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明細書 :骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5829921号 (P5829921)
公開番号 特開2013-141477 (P2013-141477A)
登録日 平成27年10月30日(2015.10.30)
発行日 平成27年12月9日(2015.12.9)
公開日 平成25年7月22日(2013.7.22)
発明の名称または考案の名称 骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法
国際特許分類 A61B   6/03        (2006.01)
G01N   3/08        (2006.01)
A61B   5/00        (2006.01)
FI A61B 6/03 360E
G01N 3/08
A61B 5/00 G
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2012-001645 (P2012-001645)
出願日 平成24年1月6日(2012.1.6)
審査請求日 平成26年11月11日(2014.11.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
発明者または考案者 【氏名】田原 大輔
【氏名】堀川 武
個別代理人の代理人 【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査官 【審査官】増渕 俊仁
参考文献・文献 特表2007-524438(JP,A)
米国特許出願公開第2005/0010106(US,A1)
米国特許出願公開第2005/0148860(US,A1)
特開2009-268524(JP,A)
特開2007-303943(JP,A)
特開2011-125418(JP,A)
特表2009-515594(JP,A)
特開2002-065708(JP,A)
安達泰治、坪田健一、冨田佳宏,“デジタルイメージモデルを用いた海綿骨の力学的再構築シミュレーション”,日本機械学会論文集(A編),日本,日本機械学会,2000年,第66巻、第648号,200-207
田原大輔、安達泰治、高野直樹、中野貴由,“骨質を考慮した椎体海綿骨の高分解能ミクロ応用解析”,日本臨床バイオメカニクス学会誌,日本,日本臨床バイオメカニクス学会,2008年11月 1日,第29巻,7-14
調査した分野 A61B 6/00-6/14
特許請求の範囲 【請求項1】
人又は動物の骨梁の撮影により得られ、骨部分が一定の大きさのボクセルから構成される所定の三次元の範囲の骨梁デジタルイメージモデルをデータの形で記憶装置に保存し骨折のリスクを評価するためにシミュレーションによって処理する骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法であって、
前記骨梁デジタルイメージモデルにストレス負荷をかけながら、骨梁表面のボクセルにおける応力が、周囲の平均応力よりも生成閾値レベル以上に大きければ当該ボクセルに接する新たな1以上のボクセルを生成し、周囲の平均応力よりも消失閾値レベル以下に小さければ当該ボクセルを含む1以上のボクセルを消失させる過程を繰り返して前記骨梁デジタルイメージモデルを再構築する前記コンピュータによる処理工程と、
前記再構築後の骨梁デジタルイメージモデル少なくとも前記ストレス負荷と直交方向に測定負荷をかけて応力分布測定を行う前記コンピュータによる処理工程と、を有することを特徴とする骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法。
【請求項2】
請求項1に記載の骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法において、
患者の測定された骨密度に合わせて生成閾値レベルと消失閾値レベルを調整し、前記再構築により前記骨梁デジタルイメージモデルを作製し、当該骨密度に対応する応力分布を測定することを特徴とする骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法において、
前記骨梁デジタルイメージモデルのボクセルにおけるBAp結晶の配向方向のヤング率を他の方向よりも大きくして応力を算出することを特徴とする骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症の診断又は治療のために好適な骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症は、骨梁の骨密度の減少と微細構造の変化によって骨折リスクが高まった病態である。特に、高齢になってからの骨折は、寝たきりなどを誘発させ易くなる。骨粗鬆症の国内の患者は、1000万人以上とも言われている。骨梁は、各微細部分が骨芽細胞により作られ(骨形成し)たり破骨細胞により壊され(骨吸収し)たりするという再構築(リモデリング)を長期的に繰り返しており、骨梁の微細構造は骨形成と骨吸収の量のバランスにより変化する。骨粗鬆症は、骨形成と骨吸収の量のバランスが崩れ、骨形成よりも骨吸収の量が相対的に多くなったものである。骨粗鬆症の診断又は治療のためには、現在、X線などによる骨密度の測定が行われているのであるが、より高度な診断又は治療のためには、骨粗鬆症の骨梁の力学的評価が必要である。
【0003】
ところで、骨梁の力学的評価のために、非特許文献1に示すように、骨梁の微細構造を再現した骨梁デジタルイメージモデルに圧縮負荷をかけ、有限要素法解析(FEA)によって骨梁表面の応力の不均一性を算出し、その不均一性に応じた再構築をシミュレートする力学的解析手法が提案されている。なお、非特許文献1に関連して、特許文献1には、人工的な骨代替物の構造を設計する手法が記載されている。
【0004】
そして、これまでに、本願発明者らは、例えば非特許文献2に示すように、この力学的解析手法に多方面から改良を加えてきた。非特許文献2は、骨質の重要な因子であるBAp結晶の配向に起因する骨梁の材料異方性を考慮した力学的解析手法による骨折リスク評価の可能性を報告したものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2002-065708号公報
【0006】

【非特許文献1】安達泰治、外2名、“デジタルイメージモデルを用いた海綿骨の力学的再構築シミュレーション”、日本機械学会論文集(A編)、日本機械学会、2000年、第66巻、第648号、p.200-207
【非特許文献2】田原大輔、外3名、“骨質を考慮した椎体海綿骨の高分解能ミクロ応力解析”、日本臨床バイオメカニクス学会誌、日本臨床バイオメカニクス学会、2008年、第29巻、p.7-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1、2を含め、骨梁の力学的解析手法は、日常的に自重による圧縮負荷がかかる体軸方向に着目するのが基本である。しかし、骨粗鬆症の患者にあっては、転倒時などの非日常的な負荷がかかることによる骨折が現実的には多い。
【0008】
本発明は係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、より現実的な負荷を考慮した力学的解析手法による骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法は、人又は動物の骨梁の撮影により得られ、骨部分が一定の大きさのボクセルから構成される所定の三次元の範囲の骨梁デジタルイメージモデルをデータの形で記憶装置に保存し骨折のリスクを評価するためにシミュレーションによって処理する骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法であって、前記骨梁デジタルイメージモデルにストレス負荷をかけながら、骨梁表面のボクセルにおける応力が、周囲の平均応力よりも生成閾値レベル以上に大きければ当該ボクセルに接する新たな1以上のボクセルを生成し、周囲の平均応力よりも消失閾値レベル以下に小さければ当該ボクセルを含む1以上のボクセルを消失させる過程を繰り返して前記骨梁デジタルイメージモデルを再構築する前記コンピュータによる処理工程と、前記再構築後の骨梁デジタルイメージモデル少なくとも前記ストレス負荷と直交方向に測定負荷をかけて応力分布測定を行う前記コンピュータによる処理工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法は、請求項1に記載の骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法において、患者の測定された骨密度に合わせて生成閾値レベルと消失閾値レベルを調整し、前記再構築により前記骨梁デジタルイメージモデルを作製し、当該骨密度に対応する応力分布を測定することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法は、請求項1又は2に記載の骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法において、前記骨梁デジタルイメージモデルのボクセルにおけるBAp(Biological Apatite (生体アパタイト))結晶の配向方向のヤング率を他の方向よりも大きくして応力を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、骨梁デジタルイメージモデルを再構築し、ストレス負荷と直交方向に測定負荷をかけることにより、より現実的な負荷を考慮した力学的解析手法による骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法に用いる骨梁デジタルイメージモデルをストレス負荷とともに例示する立体図である。
【図2】同上の骨梁デジタルイメージモデルの再構築を示すものであって、(a)がボクセルの生成・消失の模式図、(b)が再構築の簡略フロー図である。
【図3】同上の骨梁デジタルイメージモデルの再構築を説明するものであって、(a)が骨梁表面のボクセルxc近傍の模式図、(b)が重み関数、(c)が骨梁表面変化速度mの関数曲線である。
【図4】同上の骨梁デジタルイメージモデルを測定負荷とともに例示する立体図である。
【図5】同上の骨梁デジタルイメージモデルの再構築による骨密度の変化を示す特性グラフである。
【図6】同上の骨梁デジタルイメージモデルに測定負荷をかけたときの応力分布を示す特性グラフである。
【図7】同上の骨梁デジタルイメージモデルにストレス負荷をかけたときの主応力を模式的に例示する断面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法は、記憶装置にデータの形で保存されてコンピュータによって処理される、骨梁の微細構造を再現した骨梁デジタルイメージモデル1を用いるものである(図1参照)。この骨梁デジタルイメージモデル1は、人の(場合によっては、動物の)骨梁の撮影により得られたデジタルイメージが初期形状時のものであり、骨部分が一定の大きさのボクセル(voxel)の集合体から構成される所定の三次元の範囲のものである。そして、この骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法は、初期形状時の骨梁デジタルイメージモデル1にストレス負荷をかけながら骨梁デジタルイメージモデル1を再構築し、再構築後の骨梁デジタルイメージモデル1に測定負荷をかけて応力分布測定を行うシミュレーションによって骨折のリスクを評価するものである。

【0015】
骨梁デジタルイメージモデル1を得るための骨梁の撮影は、高分解能(例えば、64μm)のX線μCTシステムなどを用いることができる。撮影された画像は、画像処理されてから初期形状時の骨梁デジタルイメージモデル1となる。

【0016】
骨梁デジタルイメージモデル1におけるボクセルの数は、骨密度に対応するものである。骨梁デジタルイメージモデル1は、例えば、4.7mm立方の範囲に切り取られたものである。また、ボクセルのサイズは、例えば、撮影された画像の分解能と同じ1辺64μmである。骨粗鬆症は、日本骨代謝学会の骨粗鬆症基準に基づくと、骨密度が健常例の70%以下となっている。骨粗鬆症でない健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aは、例えば、後述するように185,255個のボクセルから構成される。これに対し、骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bは、ボクセルの数が少なく、例えば、後述するように125,945個(骨梁デジタルイメージモデル1Aの68.0%)のボクセルから構成される。

【0017】
骨梁デジタルイメージモデル1は、ヤング率(例えば、20GPa)、ポアソン比(例えば、0.30)を設定し、負荷がかけられると、有限要素法解析(FEA)により骨梁表面のボクセルにおける応力が算出される。

【0018】
ストレス負荷は、通常は、体軸方向の圧縮負荷であり、例えば、図1に示すように、骨梁デジタルイメージモデル1の下面を固定し、上面に10MPaをかけることによって、体軸方向(z軸)の圧縮負荷とする。ここで、図1や後述する図4において、x軸、y軸、z軸は、人の左右方向、人の前後方向、人の体軸方向に、それぞれ対応するものである。

【0019】
骨梁デジタルイメージモデル1の再構築は、図2(a)に示すように、骨梁表面のボクセルにおける応力が、周囲の平均応力よりも生成閾値レベル以上に大きければ当該ボクセルに接する新たな1以上のボクセルを生成し、周囲の平均応力よりも消失閾値レベル以下に小さければ当該ボクセルを含む1以上のボクセルを消失させる。このボクセルの生成と消失は、実際の骨における骨形成と骨吸収に対応する。そして、骨梁デジタルイメージモデル1の再構築は、この過程を、図2(b)に示すように繰り返す(例えば、30~50ステップ)ことによって行う。この再構築により、骨梁デジタルイメージモデル1の骨梁の形態が変化する。なお、1ステップを、実験又は経験に基づいた実際の骨における骨形成と骨吸収の速度に対応させることも可能である。

【0020】
より詳細には、以下に述べる再構築則を用いるのが好ましい。すなわち、図3(a)に示すように、骨梁デジタルイメージモデル1の骨梁表面のボクセルxcの応力値をσc、ボクセルxc周囲の平均応力をσdとし、応力不均一性Γを(1)式のように定義する。

【0021】
【数1】
JP0005829921B2_000002t.gif

【0022】
ここで、σdは、ボクセルxcから半径R(例えば、10ボクセル)の範囲に含まれる骨梁表面上のボクセルxrにおける応力値σrの重み付き平均値により、(2)式のように表すことができる。Sは骨梁表面、w(r)はボクセルxcとxrの距離rに関する重み関数(図3(b)参照)、をそれぞれ示している。

【0023】
【数2】
JP0005829921B2_000003t.gif

【0024】
この応力不均一性Γは、ボクセルxcにおいて応力の一様化に向かう再構築駆動力となる。そして、骨梁表面変化速度mを、図3(c)に示すような応力不均一性Γの連続関数として定義する。骨梁表面変化速度mは、応力不均一性Γが上記の生成閾値レベルに対応する閾値Γu以上のときに正の値となって、値の大きさに応じてボクセルxcに接する新たな1以上のボクセルが生成される。また、骨梁表面変化速度mは、応力不均一性Γが上記の消失閾値レベルに対応する閾値Γl以下のときに負の値となって、値の大きさに応じてボクセルxcを含む1以上のボクセルを消失させる。よって、閾値Γuと閾値Γlの間は、再構築の不感帯である。閾値Γuと閾値Γlは、骨梁表面の見かけの変化速度を調整する値である。

【0025】
この再構築則によるボクセルの生成又は消失の過程を、所定のステップ数、繰り返す。

【0026】
次に、再構築後の骨梁デジタルイメージモデル1の応力分布測定は、少なくともストレス負荷と直交方向に(ストレス負荷をかける方向に直交する方向に)測定負荷をかけて行う。例えば、図4に示すように、骨梁デジタルイメージモデル1の下面を固定し、上面に測定負荷を体軸方向(z軸)に直交する方向にかけるのである。

【0027】
以上説明した骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法の使用例として、再構築によって骨密度に応じた骨梁デジタルイメージモデル1を作製し、その骨密度に対応する応力分布を測定し、骨折のリスク評価を行う方法を説明する。

【0028】
健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aと、健常例に対し骨密度が約70%の骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bは、健常な骨梁を64μmの分解能のX線μCTシステムを用いて撮影し、その画像処理によって4.7mm立方の範囲のデジタルイメージを初期形状時のものとした。健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aは、閾値Γuを4.0、閾値Γlを-5.0として上記再構築則に従って作製した。骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bは、閾値Γuを4.0、閾値Γlを-0.5として上記再構築則に従って作製した。健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aと骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bのおける閾値Γuと閾値Γlは、再構築後のものがほぼ目標の骨密度になるように調整したものである。また、ストレス負荷は、健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aと骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bの上下に剛体板を付加し、上面に10MPaをかけることによって、体軸方向(z軸)の圧縮負荷とした。

【0029】
そうすると、図5に示すように、再構築の進行に応じて、健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aはボクセルの数(すなわち、骨密度)が変化せず(185,255個)、骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bはボクセルの数が急激に減少している。骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bは、約50ステップ程度で各ボクセルにおける応力がほぼ一様になって、骨密度が約70%の状態でほぼ安定する。より詳細には、骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bは、骨密度が68.0%で、ボクセルの数が125,945個のものが得られた。

【0030】
図6に示すのは、10MPaの測定負荷をかけたときに、健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aと骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bの各々のボクセルに発生する応力の大きさの存在割合(応力分布)を高応力側からの累積曲線で示したものである。図6において、曲線aは骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bに測定負荷をストレス負荷と直交方向にかけたもの、曲線bは健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aに測定負荷をストレス負荷と直交方向にかけたもの、曲線cは骨粗鬆症の骨梁デジタルイメージモデル1Bに測定負荷をストレス負荷と同じ方向にかけたもの、曲線dは健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aに測定負荷をストレス負荷と同じ方向にかけたものである。

【0031】
図6においては、高応力が発生するボクセルの数の割合は、曲線aが最も大きく、75MPa以上になるボクセルは約70%も存在する。これに対し、曲線b、c、dではそれぞれ、応力が75MPa以上になるボクセルは、約35%、約12%、約5%存在する。

【0032】
このように、再構築によって骨密度に応じた骨梁デジタルイメージモデル1(健常例の骨梁デジタルイメージモデル1A、骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1B)を得ることがでる。そして、骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1Bは、ストレス負荷と直交方向に測定負荷をかけると、高応力が発生するボクセルの数の割合が極めて多く、このことは、転倒時などの非日常的に負荷がかかる場合の骨折が多いことをよく表しており、しかも、骨折のリスクを理解し易い数値で示すことができている。このことは、健常例の骨梁デジタルイメージモデル1Aと比較するとより明確になっている。こうして、骨密度に応じて、より現実的な負荷を考慮した力学的解析手法による骨折のリスク評価が可能になる。

【0033】
更には、患者の測定された骨密度に合わせて、上述した骨粗鬆症の骨梁デジタルイメージモデル1Bのように、生成閾値レベル(閾値Γu)と消失閾値レベル(閾値Γl)を調整して再構築により骨梁デジタルイメージモデル1を作製し、その骨密度に対応する応力分布を測定し、骨折のリスク評価を行うことも可能である。

【0034】
また、初期形状時の骨梁デジタルイメージモデル1として選択できるサンプルモデルが複数用意できる場合は、患者の性別や年齢などに応じて初期形状時の骨梁デジタルイメージモデル1を選ぶことも可能である。また、患者自身の骨梁の撮影ができて、生成閾値レベル(閾値Γu)、消失閾値レベル(閾値Γl)及びステップ数を実験又は経験に基づき、実際の骨における骨形成と骨吸収に対応して精度良く設定できる場合は、その患者の骨粗鬆症の進行を予測した骨折のリスク評価も可能である。

【0035】
次に、骨梁デジタルイメージモデル1の各々のボクセルにおけるBAp(Biological Apatite (生体アパタイト))結晶の配向方向のヤング率を他の方向よりも大きくして応力を算出することを説明する。このような材料異方性を考慮した骨梁デジタルイメージモデル1を用いると、より現実の骨梁に近い力学的解析が可能になる。BAp結晶配向は、図7に示すように、BAp結晶配向を考慮していない等方性の骨梁デジタルイメージモデル1に体軸方向(z軸方向)に一定のストレス負荷(圧縮負荷)をかけることによって各々のボクセルに応力を発生させ、主応力の方向(最大となる方向)(図7では、黒矢印で示す)に一致させると、適切かつ比較的容易に決定することができる。

【0036】
健常例と骨粗鬆症例の骨梁デジタルイメージモデル1A、1Bに対し、各方向に測定負荷をかけてマクロな剛性をBAp結晶配向の考慮有無で比較した結果を表1に示す。ここで、BAp結晶の配向方向のヤング率は、その直交方向の2倍とした。マクロな剛性は、均質化法により得たヤング率としている。BAp結晶配向を考慮したものは、体軸方向(z軸方向)の剛性が高くなっているが、それに直交する方向(x軸方向、y軸方向)の剛性はさほど高くはなっていないことが分かる。よって、BAp結晶配向を考慮した現実の骨梁により近い骨梁デジタルイメージモデル1は、転倒時などの非日常的に負荷がかかる場合の骨折が日常的な自重による負荷がかかる場合よりも多いことを更によく表している。

【0037】
【表1】
JP0005829921B2_000004t.gif

【0038】
以上、本発明の実施形態に係る骨折リスク評価のためのコンピュータの作動方法について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、再構築後の骨梁デジタルイメージモデルの応力分布測定は、前記ストレス負荷と直交方向に測定負荷をかけて行うこととあわせて、前記ストレス負荷と同じ方向に測定負荷をかけて行ってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 骨梁デジタルイメージモデル
図面
【図5】
0
【図6】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図7】
6