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明細書 :血栓症のリスク検査法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-047141 (P2015-047141A)
公開日 平成27年3月16日(2015.3.16)
発明の名称または考案の名称 血栓症のリスク検査法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/37        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
C12Q 1/37
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2013-182541 (P2013-182541)
出願日 平成25年9月3日(2013.9.3)
発明者または考案者 【氏名】高木 明
【氏名】小嶋 哲人
【氏名】高木 夕希
【氏名】村田 萌
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B063
Fターム 4B024AA11
4B024CA01
4B024CA09
4B024CA20
4B024HA08
4B024HA11
4B024HA12
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ36
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR57
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS26
4B063QS36
要約 【課題】血栓症のリスクの判定等に有用な変異を明らかにし、精度や信頼性の一層高いリスク判定を実現することを課題とする。
【解決手段】
プロトロンビンの540番アミノ酸、541番アミノ酸、596番アミノ酸、599番アミノ酸、600番アミノ酸の置換を伴う新たな遺伝子変異を同定した。当該遺伝子変異を利用して、被検者の血栓症の易罹患性を検査する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
被検者のプロトロンビン遺伝子について、以下の(1)~(28)からなる群より選択される一以上の変異の有無を調べることを特徴とする、被検者の血栓症の易罹患性を検査する方法:
(1) 1618位塩基のAからGへの変異、(2) 1618位塩基のAからTへの変異、(3) 1618位塩基のAからCへの変異、(4) 1619位塩基のCからGへの変異、(5) 1619位塩基のCからAへの変異、(6) 1619位塩基のCからTへの変異、(7) 1621位塩基のCからGへの変異、(8) 1621位塩基のCからTへの変異、(9) 1622位塩基のGからAへの変異、(10) 1622位塩基のGからTへの変異、(11) 1622位塩基のGからCへの変異、(12) 1786位塩基のCからTへの変異、(13) 1786位塩基のCからGへの変異、(14) 1787位塩基のGからCへの変異、(15) 1787位塩基のGからAへの変異、(16) 1795位塩基のAからCへの変異、(17) 1795位塩基のAからGへの変異、(18) 1796位塩基のAからTへの変異、(19) 1796位塩基のAからCへの変異、(20) 1796位塩基のAからGへの変異、(21) 1797位塩基のAからCへの変異、(22) 1798位塩基のTからGへの変異、(23) 1798位塩基のTからAへの変異、(24) 1798位塩基のTからCへの変異、(25) 1799位塩基のAからGへの変異、(26) 1799位塩基のAからTへの変異、(27) 1799位塩基のAからCへの変異、(28) 1798位塩基のTからCへの変異及び1799位塩基のAからCへの変異。
【請求項2】
前記(1)~(28)の中のいずれかを検出した場合に血栓症のリスクが高い、との判定基準で血栓症の易罹患性を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(1)~(6)、(12)~(21)、(23)、(27)及び(28)の中のいずれかを検出した場合は血栓症のリスクが高く、前記(7)~(11)、(24)及び(26)の中のいずれかを検出した場合は血栓症のリスクが中程度である、との判定基準で血栓症の易罹患性を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記(1)~(6)の中のいずれか、前記(7)~(11)の中のいずれか、前記(12)~(15)の中のいずれか、前記(16)~(21)の中のいずれか、前記(22)~(28)の中のいずれか、からなる群より選択される二以上の変異を検出した場合に血栓症のリスクが特に高い、との判定基準で血栓症の易罹患性を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記(1)~(6)の中のいずれか、前記(7)~(11)の中のいずれか、前記(12)~(15)及び(29) 1787位塩基のGからTへの変異の中のいずれか、前記(16)~(21)の中のいずれか、前記(22)~(29)の中のいずれか、からなる群より選択される二以上の変異を検出した場合に血栓症のリスクが特に高い、との判定基準で血栓症の易罹患性を判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
凝固因子として作用する異常トロンビンを検出するためのトロンビン不活化動態の測定方法であって、
被検者の血漿に由来する成分を少なくとも含む試料にプロトロンビン活性化剤を加えてプロトロンビンをトロンビンに変換し、次に、正常トロンビンを不活化する凝固阻止因子を前記試料に加え、所定の反応時間後における前記試料の残存トロンビン活性を、以下の(1)~(3)、(5)~(29)から選択される二以上の陽性コントロールの値と比較して測定することを特徴とする、測定方法:
(1) 540番アミノ酸のAlaへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(2) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(3) 540番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(5) 540番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(6) 540番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(7) 541番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(8) 541番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(9) 541番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(10) 541番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(11) 541番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(12) 596番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(13) 596番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(14) 596番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(15) 596番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(16) 599番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(17) 599番アミノ酸のGluへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(18) 599番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(19) 599番アミノ酸のThrへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(20) 599番アミノ酸のArgへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(21) 599番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(22) 600番アミノ酸のAspへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(23) 600番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(24) 600番アミノ酸のHisへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(25) 600番アミノ酸のCysへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(26) 600番アミノ酸のPheへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(27) 600番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(28) 600番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(29) 596番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性。
【請求項7】
陽性コントロールとして、前記(1)~(3)、(5)、(6)、(12)~(21)、(23)、(27)、(28)及び(29)からなる群より選択される一以上と、前記(7)~(11)、(24)及び(26)からなる群より選択される一以上を用いることを特徴とする、請求項6に記載の測定方法。
【請求項8】
前記残存トロンビン活性を、前記陽性コントロールの値及び正常値と比較して測定することを特徴とする、請求項6又は7に記載の測定方法。
【請求項9】
前記凝固阻止因子に、アンチトロンビン、アンチトロンビンとヘパリンの組合せ、アンチトロンビンとヘパラン硫酸の組合せ、又はトロンボモジュリンを用いることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項10】
前記プロトロンビン活性化剤に、蛇毒に由来するプロトロンビン活性化剤(該プロトロンビン活性化剤を生成する遺伝子を導入した生物(人を除く)から生成されるプロトロンビン活性化剤を含む)を用いることを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項11】
トロンビンに対して感受性を有する合成基質、又はフィブリノゲンを前記反応時間後に加えて前記試料の残存トロンビン活性を測定することを特徴とする、請求項6~10のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項12】
凝固因子として作用する異常トロンビンを検出するためのトロンビン不活化動態の測定キットであって、
被検者の血漿に由来する成分を少なくとも含む試料に加えてプロトロンビンをトロンビンに変換するためのプロトロンビン活性化剤と、
正常トロンビンを不活化する凝固阻止因子であって前記プロトロンビン活性化剤を加えた後に前記試料に加えるための凝固阻止因子と、
所定の反応時間後における前記試料の残存トロンビン活性を測定するための活性測定用試薬と、
以下の(1)~(3)、(5)~(29)からなる群より選択される二以上の変異型プロトロンビンを含む、測定キット:
(1) 540番アミノ酸のAlaへの置換を含む変異型プロトロンビン、(2) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(3) 540番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(4) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(5) 540番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(6) 540番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビン、(7) 541番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビン、(8) 541番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビン、(9) 541番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(10) 541番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビン、(11) 541番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(12) 596番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビン、(13) 596番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビン、(14) 596番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(15) 596番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(16) 599番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(17) 599番アミノ酸のGluへの置換を含む変異型プロトロンビン、(18) 599番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビン、(19) 599番アミノ酸のThrへの置換を含む変異型プロトロンビン、(20) 599番アミノ酸のArgへの置換を含む変異型プロトロンビン、(21) 599番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(22) 600番アミノ酸のAspへの置換を含む変異型プロトロンビン、(23) 600番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(24) 600番アミノ酸のHisへの置換を含む変異型プロトロンビン、(25) 600番アミノ酸のCysへの置換を含む変異型プロトロンビン、(26) 600番アミノ酸のPheへの置換を含む変異型プロトロンビン、(27) 600番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(28) 600番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(29) 596番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血栓症の易罹患性(リスク)を検査する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
静脈血栓症は多因子疾患として知られ、環境的リスクと遺伝的リスクなどが重なり起こる病気である。遺伝的リスクにはアンチトロンビンやプロテインC、プロテインSなどの生理的凝固抑制因子の遺伝子異常がある。これまでに多くの遺伝性血栓症でこれらの遺伝子異常が見つかっているものの、いまだに原因が不明なものも少なくない。本願発明者らの研究グループでは、これまで原因が不明であった静脈血栓症患者において、通常は出血傾向となるプロトロンビン(凝固因子の一つでトロンビンの前駆体)異常症が、逆に血栓症の原因となる遺伝子異常を発見した。この知見に基づき、プロトロンビンの変異がその制御因子(アンチトロンビン)の作用を受けにくく、静脈血栓塞栓症の原因になるという新規の疾患概念「アンチトロンビン抵抗性」を提唱し、「アンチトロンビン抵抗性」の測定法を報告した(特許文献1、非特許文献1)。その中で、高齢化や災害時の運動不足や下肢のうっ血などにより発症リスクが増大する静脈血栓塞栓症発症リスクの測定法および発症リスク陽性のコントロールとして特定のプロトロンビン遺伝子変異(596番アミノ酸アルギニンのロイシンへの置換を伴う、1787位塩基のGからTへの変異)を使用できることを示した。尚、プロトロンビン遺伝子については別の変異(596番アミノ酸アルギニンのグルタミンへの置換を伴う変異)も報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2012-135250号公報
【0004】

【非特許文献1】Miyawaki Y, Suzuki A, Fujita J, Maki A, Okuyama E, Murata M, Takagi A, Murate T, Kunishima S, Sakai M, Okamoto K, Matsushita T, Naoe T, Saito H, Kojima T.: Thrombosis from a prothrombin mutation conveying antithrombin resistance. N Engl J Med. 366(25): 2390-6, 2012
【非特許文献2】XXIV Congress of the International on Thrombosis and Haemostasis Amsterdam June 29-July 4 2013, PA 2.13-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先の特許出願において、血栓症のリスク判定に使用できるプロトロンビンの特定の変異を報告したが、これとは別の変異が存在することも予想される。そこで本願発明の主たる課題は、血栓症のリスクの判定等に有用な変異を明らかにし、精度や信頼性の一層高いリスク判定を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の下で本願発明者らは、トロンビンとアンチトロンビンの結合部位に注目し、検討を進めることにした。具体的には、プロトロンビンにおける540番アミノ酸残基、541番アミノ酸残基、596番アミノ酸残基、599番アミノ酸残基、600番アミノ酸残基の変異(置換)もアンチトロンビン抵抗性を高めると予想し、その検証を試みた。その結果、先の報告に係る変異、即ち596番アミノ酸ArgのLeuへの置換以外にも、アンチトロンビン抵抗性を呈する変異の存在が明らかになった。また、各変異のアンチトロンビン抵抗性は一様でないことも判明した。以下の発明は主として当該成果に基づく。
[1]被検者のプロトロンビン遺伝子について、以下の(1)~(28)からなる群より選択される一以上の変異の有無を調べることを特徴とする、被検者の血栓症の易罹患性を検査する方法:
(1) 1618位塩基のAからGへの変異、(2) 1618位塩基のAからTへの変異、(3) 1618位塩基のAからCへの変異、(4) 1619位塩基のCからGへの変異、(5) 1619位塩基のCからAへの変異、(6) 1619位塩基のCからTへの変異、(7) 1621位塩基のCからGへの変異、(8) 1621位塩基のCからTへの変異、(9) 1622位塩基のGからAへの変異、(10) 1622位塩基のGからTへの変異、(11) 1622位塩基のGからCへの変異、(12) 1786位塩基のCからTへの変異、(13) 1786位塩基のCからGへの変異、(14) 1787位塩基のGからCへの変異、(15) 1787位塩基のGからAへの変異、(16) 1795位塩基のAからCへの変異、(17) 1795位塩基のAからGへの変異、(18) 1796位塩基のAからTへの変異、(19) 1796位塩基のAからCへの変異、(20) 1796位塩基のAからGへの変異、(21) 1797位塩基のAからCへの変異、(22) 1798位塩基のTからGへの変異、(23) 1798位塩基のTからAへの変異、(24) 1798位塩基のTからCへの変異、(25) 1799位塩基のAからGへの変異、(26) 1799位塩基のAからTへの変異、(27) 1799位塩基のAからCへの変異、(28) 1798位塩基のTからCへの変異及び1799位塩基のAからCへの変異。
[2]前記(1)~(28)の中のいずれかを検出した場合に血栓症のリスクが高い、との判定基準で血栓症の易罹患性を判定する、[1]に記載の方法。
[3]前記(1)~(6)、(12)~(21)、(23)、(27)及び(28)の中のいずれかを検出した場合は血栓症のリスクが高く、前記(7)~(11)、(24)及び(26)の中のいずれかを検出した場合は血栓症のリスクが中程度である、との判定基準で血栓症の易罹患性を判定する、[1]に記載の方法。
[4]前記(1)~(6)の中のいずれか、前記(7)~(11)の中のいずれか、前記(12)~(15)の中のいずれか、前記(16)~(21)の中のいずれか、前記(22)~(28)の中のいずれか、からなる群より選択される二以上の変異を検出した場合に血栓症のリスクが特に高い、との判定基準で血栓症の易罹患性を判定する、[1]に記載の方法。
[5]前記(1)~(6)の中のいずれか、前記(7)~(11)の中のいずれか、前記(12)~(15)及び(29) 1787位塩基のGからTへの変異の中のいずれか、前記(16)~(21)の中のいずれか、前記(22)~(29)の中のいずれか、からなる群より選択される二以上の変異を検出した場合に血栓症のリスクが特に高い、との判定基準で血栓症の易罹患性を判定する、[1]に記載の方法。
[6]凝固因子として作用する異常トロンビンを検出するためのトロンビン不活化動態の測定方法であって、
被検者の血漿に由来する成分を少なくとも含む試料にプロトロンビン活性化剤を加えてプロトロンビンをトロンビンに変換し、次に、正常トロンビンを不活化する凝固阻止因子を前記試料に加え、所定の反応時間後における前記試料の残存トロンビン活性を、以下の(1)~(3)、(5)~(29)から選択される二以上の陽性コントロールの値と比較して測定することを特徴とする、測定方法:
(1) 540番アミノ酸のAlaへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(2) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(3) 540番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(5) 540番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(6) 540番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(7) 541番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(8) 541番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(9) 541番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(10) 541番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(11) 541番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(12) 596番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(13) 596番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(14) 596番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(15) 596番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(16) 599番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(17) 599番アミノ酸のGluへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(18) 599番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(19) 599番アミノ酸のThrへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(20) 599番アミノ酸のArgへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(21) 599番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(22) 600番アミノ酸のAspへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(23) 600番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(24) 600番アミノ酸のHisへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(25) 600番アミノ酸のCysへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(26) 600番アミノ酸のPheへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(27) 600番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(28) 600番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性、(29) 596番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性。
[7]陽性コントロールとして、前記(1)~(3)、(5)、(6)、(12)~(21)、(23)、(27)、(28)及び(29)からなる群より選択される一以上と、前記(7)~(11)、(24)及び(26)からなる群より選択される一以上を用いることを特徴とする、[6]に記載の測定方法。
[8]前記残存トロンビン活性を、前記陽性コントロールの値及び正常値と比較して測定することを特徴とする、[6]又は[7]に記載の測定方法。
[9]前記凝固阻止因子に、アンチトロンビン、アンチトロンビンとヘパリンの組合せ、アンチトロンビンとヘパラン硫酸の組合せ、又はトロンボモジュリンを用いることを特徴とする、[6]~[8]のいずれか一項に記載の測定方法。
[10]前記プロトロンビン活性化剤に、蛇毒に由来するプロトロンビン活性化剤(該プロトロンビン活性化剤を生成する遺伝子を導入した生物(人を除く)から生成されるプロトロンビン活性化剤を含む)を用いることを特徴とする、[6]~[9]のいずれか一項に記載の測定方法。
[11]トロンビンに対して感受性を有する合成基質、又はフィブリノゲンを前記反応時間後に加えて前記試料の残存トロンビン活性を測定することを特徴とする、[6]~[10]のいずれか一項に記載の測定方法。
[12]凝固因子として作用する異常トロンビンを検出するためのトロンビン不活化動態の測定キットであって、
被検者の血漿に由来する成分を少なくとも含む試料に加えてプロトロンビンをトロンビンに変換するためのプロトロンビン活性化剤と、
正常トロンビンを不活化する凝固阻止因子であって前記プロトロンビン活性化剤を加えた後に前記試料に加えるための凝固阻止因子と、
所定の反応時間後における前記試料の残存トロンビン活性を測定するための活性測定用試薬と、
以下の(1)~(3)、(5)~(29)からなる群より選択される二以上の変異型プロトロンビンを含む、測定キット:
(1) 540番アミノ酸のAlaへの置換を含む変異型プロトロンビン、(2) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(3) 540番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(4) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(5) 540番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(6) 540番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビン、(7) 541番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビン、(8) 541番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビン、(9) 541番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(10) 541番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビン、(11) 541番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(12) 596番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビン、(13) 596番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビン、(14) 596番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(15) 596番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(16) 599番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(17) 599番アミノ酸のGluへの置換を含む変異型プロトロンビン、(18) 599番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビン、(19) 599番アミノ酸のThrへの置換を含む変異型プロトロンビン、(20) 599番アミノ酸のArgへの置換を含む変異型プロトロンビン、(21) 599番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(22) 600番アミノ酸のAspへの置換を含む変異型プロトロンビン、(23) 600番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(24) 600番アミノ酸のHisへの置換を含む変異型プロトロンビン、(25) 600番アミノ酸のCysへの置換を含む変異型プロトロンビン、(26) 600番アミノ酸のPheへの置換を含む変異型プロトロンビン、(27) 600番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(28) 600番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(29) 596番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビン。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】540番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンの一覧。
【図2】541番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンの一覧。
【図3】596番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンの一覧。
【図4】599番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンの一覧。
【図5】600番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンの一覧。
【図6】トロンビン不活性化動態測定方法の概要。
【図7】540番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンと541番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンの不活性化動態を示すグラフ。
【図8】596番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンと599番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンの不活性化動態を示すグラフ。
【図9】600番アミノ酸の置換を伴う変異型プロトロンビンの不活性化動態を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.被検者の血栓症の易罹患性を検査する方法
本発明の第1の局面は被検者の血栓症の易罹患性を検査する方法に関する。本発明において「血栓症の易罹患性」とは、血栓症を生ずるおそれの程度(リスク)をいう。従って、本発明の検査方法によれば、血栓症のリスクを判定・評価することが可能である。本発明の検査方法は、特に、静脈血栓塞栓症(肺血栓塞栓症及び深部静脈血栓症)のリスクを判定・評価することに有用である。

【0009】
本発明では、プロトロンビン遺伝子の特定の変異がアンチトロンビン抵抗性を引き起こし、血栓症発症のリスクを増大させ得るとの知見に基づき、被検者のプロトロンビン遺伝子について、以下の(1)~(28)からなる群より選択される一以上の変異の有無を調べる。以下の説明において、「プロトロンビン遺伝子変異」とは、別の説明がない限り、以下の遺伝子変異を包括する用語として使用する。各遺伝子変異はアミノ酸の置換を伴う。そこで、以下では、各遺伝子変異と対応するアミノ酸置換を併記する。尚、本明細書では、cDNAの翻訳開始コドン基準の番号、即ち、翻訳開始コドンのAを1番目(1位の塩基)として番号付けした位置で各塩基を特定している。

【0010】
(1) 1618位塩基のAからGへの変異(c.1618A>Gとも表記する):540番アミノ酸のAlaへの置換(p. Thr540Alaとも表記する)
(2) 1618位塩基のAからTへの変異(c.1618A>Tとも表記する):540番アミノ酸のSerへの置換(p. Thr540Serとも表記する)
(3) 1618位塩基のAからCへの変異(c.1618A>Cとも表記する):540番アミノ酸のProへの置換(p. Thr540Proとも表記する)
(4) 1619位塩基のCからGへの変異(c.1619C>Gとも表記する):540番アミノ酸のSerへの置換(p. Thr540Serとも表記する)
(5) 1619位塩基のCからAへの変異(c.1619C>Aとも表記する):540番アミノ酸のAsnへの置換(p. Thr540Asnとも表記する)
(6) 1619位塩基のCからTへの変異(c.1619C>Tとも表記する):540番アミノ酸のIleへの置換(p. Thr540Ileとも表記する)
(7) 1621位塩基のCからGへの変異(c.1621C>Gとも表記する):541番アミノ酸のGlyへの置換(p. Arg541Glyとも表記する)
(8) 1621位塩基のCからTへの変異(c.1621C>Tとも表記する):541番アミノ酸のTrpへの置換(p. Arg541Trpとも表記する)
(9) 1622位塩基のGからAへの変異(c.1622G>Aとも表記する):541番アミノ酸のGlnへの置換(p. Arg541Glnとも表記する)
(10) 1622位塩基のGからTへの変異(c.1622G>Tとも表記する):541番アミノ酸のLeuへの置換(p. Arg541Leuとも表記する)
(11) 1622位塩基のGからCへの変異(c.1622G>Cとも表記する):541番アミノ酸のProへの置換(p. Arg541Proとも表記する)
(12) 1786位塩基のCからTへの変異(c.1786C>Tとも表記する):596番アミノ酸のTrpへの置換(p. Arg596Trpとも表記する)
(13) 1786位塩基のCからGへの変異(c.1786C>Gとも表記する):596番アミノ酸のGlyへの置換(p. Arg596Glyとも表記する)
(14) 1787位塩基のGからCへの変異(c.1787G>Cとも表記する):596番アミノ酸のProへの置換(p. Arg596Proとも表記する)
(15) 1787位塩基のGからAへの変異(c.1787G>Aとも表記する):596番アミノ酸のGlnへの置換(p. Arg596Glnとも表記する)
(16) 1795位塩基のAからCへの変異(c.1795A>Cとも表記する):599番アミノ酸のGlnへの置換(p. Lys599Glnとも表記する)
(17) 1795位塩基のAからGへの変異(c.1795A>Gとも表記する):599番アミノ酸のGluへの置換(p. Lys599Gluとも表記する)
(18) 1796位塩基のAからTへの変異(c.1796A>Tとも表記する):599番アミノ酸のIleへの置換(p. Lys599Ileとも表記する)
(19) 1796位塩基のAからCへの変異(c.1796A>Cとも表記する):599番アミノ酸のThrへの置換(p. Lys599Thrとも表記する)
(20) 1796位塩基のAからGへの変異(c.1796A>Gとも表記する):599番アミノ酸のArgへの置換(p. Lys599Argとも表記する)
(21) 1797位塩基のAからCへの変異(c.1797A>Cとも表記する):599番アミノ酸のAsnへの置換(p. Lys599Asnとも表記する)
(22) 1798位塩基のTからGへの変異(c.1798T>Gとも表記する):600番アミノ酸のAspへの置換(p. Tyr600Aspとも表記する)
(23) 1798位塩基のTからAへの変異(c.1798T>Aとも表記する):600番アミノ酸のAsnへの置換(p. Tyr600Asnとも表記する)
(24) 1798位塩基のTからCへの変異(c.1798T>Cとも表記する):600番アミノ酸のHisへの置換(p. Tyr600Hisとも表記する)
(25) 1799位塩基のAからGへの変異(c.1799A>Gとも表記する):600番アミノ酸のCysへの置換(p. Tyr600Cysとも表記する)
(26) 1799位塩基のAからTへの変異(c.1799A>Tとも表記する):600番アミノ酸のPheへの置換(p. Tyr600Pheとも表記する)
(27) 1799位塩基のAからCへの変異(c.1799A>Cとも表記する):600番アミノ酸のSerへの置換(p. Tyr600Serとも表記する)
(28) 1798位塩基のTからCへの変異及び1799位塩基のAからCへの変異(c.1798T>C,1799A>Cとも表記する):600番アミノ酸のProへの置換(p. Tyr600Proとも表記する)

【0011】
変異(1)~(6)は、プロトロンビンの540番アミノ酸の置換をもたらす変異である。540番アミノ酸は、野生型プロトロンビンではThr(スレオニン)であるが、(1)の変異によってAla(アラニン)、(2)の変異によってSer(セリン)、(3)の変異によってPro(プロリン)、(4)の変異によってSer(プロリン)、(5)の変異によってAsn(アスパラギン)、(6)の変異によってIle(イソロイシン)にそれぞれ置換される。

【0012】
変異(7)~(11)は、プロトロンビンの541番アミノ酸の置換をもたらす変異である。541番アミノ酸は、野生型プロトロンビンではArg(アルギニン)であるが、(7)の変異によってGly(グリシン)、(8)の変異によってTrp(トリプトファン)、(9)の変異によってGln(グルタミン)、(10)の変異によってLeu(ロイシン)、(11)の変異によってPro(プロリン)にそれぞれ置換される。

【0013】
変異(12)~(15)は、プロトロンビンの596番アミノ酸の置換をもたらす変異である。596番アミノ酸は、野生型プロトロンビンではArg(アルギニン)であるが、(12)の変異によってTrp(トリプトファン)、(13)の変異によってGly(グリシン)、(14)の変異によってPro(プロリン)、(15)の変異によってGln(グルタミン)にそれぞれ置換される。

【0014】
変異(16)~(21)は、プロトロンビンの599番アミノ酸の置換をもたらす変異である。599番アミノ酸は、野生型プロトロンビンではLys(リジン)であるが、(16)の変異によってGln(グルタミン)、(17)の変異によってGlu(グルタミン酸)、(18)の変異によってIle(イソロイシン)、(19)の変異によってThr(スレオニン)、(20)の変異によってArg(アルギニン)、(21)の変異によってAsn(アスパラギン)にそれぞれ置換される。

【0015】
変異(22)~(28)は、プロトロンビンの600番アミノ酸の置換をもたらす変異である。600番アミノ酸は、野生型プロトロンビンではTyr(チロシン)であるが、(22)の変異によってAsp(アスパラギン酸)、(23)の変異によってAsn(アスパラギン)、(24)の変異によってHis(ヒスチジン)、(25)の変異によってCys(システイン)、(26)の変異によってPhe(フェニルアラニン)、(27)の変異によってSer(セリン)、(28)の変異によってPro(プロリン)にそれぞれ置換される。

【0016】
尚、野生型(正常型)プロトロンビン遺伝子のmRNAの配列を配列番号1(NCBI GenBank ACCESSION NM_000506, DEFINITION Homo sapiens coagulation factor II (thrombin) (F2), mRNA.)に、同アミノ酸配列を配列番号2(NCBI GenPept ACCESSION NP_000497, DEFINITION prothrombin preproprotein [Homo sapiens].)にそれぞれ示す。

【0017】
本発明の検査方法では、上記(1)~(28)からなる群より選択される一以上の変異の有無が調べられる。変異の有無を調べるためには、特定の位置の変異を決定又は検出可能な公知の方法を利用すればよい。例えば、被検者(典型的には患者)の末梢血白血球からゲノムDNAを抽出し、標的の変異位置を含むDNA領域を挟むプライマーを作成してPCR(polymerase chain reaction)法により増幅し、ダイレクトシークエンス法により増幅産物のDNA配列を決定し、標的の変異位置の塩基の種類を検出すればよい。プロトロンビン遺伝子の変異を検出するために、ミスマッチPCR-RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法や一本鎖高次構造多型(SSCP)法を利用してもよい。

【0018】
ゲノムDNAの採取源は、血液の他、毛根、頬粘膜、皮膚、等でもよい。

【0019】
ゲノムDNAの抽出は、例えば、プロテアーゼ処理及びフェノール抽出により行うことができる。プロテアーゼ処理では、例えば、末梢血白血球等の細胞を入れた水溶液にSDS、EDTAの存在するプロテアーゼKの緩衝液を添加して細胞を溶解して細胞内のDNAを可溶化すればよい。フェノール抽出は、フェノール抽出法、フェノール/クロロホルム抽出法、等により行うことができる。

【0020】
上記プライマーには、標的とする変異位置を含むDNA断片を増幅可能なものを用いればよい。例えば、標的変異位置が1787位であれば、「5'-agggcctggtgaacacatcttc-3'」(配列番号3)及び「5'-ccaggtggtggattcttaagtcttc-3'」(配列番号4)を用いることができる。このプライマーセットによれば、プロトロンビン遺伝子のエクソン14を含む領域を増幅することができる。プライマーは、ホスホロアミダイト法、トリエステル法、等の公知の方法により合成することができる。むろん、プライマーをDNA自動合成機により合成してもよい。

【0021】
ダイレクトシークエンス法によるDNA配列決定は、例えば、ジデオキシ法を用いた自動DNAシークエンサーを使用することができる。

【0022】
また、PCRのプライマー部分にミスマッチがあるか否かを検出する方法を用いて標的変異位置の塩基の種類を決定することもできる。この場合、標的の変異位置の塩基を3’端に持つプライマーとすることにより、プライマー部分にミスマッチがあるとアニーリングがうまく行かず、PCR法の増幅ができなくなるので、標的の変異位置の塩基の種類を検出することができる。さらに、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブ(ASO)を利用して標的変異位置の塩基の種類を決定することもできる。オリゴヌクレオチドプローブが完全に相補的なDNAに対して安定なハイブリッドを形成するが、1塩基でもミスマッチがあると、前者よりも低い温度で解離しやすい性質がある。この性質を利用して、標的変異位置の塩基の種類を検出することができる。

【0023】
血栓症のリスクを判定するにあたって本発明では、例えば、(1)~(28)の中のいずれかを検出した場合(換言すれば、本発明において標的とする変異のいずれかを認めた場合)に血栓症のリスクが高い、との判定基準(判定基準1)を採用する。このように本発明では遺伝子解析の結果に基づきリスクを判定する。ここでの判定は、その判定基準から明らかな通り、医師や臨床検査技師など専門知識を有する者の判断によらずとも自動的/機械的に行うことができる。

【0024】
後述の実施例に示す通り、アンチトロンビン抵抗性は、(1)~(6)、(12)~(21)、(23)、(27)、(28)の変異を有する場合の方が、(7)~(11)、(24)、(26)の変異を有する場合よりも高くなる傾向を認めた。この事実に基づき、一態様では、(1)~(6)、(12)~(21)、(23)、(27)及び(28)の中のいずれかを検出した場合は血栓症のリスクが高く、(7)~(11)、(24)及び(26)の中のいずれかを検出した場合は血栓症のリスクが中程度である、との判定基準(判定基準2)を採用する。ここでの「中程度」は、健常人よりもリスクは高いものの、「高い」よりもリスクは低いことを意味する。即ち、この態様では、血栓症のリスクの高さとして、相対的な二つの区分が設けられることになる。従って、リスクの高さについて相対的な二つの区分であれば、「高い」と「中程度」に代えて、「非常に高い」と「高い」、「リスクのレベル10」と「リスクのレベル5」等、様々な評価区分を用いることができる。

【0025】
(1)~(6)の中のいずれか、(7)~(11)の中のいずれか、(12)~(15)の中のいずれか、(16)~(21)の中のいずれか、(22)~(28)の中のいずれか、からなる群より選択される二以上の変異を検出した場合に血栓症のリスクが高い、との判定基準(判定基準3)を採用することにしてもよい。即ち、二つ以上のアミノ酸置換を伴う変異を認めた場合に血栓症のリスクが特に高いと評価してもよい。この評価基準は上記二つの評価基準(判定基準1、2)の片方又は両方と併用することもできる。

【0026】
先の特許出願(特許文献1)で報告した通り、本願発明らは、上記(1)~(28)の変異とは別に(29) 1787位塩基のGからTへの変異(596番アミノ酸のArgからLeuへの置換)を同定している。そこで本発明の更なる一態様では、この変異(変異(29)と呼ぶ)も利用して被検者の血栓症のリスクを判定する。具体的には、例えば、(1)~(6)の中のいずれか、(7)~(11)の中のいずれか、(12)~(15)及び(29)の中のいずれか、(16)~(21)の中のいずれか、(22)~(29)の中のいずれか、からなる群より選択される二以上の変異を検出した場合に血栓症のリスクが特に高い、との判定基準(判定基準4)を採用する。この判定基準を判定基準1、2の片方又は両方と併用することにしてもよい。

【0027】
上記(1)~(29)の変異はいずれもアミノ酸置換を生ずる。従って、遺伝子発現産物であるタンパク質(プロトロンビン)を試料として変異の検出を行うことにしてもよい。この場合、標的変異位置に対応するアミノ酸を含んでいる限り、発現産物の大きさ(長さ)は特に限定されない。遺伝子発現産物を用いた検出方法としては、多型部位のアミノ酸を直接検出する方法、又は立体構造の変化を利用して免疫学的に分析する方法などが挙げられる。前者としては、例えば、周知のアミノ酸配列分析法(エドマン法を利用した方法)を用いることができる。後者としては、変異を含む遺伝子の発現産物に特異的な結合活性を有する抗体を用いた、ELISA法(酵素結合免疫吸着定量法)、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降法、免疫拡散法等などを用いることができる。

【0028】
標的(変異を含む遺伝子の発現産物)に対する抗体は免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することができる。標的に対する抗体はポリクローナルであってもモノクローナルであってもよい。免疫学的手法によるポリクローナル抗体の調製は次の手順で行うことができる。標的(又はその一部)を調製し、これを用いてウサギ等の動物に免疫を施す。標的(又はその一部)としては、生体材料から調製したもの(天然抗原)又は組換え抗原を用いることができる。免疫惹起作用を増強するために、キャリアタンパク質を結合させた抗原を用いてもよい。キャリアタンパク質としてはKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)、BSA(Bovine Serum Albumin)、OVA(Ovalbumin)などが使用される。キャリアタンパク質の結合にはカルボジイミド法、グルタールアルデヒド法、ジアゾ縮合法、MBS(マレイミドベンゾイルオキシコハク酸イミド)法などを使用できる。一方、GST、βガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク、又はヒスチジン(His)タグ等との融合タンパク質として発現させた抗原を用いることもできる。このような融合タンパク質は、汎用的な方法により簡便に精製することができる。

【0029】
本発明(後述のトロンビン不活化動態の測定方法においても同様)における被験者は特に限定されない。例えば、血栓症の患者、血栓症に罹患していることが疑われる者、血栓症を罹患することが予想される者、又は健常人が被検者となる。前二者についての判定結果はより適切な治療方針の決定に役立ち、治療効果の向上、患者のQOL(Quality of Life、生活の質)の向上を促す。一方、健常人についての判定結果は血栓症の予防や早期診断に役立つ。例えば、血栓症のリスクが高いとの情報に基づいて予防的措置や生活習慣の改善等を図れば、血栓症の発生可能性(罹患可能性)を低下させることができる。また、リスクが高いとの情報は血栓症の検診を受診させる契機となり、これによって血栓症の早期診断(早期発見)が可能となる。リスクの判定結果は治療薬の選択にも利用できる。例えば、リスクが高い(即ち変異型プロトロンビンを有し、アンチトロンビン抵抗性が高い)との判定結果であれば、抗血栓薬として抗トロンビン薬(トロンビンの作用を直接抑制する剤)を第1選択薬とし、リスクが高くない(即ち正常型プロトロンビンを有し、アンチトロンビン抵抗性は高くない)との判定結果であれば、ヘパリン製剤など、アンチトロンビンに結合してトロンビンへの結合を促進する薬剤を第1選択薬にすることができる、或いはアンチトロンビンを補充する療法を選択することができるといった、治療方針を想定できる。尚、ここでの「健常人」とは、本発明の方法を適用する時点において、血栓症に罹患しているとの判断が行われていない者のことをいう。

【0030】
家族背景などから血栓症の罹患リスクが高いと推定される者(高リスク者)も好適な被検者である。このような被検者に対して血栓症の症状が現れる前に本発明を適用することは、発症の阻止又は遅延或いは早期の治療介入を可能にする。血栓症の罹患リスクが高い者を特定する目的にも本発明は有用である。このような特定は、例えば、予防的措置や生活習慣の改善等による発症可能性(罹患可能性)の低下を可能にする。自覚症状がない者など、従来の診断では血栓症であるか否かの判定が不能又は困難な者も本発明の好適な被験者である。尚、健康診断の一項目として本発明を実施することにしてもよい。

【0031】
2.トロンビン不活化動態の測定方法
本発明の第2の局面はトロンビン不活化動態の測定方法に関する。先の特許出願(特許文献1)において本願発明者らは、血液凝固因子であるプロトロンビンの変異がその制御因子(アンチトロンビン)の作用を受けにくく、静脈血栓塞栓症の原因になるという新規の疾患概念「アンチトロンビン抵抗性」を提唱するとともに、「トロンビン不活化動態(アンチトロンビン抵抗性)」の測定方法を示した。本発明の測定方法は、新たに同定した変異(上記(1)~(28)の変異)を陽性コントロールに用いることで(特定の態様においては(29)の変異も併用する)測定精度や信頼性などを高めるものであり、以下の構成からなる。即ち、被検者の血漿に由来する成分を少なくとも含む試料にプロトロンビン活性化剤を加えてプロトロンビンをトロンビンに変換し、次に、正常トロンビンを不活化する凝固阻止因子を前記試料に加え、所定の反応時間後における前記試料の残存トロンビン活性を、以下の(1)~(29)から選択される二以上の陽性コントロールの値と比較して測定することを特徴とする測定方法である。
(1) 540番アミノ酸のAlaへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(2) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(3) 540番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(4) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(5) 540番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(6) 540番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(7) 541番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(8) 541番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(9) 541番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(10) 541番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(11) 541番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(12) 596番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(13) 596番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(14) 596番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(15) 596番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(16) 599番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(17) 599番アミノ酸のGluへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(18) 599番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(19) 599番アミノ酸のThrへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(20) 599番アミノ酸のArgへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(21) 599番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(22) 600番アミノ酸のAspへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(23) 600番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(24) 600番アミノ酸のHisへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(25) 600番アミノ酸のCysへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(26) 600番アミノ酸のPheへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(27) 600番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(28) 600番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性
(29) 596番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビンを使用した場合の残存トロンビン活性

【0032】
本発明の測定方法では、反応系を(A)トロンビン生成相、(B)凝固阻止因子によるトロンビン不活化相、(C)残存トロンビン活性測定相、の3相としている。

【0033】
ここで、トロンビン生成相(A)では、被検者の血漿に由来する成分を少なくとも含む試料にプロトロンビン活性化剤を加えてプロトロンビンをトロンビンに変換することとしている。トロンビン不活化相(B)では、正常トロンビンを不活化する凝固阻止因子を前記試料に加えることとしている。残存トロンビン活性測定相(C)では、所定の反応時間後における前記試料の残存トロンビン活性を正常値と比較して測定することとしている。ここで、残存トロンビン活性として、初期トロンビン活性等の基準化用トロンビン活性に対する相対的な残存トロンビン活性を用いることにしてもよい。

【0034】
トロンビン不活化相(B)の前にトロンビン生成相(A)を設けたことにより、試料中のプロトロンビンがトロンビンに変換される。その後に凝固阻止因子が試料に加えられるので、凝固阻止因子を加えることによりトロンビンの生成が阻害されることによる残存トロンビン活性への影響が抑制される。例えば、凝固阻止因子にアンチトロンビンを用いる場合、プロトロンビンをトロンビンに変換するプロトロンビナーゼ複合体の作用が阻害されても、既にプロトロンビンがトロンビンに変換されているので、プロトロンビナーゼ複合体が不活化されることによる残存トロンビン活性への影響が少なくなる。そのうえで、反応時間後における試料の残存トロンビン活性が測定される。従って、本測定方法によると、凝固因子として作用する一方で凝固阻止因子の不活化作用を受け難いという、従来血栓症の危険因子として認識されていなかった異常トロンビンを検出することができる。残存トロンビン活性値は、上記複数の陽性コントロールの値と比較されることになる。

【0035】
被検者の血漿に由来する成分を少なくとも含む試料には、血漿、血液、血漿又は血液の希釈液、血漿又は血液からプロトロンビンを除く一部の成分を除去したもの、この希釈液、等が含まれる。

【0036】
被検者における残存トロンビン活性の比較基準となる正常値は、一般には健常人における残存トロンビン活性に基づいた正常値とする。しかしながら、特定の変異(例えば上記(29)の変異)を有する人における残存トロンビン活性に基づいて得られる値、特定の変異を有する人及び健常人における残存トロンビン活性に基づいて得られる値、等でもよい。従って、正常値には、健常人の血液等(血漿を含む)を用いた試料から得られる残存トロンビン活性、この残存トロンビン活性に1よりも大きい補正係数を乗じた値、健常人における残存トロンビン活性の上限、この上限に1よりも大きい補正係数を乗じた値、上記(29)の変異を有する人における残存トロンビン活性の下限、この下限に0よりも大きく1よりも小さい補正係数を乗じた値、等が含まれる。

【0037】
血液等(好ましくは血漿)を希釈して試料とする場合、希釈液には、トリス緩衝液、塩化ナトリウムを加えたトリス緩衝液、リン酸緩衝液、等を用いることができる。緩衝液のpHは、7.0~9.0程度とすることができる。緩衝液の濃度は、1~500mM(mmol/L)程度とすることができる。塩化ナトリウムの濃度は、1~500mM程度とすることができる。試料の希釈倍率は、試料にプロトロンビン活性化剤を加えてからの所定の初期時間における試料の初期トロンビン活性を表す1分当たりの吸光度変化率ΔAbs/minが0.1~4程度、より好ましくは0.2~3程度、さらに好ましくは0.3~2程度とすることができる。残存トロンビン活性測定相(C)に用いる活性測定用試薬に合成基質を用いる場合、希釈倍率は、例えば10~500倍程度とすることができる。また、前記活性測定用試薬にフィブリノゲンを用いる場合、希釈倍率は、例えば2~100倍程度とすることができる。

【0038】
トロンビン生成相(A)に用いるプロトロンビン活性化剤は、プロトロンビンを活性型のトロンビンに変換するものであればよく、安定性の点で蛇毒に由来するプロトロンビン活性化剤(該プロトロンビン活性化剤を生成する遺伝子を導入した微生物等から生成されるプロトロンビン活性化剤を含む)が好ましいものの、第Xa因子と第Va因子の組合せ等でもよい。活性型の第Xa因子及び第Va因子を試験用試薬として用いる際には、高コストであること、不安定な物質であること、等の点を考慮する必要がある。

【0039】
蛇毒に由来するプロトロンビン活性化剤は、例えば、R. Manjunatha Kini、The intriguing world of prothrombin activators from snake venom、Toxicon 45 (2005) 1133-1145に記載されたプロトロンビンアクチベータ等を用いることができる。これらのプロトロンビンアクチベータの中では、凝固第Xa因子及び凝固第Va因子と同様の活性を持つことが報告され(Han Speijer、他3名、Prothrombin Activation by an Activator from the Venom of Oxyuranus scutellatus (Taipan Snake)、The Journal of Biological Chemistry、The American Society of Biological Chemists, Inc. (1986)、Vol. 261、No. 28、pp. 13258-13267も参照)プロトロンビンを速やかに活性化するオキシウラヌス・スクテラタス(Oxyuranus scutellatus)からの蛇毒に由来するプロトロンビンアクチベータが好ましいものの、Pseudonaja textilisからの蛇毒に由来するプロトロンビンアクチベータ(例えばpseutarin C)、等でもよい。また、Notechis scutatusからの蛇毒に由来するプロトロンビンアクチベータと凝固第Va因子との組合せ等をトロンビン生成相(A)に用いてもよい。

【0040】
プロトロンビン活性化剤を加えるときの試料の温度は、例えば、30~40℃程度、より好ましくは36~38℃程度とすることができる。プロトロンビン活性化剤の量は、プロトロンビンにプロトロンビン活性化剤を作用させる時間内にプロトロンビンをほぼ(例えば80%以上、より好ましくは90%以上)活性型のトロンビンに変換する量が好ましい。好ましい量は、プロトロンビン活性化剤の濃度を変えて初期トロンビン活性を表す吸光度変化率ΔAbs/minを測定したときにプロトロンビン活性化剤の量を多くしても吸光度変化率ΔAbs/minがほとんど変わらなくなる最低の量以上とすることができる。例えば、濃度-吸光度変化率のグラフの各軸に応じた閾値をTHΔAbs/C(ただしTHΔAbs/C>0)として、濃度Cにおける濃度-吸光度変化率のグラフの傾きの絶対値がTHΔAbs/C以下となる最低の濃度以上とすることができる。閾値THΔAbs/Cは、グラフの各軸のスケールに応じて適宜設定すればよい。

【0041】
オキシウラヌス・スクテラタスからの蛇毒に由来するプロトロンビンアクチベータ(以下、Ox由来プロトロンビンアクチベータとも記載)を用いる場合、プロトロンビンを良好に活性化させ高感度の測定結果を得る観点から、プロトロンビン活性化時の試料中におけるプロトロンビンアクチベータの濃度は、例えば0.003~0.086mg/ml程度(より好ましくは0.007~0.043mg/ml程度)とすることができる。また、血漿1ml当たりに用いるプロトロンビンアクチベータの量は、例えば0.5~12mg程度(より好ましくは1.0~6.0mg程度)とすることができる。

【0042】
試料にプロトロンビン活性化剤を加える前後に、必要に応じてリン脂質、カルシウムイオン、といった補助因子を試料に加えてもよい。リン脂質には、ウサギ脳由来セファリン、大豆由来セファリン、等を用いることができる。カルシウムイオンを出すカルシウム塩は、塩化カルシウムが好ましいものの、塩化カルシウム以外のハロゲン化塩、蟻酸塩、酢酸塩、等も用いることができる。

【0043】
Ox由来プロトロンビンアクチベータを用いる場合、リン脂質及びカルシウムイオンを併用するとプロトロンビン活性化が促進されるので好ましい。この場合、プロトロンビンを良好に活性化させ高感度の測定結果を得る観点から、リン脂質添加時の試料中におけるリン脂質の濃度は、例えば0.004~0.33mg/ml程度(より好ましくは0.008~0.167mg/ml程度)とすることができる。また、血漿1ml当たりに用いるリン脂質の量は、例えば0.5~40mg程度(より好ましくは1.0~20mg程度)とすることがきる。さらに、Ox由来プロトロンビンアクチベータ1mg当たりに用いるリン脂質の量は、例えば0.3~20mg程度(より好ましくは0.5~10mg程度)とすることができる。カルシウムイオン添加時の試料中におけるCa2+の濃度は、例えば0.42~8.3mM程度(より好ましくは0.83~4.2mM程度)とすることができる。また、血漿1ml当たりに用いるCa2+の量は、例えば0.05~1mmol程度(より好ましくは0.1~0.5mmol程度)とすることができる。さらに、Ox由来プロトロンビンアクチベータ1mg当たりに用いるCa2+の量は、例えば0.03~0.5mmol程度(より好ましくは0.05~0.25mmol程度)とすることができる。

【0044】
トロンビン不活化相(B)に用いる凝固阻止因子は、プロトロンビン活性化剤を作用させた後において試料に存在する活性型のトロンビンの作用を阻害するものであればよい。凝固阻止因子には、アンチトロンビン、アンチトロンビンとヘパリンの組合せ、アンチトロンビンとヘパラン硫酸の組合せ、トロンボモジュリン、アンチトロンビンとヘパリン類似の薬剤の組合せ、アンチトロンビンとヘパラン硫酸類似の薬剤の組合せ、合成抗トロンビン剤、等を用いることができる。アンチトロンビンには、血漿分画製剤等を用いることができる。ヘパリンには、ブタ腸粘膜など生物に由来するヘパリン等を用いることができる。ヘパラン硫酸には、ブタの小腸粘膜抽出物など生物に由来するヘパラン硫酸を用いることができる。

【0045】
凝固阻止因子を加えるときの試料の温度は、例えば、30~40℃程度、より好ましくは36~38℃程度とすることができる。凝固阻止因子の量は、正常トロンビンを含み異常トロンビンを含まない試料について、ある反応時間以上における試料の残存トロンビン活性が初期トロンビン活性と比べてほぼ無くなる(例えば初期トロンビン活性に対して10%以下、より好ましくは5%以下)量が好ましい。また、凝固因子として作用する異常トロンビンを含む試料について、前記反応時間以上における試料の残存トロンビン活性が比較的大きい(例えば初期トロンビン活性に対して15%以上、より好ましくは20%以上)反応時間があるような量が好ましい。

【0046】
凝固阻止因子にアンチトロンビンを用いる場合、正常トロンビンを良好に不活化させ高感度の測定結果を得る観点から、トロンビン不活化時の試料中におけるアンチトロンビンの濃度は、例えば1.9~19μg/ml程度(より好ましくは3.8~9.4μg/ml程度)とすることができる。また、血漿1ml当たりに用いるアンチトロンビンの量は、例えば0.3~3mg程度(より好ましくは0.6~1.5mg程度)とすることができる。

【0047】
試料に凝固阻止因子を加える前後に、必要に応じて補助因子を試料に加えてもよい。凝固阻止因子にアンチトロンビンを用いる場合、補助因子としてヘパリン又はヘパラン硫酸等を加えることも可能である。ヘパリンをアンチトロンビンとともに試料に加える場合、正常トロンビンを良好に不活化させ高感度の測定結果を得る観点から、トロンビン不活化時の試料中におけるヘパリンの濃度は、例えば0.2~2.5単位/ml程度(より好ましくは0.3~1.3単位/ml程度)とすることができる。また、血漿1ml当たりに用いるヘパリンの量は、例えば25~400単位程度(より好ましくは50~200単位程度)とすることができる。さらに、アンチトロンビン1mg当たりに用いるヘパリンの量は、例えば28~440単位程度(より好ましくは56~220単位程度)とすることができる。

【0048】
ヘパラン硫酸をアンチトロンビンとともに試料に加える場合、正常トロンビンを良好に不活化させ高感度の測定結果を得る観点から、トロンビン不活化時の試料中におけるヘパラン硫酸の濃度は、例えば0.4~6.3抗第Xa因子活性単位/ml程度(より好ましくは0.8~3.1抗第Xa因子活性単位/ml程度)とすることができる。また、血漿1ml当たりに用いるヘパラン硫酸の量は、例えば63~1000抗第Xa因子活性単位程度(より好ましくは125~500抗第Xa因子活性単位程度)とすることができる。さらに、アンチトロンビン1mg当たりに用いるヘパラン硫酸の量は、例えば42~670抗第Xa因子活性単位程度(より好ましくは83~330抗第Xa因子活性単位程度)とすることができる。

【0049】
残存トロンビン活性測定相(C)に用いる活性測定用試薬は、試料中に残存するトロンビンの活性を測定可能なものであればよく、トロンビンに対して感受性を有する合成基質、フィブリノゲン、等を用いることができる。合成基質には、トロンビンに対して特異性の高いS-2238(H-D-フェニルアラニル-L-ピピコリル-L-アルギニン-p-ニトロアニリドジヒドロ塩化物、H-D-phenylalanyl-L-pipicolyl-L-arginine-p-nitroanilide dihydrochloride)といった発色性合成基質等を用いることができる。臨床応用を考慮すると、静脈血栓症の患者にはビタミンK拮抗剤が投与されることが多い。この場合、プロトロンビン、凝固第X因子など、ビタミンK依存性凝固因子の生合成が抑制されるので、高感度測定系が好ましい。合成基質は、残存トロンビン活性を高感度で測定することができるので、好ましい。活性測定用試薬を加えるときの試料の温度は、例えば、30~40℃程度、より好ましくは36~38℃程度とすることができる。

【0050】
合成基質の濃度は、試料に合成基質を加えてから吸光度変化率を測定する時間内(例えば10~30秒内程度)でほぼ直線的に吸光度が変化する濃度が好ましい。活性測定用試薬に発色性合成基質S-2238を用いる場合、高感度の測定結果を得る観点から、発色時の試料中におけるS-2238の濃度は、例えば0.1mM以上とすることができる。S-2238の濃度の上限は特にないが、コストを考慮して、例えば0.4mM以下(より好ましくは0.2mM以下)とすることができる。また、血漿1ml当たりに用いるS-2238の量は、例えば0.02mmol以上、0.08mmol以下(より好ましくは0.04mmol以下)とすることができる。試料に活性測定用試薬を加える前後に、必要に応じて補助因子を試料に加えてもよい。

【0051】
残存トロンビン活性を吸光度変化率により測定する場合、例えば、試料に活性測定用試薬を加えてからなるべく早い段階で測定開始時間Ts(分、例えば0~10秒程度)とTsよりも後の測定終了時間Te(分、例えば10~30秒程度)とで試料の吸光度ΔAbsTs,ΔAbsTeを測定すればよい。この測定法はいわゆる初速度法であり、得られるΔAbs/min=(ΔAbsTe-ΔAbsTs)/(Te-Ts)は残存トロンビン活性を表す吸光度変化率となる。むろん、残存トロンビン活性を測定するために、上述した測定方法以外の方法で測定してもよい。

【0052】
所定の反応時間(例えば5分~60分)後に残存トロンビン活性を測定することにしても、複数の反応時間を設定し、それぞれの時間において残存トロンビン活性を測定することにしてもよい。後者の場合には、残存トロンビン活性の経時的変化を調べることができる。

【0053】
残存トロンビン活性が高いこと、残存トロンビン活性が高い状態が継続することは、異常トロンビンが被検試料に含まれていることを示し、被検者が変異型プロトロンビンを有しており、血栓症に罹りやすいことの判断材料となる。本発明では、複数の陽性コントロールを併用し、その値と比較して測定・評価する。複数の陽性コントロールを併用することは評価の精度や信頼性を高める。尚、通常は、陽性コントロールに加え、陰性コントロールの値(正常値)とも比較して測定・評価することになる。

【0054】
本発明において比較に用いる陽性コントロールの値は、各変異に対応する変異型プロトロンビンを含む試料を使用して予め求めておけばよい。変異型プロトロンビンにはリコンビナント又は生体から精製したものを用いることができる。正常値についても同様であり、正常型(野生型)プロトロンビン(リコンビナント又は生体から精製したもの)を用いて予め求めておけばよい。

【0055】
基本的には、使用する陽性コントールの種類を増やすことは、測定・評価の精度や信頼性向上に対して有利に働く。しかしながら、より簡便な測定方法を実現するために、陽性コントロールの種類を限定することにしてもよい。後述の実施例に示すように、変異の中には、同様の不活化動態を示すものがあり、変異を大別して二つの群、即ち、残存活性が極めて高い状態を長時間にわたって維持するもの(第1の群:(1)~(6)、(12)~(21)、(23)、(27)、(28)、(9))と、正常値に比べれば残存トロンビン活性は高いものの、経時的な残存トロンビン活性の低下を認めるもの(第2の群:(7)~(11)、(24)、(26))に分類できることが判明した。そこで、陽性コントロールの種類を低減させる場合には、第1の群から選択される陽性コントロールを少なくとも一つと、第2の群から選択される陽性コントロールを少なくとも一つ含めるとよい。

【0056】
ここで、被検者(患者)にビタミンK拮抗剤が投与されていると、初期の残存トロンビン活性が下がってしまう。この場合、所定の初期時間における試料の初期トロンビン活性(基準化用トロンビン活性)を測定し、該初期トロンビン活性に対する相対的な残存トロンビン活性を用いることが好ましい。

【0057】
また、凝固阻止因子を試料に加えたときの残存トロンビン活性を基準化するための基準化用トロンビン活性は、上述した初期トロンビン活性以外にも考えられる。例えば、試料にプロトロンビン活性化剤を加えてプロトロンビンをトロンビンに変換した後に凝固阻止因子を試料に加えずに測定するトロンビン活性を基準化用トロンビン活性としてもよい。基準化用トロンビン活性の測定は、残存トロンビン活性を測定する際の各反応時間経過後に行ってもよい。

【0058】
以上説明したようにして凝固阻止因子を試料に加えてからの残存トロンビン活性の経時的変化を見ると、トロンビンが生成されるまでの過程の影響を少なくしてトロンビン不活化動態を解析することができる。

【0059】
トロンビン不活化動態を測定するために必要な試薬セットを測定キットとして用意しておけば、凝固因子として作用する一方で凝固阻止因子の不活化作用を受け難いという、異常トロンビンを検出するために有用である。この測定キットには、以下の試薬が含まれていればよい。
(i)被検者の血漿に由来する成分を少なくとも含む試料に加えてプロトロンビンをトロンビンに変換するためのプロトロンビン活性化剤。
(ii)正常トロンビンを不活化する凝固阻止因子であって前記プロトロンビン活性化剤を加えた後に前記試料に加えるための凝固阻止因子。
(iii)所定の反応時間後における前記試料の残存トロンビン活性を測定するためのトロンビン活性測定用試薬。
(iv)(1) 540番アミノ酸のAlaへの置換を含む変異型プロトロンビン、(2) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(3) 540番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(4) 540番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(5) 540番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(6) 540番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビン、(7) 541番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビン、(8) 541番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビン、(9) 541番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(10) 541番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビン、(11) 541番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(12) 596番アミノ酸のTrpへの置換を含む変異型プロトロンビン、(13) 596番アミノ酸のGlyへの置換を含む変異型プロトロンビン、(14) 596番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(15) 596番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(16) 599番アミノ酸のGlnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(17) 599番アミノ酸のGluへの置換を含む変異型プロトロンビン、(18) 599番アミノ酸のIleへの置換を含む変異型プロトロンビン、(19) 599番アミノ酸のThrへの置換を含む変異型プロトロンビン、(20) 599番アミノ酸のArgへの置換を含む変異型プロトロンビン、(21) 599番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(22) 600番アミノ酸のAspへの置換を含む変異型プロトロンビン、(23) 600番アミノ酸のAsnへの置換を含む変異型プロトロンビン、(24) 600番アミノ酸のHisへの置換を含む変異型プロトロンビン、(25) 600番アミノ酸のCysへの置換を含む変異型プロトロンビン、(26) 600番アミノ酸のPheへの置換を含む変異型プロトロンビン、(27) 600番アミノ酸のSerへの置換を含む変異型プロトロンビン、(28) 600番アミノ酸のProへの置換を含む変異型プロトロンビン、(29) 596番アミノ酸のLeuへの置換を含む変異型プロトロンビンからなる群より選択される二以上の変異型プロトロンビン。

【0060】
本発明のキットには、通常、取り扱い説明書が添付される。本発明の測定方法を実施する際に使用するその他の試薬及び/又は装置ないし器具をキットに含めてもよい。
【実施例】
【0061】
アンチトロンビン抵抗性を呈する変異を同定する目的の下、遺伝子工学的技術を用いて種々の変異体を作成し、本願発明者らが開発した測定法(特許文献1)を用いて解析を試みた。まず、プロトロンビンにおける540番アミノ酸残基、541番アミノ酸残基、596番アミノ酸残基、599番アミノ酸残基、600番アミノ酸残基の変異(置換)について各種変異体(リコンビナント変異型プロトロンビン)を作成した。そして、健常人由来のプロトロンビン欠乏血漿(プロトロンビンのみを除去した血漿)にリコンビナント変異型プロトロンビンを添加することにより、変異型(異常)プロトロンビン患者血漿モデル血漿を構成し、アンチトロンビン抵抗性検出法(特許文献1)により解析した。作成した変異型プロトロンビン(変異型(1)~(29))は図1~5に示した通りである。尚、実験方法及び実験結果は以下で詳述する。
【実施例】
【0062】
1.リコンビナント変異型プロトロンビンの作成方法
市販のヒト肝cDNAライブラリー(Clontech社製Human Liver 5’-STRETCH PLUS cDNA Library)から野生型(正常)プロトロンビンcDNAをPCR法(東洋紡績株式会社製KOD FXを使用)により増幅した。得られたPCR増幅フラグメントをQIAGEN社製QIAEX II Gel Extraction Kitにより精製した。精製されたPCR増幅フラグメントを制限酵素Kpn I及びEcoR Iで二重切断し、Kpn I及びEcoR Iで二重切断したpBluescript II KS+クローニング用ベクターに組み込んだ。得られたベクターで大腸菌DH5αを形質転換した後、Ampicilline加LB寒天平板に塗布後14~16時間培養した。得られたコロニーをLB培地中で37℃、14~16時間培養した。得られた菌体からプラスミドを精製しインサート部分の野生型プロトロンビンcDNAの塩基配列を確認した。
【実施例】
【0063】
得られた野生型プロトロンビンcDNAを鋳型にoverlap extension PCR法により、種々の変異型(異常)プロトロンビンcDNA断片を得た。
【実施例】
【0064】
野生型/変異型プロトロンビン各cDNAクローンをKpn I及びEcoR Iで二重切断し、Kpn I及びEcoR Iで二重切断したpcDNA3.1哺乳動物細胞用発現ベクターに組み込んだ。野生型プロトロンビンあるいは変異型プロトロンビン発現ベクターをHEK293細胞にリン酸カルシウム法により遺伝子導入した。培養液にG-418を添加して培養液中のG-418濃度を段階的に増やして最終濃度を700μg/mlとし、ネオマイシン耐性株を10~20クローン分離し、各クローンの培養上清中に分泌される野生型/変異型プロトロンビンの量をドットブロット法によりスクリーニングして野生型プロトロンビン及び変異型プロトロンビン安定発現細胞株を樹立した。野生型あるいは変異型プロトロンビン安定発現細胞株を10%ウシ胎児血清加Dulbecco's MEMにて37℃で、5%CO2、100%湿度の条件で培養した。リコンビナントプロトロンビン回収開始前日から培養液に5μg/mlにビタミンKを添加した。ウシ胎児血清を含まないDulbecco's MEM(ビタミンK含有)にて5%CO2、100%湿度の条件で24~48時間培養した。培養上清を限外濾過により濃縮し、リコンビナントプロトロンビンを回収した。
【実施例】
【0065】
2.トロンビン不活化動態測定方法
図6は、プロトロンビン活性化剤にOx由来プロトロンビンアクチベータを用い、凝固阻止因子にアンチトロンビン(ヘパリン無し)を用い、活性測定用試薬に発色性合成基質S-2238を用いた場合の残存トロンビン活性測定方法を示している。この測定方法は、被検試料の種類毎に、アンチトロンビン溶液(AT溶液)を添加してからの各反応時間(0分、10分、20分、30分)について行われる。
【実施例】
【0066】
最終的に、被検試料には末梢血の血漿、又は回収リコンビナントプロトロンビンを用い、被検試料の希釈液に0.2MのNaClを入れた50mMトリス塩酸pH8.1を用い、希釈倍率を100倍とした。また、Ox由来プロトロンビンアクチベータにシグマアルドリッチ社V3129を使用し、リン脂質にロシュ・ダイアグノスティックス株式会社のPTT試薬「RD」のビン2:セファリンを用い、アンチトロンビンに株式会社ベネシス製造(田辺三菱製薬株式会社販売)の血漿分画製剤である血液凝固阻止剤ノイアート(登録商標)静注用を使用し、S-2238にクロモジェニックス社製造(積水メディカル株式会社販売)発色性合成基質を使用した。AT溶液は、生理的食塩水にアンチトロンビンを加えて75μg/ml(血漿1ml当たりのアンチトロンビンの量は1.5mg)とした。回収リコンビナントプロトロンビンの使用量は、生成されるトロンビンの活性により調整して健常人プール血漿に相当する量とした。試料に用いる血漿の量が5μlであるので、回収リコンビナントプロトロンビンの使用量は健常人プール血漿5μlに相当するトロンビン活性となる量に調整した。
【実施例】
【0067】
3.各種変異型プロトロンビンのトロンビン不活化動態
各変異型プロトロンビンを希釈した試料を用い、トロンビン不活化動態を上記測定方法で測定した。測定結果を図7~9に示す。陰性コントロール(健常人血漿)では急速にトロンビンが不活化されているのに対し、540番アミノ酸の変異を伴う変異型プロトロンビンはいずれも、30分経過した時点においても残存トロンビン活性に殆ど変化は認められず、強いアンチトロンビン抵抗性を呈することがわかる(図7)。また、541番アミノ酸の変異を伴う変異型プロトロンビンの場合は、次第に残存トロンビン活性が低下するものの、その変化の割合は野生型プロトロンビンに比較して小さく、アンチトロンビン抵抗性を示している(図7)。
【実施例】
【0068】
一方、596番アミノ酸の変異を伴う変異型プロトロンビン及び599番アミノ酸の変異を伴う変異型プロトロンビンについても、残存トロンビン活性の低下は殆ど見られず、強いアンチトロンビン抵抗性を示した(図8)。
【実施例】
【0069】
600番アミノ酸の変異を伴う変異型プロトロンビンの場合は、アンチトロンビン抵抗性が強いもの(600Asn、600Ser、600Pro)と弱いもの(600His、600Phe)が認められた(図9)。
【実施例】
【0070】
以上の通り、実験に供した変異型プロトロンビンは全てアンチトロンビン抵抗性を示した。換言すれば、アンチトロンビン抵抗性を示す新たな変異を同定することに成功した。これらの変異は血栓症のリスクを評価する上で有用である。即ち、これらの変異の検出結果は、血栓症に罹りやすいか否かを判定するための有益な情報となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は血栓症に関して精度や信頼性の高いリスク情報(発症可能性に関する情報)を与える。リスク情報は、血栓症の予防や早期診断、より適切な治療方針の決定、治療効果の向上、患者のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上などに役立つ。静脈血栓症、肺塞栓症の遺伝的リスクを発症前に測定できることは広く国民の健康・福祉にとって有意義である。
【0072】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【配列表フリ-テキスト】
【0073】
配列番号3:人工配列の説明:プライマー
配列番号4:人工配列の説明:プライマー
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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