TOP > 国内特許検索 > 青果栽培方法 > 明細書

明細書 :青果栽培方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-230122 (P2013-230122A)
公開日 平成25年11月14日(2013.11.14)
発明の名称または考案の名称 青果栽培方法
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
A01N   3/00        (2006.01)
FI A01G 7/00 601C
A01N 3/00
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2012-104390 (P2012-104390)
出願日 平成24年5月1日(2012.5.1)
発明者または考案者 【氏名】上野 誠
【氏名】木原 淳一
出願人 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査請求 未請求
テーマコード 2B022
4H011
Fターム 2B022AA01
2B022AB11
2B022AB13
2B022AB15
2B022DA08
4H011CA04
4H011CB10
4H011CC05
4H011CD13
要約 【課題】農薬を用いることなく、果物や野菜に赤外光を所定量照射することにより、うどんこ病の発生抑制をおこなう青果栽培方法を提供する。
【解決手段】赤外光は近赤外光であって、照射強度は、青果表面あたり59μW/cm以上であり、近赤外光としての中心波長は740nm近傍であり、その照射時間は終日すなわち24時間連続照射とすることが好ましい。また消費電力の観点からはLED光源やHEFL光源などを用いることが好ましい。
【選択図】図6
特許請求の範囲 【請求項1】
赤外光を照射することによりうどんこ病の発生抑制をおこなうことを特徴とする青果栽培方法。
【請求項2】
赤外光が近赤外光であることを特徴とする請求項1に記載の青果栽培方法。
【請求項3】
赤外光の照射強度を、青果表面あたり59μW/cm以上としたことを特徴とする請求項1または2に記載の青果栽培方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、果物や野菜のうどんこ病の防除技術に関し、特に近赤外光の照射によりうどんこ病の防除をおこなう青果栽培方法(農作物栽培方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の病気は種々あるが、その8割はカビによるものであり、防除方法としては、農薬(殺菌剤)使用による化学的防除が一般的である。しかしながら、農薬を用いると、耐性菌が出現し、従来の農薬が効かず、かえって被害が広がることも懸念される。
【0003】
野菜や果物については、カビの一種であるうどんこ病の被害が深刻であり、少なくとも1万種類の植物で感染が確認されている。これを防除する農薬も各種開発されているが、実際に、ステロール脱メチル化酵素阻害剤やストロビルリン系薬剤に対する耐性菌が報告されている。
【0004】
一方、エネルギーの高い紫外光照射による防除方法も検討されている。しかしながら、紫外線は目や皮膚など人体に影響を与える可能性があり、照射条件によっては生産農家に負担を強いるという問題点があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-261311
【特許文献2】特開2009-153397
【特許文献3】特開2009-022175
【特許文献4】特開2005-328734
【0006】

【非特許文献1】荒瀬榮・上野誠・木原淳一:赤色光照射による病害抵抗性誘導と病害防除への応用 植物防疫:64 15-18(2010).
【非特許文献2】Rahman, MZ., Kanam, H., Ueno, M., Kihara, J., Honda, Y. and Arase,S. Suppression by red light irradiation of Corynespora leaf spot of cucumbercaused by Corynespora cassiicola. Journal of phytopathology158,378-381(2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、うどんこ病を防除する新規な青果栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の青果栽培方法は、赤外光を照射することによりうどんこ病の発生抑制をおこなうことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の青果栽培方法は、請求項1に記載の青果栽培方法において、赤外光が近赤外光であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の青果栽培方法は、請求項1または2に記載の青果栽培方法において、赤外光の照射強度を、青果表面あたり59μW/cm以上としたことを特徴とする。
【0011】
なお、近赤外光は740nm近傍であることを好ましく、また、照射時間は終日すなわち24時間連続照射とすることが好ましい。消費電力の観点からは、LED光源やHEFL光源などを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、農薬を用いることなく植物工場に好適に採用可能な青果栽培方法を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】赤色HEFL光源のスペクトルを示した図である。
【図2】キュウリの葉にうどんこ病胞子を接種し、赤色光を照射した結果を示した写真である。
【図3】白色HEFL光源のスペクトルを示した図である。
【図4】青色HEFL光源のスペクトルを示した図である。
【図5】近赤外光HEFL光源のスペクトルを示した図である。
【図6】キュウリの葉にうどんこ病胞子を接種し、白色光、青色光、近赤外光を照射した結果を示した写真である。また、赤色光を照射した結果もあわせて示している。
【図7】近赤外光の照射強度の違いによるキュウリうどんこ病の抑制効果を比較した結果を示した写真である。
【図8】近赤外光の照射時間の違いによるキュウリうどんこ病の抑制効果を比較した結果を示した写真である。
【図9】他のうどん粉病に関する照射光の違いによる抑制効果を比較した結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明者等は、先に非特許文献1および2において、イネいもち病、キュウリ褐斑病、ナス黒枯病等に赤色光(600nm~700nm、中心波長650nm)を照射することにより、病気を抑制できることを明らかにした。

【0015】
次いで、この知見のもと、キュウリうどんこ病胞子を接種したキュウリの葉に赤色光(波長610nm)を照射し、防除作用の有無を調べた。

【0016】
具体的には、キュウリを2~3葉まで生長させ、キュウリうどんこ病の胞子を1×10spores/mlに調整したものを噴霧器を用いてキュウリの葉に噴霧接種をおこなった。

【0017】
次に、赤色HEFL光源(ツジコー株式会社製:中心610nm:10W)を葉から15cm上空に設置し24時間連続点灯して1週間経過観察をした(この光源は発熱が少なく、光を効率よく直下に落とすという特徴を有する)。なお、光源のスペクトルを図1に示した。

【0018】
1週間後のキュウリの葉の様子を図2に示す。図2から明らかなように、ほぼ全面にうどんこ病が発症しており、赤色光にはキュウリうどんこ病の防除効果がないことが確認できた。

【0019】
次に波長を変えて同様の試験をおこなった。具体的には、白色光源(波長400nm~700nm)、青色光源(中心波長450nm)、および、近赤外光源(中心波長740nm)を用いて実験をおこなった。なお、光源のスペクトルを図3、4、5に示した。

【0020】
1週間後のキュウリの葉の様子を図6に示す。図6から明らかなように、白色光はもとより期待された青色光についても全く防除効果がなかったが、驚くべきことに近赤外光には優れた防除効果があることが確認できた。なお、発病度は、一般的に使用されている計算式を用いて算出した。すなわち、葉を観察して、病斑なし:0、1つの葉に1-2個の病斑:1、1つの葉の病斑が葉面積あたりの1/4未満:2、1つの葉の病斑が葉面積あたりの1/4-1/2:3、1つの葉の病斑が葉面積あたりの1/2以上:4、に分類し、{(1×発病率1の個体数+2×発病率2の個体数+3×発病率3の個体数+4×発病率4の個体数)/4×調査個体数}×100の式に当てはめて発病率を算出した。

【0021】
次に、近赤外光の照射強度の違いによるキュウリうどんこ病の抑制について検討した。キュウリを2~3葉まで成長させ、この葉にキュウリうどんこ病の胞子を1×10spores/mlに調整したものを噴霧接種し、近赤外HEFL光源(ツジコー株式会社製:中心波長740nm)を用いて、葉との距離を異ならせ照射強度を調整した。具体的には、照射強度を125μW/cm(葉に対して光源を5cm離間)、77μW/cm(葉に対して光源を10cm離間)、59μW/cm(葉に対して光源を15cm離間)としてそれぞれ24時間×1週間連続照射した。なお、上記強度は葉の表面にて測定した測定値である。

【0022】
図に示したように、いずれもうどんこ病を抑制できていることが確認でき、照射強度は59μW/cmでも効果があることが確認できた。

【0023】
次に、照射時間の違いによるキュウリうどんこ病の抑制について検討した。上記の実験と同様の実験環境を整え、近赤外光源を12時間ごとに照射、すなわち12時間照射後12時間照射せず暗室に放置し、その後同様に12時間サイクルで照射-非照射を1週間繰り返す実験をおこなった。結果を図8に示す。

【0024】
図に示したように、12時間の間欠照射ではキュウリうどんこ病の抑制効果が低いことが確認できた。

【0025】
これらから、キュウリうどんこ病は、赤色光では効果が得られないものの、赤外光、特に近赤外光の照射により防除が可能であることが確認できた。また、照射については、59μW/cm以上の強度が好ましく、また、24時間の連続照射が好ましい。

【0026】
以上の結果をもとに、他のうどんこ病についても検討した。図9は、カボチャうどんこ病胞子をカボチャの葉に噴霧接種したものと、メロンうどんこ病胞子をメロンの葉に噴霧接種したものと、について、近赤外光(中心波長740nm)の光源と白色光とを24時間×1週間連続照射した結果を示した図である。図示したようにいずれのうどんこ病についても、白色光では防除効果が得られず、近赤外光では防除効果が得られることが確認できた。

【0027】
よって、近赤外光を所定量照射することによりうどんこ病を広く防除できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本方法によれば、耐性菌発生の現象や従来の殺菌剤の使用量低減といった環境負荷の低減が望めるだけでなく、農作物の安全性としての付加価値を高めることが可能となる。実際2011年のイチゴおよびキュウリのうどんこ病防除面積はそれぞれ述べ27558ha、32810haとの統計が出されており、一般的なうどんこ病に対する農薬使用量が10aあたり200~300リットルであることを考えると、他の青果も含め、10%の対象面積を本方法を適用すると、約1000万リットルの農薬使用量を減らすことが可能となる。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図2】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8