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明細書 :磁気特性評価装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-219371 (P2014-219371A)
公開日 平成26年11月20日(2014.11.20)
発明の名称または考案の名称 磁気特性評価装置
国際特許分類 G01N  27/72        (2006.01)
G01R  33/035       (2006.01)
FI G01N 27/72
G01R 33/035
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2013-100798 (P2013-100798)
出願日 平成25年5月11日(2013.5.11)
発明者または考案者 【氏名】塚田 啓二
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
審査請求 未請求
テーマコード 2G017
2G053
Fターム 2G017AC01
2G017AC09
2G017AD02
2G017AD32
2G017BA05
2G053AA01
2G053AB01
2G053BB19
2G053BC02
2G053BC03
2G053BC14
2G053BC20
2G053CA03
2G053CA10
2G053CB13
要約 【課題】
異なる磁性特性を有する物質が混合された混合物中の任意の物質の濃度を計測可能とした磁気特性評価装置を提供する。
【解決手段】
対向させて配置して直流磁場及び交流磁場を印加する一対の磁石と、一対の磁石の間に配置して直流磁場及び交流磁場により当該測定試料が磁化することにより発生する磁場を検出する検出用コイルと、直流磁場及び交流磁場をそれぞれ制御する磁場制御手段と、検出コイルの出力信号を解析する解析手段とを備えた磁気特性評価装置であって、測定試料を一対の磁石間の任意の位置に止めた状態で所定の直流磁場を印加するとともに交流磁場を重畳させて印加して測定試料の直流バイアス交流磁化測定を行うモードを有し、前記解析手段は、検出用コイルの出力信号から、印加する交流磁場と同じ周波数を基本周波数としてその高調波成分を検知する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
対向させて配置して直流磁場及び交流磁場を印加する一対の磁石と、
当該一対の磁石の間で測定試料を振動させる振動手段と、
前記一対の磁石の間に配置して前記直流磁場及び前記交流磁場により当該測定試料が磁化することにより発生する磁場を検出する検出用コイルと、
前記直流磁場及び前記交流磁場をそれぞれ制御する磁場制御手段と、
前記検出コイルの出力信号を解析する解析手段と
を備えた磁気特性評価装置であって、
前記振動手段で当該測定試料を振動させながら、当該測定試料に印加する直流磁場を可変させて直流印加磁場に対する当該測定試料の直流磁化測定を行う第1のモードと、
当該測定試料を前記一対の磁石間の任意の位置に止めた状態で所定の直流磁場を印加するとともに交流磁場を重畳させて印加して当該測定試料の直流バイアス交流磁化測定を行う第2のモードと
を有し、
前記解析手段は、前記第2のモードにおいて、前記検出用コイルの出力信号から、印加する交流磁場と同じ周波数を基本周波数としてその高調波成分を検知することを特徴とする磁気特性評価装置。
【請求項2】
前記検出用コイルとして、巻方向が逆になっている一対のコイルを直列に接続した一次微分コイルを用いるとともに、当該一次微分コイルの検出面を、対向させている前記一対の磁石の対向方向に向けていることを特徴とする請求項1に記載の磁気特性評価装置。
【請求項3】
前記検出用コイルとして、巻方向が逆になっている一対のコイルを直列に接続した一次微分コイルであって、前記直流磁化検出用の第1の一次微分コイルと、前記直流バイアス交流磁化検出用の第2の一次微分コイルを設け、
前記第1の一次微分コイルの検出面を、対向させている前記一対の磁石の対向方向に向けるとともに、前記第2の一次微分コイルの検出面を、前記一対の磁石の対向方向に対して直交する方向に向けたことを特徴とする請求項1に記載の磁気特性評価装置。
【請求項4】
前記検出コイルは、超伝導量子干渉素子(SQUID)の入力コイル、若しくは低雑音アンプに接続して、電圧出力させたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気特性評価装置。
【請求項5】
前記振動手段は、前記一対の磁石の間だけで前記測定試料を往復振動させる往復振動機構、若しくは前記測定試料を載置した回転体を回転させて前記一対の磁石の間を何回も通過させる回転機構であることを特徴とする請求項1~4に記載の磁気特性評価装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学計測装置としての物質の磁性を評価する磁化率等を計測する磁気特性評価装置に関している。磁気特性評価としては多くは強磁性体のB-H曲線(磁界を印加した時に物質に発生する磁化を示す曲線)が計測されている。高感度ものものとしては、強磁性体のみならず、常磁性体や反磁性体の磁気特性を評価する装置もある。本発明はこの高感度な装置に関しており、磁化特性評価だけでなく混合物中の特定の磁性物質濃度を測定できる装置である。
【背景技術】
【0002】
物質に磁場を印加した時の磁化特性を評価する磁気特性評価装置には、その計測原理として電磁誘導法を使ったものや、力学的方法がある(非特許文献1)。
【0003】
電磁誘導法は、均一磁場中に計測試料を入れ、計測対象に発生した磁化を検出コイルで検出するものである。検出コイルによって、計測試料の磁化によって発生した磁束Φの変化を検出する方法がとられる。
【0004】
この磁束変化を得る方法としては、引き抜き法と、振動法がある。引き抜き法は対向する一対の検出コイルの間で測定試料を往復運動させ、磁束変化を発生させる。
【0005】
ここで、検出コイルの材料として抵抗があるCu等の常伝導体を用いた場合、周波数が高いほど感度が高く、低周波では感度が低下する。そのため、検出コイルに超伝導コイルを用いると極低周波の磁束変化をとらえることができる。このため、液体He温度などの極低温で超伝導になる低温超伝導体を用いた超伝導検出コイルを用いて、その信号を同じく低温超伝導体によってできている超伝導量子干渉素子(SQUID)に伝達して計測する方法を用いると、最も高感度計測が可能な装置となって、強磁性体のみならず、常磁性体や反磁性体も計測できる。このため、研究機関などの基礎的な物質研究用として使われている。
【0006】
振動法は往復運動を一定の振動数で高速に振動させる方法で、検出方法としては、検出コイルからの信号を振動数に合わせた周波数で検波するロックインアンプで検出する方法である。磁化率計としてこの振動法が、強磁性体の評価装置として一般に広く使われている。
【0007】
磁化率として物質によっては周波数特性を持っているものが多く、そのため交流磁化率を測定するものもある。この場合、印加磁場を時間変動させるため、測定試料を動かす必要はなく、そのまま検出コイルでとらえた信号の実数成分と虚数成分を解析だけで良い。
【0008】
力学的方法としては、磁気天秤磁力計がある。これは磁場勾配中では磁性体は磁化の大きさに応じた力を受ける。このため、この力を天秤のようにバランスさせてその時の力を読み取れば磁化を計測することができるものである。
【0009】
SQUIDの材料として低温超伝導体を用いた場合、液体ヘリウム(絶対温度4K)等で極低温にする必要があった(特許文献1)。しかし、最近では高温超伝導体を用いたSQUIDが開発され、液体窒素温度(絶対温度77K)で動作SQUIDがでてきている。
【0010】
この高温超伝導SQUIDを用いた磁化率計を、発明者らは報告してきている(非特許文献2)。この場合、高温超伝導体を用いた検出コイルはまだできていないため、高温超伝導体のSQUIDと常伝導体の検出コイルを用いている。その感度も低温超伝導SQUIDを用いた磁化率計を検出感度に近くなってきている。
【0011】
検知する信号として印加する交流磁場の周波数だけでなく高調波を分析する方法などがある(特許文献2)。高感度化する方法として、一対の反対巻きの検出コイルを組み合わせた微分コイルを用い、測定試料の振動のさせ方を従来の幅より大きくして振動数と同じ周波数の信号の他、2倍の高調波を検波する方法を報告した(非特許文献3)。これにより、検出する信号の周波数を上げることができるので、常伝導体の検出コイルでも高感度化が可能となった。
【0012】
さらに高温超伝導SQUIDを用いた磁化率計での振動のさせ方として、振動させるのではなく測定試料を回転体に取り付け何度も検出コイルの上を通過させ、信号を加算平均とる方法も報告した(非特許文献4)。
【0013】
磁化率計の応用として、物質の基礎評価だけでなく、磁化率の変化をとらえることによって水分量を測定する方法を発明者は報告した。この原理として、水は反磁性体で比較的その反磁性が強いので、水分量が多くなるとその反磁性特性が強くなることを利用している。例えば、お米の水分量を磁気特性により計測できることを報告した(非特許文献5)。
【0014】
また、従来の広く用いられている標識方法として蛍光体を用いるのではなく磁気ナノ粒子を用いた方法も報告されている。この方法として磁気ナノ粒子をいったん強い磁界中におき、磁界から離した後、残った残留磁気を計測する方法が報告されている。これにより測定対象と結合した磁気ナノ粒子からの信号を検出して、測定対象の濃度を検出している(特許文献3)。あるいは、交流磁界を印加して結合した、または結合していない磁気ナノ粒子を検出する方法も報告されている(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【0015】

【特許文献1】特開2008-82719号公報
【特許文献2】特開2006-258480号公報
【特許文献3】特開2001-33455号公報
【0016】

【非特許文献1】実験化学講座7「電気物性、磁気物性」日本化学編、丸善pp238-247、pp256-259
【非特許文献2】M. M. Saari、 K. Sakai、 K. Kiwa、 A. Tsukamoto、 S. Adachi、 K. Tanabe、 A. Kandori and K. Tsukada、 “Development of a Compact Moving-Sample Magnetometer Using High-Tc Superconducting Quantum Interference Device”、 Japanese Journal of Applied Physics、 Vol. 51、 pp 046601-7 (2012)
【非特許文献3】モハマド マワルディ サーリ、高木 竜輝、堺 健司、紀和 利彦、塚田 啓二、“高感度計測法を用いた高温超伝導SQUID磁化率計”第60回応用物理学会春季学術講演会、2013年3月27日(神奈川工科大学)
【非特許文献4】K. Sakai、 M. M. Saari、 T. Kiwa、 A. Tsukamoto、 S. Adachi、 K. Tanabe、 A. Kandori and K. Tsukada、 “Development of a compact DC magnetometer using HTS-SQUID and a rotating sample”、 Superconductor Science and Technology、 Vol. 25、 pp 045005-10 (2012)
【非特許文献5】K. Tsukada、 and T. Kiwa、 “Magnetic Measurement of Moisture Content of Grain”、 IEEE Transactions on Magnetics、 Vol. 43、 No. 6、 pp.2683-2685 (2007)
【非特許文献6】C. C. Yang、 S. Y. Yang、 H. H. Chen、 W. L. Weng、 H. E. Horng、 J. J. Chieh、 C. Y. Hong、 H. C. Yang、 Effect of molecule-particle binding on the reduction in the mixed-frequency alternating magnetic susceptibility of magnetic bio-reagents、 Journal of Applied Physics、 Vol. 112、 pp024704-4 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
磁化率の変化を計測して特定の物質量を計測する方法において、混合物として例えばモルタルなどでは酸化鉄など強磁性体が入っている場合、反磁性は弱いためその水分量を測定することが困難であった。また、磁気ナノ粒子を用いた免疫分析法では濃度として低濃度の場合、磁気ナノ粒子の強磁性体特性あるいは超常磁性体特性の信号が水溶液である水の反磁性の信号より小さくなるため、逆に磁気ナノ粒子の信号をとらえることが困難となっていた。このように強磁性体や反磁性体による混合物の場合、単純に磁化率の違いだけで物質の濃度を決定することは簡単ではなかった。
【0018】
そこで、本発明は、磁気特性を評価することにより物質中の特定の濃度を迅速に測定できる磁気検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、以下の形態を有するものである。
【0020】
本発明の第一の形態は、対向させて配置して直流磁場及び交流磁場を印加する一対の磁石と、一対の磁石の間で測定試料を振動させる振動手段と、一対の磁石の間に配置して直流磁場及び交流磁場により測定試料が磁化することにより発生する磁場を検出する検出用コイルと、直流磁場及び交流磁場をそれぞれ制御する磁場制御手段と、検出コイルの出力信号を解析する解析手段とを備えた磁気特性評価装置であって、振動手段で測定試料を振動させながら、測定試料に印加する直流磁場を可変させて直流印加磁場に対する当該測定試料の直流磁化測定を行う第1のモードと、測定試料を一対の磁石間の任意の位置に止めた状態で所定の直流磁場を印加するとともに交流磁場を重畳させて印加して測定試料の直流バイアス交流磁化測定を行う第2のモードとを有し、解析手段は、第2のモードにおいて、検出用コイルの出力信号から、印加する交流磁場と同じ周波数を基本周波数としてその高調波成分を検知することを特徴とする磁気特性評価装置である。
【0021】
本発明の第2の形態は、第1の形態の磁気特性評価装置であって、検出用コイルとして、巻方向が逆になっている一対のコイルを直列に接続した一次微分コイルを用いるとともに、この一次微分コイルの検出面を、対向させている前記一対の磁石の対向方向に向けている磁気特性評価装置である。
【0022】
本発明の第3の形態は、第1の形態の磁気特性評価装置であって、検出用コイルとして、巻方向が逆になっている一対のコイルを直列に接続した一次微分コイルであって、直流磁化検出用の第1の一次微分コイルと、直流バイアス交流磁化検出用の第2の一次微分コイルを設け、第1の一次微分コイルの検出面を、対向させている前記一対の磁石の対向方向に向けるとともに、第2の一次微分コイルの検出面を、一対の磁石の対向方向に対して直交する方向に向けている磁気特性評価装置である。
【0023】
本発明の第4の形態は、第1~3のいずれかの形態の磁気特性評価装置であって、検出コイルは、超伝導量子干渉素子(SQUID)の入力コイル、若しくは低雑音アンプに接続して、電圧出力させている磁気特性評価装置である。
【0024】
本発明の第5の形態は、第1~4のいずれかの形態の磁気特性評価装置であって、振動手段は、一対の磁石の間だけで測定試料を往復振動させる往復振動機構、若しくは測定試料を載置した回転体を回転させて一対の磁石の間を何回も通過させる回転機構としている磁気特性評価装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の形態によれば、従来の直流印加磁場強度に対する測定試料の磁化を測定する直流磁化測定と、交流磁場強度に対する測定試料の交流磁化を測定できる交流磁化測定の2種類の測定ができるばかりでなく、任意の直流磁場を印加した状態で交流磁気特性を計測する直流バイアス交流磁化測定ができる。強磁性体は印加した磁場に対して磁化は比例関係ではなく、印加磁場が大きくなると飽和してくる。これにより印加磁場強度に対して磁化が非線形特性なので、任意の直流バイアス磁場をかけて、交流磁場を重畳させて磁化を計測すると、交流磁場の周波数成分の信号だけでなく、2倍、3倍といった高調波成分を検出することができる。この高調波信号検出を用いて、例えば混合物中の他の常磁性や反磁性の物質に影響されることなく強磁性体の磁気粒子の濃度を計測することができる。
【0026】
本発明の第2の形態によれば、コイルの検出面として直流および交流磁場を印加する一対の磁石の対向方向に検出面がある。ここで、測定試料の磁化も磁石の対向方向にあり、コイルの検出面が同じ方向に向いているので効率よく磁化を検出できる。さらに検出コイルを巻方向が逆になっている一対のコイルを直列に接続した一次微分コイルを用いることにより、環境磁場だけでなく、交流磁場をキャンセルすることができるので測定試料の磁化によって発生した磁場だけを検出することができる。
【0027】
本発明の第3の形態によれば、直流磁化検出用の一次微分コイルと直流バイアス交流磁化検出用の一次微分コイルを別々に設けている。ここで、直流磁化測定を行う時は、一対の磁石の対向方向に検出面があるので、測定試料の磁化方向と同じ方向になり効率よく磁化を測定できる。しかし、直流バイアス交流磁化測定では一対の磁石の対向方向にコイルの検出面があると、理想的には一次微分コイルを用いることにより、印加している交流磁場成分をキャンセルできるが、実際の一次微分コイルでは、それぞれのコイルの形状の誤差などでどうしても完全にはキャンセルしきれない。そのため、直流バイアス交流磁化検出用としては、一対の磁石の対向方向に垂直な方向に検出面があるように一次微分コイルを配置すると印加する交流磁場が入ってこなくなり、測定試料の磁化による磁気信号だけを抽出することができる。
【0028】
本発明の第4の形態によれば、検出コイルに発生した電圧をさらに低雑音アンプあるいはSQUIDの入力コイルに接続することにより、増幅した電圧出力が得られるので高感度な計測が可能となる。
【0029】
本発明の第5の形態によれば、一対の磁石間のところで測定試料を振動させるか、あるいは測定試料を回転体に取り付け何度も検出コイルの上を通過させることにより、直流磁化測定において検出コイルに対して測定試料が動かすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態である磁気特性評価装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】電磁石間での検出コイルと測定試料の位置関係を示す図である。
【図3】水溶液中の磁気ナノ粒子の各濃度におけるB-H曲線のグラフである。
【図4】磁気ナノ粒子を計測した場合に直流バイアス交流磁化計測をするための原理図である。
【図5】直流バイアス磁場強度値と交流磁場強度を変えた時の基本波の強度分布、2次高調波の分布、3次高調波の分布をそれぞれ示すグラフである。
【図6】各直流磁場強度と交流磁場強度で組合せた時に、各水溶液濃度の磁気ナノ粒子の信号強度変化を示すグラフである。
【図7】測定試料を回転体に取り付け何度も検出コイルの上を通過させる回転機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を、添付する図面を参照して詳細に説明する。
また、同様の用途及び機能を有する部材には同符号を付してその説明を省略する。

【0032】
図1は、本発明の一実施形態である磁気特性評価装置1の基本構成を示す概略図である。
磁気特性評価装置1は、測定試料3-1に直流及び交流の磁場を印加するための一対の対向した電磁石1-1と、この電磁石1-1で生成する直流及び交流の磁場をそれぞれ制御する磁場制御手段としての電磁石用電源2と、電磁石1-1の間で測定試料3-1を振動させるための振動手段としての振動機構4と、直流磁場によって測定試料3-1が磁化して発生した信号を検出する直流磁化検出用の第1のコイル5-1と、直流磁場を印加した状態で交流磁場を重畳させたことによって測定試料3-1が磁化した信号を検出する直流バイアス交流磁化検出用の第2のコイル6-1と、第1のコイル5-1及び第2のコイル6-1と検出コイル切替器7を介して接続されるSQUID8とから構成されている。

【0033】
SQUID8は、第1のコイル5-1あるいは第2のコイル6-1の出力が入力されるインプットコイルであり、このSQUID7によって電圧信号に変換して出力することとしている。SQUID8は超伝導状態にするために液体窒素が入ったデュワ9に浸漬している。また、第1のコイル5-1あるいは第2のコイル6-1以外からの磁気信号がSQUID8に直接入らないように磁気シールドケース10で囲まれている。なお、SQUID8の代わりに第1のコイル5-1あるいは第2のコイル6-1に発生した電圧を低雑音アンプによって電圧信号として出力させることもできる。

【0034】
電磁石1-1は、磁極が対向した状態に形成されるように形成し、電磁石用電源2から供給された電流によって電磁石1-1に所定の磁場を生じさせている。電磁石用電源2は、供給する電流を調整することで、所定の直流磁場や交流磁場を生じさせることとしている。

【0035】
測定試料3-1は、振動機構4を構成しているアクチュエータに装着した連結アームの先端部分に収納可能としており、アクチュエータによって連結アームを進退駆動させることにより、電磁石1-1の間で測定試料3-1を振動させることとしている。

【0036】
図2は、直流磁化検出用の第1のコイル5-1と直流バイアス交流磁化検出用の第2のコイル6-1の配設状態の説明図である。各コイル5-1,6-1は、それぞれ巻方向が逆になっている一対のコイルを平面上に直列に接続した一次微分コイルの構成としている。この一次微分コイルの構成を使うことにより環境の磁気雑音などを除去することができる。

【0037】
直流磁化検出用の第1のコイル5-1は、対向させている一対の電磁石1-1の対向方向の検出面をもつように配置している。そして、測定試料3-1を、図2のx軸方向に振動させることにより、測定試料3-1に印加する直流磁場を可変させるとともに、直流磁化検出用の第1のコイル5-1の上を通過させて、測定試料3-1に生じた直流磁化に対応した電圧を第1のコイル5-1に発生させている。

【0038】
また、直流バイアス交流磁化検出用の第2のコイル6-1は、対向させている一対の電磁石1-1の対向方向に直交する方向に検出面をもつように配置している。検出面を電磁石1-1の対向方向の直交方向とすることにより、電磁石1-1から印加した交流磁場成分が直流バイアス交流磁化検出用の第2のコイル6-1に入らないので、測定試料3-1に生じた交流磁化の信号のみを検出することができる。

【0039】
直流磁化検出用の第1のコイル5-1と、直流バイアス交流磁化検出用の第2のコイル6-1は別々に設けず、直流磁化検出用の第1のコイル5-1を直流バイアス交流磁化検出用としてもよい。その場合では、一対の電磁石1-1の対向方向に検出コイルの検出面をもつように、すなわち、直流磁化検出用の第1のコイル5-1の配置にするのが、もっとも感度がよい。

【0040】
本発明の磁気特性評価装置1は、振動機構4で測定試料3-1を振動させながら、測定試料3-1に印加する直流磁場を可変させて直流印加磁場に対する測定試料3-1の直流磁化測定を行う第1のモードと、測定試料3-1を一対の磁石間の任意の位置に止めた状態で所定の直流磁場を印加するとともに交流磁場を重畳させて印加して測定試料3-1の直流バイアス交流磁化測定を行う第2のモードの、少なくとも2つ動作モードを有している。

【0041】
第2のモードである直流バイアス交流磁化測定の時には、磁気特性評価装置1は、振動機構4を止めて測定試料を電磁石1-1の間で動かないようにしておく。さらに、磁気特性評価装置1は、電磁石1-1で一定の直流磁場を与えながら交流磁場を重畳させ、直流磁化検出用の第1のコイル5-1及び直流バイアス交流磁化検出用の第2のコイル6-1にそれぞれに電圧を発生させている。

【0042】
しかし、先ほど述べたように直流磁化検出用の第1のコイル5-1には、印加した交流磁場が入ってくるので、この交流磁場が磁化信号に雑音として大きく乗り、SNが悪くなってしまう。このため、直流バイアス交流磁化検出用の第2のコイル6-1を使うことにより、この第2のコイル6-1には印加した交流磁場は入ってくることはなく、磁化信号だけが検出できることにより高いSNを得ることができる。

【0043】
図1に示すように、SQUID8の出力信号は、SQUID8の計測回路としてのFLL回路11に入力し、このFLL回路11の出力信号はロックインアンプ12に入力している。ロックインアンプ12には、電磁石用電源2から出力された駆動情報信号を入力し、電磁石用電源2で生成した交流磁場の周波数に対応した周波数成分だけを抽出できるようにしている。また、ロックインアンプ12には、振動機構4を構成しているアクチュエータの駆動情報信号を入力し、アクチュエータの動作周期の周波数に対応した周波数成分だけを抽出できるようにしている。

【0044】
特に、直流バイアス交流磁化計測の場合には、ロックインアンプ12は、電磁石用電源2で生成した交流磁場の周波数に対応した周波数成分だけを抽出するだけでなく、電磁石用電源2で生成した交流磁場の周波数を基本周波数として、この基本周波数の2倍の周波数の2次高調波、あるいは基本周波数の3倍の周波数の3次高調波などの高調波成分をとって出力することとしている。ロックインアンプ12の出力信号は、解析手段であるパーソナルコンピューター13に入力して解析し、解析結果をパーソナルコンピューター13の表示画面に表示させることとしている。

【0045】
以下において、本発明の磁気特性評価装置による磁気ナノ粒子等の濃度測定の原理について説明する。

【0046】
強磁性体のB-H曲線は磁場を上昇させた時と下降させた時とで異なる磁化を示すヒステリシス特性を持っている。ある一定の磁場強度以上では磁化は飽和する。強磁性体でも粒径が数10nm以下になるとヒステリシスがない超常磁性特性を示すようになる。このように強磁性体では印加磁場強度と磁化が線形の関係にない。

【0047】
一方、水などの反磁性体は印加磁場に対して反対方向の磁場、つまり反発する磁場が発生し印加磁場強度と磁化が比例関係にある。これらの特性の違いがあるので、印加磁場強度の違いによって、これらの混合物の磁化率も変化することが分かる。水溶液中の磁気ナノ粒子を希釈した時の各濃度におけるB-H曲線を図3に示す。

【0048】
このB-H曲線は電磁石の磁場強度をいったん固定して、振動機構で何度も測定試料を振動させその振動周波数に合わせてロックインアンプで検波した信号を取得する。取得後、徐々に印加磁場強度を変化せて同じように信号を取得することを繰り返していく。

【0049】
磁気ナノ粒子は、Fe3O4微粒子をデキストランでコーティングしたもので全体の粒径100nm程度となっているものを使った。各濃度のB-H曲線は印加磁場を上げた初期のところでは直線状の磁化が上昇しているが約40mT程度で飽和し、その後は磁化が減少している。磁気ナノ粒子は超常磁性特性を持っているのである磁場強度以上では飽和する。しかし、磁気ナノ粒子は水溶液中にあるため、水の磁性もあり磁気ナノ粒子の磁化が飽和するとともに、水の反磁性特性が現れてくる。

【0050】
反磁性特性は印加磁場に対して直線関係にあるため、印加磁場強度の上昇とともに超常磁性の特性より反磁性特性が支配的になる。このため、印加磁場強度が強いところではマイナスの傾きを持った直線となっている。

【0051】
濃度が減少するとともに水の反磁性特性が強く表れマイナスの傾きが強くなってくる。従ってこのB-H曲線から磁気ナノ粒子の濃度を測定できることがわかる。このB-H特性から磁気ナノ粒子の濃度が分かることはいままで報告されてなかったが、B-H曲線を計測する方法自体は従来の計測方法であり、物質の磁気特性を評価する上では重要な評価方法である。

【0052】
このB-H特性を計測するためには、印加磁場をいったん固定して何度も測定試料を振動させ信号を検出し、印加磁場を徐々に変化させていく必要がある。このため、この計測方法は数10分以上かかるため、物質中の濃度だけを検査したい場合にはこの計測方法は不向きである。

【0053】
そこで、本発明の磁気特性評価装置では、所定の直流磁場を印加してさらに交流磁場を印加する直流バイアス交流磁化測定を行うこととしているものである。図4は濃度2vol%のB-H曲線であるが、ここである一定の直流磁場強度を与えてさらに交流磁場を重畳させる。そうすると、図5に示すように直流磁場強度と交流磁場強度を変化させた時の検出した基本波、第2次高調波、第3次高調波の各信号強度がそれぞれの条件で変化する。

【0054】
図から分かるように直流磁場強度と交流磁場強度の組み合わせによって基本波や第2高調波、第3高調波がそれぞれ得られことが分かった。ここで、直流磁場として30mTで印加して、さらに交流磁場としてその振幅強度40mTで印加した時と、直流磁場50mTおよび交流磁場80mT印加したそれぞれの条件で、各濃度における2次高調波の信号強度を比較した結果を図6に示す。このように直流磁場と交流磁場を印加して高調波成分を検出することにより迅速に混合物中の特定の物質濃度を検査することが分かった。

【0055】
特に、基本波には、交流磁場によって生じたノイズがのりやすいため、検査精度を高めることが困難となりやすいが、第2高調波や第3高調波等の高調波成分にはノイズがのらないため、高調波成分を用いることで検査精度を高めることができる。

【0056】
次に、本発明に係る磁気特性評価装置の別実施例について図7を用いて説明する。

【0057】
上述した磁気特性評価装置では、アクチュエータによる往復振動機構により測定試料を電磁石の間で往復振動させたが、本実施例では、図7に示すように、回転体である試料回転台14の所定位置に測定試料3-2を載置し、この試料回転台14を回転させることにより直流磁化検出用の第1の検出コイル5-2上を何回も通過させて、第1の検出コイル5-2に電圧を発生させることとしている。ここで、直流バイアス交流磁化検出用の第2の検出コイル6-2は、上述した実施例と同様に電磁石1-2の対向方向と直交する方向に検出面を持つように配置し、交流磁化信号を検出することとしている。

【0058】
直流磁化計測において、アクチュエータによる往復振動機構で測定試料を往復振動させた場合には、往復振動の振動数に合わせてロックインアンプで検波したが、試料回転台14を回転させている回転機構では、試料回転台14の回転に同期させてデータ収録し、一回毎のデータを平均処理することによりSNの高い計測ができる。

【0059】
このため、SQUIDを用いた時のFLL回路出力あるいは低雑音アンプを用いた時の出力を、ロックインアンプを通さずにデータ収録するだけでよい。

【0060】
一方、直流バイアス交流磁化計測においては、印加する交流磁場の周波数に同期した周波数でロックインアンプにより検波を行う。このように試料を振動させる方法として往復ではなく、回転でも計測することができる。
【符号の説明】
【0061】
1-1 電磁石
1-2 電磁石
2 電磁石用電源
3-1 測定試料
3-2 測定試料
4 振動機構
5-1 第1の検出コイル(直流磁化検出用)
5-2 第1の検出コイル(直流磁化検出用)
6-1 第2の検出コイル(直流バイアス交流磁化検出用)
6-2 第2の検出コイル(直流バイアス交流磁化検出用)
7 検出コイル切替器
8 SQUID
9 デュワ
10 磁気シールドケース
11 FLL回路
12 ロックインアンプ
13 パーソナルコンピューター
14 試料回転台
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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