つようにされた電気粘着素子の製造方法を提供するものである。
【0018】
ここで、前記基板の表面に対して斜めに形成された互いに交わる傾斜した支柱を有する単位ユニットが、基板の表面に沿って繰り返されてなる三次元微細網目構造体を、多重傾斜裏面露光法により製造することにより、前記支柱を形成することができる。
【0019】
又、前記高分子物質を、シリコーンゲル、ウレタンゴム又はブタジエンゴムとすることができる。
【0020】
又、前記基板を透明基板とすることができる。
【0021】
又、前記基板を、一方の電極を兼ねる基板とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、例えば多重傾斜裏面露光法により製造された三次元微細網目構造体を用いて、安定した表面形状を実現したことにより、ERゲルに比べて広範囲の粘着面積が得られるだけなく、三次元微細網目構造体が骨組の役割を担うため、機械的な強度も向上する。従って、表面精度が高い安定した機械的な構造を実現して、安定した電気粘着効果を簡便な製造方法で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る電気粘着素子の第1の製造方法の実施形態の手順を示す流れ図
【図2】同じく第1の製造工程を示す断面図
【図3】製造された三次元微細網目構造体の一例を示す写真
【図4】本発明に係る電気粘着素子の実施形態の作用を示す図
【図5】同じく粘着現象を確認した例を示す平面図
【図6】同じく粘着力の測定結果を示す図
【図7】同じく三次元微細網目構造体表面の位置と傾斜支柱の交点との関係の例を示す図
【図8】構造角に関する解析モデルを示す図
【図9】構造角と電場強度の変化を比較して示す図
【図10】交点間距離に関する解析モデルを示す図
【図11】交点間距離と電場強度の変化を比較して示す図
【図12】本発明に係る電気粘着素子の第2の製造方法の実施形態の手順を示す流れ図
【図13】同じく第2の製造工程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。

【0025】
図1(フローチャート)および図2(製造工程を示す断面図)は、本発明に係る電気粘着素子25の第1の製造方法を示したものである。

【0026】
まず図1のステップ100で、図2(a)に示す如く、透明基板(例えばガラス基板)10上に金属を蒸着し、パターニングしてフォトマスク12を形成する。このフォトマスク12が、三次元微細網目構造体(立体メッシュ構造体とも称する)20を構成する支柱21の形状を決定する。このフォトマスク12は、後でEA効果を発揮させる時の、一方の電極を兼ねる。

【0027】
蒸着する金属は、たとえばクロムが上げられるが、それ以外のアルミニウムや銅などの金属でもよい。また、フォトマスク12は、後述するレジスト塗布時の厚さの均一性なども考慮して、透明基板10よりも小さいことが望ましい。なお、本実施形態では、支柱21の断面形状は特に限定されず、円形でも角形でもよい。

【0028】
次いで図1のステップ110に進み、図2(b)に示す如く、フォトレジスト(例えばMEMS分野で一般的に用いられている高アスペクト比構成体形成用厚膜レジストであるSU-8)14を、例えばスピンコートにより塗布して、ベーク処理を行なう。フォトレジスト14は、透明基板10のフォトマスク12側に塗布する。またフォトレジスト14の厚さは、支柱21の高さおよび構造角θを考慮して決められる。

【0029】
次いでステップ120に進み、透明基板10に、支柱21が基板表面に対してなす角度である構造角θに対応する傾斜(図ではθ)を持たせ、フォトレジスト14が載った透明基板10の裏面側(フォトマスク12が存在しない側)から電磁波を照射する。ここで電磁波はフォトレジスト14を硬化させることができる波長であればよく、その種類にはよらない。例えば、可視光線や紫外線をあげることが出来る。本実施例のSU-8であれば、波長350~400nm程度の紫外線が適している。

【0030】
次いでさらに電磁波を照射する場合にはステップ130に進み、傾斜角度を例えばθに変更して、ステップ120に戻り、必要な角度・回数で電磁波の照射を繰り返す(図2では(c)(d)の2回)。図2では、1次元方向にのみ支柱21を形成しているが、電磁波の照射を3回以上繰り返して、2次元方向に支柱21を形成してもよいことは言うまでもない。

【0031】
傾斜角度(θ、θ等)の大きさは、構造角θ、支柱21の長さ、塗布されたフォトレジスト14の材質、透明基板10の材質等によって適宜選択される。構造角θは、EA特性を得るために、30°以上必要である。より望ましくは60°以上である。また構造角θが90°のときは、支柱21は傾斜しないが、支柱の強度に問題がなければ、構造角θが90°であってもよい。

【0032】
ステップ140で電磁波の照射が終了したと判定されたときは、ステップ150に進み、フォトレジスト14を現像することで、図2(e)に示す如く、傾斜した支柱21で構成された立体メッシュ構造体20が得られる。この図では、1本の傾斜した支柱21が複数の他の傾斜した支柱21と交わり、結果として交点22は複数あるが、傾斜した支柱21が他の1本の傾斜した支柱21と交わっても、すなわち交点は1個であってもよい。

【0033】
ここで用いた多重傾斜裏面露光法により、複数回露光を行なうことによって、微細な傾斜した支柱21が交差した立体メッシュ構造体20が作製できる。製造された立体メッシュ構造体20の一例を図3に示す。

【0034】
この立体メッシュ構造体20は、フォトレジスト14の厚さやフォトマスク12のパターン(支柱21の径や間隔、支柱21の配置パターン等)、露光角度及び露光回数を変えることによって、様々な形状に作製することが可能である。又、非常に単純な手法であるにも拘らず、透明基板10とフォトレジスト14との隙間が無いので、密着露光と同等のパターン精度が得られる。なお、立体メッシュ構造体20を製造する方法は、これに限定されない。

【0035】
次いでステップ160に進み、図2(f)に示す如く、立体メッシュ構造体20の隙間に、例えばシリコーンゲル23を充填することによって、電気粘着素子25が得られる。また、シリコーンゲル23の充填にあたっては、必要に応じて立体メッシュ構造体20の外側に、枠等を設けてもよい。シリコーンゲル23は、傾斜した支柱21の交点22がシリコーンゲル23の表面からやや上になるように適量充填される。交点22がシリコーンゲル23の表面からやや上にないと、EA効果が十分に発揮できない。

【0036】
前記シリコーンゲル23は、シリコーンオイルを架橋剤により架橋し、ゲル化することにより形成することができる。

【0037】
シリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。フッ素変性シリコーンオイルとしては、例えば、トリフルオロプロピル基(CF324-)を有するポリシロキサン、ノナフルオロヘキシル基(C4924-)を有するポリシロキサン、環状型ポリシロキサン化合物などがある。

【0038】
架橋剤としては、例えば不飽和結合をもつアセチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソシアネートなどが用いられる。

【0039】
なお、シリコーンゲル以外に、粘弾性を有するウレタンゴムやブタジエンゴムなどを用いることも考えられる。

【0040】
前記立体メッシュ構造体20は、傾斜した支柱21の高分子物質(ここではシリコーンゲル23)表面の交点(θ=90°の場合は頂点)が、ER粒子の代替であると仮定できる。又、フォトリソグラフィ技術を用いた立体構造であるため、非特許文献2で提案したメッシュシートを用いた電気粘着(EA)素子の問題点であった、熱処理によるメッシュシートの撓みも存在しない。立体メッシュ構造体20の高さの精度は塗布されるレジスト膜厚の精度に依存するが、スピンコートを用いればレジスト膜厚の精度は格段に向上するため、結果として電気粘着素子25の表面は、EA素子に比べて格段に精度の高い表面を得ることができる。

【0041】
このようにして作製した電気粘着素子25に対して上下電極間に電圧を印加すると、図4に示す如くシリコーンゲル23が交点22の表面を覆うように隆起して粘着力が発生し、電気粘着性が得られる。

【0042】
作製した電気粘着素子25の上に図示しないガラス電極(上部電極とも称する)を載せ、フォトマスク12を兼ねた透明基板(電極)10と前記ガラス電極との間に電圧を印加し、光学顕微鏡(450倍)を用いて表面の状態を観察したところ、図5に示す如く、瞬間的且つ可逆的な電気粘着現象が確認できた。レジスト膜厚を変えることにより、粘着現象が確認できる印加電圧を調整することができる。

【0043】
粘着力の測定結果を図6に示す。印加電場に比例して粘着力が増加することが確認できた。ここで、粘着力は、電気粘着素子25を固定し、上部電極(ガラス電極)を一定速度でスライドさせた時の単位面積当たりの剪断力の値である。

【0044】
更に、立体メッシュ構造体20の表面と傾斜した支柱21の透明基板10から最も遠い(図の最上部の)交点22との関係を調べたところ、図7(a)に示す如く、表面と交点22が一致している場合に良好な粘着性が得られた。これに対して、図7(b)に示す如く、交点22よりも表面が上にある場合や、図7(c)に示す如く、表面が交点22よりも下にある場合には、粘着性能が劣っていた。

【0045】
又、構造角θの影響を調べるため、図8(a)に示すθ=60°の場合と図8(b)に示すθ=80°の場合について電場分布の解析を行った。解析の条件は、以下の表のとおりである。

【0046】
【表1】
JP0006006984B2_000002t.gif

【0047】
構造角θ=60°と80°の場合について、電場強度とシリコーンゲル表面からの距離の関係を測定したところ、図9に示すような関係が得られた。

【0048】
非特許文献1にあるように、誘電体表面に電界が作用するとき、誘電体表面に発生する力の大きさは基本的に電界強度に依存する。本発明によるレジスト支柱の表面に作用する力も同様である。シリコーンゲル表面と垂直なy方向の成分を示す図9を見ると、どちらの形状でも上部電極に近づくにつれて電場強度が強くなっているが、構造角θが60°の形状の方が頂点付近の電界強度が強くなっている。これは構造角θの大きさによって得られるEA効果が異なることを示すが、いずれの角度であってもEA効果が発生する。構造角θが30°以上あれば、EA効果を発揮する。

【0049】
なお、単位ユニット当たりの支柱21の本数は、機械的な強度を確保するために3本以上が望ましいが、3本には限定されず、4本以上、あるいはシリコーンゲルなどの高分子物質が充填されるので、2本以下でも良い。構造角θが90°のときは、支柱21は傾斜せずに、透明基板10に直立することになるが、この場合でもシリコーンゲル23の表面ではEA効果が発揮される。よって支柱21は直立する限り、1本でもよい。

【0050】
更に、傾斜した支柱21の交点22(図では頂点)間の間隔aの影響を考慮するため、交点同士の間隔aを変え、図10(a)に示すデルタ型と、図10(b)に示すクロス型の2つのモデルを使って、電場分布の解析を行なった。図11(a)(デルタ型)及び図11(b)(クロス型)は、縦軸に電場強度をとり、横軸にシリコーンゲル表面からの距離をとったものである。どちらの図においても、多少の誤差はあるものの、ほぼ同様の値であることがわかる。このことから、交点間隔を変えても電場強度への影響はほとんど無いと考えられる。

【0051】
図12(フローチャート)および図13(製造工程を示す断面図)は、本発明に係る電気粘着素子25の第2の製造方法を表わしたものである。第1の製造方法との違いは、透明基板10とは異なる基板50上に電気粘着素子25を作製するようにしたものである。基板50は、一方の電極を兼ねるものである。

【0052】
具体的には、まず図12のステップ200で、図13(a)に示す如く、下部電極となる基板50の上に、フォトレジスト14を、例えばスピンコートにより塗布して、ベーク処理を行なう。

【0053】
次いでステップ220に進み、図13(b)に示す如く、フォトマスク12形成済みの透明基板(例えばガラス基板)10上に、上下反転させた基板50のフォトレジスト14を密着させる。

【0054】
次いでステップ230に進み、図13(c)に示す如く、透明基板10に、支柱21が基板表面に対してなす角度である構造角θに対応する傾斜(図ではθ1)を持たせ、フォトレジスト14が載った透明基板10の裏側(図の下側)から電磁波、例えば紫外線を照射する。

【0055】
次いでステップ240に進み、図13(d)に示す如く、傾斜角度を例えばθ2に変更して、ステップ230に戻り、必要な角度・回数で紫外線の照射を繰り返す(図13では(c)(d)の2回)。

【0056】
ステップ250で必要回数の紫外線の照射が終了したと判定されたときは、ステップ260に進み、フォトレジスト14を現像することで、支柱21で構成された立体メッシュ構造体20が得られる。

【0057】
次いでステップ270に進み、不要となる透明基板10及びフォトマスク12を取り外して、図13(e)に示すような立体メッシュ構造体20を完成させる。

【0058】
次いでステップ280に進み、図13(f)に示す如く、立体メッシュ構造体20の隙間に、例えばシリコーンゲル23などの高分子物質を充填することによって、電気粘着素子25が得られる。

【0059】
この方法によれば、フォトマスク12を複数回使用することが可能になり、第1の製造方法では電気粘着素子製造のたびに必要になるフォトマスク作製の工程を不要とし、製造工程の簡略化およびコスト削減の効果が得られる。
【符号の説明】
【0060】
10…透明基板
12…フォトマスク
14…フォトレジスト
20…三次元微細網目(立体メッシュ)構造体
21…支柱
22…交点
23…シリコーンゲル
25…電気粘着素子
50…基板
θ…構造角
a…交点間隔
図面
【図1】
0
【図6】
1
【図7】
2
【図12】
3
【図2】
4
【図3】
5
【図4】
6
【図5】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図13】
12