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明細書 :X字状ZnOナノロッドおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-131738 (P2015-131738A)
公開日 平成27年7月23日(2015.7.23)
発明の名称または考案の名称 X字状ZnOナノロッドおよびその製造方法
国際特許分類 C30B  29/62        (2006.01)
C30B   7/14        (2006.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
FI C30B 29/62 D
C30B 7/14
B82Y 40/00
B82Y 30/00
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-002987 (P2014-002987)
出願日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発明者または考案者 【氏名】市川 洋
【氏名】廣芝 伸哉
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G077
Fターム 4G077AA04
4G077AB02
4G077AB09
4G077AB10
4G077BB07
4G077CB02
4G077ED05
4G077ED06
4G077EE05
4G077EE06
4G077HA01
4G077HA02
4G077HA11
4G077HA12
4G077HA20
4G077KA01
4G077KA03
4G077KA05
4G077KA06
要約 【課題】ZnOナノロッドを基板面に斜めに成長するようにその配向を制御する。
【解決手段】ロッドの径がナノメートルサイズのX字状酸化亜鉛ナノロッドであり、交差する2本のロッドの長軸方向のなす角度が10°~120°である。R面サファイア基板上に酸化亜鉛の薄膜を形成し、亜鉛塩水溶液に塩基を加えた溶液中に基板を浸漬することにより、前記薄膜を成長核として、基板面上にX字状に配向した酸化亜鉛ナノロッドが複数形成される。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ロッドの径がナノメートルサイズのX字状酸化亜鉛ナノロッド。
【請求項2】
交差する2本のロッドの長軸方向のなす角度が10°~120°である前記[1]に記載のX字状酸化亜鉛ナノロッド。
【請求項3】
ロッドの径が50nm~300nm、ロッドの長軸の長さが1μm~20μmである前記[1]または[2]に記載のX字状酸化亜鉛ナノロッド。
【請求項4】
ロッドの長軸方向がc軸である前記[1]~[3]のいずれかに記載のX字状酸化亜鉛ナノロッド。
【請求項5】
R面サファイア基板上に酸化亜鉛の薄膜を形成し、該薄膜を成長核として、亜鉛塩水溶液に塩基を加えた溶液中に前記基板を浸漬することにより、基板面上にX字状に配向した酸化亜鉛ナノロッドを複数形成するX字状酸化亜鉛ナノロッドの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はZnO微粒子の配向制御技術に関わり、特に応力センサー等に関わる。
【背景技術】
【0002】
ZnO(酸化亜鉛)ナノロッドは、高いアスペクト比を持つ形状の機能性ナノ材料であることから、近年、その大きな比表面積を利用し、色素増感太陽電池(非特許文献1参照)や紫外線検出センサー(非特許文献2参照)のような光デバイスをはじめ、高感度ガスセンサー(非特許文献3参照)や圧電ナノジェネレーター(非特許文献4参照)などへの応用が図られている。特に水熱合成法で作製されるZnOナノロッドは、簡便かつ低温の溶液プロセスで大面積化が容易という点で非常に優れている。上川らにより、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオンZn(OH)4-を前駆体としてZnO結晶を作製する手法が報告されている(特許文献1および非特許文献5参照)。この方法を応用して、種結晶を担持した基板を用いて、基板上にZnOナノロッドを配列して成長させることが可能である(非特許文献6参照)。
【0003】
水熱合成によるZnOナノロッドの結晶成長は、c軸方向への成長速度が速いため、基板に対して垂直方向にc軸配向して成長する。このため、デバイスへの応用は垂直方向に一軸配向したZnOナノロッド群に限定されてきた。例えばフォース(応力)センサーとして用いる場合、検出できる印加フォースの方向が垂直方向のみに限定される欠点があった(非特許文献7参照)。ナノロッドの配向方向を制御し変化させることができれば、検出方向が多軸的となり高感度なセンシングが期待できる。
【0004】
具体的には、一次元的な構造のZnOナノロッドを、基板に対して傾斜成長させ、ナノロッドどうしが互いに交差する、すなわちX字状に成長させる等の配向制御ができれば、図1のような構造のフォースセンサーが構成でき、多軸方向に印加されたフォースを検出できるようになる。図2には、上部および下部電極で挟まれたX字状ZnOナノロッドにおいて、上部電極へのフォース印加でナノロッドに起こる変形の想像図を示した。ナノロッドは基板面に対して斜めに成長しているので、フォース印加で、棒がたわむように、変形すると考えられる。この場合、フォース印加が長手方向に限られる配向性ナノロッドを用いたセンサーに比べて、ロッド自体の変形量は大きく、変形量に依存するピエゾ抵抗変化も大きくなる、すなわち、フォースセンシングの感度向上が期待される。またZnOナノロッドが誘電性の場合にも、同様な理由から、発生の難しい、正ピエゾ効果による電圧の発生も期待される。
【0005】
しかしながら、これまで傾斜成長などのナノロッド成長の配向制御に成功した報告例は見当たらず、図1、図2に示す高感度フォースセンサーを実現するX字状ナノロッドの成長制御は、未だ報告されていない。なお、図1、図2に示すX字状ZnOナノロッドの構造は、フォースセンサーのみならず、ガスセンシングなどにおいても高感度性をもたらすことが予想される。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2004-149367号公報
【0007】

【非特許文献1】M.Law、L.E.Greene、J.C.Johnson、R.Saykally、P.Yang: Nat.Mater.4、455(2005).
【非特許文献2】L.W.Ji、S.M.Peng、Y.K.Su、S.J.Young、C.Z.Wu and W.B.Cheng:Appl.Phys.Lett.94、203106(2009).
【非特許文献3】J.X.Wang、X.W.Sun、Y.Yang、H.Huang、Y.C.Lee、O.K.Tanand L.Vayssieres:Nanotechnology 17、4995(2006).
【非特許文献4】Y.Qiu、H.Zhang、L.Hu、D.Yang、L.Wang、B.Wang、J.Ji、G.Liu、X.Liu、J.Lin、F.Li andS.Han:Nanoscale 4、6568(2012).
【非特許文献5】N.Uekawa、R.Yamashita、Y.Wu and K.Kakegawa:Phys.Chem.Chem.Phys. 6、442(2004).
【非特許文献6】L.E.Greene、M.Law、D.H.Tan、M.Montano、J.Goldberger、G.Somorjai and P.Yang:Nano Lett. 5、1231(2005).
【非特許文献7】H.Takeuchi、H.Ito、K.Nojiri、S.Ono and Y.Ichikawa:Transact.Mater.Res.Soc.Jpn.、35、175(2010).
【非特許文献8】H.M.Cheng、H.C.Hsu、S.Yang、C.Y.Wu、Y.C.Lee、L.J.Liu and W.F.Hsieh:Nanotechnology、16、 16、2882(2005).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ZnOナノロッドをX字状等の基板面に斜めに成長するようにその配向を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ZnOナノロッドを成長させる基板の種類およびその面方位に着目して検討した結果、サファイア基板の面方位によって、ZnOナノロッドの成長方向を制御できることを見いだし、本発明に至った。すなわち、本発明によれば、ZnOナノロッドの配向をX字状に制御することできる。
【0010】
[1]ロッドの径がナノメートルサイズのX字状酸化亜鉛ナノロッド。
【0011】
[2]交差する2本のロッドの長軸方向のなす角度が10°~120°である前記[1]に記載のX字状酸化亜鉛ナノロッド。
【0012】
[3]ロッドの径が50nm~300nm、ロッドの長軸の長さが1μm~20μmである前記[1]または[2]に記載のX字状酸化亜鉛ナノロッド。
【0013】
[4]ロッドの長軸方向がc軸である前記[1]~[3]のいずれかに記載のX字状酸化亜鉛ナノロッド。
【0014】
[5]R面サファイア基板上に酸化亜鉛の薄膜を形成し、該薄膜を成長核として、亜鉛塩水溶液に塩基を加えた溶液中に前記基板を浸漬することにより、基板面上にX字状に配向した酸化亜鉛ナノロッドを複数形成するX字状酸化亜鉛ナノロッドの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ZnOナノロッドを用いたフォースセンサーの概念図である。
【図2】上部および下部電極で挟まれたX字状ZnOナノロッドにおいて、上部電極へのフォース印加でナノロッドに起こる変形を示す概念図である。
【図3】ZnOシード層(膜厚0.20μm)をC面サファイア基板上に成長させ、当該シード層上に成長したZnOナノロッドのSEM像を示す図である。
【図4】ZnOシード層(膜厚0.20μm)をA面サファイア基板上に成長させ、当該シード層上に成長したZnOナノロッドのSEM像を示す図である。
【図5】ZnOシード層をR面サファイア上に成長させ、当該シード層上に成長したZnOナノロッドのSEM像およびAFM像を示す。5(a)、図5(b)はシード層の膜厚がそれぞれ0.10μm、0.20μmである。図5(c)、図5(d)はシード層の膜厚がそれぞれ0.10μm、0.20μmの場合のAFM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0017】
本発明に用いる基板には、R面のサファイア基板が好ましい。当該基板上にナノサイズの酸化亜鉛(ZnO)のロッド(以下、ZnOナノロッドという)を成長させるには、成長の核になる酸化亜鉛薄膜をシード層として基板上に形成することが好ましい。酸化亜鉛薄膜は、スパッタ法、例えば高周波マグネトロンスパッタ法で形成することができ、膜厚は0.05μm~0.30μmが好ましい。酸化亜鉛薄膜を電極として利用する場合は導電性が必要である。成膜直後の酸化亜鉛薄膜は導電率が小さいので、800℃~1100℃で熱処理を施すことで導電性が向上する。また、導電性を大きくするには、500℃~800℃で基板加熱をしながらスパッタを行う方法、あるいはガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)などの元素を1~5原子%混入させたターゲットを用いてスパッタすることでも得られる。なお、酸化亜鉛ナノロッドを用いてデバイスを構成するには、ZnOナノロッド形成後、その表面をレーザー等で溶融して電極とすることが好ましい。ロッド状酸化亜鉛微粒子の端面が溶融して連続的になり、この連続的な端面に金、白金等の金属あるいは合金からなる膜を形成することができる。

【0018】
ZnOナノロッドを形成する水溶液として、亜鉛塩と塩基を含むことが好ましい。亜鉛塩としては、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、硫酸亜鉛などを用いることができる。一方塩基は、LiOH,NaOH,KOH,Ba(OH)2,Ca(OH),NH水,NaCO3,COなどを用いることができる。亜鉛塩と塩基を含む水溶液に塩基を加えてpHを11~13とすることが基板上にナノサイズの酸化亜鉛粒子を配向成長するために好ましい。水溶液の温度は50℃~95℃が好ましく、80℃~95℃がロッドの成長速度が大きく好ましい。製造上およびデバイス性能上の点から、ロッドの径は50nm~300nm、長さが1μm~20μmであることが好ましく、交差する2本のロッドの長軸方向のなす角度(基板面側からみてロッドの2つの軸がなす角)が10°~120°が好ましく、30°~90°であることが特に好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定さ
れない。
【実施例】
【0020】
(実施例)
R面サファイア基板上に、種結晶層(シード層)としてZnO膜を高周波マグネトロンスパッタ法により成膜速度20nm/minで成膜した。スパッタは、酸化亜鉛の焼結ターゲット(高純度化学研究所社製、直径100mm、厚み5mm、純度99.99%)を用い、アルゴンガス(Ar、99.9995%以上)と酸素ガス(O、純度99.999%以上)を圧力比率4:1で混合したガス雰囲気中で、基板温度600℃、成膜圧力1Pa、高周波電力100Wで行った。成膜時間は5分および 10分とした。次にZnOシード層を成膜した基板を硝酸亜鉛水溶液(Zn(NO、0.1M、50ml)と水酸化ナトリウム水溶液(NaOH、1.5 M、 50ml)の混合溶液(pH13)に浸漬し、水溶液温度を90℃一定に保ち、2時間ZnOナノロッドを成長させた。一方、比較として、A面サファイア基板とC面サファイア基板を用いた。なお、ZnOシード層の形成、および当該ZnOシード層上へのZnOナノロッドの形成の条件はR面サファイア基板と同じである。
【実施例】
【0021】
作製したZnOシード層の表面形状は原子間力顕微鏡(AFM、日本電子製JSPM-5200TM)、ナノロッドの形状は走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子製JSM5600)により観察、評価した。図3に10分間成膜し、膜厚200nmのZnOシード層を形成したC面サファイア基板上に成長させたZnOナノロッドのSEM観察像を示す。C面サファイア上のZnOナノロッドは、基板に対して垂直に成長していることがわかる。これは、ZnOシード層がC面サファイア基板上にc軸配向しているためと考えられる(非特許文献8参照)。次に、ZnOシード層を10分間成膜したA面サファイア上に作製したZnOナノロッドのSEM像を図4に示す。A面サファイア基板上のナノロッドは、C面サファイア上と比べて密度は低いが、C面の場合と同様に基板に対して垂直に成長した。これは、サファイア格子のa軸方向とZnO結晶格子のc軸方向との格子整合がよく、シード層ZnOがc軸配向するためと考えられる。ナノロッドの密度が、サファイア基板のC面の場合とA面の場合で異なるのは、サファイア基板のA面がC面に比べZnOとの格子整合は良い(格子不整合:A面0.06%、C面18.3%)ものの、A面は表面原子配列の異方性を持つため、シード層ZnO薄膜の密度にばらつきが生じたためではないかと考えられる。
【実施例】
【0022】
図5に基板としてR面サファイアを用いた場合のSEM像とAFM像を示す。図5(a)に、5分間成膜し、膜厚100nmのZnOシード層をR面サファイア上に形成した場合のZnOナノロッドのSEM像を示す。A面サファイア基板およびC面サファイア基板を用いた場合とは異なり、ZnOナノロッドが、基板に対して斜めに、ナノロッドどうし互いに交差して、すなわちX字状に成長していることがわかる。これは、サファイアのR面に対しZnOシード層がa軸配向し、実格子の側面(c軸面)からナノロッドが成長したためではないかと考えられる。図4(b)に10分間成膜し、膜厚200nmのZnOシード層を形成した場合のZnOナノロッドのSEM像を示す。ZnOシード層の成膜時間を10分間にすると、X字状成長ナノロッドに加えて、短軸長が500nm程度の径の大きなロッドが部分的に成長していることが観察された。この原因を明らかにするために、ZnOシード層の表面状態をAFM測定で調べた。ZnOシード層の成膜時間5分、10分の場合のAFM観察像を、それぞれ図4(c)、図4(d)に示す。成膜時間が10分のZnOシード層上には、島状グレインの成長が確認された。図4(b)に観られる径の大きなZnOナノロッドの成長は、この島状グレインの成長に起因しているものと考えられる。そこで、ZnOシード層の膜厚によるZnOナノロッドの成長の違いを調べたが、A面サファイア基板およびC面サファイア基板上に、いかなる膜厚あるいは結晶性のZnOシード層を形成しても、X字状のZnOナノロッドが成長することはなかった。また、R面サファイア基板上にZnOシード層を形成した場合には、X字状ZnOナノロッドは成長するが、シード層の膜厚が100nm未満の場合は、局部的にしか観られず、シード層の膜厚100nmのとき、X字状ナノロッドの密度が最も大きいことがわかった。なお、基板に対して斜めにZnOナノロッドが成長した場合もロッドの長軸方向はc軸であった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のX字状ZnOナノロッドはフォースセンサー等の各種デバイスに利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4