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明細書 :ユーザの体感品質を向上する無線LAN基地局システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-144349 (P2015-144349A)
公開日 平成27年8月6日(2015.8.6)
発明の名称または考案の名称 ユーザの体感品質を向上する無線LAN基地局システム
国際特許分類 H04W  28/02        (2009.01)
H04W  84/12        (2009.01)
H04W  88/08        (2009.01)
FI H04W 28/02
H04W 84/12
H04W 88/08
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-016812 (P2014-016812)
出願日 平成26年1月31日(2014.1.31)
発明者または考案者 【氏名】伊藤 嘉浩
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 5K067
Fターム 5K067AA21
5K067BB21
5K067CC08
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
要約 【課題】携帯端末やモバイルルータの普及により、多くのユーザが無線LAN上でWebサービスを利用しているが、ユーザの急激な増加に伴い無線LANにおける輻輳が大きな問題となる。
【解決手段】
Webサービスに対して,ユーザ視点の体感する品質を向上するようなQoS 制御を行う無線LAN 基地局システムを開発するものである。本発明は、Webサービスに対して、輻輳時に特定のフローのみを優先的に扱うのではなく、同一フロー内で優先度を設けることで、他のトラヒックへの影響を少なくするユーザ視点の体感する品質を向上するQoS 制御を行う無線LAN 基地局システムである。既存の無線LAN基地局の品質向上に係る発明であり、クライアントのサーバ等に一切改修を行う必要はない。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
WAN側インタフェースと、
前記WAN側インタフェースから入力された複数のパケットを識別するパケット識別器と、
QoS制御、およびパケットにしきい値を基に優先度を付与するオープンフローコントローラと、
優先度を付与したパケットを前記優先度により優先制御する優先制御部と、
パケットを無線LANに接続する無線LAN側インタフェースを備え、
前記パケット識別器において、
前記入力されたパケットのサービスを推定し、
前記オープンフローコントローラにおいて、前記推定したサービス応じてしきい値を選定すると共に、
IPヘッダのDSCPの内容を書き換え、
前記DSCPに基づきQoS制御を行うことを特徴とする無線LAN基地局システム。
【請求項2】
前記パケット識別器におけるサービス内容の推定は、前記入力されたパケットのパケットデータ、またはIPヘッダの情報に基づき行なわれることを特徴とする請求項1に記載の無線LAN基地局システム。
【請求項3】
前記オープンフローコントローラは、前記推定したサービスに対するしきい値を決定する、
制御用データベースを備えることを特徴とする請求項1および請求項2に記載の無線LAN基地局システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Webサービスに対して、ユーザ視点の体感する品質を向上するようなQoS制御を行う無線LAN 基地局システムに関するするものである。本発明は、既存の無線LAN基地局の品質向上に係る発明であり、クライアントのサーバ等に一切改修を行う必要はない。
【0002】
携帯端末やモバイルルータの普及により、多くのユーザが無線LAN上でWebサービスを利用している。しかし、ユーザの急激な増加に伴い無線LANにおける輻輳が大きな問題となる。従って、無線LANの輻輳時に、Webサービスの品質を損なわないような制御が必要である。特に、Webサービスの品質としては、ユーザ視点の体感品質が重要である。無線LANにおけるQoS制御の性能評価はすでに多く行われている(非特許文献1)。しかし、ユーザ視点からの評価はあまり行われていない。
【背景技術】
【0003】
発明者等は、これまで、インターネットがベストエフォート型のネットワークであることを考慮し、インターネットにおける通信品質の劣化がWeb サービスにおける体感品質(Quality Of Experinece for a Web Service;以下、QoEWeb)に及ぼす影響を調査及び評価し、以下のように大別した。
(1)QoEWebの定量的評価方法
発明者等は、QoEWebの評価方法としてユーザビリティを用いるもの(Webユーザビリティ評価)を考えている。Webユーザビリティにとしては、ISO9241-11勧告で定義された三つの尺度(有効さ,効率,満足度)を用いて評価する方法(以下、ISO 勧告評価)と、J.Nielsen等が提案する深刻度を用いるもの(以下、Nielsenの深刻度評価)を検討している。
(2)QoEWeb と通信品質との関係の評価
通信品質の劣化(スループットの低下、遅延の増加など)が、QoEWebに影響を与える場合、その支配的要因となる項目とその度合いを評価実験により定量的に調査した。
【0004】
本調査及び評価研究項目において、以下の点が明らかになった。
(1)QoEWeb の定量的評価方法に関して、Web サービスの一つであるオンラインショッピングサービスを対象とした評価実験によって、ユーザビリティを用いたQoEWebの評価は有効であること確認した。即ち、対象となるWebサービスの目的や利用者の環境に応じてQoEWebを評価する必要がある場合には、ISO 勧告評価によるユーザビリティ評価が有効である(非特許文献2)。
(2)一方、発生する問題点を基に、QoEWebを一元的に管理する場合には、Nielsenの深刻度評価が有効である(非特許文献3)。
以上、発明者等の研究成果により、通信品質の劣化がQoEWebに及ぼす影響を定量的に評価する方法が議論され、その影響を確認することができた。しかしながら、QoEWebを高めるために、どのようにネットワークを制御するかについては未検討である。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】青木他、IEEE802.11、高速無線LANにおけるEDCAベースQoS制御の性能評価について
【非特許文献2】伊藤,野村,2012 年電子情報通信学会ソサイエティ大会
【非特許文献3】Y.Ito and H.Haga,The 10thAPCHI,Aug.2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
QoEWebと通信品質の関係を、被験者による実験により調査したところ、インターネットにおける通信品質の劣化がQoEWeb に及ぼす影響は無視できないことがわかった。ある二つのWebサービスにおいて、通信品質の劣化のない環境下では、両者のQoEWebの間にほとんど差が見られなかったとしても、通信品質の劣化が生じると、両者の間に差が生じることを確認した。特に、Webサービスのトランスポート層プロトコルであるTCPの振舞い(輻輳制御やフロー制御など)により通信品質が劣化する場合、これがQoEWebに大きな影響を及ぼすことが分かった。
【0007】
本発明は、Webサービスに対して、輻輳時に特定のフローのみを優先的に扱うのではなく、同一フロー内で優先度を設けることで、他のトラヒックへの影響を少なくする、ユーザ視点の体感する品質を向上するようなQoS制御を行う無線LAN 基地局システムに関するするものである。
本発明は、既存の無線LAN基地局の品質向上に係る発明であり、クライアントのサーバ等に一切改修を行う必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、WAN側インタフェースと、前記WAN側インタフェースから入力された複数のパケットを識別するパケット識別器と、QoS制御、およびパケットにしきい値を基に優先度を付与するオープンフローコントローラと、優先度を付与したパケットを前記優先度により優先制御する優先制御部と、パケットを無線LANに接続する無線LAN側インタフェースを備え、前記パケット識別器において、前記入力されたパケットのサービスを推定し、前記オープンフローコントローラにおいて、前記推定したサービス応じてしきい値を選定すると共に、IPヘッダのDSCPの内容を書き換え、前記DSCPに基づきQoS制御を行うことを特徴とする無線LAN基地局システムである。これにより、しきい値による制御は、制御しない制御に比べて、ユーザの満足度は同等で、他のユーザのPCの処理速度を向上させ、結果として使用帯域を削減できる。
請求項2に記載の発明は、前記パケット識別器におけるサービス内容の推定は、前記入力されたパケットのパケットデータ、またはIPヘッダの情報に基づき行なわれることを特徴とする請求項1に記載の無線LAN基地局システムである。これにより、パケットのサービスの種類に応じた識別が可能になる。
請求項3に記載の発明は、前記オープンフローコントローラは、前記推定したサービスに対するしきい値を決定する、制御用データベースを備えることを特徴とする請求項1および請求項2に記載の無線LAN基地局システムである。これにより、パケットのサービスに対応したデータを、制御用データベースとして備えているので、適格なしきい値を選定して、パケットに付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】無線LAN基地局システムの全体構成
【図2】パケット長に基づいてパケットの優先度の判断を行う場合のフローチャート
【図3】実験環境
【図4】満足度の実験結果
【図5】背景トラヒックのスループット(他ユーザのトラヒック量)の実験結果
【発明を実施するための形態】
【0010】
(使用した技術)
本無線LAN基地局システムでは、QoS制御のため、WiFiにおける有線制御の標準である無線LAN のWMM(WiFi-Multimedia)と、Software-defined Network のための標準であるOpenFlow を、ならびにその実装であるOpenvswitchを使用した。

【0011】
(実施形態)
本発明の無線LAN基地局の基本構成である実施形態1の特徴を図に従って以下に説明する。

【0012】
図1に、本発明の第1実施形態である無線LAN基地局システムの全体構成を示す。
本無線LAN基地局システムは、WAN側ネットワークインタフェース、パケット識別器、パケット優先制御部、無線ネットワークインタフェース、およびパケット識別器の制御を定義するオープンフローコントローラと、これに付随する制御用データベースから構成される。

【0013】
本無線LAN基地局システムの作動を説明する。複数のユーザが利用するユーザPCは、アンテナを介して無線で、本無線LAN基地局システムと送受信できる。複数のユーザがユーザPCを操作した場合、各ユーザが選択した複数のサービスに対応する情報がパケットとしてインターネットや携帯網などのWANから、WAN側ネットワークインタフェースを介してフローとして入力される。
これら複数のパケットは、パケット識別器において、順次制御対象となるサービスのためのパケットか否かを識別される。この時、パケット識別器は、パケット内のデータ部(以下、パケットデータ)に含まれる情報を利用できる場合は、これを元に行われる。一方、暗号化などにより必要な情報が秘匿されている場合は、そのパケットのIPパケットヘッダ(以下、IPヘッダ)の情報を基に、パケット長の分布、パケット間隔の分布などを測定し、その結果から、サービス内容を推定して識別(以下、推定)される。そして、識別したサービスに応じて、優先度に相当する値(以下、優先度)をIPヘッダ内のDSCP(Differentiated Services Code Point)に書き換える。
具体的には、サービスを推定した後、オープンフローコントローラは、その推定したサービスに対するしきい値を、制御用データベースから取得すると同時に、IPパケットヘッダ内の情報としきい値を比較して、パケットの優先度が決定され、IPヘッダ内のDSCPを書き換えられる。
パケット優先制御部では、受け取ったパケットの優先度であるDSCP 値に基づいてEDCA(Enhanced Distributed Channel Access) によりQoS制御を行う。即ち、優先度の高いパケットから無線LANインタフェースへ送る。無線LANインタフェースはWMM に対応しており、アンテナを介して出力し、ユーザPCへ送信される。
ここで、本無線LAN基地局システムの処理能力に余裕がある場合は、優先度の低いパケットも処理されるが、余裕が無い場合は、優先度の低いパケットの全部または一部は処理されない。

【0014】
パケット長に基づいてパケットの優先度の判断を行う場合のフローチャートを図2に示す。
入力されたパケットに対して、パケット識別器は、IPヘッダ内のアドレス情報から、そのパケットが制御対象となるフローに属するものか否かを識別する。
対象でないフローのパケットの優先度は変更されず、そのまま出力され、通常の無線LAN基地局と同様の扱いがされる。
一方、制御の対象となるフローのパケットであるものと識別された場合は、まず、どの端末から発信されどの端末に向けたものなのかを調べる。
次に、そのフローのパケットがどのサービスに対するものなのか、即ち、Webサービスのタイプをパケットデータ内の情報から判断、もしくは、ヘッダ内の情報を基に推定する。即ち、パケット識別器は、パケットデータ内の情報を利用できる場合は、これを元に行われる。一方、暗号化などにより必要な情報が秘匿されている場合は、そのパケットのIPパケットヘッダ(以下、IPヘッダ)の情報を基に、パケット長の分布、パケット間隔の分布などを測定し、その結果から、サービス内容を推定(推定したサービス)して識別される。そして、IPヘッダ内のDSCP(Differentiated Services Code Point)を書き換える。
引き続き、オ-プンフローコントローラは、判定されたサービスにおける制御のしきい値を制御用データベースから取得する。制御用データベースは、予めパケット長と推定したサービスとしきい値との関係を市場情報より統計的(多変量解析など)にデータ分析してある。
取得したしきい値により、パケットの優先度を上げる範囲のものであるか否かを判定する。即ち、優先度の高いパケットはそのまま出力する。一方、そのパケットが優先度を高くする必要がないものであれば、優先度を下げて、パケットを出力する。ここで、本無線LAN基地局システムの処理能力に余裕がある場合は、優先度の低いパケットも処理されるが、余裕が無い場合は、優先度の低いパケットの全部または一部は処理されない。

【0015】
(有効性の確認)
本発明の無線LAN基地局システムの有効性を、ユーザを想定した被験者による実験評価により確認した。
図3に実験環境を示す。被験者は評価用端末を操作する。負荷クライアントも評価用端末を操作する。評価用端末からの信号は、アンテナを介して本無線LAN基地局システムに送受信する。送受信する信号は、スイッチングハブを介して、Webサーバ又は負荷サーバに送受信される。被験者により満足度を評価し、負荷クライアントのPCにより、背景トラヒックのスループット(他ユーザのトラヒック量:単位 Byte/sec)を測定する。
本実験環境において、被験者は評価要端末から本無線LAN基地局システムを介してWebサービスを利用し、指定されたタスクを行う。この時、輻輳を発生させるため負荷サーバ・クライアント間で背景用のHTTPトラヒック(Webトラヒック)を送受信する。ここで、背景用のHTTPトラヒック(Webトラヒック)は、本無線LAN基地局システムの処理能力に余裕が無いレベルの大きさの値(負荷)を与えている。従って、優先度の低いパケットの一部は処理されない。
本実験では、輻輳時に特定のユーザのみを優先的に扱うのではなく、同一ユーザのフロー内で優先度を設けることで、他のユーザに対する影響を少なくする。そこで、本実験では、制御のための情報として、パケット長を用い、この値が指定したしきい値よりも大きい(もしくは小さい)パケットは他のフローのパケットより優先度を高くし、それ以外のものは優先度を他のフローのパケットより低くする制御を行った。

【0016】
本実験評価では、例として以下の5種類の制御を行った。ここで、パケット長の最小値64バイト、最大値1500バイトを考慮して、しきい値として、通常の使用における比較的小さなパケット長として100バイト、比較的大きなパケット長として1400バイトを選定した。
(5種類の制御条件)
・制御なし(NoCtrl)
しきい値による4種類の制御
・制御1(Ctrl1):パケット長が100 バイトより大きいパケットを優先
・制御2(Ctrl2):パケット長が100 バイトより小さいパケットを優先
・制御3(Ctrl3):パケット長が1400 バイトより大きいパケットを優先
・制御4(Ctrl4):パケット長が1400 バイトより小さいパケットを優先
本実験では、対象サービスを地図検索サービスであるGoogle マップ(以下、マップ)と携帯電話会社NTT ドコモのWeb サイト(以下、ドコモ)の2 種類で行った。被験者が行うタスクは、マップでは指定都道府県から指定の建物を探すこと、ドコモでは4 択形式の問題の答えをページ内から探すという内容である。被験者は、20から25 才の男女13名である。Webユーザビリティ評価尺度として満足度を対象とし、他のトラヒックへの影響の評価尺度として、背景トラヒックのスループットを対象とした。

【0017】
図4に、満足度の実験結果をとして、5種類の制御条件に対して、平均値(棒グラフ)とバラツキ(範囲)で示す。マップおよびドコモの満足度は、5種類の制御条件に対して、平均値約2.2~2.4、バラツキ±0.6~0.8であり、有意な差はない。

【0018】
図5に、背景トラヒックのスループットの実験結果を示す。マップ、ドコモいずれにおいても負荷トラヒックのスループットの平均値が、制御しない場合に比べて、4種類の制御した場合、いずれも大きくなっている。背景トラヒックのスループットは、他ユーザのトラヒック量(単位 Byte/sec)であり、他のユーザPCの処理速度が向上することを示している。
以上より、4種類のしきい値による制御は、制御しない制御に比べて、ユーザの満足度は同等で、他のユーザのPCの処理速度を向上させ、結果として使用帯域を削減している。
したがって、本無線LAN基地局システムにより、Webサービスの種類によっては、Webユーザビリティを損なうことなく使用帯域を削減できている。
尚、本実験で用いた、しきい値を決める情報は、パケット長に限らず、パケット間隔などパケットのIPヘッダの情報から、その分布等を考慮して定めることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4