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明細書 :プラスチック廃棄物等を原料として用いる単結晶グラフェンの製造方法、および単結晶グラフェンを用いたタッチパネル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-147706 (P2015-147706A)
公開日 平成27年8月20日(2015.8.20)
発明の名称または考案の名称 プラスチック廃棄物等を原料として用いる単結晶グラフェンの製造方法、および単結晶グラフェンを用いたタッチパネル
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2014-021108 (P2014-021108)
出願日 平成26年2月6日(2014.2.6)
発明者または考案者 【氏名】カリタ ゴラップ
【氏名】種村 眞幸
【氏名】シャルマ スバス
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
Fターム 4G146AA01
4G146AB07
4G146AB08
4G146AC02B
4G146AC16B
4G146AD03
4G146AD22
4G146AD28
4G146BA13
4G146BA34
4G146BB23
4G146BC01
4G146BC09
4G146BC23
4G146BC25
4G146BC26
4G146BC32B
4G146BC42
4G146BC43
4G146BC44
4G146BC46
4G146CB05
4G146CB06
4G146CB12
4G146CB35
4G146DA03
4G146DA26
4G146DA40
4G146DA48
要約 【課題】プラスチック廃棄物等の低コスト炭素源を用いたCVDにより、6角形状等のドメイン状グラフェンあるいは連続膜からなる大型サイズのグラフェンの製造方法を提供する。
【解決手段】炭素源の熱分解によりグラフェンを製造する方法であって、第1の領域に炭素源である炭素化合物を配置させ、第2の領域に基板を配置させ、前記第1の領域を加熱して前記炭素化合物を蒸気化し、加熱した前記第2の領域に少なくともアルゴンと水素とを含むキャリアガスにより前記炭素化合物の蒸気を導き、当該加熱された第2の領域において、前記炭素化合物を基板上で熱分解することで、前記基板の表面上にドメイン形状のグラフェンを複数個形成する、あるいは基板面全体に連続してグラフェンを形成する、単結晶グラフェンの製造方法。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素源の熱分解によりグラフェンを製造する方法であって、第1の領域に炭素源である炭素化合物を配置させ、第2の領域に基板を配置させ、前記第1の領域を加熱して前記炭素化合物を蒸気化し、加熱した前記第2の領域に少なくともアルゴンと水素とを含むキャリアガスにより炭素化合物を含む蒸気を導き、当該加熱された第2の領域において、前記炭素化合物を熱分解することで、前記基板の表面上に正多角形あるいは円形のドメイン群からなるグラフェン、あるいは基板面全体に連続してグラフェンを形成する、単結晶グラフェンの製造方法。
【請求項2】
前記基板が、前記キャリアガスの流れる方向に対して、10°~80°傾斜している、前記請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項3】
前記炭素源がプラスチックである、請求項1または2に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項4】
前記プラスチックがポリエチレンまたはポリスチレンである請求項3に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項5】
前記アルゴンガスに対する水素ガスの流量比が0.01~0.20である、請求項1~4のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【請求項6】
前記基板が少なくともその表面に、Cu、Fe、Coのいずれかまたはそれらの合金、またはそれらの化合物、炭化ケイ素、あるいは白金その他の貴金属が形成されている、請求項1~5のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【請求項7】
前記グラフェンが、6角形もしくは円形のドメイン構造、または連続膜である、請求項1~6のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【請求項8】
前記グラフェンが100層以下の積層体である、請求項1~7のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【請求項9】
請求項8のグラフェンの積層体が転写されたタッチパネル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル、透明電極あるいは電子デバイス等に用いられる単結晶グラフェンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、炭素原子が六角形に繋がった平面構造であって化学的に安定しており、透明で、かつバリスティック伝導特性、大電流密度耐性などの優れた電気特性を持つことから、透明電極あるいは高移動度のFET(電界効果トランジスタ)などの電子デバイスに利用できる材料として注目されている。グラフェン膜としては単層、二層、あるいは数~数十層のものが知られている。
【0003】
グラフェン膜の製造方法としては、テープを用い、グラファイトから基板にグラフェンを転写する方法が知られている。しかしながら、この方法では大面積のグラフェン膜の作製が困難であり、大面積化に向けて、炭化ケイ素(SiC)から選択的にSiを除く方法、あるいはCVD(化学気相合成)法などが検討されている。
【0004】
CVDを利用してグラフェン膜を形成する方法として、キャリアガスとしてアルゴンガスを流しながら、炭素源、特に樟脳を熱分解させ、加熱したNi等の基板上に、20~35層のグラフェン積層体を形成することが開示されている(特許文献1)。樟脳の供給量が少なく、基板温度が高いとグラフェン積層体を合成できるとしている。
【0005】
金属基板上へのCVDによる単層あるいは数層のグラフェン形成の大面積化の研究もなされ、メタンガスの流量を多くした大気圧中で、Cu箔上に6角形状ドメイン群の層数の少ないグラフェン膜が形成されること(非特許文献1)、一方、同じく金属箔上に、低メタン分圧で、大きなサイズの6角形状ドメイン群の単層グラフェン膜が形成されることも知られている。このグラフェンドメイン群をmm幅の大きさに成長させることにより11000cm-1-1という大きなキャリア移動度が得られることが確認されている(非特許文献2)。ドメイン状とは、基板表面に島状(アイランド状)の単結晶グラフェン膜(ドメイン)が複数個独立して存在している状態を示す。
【0006】
しかし、上記従来の方法では、6角形等の規則正しい形状の多数層からなるグラフェンが安定的に得られていなかった。このため、金属基板からプラスチック等の他の基板へ転写する場合には、何度も転写作業を繰り返さなければならず、その手間がかかること、また転写による品質の劣化は避けられなかった。特にタッチパネル等への応用には、可視光の透過率が多少低下しても導電性の向上がより重要であり、多数積層された所定形状のグラフェンに対するニーズが高い。そして、グラフェン膜を商用的に利用するため、製造コストの低減と膜の大面積化のニーズが高い。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第4804272号
【0008】

【非特許文献1】A. W. Robertson, J. H. Warner, Nano Lett. 2011, 11, 1182-1189
【非特許文献2】Z. Yan, J. Lin, Z. Peng, Z. Sun, Y. Zhu, L. Li, C. Xiang, E. L. Samuel,C. Kittrell, and J. M. Tour, ACS Nano 2012,6, 9110.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記問題点に鑑みて、プラスチック廃棄物等を炭素源として用いたCVDにより、結晶粒あるいは連続膜であり、かつ層数制御が可能なグラフェンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、原料およびCVDの条件を工夫することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の単結晶グラフェンの製造方法および当該単結晶グラフェンを用いたタッチパネルが提供される。
【0011】
[1]炭素源の熱分解によりグラフェンを製造する方法であって、第1の領域に炭素源である炭素化合物を配置させ、第2の領域に基板を配置させ、前記第1の領域を加熱して前記炭素化合物を蒸気化し、加熱した前記第2の領域に少なくともアルゴンと水素とを含むキャリアガスにより炭素化合物を含む蒸気を導き、当該加熱された第2の領域において、前記炭素化合物を熱分解することで、前記基板の表面上に正多角形あるいは円形のドメイン群からなるグラフェン、あるいは基板面全体に連続してグラフェンを形成する、単結晶グラフェンの製造方法。
【0012】
[2]前記基板が、前記キャリアガスの流れる方向に対して、10°~80°傾斜している、前記[1]に記載の単結晶グラフェンの製造方法。
【0013】
[3]前記炭素源が、プラスチックである、前記[1]~[2]のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【0014】
[4]前記プラスチックがポリエチレンまたはポリスチレンの少なくとも一方である、前記[3]に記載のグラフェンの製造方法。
【0015】
[5]前記アルゴンガスに対する水素ガスの流量比が0.01~0.20である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【0016】
[6]前記基板が少なくともその表面に、Cu、Al、Fe、Co、Ni、Au、Ag のいずれか、もしくはそれらの合金、またはそれらの化合物、炭化ケイ素、あるいは白金その他の貴金属が形成されている、前記[1]~[5]のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【0017】
[7]前記グラフェンが、6角形もしくは円形のドメイン構造、または連続膜である、前記[1]~[6]のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【0018】
[8]前記グラフェンが100層以下の積層体である、前記[1]~[7]のいずれかに記載のグラフェンの製造方法。
【0019】
[9]前記[8]によって得られたグラフェンの積層体が転写されたタッチパネル。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に使用されるCVD装置の概要を示す図(図1-a)、本発明に使用される炭素源としてのプラスチック廃棄物を示す図(図1-b)、および本発明のグラフェン膜の形成時の温度プロファイルを示す模式図である(図1-c)。
【図2】成膜条件、特にプラスチック廃棄物の熱分解時のカーボンラジカル量の制御によって連続膜グラフェン、ドメイン状グラフェンという形態の異なるグラフェンが基板上に形成されることを示す図である。
【図3】原料であるプラスチック廃棄物の成分分析をするため、FT-IR分析結果(図3-a)、EGA分析結果(図3-b)、パイロシス‐ガスクロマトグラフィ‐マススペクトロメトリにて分析結果(図3‐cおよび図3‐d)を示す図である。
【図4】Cu箔上のグラフェン単層膜の成長の様子を光学顕微鏡にて観察をした結果を示す図である。
【図5】Cu箔上のグラフェン単層膜をSEMにて観察した結果を示す図(図5-a)、グラフェン膜を4ヶ所でラマンスペクトルを測定した結果を示す図(図5-b)である。
【図6】グラフェン単層膜の成長の様子をSEMにて観察した結果を示す図である
【図7】グラフェン結晶をSiO/Si基板に転写した後の形状を光学顕微鏡で観察した結果を示す図(図7-a)、転写後のグラフェン単層膜のラマンスペクトルを測定した結果を示す図(図7-b)、グラフェン結晶のエッジをAFMにより観察した結果を示す図(図7‐c)である。
【図8】円形状のグラフェン単層膜の光学顕微鏡にて観察した結果を示す図(図8-a),同膜をSEMにて観察した結果を示す図(図8-b)、同膜をラマンスペクトルを測定した結果を示す図(図8-c)である。
【図9】ドメイン状グラフェン単相膜の光学顕微鏡観察結果(図9-a)、ドメイン状グラフェン単層膜の中央部に2層以上のグラフェン膜が形成されている様子を光学顕微鏡観察した結果(図9-b)とSEMにて観察した結果(図9-c)、単層膜と2層膜のラマンスペクトル結果を示す図(図9-d)である。
【図10】複数層グラフェンの成長の様子をSEMにて観察した結果を示す図である。
【図11】基板上に形成したドメイン状グラフェンまたは連続膜グラフェンをSiO/Si基板に転写するプロセスを示す図である。
【図12】得られた2層グラフェンと2層超の複数層グラフェンの可視光透過率およびシート抵抗を測定する様子とその結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0022】
図1-aに示すように、本発明においては、CVD装置は円筒状容器内でキャリアガスを流す方向の上流側に昇華あるいは蒸発させる原料を配置し、下流側に基板を配置する。そして、当該CVD装置の第1の領域に炭素源の化合物、第2の領域に基板を配置させる。前記第1の領域を加熱して前記炭素源の化合物を蒸気化し、加熱した前記第2の領域に少なくともアルゴンと水素とを含むキャリアガスにより前記蒸気を導き、当該加熱された第2の領域において、前記化合物を熱分解することで、前記基板の表面上にドメイン形状のグラフェンあるいは基板全体に連続したグラフェンを形成する。ただし、本発明においては、基板が前記キャリアガスの流れる方向に対して、10°~80°傾斜していることが好ましく、キャリアガスの対向面側(基板表面側)とは反対側の基板面、すなわち、基板表面側より炭素化合物の蒸気の少ない裏面にグラフェンを形成することがより好ましい。基板裏面側ではガス圧が相対的に低く、特有の核形成と核成長が生じて6角形状グラフェン等の定型のドメイン状グラフェンが形成される。さらに、前記炭素源が、プラスチックであることが好ましく、ポリエチレンまたはポリスチレンの少なくとも一方あるいはそれらの混合物であることがより好ましい。キャリアガスとして、アルゴンガスに対する水素ガスの流量比が0.01~0.20であり、CVD装置内は減圧でも構わないが、大気圧であることがより好ましい。基板としては、少なくともその表面に、Cu、Fe、Co、Niのいずれかもしくはそれらの合金、またはそれらの化合物、炭化ケイ素、あるいは白金その他の貴金属が形成されていることが好ましい。なお、基板は600℃~1100℃に加熱することが好ましく、800℃~1050℃がより好ましい。

【0023】
基板に形成されるグラフェンは、6角形、円形のドメイン構造であることが好ましく、基板面全体に連続した膜であることがより好ましい。また、ドメイン状でも連続した膜であっても、100層以下の積層体であることが好ましい。さらには、この積層体をプラスチック等の他の基板に転写してタッチパネルを形成することが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
図1‐aに示すように、グラフェン膜は、二つの加熱ゾーンに分かれた石英管(内径50mm、長さが900mm)からなるCVD装置にて形成した。グラフェン膜を形成する基板として厚み20μmのCu箔(純度99.99%)を用いた。原料として材料包装に使用される固体廃棄物のプラスチックを使用した(図1‐b参照)。Cu箔はセラミクス製の基板ホルダーにキャリアガスが流れる方向から傾斜した角度で設置した。設置前にCu箔はアセトンで30分間超音波洗浄した。原料供給前に予め、Hガスを100sccmで流す雰囲気中、1020℃で30分の熱処理を行った。Cu箔の熱処理により、粒径の増大や結晶面を変更し、六角形のグラフェン結晶の核形成に良好である。また、熱処理を行うことにより、セラミクス基板からの放出される酸素がCu箔裏面と反応し、グラフェン製膜時の酸素放出が抑制される。基板加熱、基板熱処理、グラフェンの製膜、および冷却の順に行うプロセスのパターンを図1‐cに示す。
【実施例】
【0026】
炭素源として、3mgのプラスチック廃棄物を低温加熱ゾーン(400~480℃)にあるセラミクスボートに設置した。キャリアガスとしてアルゴンガスと水素ガスとの混合ガスをそれぞれ98sccm、2.5sccmで流して大気圧中でグラフェンを製膜した。また、グラフェン結晶を連続的に大きく成長させるには、炭素原子の流速が小さい、すなわち単位時間あたりの供給量を抑制することが必要である。炭素原子の流速が抑制された場合であっても、相対的に流速が小さい場合は単層グラフェン膜、相対的に流速が大きい場合は複数層グラフェン膜が形成される。
【実施例】
【0027】
Cu箔上に形成されたグラフェン膜の表面にポリメチルメタクリレート(PMMA)をコート・乾燥し、一方Cu箔は硝酸鉄水溶液(50mg/ml)にてエッチングを行って除去した。その後、PMMA/グラフェン積層膜はSiOコートしたSi(SiO/Si)基板に転写し、その後PMMAをアセトンで溶解した。最後に、グラフェン膜を希釈した硝酸で洗浄して残留硝酸鉄を除去し、その後乾燥空気で乾燥させた。
【実施例】
【0028】
合成されたグラフェン膜の評価は、光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープ、VHX-500)、走査電子顕微鏡(Hitachi製S-4300、20KV)、ラマン分光計(NRS3300レーザーラマン分光計、波長532.08nmのレーザー励起)、を使用して行った。さらに、AFMによる解析は、JSPM-5200にて行った。プラスチック廃棄物の成分分析は、FT-IR(KASCO製FT-IR-6300)およびパイロシス‐ガスクロマトグラフィ‐マススペクトロメトリ(Shimadzu GCMS-QP2010)にて行った。
【実施例】
【0029】
図2に示すように、プラスチック廃棄物の熱分解により生じるカーボンラジカルの量によって、核形成とドメイン状グラフェンの成長が制御できる。概して、連続膜はCu箔の表面側(キャリアガス対向面)に形成され、一方、ドメイン状グラフェンはCu箔の裏面側に形成された。Cu箔はセラミクス基板ホルダーに対して斜めに設置されており、Cu箔裏面側ではセラミクス基板ホルダーから放出される酸素と反応してグラフェン核形成数が減少することが考えられる。
【実施例】
【0030】
原料であるプラスチック廃棄物の組成はFT-IRにより解析し、その結果を図3に示す。図3‐aに示すように、719cm-1(CH2bending)、729cm-1(CH2bending)、1491cm-1CH2bending stretch),、および2915cm-1(asymmetric CH2 stretch)にピークがあり、プラスチック廃棄物中にポリエチレンの存在を示している。他のピーク、すなわち、697cm-1(aromatic CH deformation)、743cm-1(aromatic CH deformation)、1596cm-1(aromatic C-C bond stretch)はポリスチレンの存在を示している。ポリエチレンとポリスチレンのいくつかのピークは1465cm-1、2624cm-1、2848cm-1で重なっている。ポリエチレンとポリスチレンの成分比と熱分解中のラジカルの成分比を知るために、EGA(Evolved Gas Analyzer)とパイロシス‐ガスクロマトグラフィ‐マススペクトロメトリにて分析し、図3‐bはEGA分析結果、図3‐cおよび図3‐dはパイロシス‐ガスクロマトグラフィ‐マススペクトロメトリ分析の結果であるが、これらより、ポリエチレンとポリスチレンの比は86%:14%(質量%)であることが判明した。
【実施例】
【0031】
Cu箔上のグラフェン結晶の成長および形態を調べるために光学顕微鏡観察を行った。グラフェン結晶が明確に見えるように大気中で150℃、10分間の熱処理を行い、Cu箔表面の部分酸化を行った。なお、この熱処理では、グラフェン結晶が本来有する特性に与えない。図4‐aでは、90~100μmサイズの6角形のグラフェン結晶がCu箔上に多数成長していることがわかる。図4‐bおよび図4‐cでは、Cuの結晶内、結晶粒界、さらに双晶境界上にグラフェン結晶が成長していることがわかる。そして、クラスタを形成するように複数の結晶が融合合体している様子が観察できる。また、隣接するグラフェンのエッジの配向が類似していることもわかる。図4‐dでは、画面全体に均一にグラフェンが成長している。個々のグラフェン結晶が連続的に大きくなり、融合合体してセンチメートルサイズの連続膜が形成される。
【実施例】
【0032】
低核密度はグラフェン結晶が大きく成長するためには重要であり、低核密度にするにはプラスチック廃棄物の熱分解速度を小さくしてカーボンラジカルのフローを制限する。そして、グラフェン結晶を大きくするには、カーボンラジカルの生成率を小さくするとともに成長時間を長くする。図5‐aは成長時間90分で100μm程度に成長した個々のグラフェン結晶のSEM観察をしたものであり、デンドライトエッジが観察され、より大きな結晶に成長する可能性を示している。したがって、本大気圧中でのCVD法によれば、ミリメートル、さらにはセンチメートルサイズの結晶に成長する可能性があると期待される。図5‐bはグラフェン膜の4ヶ所でのラマンスペクトルであり、欠陥が少なく高品質結晶を表すDバンドを示している。グラファイトであるGおよび2Dのピークが、それぞれ1590cm-1、2700cm-1に見られ、Gピークの強度よりも2Dピークの強度が大きく、単層グラフェンであることを示している。また、Gピークおよび2Dピークの半値幅(FWHM)はそれぞれ19cm-1、44.2cm-1であり、グラフェンに関する既報告値と一致する。なお、グラフェン膜の成長中、プラスチック廃棄物の熱分解温度は徐々に上昇し、ガスクロマトグラフィの結果と相関がある。そして、この熱分解温度の上昇は6角形グラフェンがより大きく成長するためには好ましく、熱分解温度の上昇は1.5℃/分であった。単層グラフェンの成長の変化を図6‐a~図6‐dに示す。
【実施例】
【0033】
個々のグラフェン結晶をその形状を維持したまま、SiO/Si基板に転写した。図7‐aはSiO/Si基板上の6角形状グラフェン結晶の光学顕微鏡写真である。少し明るい部分がいくつか確認でき(点線で囲った部分がその一つ)その明るい部分がグラフェン結晶であり、転写前の6角形状が維持されている。図7‐bは転写後のグラフェン結晶のラマンスペクトルを示しており、製膜時のCu箔基板の影響を無視できる特性を示している。製膜時と同様にランダムに選んだ4ヶ所の測定結果であり、転写後もDピークは無視できる程度に小さく、グラファイトのGピーク、Dピークの2次ピーク2Dはそれぞれ1586cm-1、2698cm-1にあり、Gピークおよび2Dピークの半値幅、さらには、Gピークに対する2Dピークの強度比より、単層グラフェン膜であることを示している。SiO/Si基板に転写後のマイクロメートルサイズのグラフェン結晶のエッジをAFMにより観察した結果を図7‐cに示す。グラフェン結晶の6角形のエッジを示しており、大部分のエッジは折り畳まれており、グラフェン膜の厚みを正確に測定することはできないが、約0.5nmであると見積もった。
【実施例】
【0034】
他の実験によれば、プラスチック廃棄物の熱分解速度を大きくすると、円形のグラフェン結晶が生成することが分かった。図8‐aは円形のグラフェン結晶の光学顕微鏡写真であり、成長速度の角度に依存して、グラフェン結晶の形状が多葉形から円形に変化することが分かった。図8‐bはCu箔上に成長した円形状のグラフェン結晶であり、グラフェン結晶の形状は、炭素原子の表面拡散とエッジの反応プロセスに大きく依存する。グラフェン結晶の最終形状は、理論上も実験上も対称形になるとのことであり、等法的成長速度の場合は、ジグザグのエッジを有する6角形になり、成長速度の角度依存が大きくなると円形状になる。したがって、大きいグラフェン結晶を得るには、等方拡散を維持することが必要である。図8‐cは様々な個所を選んで測定した円形グラフェンのラマンスペクトルを示している。Dピークは無視できる程度に小さく、グラファイトのGピーク、Dピークの2次ピーク2Dはそれぞれ1595cm-1、2696cm-1にあり、Gピークおよび2Dピークの半値幅、さらには、Gピークに対する2Dピークの強度比より、単層グラフェン膜であることを示している。
【実施例】
【0035】
さらに、R(熱分解温度の上昇率)<1.5℃/分で成長したグラフェン結晶は炭素原子の供給が不十分であり、結晶の成長が止まり、結晶のサイズが小さい。一方、R>1.5℃/分では、2層あるいは数層のグラフェン結晶となった。図9‐aは単層グラフェンの光学顕微鏡写真であるが、図9‐bは単層のグラフェン上に第2層目が成長をしていることを示す光学顕微鏡写真である。また、図9‐cは、単層グラフェンの中央部に2層以上のグラフェンの核成長していることを示すSEM写真である。図9‐dはグラフェン結晶の層が単層(ポイント2)と2層(ポイント1)の場合の違いを示すラマンスペクトルであり、ポイント1の方がポイント2に比して、Gピークに対する2Dピークの大きさの比は大きく、単層の内部に2層構造が形成されていることを示している。以上より、プラスチック廃棄物の分解速度を大きくして炭素原子の供給速度を大きくすると、2層以上のグラフェンが形成されると考えられる。従来のメタン熱分解のCVD法ではねじれ構造の2層グラフェン超格子が観察され、2層グラフェンの大部分はエネルギー上安定なAB積層であったが、本プラスチック廃棄物を原料として用いたCVD法による2層グラフェンは、優先的にAB積層またはねじれ構造になる。以上より、炭素ラジカルの供給速度の制御により、6角形、円形、単層、2層以上という、形状あるいは積層数を変えることができる。なお、図10‐a、図10‐b、図10‐c、図10‐dの順に複数層グラフェンの核形成から融合合体、そして連続膜への変化が単層膜同様に観察された。
【実施例】
【0036】
先に、ドメイン状グラフェンあるいは連続膜グラフェンをSiO/Si基板に転写するプロセスを簡単に述べたが、図11にそのプロセスと示す。特に、転写時の不純物除去が高い導電性グラフェンを得るには重要であることが分かった。希釈硝酸(10重量%)での洗浄を転写前後で行い、金属や残留不純物の除去を行った。
【実施例】
【0037】
プラスチック廃棄物を原料としてCu箔上に形成された2層グラフェン膜は、可視光透過率94%、シート抵抗約1kΩであった(図12‐a参照)。また2層超の数層グラフェン膜は、可視光透過率90%、シート抵抗約520Ωであった(図12-b参照)。さらに2端子によるシート抵抗(導電率)測定の様子を図12-cに示すが、これはタッチパネルやディスプレイへの応用の可能性を示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法によって得られたグラフェンはタッチパネル、電子デバイス用透明電極あるいはディスプレイ等に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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