TOP > 国内特許検索 > 抗酸化活性が増強した液化麹の製造方法 > 明細書

明細書 :抗酸化活性が増強した液化麹の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5880856号 (P5880856)
公開番号 特開2013-252125 (P2013-252125A)
登録日 平成28年2月12日(2016.2.12)
発行日 平成28年3月9日(2016.3.9)
公開日 平成25年12月19日(2013.12.19)
発明の名称または考案の名称 抗酸化活性が増強した液化麹の製造方法
国際特許分類 A23L  33/10        (2016.01)
A61K   8/99        (2006.01)
A61K  35/74        (2015.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  39/06        (2006.01)
C12P   1/02        (2006.01)
FI A23L 1/30 Z
A61K 8/99
A61K 35/74 C
A61P 25/28
A61P 39/06
C12P 1/02 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2012-155588 (P2012-155588)
出願日 平成24年7月11日(2012.7.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成24年3月30日国立大学法人鹿児島大学により掲載されたURL:http://chem.agri.kagoshima-u.ac.jp/Shochu_new/index.htmlで発表
特許法第30条第2項適用 平成23年10月5日日本醸造学会主催の平成23年度日本醸造学会大会で発表
特許法第30条第2項適用 平成23年12月3日The Society for Biotechnology,Japanにより発行されたJournal of Bioscience and Bioengineering Vol.113 No.3 P.349~354で発表
優先権出願番号 2012062067
優先日 平成24年3月19日(2012.3.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年10月7日(2014.10.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】鮫島 吉廣
【氏名】叶内 宏明
【氏名】高峯 和則
【氏名】吉▲崎▼ 由美子
【氏名】桑元 康平
【氏名】奥津 果優
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
審査官 【審査官】小金井 悟
参考文献・文献 特公昭37-013743(JP,B1)
特開2009-155258(JP,A)
米国特許第06045819(US,A)
特開2002-330723(JP,A)
Biosci. Biotechnol. Biochem.,2008年 6月,Vol.72, No.6,p.1580-1585
調査した分野 A23L 1/27 - 1/308
Google
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
麹を50℃~60℃の温度で1~3日間加熱処理する工程、続いて70℃~80℃の温度で4~6日間加熱処理する工程を含む、抗酸化活性が増強した液化麹の製造方法。
【請求項2】
50℃~60℃の加熱処理を2日間行い、70℃~80℃の加熱処理を5日間行う、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記麹が、乾燥麹と水の当量混合物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記麹が、白麹、黄麹、および黒麹からなる群より選択される、請求項1~のいずれかに記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化活性が増強した液化麹およびその製造方法、該液化麹を含む抗酸化剤、ならびに機能性食品などの各種組成物に関する。本発明はまた、麹または液化麹を有効成分として含む認知症の治療及び/又は予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の伝統的な清酒、焼酎、味噌、醤油などの発酵食品には、抗酸化作用をはじめとした多くの機能性があることが近年明らかにされている。その機能性成分の多くは「麹」由来の酵素反応や、それに続く加熱や貯蔵中におこるメイラード反応により生成することが報告されている(非特許文献1、2等)。
【0003】
また、麹は糖化酵素をはじめとする酵素の生産により発酵の安全に寄与し、香味の付与に大きく貢献している。そのため、麹づくり(製麹)はそれぞれの発酵食品の最終製品に適した方法により行われている。たとえば清酒においては麹の温度を徐々に高め最終的に約40℃にすることにより清酒醸造に適した酵素の生産を促すのに対し、本格焼酎においては約37℃で麹が増殖した段階で約35℃に温度を下げ、クエン酸の生成を促すなどの違いが見られる。このように、製麹段階では、原料を糖化・液化するための酵素生成や、もろみを腐敗から守るクエン酸生成を行なうことに主眼が置かれており、抗酸化性などの機能性を高めることは意図されていない。また、製麹期間は、麹菌体の過剰な増殖は生産性の低下、風味への悪影響をもたらすことから通常は2日程度である。
【0004】
製麹で得られた麹は、その後、発酵食品の種類によって用い方は異なるが、一般的には、水および酵母と混合し、発酵させてもろみとし、これに主原料(蒸米、麦、甘藷など)を仕込んで発酵、熟成させる。従って、製麹に続いて麹の機能性を高める加工処理を施すことは通常の発酵食品の製造においては行なわれていない。
【0005】
これまで機能性飲食品や医薬品の製造過程で麹に加熱が行われている例はある。例えば、特許文献1は紫芋に米麹を加えて50~70℃で18~28時間発酵させた紫芋発酵液を主成分とする脳保護作用剤を開示するが、その機能性は紫芋に由来するものであり、米麹は甘みの増強に寄与しているのみである。また、特許文献2は米粉砕物に麹を加え55℃16時間放置した後、固液分離により得たろ液を85℃で30分加熱したものを有効成分とするがん細胞休眠剤を開示するが、麹は糖化のために使用され、後半の高温加熱は殺菌を目的としたものである。よって、これらの例はいずれも加熱処理は、製麹後の麹を他の澱粉材料に混合してから行われており、製麹の麹をそのまま加熱処理に供したものではない。一方、特許文献3には、黒米由来のアントシアニンを含む組成物の製造方法が開示されており、その製造工程において製麹後の麹に水を加えて糖化液を製造する工程が含まれるが、糖化温度と時間は50~60℃、10~20時間が好ましいとされており、その後に酵素失活と殺菌のために80~100℃の高温加熱が行なわれているが、時間は10分程度にすぎない。
【0006】
従って、麹を用いる発酵食品には抗酸化活性をはじめとする多くの機能性があることは知られているが、麹そのものを機能性食品素材として捉えた研究は少なく、また、これまで加熱処理と麹の抗酸化作用の増強との関係については報告するものはない。
【0007】
一方、認知症は、年齢が上がるにつれて発症率が高くなると言われており、今後、ますます高齢化社会が進むにつれて、認知症への対応が大きな課題となっている。認知症への取り組みとしては、まず早期に発見し、適切な診断・治療を行なうことによって症状の進行を遅らせること、認知症発症の予防に努めることが大切である。認知症は、加齢や脳の疾患など種々の原因により、脳の細胞が死んでしまい、学習・記憶能力や判断力などの脳機能が低下するために様々な障害がおこり、日常生活に支障をきたす状態をいう。認知症の中でもアルツハイマー型は過半数を占め、レビー小体型や脳血管型がこれに次ぐ。アルツハイマー型認知症は、新しい記憶が一時保存される「海馬」が損傷するために新しい物事を忘れるという症状が現れる。また、脳神経細胞中のミトコンドリアで発生する活性酸素や過酸化脂質による酸化ストレスは、年齢とともに増加し、神経細胞損傷や老化を加速化する。酸化ストレスはアルツハイマー型認知症の原因となることがわかっており、脳の酸化ストレスを軽減できる優れた抗酸化物質が発見できれば、認知機能低下を抑制でき、認知症を改善できることが期待される。これまで、アルツハイマー型認知症の治療薬としては、代表的にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(塩酸ドネペシルなど)のほか、非ステロイド系抗炎症薬、β-セクレターゼ阻害薬などがある。また、日常的に摂取してアルツハイマー型認知症を防ぎ、進行を遅らせる効果が報告される野菜や果物等の天然由来成分としては、ウコンに含まれるクルクミン、葡萄に含まれるレスベラトール、米ぬかに含まれるフェルラ酸、イチョウの葉エキスなどがあるが、麹については知られていない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-292747
【特許文献2】特開2006-117575
【特許文献3】特開2010-154768
【0009】

【非特許文献1】Ikeda, R. et al. Changes of Isoflavones at various stages of fermentation in defatted soybeans. Journal of the Japanese Society for Food Science and Technolody (NipponShokuhin Kagaku Kaishi), 42, 322-327 (1995)
【非特許文献2】Hayase, F. et al., Maillard reaction products: safety and physiologic effects. Commun. Agric. Food Chem. 3, 111-128 (1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、発酵食品の機能性成分である麹の抗酸化活性を高め、麹自体を機能性食品などの素材として利用すること、および麹の新たな機能を見出すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、麹を特定の条件で加熱処理するという簡潔な手法で、麹中のスーパーオキシドアニオンラジカル消去能 (SOSA)及び酸素ラジカル吸収能(ORAC)が飛躍的に上昇するとともに、抗酸化物質である5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)含量が増加することを確認し、抗酸化活性が増強されるという知見を得た。
【0012】
本発明者らはまた、麹の新たな機能性の発見と評価を目的として、老化促進マウスに米麹または液化麹を摂取させたところ、当該マウスの学習・記憶能力が亢進し、脳のアミロイドβ蓄積が減少することを確認し、麹に認知症改善効果があることを見出した。
本発明はかかる知見をもとに完成されたものである。
【0013】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 麹を50℃~60℃の温度で6~8日間加熱処理する工程を含む、抗酸化活性が増強した液化麹の製造方法。
(2) 麹を50℃~60℃の温度で1~3日間加熱処理する工程、続いて70℃~80℃の温度で4~6日間加熱処理する工程を含む、抗酸化活性が増強した液化麹の製造方法。
(3) 50℃~60℃の加熱処理を2日間行い、70℃~80℃の加熱処理を5日間行う、(2)に記載の製造方法。
(4) 前記麹が、乾燥麹と水の当量混合物である、(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5) 前記麹が、白麹、黄麹、および黒麹からなる群より選択される、(1)~(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6) (1)~(5)のいずれかに記載の製造方法によって得られる抗酸化活性が増強した液化麹。
【0014】
(7) (6)に記載の液化麹を含む、抗酸化剤。
(8) (7)に記載の抗酸化剤を含む、飲食品。
(9) 前記飲食品が、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品である、(8)に記載の飲食品。
(10) (7)に記載の抗酸化剤を含む、医薬品、医薬部外品、または化粧品。
(11) 麹または液化麹を有効成分として含有する認知症の治療及び/又は予防剤。
(12) 液化麹が、(1)~(5)のいずれかに記載の製造方法によって得られる液化麹である、(11)に記載の認知症の治療及び/又は予防剤。
(13) 認知症が、酸化ストレスに起因する認知症である、(11)または(12)に記載の認知症の治療及び/又は予防剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法によれば、加熱処理という簡便な操作のみで麹の抗酸化活性を飛躍的に向上させることできる。本発明により得られる抗酸化活性が増強した液化麹は、抗酸化剤として機能性食品や医薬品等の機能性素材として有用である。また、当該液化麹は、学習・記憶能力を亢進し、脳のアミロイドβ蓄積を減少させることができるため、認知症の改善及び/又は予防に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】55℃で加熱処理した麹の粘度および吸光度(400nm)の経時変化を示す(棒グラフ:吸光度、折れ線グラフ:粘度)。
【図2】55℃で加熱処理した麹および75℃で加熱処理した麹のグルコース含量の経時変化(図2A)およびアミノ窒素含量の経時変化(図2B)を示す。エラーバーは、3回の試験の標準偏差を示し、数値は平均の標準偏差値(n=3)を示す。
【図3】二段階法(55℃、75℃)で加熱処理した麹の総フェノール含量(TPC)及び5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)含量の経時変化(図3A)、およびスーパーオキシドラジカル消去能(SOSA)及び酸素ラジカル吸収能(ORAC)の経時変化(図3B)を示す。エラーバーは、3回の試験の標準偏差を示す。
【図4】マウスの給餌およびモリス水迷路実験のスケジュールを示す。
【図5】モリス水迷路実験用プールの断面図(図5A)および平面図(図5B)を示す。
【図6】各試験群(SAMR1/CE-2群、SAMP8/CE-2群、SAMP8/CE-2+麹群、SAMP8/CE-2+液化麹群)のマウスのモリス水迷路実験におけるプラットホーム到達時間の経時変化を示す(異なる文字間は有意差(p<0.5)あり)。【図8】各試験群(SAMR1/CE-2群、SAMP8/CE-2群、SAMP8/CE-2+麹群、SAMP8/CE-2+液化麹群)のマウスの脳・海馬組織切片のアミロイド染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明について詳細に述べる。
本発明の抗酸化活性が増強した液化麹の製造方法は、麹の加熱処理を一定の温度条件下で行なう。

【0018】
第1の方法は、麹の加熱を一段階で行なう方法(一段階法)で、この方法では麹を50℃~60℃で6~8日間加熱処理する。

【0019】
第2の方法は、麹の加熱を二段階で行なう方法(二段階法)で、この方法では麹を50℃~60℃の温度で1~3日間加熱処理し、続いて70℃~80℃の温度で4~6日間加熱処理する。

【0020】
一段階法または二段階法のいずれによっても未加熱麹よりも優れた抗酸化作用を有する麹が得られるが、抗酸化作用がより増強した麹が得られる上で二段階法が好ましい。

【0021】
加熱処理の温度および時間は上記の範囲で適宜変更することができる。一段階法および二段階法の前段の加熱温度は50℃~60℃であればよく、54~56℃が好ましく、55℃がより好ましい。また、二段階法の後段の加熱温度は70℃~80℃であればよく、74~76℃が好ましく、75℃がより好ましい。

【0022】
本発明方法の最も好ましい加熱条件は、55℃で2日間、続いて75℃で5日間行うことである。

【0023】
加熱処理は、断熱密閉容器等の温度調節機能のついた当分野で常套的に用いられる穀類の液化装置を用いて行なえばよい。

【0024】
本発明に用いる麹の原料は、米、麦、芋、豆類等のいずれでもよいが、酵素生産性や製麹の容易性の観点から、米が好ましい。

【0025】
また、麹の種類としては、製麹の際に上記原料に添加する麹菌の種類により黄麹、黒麹、白麹等があり、これらのいずれもよいが、クエン酸の生成やHMF生産性の点から白麹が望ましい。

【0026】
麹の調製(製麹)は、原料に応じて通常の方法で行なえばよい。例えば、米麹の場合、
蒸米を浸漬後蒸煮し、冷却後、白麹菌(Aspergillus kawachii)、黄麹菌(Aspergillus oryzae)、黒麹菌(Aspergillus awamori)などの麹菌の胞子(種麹)を接菌し、37℃程度に維持し、仲仕事を経て仕舞い仕事のあと35℃程度に維持し、クエン酸の生成を図り、種掛け後約40時間後に出麹とする。

【0027】
上記の製麹で得られた麹はそのまま加熱処理に供することもできるが、長期保存するときは凍結乾燥等で、乾燥麹とする。乾燥麹を用いる場合は、加熱処理は、乾燥麹に水、好ましくは55℃程度の湯を加えた混合物に対して行なう。乾燥麹と水との混合割合は等量であることが好ましい。乾燥麹に対して水が多すぎると成分が希釈され所望の抗酸化活性が得られず、後で濃縮工程が必要になる場合がある。また、水が過剰であると微生物汚染により腐敗する恐れがある。一方、乾燥麹に対して水が少なすぎると液化が進行しづらいために機能性成分の生成が少なくなってしまう。

【0028】
上記の麹の加熱処理により得られる液化麹は、未処理の麹に比べてスーパーオキシドラジカル消去能(SOSA)及び酸素ラジカル吸収能(ORAC)が有意に増加し、優れた抗酸化作用を有する。したがって、上記の液化麹は、抗酸化剤として使用できる。

【0029】
本発明の抗酸化剤は、そのまま用いることも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を配合し、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品等の各種組成物として提供することが好ましい。

【0030】
本発明において、飲食品とは、ヒトが摂取するための飲食品をいい、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品を含む意味で用いられる。

【0031】
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。

【0032】
飲食品の種類としては、具体的には、食パン、菓子パン等のパン類;そば、うどん、中華麺等の麺類;菓子類;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;かまぼこ、ちくわ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;しょうゆ、ソース、焼肉のたれ、酢、みりん等の調味料;清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む)が挙げられるが、これらに限定はされない。

【0033】
また、本発明の飲食品には麹を本来利用する発酵食品も含まれることはいうまでもない。
本発明の製造方法で得られた液化麹を用いて清酒を製造する場合は、酒母やもろみの仕込み段階において、焼酎を製造する場合にはもろみの仕込み段階において、醤油を製造する場合は、盛り込みの段階において、味噌を製造する場合には、仕込みの段階において、通常の麹に代えて用いることができる。

【0034】
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、砂糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、澱粉等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。

【0035】
本発明の飲食品における液化麹の配合量は、その抗酸化作用が発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性およびコストなどを考慮して適宜設定すればよい。

【0036】
また、本発明の飲食品は、顕著な抗酸化作用、すなわち、活性酸素消去作用を有するので、生体内に存在する活性酸素に起因して生じる各種の疾患や障害の予防または改善にも有効である。活性酸素に起因して生じる各種の疾患や障害としては、例えば、動脈硬化や心筋梗塞などの循環器系疾患、胃・十二指腸潰瘍・胃粘膜障害、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸炎などの消化器官系疾患、薬物や有害物質による肝障害、虚血性再灌流障害、糖尿病の合併症、白内障や加齢黄斑変性などの眼科疾患、シミ・シワなどの皮膚の変性、歯周病などの炎症性疾患、癌、老化などが挙げられる。

【0037】
また、本発明の抗酸化剤を医薬品として提供する場合は、医薬上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した適当な添加剤(例えば担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤等)を用いて、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。

【0038】
本発明の医薬品は、経口または非経口的に投与することができるが、好ましくは経口投与である。本発明の医薬品を経口投与する場合は、錠剤(糖衣錠を含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁液剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬品を非経口投与する場合は、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、坐剤などに製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。製剤化に当たっては、本発明の上記有効成分以外の1種以上の有効成分を更に配合してもよい。

【0039】
本発明の医薬品は、有効成分である液化麹が天然物由来であるため、安全性が高く副作用がないため、前述の活性酸素に起因して生じる各種疾患や障害の予防及び/又は治療用医薬として用いることができる。本発明の医薬品は、前述の各疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して経口または非経口的に安全に投与することができる。

【0040】
本発明の医薬品の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができる。通常、成人1日当たり、液化麹として、10mg~10g、好ましくは50mg~5g、より好ましくは100mg~1gとなる量を、一日一回ないし数回投与する。

【0041】
また、本発明の抗酸化剤は、医薬品のみならず、医薬部外品や化粧品にも配合できる。医薬部外品や化粧品としては、皮膚外用組成物が好ましく、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系等のいずれの剤型でもよい。皮膚外用組成物の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー等が挙げられるが、これらに限定はされない。

【0042】
上記医薬部外品や化粧品は、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。

【0043】
本発明の医薬部外品または化粧品における液化麹の配合量は、所望の抗酸化作用が発揮できる量であればよいが、対象製品の一般的な使用量、製品の形態、効能・効果、及びコストなどを考慮して適宜設定すればよい。

【0044】
さらに、麹または上記の加熱処理により得られる液化麹は、学習・記憶能向上作用、脳のアミロイドβ蓄積量の減少作用をも有する。したがって、麹または液化麹は、認知症の治療及び/又は予防剤として使用できる。

【0045】
本明細書において「認知症」は、脳の細胞が損傷されることにより現れる記憶障害、見当識障害、行動障害、理解・判断力障害、実行機能障害などの中核症状を伴う疾患をいう。認知症は、大きく「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」に分けられるが、本発明における「認知症」は、これらのいずれをも含み、その原因となる疾患や障害は問わない。例えば、アルツハイマー病、(びまん性)レビー小体病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症(意味性認知症、進行性非流暢性失語、進行性核上性麻痺など)、ハンチントン病等の変性性認知症;多発梗塞性認知症広範虚血型、多発脳梗塞型、限局性脳梗塞型、遺伝性血管性認知症(CADASILなど)等の血管性認知症;クロイツフェルト・ヤコブ病、HIV関連認知症;慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症に起因する認知症などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の認知症を治療及び/又は予防剤は、特に加齢により増加する酸化ストレスに起因するアルツハイマー病や老化に伴う認知症の改善に有効である。

【0046】
本明細書において、認知症の治療とは、認知症を治癒すること、認知症に伴う各症状の緩和および進行を抑制することをいい、認知症の予防とは、認知症の発症を抑制することおよび発症を遅延させるをいう。

【0047】
本発明の認知症の治療及び/又は予防剤は、前記抗酸化剤と同様に、そのまま用いることも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を配合し、医薬品や飲食品の形態で使用することができる。

【0048】
本発明の認知症の治療及び/又は予防剤を医薬品とする場合は、医薬上許容される担体等の添加剤を必要に応じて組み合わせて製剤化する。医薬品の投与経路、剤型、添加剤の種類、投与量は、前記の抗酸化剤の場合と同様である。

【0049】
また、飲食品とする場合も、食品として許容される他の材料と必要に応じて組み合わせて調製する。飲食品の形態や種類、添加物の種類、飲食品への配合量は、前記の抗酸化剤の場合と同様である。本発明の飲食品には、その本体、包装、説明書、宣伝物に効能の表示、例えば、抗酸化作用を有する旨の表示、認知症の改善および予防の表示などが付されたものであってもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1)液化麹の調製(一段階法)
(1) 製麹
精白米1.5kgを洗米後、水に1時間浸漬し、水切り後50分蒸煮した。その後40℃まで冷却して、1.5gの白麹種麹を蒸米に撒き、よく混合し、湿度90%、35℃の恒温器内で40時間かけて製麹した。この間、麹の温度が40℃を超えないように攪拌や冷却を繰り返して管理した。できあがった麹は凍結乾燥後、粉砕し保存した。
【実施例】
【0051】
(2) 加熱処理
この乾燥粉末麹2gに水を2ml加え、スクリューキャップ付きのチューブに入れ、水分が蒸発しないよう密栓し、45℃、55℃、65℃、または75℃の恒温水槽で7日間の加熱処理を行い、液化麹(一段階法)を得た。
加熱処理して得られた上記液化麹4g、または加熱処理をしていない乾燥粉末麹(未加熱麹)2gを脱イオン水3mlに加え、ホモジナイズした後、ホモジネートを遠心分離(4800×g、5分)し、得られた沈殿物に脱イオン水5mlを加え、再懸濁したものをさらに遠心分離(4800×g、5分)し、上清を合わせて分析用の試料とした。
【実施例】
【0052】
(3) 褐変と液化の程度の確認
55℃加熱処理麹について、加熱処理開始から1,3,5,7日目に褐変と液化の程度を調べた。褐変の程度は400nmおける吸光度で評価し、吸光度は試料を適宜脱イオン水で希釈し、UV/VIS Spectrophotometer (Shimadzu UV-1700, Kyoto, Japan)を用いて測定した。また、液化の程度は粘度で評価した。粘度は、Rapid Visco Analyser(Newpoint Scientific Pty., Ltd., NSW, Australia)で測定し、Rapid Visco Unit(RVU)で示した。結果を図1に示す。400nmにおける吸光度の増加は3日目から始まり、5日目、7日目で急激に上昇した。この結果は、メイラード反応が加熱中に進行したことを示唆した。また、最初固体状態であった麹の粘度は3日目以降急激に減少した。この結果は、加熱により酵素反応による液化が進行したことを示唆した。
【実施例】
【0053】
(4) 抗酸化活性の確認
加熱処理開始から7日後の55℃液化麹、75℃液化麹のそれぞれについて、スーパーオキシドラジカル消去能(SOSA)及び酸素ラジカル吸収能(ORAC)を測定した。SOSAはCLETA-S antioxidant activity assay kit (ATTO CO, Tokyo Japan)、ORACは、OxiSelectTM ORAC activity assay kit (Cell Biolabs, Inc., San diego, CA, USA)をそれぞれ用い、キットの指示書に従って測定した。
【実施例】
【0054】
その結果、加熱前の麹に比べて、55℃加熱ではSOSAが4.9倍、ORACが4.3倍、75℃加熱ではSOSAが20倍、ORACが3.5倍に上昇し、加熱が麹の抗酸化活性に有効であることが示された(後記表1)。また、加熱温度(45~75℃)とSOSAまたはORACとの関係を調べたところ、SOSAは温度依存的に高い値を示したが、ORACは加熱温度に依らずほぼ同じ値を示すことも確認した。
【実施例】
【0055】
(5) グルコース含量とアミノ窒素
55℃加熱処理麹、75℃加熱処理麹のそれぞれについて、グルコース含量とアミノ窒素含量の経時的変化を比較した。結果を図2に示す。55℃加熱処理麹では、グルコース含量とアミノ窒素含量ともに1~2日目で急激に上昇しプラトーに達した。これに対し、75℃加熱処理麹では、55℃加熱処理麹に比べグルコース含量の増加に効果的ではなく、1~2日を経過後もグルコース含量とアミノ窒素含量ともに変化はなかった。これらの結果から、酵素反応は55℃2日目で終了すること、75℃加熱では、酵素反応で生じたグルコースやアミノ酸を基質としてメイラード反応が進行すると考えられた。
【実施例】
【0056】
(実施例2)液化麹の調製(二段階法)
実施例1の結果から、55℃で酵素反応を進行させた後に、より高温で加熱することによりメイラード反応をさらに促進できると考えた。そこで、55℃で2日間加熱処理した後、続いて75℃で5日間加熱処理する二段階法を試みた。
【実施例】
【0057】
(1) 加熱処理
実施例1と同様にして製麹し、調製した乾燥粉末麹2gに水を2ml加え、スクリューキャップ付きのチューブに入れ、水分が蒸発しないよう密栓し、55℃の恒温水槽で2日間加熱処理し、その後、75℃の恒温水槽で5日間の加熱処理を行い、液化麹(二段階法)を得た。
【実施例】
【0058】
(2) 抗酸化活性の確認
得られた液化麹(二段階法)について、実施例1と同様にしてSOSAおよびORACを測定した。結果を、実施例1の液化麹(一段階法)と合わせて下記表1に示す。
【実施例】
【0059】
【表1】
JP0005880856B2_000002t.gif
*: Student's t-testにより未加熱麹と有意差あり(p<0.05)【0060】
その結果、SOSAが未加熱麹の93.8倍、ORACが5.9倍に増強された。この値は55℃一定、または75℃一定温度で7日間加熱処理した麹よりも高く、麹の抗酸化活性増強には高温でのメイラード反応に先立ち、酵素反応の促進を図ることが効果的であることがわかった。
【実施例】
【0061】
さらに、抗酸化活性を有する化合物として米中の総フェノール含量(TPC)及びメイラード反応生成物である5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)に着目し、未加熱麹と上記の二段階法による加熱処理後の麹について、総フェノール含量(TPC)をFolin Ciocalteu法により測定し、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)含量をHPLCにて分析した。図3Aに、TPCおよびHMFの経時変化、また、図3Bに、SOSAおよびORACの経時変化を示す。加熱処理麹(二段階法)では、TPCが1.28から8.46(mgGAE/g)に、HMFは非検出から28.6mg/gに増加した(図3A)。よって上記条件で加熱処理した麹の抗酸化活性は、フェノール類やHMFを始めとしたメイラード反応物に由来していることが示唆された。
【実施例】
【0062】
また、麹の種類による抗酸化活性の違いについて白麹と黄麹で比較した。白麹種麹または黄麹種麹を用いて製麹した麹を上記の二段階法による加熱処理を行った。得られた液化麹について、SOSAおよびORACを測定し、また、TPCおよびHMFについても調べた。結果を下記表2に示す。
【実施例】
【0063】
【表2】
JP0005880856B2_000003t.gif
*:Student's t-testにより液化麹(白)と有意差あり(p<0.05)【0064】
いずれも優れた抗酸化活性が得られたが、HMFの生産性の点では白麹のほうが優れていた。
【実施例】
【0065】
(実施例3)
本実施例において、統計解析にはIBM SPSS Statistics version 19 を用い、2群間の検定は Student's t-test、多重検定は One-way ANOVA Tukey法で行った。また、本実験は鹿児島大学動物実験委員会で承認された後 (第A10053号)、動物の愛護及び管理に関する法律 (動物愛護法,平成17年6月22日公布,平成18年6月1日施行,環境省) を遵守して行った。
【実施例】
【0066】
(1) 実験飼料の調製
実験飼料の基準食にはCE-2(九動株式会社より購入)を用いた。実験食には、麹または実施例2で調製した液化麹を凍結乾燥し、粉末化した麹粉末または液化麹粉末をCE-2に対して0.5%(w/w) にて混合したものを用いた。麹は白麹(Aspergillus kawachii) を用いた。CE-2、麹、および液化麹の栄養組成を表3に示す。
【実施例】
【0067】
【表3】
JP0005880856B2_000004t.gif
CE-2の栄養組成は日本クレア社のホームページより引用。
【実施例】
【0068】
(2) 実験動物
通常老化作用を示す老化抵抗モデルマウスSAMR1(Senescence Accelarated-Resistant Mice)と、促進老化および短寿命を示し、老化とともに学習・記憶障害を特徴的に発症する老化促進モデルマウスSAMP8(Senescence Accelerated-Prone Mice)の2種類を用いた。
8週齢雄の老化促進モデルマウスSAMP8 (27匹) と、同系統の老化抵抗マウスSAMR1 (12匹) は、日本SLC (株) から購入した。
【実施例】
【0069】
(3) 給餌およびモリス水迷路実験のスケジュール
マウスの給餌およびモリス水迷路実験のスケジュールを図4に示す。1週間の予備飼育後、SAMP8マウスの群分けおよび泳ぎに異常のあるマウスを確認するための水迷路予備実験を5日間行い、SAMP8マウスを遊泳速度が均等になるよう9匹ずつ3群に分けた。飼育開始から実験食の給餌を開始するまでの2週間を予備飼育期間とした。
【実施例】
【0070】
コントロールであるSAMR1マウスには飼育開始から屠殺時まで終始通常(基準)食であるCE-2を与えた (SAMR1/CE-2群)。実験食群であるSAMP8マウスには、予備飼育期間中CE-2を与えた後、Sharm controlとして引き続きCE-2を与える群 (SAMP8/CE-2群)、CE-2と麹粉末を与える群(SAMP8/CE-2+麹群)、CE-2と液化麹粉末を与える群 (SAMP8/CE-2+液化麹群)の3群(9 匹/群)に分け、予備飼育期間後それぞれの実験食で7週間の本飼育を行った。
【実施例】
【0071】
マウスはゲージにて1匹ずつ飼育し、気温20℃、12時間/12時間 (8:00~20:00) の明暗周期とした。自由給餌及び自由飲水で飼育した。実験食給餌開始から3週間後 (13週齢)にモリス水迷路本実験を行った。17週齢時に飼育を終了し、エーテル麻酔下で心採血により全血を採取し安楽死させた。
【実施例】
【0072】
(4) モリス水迷路実験
実験食給餌開始3週間後にモリス水迷路本実験を行い、行動学的にマウスの学習・記憶能力を判定した。
【実施例】
【0073】
直径120cm、高さ20cmの円形プール(図5A)を部屋の隅に設置し、外環境からの位置情報をなるべく低減させた。ゴールとなるプラットホーム (PF)には透明のアクリル樹脂を用い、4つに等分割したプールの右上領域(図5B)に設置し、水面下に投入すると水面から察知できないように水中に沈めた(図5A)。プールの水温は25℃にした。実験はトレーニング期間とプローブテストの2種類の実験段階に分けて行った。トレーニング期間では、PFを沈めていない3つの領域より壁面に頭を向けた状態でマウスを投入し、右上領域に設置したPFに辿り着くまでに経過した時間をそれぞれ測定した。PFに到達したマウスはそのままPF上に15秒間滞在させ位置を学習させた後にケージに戻した。60秒を超えてもPFに辿り着けなかった場合その時点で遊泳を終了し、到達時間を60秒とした上で強制的にPF上へ移動させ、15秒間滞在させた。この操作を1日3回、14日間毎日行い、その翌日(15日目)にPFを撤去したプローブテストを行った。プローブテストではPFを撤去した条件でマウスを60秒間自由遊泳させ、PF周辺領域の滞在時間を測定した。
【実施例】
【0074】
トレーニング期間の結果では、SAMP8/CE-2+麹群およびSAMP8/CE-2+液化麹群において、12日目以降では有意差はなかったものの、SAMP8/CE-2群(Sharm control)よりもPF到達時間が短くなり、学習・記憶能力低下が抑制されている傾向が見られ、最終日の14日では有意に早く到達した(図6)。
【実施例】
【0075】
プローブテストの結果では、有意差はなかったものの、SAMP8/CE-2群(Sharm control)に比べSAMP8/CE-2+麹群およびSAMP8/CE-2+液化麹群においてPF周辺領域滞在時間が増加する傾向にあった(図7)。
【実施例】
【0076】
(5) アミロイド線維蓄積の検出
マウスの脳組織中に蓄積されたアルツハイマーの原因とされるアミロイドβ量を免疫蛍光染色により測定した。実験には海馬の組織切片を用い、測定部位は記憶形成において重要な海馬DG、CA1およびCA3領域の三つとした。
【実施例】
【0077】
ホルマリン固定組織をパラフィン包埋し、6 μmの薄片を作成した。脱パラフィン後、Proteostat Amyloid Plaque Detection Kit (Enzo, Plymouth Meeting, PA) を用い、添付の説明書に準じてアミロイドオリゴマーを染色した。細胞核の像を得るためにDNAをDAPI染色した。レーザー共焦点顕微鏡で撮影後、海馬CA1,CA3,DG領域の蛍光強度をImage J Software (NIH,Bethesda,MD) を用いて数値化した。
【実施例】
【0078】
その結果、CA1領域においては各群間に有意な差は認められなかったが、DGおよびCA3領域においてSAMP8/CE-2群(Sharm control)に比べSAMP8/CE-2+麹群およびSAMP8/CE-2+液化麹群には有意にアミロイドβ蓄積の減少が認められた(図8)。
【実施例】
【0079】
以上の結果より、麹および液化麹には認知症の改善および発症予防効果があることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は食品(特にサプリメントなどの機能性飲食品)、医薬品、医薬部外品、化粧品の製造分野において利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7