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明細書 :光線力学療法のための新規糖連結光感受性物質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-030703 (P2015-030703A)
公開日 平成27年2月16日(2015.2.16)
発明の名称または考案の名称 光線力学療法のための新規糖連結光感受性物質
国際特許分類 C07H  15/26        (2006.01)
A61K  31/7052      (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  41/00        (2006.01)
FI C07H 15/26 CSP
A61K 31/7052
A61P 17/00
A61P 35/00
A61K 41/00
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2013-161518 (P2013-161518)
出願日 平成25年8月2日(2013.8.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1.(その1) 発行年月日 2013年2月5日 刊行物名 日本消化器病学会雑誌 第110巻 第2号 発行者名 一般財団法人日本消化器病学会 (その2) 発行年月日 2013年2月20日 刊行物名 日本消化器病学会雑誌 第110巻臨時増刊号(総会) 発行者名 一般財団法人日本消化器病学会 (その3) 開催日 2013年3月21日から2013年3月23日(公開日は2013年3月23日) 集会名 第99回日本消化器病学会総会 主催者 一般財団法人日本消化器病学会 2. 掲載年月日 2013年4月1日 掲載アドレス http://pac.jfc.or.jp/endo-jfe/g_gaiyo.php?zid=f-00305
発明者または考案者 【氏名】片岡 洋望
【氏名】林 則之
【氏名】城 卓志
【氏名】矢野 重信
出願人 【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C057
4C084
4C086
Fターム 4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ55
4C084AA11
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB26
要約 【課題】光線力学療法用の光感受性物質である抗腫瘍活性を有するクロリン誘導体及びその金属錯体の提供。
【解決手段】一般式(I):
JP2015030703A_000010t.gif
[式中、R1~R20は、同一又は異なって、F-、マンノース-S-などを示す。R21及びR22は、同一又は異なって、水素原子、アルキル又はE-(CH2)n-を示す。ここで、Eは、アリール、アミノ、アルキルアミノ、イミノなどを示し、nは0~3の整数を示す。]で表されるクロリン誘導体又はその金属錯体。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(I):
【化1】
JP2015030703A_000008t.gif
[式中、R1~R20は、同一又は異なって、F-、マンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示し、これらのうちの少なくとも1つはマンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示す。ここで、Dは炭化水素基を示す。
R21及びR22は、同一又は異なって、水素原子、アルキル又はE-(CH2)n-を示す。或いは、R21及びR22は、互いに結合して環を形成してもよい。ここで、Eは、アリール、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又はシクロアルキルを示し、nは0~3の整数を示す。]で表されるクロリン誘導体又はその金属錯体。
【請求項2】
R5~R20が全てF-を示す、請求項1に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
【請求項3】
R1~R4が、同一又は異なって、マンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示す、請求項1又は2に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
【請求項4】
前記金属錯体が一般式(II):
【化2】
JP2015030703A_000009t.gif
[式中、Mは金属原子を示す。R1~R22は前記に同じ。]で表される、請求項1に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
【請求項5】
Mが遷移金属原子を示す、請求項4に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
【請求項6】
Mが、Pt、Pd、Zn又はAuを示す、請求項4又は5に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
【請求項7】
前記マンノースが、D(+)-マンノースである、請求項1~6のいずれか一項に記載のクロリン誘導体又は金属錯体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体を含む医薬組成物。
【請求項9】
腫瘍又は固形癌の光線力学的治療用である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
皮膚病の光線力学的治療用である、請求項8に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた抗腫瘍活性を有するクロリン誘導体及びその金属錯体、並びに該クロリン誘導体及びその金属錯体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光線力学的治療法(PDT)は、ターゲットとなる疾患患者の血管内又は組織中に光感受性物質を投与し、癌又は腫瘍組織に集積させた後、特定波長の光を照射することにより活性酸素を発生させ、癌細胞のみを特異的に死滅させる治療方法である。PDTは、光化学的反応により腫瘍細胞のみを選択的且つ特異的に死滅させることができる低侵襲な癌治療法である。
【0003】
PDTでは、特定波長の光により光感受性物質が励起され、活性化された光感受性物質からの直接的又は間接的なエネルギー移動により三重項酸素から一重項酸素が生成され、この一重項酸素により腫瘍細胞が破壊されると考えられている。
【0004】
PDTに使用される光感受性物質としては、ポルフィリン誘導体が周知であり、ポリヘマトポルフィリンエーテルやタラポルフィリンナトリウムなどは既に実用化がされている。しかしながら、ヘマトポルフィリンやその2量体の最大吸収波長は630 nmであって、モル吸光係数も3000と低いので、PDTの治療効果が表層癌に限定されてしまう。また、副作用の問題も存在する。そのため、これらの点を改善することを目的として、種々のポルフィリン誘導体が研究されている。
【0005】
PDTにより、一般的には、癌や腫瘍組織だけでなく、正常組織も損傷させることになるので、光毒性を示す光感受性物質は可能な限り少量を使用することが要求される。また、癌や腫瘍組織周囲の正常組織への障害を最小限にするために、光感受性物質が正常組織に比べて癌や腫瘍組織に選択的、特異的に集積することが好ましい。さらには、副作用を軽減させるために、光が照射されない条件では、細胞毒性が低いことが要求される。糖をポルフィリン環に結合させることによって、光照射下での強い細胞毒性を維持しながら、暗所下での細胞毒性を軽減できることが近年発見され、PDT用の薬剤として糖連結ポルフィリン誘導体を利用することが提案されている。
【0006】
そして、特許文献1及び非特許文献1では、S-グルコシル化又はS-ガラクトシル化された5,10,15,20-テトラキス(テトラフルオロフェニル)クロリンが調製され、これらは光毒性を有していたこと、S-グルコシル化された化合物はS-ガラクトシル化された化合物より強い光毒性を示したことが報告されている。
【0007】
さらに、非特許文献2では、上記文献に記載されている、5,10,15,20-テトラキス[4-(β-D-グルコピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル]-2,3-[メタノ(N-メチル)イミノメタノ]クロリン(以下、H2TFPC-SGlcと略記する)について、日本において臨床で使用されているタラポルフィン(Talaporfin)とのPDTの効果を比較したこと、H2TFPC-SGlcはインビトロでは癌細胞に対する細胞毒性が約30倍高く、インビボでもタラポルフィンと比べて有意に腫瘍増殖が抑制されたことが報告されている。
【0008】
また、特許文献2には、S-グリコシル化によりガラクトース、マンノース、キシロース及びグルコースから選択される単糖等を結合させたポルフィリン誘導体について記載され、当該ポルフィリン誘導体は光細胞毒性作用を有し、光線力学的療法に使用することが記載されている。特許文献2には、クロリン誘導体についての記載もあるが、結合させられているのはグルコースのみであり、またフェニル基がフッ素で置換されたものは記載されていない。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】国際公開第2008/102669号
【特許文献2】特表2005-500335号公報
【0010】

【非特許文献1】S. Hirohara et al., Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology, 97, 22-33 (2009)
【非特許文献2】M. Tanaka et al., Anticancer Research, 31, 763-770 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1、非特許文献1及び2で報告されているH2TFPC-SGlcより更に高い殺腫瘍細胞効果を有する光感受性物質が求められている。
【0012】
そこで、本発明は、優れた抗腫瘍活性を有するクロリン誘導体及びその金属錯体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
癌組織の間質に浸潤しているマクロファージは、腫瘍関連マクロファージ(Tumor-Associated Macrophage)(TAM)と呼ばれる。TAMは、(1)癌細胞の増殖、浸潤の促進、(2)腫瘍血管新生の促進、(3)腫瘍免疫抑制、(4)転移促進に関連している。そのため、TAMを標的とすれば腫瘍の抑制効果が得られると考えられている。
【0014】
TAMはマンノースレセプターを発現しているので、本発明者らは、このTAMを標的とするために、H2TFPC-SGlcのグルコースをマンノースに置換した化合物5,10,15,20-テトラキス[4-(α-D-マンノピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル]-2,3-[メタノ(N-メチル)イミノメタノ]クロリン(以下、H2TFPC-SManと略記することもある)を合成し、各種試験を行った。すると、H2TFPC-SManは、意外にも、TAM以外の通常の癌細胞に対してもH2TFPC-SGlcとほぼ同様の殺細胞効果を示し、その上、インビボではH2TFPC-SGlcより有意に高い腫瘍縮小効果を示すという知見を得た。
【0015】
本発明は、これら知見に基づき完成されたものであり、次のクロリン誘導体又はその金属錯体、医薬組成物等を提供するものである。
【0016】
(I) クロリン誘導体又はその金属錯体
(I-1) 一般式(I):
【0017】
【化1】
JP2015030703A_000003t.gif

【0018】
[式中、R1~R20は、同一又は異なって、F-、マンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示し、これらのうちの少なくとも1つはマンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示す。ここで、Dは炭化水素基を示す。
R21及びR22は、同一又は異なって、水素原子、アルキル又はE-(CH2)n-を示す。或いは、R21及びR22は、互いに結合して環を形成してもよい。ここで、Eは、アリール、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又はシクロアルキルを示し、nは0~3の整数を示す。]で表されるクロリン誘導体又はその金属錯体。
(I-2) R5~R20が全てF-を示す、(I-1)に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
(I-3) R1~R4が、同一又は異なって、マンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示す、(I-1)又は(I-2)に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
(I-4) 前記金属錯体が一般式(II):
【0019】
【化2】
JP2015030703A_000004t.gif

【0020】
[式中、Mは金属原子を示す。R1~R22は前記に同じ。]で表される、(I-1)に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
(I-5) Mが遷移金属原子を示す、(I-4)に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
(I-6) Mが、Pt、Pd、Zn又はAuを示す、(I-4)又は(I-5)に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体。
(I-7) 前記マンノースが、D(+)-マンノースである、(I-1)~(I-6)のいずれか一項に記載のクロリン誘導体又は金属錯体。
【0021】
(II) 医薬組成物
(II-1) (I-1)~(I-7)のいずれか一項に記載のクロリン誘導体又はその金属錯体を含む医薬組成物。
(II-2) 腫瘍又は固形癌の光線力学的治療用である、(II-1)に記載の医薬組成物。
(II-3) 皮膚病の光線力学的治療用である、(II-1)に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0022】
本発明のマンノースが結合したクロリン誘導体は、既に報告されているグルコースが結合したクロリン誘導体よりも優れた抗腫瘍活性を有している。また、本発明のクロリン誘導体は、ポルフィリン系化合物より長波長の領域である赤色可視光線650-660 nmを至適波長とするため、より深部の癌細胞の光線力学的治療への適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】合成例1におけるH2TFPC-SManのNMRスペクトルを示す図である。(a) 1H NMR spectra in CD3OD (CD3OD = 3.34 ppm)、(b) 19F NMR spectra in CD3OD (CF3COOH = -76.05 ppm)
【図2】試験例2におけるPDT後のカスパーゼ3/7活性(%control)を示すグラフである。*p<0.052、CD206染色の細胞数/mm2、CD206/F4/80の比を示すグラフである。***コントロール及びクロリンに対してp<0.001、###コントロール、クロリン及びG-Cに対してP<0.001【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。

【0025】
クロリン誘導体又はその金属錯体
本発明のクロリン誘導体は、下記一般式(I)で表されることを特徴とする。

【0026】
【化3】
JP2015030703A_000005t.gif

【0027】
[式中、R1~R20は、同一又は異なって、F-、マンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示し、これらのうちの少なくとも1つはマンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示す。ここで、Dは炭化水素基を示す。
R21及びR22は、同一又は異なって、水素原子、アルキル又はE-(CH2)n-を示す。或いは、R21及びR22は、互いに結合して環を形成してもよい。ここで、Eは、アリール、アミノ、アルキルアミノ、イミノ又はシクロアルキルを示し、nは0~3の整数を示す。]

【0028】
炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基である。炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、α-ブチレン基、β-ブチレン基、シクロへキシレン、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基等が挙げられる。

【0029】
本発明のクロリン誘導体は、フェニル基のo位、m位、p位のいずれにマンノースが結合していてもよく、また、各フェニル基において、マンノースが2個以上結合していてもよい。

【0030】
R5~R20は、好ましくは全てF-を示す。また、R1~R4は、好ましくはマンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示し、より好ましくはマンノース-S-を示す。

【0031】
本発明のクロリン誘導体は、好ましくは、R5~R20が全てF-を示し且つR1~R4の少なくとも1つがマンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示す。この場合、R1~R4は、より好ましくは全てがマンノース-S-、マンノース-D-S-又はマンノース-O-D-S-を示し、更に好ましくは全てがマンノース-S-を示す。

【0032】
マンノースとしては、D(+)-マンノース及びL(-)-マンノースのいずれでもよいが、好ましくはD(+)-マンノースである。また、マンノースはα型及びβ型のいずれであってもよい。

【0033】
アルキルは、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数が1~6のアルキルである。アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル等が挙げられる。アルキルには、アルキルアミノのアルキル部分も含まれる。

【0034】
アルキルアミノは、アルキルによるモノ置換アミノ及びジ置換アミノのいずれであってもよい。

【0035】
アリールとは、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味し、具体例としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。

【0036】
シクロアルキルは、好ましくは炭素数が3~7のシクロアルキルである。シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル等が挙げられる。

【0037】
R21とR22は、互いに結合して環を形成してもよく、形成される環としては、3~7員の飽和若しくは不飽和炭化水素環又はヘテロ環が挙げられる。R21とR22が結合した基としては、例えば-CH2-N(R)-CH2-が挙げられる(ここで、Rは水素原子、メチル、エチル等である)。

【0038】
本発明のクロリン誘導体としては、例えば、5,10,15,20-テトラキス[4-(α-D-マンノピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル]クロリン、5,10,15,20-テトラキス[4-(α-D-マンノピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル]-2,3-[メタノ(N-メチル)イミノメタノ]クロリン等が挙げられる。

【0039】
本発明のクロリン誘導体の金属錯体としては、好ましくは下記一般式(II)で表される金属錯体である。

【0040】
【化4】
JP2015030703A_000006t.gif

【0041】
[式中、Mは金属原子を示す。R1~R22は前記に同じ。]

【0042】
Mとしては、例えば、遷移金属、II族、III族、IV族の金属が挙げられ、好ましくは遷移金属を示し、より好ましくはPt、Pd、Zn及びAuを示す。

【0043】
本発明のクロリン誘導体及びその金属錯体は、公知の方法(例えば、国際公開第2008/102669号)を参考にすることで化学的に合成することが可能である。

【0044】
本発明のクロリン誘導体は、既に報告されているグルコースが結合したクロリン誘導体よりも優れた抗腫瘍活性を有している。また、本発明のクロリン誘導体又はその金属錯体は、癌細胞集積性及び選択性に優れることや、癌組織間質に存在するTAMの抑制効果についても期待できる。

【0045】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、上記クロリン誘導体又はその金属錯体を含有することを特徴とする。

【0046】
本発明のクロリン誘導体は、既に報告されているグルコースが結合したクロリン誘導体よりも優れた抗腫瘍活性を有しているので、本発明の医薬組成物は、腫瘍又は固形癌の光線力学的治療に有用である。

【0047】
本発明における光線力学的治療に適用できる癌の種類としては、悪性腫瘍に分類される癌である。具体的な癌の種類としては、食道癌、肺癌、胃癌、子宮頸癌、子宮体癌等の子宮癌、皮膚癌、前立腺癌、大腸癌、脳腫瘍、膀胱癌、肝臓癌、膵癌、胆管癌、腎臓癌、頭頸部癌、乳癌、卵巣癌などが挙げられる。皮膚癌には、原発性(扁平上皮癌、基底細胞癌、表皮付属器癌)の他にも内臓癌の皮膚転移も含まれる。

【0048】
また、本発明のクロリン誘導体及びその金属錯体は、悪性腫瘍に加えて、良性腫瘍に対しても親和性を有するので、本発明の医薬組成物は、皮膚乾癬症、日光角化症等の皮膚病の光線力学的治療にも有用である。

【0049】
さらに、本発明のクロリン誘導体の腫瘍集積性を利用して、PET等との併用により、癌の診断に利用することも可能である。

【0050】
本発明のクロリン誘導体は、ポルフィリン系化合物より長波長の領域である赤色可視光線650-660 nmを至適波長とするため、表層癌だけでなく、表皮よりも深い領域にある腫瘍又は固形癌に対する適用が期待できる。

【0051】
本発明の医薬組成物は、カテーテル、静脈内又は筋肉内注射により投与でき、非経口的な経路で投与することができる。また、内視鏡下散布チューブによる散布や経皮的にも投与でき、体内の深部の腫瘍組織へ直接局所注入することもできる。

【0052】
本発明の医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物に対して投与される。また、本発明の医薬組成物は、その使用形態に応じて生物学的に許容される担体、賦形剤等を任意に含有できる。また、本発明の医薬組成物は、常套手段に従って製造することができる。

【0053】
本発明の医薬組成物を注射用製剤として調製する場合、クロリン誘導体又はその金属錯体を含む無菌の水溶液若しくは分散液又は無菌の凍結乾燥剤の形に製剤化することができる。液体担体としては、例えば、水、生理食塩水、エタノール、含水エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、植物油等を挙げることができる。

【0054】
本発明の医薬組成物には、スクロース、ラクトース、第2リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース等の希釈剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等の滑剤;デンプン、糖蜜、ポリビニルピロリドン、グルコース、セルロース、その誘導体等の結合剤を含み得る。

【0055】
本発明の医薬組成物の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して、最終的には医師の判断により適宜決定できる。

【0056】
本発明における光線力学的治療は、本発明の医薬組成物を投与した後、治療すべき部位にクロリン誘導体又はその金属錯体の吸収帯を含む光線を照射することにより行う。具体的には、500 nm以上の光線照射により一重項酸素を発生させることで殺腫瘍細胞効果を発揮できるが、最大吸収波長の光の割合が高い光線を照射することが好ましい。

【0057】
本発明における光線力学的治療での光線照射量は、治療効果が得られる範囲であれば特に限定されないが、例えば1~100 J/cm2である。

【0058】
光線の照射源としては、例えば、レーザー、ハロゲンランプ、LED等が挙げられる。レーザーとしては、励起に必要な波長の光線が得られるものであれば特に限定されず、色素レーザー、アルゴンレーザー、半導体レーザーなどが挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例により制約を受けるものではない。
【実施例】
【0060】
合成例1 マンノース連結クロリン
特許文献1の実施例1の(3)S-グルコシル化工程において、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルチオアセチルに代えて、J. Defaye et al., Carbohydrate Research, 130, 317-321(1984)に基づいて合成した2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-マンノピラノシルアセチルチオアセチルを用いた以外は、特許文献1の実施例1と同様にして、糖がマンノースである5,10,15,20-テトラキス[4-(α-D-マンノピラノシルチオ)-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル]-2,3-[メタノ(N-メチル)イミノメタノ]クロリン(H2TFPC-SMan(M-クロリン))を得た(収率49.9%)。MALDI-TOF-MASS (ブルカー社製): m/z for C71H61F16N5O20S4 ([M]+) Calcd 1735.25, Found 1735.23. Anal (Perkin-Elmer 240C). Found (Calcd. for C71H61F16N5O20S4・5H2O): C, 46.90 (46.69); H, 3.66 (3.92); N, 3.91. NMRスペクトル(JEOL JNM-EX400): 図1(a) 1H-NMR, (b) 19F-NMR
【実施例】
【0061】
また、比較基準物質である5,10,15,20-テトラキス(ペンタフルオロフェニル-2,3-[メタノ(N-メチル)イミノメタノ]クロリン(以下、H2TFPC (クロリン)と略記する)は、特許文献1の実施例1の(2)H2TFPCの製造(ポルフィリン誘導体からクロリン誘導体への変換)に記載の工程に基づいて、H2TFPC-SGlc (G-クロリン)は、特許文献1の実施例1の(3)H2TFPC-SAcGlcの製造(S-グルコシル化)及び(4)H2TFPC-SGlcの製造(アセチル保護基の除去)に記載の工程に基づいて合成した。
【実施例】
【0062】
試験例1
96ウェルプレートに細胞株(胃癌(MKN28, MKN45)、大腸癌(HT29, HCT116, CT26))を5×103個/wellで播種した。培地は、RPMI1640+10%FBS、McCOY's 5A+10%FBS、l-DMEM+10%FBSを使用した。その後、37℃5%CO2で24時間インキュベートした。
【実施例】
【0063】
7種類の濃度に調整した薬剤溶液(H2TFPC-SMan、H2TFPC-SGlc、H2TFPC)と培地を混合し、プレートに投与した。その後、37℃5%CO2で4時間インキュベートした。
【実施例】
【0064】
培地を除去し、PBSで一度洗浄し、再度PBSを加えた。660 nm赤色LEDを22 J/cm2照射した。その後、PBSを除去し、培養液に戻し、37℃5%CO2で24時間インキュベートした。WST-8アッセイキット(Dojindo, Kumamoto, Japan)を使用して50%細胞発育阻止濃度を算出し,PDTの効果判定を施行した。
【実施例】
【0065】
結果を表1に示す。
【実施例】
【0066】
【表1】
JP2015030703A_000007t.gif
【実施例】
【0067】
表1の結果から、M-クロリンはG-クロリンと同等の殺細胞効果を示すこと、及びクロリンと比べて非常に強い殺細胞効果を示すことがわかる。
【実施例】
【0068】
試験例2
CT26細胞を96ウェルプレートに5×103個/wellで播種し、l-DMEM+10%FBS培養液で培養し、クロリン、G-クロリン又はM-クロリンを0.1μMずつ各ウェルに投与した。4時間後に660 nmの赤色光線LEDを22 J/cm2照射し、照射後直後(0時間)、1、2、4、8時間後にCaspace 3/7をCaspase-Glo 3/7 Assay kit (Promega)を用いて測定した。
【実施例】
【0069】
結果を図2に示す。図2から、M-クロリン及びG-クロリンは、クロリンに比べてPDTによるアポトーシスを強力に誘導したことが分かる。
【実施例】
【0070】
試験例3
BALB/cマウス(各群各々7匹ずつ、雌4週齢)にマウス大腸癌細胞株CT26を1×106個皮下注射した。1週間後、直径約5 mmの皮下腫瘍ができたところで、BALB/cマウスに、クロリン、G-クロリン又はM-クロリン(各々6.25μmol/kg)を腹腔内投与した。投与24時間後に660 nm赤色LEDを22 J/cm2照射した。7日後に、再度クロリン、G-クロリン又はM-クロリン(各々6.25μmol/kg)を腹腔内投与した。投与24時間後に660 nm赤色LEDを22 J/cm2照射した。その後、経時的に腫瘍の大きさを測定し、腫瘍体積は長径×短径×短径により算出した。
【実施例】
【0071】
結果を図3に示す。図3から、同種移植モデルでは、M-クロリンがG-クロリン、クロリン及びコントロールに比べて有意な腫瘍縮小効果を有することが認められた。
【実施例】
【0072】
試験例4
BALB/cマウスにマウス大腸癌細胞株CT26の皮下腫瘍を作成し、上記試験例3と同様にPDTを施行した。施行後3日後に皮下腫瘍を摘出し、ホルマリン固定後、マクロファージのマーカーである抗F4/80モノクロナール抗体(ab6640, Abcam)、及びTAMのマーカーである抗CD206モノクロナール抗体(MCA2235T, Bio-Rad)で免疫染色し、各腫瘍の間質に存在するマクロファージ、TMAの個数をカウントし定量した。
【実施例】
【0073】
結果を図4に示す。図4から、F4/80及びCD206では、コントロール及びクロリンに比べて、G-クロリン及びM-クロリンにおいて細胞数が有意に低下したが、G-クロリン及びM-クロリンの間には有意差は認められなかったこと、しかし、CD206/F4/80の比で比べると、M-クロリンは他と明らかに差を認め、M2マクロファージ(TAM)に特異的に作用していることが分かる。
【実施例】
【0074】
試験例5
CT26細胞をプレパラート上で培養し、2μMのM-クロリンを培養液中に投与し、4時間後又は24時間後に洗浄した。洗浄後、カバーグラスを載せ、周囲を包埋し、共焦点レーザー顕微鏡(Nikon共焦点レーザー顕微鏡C1)にて543 nmのレーザー光照射で励起し、605-675 nmの範囲の細胞内のM-クロリンからの放出光を観察した。
【実施例】
【0075】
結果を図5に示す。図5から、CT26へのM-クロリンの取り込みが確認された。M-クロリンは、癌細胞の表面に接着するなどの様式ではなく、癌細胞の細胞膜を通過し細胞質内に取り込まれ、光線照射によりPDTによる殺細胞効果を発揮することが明らかとなった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4