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明細書 :物品の分解処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-048427 (P2015-048427A)
公開日 平成27年3月16日(2015.3.16)
発明の名称または考案の名称 物品の分解処理方法
国際特許分類 C08J  11/16        (2006.01)
B01J  23/26        (2006.01)
B01J  23/745       (2006.01)
FI C08J 11/16 ZAB
B01J 23/26 M
B01J 23/74 301M
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2013-181764 (P2013-181764)
出願日 平成25年9月3日(2013.9.3)
発明者または考案者 【氏名】塚田 祐一郎
【氏名】高橋 宏雄
【氏名】水口 仁
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4F401
4G169
Fターム 4F401AA03
4F401AA13
4F401AA40
4F401AB06
4F401AC02
4F401CA13
4F401CA71
4F401CA75
4F401DA15
4F401EA17
4F401EA18
4F401EA77
4F401FA01Z
4G169AA15
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169CA04
4G169CA10
4G169EA08
要約 【課題】 タイヤ、ポリ塩化ビニル、ケイ素樹脂等の、硫黄、ハロゲン、ケイ素を成分としてを含む分解処理が困難な物品を容易に分解処理する方法を提供する。
【解決手段】 硫黄、ハロゲン、ケイ素を成分として含む物品を被処理物として分解処理する方法であって、前記被処理物の表面に熱活性作用を備える半導体をコートする工程と、表面に半導体がコートされた被処理物を、空気雰囲気下において、前記半導体が熱活性作用を生じる温度以上に加熱することにより、被処理物を水と炭酸ガスとに分解するとともに、被処理物に含まれていた硫黄成分は金属硫化物とし、ハロゲン成分は金属ハロゲン化物とし、ケイ素成分はケイ素酸化物として残渣中に捕獲する分解処理工程とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
硫黄、ハロゲン、ケイ素を成分として含む物品を被処理物として分解処理する方法であって、
前記被処理物の表面に熱活性作用を備える半導体をコートする工程と、
表面に半導体がコートされた被処理物を、空気雰囲気下において、前記半導体が熱活性作用を生じる温度以上に加熱することにより、被処理物を水と炭酸ガスとに分解するとともに、被処理物に含まれていた硫黄成分は金属硫化物とし、ハロゲン成分は金属ハロゲン化物とし、ケイ素成分はケイ素酸化物として残渣中に捕獲する分解処理工程と、
を備えることを特徴とする物品の分解処理方法。
【請求項2】
前記被処理物の表面を半導体によりコートする工程として、
半導体を含む懸濁液に被処理物を浸漬し、懸濁液から被処理物を引き上げて乾燥させる操作を行うことを特徴とする請求項1記載の物品の分解処理方法。
【請求項3】
前記半導体として、Cr2O3あるいはα-Fe2O3を使用し、前記分解処理工程においては、表面に半導体がコートされた被処理物を350~500℃に加熱することを特徴とする請求項1または2記載の物品の分解処理方法。
【請求項4】
タイヤを被処理物とし、前記分解処理工程においては、前記被処理物に含まれる硫黄成分を金属硫化物として残渣中に捕獲することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の物品の分解処理方法。
【請求項5】
PVCを主要成分とする物品を被処理物とし、前記分解処理工程においては、前記被処理物に含まれる塩素成分を金属塩化物として残渣中に捕獲することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の物品の分解処理方法。
【請求項6】
Siを主要成分とする物品を被処理物とし、前記分解処理工程においては、前記被処理物に含まれるケイ素成分をケイ素酸化物として残渣中に捕獲することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の物品の分解処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、ポリ塩化ビニル、ケイ素樹脂等の硫黄、塩素、ケイ素を含む物品を分解処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは「半導体の熱活性(熱励起)」を利用する廃プラスチックの完全分解ならびに揮発性有機化合物の完全分解について研究を進めてきた(特許文献1~4、非特許文献1、2)。有機廃棄物の場合には最終分解物は常に水と炭酸ガスである。しかし、有機化合物が硫黄、塩素、ケイ素を含むようなガス(あるいは“ガス化が可能な低分子化合物”)の場合にも、酸化物半導体が損傷しない限り、分解処理が可能である。その場合、酸化物半導体の中で最も安定なCr2O3(融点:2200℃)が最適であった。また、分解対象物の濃度も比較的低濃度であった。
【0003】
しかし、タイヤ、ポリ塩化ビニル、ケイ素樹脂等の、硫黄、塩素、ケイ素を含む固体化合物を処理対象物とする場合は、ガス状物質を分解する場合のように、被処理物を触媒担持ハニカムの中を通過させて分解処理する方法を適用出来ない。一般に、硫黄、塩素、ケイ素を含む化合物の処理は、ガス状物質や固体でも有効な手立てはない。特に、白金触媒を使った触媒燃焼法でも白金が硫黄、塩素、ケイ素で容易に被毒されるため、触媒を使わない直接燃焼のような方法に頼らざるを得ない。しかし、含塩素化合物の場合には直接燃焼で処理をしても、通常の600-700℃では猛毒のダイオキシンが生成する為、燃焼温度を800℃以上に上げる必要がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第4517146号
【特許文献2】特開2010-214359号公報
【特許文献3】特開2013-022564号公報
【特許文献4】特開2013-146649号公報
【0005】

【非特許文献1】T. Shinbara, T. Makino, K. Matsumoto and J. Mizuguchi: Completedecomposition of polymers by means of thermally generated holes at hightemperatures in titanium dioxide and its decomposition mechanism, J. Appl. Phys.98, 044909 1-5 (2005)
【非特許文献2】水口 仁:半導体の熱活性によるFRPの完全分解とリサイクル技術、加工技術 47, 37-47 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
硫黄、塩素、ケイ素を含む固体廃棄物(物品)、例えば、タイヤ、ポリ塩化ビニル(PVC)、ケイ素樹脂を、半導体の熱活性(熱励起)を利用する方法によって分解した際には、きわめて高濃度のS、Cl、Siが発生することが予想される。触媒被毒の問題から、通常の触媒燃焼法では対処できず、また塩素の場合にはダイオキシン等の発生も避けられない。さらに分解処理により発生する大量のSO2、HCl、SiO2の処理も問題である。
本発明は、タイヤ、ポリ塩化ビニル、ケイ素樹脂等の、硫黄、塩素等のハロゲン、ケイ素等を含む、分解処理が困難な物品を比較的低温で容易に分解処理する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る物品の分解処理方法は、硫黄、ハロゲン、ケイ素を成分として含む物品を被処理物として分解処理する方法であって、
前記被処理物の表面に熱活性作用を備える半導体をコートする工程と、
表面に半導体がコートされた被処理物を、空気雰囲気下において、前記半導体が熱活性作用を発現する温度以上に加熱することにより、被処理物を水と炭酸ガスとに分解するとともに、被処理物に含まれていた硫黄成分は金属硫化物とし、ハロゲン成分は金属ハロゲン化物とし、ケイ素成分は酸化ケイ素等のケイ素酸化物として残渣中に捕獲する分解処理工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る分解処理方法においては、Cr2O3、Fe2O3等の半導体の熱活性作用を利用して物品を分解処理する。半導体の熱励起作用あるいは熱活性作用は、室温では全く触媒効果を示さない半導体を350-500℃に加熱すると、突如として強い酸化力が発現する現象である。
強い酸化力とは、別の言い方をすれば、「電子を引き抜く力が強い」ということである。一例として、Cr2O3をコージライト組成のハニカム上に塗布した支持体を用意する。この上にプラスチック板を置き、空気中で500℃に加熱する。強い酸化力を持つ酸化クロムはポリマーとの接触点でポリマーから結合電子を引き抜き、ポリマー内に不安定なカチオン・ラジカルを形成する。500℃に加熱されたポリマーでは、ラジカルはポリマー内を自由に走破し、ポリマー全体を不安定化する。その結果、ポリマーは安定状態を維持できずに、自滅し、小さな分子へと逐次分裂する。これがラジカル開裂と呼ばれる現象である。エチレンやプロパンのように裁断化された分子は空気中の酸素と反応し、水と炭酸ガスになる(完全燃焼)。
【0009】
上記の過程を図1に示す。分解プロセスは、半導体の酸化力による(1)ラジカルの生成、(2)ラジカル開裂、そして、(3)小分子の酸素との完全燃焼反応の3つの素過程から構成される。重要なことは、ポリマーやタール等の分子は裁断化され、酸素との反応で燃焼するのであるから、ポリマーやタールは熱エネルギーとして100%回収されていることになる。
このように半導体の熱活性作用を利用すると、ポリマーのような巨大分子を簡単に分解することができ、FRP(fiber reinforced plastics)のポリマー・マトリックスを分解し、強化繊維を回収すること、ボンド磁石等からレア・アースを回収することが容易に可能となる。さらに焼成炉から発生するタールやVOC(volatile organic compound: 揮発性有機化合物)等の分解にも有効に利用することができる。
【0010】
本発明においては、硫黄、ハロゲン、ケイ素等の成分を含む物品を被処理物として分解処理するものであり、被処理物に含まれる有機成分は、Cr2O3、Fe2O3等の半導体の熱活性作用により、水と炭酸ガスに完全分解される。また、被処理物に含まれる硫黄、ハロゲン、ケイ素等の成分は、金属硫化物、金属ハロゲン化物、ケイ素酸化物として残渣中に捕獲され、分解処理操作の際に発生する排出ガス中には、硫黄、ハロゲン、ケイ素等の成分は全く含まれないか、あるいはH2S、HCl、HBr等として僅かに含まれるのみである。被処理物に含まれるハロゲン成分には、Cl、Br等がある。配管等に使用されるポリ塩化ビニルはClを含み、Brを含む不燃溶剤や有機顔料等もある。これらのハロゲン成分を含む被処理物は、金属ハロゲン化物として残渣中に捕獲される。
本発明方法によれば、半導体をコートした被処理物を半導体の熱活性作用が発現する温度に空気雰囲気下で加熱するのみで被処理物を分解処理することができる。半導体の被膜の厚味は被処理物の大きさにも依存するが、5-10ミクロン程度とし、被処理物の大きさに比例して厚くする必要がある。
【0011】
被処理物の表面を半導体によりコートする方法としては、半導体を含む懸濁液に被処理物を浸漬し、懸濁液から被処理物を引き上げて乾燥させる操作を行う方法が利用できる。被覆膜の厚みはディップ・乾燥過程を繰り返すことにより厚くすることが可能である。半導体の粉末を分散液により分散させて懸濁液を調製することができる。また、ディップ以外の方法として、懸濁液をスプレー塗布することも可能である。
半導体による熱活性作用は被処理物の表面に付着した半導体から発生し、被処理物中でラジカル開裂と呼ばれる現象が連続的に発生して被処理物が分解されるから、被処理物の表面に薄く半導体を付着させるだけで十分である。
【0012】
熱活性作用を生じる半導体としては、分解処理時における加熱温度下、及び空気雰囲気(酸素を含む雰囲気)下において安定な物質であれば適宜使用することができ、例として、以下の化学式で示される物質が挙げられる。BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、CeO2、TiO2、ZrO2、V2O5、Y2O3、Y2O2、Nb2O5、Ta2O5、MoO3、WO3、MnO2、Fe2O3、Fe3O4、MgFe2O4、NiFe2O4、ZnFe2O4、ZnCo2O4、ZnO、CdO、MgAl2O4、ZnAl2O4、Ti2O3、In2O3、SnO2、PbO2、UO2、Cr2O3、MgCr2O4、FeCrO4、CoCrO4、ZnCrO4、WO2、MnO、Mn3O4、Mn2O3、FeO、NiO、CoO、Co3O4、PdO、CuO、Cu2O、Ag2O、CoAl2O4、NiAl2O4、Ti2O、GeO、TiO、、VO、MoO2、IrO2、RuO2
これらのうち、Cr2O3及びα-Fe2O3は作用が安定していることから有効に利用することができる。処理対象物が大型物品で、半導体を大量に使用する必要がある場合はα-Fe2O3のような廉価なものが使いやすい。
【0013】
本発明方法においては、処理対象とする物品はとくには限定されないが、例えば、タイヤを被処理物とした場合は、分解処理工程において、前記被処理物に含まれる硫黄成分を金属硫化物として残渣中に捕獲することにより、有害物を外部に排出させることなく、確実に分解処理することができる。
また、PVCを主要成分とする物品を被処理物とした場合は、分解処理工程において、前記被処理物に含まれる塩素成分を金属塩化物として残渣中に捕獲することにより容易に分解処理することができる。
また、Siを主要成分とする物品を被処理物とした場合は、分解処理工程において、前記被処理物に含まれるケイ素成分をケイ素酸化物として残渣中に捕獲することにより、容易に分解処理することができる。
【0014】
なお、被処理物を分解処理する際は、所要の耐熱性を有する加熱炉を用いて被処理物を加熱して処理すればよい。加熱炉を用いて処理する際に、コージライト組成のハニカム(三次元網目構造体)にCr2O3等の熱活性作用を備える半導体を担持させたもの(触媒ブロック)を利用し、この触媒ブロック上に被処理物をのせて加熱する、あるいは触媒ブロックを通して分解処理時に発生するガスを排出させることにより、有害ガスが排出されることをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る物品の分解処理方法によれば、硫黄、ハロゲン、ケイ素といった分解が困難な成分を備える物品を容易にかつ安全に分解処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】半導体の熱活性作用によりポリマーの分解過程を示す説明図である。
【図2】本発明に係る分解処理方法を利用してタイヤ片、PVC、Siゴムを分解した例を示す図である。
【図3】タイヤ片を被処理物とし、α-Fe2O3をコートして処理した状態を示す写真である。
【図4】PVC片を被処理物とし、α-Fe2O3をコートして処理した状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2に、本発明に係る分解処理方法を利用して、(1)タイヤ片、(2)PVC、(3)Siゴムを分解処理する方法と処理結果の概略図を示す。
タイや片、PVC、Siゴムのそれぞれの表面に、熱活性作用を奏するCr2O3をコートした後、空気中、500℃で10-20分間、加熱する。加熱時間は試料の厚み等で前後する。Cr2O3のコートは、Cr2O3の粉末をアセトン等の有機溶媒に分散した懸濁液に、それぞれのサンプルを浸漬させ、引き上げて乾燥させることで行った。空気中での加熱は、Cr2O3をコートした被処理物を、坩堝に入れ、マッフル炉で加熱した。

【0018】
タイヤ片については、熱処理した結果、灰色の残渣物のみが残った。PVCの場合には内部が空洞となり、空洞内に灰分が残留した。Siゴムは、純白色のきらきらしたものが残渣物として残った。
このように、本発明に係る分解処理方法によれば、被処理物の表面をCr2O3によってコートして熱処理することにより、残渣物を残して、被処理物を完全に分解することができる。

【0019】
(実施例1)
タイヤを約20×20×3 mmの小片に切断したものを被処理物として実験を行った。
250mlのアセトンにバインダーとしてポリカーボネート2g溶解し、この溶液にCr2O3粉末約20gを分散させた懸濁液を調製した。
上記タイヤ片(約50g)を、Cr2O3粉末の懸濁液に数秒間浸漬して、引上げ、室温で乾燥した。タイヤ片のサンプル表面には約5-10mm程度のCr2O3膜が形成された。

【0020】
Cr2O3によって表面コートしたタイヤ片のサンプルをアルミナ製の坩堝に入れ、マッフル炉の中で、空気雰囲気、500℃で15分間加熱した。その結果、サンプルのタイヤ片は完全に分解され、坩堝の中には大部分が灰色の残渣が観測され、残渣の上にCr2O3粉末が僅かに残存していた。

【0021】
分解処理後の残渣について、X線蛍光分析ならびに原子吸光分析を行った結果、残渣の成分として以下の元素が検出された。
S 2.2wt%
Zn 73.22wt% (加硫促進助剤:酸化亜鉛に由来)
Ca 3.98wt% (フィラー:CaCO3に由来)
Cr 14.34wt% (Cr2O3に由来)
この分析結果から、タイヤ片に含まれていた硫黄は、ZnS、CrSあるいはCaSの形で残渣の中に捕獲されていることがわかる。CaはフィラーとしてCaCO3の形でサンプルのタイヤ片に含まれていたと考えられる。

【0022】
また、マッフル炉中でサンプルを加熱している際に排出されるガスを、質量分析法によって分析した。この分析結果から、排出されるガスは水と炭酸ガスであり、これにごく僅かのH2Sの生成が認められた。
上記の残渣成分の分析と排出ガスの分析結果から、サンプルのタイヤ片に含まれていた硫黄成分の大部分は金属の硫化物として残渣の形で捕獲されたことが分かる。すなわち、タイヤには、加硫剤あるいは加硫促進剤として硫黄成分が添加されているが、これらの硫黄成分は金属の硫化物として残渣中に捕獲されること、また加硫促進助剤として酸化亜鉛や酸化マグネシウムといった無機化合物も添加されているが、これらの無機化合物も金属の硫化物として残渣中に捕獲されることがわかる。
なお、タイヤに含まれている有機物については、前述したCr2O3の熱活性作用により水と炭酸ガスに完全分解され、処理操作時に外部に有害物として排出されることはない。

【0023】
このように、被処理物であるタイヤの表面をCr2O3等の半導体粉末によってコート(被覆)し、半導体粉末の熱活性作用が生じる温度に加熱して処理する方法は、金属の硫化物が残渣として残るのみであり、有害物をなんら外部に排出させることなく処理できること、処理操作がきわめて容易である点でタイヤの処理方法としてきわめて有効に利用することができる。

【0024】
(実施例2)
実施例1のタイヤを市販の塩ビパイプのPVCに置き換え、同様の実験を行った。
厚みが約2mmの塩ビ管から約2cm四方のPVCのサンプルを切り出し、被処理物として実験を行った。このサンプルを実施例1で調製したCr2O3粉末の懸濁液に浸漬し、引上げて、室温で乾燥した。この操作によりサンプル表面がCr2O3粉末によってコートされた。
Cr2O3粉末によって表面をコートしたPVCのサンプルを、実施例1と同様に、アルミナ製の坩堝に入れ、マッフル炉の中で、空気雰囲気、500℃で15分間加熱した。その結果、坩堝の中に、薄い灰色を帯びた粒子とやや黄色味を帯びた白色の吸湿性のある粒子との2成分からなる残渣が観測された。

【0025】
この残渣について、X線蛍光分析ならびに原子吸光分析を行い、成分を分析した。下記の分析結果は、3個のサンプルについて分析した結果の平均値である。
Cl 19wt%
Ca 54wt% (フィラー:CaCO3に由来)
Ti 3.2wt% (着色材の希釈材(TiO2)に由来)
Pb 18wt% (安定材:鉛化合物に由来)
この分析結果は、残渣の主成分がCl、Ca、Ti、Pbであることを示す。Caはフィラーとして添加されているCaCO3に由来する。Tiは、PVCパイプの色を灰色にする、カーボン・ブラック(着色材)の希釈材として添加されている白色顔料であるTiO2に由来し、TiO2の形で残存する。Pbは安定材としてPVCに添加されている鉛化合物に由来する。Pbは酸化鉛のような形で存在すると考えられる。
上記の分析結果から、ClがCaCl2として残渣に捕獲されたことが分かる。CaCl2は吸湿性があり、空気中の水分を吸い、潮解性を示した。

【0026】
本実施例においても、サンプルのPVC片を加熱分解処理する際の排出ガスを質量分析した。その結果、排出ガスは水と炭酸ガスであり、これにごく僅かのHClの生成が認められた。この結果から、PVCサンプルの有機物成分はほぼ完全に水と炭酸ガスに分解され、PVCサンプルに含まれていた塩素成分は金属の塩化物として大部分が残渣の形で捕獲されることが分かった。

【0027】
(実施例3)
実施例1で使用したタイヤ片を被処理物とし、Cr2O3をα-Fe2O3に置き換えて、実施例1と同様にして分解処理する実験を行った。この場合には、タイヤに含まれていた硫黄成分は黒色のFeSあるいはFeS2の形で捕獲された。
図3(a)は分解処理前のタイヤ片、図3(b)は分解処理後の状態を示す。分解処理後には、被処理物の支持体の上に灰色を帯びた白色残渣(おそらく充填物のCaCO3)が認められ、この上に、黒色の残渣(FeSまたはFeS2)が観測された。本実施例においても、被処理物を分解処理する際に発生した排出ガス中には、被処理物に含まれる有機物は含まれていなかった。

【0028】
(実施例4)
実施例2で使用したPVC片を被処理物とし、Cr2O3をα-Fe2O3に置き換えて、実施例2と同様に被処理物を分解処理する実験を行った。この場合には塩素成分はFeCl2あるいはFeCl3の形で捕獲された。
図4は分解処理後のPVC片(異なる2つのサンプル)の写真である。Cr2O3を使用した場合と同様に、残渣物は内部が空洞になっている。

【0029】
(実施例5)
Siゴム(Siゴム栓)を被処理物として実験を行った。熱活性作用を発現する半導体としてα-Fe2O3を使用した。このα-Fe2O3約20gを上述のアセトン溶液に分散させた懸濁液を調製し、これに前記サンプル(10×10×3 mm)を懸濁液に浸漬し、室温で乾燥させた後、アルミナ製の坩堝に入れ、マッフル炉の中で、空気雰囲気、500℃で15分間加熱した。
その結果、坩堝の中に、純白のきらきらした粉末が観測された。この残渣はX線蛍光分析ならびに原子吸光分析の結果SiO2が主成分であることが分かった。残渣中にSi-Fe(磁性体)も存在するのかもしれないが、この化合物は同定できなかった。この結果から、Siゴムを被処理物とし、熱活性作用を発現する半導体としてα-Fe2O3を使用した場合、Si成分は酸化物として残渣に捕獲されることが分かる。
なお、本実施例においても、熱処理中の排出ガスを質量分析した結果、排出ガスは水と炭酸ガスのみが観測された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3