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明細書 :布製品の展開方法及びこれに用いる展開用器具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-058999 (P2015-058999A)
公開日 平成27年3月30日(2015.3.30)
発明の名称または考案の名称 布製品の展開方法及びこれに用いる展開用器具
国際特許分類 B65H   5/30        (2006.01)
FI B65H 5/30
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2013-192589 (P2013-192589)
出願日 平成25年9月18日(2013.9.18)
発明者または考案者 【氏名】山崎 公俊
【氏名】弓場 寛之
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 3F101
Fターム 3F101LA16
3F101LB11
要約 【課題】タオル等の布製品を単腕を利用して布製品を展開する方法及びその展開方法に好適に用いることができる展開用器具を提供する。
【解決手段】テーブル等の作業体に取り付ける補助具として、先端が尖鋭に形成されるとともに先端部から後方に向けて徐々に幅広になる形態に形成された尖鋭部13と、尖鋭部13から後方に延出する拡開部14と、尖鋭部13と拡開部14とを作業体の外縁から突出させて装着する装着部20とを備える展開用器具10を使用し、布製品の一つの角部分を単腕で吊り下げた後、一つの角部分の近傍を展開用器具10の尖鋭部13の先端に当て、尖鋭部13と拡開部14の外面に布製品を接触させながら作業体の作業領域上まで布製品を引き上げる操作を行うことにより、作業領域上で布製品が展開された状態にする。
【選択図】図7
特許請求の範囲 【請求項1】
展開操作を行う作業領域となる平面を備える作業体に展開用の補助具を取り付け、単腕で布製品を操作することにより、布製品を展開する方法であって、
前記補助具として、先端が尖鋭に形成されるとともに先端部から後方に向けて徐々に幅広になる形態に形成された尖鋭部と、該尖鋭部から後方に延出する拡開部と、前記尖鋭部と前記拡開部とを前記作業体の外縁から突出させて装着する装着部とを備える展開用器具を使用し、
布製品の一つの角部分を単腕で吊り下げた後、前記一つの角部分の近傍を前記展開用器具の尖鋭部の先端に当て、前記尖鋭部と前記拡開部の外面に布製品を接触させながら前記作業体の作業領域上まで布製品を引き上げる操作を行うことにより、前記作業領域上で布製品が展開された状態にすることを特徴とする布製品の展開方法。
【請求項2】
前記尖鋭部と前記拡開部の少なくとも一方の外面に、前記布製品を前記作業領域上まで引き上げる操作を行う際に前記布製品が横滑りする作用を抑制する滑り止めが設けられた展開用器具を使用することを特徴とする請求項1記載の布製品の展開方法。
【請求項3】
前記作業体の角部に位置決めして装着する位置決め手段として、作業体の角部が嵌合する切欠を備える展開用器具を使用することを特徴とする請求項1または2記載の布製品の展開方法。
【請求項4】
布製品の一つの角部分を単腕で吊り下げた際に、布製品が外反り状態になった場合には、前記一つの角部分の両側の布製品の角片部分が前記展開用器具に面する向きとなる内反り状態に転換させる操作を行った後、布製品を引き上げる操作を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の布製品の展開方法。
【請求項5】
布製品の一つの角部分を単腕で吊り下げる操作として、作業体上に丸まった状態で置かれた布製品を、単腕により、任意の位置で掴み上げ、吊り下げられた布製品を、作業体上で横向きに置いた後、作業体上にあらわれた布製品の一つの角部分を掴む操作を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の布製品の展開方法。
【請求項6】
請求項1に記載する布製品の展開方法において補助具として使用する展開用器具であって、
先端が尖鋭に形成されるとともに先端部から後方に向けて徐々に幅広になる形態に形成された尖鋭部と、
該尖鋭部から後方に延出する拡開部と、
前記尖鋭部と前記拡開部とを前記作業体の外縁から突出させて装着する装着部と、
を備えることを特徴とする展開用器具。
【請求項7】
前記尖鋭部と前記拡開部の少なくとも一方の外面に、前記布製品を前記作業領域上まで引き上げる操作を行う際に横滑りする作用を抑制する滑り止めが設けられていることを特徴とする請求項6記載の展開用器具。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タオル等の布製品を展開する方法及びこの展開方法に用いる展開用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、掃除ロボット等の生活環境において作業を行う自動機械(ロボット)の研究開発が盛んになってきている。これらの生活支援ロボットはさまざま作業への利用が想定されるものであり、タオルやハンカチといった布製品(布片)を扱う作業への展開も予想される。生活環境においては、洗濯物をたたむといった布製品を操作する作業が多く存在するから、布製品をたたむといった行為を自動化することができれば、家事活動の補助として有効に利用することができる。
【0003】
布製品をたたむ行為は、無造作に置かれた布製品を収納しやすい形に定型化する作業ということができる。このたたむ等の行為を実現するひとつの方法は、無造作に置かれた布製品を平面上に展開し、それを基準として折りたたみを行うことである。
布製品を折りたたむ操作を自動化する方法としては、二本の腕を持つ人型ロボットにより、布製品を平面上に展開する方法において、片方の手で布製品の一端を摘んで吊し上げたとき、それを撮像した画像上でどのような輪郭情報が得られるかによって布製品の種類を判別して行うもの(非特許文献1)、矩形の布製品を操作対象とし、二本の腕を持つロボットにより自動的にそれを畳む行動を実現したもの(非特許文献2)、二本の腕を持つロボットを利用して、片方の手で布製品の一端を摘みあげた後、もう一方の手でその一端の近くを摘み、その手を横へスライドさせることによって布生地を展開する動作を実現したもの(非特許文献3)、前記スライド動作による展開を高確率で成功させるための指先の形状や材質について検討したもの(非特許文献4)等がある。
【0004】
ランドリー工場などでは、おしぼりやナフキン等を大量に取り扱っている。このような工場等では、布製品を展開する操作を自動化する装置として、洗濯後の布製品を1枚ずつに分離する作業を人手により行い、その後にチャック装置と搬送コンベヤを利用して布製品を展開するように構成したもの(特許文献1)、洗濯後のおしぼりを掴み上げて吊るし、最下端にあらわれる角部を掴んで吊り上げ、次いで対角位置の角部を掴んで三角形状にたたんだ後、圧力空気を利用しておしぼりを展開する方法を利用する装置(特許文献、2、3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-222724号公報
【特許文献2】特開平11-128596号公報
【特許文献3】特開平9-263345号公報
【0006】

【非特許文献1】F. Osawa, H. Seki, and Y. Kamiya:“Unfolding of Massive Laundry and Classification Types by Dual Manipulator,” Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics, Vol.11 No.5,pp.457-,2007.
【非特許文献2】S. Cu´en-Roch´n, J. Andrade-Cetto and c. Torras: “Action Selection for Robotic Manipulation of Deformable Planar Objects,”in Proc. of Frontier Science Conference Series for Young Researchers: Experimental Cognitive Robotics, pp.1-6, 2008.
【非特許文献3】H. Kobori, Y. Kakiuchi, K. Okada and M. Inaba: “Recognition andMotion Primitives for Autonomous Clothes Unfolding forHumanoid Robot,”in Intelligent Autonomous Systems 11, pp.57-66, 2010.
【非特許文献4】柴田 瑞穂, 太田 剛士, 平井 慎一, 摘み滑り動作を利用した布地の展開動作, 日本ロボット学会誌, Vol.27, No.9, pp.1029-1036,2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タオルやハンカチを折りたたむ操作を行う場合、人は通常、二本の腕を同時に使って操作している。しかしながら、自動機械に双腕を利用すると器用な操作が可能になる一方、装置の構成が複雑になり、製造コストがかかるという問題がある。また、エアブロワーを利用したり、搬送コンベアを利用したりする方法は、装置が大掛かりになり、通常の生活環境で使用するには不向きである。
本発明は、布製品をできるだけ簡易な方法によって展開可能とするため、単腕を利用して布製品を展開する方法及びその展開方法に好適に用いることができる展開用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る布製品の展開方法は、展開操作を行う作業領域となる平面を備える作業体に展開用の補助具を取り付け、単腕で布製品を操作することにより、布製品を展開する方法であって、前記補助具として、先端が尖鋭に形成されるとともに先端部から後方に向けて徐々に幅広になる形態に形成された尖鋭部と、該尖鋭部から後方に延出する拡開部と、前記尖鋭部と前記拡開部とを前記作業体の外縁から突出させて装着する装着部とを備える展開用器具を使用し、布製品の一つの角部分を単腕で吊り下げた後、前記一つの角部分の近傍を前記展開用器具の尖鋭部の先端に当て、前記尖鋭部と前記拡開部の外面に布製品を接触させながら前記作業体の作業領域上まで布製品を引き上げる操作を行うことにより、前記作業領域上で布製品が展開された状態にすることを特徴とする。
【0009】
また、前記布製品の展開方法においては、前記尖鋭部と前記拡開部の少なくとも一方の外面に、前記布製品を前記作業領域上まで引き上げる操作を行う際に前記布製品が横滑りする作用を抑制する滑り止めが設けられた展開用器具を使用することにより、布製品をより確実に展開することができる。
また、前記布製品の展開方法においては、前記作業体の角部に位置決めして装着する位置決め手段として、作業体の角部が嵌合する切欠を備える展開用器具を使用することにより、作業体に確実に展開用器具を取り付けることができ、布製品を展開する操作を的確に行うことができる。
【0010】
また、前記布製品の展開方法においては、布製品の一つの角部分を単腕で吊り下げた際に、布製品が外反り状態になった場合には、前記一つの角部分の両側の布製品の角片部分が前記展開用器具に面する向きとなる内反り状態に転換させる操作を行った後、布製品を引き上げる操作を行うことにより、的確な展開操作を行うことができる。
また、前記布製品の展開方法においては、布製品の一つの角部分を単腕で吊り下げる操作として、作業体上に丸まった状態で置かれた布製品を、単腕により、任意の位置で掴み上げ、吊り下げられた布製品を、作業体上で横向きに置いた後、作業体上にあらわれた布製品の一つの角部分を掴む操作を行う方法が有効に利用できる。
【0011】
また、本発明に係る布製品の展開方法に利用する展開用器具としては、先端が尖鋭に形成されるとともに先端部から後方に向けて徐々に幅広になる形態に形成された尖鋭部と、該尖鋭部から後方に延出する拡開部と、前記尖鋭部と前記拡開部とを前記作業体の外縁から突出させて装着する装着部と、を備える展開用器具が好適に使用できる。
また、前記展開用器具として、前記尖鋭部と前記拡開部の少なくとも一方の外面に、前記布製品を前記作業領域上まで引き上げる操作を行う際に横滑りする作用を抑制する滑り止めが設けられている器具が好適に使用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る布製品の展開方法によれば、矩形のタオル等の布製品を容易に展開することができ、この展開方法を利用して布製品の角部分を検知することができ、布製品の角部分を検知して布製品を折りたたむといった操作に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】テーブルの角を利用してタオルを展開する操作を示す写真である。
【図2】タオル(布製品)の角を発見して掴む操作方法を示す写真である。
【図3】タオルが外反りした状態(a)と、内反りした状態(b)を示す写真である。
【図4】タオルの横滑りを示す写真である。
【図5】タオルの巻き込みを示す写真である。
【図6】本発明に係る展開用器具の斜視方向(a)、平面方向(b)、底面方向(c)の写真である。
【図7】テーブルに展開用器具を取り付けた状態を示す写真である。
【図8】展開用用具(二次元角丸型)を取り付けた状態を示す写真である。
【図9】展開用用具(径の大きな円盤型の板)を取り付けた状態を示す写真である。
【図10】展開用用具(扇型の板)を取り付けた状態を示す写真である。
【図11】展開用用具(銀杏型)を取り付けた状態を示す写真である。
【図12】展開用用具(半カプセル型)を取り付けた状態を示す写真である。
【図13】実施形態の展開用器具と比較例の展開用器具を用いて布製品を展開したときの、巻き込み問題と、横滑り問題が解決された度合いを示すグラフである。
【図14】布製品を折りたたむ操作を示す図である。
【図15】布製品を折りたたむ操作を示す図である。
【図16】布製品を折りたたむ操作を示す図である。
【図17】布製品を折りたたむ操作を示す図である。
【図18】布製品を折りたたむ操作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(単腕による布製品の展開:基本方法)
本発明に係る布製品の展開方法は、タオル、ハンカチ、Tシャツ等の比較的単純な形状(矩形等の形態を有し、角部分が明確にあらわれている形状)の布製品をたたむ操作を行う前提として、丸まった状態の布製品を平坦状に展開する方法である。
本発明は、単腕操作によってこのような布製品を展開するものであり、テーブル等の所定の平面域を作業領域として備える作業体を利用して展開操作を行う。

【0015】
はじめに、テーブル等の尖鋭な角部を備える作業体を用いて布製品を展開する操作方法について説明する。
図1(a)、(b)は、テーブルを利用し、単腕の操作により矩形のタオル(布製品)を展開する例を示す。図1(a)は矩形のタオルの角部分を掴み、タオルの角部分の近傍をテーブルの角に当てた状態で、この状態からタオルをテーブルの角に接触させながらテーブル上に引き上げることによって、テーブル上でタオルを展開する(図1(b))。

【0016】
テーブルの角の部分を利用して布製品を展開する方法の場合は、布製品の角を掴んで吊り下げた状態からテーブル上へ引き上げる操作を行った状態での布製品の形態はさまざまであり、必ずしも、図1(b)に示すように、布製品が矩形に広がった状態に展開されるとは限らない。

【0017】
図2(a)、(b)はタオル(布製品)の角を発見して掴む操作方法を示す。
まず、図2(a)に示すように、テーブル上に丸まった状態で置かれた布製品の任意の位置を掴み上げる。布製品を掴み上げると、布製品が垂れ下がり、最下方に布製品の角部分があらわれる(図2(a)の○印部分)。次いで、吊り下げた布製品を、テーブル表面に接触させながら横方向に動かして、横向きに置く。この操作は吊り下げた布製品の最下方にあらわれた角部分をテーブル上で露出させ操作である。図2(b)は、布製品の角部分が左側に位置するようにテーブル上に布製品をのせた状態である。
図2(b)のようにテーブル上に布製品を置けば、布製品の角部を発見することは容易であり、布製品の角部を掴んで持ち上げ、図1(a)、(b)に示した展開操作に移ることができる。

【0018】
図2(a)、(b)に示す操作によりタオル等の布製品の角部分を発見し、布製品の角を掴んで持ち上げ、テーブルの角に布製品を接触させながらテーブル上に引き上げる操作を行って布製品を展開する際には、主として、以下のA、B、Cの問題が生じる。
A.「外反り/内反り」問題
B.「横滑り」問題
C.「巻き込み」問題

【0019】
図3(a)はタオル(布製品)が「外反り」した状態、図3(b)は「内反り」した状態を示す。外反りとは、布製品を掴んだ角を挟む2つの角部分(掴み位置の角部の両側の角片部分)が、テーブルの角に対して外側に位置する(角片が外側に折れ曲がる)状態である。内反りとは、布製品を掴んだ角を挟む2つの角部分が、テーブルの角に面する側にある状態(角片が内側に折れ曲がる)である。
布製品が外反りした状態と内反りした場合とを比較すると、テーブルの角を利用して布製品を展開した際に、外反りした状態で展開した場合は、圧倒的に失敗率が高くなる。

【0020】
したがって、布製品を吊り下げた状態で、布製品が「外反り」になっていた場合には、「外反り」状態を「内反り」状態に転換させてから引き上げ操作を行う。外反り状態を内反り状態に転換するには、布製品を吊り下げ位置で180°回転させればよい。すなわち、テーブルの角に対して外向きであった布製品を内向きに回す操作をすることで簡単に転換することができる。この方法とは別に、布製品の生地によっては、布製品を掴んだ角部分を逆向きに折り曲げることで外反りを内反りに転換することができる。

【0021】
図4(a)、(b)は横滑り問題を示す。テーブルの角を利用して布製品を展開する操作を行う際には、テーブル上に布製品を引き上げる際に、テーブルの角が最後まで布製品に接触しながら引き上げられることで展開作用が有効に機能する。しかしながら、全体形状が長方形等の方形から大きく外れる形態の布製品では、引上げ操作中に、布製品がテーブルの角から外れてしまう場合がある。
図4(a)はタオルをテーブルの角に接触させて引上げ開始した状態、図4(b)は、タオルを引き上げている途中で、タオルがテーブルの角部分から位置ずれしてしまった状態、すなわち横滑りした状態を示す。このように、引上げ途中で横滑りが生じると、布製品を確実に展開することができなくなる場合がある。

【0022】
図5(a)、(b)は、巻き込み問題を示す。テーブルの角を利用して布製品を引き上げる操作を行った場合に、布製品を掴んだ角を挟む2つの角片部分が外側に展開されずに、布製品の内側に折れ曲がったまま、内側に巻き込まれて引き上げられてしまう場合がある。図5(a)は布製品を引き上げ開始した状態、図5(b)は布製品を引き上げている状態で、布製品を掴んだ角の両側の角片部分が布製品の下側に折れ曲がって巻き込まれてしまっている。展開しようとする布製品の角片部分が、いったん巻き込まれてしまうと、巻き込まれた部分には広げる作用が働かないため、角片部分が巻き込まれた状態のまま引き上げられてしまう。

【0023】
テーブルの角を利用して布製品を引き上げる操作を利用して布製品を展開する方法は、布製品を広げて布製品の角部分を露出させることで、布製品の角部分を容易に発見できるようにすることを目的としている。展開操作の結果、布製品の隣り合った2つの角を見つけることができれば、この2つの角部分を掴んで吊り上げることによって、次の折りたたみ操作に移ることができるからである。布製品の2つの角部分を掴んで吊り上げるには、布製品の隣り合った2つの角が発見できればよい。したがって、矩形状の布製品を展開する操作では、布製品を掴んだ一つの角の他に少なくとも2つの角があらわれればよい。例えば、矩形のタオルを展開する場合は、少なくとも3つの角があらわれればよい。

【0024】
(単腕による布製品の展開:展開用器具を利用する方法)
本発明に係る布製品の展開方法では、布製品の角を掴んで吊り下げたときの状態や、布製品をテーブル上に引き上げる操作の際に生じる問題をできるだけ解消し、より確実な展開操作を可能にする方法として、展開操作の補助具として展開用器具を作業体に装着して展開操作を行う。
図6は、本発明に係る展開方法において利用する展開用器具10を斜視方向(図6(a))、平面方向(図6(b))、底面方向(図6(c))から見た状態を示す。

【0025】
展開用器具10は、テーブルに装着した際にテーブルの角部から外方に突出する突出部12と、展開用器具10をテーブルに装着するための装着部20とを備える。
突出部12は先端が尖鋭に形成された尖鋭部13と、尖鋭部13の後方から尖鋭部13と一体に延出する拡開部14とからなる。
尖鋭部13は、外面が三角錐形状に形成され、先端部から続く2つの三角形状の傾斜面として第1の斜面部13aと第2の斜面部13bとを備える。第1の斜面部13aと第2の斜面部13bとの中間位置には細長形状の三角形からなる第3の斜面部13cを備える。この第3の斜面部13cの表面には滑り止め15aが設けられている。

【0026】
拡開部14は尖鋭部13の第1の斜面部13aに続く第4の斜面部14aと、第2の斜面部13bに続く第5の斜面部14bとを備える。第4の斜面部14aと第5の斜面部14bとの間には第6の斜面部14cを備える。
第4の斜面部14aと第5の斜面部14bと第6の斜面部14cとによって外形が構成される拡開部14の形態は、正面方向から見て、上辺が短辺となる等脚台形をなす。第4の斜面部14aと第5の斜面部14bは、下方が開いた傾斜面である。第6の斜面部14cは、展開用器具10をテーブルに取り付けた状態で略水平になるように設定した。

【0027】
第6の斜面部14cの表面には滑り止め15bが設けられる。本実施形態では、滑り止め15a、15bとして紙やすりを使用し、第3の斜面部13cと第6の斜面部14cの表面に紙やすりを貼付して滑り止めとした。もちろん、紙やすりに替えて、任意の粗面表面を備える部材を使用することが可能であり、第3の斜面部13cと第6の斜面部14cの表面を粗面化処理して滑り止め15a、15bとすることも可能である。
なお、第6の斜面部14cは第3の斜面部13cと比較して、より広い面積を確保するように設計している。したがって、第6の斜面部14cには、第3の斜面部13cと比較してより広い面積に滑り止め15bを設けた。

【0028】
図6(b)に示すように、展開用器具10は、平面方向から見て、尖鋭部13の先端から拡開部14に向かって、徐々に幅広となるように形成されている。装着部20は拡開部14よりも幅狭に形成される。
拡開部14の底面の装着部20に接続する後部側の側面には、テーブルの角部に合わせて展開用器具10を位置決めして付ける位置決め手段として、直角の切欠きを設けている(図6(c))。装着部20の高さ寸法は拡開部14の高さ寸法よりも低く、拡開部14の後部側の側面は装着部20に対し段差状となっており、この段差部分でテーブルの角部が拡開部14の後部側面に当接する。装着部20のテーブルの表面に接する部位には保護用かつ滑り止め用のパッドが貼付されている。

【0029】
図7は、展開用器具10をテーブルの角に取り付けた状態を示す。展開用器具10の拡開部14の底部に設けられた切欠きにテーブルの角を嵌合して装着部20をテーブルに置くようにすることで展開用器具10を取り付けることができる。
テーブルに展開用器具10を取り付けることにより、テーブルの角部分から尖鋭部13と拡開部14とが突出する。

【0030】
なお、本実施形態ではテーブルの角に展開用器具10を取り付けた構成としているが、展開用器具は、テーブル(作業体)の角部に装着する場合に限定されるものではない。作業体の外縁に展開用器具を装着し、展開用器具の尖鋭部と拡開部とからなる突出部が、作業体の外縁部から突出するように装着して使用することもできる。また、作業領域となる作業体の大きさや形状もとくには限定されるものではない。

【0031】
テーブルに展開用器具10を装着して、タオル等の布製品を展開する操作方法は、前述したテーブルの角部分を利用して布製品を展開する方法と同様である。すなわち、図2に示すように、丸まった状態のタオル等の布製品の一つの角を発見(検知)し、その角部分を掴んで布製品を吊り下げ、布製品の角部分を掴んだ部位を展開用器具10の尖鋭部13の先端に当て、展開用器具10の中心線方向に向けてテーブル上に布製品を引き上げるように操作すればよい。展開用器具10の中心線方向とは、展開用器具10の尖鋭部13の先端を通る対称線の方向である。

【0032】
展開用器具10の尖鋭部13の先端から尖鋭部13に接触させるようにして布製品をテーブル上に引き上げるようにすると、布製品の吊り下げられて垂れた部分は尖鋭部13を通過する際に左右に振り分けられる。とくに、垂れた布製品の角片部分が内側に巻き込まれている場合、尖鋭部13が巻き込み位置の内側に入り込み、巻き込み部分を左右に押し広げるように作用する。尖鋭部13に続く拡開部14は、引上げ操作に伴い、尖鋭部13により押し広げられた角片部分をさらに両側に押し広げるように作用し、巻き込みを解消する。

【0033】
タオル等の布製品を展開操作する際には、巻き込みの問題が最も問題となる。実際に本実施形態の展開用器具10を用いて布製品を展開する操作を行ったところ、展開用器具10は巻き込みの問題を解消する上できわめて有効であることを確認することができた。
前述した外反りと内反りの問題は、前述した方法と同様に、布製品の角部分を掴んで吊り下げた状態で、展開しようとする角片部分(折れ曲がり部分)が展開用器具10に面する側(内側)になるように布製品を転換する操作を行うことによって解消する。このように布製品の向きを転換させると、布製品を吊り下げた状態で垂れ下がった角片部分は内向きになり、上述した巻き込みが生じやすい状態になるが、展開用器具10を用いることにより巻き込みを解消しながら布製品を展開することが可能になる。

【0034】
前述した横滑りの問題は、展開用器具10に設けた滑り止め15a、15bの作用を利用することによって、発生頻度を抑えることが可能である。滑り止め15a、15bは、タオル等の布製品を引き上げる際に、布製品を引き上げる方向には布製品の動きを妨げるものではなく、一方、布製品が横方向(引上げ方向に対し交差する方向)に滑ろうとする作用に対しては、摩擦によって横滑りを抑制するように作用するからである。
横滑りの作用は、例えば正方形状のタオル等についてはあまり強く生じないから、滑り止め15a、15bは対象とする布製品によって適宜使用すればよい。

【0035】
(比較例)
単腕による引上げ方法を利用してタオル等の布製品を展開する方法に適用する展開用器具として、上記展開用器具10とは異なる構成の器具を試作して、その機能を試験した。以下に展開用器具の試作例を示す。
図8は、テーブルの角部に角丸のU字状の器具を、テーブルの角部分から突出するように取り付けた例(二次元角丸型)である。図9は、テーブルの角部に円盤型の板を取り付けた例(径の大きな円盤型の板)である。図10は、テーブルの角部から突出するように、扇形の板を取り付けた例である。図11は、テーブルの角部に銀杏型の展開用器具(銀杏型)を取り付けた例である。この銀杏型の器具は上方から見て中央部が厚さ方向に膨らむ形状とし、平面形状を銀杏型としたものである。図12は、半カプセル型(先端部が半球状)としたものである。本体の外面に滑り止めを設ける構成としている。

【0036】
(展開方法の比較)
図13は、図8~図12に示した展開用器具と、前述した実施形態の展開用器具10を用いて実際に布製品を展開する操作を行い、展開した結果を示したものである。実際の実験は、展開する布製品として、フェイスタオル、布巾、ハンカチ、バスタオルを使用し、それぞれ10回ずつ展開操作を行い、成功した回数を計数する方法で行った。表1は、10回の試行で成功した回数を示す。なお、布製品を展開したときに、少なくとも3つの角部分があらわれたときを成功とした。

【0037】
【表1】
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【0038】
図13に示すグラフは、横軸が巻き込み問題が解決された度合い、縦軸が横滑り問題が解決された度合いとして示したものである。比較例の展開用器具のうちには、テーブルに展開用器具を取り付けない場合(補助具なし)と比較して、巻き込み問題と横滑り問題が改善されない展開用器具もある。
上記実施形態において使用した展開用器具10は、比較例の展開用器具と比較して、巻き込み問題と横滑り問題を解決する度合いがいずれも優っており、布製品の展開に好適に利用できることが確認できた。

【0039】
(折りたたみ方法)
上述した方法を利用してタオル等の布製品を展開した後、布製品を折りたたむには、次のような方法を利用すればよい。
図14は、布製品を展開した状態を示す。前述したように、矩形状の布製品を折りたたむ場合には、布製品が完全に展開されない場合でも、少なくとも3個所の角が検知できれば、以下のようにして、折りたたむことができる。
まず、検知した角部分に基づいて、布製品の長手方向を判別する。布製品の長手方向は、検知した布製品の角部分の相互の距離を比較して判別することができる。図14に示す例では、検出された角部分をA、B、Cとすると、AB間の距離よりもBC間の距離の方が長いから、長手方向は直線BCの方向であると判別することができる。

【0040】
次に、布製品の短手方向の2つの角部分をロボットハンドによって掴む操作を行う。図15は、ロボットハンド30、32により布製品40の角部分を掴む操作を行う例を示す。図15のロボットハンド30を、上述した布製品を展開する操作に使用するロボットハンドとすると、このロボットハンド30を水平なアーム31に支持し、アーム31にロボットハンド32を移動自在に装着し、ロボットハンド30とロボットハンド32を布製品40の短手方向の角部分に位置合わせして掴む操作を行う。

【0041】
次いで、ロボットハンド30、32により布製品40を吊り上げ、吊り上げた布製品40を長手方向で二つ折りする高さに設定した支持棒34に向けて、横移動させる(図16)。図17は、支持棒34に布製品40を引っ掛けてロボットハンド30、32から布製品40を離した状態である。布製品40は二つ折りされて支持棒34に支持される。
二つ折りした布製品40をさらに折りたたむ場合は、二つ折りした状態でロボットハンド30、32により布製品40を吊り上げ、二つ折りした布製品40を支持棒34に引っ掛けることにより折りたたむことができる(図18)。二つ折りした状態から、その長手方向に折りたたむ場合は、二つ折りした布製品をいったん作業領域に置き、短手方向で掴み直して、二つ折りすればよい。
なお、ロボットハンドを用いる操作方法には種々の方法を利用することが可能であり、布製品を折りたたむ方法は上記例に限るものではもちろんない。

【0042】
本発明に係る布製品の展開方法は、生活支援用ロボットの新規な作業形態を提供するものであり、単腕を用いて布製品を展開する構成としたことにより、ロボットの構成をきわめて簡易な構成とすることができる。また、本発明に係る展開方法を利用することにより、大掛かりな装置を使用することなく、家庭用として容易に利用できる装置として提供することができる。
なお、本発明に係る展開方法は、自動化ロボットに適用する他に、単腕のみ使用できる状態、状況にあり支援が必要とする人に対しても有用である。
【符号の説明】
【0043】
10 展開用器具
12 突出部
13a 第1の斜面部
13b 第2の斜面部
13c 第3の斜面部
14 拡開部
14a 第4の斜面部
14b 第5の斜面部
14c 第6の斜面部
15a、15b 滑り止め
30、32 ロボットハンド
40 布製品
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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