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明細書 :鉛イオンの抽出方法及び鉛イオンの抽出剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-202460 (P2013-202460A)
公開日 平成25年10月7日(2013.10.7)
発明の名称または考案の名称 鉛イオンの抽出方法及び鉛イオンの抽出剤
国際特許分類 B01D  11/04        (2006.01)
C22B  13/00        (2006.01)
C22B   3/26        (2006.01)
C22B   7/00        (2006.01)
FI B01D 11/04 B
C22B 13/00 101
C22B 3/00 J
C22B 7/00 G
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2012-072141 (P2012-072141)
出願日 平成24年3月27日(2012.3.27)
発明者または考案者 【氏名】下条 晃司郎
【氏名】長縄 弘親
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査請求 未請求
テーマコード 4D056
4K001
Fターム 4D056AB08
4D056AC11
4D056AC22
4D056CA27
4D056CA39
4K001AA06
4K001AA07
4K001AA08
4K001AA09
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA20
4K001AA30
4K001BA21
4K001DB26
4K001DB34
要約 【課題】
鉛イオンを選択的に効率良く抽出分離することができる鉛イオンの抽出方法及び鉛イオンの抽出剤を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)
【化1】
JP2013202460A_000006t.gif
(式中、R1及びR2は、互いに同一又は異種のアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)で表されるジグリコールアミド酸を抽出剤として含有する抽出相と、鉛イオンと鉛イオン以外の金属イオンとを含む水溶液とをpH 6以下の酸性条件下で接触させて、鉛イオンを抽出相に抽出し、その後、この抽出相と酸性水溶液とを接触させることで鉛イオンを前記酸性水溶液に逆抽出して鉛イオンを回収する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
JP2013202460A_000004t.gif
(式中、R1及びR2は、互いに同一又は異種のアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるジグリコールアミド酸を抽出剤として含有する抽出相と、鉛イオンと鉛イオン以外の金属イオンとを含む水溶液とをpH 6以下の酸性条件下で接触させて、鉛イオンを抽出相に抽出し、その後、この抽出相と酸性水溶液とを接触させることで鉛イオンを前記酸性水溶液に逆抽出して鉛イオンを回収することを特徴とする鉛イオンの抽出方法。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】
JP2013202460A_000005t.gif
(式中、R3及びR4は、互いに同一又は異種のアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるジグリコールアミド酸を有することを特徴とする鉛イオンの抽出剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は鉛イオンの抽出方法及び鉛イオンの抽出剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉛イオンを他の各種イオンから分離する技術は有害金属の除去、高純度金属の製造のための不純物金属の除去、資源の回収などの観点から極めて重要である。とくに、鉛イオンは非常に毒性が高いことから環境や生体系からの除去は極めて重要である。
【0003】
鉛イオン(Pb2+)を除去する方法として、沈殿法がある。これはPbSO4やPbSの溶解度が小さいことを利用した方法である。すなわち、得られた浸出液にSO42-やS2-イオンを添加して鉛イオンと結合させ、沈殿を生成させる。しかしながら、溶解度が十分に低くないため、水溶液に鉛イオンが残存したり、他の有用金属も共に沈殿する可能性があるなど問題がある。
【0004】
一方、溶媒抽出法によって鉛イオンを分離することも行われている(例えば、特許文献1参照)。
溶媒抽出法においては、リン酸系抽出剤やカルボン酸系抽出剤等の工業用抽出剤を利用した方法が知られている。リン酸系抽出剤の代表的なものとしては、ホスホン酸エステルである 2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル[2-ethylhexyl phosphonic acid mono-2-ethylhexyl ester]やその類似体であるジ(2-エチルヘキシル)リン酸 [di-(2-ethylhexyl)phosphoric acid]がある。カルボン酸系抽出剤の代表的なものとしては、2-メチル-2-エチル-1-ヘプタン酸: ネオデカン酸[2-ethyl-2-methyl-1-heptanoic acid:neodecanoic acid]がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表平6-500822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸、及び2-メチル-2-エチル-1-ヘプタン酸: ネオデカン酸等は、汎用の抽出剤として各種金属イオンの抽出に使用されているが、鉛イオンに対する選択、分離能については十分ではない。例えば、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステルやジ(2-エチルヘキシル)リン酸を抽出剤として利用した鉛イオンの抽出においては、鉛イオン以外の金属イオンに対する鉛イオンの選択性が小さく、鉛イオンを効率的に除去することは難しい。2-メチル-2-エチル-1-ヘプタン酸: ネオデカン酸を抽出剤として利用した鉛イオンの抽出においては、中性付近の高pH条件下でしか抽出が起こらず、上記したリン酸系抽出剤と比べれば抽出能が著しく劣る。
【0007】
ところで、溶媒抽出法においては、ある抽出剤が特定の金属イオンに対して優れた抽出能を有している場合、その抽出剤が他の金属イオンに対しても同様に優れた抽出能を有しているかどうかを予見することは困難である。また、ある抽出剤が特定の金属イオンに対して優れた抽出能を有している場合、同種の抽出剤がその特定の金属イオンに対して同様に優れた抽出能を有しているかどうかを予見することも困難である。実際、上記したリン酸系抽出剤である2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステルやジ(2-エチルヘキシル)リン酸は、後述する比較例で示されるように、各種金属イオンに対する抽出能が各抽出剤でそれぞれ異なっている。このため、各抽出剤においては、各金属イオンに対する抽出能を予見することができない。また、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステルを利用した抽出方法による各種金属イオンに対する抽出能の結果から、同じリン酸系抽出剤であるジ(2-エチルヘキシル)リン酸を利用した抽出方法による各種金属イオンに対する抽出能についても予見することができない。
【0008】
本発明は、以上のとおりの背景から、鉛イオンを選択的に効率良く抽出分離することができる鉛イオンの抽出方法及び鉛イオンの抽出剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の鉛イオンの抽出方法は、下記一般式(1)
【0010】
【化1】
JP2013202460A_000002t.gif

【0011】
(式中、R1及びR2は、互いに同一又は異種のアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるジグリコールアミド酸を抽出剤として含有する抽出相と、鉛イオンと鉛イオン以外の金属イオンとを含む水溶液とをpH 6以下の酸性条件下で接触させて、鉛イオンを抽出相に抽出し、その後、この抽出相と酸性水溶液とを接触させることで鉛イオンを前記酸性水溶液に逆抽出して鉛イオンを回収することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の鉛イオンの抽出剤は、下記一般式(2)
【0013】
【化2】
JP2013202460A_000003t.gif
(式中、R3及びR4は、互いに同一又は異種のアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数6以上の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。)
で表されるジグリコールアミド酸を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉛イオンを選択的に効率良く抽出分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】DODGAAを用いたPb2+の抽出における各種有機溶媒の影響を示した図である。
【図2】DODGAAを用いたPb2+の抽出におけるpH依存性を示した図である。
【図3】DODGAAを用いたPb2+, Cd2+, Zn2+, Cu2+, Ni2+, Co2+, Mn2+, Cr3+の抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【図4】リン酸系抽出剤を用いたPb2+, Cd2+, Zn2+, Cu2+, Ni2+, Co2+, Mn2+, Cr3+の抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である((a) D2EHPA、(b) PC-88A)。
【図5】カルボン酸系抽出剤を用いたPb2+, Cd2+, Zn2+, Cu2+, Ni2+, Co2+, Mn2+, Cr3+の抽出率とpHとの関係を示した抽出分離曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基(-COOH)を含むジグリコールアミド酸(以下DGAAとも称する)の骨格( > N-CO-CH2-O-CH2-COOH)が多座配位子として強く2価の鉛イオンに結合することを見出し、前記のとおりの構成を有する本発明を完成するに至った。

【0017】
すなわち、本発明は、酸性官能基であるカルボキシル基を有するDGAA型抽出剤(前記式(1)又は(2)で表わされるジグリコールアミド酸を有する抽出剤)を鉛イオンの抽出剤としている。このDGAA型抽出剤は、酸濃度が低いほど、より大きな抽出能を発揮する。つまり、低酸性条件下ではカルボキシル基の一部がカルボキシレート(-COO-)となって鉛イオンに配位する。逆に高酸性条件下では、酸解離が抑えられることによって配位子としての働きが消失する。このようにpHによって抽出能を制御可能である。また、前記DGAA型抽出剤は、陰イオンであるカルボキシレートが配位子(イオン性配位子)として働くことから、配位結合的な相互作用に加えて静電結合的な相互作用が生じる。よって、カルボキシレートが作用する条件下においては強い抽出能を発揮すると考えられる。

【0018】
本発明の鉛イオンの抽出方法においては、前記DGAA型抽出剤を含有する抽出相(有機相)と、鉛イオンと鉛イオン以外の金属イオンとを含む水溶液(水相)とをpH 6以下の酸性条件下で接触させて、鉛イオンを抽出相に抽出し、その後、この抽出相と酸性水溶液とを接触させることで鉛イオンを前記酸性水溶液に逆抽出して鉛イオンを回収している。

【0019】
前記DGAA型抽出剤において、前記式(1)のR1及びR2は、互いに同一又は異種のアルキル基であるが、少なくとも一方は、炭素数6以上、好ましくは6~18、より好ましくは7~12の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基である。炭素数が6未満の場合、親油性が十分でないため、有機相の安定性に欠くことになり、水相との分相性が不良となるばかりか、抽出剤自身の水相への溶解が無視できなくなり、抽出剤の役割を果たすことができない。また、炭素数が過剰に大きい場合には、その抽出剤の製造コストが高くなるにも拘わらず、基本性能である抽出能、分離能そのものの向上には寄与しない。なお、R1及びR2については、親油性が確保されるのであれば、一方が炭素数6以上であれば他方は6未満であってもよい。例えば、前記式(1)で表わされるジグリコールアミドの好適なものとして、2つのオクチル基(-C8H17)を導入した化合物、N,N-ジオクチル-3-オキサペンタン-1,5-アミド酸:ジオクチルジグリコールアミド酸[N,N-dioctyl-3-oxapentane-1,5-amicacid:dioctyldiglycolamicacid](以下、DODGAAとも称する)を挙げることができる。

【0020】
以上、前記式(1)のR1及びR2について説明したが、前記式(2)のR3及びR4についてもそれぞれ前記式(1)のR1及びR2についての説明と同じであるので、説明を省略する。

【0021】
前記式(1)又は(2)で表わされるジグリコールアミド酸は、特開2007-327085号公報において本出願人が報告している合成方法によって得ることができる。

【0022】
前記DGAA型抽出剤を含有する抽出相において、前記式(1)又は(2)で表わされるジグリコールアミド酸の濃度を大きくすると抽出率は向上する。一方、抽出しようとする鉛イオンの量に比して前記ジグリコールアミド酸の量が十分ではない場合には抽出率の低下が起こる。このため、前記ジグリコールアミド酸の濃度が鉛イオンに対して10倍以上、好ましくは100倍以上の濃度となるように、前記DGAA型抽出剤を含有する抽出相を調製することが望ましい。

【0023】
前記DGAA型抽出剤を含有する抽出相は、前記DGAA型抽出剤を溶解可能な有機溶媒を含む。この有機溶媒は、水への溶解度が低く、抽出剤への適度な溶解度を持ち、更に抽出能力が向上するのに適したものが選択される。例えば、ヘキサン、イソオクタン、ドデカン、ケロシン、トルエン、キシレン等の炭化水素、高級アルコール、およびこれらの混合有機溶媒等が挙げられる。炭化水素としては、鎖式飽和炭化水素(アルカン系有機溶媒)や芳香族炭化水素(芳香族系有機溶媒)等を挙げることができるが、特にこれに限定されるものではない。炭化水素の炭素数は、好ましくは6以上15以下、より好ましくは炭素数6以上12以下である。高級アルコールとしては、水と混和しないもの、例えば、1-ヘキサノールや1-オクタノール等の一価アルコールを挙げることができるが、特にこれに限定されるものではない。高級アルコールの炭素数は、好ましくは6以上18以下、より好ましくは6以上12以下である。上記した有機溶媒のうち、ケロシン、アルカン系有機溶媒、高級アルコール等は、鉛イオンに対して高い抽出能を示すため好適である。

【0024】
前記DGAA型抽出剤を含有する抽出相と接触させる水溶液は、鉛イオンと鉛イオン以外の金属イオンとを含む。ここで、鉛イオン以外の金属イオンとしては、種々の遷移金属および典型金属が対象となる。廃液に含まれる金属不純物としては、一般的には、鉛以外に、例えば、カドミウム、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム等の金属が挙げられる。したがって、本発明を廃液に適用することを考慮すると、前記水溶液には、鉛イオン以外の金属イオンとして、前記した金属のうち少なくとも1種の金属のイオンが含まれていてもよい。

【0025】
本発明においては、このような水溶液と前記DGAA型抽出剤を含有する抽出相とをpH 6以下、より好ましくはpH 3以上5以下の酸性条件下で接触させている。これによって、前記水溶液中の鉛イオンを選択的に効率良く抽出することができる。なかでもpH 3以上4以下の酸性条件下では、鉛イオンに対する選択性がより高くなり、鉛イオンをより効果的に抽出することができる。pHが6を越えると、抽出を行った際にゲル化が起こったり、沈殿物が生じたりするため、抽出効率に影響を及ぼす。また、分相性が悪いため、抽出工程にも問題が発生する。

【0026】
水溶液中の鉛イオンを抽出相に抽出するにあたり、抽出相及び水相の温度を、抽出相を構成する有機溶媒の引火点以下に制御することが好ましい。その温度は、より高いほうが抽出相への抽出剤の溶解度が高くなり、抽出相-水相の分離が良好となるが、引火点による火災を防止するため、用いる有機溶媒の引火点を超えないようにする。この観点から、抽出相及び水相の温度を引火点-(5~10)℃で制御することが好ましい。

【0027】
抽出相へ鉛イオンを抽出した後、この抽出相と酸性水溶液とを接触させることで、酸性水溶液に鉛イオンを逆抽出することができる。これによって、鉛イオンを水相において回収することができる。抽出相に接触させる酸性水溶液としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等を挙げることができる。この酸性水溶液のpHは、前記DGAA型抽出剤を含有する抽出相と、鉛イオンと鉛イオン以外の金属イオンとを含む水溶液とを接触させた際のpHよりも低く調整されていることが好ましい。これによって、より効果的に逆抽出することができる。

【0028】
以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって本発明が限定されることはない。
【実施例】
【0029】
<実施例1>
(DODGAAの合成)
無水ジグリコール酸(4.17g : 0.036 mol)を三角フラスコに入れ、40 mLのジクロロメタンに懸濁させた。滴下漏斗にジクロロメタン10 mLに溶解させたオクチルアミン(7g : 0.0284 mol)を入れ、氷浴の下、撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下後、室温で一晩撹拌し、溶液が透明になっていることを確認し、反応を終了した。超純水で中性になるまで4回分液を行い、水溶性不純物を除去した。分液後の溶液に硫酸ナトリウムで脱水し、硫酸ナトリウムを濾過により取り除いた。エバポレーターにより溶媒を減圧留去した後、真空ポンプで完全に溶媒を除去した。ヘキサンで溶液が透明になるまで3回再結晶を行い、凍結乾燥機で完全に乾燥させた。白色粉末。収量9.57 g、収率94.2 %。得られた合成物は元素分析及び1H NMRにより、DODGAAであることを確認した。
【実施例】
【0030】
(DODGAAを用いた鉛イオンの抽出における有機溶媒の影響)
Pb2+を1 mM含んだストック水溶液を調製した。10 mM MES緩衝液を水酸化ナトリウム水溶液でpH 5.0に調節し、前記のストック水溶液を添加することで、Pb2+を0.01 mM含んだ水溶液(pH 5.0)を調製し、水相とした。一方、DODGAAを10 mMとなるようにトルエン、キシレン、ヘキサン、イソオクタン、ドデカン、ケロシン、1-ヘキサノール、1-オクタノールに溶解し、有機相とした。ただし、ヘキサン、イソオクタン、ドデカンについてはDODGAAの溶解性が低かったため5% 1-オクタノールを改質剤として加えた。両相を等体積加え、25℃で30分間激しく振盪した。遠心分離によって相分離を行い、両相を分取した。分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、Pb2+の濃度を測定した。分取した有機相は、等体積の1 M HNO3を用いて逆抽出を行い、同様にICP-MSを用いてPb2+の濃度を測定した。得られたPb2+濃度から抽出率を算出した。
【実施例】
【0031】
その結果、図1に示すように、どの有機溶媒を使用してもPb2+の抽出は可能である。特にヘキサン、イソオクタン、ドデカン、ケロシン、1-ヘキサノール、1-オクタノールは高い抽出能を示し、アルカン系有機溶媒、ケロシン、高級アルコールは高い抽出能を示すことが明らかとなった。トルエンやキシレンなどの芳香族系有機溶媒は抽出能が若干低下するものの、pHあるいは抽出剤濃度を増加させれば、理論上定量的な抽出が可能である。
【実施例】
【0032】
(DODGAAを用いた鉛イオンの抽出におけるpH依存性)
Pb2+を1 mM含んだストック水溶液を調製した。10 mM MES緩衝液を硝酸、水酸化ナトリウム水溶液でpH 2.0~6.0に調節し、前記のストック水溶液を添加することで、Pb2+を0.01 mM含んだ水溶液(pH 2.0~6.0)を調製し、水相とした。一方、DODGAAを10 mMとなるようにイソオクタン(5% 1-オクタノール)に溶解し、有機相とした。両相を等体積加え、25℃で30分間激しく振盪した。遠心分離によって相分離を行い、両相を分取した。分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、Pb2+の濃度を測定した。分取した有機相は、等体積の1 M HNO3を用いて逆抽出を行い、同様にICP-MSを用いてPb2+の濃度を測定した。得られたPb2+濃度から抽出率を算出した。
【実施例】
【0033】
その結果、図2に示すように、水相のpHの増加とともに、DODGAAによるPb2+の抽出率が向上した。水相の初期pHが6.0の時、抽出後のpHは5.1にまで低下する。これはDODGAAのプロトンとPb2+との交換反応によって抽出が起こるためである。pH 6.0を超えて調整された水溶液を用いた場合は、ゲル化が起こり、分相性に問題が生じた。
【実施例】
【0034】
(DODGAAを用いた鉛イオンの抽出分離)
Pb2+, Cd2+, Zn2+, Cu2+, Ni2+, Co2+, Mn2+, Cr3+をそれぞれ1 mM含んだストック水溶液を調製した。10 mM MES緩衝液を硝酸、水酸化ナトリウム水溶液でpH 2.0~4.7に調節し、前記のストック水溶液を添加することで、各金属イオンを0.01 mM含んだ水溶液(pH 2.0~4.7)を調製し、水相とした。一方、DODGAAを10 mMとなるようにイソオクタン(5% 1-オクタノール)に溶解し、有機相とした。両相を等体積加え、25℃で30分間激しく振盪した。遠心分離によって相分離を行い、両相を分取した。分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、各金属イオンの濃度を測定した。分取した有機相は、等体積の1 M HNO3を用いて逆抽出を行い、同様にICP-MSを用いて各金属イオンの濃度を測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を算出した。
【実施例】
【0035】
その結果、図3に示すように、Pb2+ >> Cu2+> Cd2+ > Zn2+ >> Mn2+, Co2+, Ni2+, Cr3+の順番で金属イオンが抽出され、DODGAAは鉛イオンに対して高い選択性を有していることが明らかとなった。特にpH 3~4において鉛イオンに対する選択性がより高くなっていることが確認された。
【実施例】
【0036】
<比較例1>
(リン酸系抽出剤を用いた鉛イオンの抽出分離)
Pb2+, Cd2+, Zn2+, Cu2+, Ni2+, Co2+, Mn2+, Cr3+をそれぞれ1 mM含んだストック水溶液を調製した。10 mM MES緩衝液を硝酸、水酸化ナトリウム水溶液でpH 2.0~4.7に調節し、前記のストック水溶液を添加することで、各金属イオンを0.01 mM含んだ水溶液(pH 2.0~4.7)を調製し、水相とした。一方、リン酸系抽出剤として2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル[2-ethylhexyl phosphonic acid mono-2-ethylhexyl ester] (以下、PC-88Aとも称する)及びジ(2-エチルヘキシル)リン酸[di-(2-ethylhexyl)phosphoric acid](以下、D2EHPAとも称する)を選定し、10 mMとなるように調製したイソオクタン溶液を有機相とした。両相を等体積加え、25℃で30分間激しく振盪した。遠心分離によって相分離を行い、両相を分取した。分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、各金属イオンの濃度を測定した。分取した有機相は、等体積の1 M HNO3を用いて逆抽出を行い、同様にICP-MSを用いて各金属イオンの濃度を測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を算出した。
【実施例】
【0037】
その結果、図4(a)に示すように、D2EHPAではZn2+ > Pb2+ > Mn2+> Cd2+ > Cu2+ > Cr3+ > Co2+, Ni2+の順番で金属イオンが抽出され、亜鉛イオンが選択的に抽出された。一方、PC-88Aを使用した場合、図4(b)に示すように、亜鉛イオンに対して非常に高い選択性を示し、鉛イオンはほとんど抽出されなかった。つまり、リン酸系抽出剤では鉛イオンの分離は困難であることが示された。また、D2EHPAとPC-88Aは同じリン酸系抽出剤であるが、各種金属イオンに対する抽出能がそれぞれ異なっており、各抽出剤の抽出分離曲線の挙動が異なっていることも確認された。
【実施例】
【0038】
<比較例2>
(カルボン酸系抽出剤を用いた鉛イオンの抽出分離)
Pb2+, Cd2+, Zn2+, Cu2+, Ni2+, Co2+, Mn2+, Cr3+をそれぞれ1 mM含んだストック水溶液を調製した。10mM MES緩衝液を水酸化ナトリウム水溶液でpH 5.0~7.7に調節し、前記のストック水溶液を添加することで、各金属イオンを0.01 mM含んだ水溶液(pH 5.0~7.7)を調製し、水相とした。一方、カルボン酸系抽出剤として2-メチル-2-エチル-1-ヘプタン酸: ネオデカン酸 [2-ethyl-2-methyl-1-heptanoic acid:neodecanoic acid](以下、Versatic 10とも称する)を用い、10 mMとなるように調製したイソオクタン溶液を有機相とした。両相を等体積加え、25℃で30分間激しく振盪した。遠心分離によって相分離を行い、両相を分取した。分取した水相はpH測定を行い、硝酸水溶液で希釈後、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて、各金属イオンの濃度を測定した。分取した有機相は、等体積の1 M HNO3を用いて逆抽出を行い、同様にICP-MSを用いて各金属イオンの濃度を測定した。得られた金属イオン濃度から抽出率を算出した。
【実施例】
【0039】
その結果、図5に示すように、Versatic 10は鉛イオンに対して選択性を有しているものの、その抽出能は非常に低く、抽出剤として有能ではないことが明らかとなった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4