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明細書 :導電性重合体及びその製造方法並びにそれを用いた有機太陽電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4270381号 (P4270381)
公開番号 特開2004-277736 (P2004-277736A)
登録日 平成21年3月6日(2009.3.6)
発行日 平成21年5月27日(2009.5.27)
公開日 平成16年10月7日(2004.10.7)
発明の名称または考案の名称 導電性重合体及びその製造方法並びにそれを用いた有機太陽電池
国際特許分類 C08G  61/12        (2006.01)
H01B   1/12        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H01L  51/42        (2006.01)
FI C08G 61/12
H01B 1/12 F
H01B 13/00 Z
H01L 31/04 D
請求項の数または発明の数 9
全頁数 23
出願番号 特願2004-055245 (P2004-055245)
出願日 平成16年2月27日(2004.2.27)
優先権出願番号 2003054336
優先日 平成15年2月28日(2003.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年1月19日(2007.1.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
発明者または考案者 【氏名】村田 靖次郎
【氏名】小松 紘一
【氏名】山崎 鉄也
【氏名】藤田 静雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108453、【弁理士】、【氏名又は名称】村山 靖彦
審査官 【審査官】阪野 誠司
参考文献・文献 特開平08-222281(JP,A)
特開平09-074216(JP,A)
特開平09-188726(JP,A)
特開平09-246580(JP,A)
特開2004-231958(JP,A)
調査した分野 C08G 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
チオフェン環が連結してなる高分子重合体であって、シアノ化フラーレン基を側鎖に連結してなることを特徴とする導電性重合体。
【請求項2】
チオフェン環が連結してなる高分子重合体であって、メチル化フラーレン基を側鎖に連結してなることを特徴とする導電性重合体。
【請求項3】
前記チオフェン環がチオフェンオリゴマーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性重合体。
【請求項4】
前記チオフェンオリゴマーの重合度が3であることを特徴とする請求項3に記載の導電性重合体。
【請求項5】
前記導電性重合体がチオフェンオリゴマーの1付加体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電性重合体。
【請求項6】
チオフェン誘導体を2,3,5-トリブロモチオフェンとカップリングさせてブロモターチオフェン誘導体を合成する工程と、該ブロモターチオフェン誘導体にトリメチルシリルアセチレンをカップリングさせてアセチレン誘導体を合成する工程と、該アセチレン誘導体をテトラブチルアンモニウムフルオライドとブチルリチウムによりリチオ化する工程と、該リチオ化した誘導体をフラーレンを加えたオルトシクロベンゼン中に溶解させてフラーレンアニオンを形成する工程と、該フラーレンアニオンにトシルシアニドもしくはメチル基を反応させることにより、ターチオフェン‐フラーレン連結化合物からなる単量体を形成する工程と、該単量体を重合反応させて重合高分子を得る工程とを有することを特徴とする導電性重合体の製造方法。
【請求項7】
導電性重合体からなる電子供与体層と請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の導電性重合体からなる活性層が接合されてなることを特徴とする有機太陽電池。
【請求項8】
透明電極とその対向電極との間に導電性重合体からなる電子供与体層と請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の導電性重合体からなる活性層とが積層されてなることを特徴とする有機太陽電池。
【請求項9】
透明基板上に透明電極を介して導電性重合体からなる電子供与体層と請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の導電性重合体からなる活性層が接合されてなることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の有機太陽電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性重合体材料及びその製造方法、並びにそれを用いた有機太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が懸念されるようになり、従来の化石燃料によるエネルギーに代わって自然エネルギーの重要性が認識されるようになってきた。有力な自然エネルギーの一つとして太陽光発電の研究が盛んに行われている。
従来より、太陽光発電装置として光変換素子を使用した太陽電池が知られている。現在実用化されている太陽電池の例では、シリコンの単結晶体、多結晶体、アモルファス状物質を用いた光電変換素子が用いられている。
しかし、これら従来の光電変換素子においては高純度シリコンを原料としており、その製造工程が複雑でコストが非常に高くなり、また素子の大面積化はその製造法から困難である等の難点が存在する。
【0003】
一方、有機系物質を用いた光電変換素子も提案されているが、有機系物質を用いた光電変換素子は製造が容易で経済性にも優れている反面、シリコン等の無機系物質と異なり、光誘起により生成する電子-正孔対の解離確率は低く、キャリア数が低い。また、電気伝導性が低いためにキャリアを効率的に取り出すことが困難である等の難点を持っている。 有機系物質として導電性ポリマーを用いた従来の光電変換素子においては、アクセプターとしてヨウ素(I)をチオフェン環ポリマーに分散させる等の手法を用いているが、ヨウ素を均一に分散させねばならず、ヨウ素は昇華性があるため、均一に分散させることが困難である。また、ヨウ素に濃度むらなどが生じると導電性が不安定となる等の欠点があった。また、導電性ポリマーとした後でもヨウ素の昇華性のために導電性が変化するという欠点もあった。
【0004】
ところで、最近グラファイトのアーク放電やカーボンブラックの高周波プラズマ処理等によって閉殻構造を持った炭素クラスター(C60、C70、C84)等のフラーレン類が生成され、これらの特異な構造に由来する物性が明かにされつつある。光変換素子の素材としても、シリコン以外にこれら炭素化合物の一つであるフラーレンが注目されるようになってきた。
【0005】
フラーレンはダイヤモンドや黒鉛と同様に炭素原子のみからなる一連の炭素化合物のことである。フラーレンは、60個以上の偶数個の炭素原子が球状に結合して分子集合体を構成した球状炭素Cn(n=60、70、76、78、80、82・・・など)である。中でも特に代表的なものは、炭素数が60のC60と70のC70である。このうちC60フラーレンは正二十面体の頂点を全て切り落として正五角形を出した切頭二十面体と呼ばれる多面体構造を有し、その60個の頂点が全て炭素原子で占められた言わばサッカーボール型の分子構造を有する。それに対して、C70はラグビーボール型の分子構造を有する。
【0006】
60の結晶はC60分子が面心立方構造に配置され、バンドギャップが約1.6eVであって半導体とみなせる。純粋な状態では約1014Ω/cmの電気抵抗を有する。そして、500℃で約1Torrの蒸気圧があり、昇華によって薄膜を蒸着することができる。C60に限らずフラーレン分子は真空又は減圧下において容易に気化できることから、蒸着膜を形成し易い素材であると言える。
【0007】
しかしながら、最も量産性に富むC60やC70等のフラーレン分子は双極子モーメントがゼロであることから、それから得られる蒸着膜は分子間にファン・デル・ワールス力しか働かず、強度的に脆弱である。そのため、この蒸着膜を空気中にさらすとフラーレン分子間の隙間に酸素や水分子等が拡散進入し易く、その結果構造的に劣化するだけでなくその電子物性に悪影響を及ぼすことがある。このようなフラーレン蒸着薄膜の脆弱さは、フラーレンを薄膜電子デバイスの製作に適用するときにデバイスの安定性の面で問題となる。さらにフラーレン分子間へ拡散進入した酸素分子により常磁性中心が発現するので、その薄膜特性の安定性の面からも問題があった。
【0008】
このような問題点を克服するため、近年フラーレン分子同士を重合させる、いわゆるフラーレン重合体膜の製造方法が提唱されている。その代表例として光誘起によるフラーレン重合体の製膜方法を挙げることができる。この方法はあらかじめ製膜したフラーレン蒸着膜に対し、蒸着後に光照射を行うものであるが、重合時に生じる体積収縮のため膜の表面に無数のヒビがはいり易く、強度の面で問題がある。しかもこの方法では面積の広い均一な薄膜を成膜することは極めて困難である。その外にも、フラーレン分子に圧力や熱を加えるか、あるいはフラーレン分子同士を衝突させることによってフラーレン重合体膜を製膜できることが知られているが、これらの方法では製膜はできても薄膜を得ることは困難である。
【0009】
これら従来法に代わるフラーレン重合法として注目されるのが、プラズマ重合法やマイクロ波重合法である。このような方法で得られるフラーレン重合体の膜は、フラーレン分子が電子励起状態を経て重合してできた薄膜であり、フラーレン蒸着薄膜に比較して強度が格段に増加し、緻密にしてかつ柔軟性に富む。そして真空中でも大気中でもその電子物性がほとんど変化しないことから、その緻密な薄膜構造が酸素分子等による膜内部への拡散進入を効果的に抑制しているのだと考えられる。事実、このような方法で薄膜を構成するフラーレンの多量体が生成されることは、レーザアブレーション法による飛行時間型質量分析によって知ることができる。
【0010】
一方、フラーレンの特異な構造に起因する物性も明らかにされつつあり、その物性の一つとして導電性重合体とC60フラーレンの混合物に対し光を照射すると光照射下で導電性重合体からC60へ電子移動が起こることが見い出された。
例えば、MEH-PPV( ポリ[2-メトキシ、5-( 2’-エチル-ヘキシロキシ)-パラ-フェニレンビニレン] )や、ポリ(3-オクチルチオフェン)とC60の質量比1:1混合物に対する光誘起ESR測定の結果、g値がほぼ2と2よりも小さい2本のESRシグナルが観測されている。g値が2以下のシグナルはC60一価アニオンのシグナルであることが確認されており、このことから光照射下で導電性重合体からC60への電子移動が起きていることが示唆されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0011】
このC60が持つ物性の応用として、光電変換素子の研究が行われている。例えば、ITO膜電極上にMEH-PPVをスピンコート法により厚さ100nmに製膜し、この上に厚さ100nmのC60層を真空蒸着により積層、さらにAuを真空蒸着により積層して光電変換素子を作成している。照射光源としてアルゴンイオンレーザーを用い、波長514.5nm、照射光強度約1mW/cm の光をITO膜電極側から照射し順方向バイアスとしてITO膜電極に正電位、C60層側に負電位を印加することにより短絡電流2.08μA/cm 、開放電圧0.44V、変換効率0.02%が得られている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0012】
これらの知見に基づきヘテロ接合型の有機太陽電池が提案されている。一例を挙げれば、電極補強材である透明導電性基材上に有機電子供与体とフラーレンを含有する層と、n型半導体層が接合されてなるヘテロ接合型太陽電池がある(例えば、特許文献1参照。)。この太陽電池においては、有機電子供与体として例えばポリチオフェンにアルキル基置換を施したポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリパラフェニレンビニレンにアルコキシル基置換を施したポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレンにアルコキシル基置換を施したポリパラチエニレンビニレン誘導体等の、トルエン等の有機溶媒に可溶な物質からなる導電性重合体や、テトラチアフルバレン(TTF)、テトラセレナテトラセン(TST)などの有機π共役分子錯体を形成する低分子量の有機電導体等が挙げられる。これら電子供与体とフラーレンを溶媒中に混合溶解したものをスピンコートした薄膜が使用されている。
また、n型半導体としては、ナトリウム等のドナーをドープしたポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体及びリン等をドープしたシリコン等を挙げることができる。
【0013】
また、活性層としてMDMO-PPV( ポリ[2-メチル,5-(3,7 ジメチルオクチロキシ)]-パラ-フェニレン ビニレン)とPCBM( [6,6] -フェニルC61ブチル酸メチルエステル)との1:4(重量比)の混合液をスピンコートした膜を使用し、有機電子供与体としてはPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン) - ポリ(スチレンスルフォネート) )を使用したヘテロ接合型太陽電池が報告されている(例えば、非特許文献3参照。)。
これらの太陽電池では、いずれも有機電子供与体とフラーレンを溶媒中に混合溶解させたものを、スピンコートした薄膜を使用している。
フラーレンを混合した導電性重合体等の有機電子供与体を電極に用いた場合、電子供与体層で形成されるバンド曲がりによる光誘起電子-ホール対の解離確率の増加に加えて、励起状態でフラーレンに電荷移動が起こることにより更にキャリア消失を抑制する、すなわちキャリア生成が増加するとされている。

【非特許文献1】L.Smilowitz ら著 「Physical Review B47」,13385 (1993)
【非特許文献2】N.S.Sariciftciら著 「Appl.Phys.Lett.」, Vol.62, No.6, p.585-p.587, 8 Feb.1993
【非特許文献3】S.E.Shaheenら著 「Appl.Phys.Lett.」, Vol.78, No.6, p.841-p.843, 5 Feb.2001
【特許文献1】特開平8-222281号公報 (第5頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来のフラーレンを混合した導電性重合体では厚さの制御が難しく、素子として利用するのに十分な機械的強度や耐光性が得られず、また、変換効率等の光電変換特性においても充分な性能のものは得られていない。したがって、光変換素子においても実用性に即したものは得られていない。
本発明の目的は、導電性や電荷分離能を向上させ、機械的強度や耐光性に富んだ導電性重合体を得ることを目的とする。また、このように特性の優れた導電性重合体を使用して電子物性に優れた有機太陽電池を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の導電性重合体の一つは、チオフェン環が連結してなる高分子重合体であって、シアノ化フラーレン基を側鎖に連結してなる導電性重合体とした。
他の一つは、チオフェン環が連結してなる高分子重合体であって、メチル化フラーレン基を側鎖に連結してなる導電性重合体とした。
本発明の導電性重合体においては、主鎖には電子供与性が高いπ共役性のチオフェン環を使用し、側鎖には子受容性が高いシアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基を使用している。従って、分子内の所定の位置にシアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基が共有結合しており、その高い電子受容性のために主鎖のチオフェン環の電子はシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンの方へいつも引っ張られていることとなる。従って主鎖のチオフェン環は電子供与性がさらに強くなり、その結果、高い導電性を有する高分子単量体となるとともに、光による電荷分離が起き易くなる。
【0016】
本発明の導電性重合体は、前記チオフェン環がチオフェンオリゴマーであっても良い。その場合、チオフェンオリゴマーの重合度は2から5であることが好ましく、例えば重合度3のオリゴマーが好んで用いられる。
また、本発明の導電性重合体は、チオフェンオリゴマーの1付加体であってもあるいはチオフェンオリゴマーの2付加体であっても良い。
これらの分子構造を有する導電性重合体はいずれも高い導電性を有し、光による電荷分離が起き易い性質を具備した導電性重合体となる。
【0017】
さらに具体例を示せば、本発明の導電性重合体は、重合度が3のチオフェンオリゴマーの側鎖に、シアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基が3重結合してなる単量体の重合体からなる導電性重合体を挙げることができる。
このような構造の重合体とすることにより、高い導電性を有し、光による電荷分離が起き易い性質を具備した導電性重合体とすることができる。
【0018】
本発明の導電性重合体の製造方法は、チオフェン誘導体を2,3,5-トリブロモチオフェンとカップリングさせてブロモタ-チオフェン誘導体を合成する工程と、該ブロモタ-チオフェン誘導体にトリメチルシリルアセチレンをカップリングさせてアセチレン誘導体を合成する工程と、該アセチレン誘導体をテトラブチルアンモニウムフルオライドにより脱保護の後にリチオ化する工程と、該リチオ化した誘導体をフラーレンを加えたオルトシクロベンゼン中に溶解させてフラーレンアニオンを形成させる工程と、該フラーレンアニオンにトシルシアニドもしくはメチル基を反応させることによりターチオフェン-フラーレン連結化合物からなる単量体を形成する工程と、該単量体を重合反応させて高分子重合体を得る工程とを有する製造方法を採用した。
この方法によれば、高い導電性を有し電荷分離が起き易い導電性重合体を任意の厚さ、任意の面積で容易に得ることができる。
【0019】
本発明の有機太陽電池は、導電性重合体からなる電子供与体層と、前記本発明の導電性重合体からなる活性層が接合されている有機太陽電池とした。
本発明の有機太陽電池では、透明電極とその対向電極との間に、導電性重合体からなる電子供与体層と前記本発明の導電性重合体からなる活性層を積層した構造とすることができる。
また、本発明の有機太陽電池では、透明基板上に透明電極を介して導電性重合体からなる電子供与体層と、前記本発明の導電性重合体からなる活性層を接合した構造とすることもできる。
これら本発明の有機太陽電池は、活性層として導電性が高く電荷分離が起き易く、しかも機械的強度や耐光性に優れた導電性重合体を使用しているので、変換効率が高く、寿命の長い有機太陽電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主鎖には電子供与性が高いπ共役性のチオフェン環を使用し、側鎖には高電子受容性が高いシアノ化フラーレンを使用しているので、分子内の所定の位置にシアノ化フラーレンが共有結合しており、その高い電子受容性のために主鎖のチオフェン環の電子はシアノ化フラーレンの方へいつも引っ張られていることとなる。従って主鎖のチオフェン環は電子供与性がさらに強くなり、その結果、高い導電性を有する高分子となるとともに、光による電荷分離が起き易くなる。
また、本発明の導電性共重合高分子においては、3次元的に架橋するので機械的強度や耐光性に優れた導電性重合体となるものがある。
これらの本発明の導電性重合体を使用して有機太陽電池とすれば、機械的強度や耐光性に優れ、しかも光変換効率の高い有機太陽電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態として、主鎖が重合度(繰返し数)3のチオフェンオリゴマーの側鎖に、シアノ化フラーレン基が3重結合してなる単量体の重合体からなる導電性重合体をあげる。この導電性重合体の基となる単量体の構造式を化1に示す。
【0022】
【化1】
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【0023】
化1に示すように、この導電性重合体は主鎖が電子供与性が高いπ共役性のチオフェン環であり、側鎖には高電子受容性が高いシアノ化フラーレン基を使用している。
この導電性重合体では、分子内の所定の位置にシアノ化フラーレンが共有結合しており、その高い電子受容性のために主鎖のチオフェン環の電子はシアノ化フラーレンの方へいつも引っ張られていることとなる。従って主鎖のチオフェン環は電子供与性がさらに強くなり、その結果、高い導電性を有する高分子となるとともに、光による電荷分離が起き易くなる。
【0024】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態として、主鎖が重合度(繰返し数)3のチオフェンオリゴマーの側鎖に、メチル化フラーレン基が3重結合してなる単量体の重合体からなる導電性重合体をあげる。この導電性重合体の基となる単量体の構造式を化2に示す。
【0025】
【化2】
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【0026】
この導電性重合体では、分子内の所定の位置にメチル化フラーレンが共有結合しており、その高い電子受容性のために主鎖のチオフェン環の電子はメチル化フラーレンの方へいつも引っ張られていることとなる。従って主鎖のチオフェン環は電子供与性がさらに強くなり、その結果、高い導電性を有する重合体となるとともに、光による電荷分離が起き易くなる。
【0027】
次に、この第1の実施形態および第2に実施形態に係わる導電性重合体の製造方法について説明する。
先ず、化3に示すチオフェン誘導体をパラジウム触媒存在下で2,3,5-トリブロモチオフェンとカップリングさせることにより、化4に示すブロモターチオフェン誘導体を合成する。
【0028】
【化3】
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【0029】
【化4】
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【0030】
次に、得られたブロモターチオフェン誘導体にトリメチルシリアルアセチレンをパラジウムと銅の触媒下でカップリングさせ、化5に示すアセチレン誘導体を合成する。
【0031】
【化5】
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【0032】
次に、得られたアセチレン誘導体にテトラブチルアンモニウムフルオライドを作用させることによって脱トリメチルシリル化を行い、化6に示すエチニルタチオフェンを合成する。
【0033】
【化6】
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【0034】
次に、得られたエチニルターチオフェンをn-ブチルリチウムによってリチオ化して、化7に示すリチウムアセチリドとする。
【0035】
【化7】
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【0036】
さらに、オルトジクロロベンゼン中にC60を溶解させた溶液中に、化6に示すエチニルターチオフェンから発生させた化7に示すリチウムアセチリドを求核付加させて、化8に示す黒緑色のフラーレンアニオンを形成した後、求電子剤としてトシルシアニドを作用させることにより、化9に示すターチオフェン-C60連結化合物を合成する。
ここでトシルシアニドに替えて求電子剤としてヨウ化メチルを作用させると、化10に示すターチオフェン-C60連結化合物が得られる。
このようなC60連結化合物の構造は、 H及び 13C NMR(核磁気共鳴)、UV-vis(紫外-可視吸収スペクトル)、MS(質量分析)等の各種スペクトルを解析することにより決定することができる。
【0037】
【化8】
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【0038】
【化9】
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【0039】
【化10】
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【0040】
このようにして得られたターチオフェン-C60連結化合物からなる単量体を重合反応させて、目的とする導電性重合体とする。重合方法としては、単量体に各種の方法でエネルギーを付与して重合反応を促進する方法が利用できる。具体的には電気化学的プロセスを利用した電解重合法、光照射を行う光重合法の他、プラズマ重合法やマイクロ波重合法などが利用できる。
【0041】
次に、上記のようにして得られた導電性重合体を活性層として使用する有機太陽電池について説明する。
本発明の有機太陽電池は、本発明により得られたチオフェン環とシアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基からなる導電性重合体を活性層として使用し、電子供与体層とヘテロ接合させたものを基本とする。本発明の有機太陽電池8の断面構造の一例を図1に示す。
透明基板1は石英やガラス等の透明体でできたものが利用できる。透明基板1の上にITO(Indium Tin Oxide: インジウム酸化物にスズをドープしたもの)など光透過性の透明電極2と、電子供与体層3となるポリチオフェンなどの導電性膜と、この導電性膜とヘテロ接合を形成する本発明の導電性重合体からなる活性層4と、LiF層5とAl電極6などからなる対向電極とが、この順に積層されていることが望ましい。
透明電極2は有機太陽電池全体を支持する透明基板1と共に、光を電子供与体層3まで透過させるためのものであり、透明でかつ発生した電流を外部に取り出すための導電体をなすものである。透明電極2としては、前記ITOの他に金属酸化物の薄膜又は金、銀、白金、ニッケルなどの金属の薄膜からなっていてもよい。透明電極の形成工程では、それを基板上に形成するのが一般的であり、前述したITOなどの電極材料を基板上に蒸着やスパッタリング等の手法を用いて製膜する。
【0042】
電子供与体層3は電子供与性を有しており、さらには共役π電子系を含むP型の導電性重合体から形成されていることが望ましい。その好ましい具体例を幾つか挙げると、先のポリチオフェンの他に、ポリビニルカルバゾール、ポリ(p-フェニレン)-ビニレン、ポリアニリン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリフルオレン、ポリパラフェニレン、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリ〔2-メトキシ-5-(2’-エチルヘクソキシ)-p-フェニレン〕-ビニレン、ポリ〔2-メトキシ-5-(2’-エチルヘクソキシ)-1,4-パラフェニレンビニレン〕、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)、ポリパラフェニレン、ポリ(2,5-ジヘプチロキシ-1,4-フェニレン)、ポリフェニレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリエチレンオキシド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(ビニルアルコール)などから選ばれた少なくとも1種、或いはこれらの少なくとも1種の構成単量体の誘導体からなるポリマーがある。なお、この導電性重合体には、その導電性を制御するために硫酸根等をはじめ公知のドーパントが添加されていてもよい。
【0043】
活性層4には本発明になる主鎖に電子供与性が高いπ共役性のチオフェン環を配し、側鎖には電子受容性が高い高電子受容性のシアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基を使用した単量体の重合体からなる導電性重合体を使用する。重合体に含まれるフラーレン類としては、C60,C70,C84等いずれでもかまわない。
電子供与体層3及び活性層4の厚さはいずれも1~50nm、好ましくは5~20nmあればよい。
【0044】
本発明の有機太陽電池8では、電子供与体層3と活性層4とがヘテロ接合したものを、透明電極2と対向電極とで挟んだ構造とする。対向電極は導電性重合体と完全なオーミック接合を得るためのLiF層5と外部リードの接続が容易なAl電極6とから構成するのが好ましい。
この対向電極は、LiF/Alの他に、たとえばITOなどの酸化物やマグネシウム、インジウムなどの金属、またはこれらの2種以上の金属からなる合金で構成され、蒸着やスパッタリング、電子銃、電解メッキなどの手法を用いて前記活性層4上に薄膜として形成することができる。
【0045】
なお、活性層として使用できる導電性重合体として、チオフェン環が主鎖として連結しシアノ化フラーレン基を側鎖に連結した重合体と、チオフェン環が主鎖として連結しメチル化フラーレン基を側鎖に連結した重合体を示したが、その他にも化11から化14に示す構造式の単量体の重合体、あるいはこれら化11から化14の単量体に化1および化2の単量体を含む単量体の共重合体も使用することもできる。
【0046】
【化11】
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【0047】
【化12】
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【0048】
【化13】
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【0049】
【化14】
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【0050】
化11に示す単量体は、主鎖が重合度(繰返し数)5のチオフェンオリゴマーの側鎖に、シアノ化フラーレン基が3重結合してなる単量体の重合体である。この単量体を重合して導電性重合体とする。
なお、シアノ基に替えてメチル基を付加したものであっても良い。
【0051】
次に化12に示す単量体は、主鎖が重合度(繰返し数)3のチオフェンオリゴマーの側鎖に、シアノ化フラーレン基が単重結合してなる単量体である。この単量体を重合して導電性重合体とする。シアノ基に替えてメチル基を付加したものであっても良い。
【0052】
化13に示す単量体は、主鎖が重合度(繰返し数)3のチオフェンオリゴマー2個の側鎖に、2個のシアン基もしくはメチル基を有するシアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基1個が3重結合してなる単量体である。この単量体を重合して導電性重合体とする。
この導電性重合体においては、主鎖が2本あるので3次元的に架橋できる利点があり、機械的強度の向上や光照射に耐えうるほどの耐候性の向上等の効果を発揮するものとなる。
【0053】
化14に示す単量体は、主鎖が重合度(繰返し数)3のチオフェンオリゴマー2個の側鎖に、2個のシアノ基もしくはメチル基を有するシアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基1個が単重結合してなる単量体である。この単量体を重合して導電性重合体とする。
この導電性重合体においても、主鎖が2本あるので3次元的に架橋できる利点があり、機械的強度の向上や光照射に耐えうるほどの耐候性の向上等の効果を発揮するものとなる。
【0054】
本発明の有機太陽電池においては、先に掲げた化1、化2,および化11から化14の6種類の単量体のうち、少なくとも2種類の単量体を共重合して得られる共重合体も利用することができる。これらの共重合体も主鎖に電子供与性が高いパイ共役性のチオフェン環を配し、側鎖には電子受容性が高い高電子受容性のシアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基を使用している。その結果、高い導電性を有する重合体となるとともに、光による電荷分離が起き易くなる。
例えば、化1に示す主鎖が重合度(繰返し数)3のチオフェンオリゴマーで、その側鎖にシアノ化フラーレン基が3重結合してなる単量体と、化13に示す主鎖が重合度(繰返し数)3のチオフェンオリゴマー2個で、その側鎖にシアン基2個を有するシアノ化フラーレン基1個が3重結合してなる単量体を共重合させて得た導電性共重合体を挙げることができる。
特に、1付加体の単量体を主原料とし、これに2付加体の単量体を加えて共重合させた導電性共重合体は、主鎖が3次元的に架橋するため機械的強度が一段と向上する利点を有する。
【0055】
本発明の導電性重合体は、その高性能な導電性や電分離能等の特性を生かして、有機太陽電池の他に、有機トランジスタ(TR)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子や有機固体電解コンデンサ等に利用することができる。
次に、本発明の導電性重合体を有機トランジスタの活性層に利用した例を示す。
図2は有機トランジスタ10-1の構造を示す断面図の一例である。ITO( IndiumThin Oxide ) 等の電極12を形成したガラス基板11上にシリコン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の絶縁膜13を熱酸化法やCVD又はスパッタ法を用いて形成する。次いで金や白金等のソース電極14とドレイン電極15を形成し、次いで本発明の導電性重合体である、例えばシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体16を、スピンコート及び電解重合法を利用して形成する。
また、逆にシリコンやガラスの基板上に先のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体を形成し、金や白金のソース電極とドレイン電極を形成し、次いでシリコン酸化膜やシリコン窒化膜又は酸化アルミニウム等のゲート絶縁膜を形成し、次いでゲート電極を形成して有機トランジスタとすることもできる。
これらの有機トランジスタは、その高い導電性から大きな電子移動度を得ることができ、トランジスタとしての動作スピードを向上させることができる。
【0056】
図3から図5に有機トランジスタの他の構造例を断面図で示す。
図3に示す有機トランジスタ10-2は本発明の導電性重合体を活性層に使用した有機トランジスタの他の構造例を示す断面図であって、本発明のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体16とチオフェン重合体17とのヘテロ接合構造としたものである。
【0057】
図4に示す有機トランジスタ10-3は本発明の導電性重合体を活性層に使用した有機トランジスタの他の構造例を示す断面図であって、ガラス基板11上にシリコン酸化膜やアルミニウム酸化膜等の絶縁膜13を形成し、該絶縁膜13上に本発明のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体16を積層し、その上にソース電極14とドレイン電極15を形成したものである。
さらに、図5に示す有機トランジスタ10-4は本発明の導電性重合体を活性層に使用した有機トランジスタの別の構造例を示す断面図であって、図4において絶縁膜13上に直接本発明のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体16を載置したのに替えて、絶縁膜13上に本発明のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体16とチオフェン重合体17とのヘテロ接合構造を載置した構造としたものである。
【0058】
次に、本発明の導電性重合体を利用した有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の構造例を示す。
図6は本発明の導電性重合体をホール注入層に利用した有機EL素子の一例を示す断面図である。ITOなどの透明電極22を形成したガラス基板21の上に、ホール注入層26として本発明のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体を電解重合法等により形成し、次いで電子輸送層27としてアルミキノリノール錯体(Alq)を積層した後、仕事関数の低いMgAg合金層24やLiF層を形成し、接続用のAl等の金属からなる対向電極25を形成して有機EL素子20-1としたものである。
【0059】
図7は、本発明の導電性重合体を利用した有機EL素子の他の構造例を示す断面図である。図7に示す有機EL素子20-2の例では、図6において絶縁膜13上に直接ホール注入層26を形成するのに替えて、絶縁膜13上にチオフェン重合体28を介してホール注入層26を形成し、チオフェン重合体と本発明のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体とのヘテロ接合構造としたものである。
【0060】
次に、本発明の導電性重合体を利用した有機固体電解コンデンサの構造例を示す。
図8は、陰極導電層として本発明のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体を利用した有機固体電解コンデンサの構造例を示す断面図である。
陽極としてはタンタル(Ta)の多孔質焼結体31を使用し、Taの多孔質焼結体31を酸化処理して表面に誘電体層となるタンタル酸化膜(Ta)32を形成する。Taの多孔質焼結体31中に陽極リードを埋設し、陰極導電層33として本発明のシアノ化フラーレンもしくはメチル化フラーレンを含むチオフェン環重合体を充填した後、カーボン層34及び銀ペーストを使用したAg電極35を形成し、陰極リードを取り付けて有機固体電解コンデンサ30とする。
なお、陽極金属としてタンタル(Ta)の代わりにニオブ(Nb)を用いても良い。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
先ず、化3に示すチオフェン誘導体をパラジウム触媒存在下で2,3,5-トリブロモチオフェンとカップリングさせることにより、ブロモターチオフェン誘導体を合成した。
【0062】
次に、得られたブロモタ-チオフェン誘導体にトリメチルシリアルアセチレンをパラジウムと銅の触媒下でカップリングさせ、アセチレン誘導体を合成した。
次に、得られたアセチレン誘導体にテトラブチルアンモニウムフルオライドを作用させることによって脱トリメチルシリル化を行い、エチニルタ-チオフェンを合成した。
【0063】
次に、得られたエチニルタ-チオフェンをn-ブチルリチウムによってリチオ化して、リチウムアセチリドとした。
さらに、オルトジクロロベンゼン中にC60を溶解させた溶液中に、前記エチニルタ-チオフェンから発生させたリチウムアセチリドを求核付加させて、フラーレンアニオンを形成した後、求電子剤としてトシルシアニドを作用させることにより、ターチオフェン-C60連結化合物を合成した。
このようにして得られたC60連結化合物につき、 H-NMR、MS、IR及びUV-visを測定した。 H-NMRのスペクトル図を図9に、MSのスペクトル図を図10に、IRのスペクトル図を図11に、さらにUV-visの吸収スペクトル図を図12に示す。
図9と図13においてピークの同定は類似化合物との比較、化学シフト、ピークの相対的な高さを参考にして同定した。
図9において、3.98,4.10(δ/ppm)のピークは、エチレンジオキシ基のCH によるピークである。6.05,6.06(δ/ppm)のピークは、エチレンジオキシチオフェンのα-位のプロトンによるピークである。また、7.49(δ/ppm)のピークは、真ん中のチオフェンのβ-位のプロトンによるピークである。
図10においては、1133(m/z)にC7911NOのピークが認められる。
図11において、2219(cm-1)のピークは、シアノ基による吸収である。
図12において、10倍に拡大した曲線を見ると697(nm)の位置にピークが認められる。
これらの結果から、得られたC60連結化合物は重合度が3のチオフェンオリゴマーの側鎖に1個のシアノ基を付加したシアノ化フラーレンが3重結合した構造の単量体であると同定することができた。
さらに、このようにして得られたターチオフェン-C60連結化合物単量体を電解重合して導電性重合体を得た。
【0064】
(実施例2)
実施例1において求電子剤としてトシルシアニドを作用させる替わりに、ヨウ化メチルを作用させてターチオフェン-C60連結化合物の単量体を合成した。
このようにして得られたC60連結化合物の単量体につき、H-NMR、13C-NMR、MS、IR、UV-vis及びサイクリックボルタンメトリーを測定した。サイクリックボルタンメトリーは、オルトジクロロベンゼン中でサイクリックボルタンメトリーにより酸化還元電位(CV)を測定した。
この化合物の H-NMRのスペクトル図を図13に、13C-NMRのスペクトル図を図14に、MSのスペクトル図を図15に、IRのスペクトル図を図16に、UV-visの吸収スペクトル図を図17に、さらにサイクリックボルタンメトリーのチャートを図18に示す。
図14においてもピークの同定は類似化合物との比較、化学シフト、ピークの相対的な高さを参考にして同定した。
図13において、3.34(δ/ppm)のピークはメチル基のピークである。3.92,4.03(δ/ppm)のピークはエチレンジオキシ基のCH によるピークである。また、6.03,6.13(δ/ppm)のピークは、エチレンジオキシチオフェンのα-位のプロトンによるピークである。また、7.35(δ/ppm)のピークは、真ん中のチオフェンのβ-位のプロトンによるピークである。
図14において、炭素の三重結合を示す93.22と82.83(δ/ppm)のピークが認められる。
図15においては、1122(m/z)にC7914のピークが認められる。
図16において、2328(cm-1)のピークは、アセチレン結合による吸収である。
図17において、10倍に拡大した曲線を見ると704(nm)の位置にピークが認められる。
図18において、-1.14,-1.53,-2.08V に可逆的な還元波と、+0.49Vに非可逆的な酸化波を示している。
これらの結果から、得られたC60連結化合物は重合度が3のチオフェンオリゴマーの側鎖に1個のメチル基を付加したメチル化フラーレンが3重結合によって結ばれた構造の単量体であると同定することができた。
【0065】
さらに上記ターチオフェン-C60連結化合物単量体を電解重合法を用いて重合した。この重合体についてもサイクリックボルタンメトリーを測定した。結果を図19及び図20に示す。図19に示すように-0.98,-1.44、-1.94Vに可逆な還元波と、+0.20Vに非可逆な酸化波を示した。掃引測定を繰り返したところ、図20に示すように酸化側及びC60部分の還元波ともに電流量が増加した。これは電極上で電解重合が起こっていることを示している。
【0066】
(実施例3)
実施例1で得られた本発明の導電性重合体を使用した有機太陽電池を作成した。
先ず、ITOからなる透明電極2を形成したガラス製の透明基板1上に電子供与体層3としてPEDOT( ポリ(3,4- エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルフォネート))をスピンコートした。次いで、化1に示す単量体をアセトニトリルに溶解し、該溶液中に上記PEDOT膜を形成した基板と白金対向電極及び飽和カロメル参考電極を浸漬した。各電極及び基板をポテンシオスタットに接続し、1Vの電位を10秒間印加することにより透明基板のITO透明電極表面のPEDOT膜上で電解重合を起こさせて、シアノ化フラーレン基を含むチオフェン環重合体からなる導電性重合体の薄膜を形成して活性層4とし、その上にLiF層5とAl電極6からなる対向電極を形成して、図1に示す断面構造を有する素子を形成した。
透明電極側から光を照射すると、Al電極と透明電極との間に電流が高効率で流れ、有機太陽電池が構成されていることが判った。
【0067】
本発明では、シアノ化フラーレン基もしくはメチル化フラーレン基を含むチオフェン環誘導体を用いるが、これら二つの誘導体を比較すると、電子受容性の強さからシアノ化フラーレン基を側鎖に有するチオフェン環誘導体を用いる方が、メチル化フラーレン基を側鎖に有するチオフェン環誘導体よりも電荷分離性が高く、高い導電性を有する重合体となるとともに、光による電荷分離能も高い値を示す。
【0068】
(実施例4)
実施例1で得られた60フラーレンが結合したターチオフェン-C60連結化合物を使用して図21に示す構造の有機太陽電池を作成した。
先ず、実施例1で得られたターチオフェン-C60連結化合物を、テトラブチルアンモニウムパークロレートが0.1Mの濃度で溶解しているオルトジクロロベンゼンに、濃度が0.1mMとなるように溶解させた。次いで当該溶液を電気化学セルに注ぎ、ガラス基板41上にITO膜42を成膜して得たITO電極を作用電極とし、白金線を対向電極とし、銀/塩化銀電極を参照電極として、電位1Vで1時間、ターチオフェン誘導体を電解重合して、ITO膜上に重合体の薄膜43を得た。このITO膜42と重合体の薄膜43とからなる電極をITO電極と呼ぶ。
当該ITO電極にO(オー)リング47を介して表面に白金45をスパッタしたガラス基板(以降、単に白金電極と呼ぶ)を載せ、ITO電極と白金電極との間に濃度1MのKCl溶液46を満たし、図21に示す構造の有機太陽電池を形成した。ITO電極と白金電極を電流計(ケイスレー製;リモートソースメーター 6430)48に接続し、光源(ホヤショット製;HLS100UM)によりITO電極を通して光を照射したところ、100nAの電流が観測された。光の照射をやめると電流は流れなくなった。この電流測定結果を図22に示す。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の有機太陽電池の断面構造の一例を示す図である。
【図2】有機トランジスタの構造の一例を示す断面図である。
【図3】有機トランジスタの他の構造の例を示す断面図である。
【図4】有機トランジスタの別の構造の例を示す断面図である。
【図5】有機トランジスタのさらに別の構造の例を示す断面図である。
【図6】有機エレクトロルミネッセンスの構造の一例を示す断面図である。
【図7】有機エレクトロルミネッセンスの他の構造の例を示す断面図である。
【図8】有機電解固体コンデンサの構造の一例を示す断面図である。
【図9】第1の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体の H-NMRのスペクトル図である。
【図10】第1の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体のMSスペクトル図である。
【図11】第1の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体のIRスペクトル図である。
【図12】第1の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体のUV-visスペクトル図である。
【図13】第2の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体のH-NMRのスペクトル図である。
【図14】第2の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体の13C-NMRのスペクトル図である。
【図15】第2の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体のMSスペクトル図である。
【図16】第2の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体のIRスペクトル図である。
【図17】第2の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体のUV-visスペクトル図である。
【図18】第2の実施形態に係わる導電性重合体を構成する単量体のサイクリックボルタンメトリーを示す図である。
【図19】第2の実施形態に係わる導電性重合体のサイクリックボルタンメトリーを示す別の図である。
【図20】第2の実施形態に係わる導電性重合体のサイクリックボルタンメトリーを示す別の図である。
【図21】第4の実施例に係わる有機太陽電池の断面構造を示す図である。
【図22】第4の実施例に係わる有機太陽電池の電流測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・・・・透明基板、2・・・・・・透明電極、3・・・・・・電子供与体層、4・・・・・・活性層、5・・・・・・LiF層、6・・・・・・Al電極、8・・・・・・有機太陽電池、10-1,10-2,10-3,10-4・・・・・・有機トランジスタ、13・・・・・・絶縁膜、16・・・・・・チオフェン環重合体、17・・・・・・チオフェン重合体、20-1,20-2・・・・・有機エレクトロルミネッセンス素子、22・・・・・・透明電極、26・・・・・・ホール注入層、27・・・・・・電子輸送層、28・・・・・・チオフェン重合体、30・・・・・・有機固体電解コンデンサ、31・・・・・・タンタル多孔質焼結体、32・・・・・・タンタル酸化膜、33・・・・・・陰極導電層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21