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明細書 :運動継続支援システム、運動誘引情報生成装置及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5988137号 (P5988137)
公開番号 特開2013-244147 (P2013-244147A)
登録日 平成28年8月19日(2016.8.19)
発行日 平成28年9月7日(2016.9.7)
公開日 平成25年12月9日(2013.12.9)
発明の名称または考案の名称 運動継続支援システム、運動誘引情報生成装置及びプログラム
国際特許分類 A63B  69/00        (2006.01)
A63B  71/06        (2006.01)
FI A63B 69/00 A
A63B 71/06 T
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2012-119350 (P2012-119350)
出願日 平成24年5月25日(2012.5.25)
審査請求日 平成27年4月28日(2015.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】岩田 浩康
【氏名】後濱 龍太
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査官 【審査官】中澤 真吾
参考文献・文献 特開2003-290406(JP,A)
特開2009-112731(JP,A)
特開2001-224730(JP,A)
特開2009-247836(JP,A)
特開2010-273746(JP,A)
調査した分野 A63B 69/00
A63B 71/06
特許請求の範囲 【請求項1】
使用者の運動による身体の動きを検出する姿勢認識装置と、当該姿勢認識装置からの検出データに基づき、運動時の使用者の動きを適切に導くための情報を生成する運動誘引情報生成装置と、当該運動誘引情報生成装置で生成された情報を出力して使用者に提示する出力装置とを備え、使用者の運動継続を支援する運動継続支援システムであって、
前記運動誘引情報生成装置は、運動時における使用者の身体の動きの目安となる目標音に基づいて使用者が運動した際に、使用者の身体の動きに応じた動作音を生成する動作音生成手段を備え、
前記動作音生成手段は、前記姿勢認識装置の検出データから、人体内の複数の筋肉部位の動きに対応して伸縮可能となるように前記筋肉部位毎にそれぞれ仮想的に設定された仮想リンクの長さを求め、これら各仮想リンクの長さに、当該各仮想リンクに重み付けをする重み定数を乗じた上で、前記各仮想リンクの長さの総和を求める仮想リンク総和演算部と、
前記仮想リンク総和演算部で求めた総和に応じて前記動作音を決定する動作音決定部と、
使用者の過去の動作における前記姿勢認識装置の検出データから、前記各筋肉部位間の使用頻度の偏りを判定する偏重部位判定部と、
前記偏重部位判定部で判定された前記各筋肉部位間の使用頻度の偏りに応じて前記仮想リンク毎に前記重み定数を変更する重み付け更新部とを備えたことを特徴とする運動継続支援システム。
【請求項2】
前記動作音決定部では、前記総和と前記動作音の高さとが対応する関数が予め記憶され、当該関数を用いて前記総和から前記動作音の高さが決定されることを特徴とする請求項1記載の運動継続支援システム。
【請求項3】
前記偏重部位判定部では、直前のセットにおける前記姿勢認識装置の検出データから、前記各仮想リンクそれぞれについて、直前のセットの各時刻における長さの分散が演算され、当該分散に応じて前記各仮想リンクに対応する前記筋肉部位の使用頻度が判定されることを特徴とする請求項1又は2記載の運動継続支援システム。
【請求項4】
前記偏重部位判定部では、前記各仮想リンクにおける前記各分散の平均値が求められ、前記各仮想リンクにおける前記各分散が前記平均値よりも大きい場合、前記各仮想リンクに対応する筋肉部位を運動でよく使われている部位と判定する一方で、前記各分散が前記平均値よりも小さい場合、前記各仮想リンクに対応する筋肉部位を運動であまり使われていない部位と判定することを特徴とする請求項3記載の運動継続支援システム。
【請求項5】
前記重み付け更新部では、直前のセットでの前記筋肉部位の使用頻度が高い程、前記重み定数が小さくなるように更新されることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の運動継続支援システム。
【請求項6】
前記運動誘引情報生成装置は、前記目標音をセット毎に相違するように生成する目標音生成手段を更に備え、
前記目標音生成手段では、使用者が大小の動きを繰り返し行えるように、経時的に高低が繰り返される前記目標音を生成することを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の運動継続支援システム。
【請求項7】
使用者の運動時の心拍数を計測可能な心拍数計測装置を更に備え、
前記目標音生成手段は、前記心拍数計測装置で計測された前記心拍数に応じて、前記目標音の高低差を調整することを特徴とする請求項6記載の運動継続支援システム。
【請求項8】
使用者の運動による身体の動きに関する検出データに基づき、運動時の使用者の動きを適切に導くための情報を生成する運動誘引情報生成装置であって、
運動時における使用者の身体の動きの目安となる目標音に基づいて使用者が運動した際に、使用者の身体の動きに応じた動作音を生成する動作音生成手段を備え、
前記動作音生成手段は、前記検出データから、人体内の複数の筋肉部位の動きに対応して伸縮可能となるように前記筋肉部位毎にそれぞれ仮想的に設定された仮想リンクの長さを求め、これら各仮想リンクの長さに、当該各仮想リンクに重み付けをする重み定数を乗じた上で、前記各仮想リンクの長さの総和を求める仮想リンク総和演算部と、
前記仮想リンク総和演算部で求めた総和に応じて前記動作音を決定する動作音決定部と、
使用者の過去の動作における前記検出データから、前記各筋肉部位間の使用頻度の偏りを判定する偏重部位判定部と、
前記偏重部位判定部で判定された前記各筋肉部位間の使用頻度の偏りに応じて前記仮想リンク毎に前記重み定数を変更する重み付け更新部とを備えたことを特徴とする運動誘引情報生成装置。
【請求項9】
運動時における使用者の身体の動きの目安となる目標音に基づいて使用者が運動した際に、当該運動による身体の動きに対応して取得した検出データに基づき、使用者の身体の動きに応じた動作音を生成することで、運動時の使用者の動きを適切に導く運動誘引情報生成装置のプログラムであって、
前記検出データから、人体内の複数の筋肉部位の動きに対応して伸縮可能となるように前記筋肉部位毎にそれぞれ仮想的に設定された仮想リンクの長さを求め、これら各仮想リンクの長さに、当該各仮想リンクに重み付けをする重み定数を乗じた上で、前記各仮想リンクの長さの総和を求めるステップと、
前記総和に対応した前記動作音を決定するステップと、
使用者の過去の動作における前記検出データから、前記各筋肉部位間の使用頻度の偏りを判定するステップと、
前記各筋肉部位間の使用頻度の偏りに応じて前記仮想リンク毎に前記重み定数を変更するステップとをコンピュータに実行させるための運動誘引情報生成装置のプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、運動継続支援システム、運動誘引情報生成装置及びプログラムに係り、更に詳しくは、使用者が自己の判断によって運動時の動作を決定でき、且つ、身体の筋肉部位をバランス良くトレーニングできるように使用者を運動に誘引するための運動継続支援システム、運動誘引情報生成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
有酸素運動習慣は、生活習慣病の罹患リスクを低減するが、疾病なき者への運動習慣の動機付けは困難を伴い易く、運動習慣者の割合は、厚生労働省が定めた目標を下回っている。自己決定理論によれば、運動継続には内発的動機づけが必要であり、当該内発的動機づけを促進するには、自発的に行動しているという実感、すなわち、自己決定感が必要になる。従って、疾病なき者へ運動継続を促進させるためには、自己決定感を高める運動手法が望まれる。
【0003】
ところで、特許文献1には、動作の態様の異なる複数のキャラクターが同時に運動を行う画像をモニタに表示し、複数人のユーザの熟練度に応じて優先的にモニタに表示するキャラクターを変更することができる運動支援装置が開示されている。この運動支援装置では、ユーザが、モニタのキャラクターの中から、自分の熟練度に合ったキャラクターを参考に運動を行うことになる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-65942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の運動支援装置では、ユーザが画像を見ながらキャラクターと同一の運動動作を行うことを意図しており、具体的な動き方(振付け)をユーザに教示し、それをユーザが真似て運動するため、ユーザが運動に対して自己決定する余地は少ない。そのため、前記運動支援装置では、自己決定感を高めることができず、運動への動機付けが低い者に対して内発的動機づけを促進することは難しいと考えられる。
【0006】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、使用者自らがどう動くかを決定しつつも、各筋肉部位をバランス良くトレーニングできるように使用者を導くことができる運動継続支援システム、運動誘引情報生成装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、主として、本発明は、使用者の運動による身体の動きを検出する姿勢認識装置と、当該姿勢認識装置からの検出データに基づき、運動時の使用者の動きを適切に導くための情報を生成する運動誘引情報生成装置と、当該運動誘引情報生成装置で生成された情報を出力して使用者に提示する出力装置とを備え、使用者の運動継続を支援する運動継続支援システムであって、前記運動誘引情報生成装置は、運動時における使用者の身体の動きの目安となる目標音に基づいて使用者が運動した際に、使用者の身体の動きに応じた動作音を生成する動作音生成手段を備え、当該動作音生成手段は、前記姿勢認識装置の検出データから、人体内の複数の筋肉部位の動きに対応して伸縮可能となるように前記筋肉部位毎にそれぞれ仮想的に設定された仮想リンクの長さを求め、これら各仮想リンクの長さに、当該各仮想リンクに重み付けをする重み定数を乗じた上で、前記各仮想リンクの長さの総和を求める仮想リンク総和演算部と、当該仮想リンク総和演算部で求めた総和に応じて前記動作音を決定する動作音決定部と、使用者の過去の動作における前記姿勢認識装置の検出データから、前記各筋肉部位間での動作の偏りを判定する偏重部位判定部と、当該偏重部位判定部で判定された前記各筋肉部位の動作の偏りに応じて前記仮想リンク毎に前記重み定数を変更する重み付け更新部とを備える、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目標音の高さに応じて運動時の動きを大きくする等の単純なルールを使用者に事前に知らせておくだけで、経時的な目標音の相違に応じて、使用者に自己の身体のどの部分を動かしても良く、使用者が記憶した目標音に近い動作音が得られるように、使用者は自由に身体の動かし方を自己決定することができる。しかも、各筋肉部位間で経時的に動作の偏りが出て来た場合には、仮想リンクの重み定数が自動的に更新されるため、使用過多の筋肉部位を動かしても動作音が出にくくなる等により、使用過小の筋肉部位の動作を使用者に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る運動継続支援システムの全体構成を表す模式図。
【図2】前記運動継続支援システムの構成を示すブロック図。
【図3】仮想リンクを説明するための模式図。
【図4】目標音、動作音に対応するバーが表示された状態を示すモニタの画面例。
【図5】運動誘引情報生成装置での処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。

【0011】
図1には、本実施形態に係る運動継続支援システムの全体構成を表す模式図が示され、図2には、前記運動継続支援システムの構成を表すブロック図が示されている。これらの図において、運動継続支援システム10は、運動時の使用者Hの身体の動きを検出する姿勢認識装置11と、姿勢認識装置11からの検出データに基づき、運動時の使用者Hの動きを適切に導くための情報を生成する運動誘引情報生成装置12と、運動誘引情報生成装置12で生成された情報を出力して使用者Hに提示する出力装置14と、使用者Hの身体の一部に装着され、使用者Hの運動時の心拍数を計測し、当該心拍数のデータを運動誘引情報生成装置12に送信する心拍数計測装置15とを備えて構成されている。

【0012】
前記姿勢認識装置11は、モーションキャプチャー技術を利用して、運動時の使用者Hの身体の動きをデジタル化して検出可能な公知の構成のものが用いられる。本実施形態の姿勢認識装置11としては、レーザ光を使用者Hに向かって投射し、その反射光の状態を赤外線カメラで撮像し、予め記憶された人物モデルとパターンマッチングすることで、使用者Hの身体の動き(モーション)を特定する非接触式姿勢認識センサ(マーカレスモーションキャプチャーシステム)が用いられる。この姿勢認識装置11の構成は、本発明の本質的な要素ではないため、詳細な説明を省略する。なお、本発明においては、運動時の使用者Hの身体の動き、つまり、運動中の各動作ポーズにおける身体全体の外形データを検出可能である限り、マーカ式等、その他種々の姿勢認識装置11を適用することができる。

【0013】
前記運動誘引情報生成装置12は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成され、当該コンピュータを以下の各手段として機能させるためのプログラムがインストールされている。

【0014】
この運動誘引情報生成装置12は、運動時に使用者Hが身体の動きの目安とするための目標音を生成する目標音生成手段17と、使用者Hが目標音に対応して運動した際に、姿勢認識装置11の検出データから、使用者Hの身体の動きに応じた動作音を生成する動作音生成手段18とを備えている。

【0015】
前記目標音生成手段17では、周波数の異なる音が一定時間毎に1音ずつ選択され、所定時間を1セットとした目標音が生成される。この目標音を聞いた使用者Hは、目標音を記憶し、その後、目標音の経時的な音の変化を思い浮かべながら、当該変化に合わせて自由に身体を動かす。従って、目標音は、使用者Hの運動を行う上での教師音になる。本実施形態では、目標音として、0.5秒毎に高音と低音を繰り返すようにし、2秒間を1セットとした4音からなるものを例示できる。この場合、使用者Hには、目標音の高低に応じて動きを変え、目標音が高くなる程、身体を拡げる動きを行い、目標音が低くなる程、身体を縮める動きを行うように予め指示される。

【0016】
この目標音生成手段17では、2つの正規分布曲線の重ね合わせで表現した音の生成関数が予め記憶され、以下のように、当該生成関数を用いて、時刻t=iのときの目標音δが決定される。目標音δは、音の高さ(周波数)に対応して正規化された数値に変換されたものであり、0<δ<1の範囲内で設定される。

【0017】
先ず、音の高さに対応する確率変数xの生起する確率yが、次式により求められる。ここで、確率変数xは、正規化が施され、0<x<1の範囲内で設定される。
【数1】
JP0005988137B2_000002t.gif
以上の式において、「δi-1」は、求める目標音δの一つ前の時刻t=i-1のときの目標音であり、最初の目標音の決定時には、予め設定された値が適用される。また、「τ」は、2つの正規分布曲線の裾の広さを決定する負の値の負荷定数であり、後述するように、各セット単位で更新される。更に、「μ」は、δi-1と1-δi-1との間で、大きい方の値とする。

【0018】
前記負荷定数τは、使用者Hに要求する運動負荷の大きさを決めるための定数であり、その絶対値が大きい程、連続する目標音の高低差が大きくなり、使用者Hの運動負荷を高くすることができる。この負荷定数τは、最初のセットでは予め設定された値が選択され、次セットからは、前セットにおける使用者Hの運動終了時点で心拍数計測装置15によって計測された使用者Hの心拍数に基づき、次のように決定される。すなわち、計測された心拍数が、年齢等に応じて予め記憶された最大目標心拍数よりも高い場合、前セットでの負荷定数τを、経験的に設定された定数Pで除した値が新たな負荷定数τとされ、次セットから運動負荷が低くなる目標音に設定される。当該場合に、前セットでの負荷定数τから定数Pを減じても良い。また、計測された心拍数が、最小目標心拍数よりも低い場合、前セットでの負荷定数τに前記定数Pを乗じた値が新たな負荷定数τとされ、次セットから運動負荷が高くなる目標音に設定される。当該場合に、前セットでの負荷定数τに定数Pを加えても良い。

【0019】
そして、次式により、確率密度関数Y(s)が求められ、その逆関数Y-1(s)から目標音δが求められる。
【数2】
JP0005988137B2_000003t.gif
つまり、ここでは、Y(s)の値として、0から1の間でランダムに一つ選択され、逆関数s=Y-1(s)に代入することで得られる値sが目標音δと決定される。

【0020】
時刻t=iのときの目標音δが決定されると、その値δを用いて、前述と同様の手順により、次の時刻t=i+1のときの目標音δi+1が求められる。

【0021】
なお、本実施形態における目標音生成手段17では、前述の演算によって各音の周波数を各時刻で逐次決定しているが、予め記憶された目標音をパターン化し、当該各パターンをランダムに選択する等、他の選択手法を採用することもできる。

【0022】
前記動作音生成手段18は、図2に示されるように、使用者Hの身体内に仮想的に設定された各仮想リンクの長さにそれぞれ重み付けした値の総和を求める仮想リンク総和演算部20と、仮想リンク総和演算部20で求めた前記総和に応じて動作音を決定する動作音決定部21と、使用者Hの過去の動作における姿勢認識装置11の検出データから、各身体部位間での動作の偏りを判定する偏重部位判定部22と、偏重部位判定部22で判定された各身体部位の動作の偏りに応じて、各仮想リンクへの重み付けを変更する重み付け更新部23とを備えて構成されている。

【0023】
前記仮想リンク総和演算部20では、運動による筋肉の弾性変形を模擬した仮想リンクが所定の身体部位毎にそれぞれ設定される。この仮想リンクは、所定の筋肉毎に、その起始と停止の位置間で伸縮自在となるように仮想的に設けられる。本実施形態においては、図3に示されるように、大筋群における筋肉の伸縮に対応する6箇所に、延出方向に伸縮自在に弾性変形可能な仮想リンクL(L1~L6)が設けられている。具体的に、第1及び第2の仮想リンクL1,L2は、大胸筋と広背筋の伸縮に対応しており、臍と左右の肘関節との間をそれぞれ直線状に延びている。また、第3及び第4のリンクL3,L4は、股関節周辺の大腿四頭筋の伸縮に対応しており、臍と左右の膝関節との間をそれぞれ直線状に延びている。更に、第5及び第6のリンクL5,L6は、膝関節周辺の大腿四頭筋の伸縮に対応しており、股関節と足首との間を左右それぞれ直線状に延びている。なお、大胸筋の起始は胸骨であるが、正中線上であれば前記総和の計算において本質的な相違がないと考えられることから、モデル簡素化のために起始を大腿四頭筋と同じ臍に設定している。また、本発明では、身体内の仮想リンクLの設定位置や設定数は、前述の態様に限定されるものではない。

【0024】
そして、次式により、使用者Hの運動時において、各仮想リンクL1~L6の長さの総和Eが所定時間毎に逐次求められる。
【数3】
JP0005988137B2_000004t.gif
ここで、「k」は、各仮想リンクL1~L6を重み付けした重み定数であり、直前のセットの運動結果に基づいて後述するようにそれぞれ更新されるが、最初のセットでは、各仮想リンクL1~L6で同一の重み付けとなるように予め設定された値が用いられる。また、「l」は、各仮想リンクL1~L6の長さであり、姿勢認識装置11の検出データから演算によって求められる。更に、「n」は、仮想リンクLの数であり、本実施形態では、n=6となる。

【0025】
以上のように、仮想リンク総和演算部20では、姿勢認識装置11の検出データに基づき、各仮想リンクL1~L6の長さlが求められ、これら各仮想リンクL1~L6の長さlに重み定数kをそれぞれ乗じた値が合算され、各仮想リンクL1~L6を重み付けした長さの総和E(以下、単に、「総和E」と称する。)が求められる。

【0026】
前記動作音決定部21では、前記総和Eから、予め記憶された線形関数を用いて、音の高さ(周波数)が逐次決定される。ここでの線形関数は、総和Eが増大する程、高い音が選択されるように設定される。

【0027】
前記偏重部位判定部22では、次のようにして、前記各筋肉部位間での動作の偏りが判定される。すなわち、直前のセットでの使用者Hの運動動作に関する姿勢認識装置11の検出データが記憶される。そして、当該検出データから、各仮想リンクL1~L6それぞれについて、直前のセットにおける仮想リンクL1~L6の長さの経時的な分散が、仮想リンクL1~L6毎にそれぞれ演算される。次に、各仮想リンクL1~L6についてそれぞれ求めた6つの分散の平均値が求められる。そして、各仮想リンクL1~L6に対応する分散が、前記平均値よりも大きい場合は、当該仮想リンクLの部位は、よく使われている筋肉部位(使用過大部位)であると判定される。一方、各仮想リンクL1~L6に対応する分散が、前記平均値よりも小さい場合は、当該仮想リンクLの部位は、あまり使われていない筋肉部位(使用過小部位)であると判定される。なお、本実施形態では、6つの分散の平均値を基準に、筋肉部位の動作の偏りを判定しているが、本発明はこれに限らず、例えば、閾値を一又は複数設定し、各閾値を基準に筋肉部位の動作の偏りを段階的に判定する等、他の判定手法を採用することもできる。

【0028】
前記重み付け更新部23では、直前のセットでの使用者Hの運動に基づいて、次のセットにおける動作音を決定する際の各仮想リンクL1~L6の前記重み定数kが次のように更新される。すなわち、ここでは、偏重部位判定部22で筋肉の使用過大部位と判定された仮想リンクLについては、その重み定数kを小さくする一方、筋肉の使用過小部位と判定された仮想リンクLについては、その重み定数kを大きくするように更新される。一例として、本実施形態では、重み定数kが次のように更新される。すなわち、使用過大部位と判定された仮想リンクLについては、その重み定数kを定数Q(1<Q)で除して、暫定値kTを求める。ここで、定数Qは、経験的に決定された値であり、予め記憶されている。なお、このときの暫定値kTとしては、重み定数kから定数Qを減算しても良い。一方、使用過小部位と判定された仮想リンクLについては、その重み定数kに前記定数Qを乗じて、暫定値kTを求める。なお、このときの暫定値kTとしては、重み定数kに定数Qを加算しても良い。そして、常時、各仮想リンクL1~L6における重み定数kの和が一定になるように、次式によって、各仮想リンクL1~L6それぞれについて、更新される重み定数ki_newが求められる。
【数4】
JP0005988137B2_000005t.gif

【0029】
前記出力装置14は、目標音と動作音が出力されるスピーカ25と、目標音と動作音の高さ(周波数)に応じた表示がなされるモニタ26とからなる。モニタ26による画面表示の態様は、特に限定されるものではないが、一例として、以下が挙げられる。

【0030】
前記モニタ26では、図4に示されるように、目標音の高さに対応する線状の目標音バー28と、動作音の高さに対応する線状の動作音バー29とが同時に表示されるようになっている。目標音バー28及び動作音バー29は、画面横方向に延び、音が高くなる程、画面の上方に配置されるようになっている。前記目標音バー28は、1セット分の目標音を全て表示可能な長さになっており、1セット分の複数の目標音バー28が、時系列的に画面左から右に向かって表示されるようになっている。本実施形態では、1セット4音で構成されているため、モニタ26には、1セット毎に4本の目標音バー28が画面横方向に表示されることになる。また、前記動作音バー29は、動作音が発生する度に画面内に表示されて前の表示をキャンセルするようになっており、画面の横方向の幅にほぼ相当する長さになっている。

【0031】
次に、以上の構成の運動継続支援システム10の使用手順を説明する。

【0032】
先ず、使用前に、使用者Hに対し、目標音が高くなる程、身体を拡げる動きを行い、目標音が低くなる程、身体を縮める動きを行うというルールを予め認識させておく。次に、運動継続支援システム10を動作させ、使用者に、運動を行う前の静止状態で、出力装置14から提示される1セット分の目標音を記憶させる。本実施形態では、1セット当たり4音の目標音から構成され、1セット当たりの目標音が流れる時間は2秒間である。次に、スピーカ25からの目標音の出力が停止し、モニタ26による目標音の画面表示が残ったまま、使用者Hが前述のルールに従い目標音に対応した1セット分2秒間の動作(運動)を行う。そして、運動誘引情報生成装置12で、以下の処理により、使用者Hの動きの状態に対応する動作音が運動とほぼ同時に生成され、運動中、動作ポーズ毎に動作音がスピーカ25から出力されるとともに、当該動作音に対応する動作音バー29が目標音バー28に重畳された状態でモニタ26に表示される。これにより、使用者Hは、目標音が得られるような正しい動き(運動)が出来ているか、自己の聴覚の他にモニタ26で視認することができる。次に、2セット目に移り、所定時間(例えば、30分以上)前述の流れが繰り返し行われる。

【0033】
更に、前記運動誘引情報生成装置12での処理手順について、図5のフローチャートを用いながら以下に説明する。

【0034】
運動継続支援システム10の動作が開始すると、先ず、使用者Hに提示する1セット目の目標音が目標音生成手段17で生成され、当該目標音に対応する電気信号が出力装置14に送信される(ステップS101)。そして、1セット分の目標音の提示が終了したら(ステップS102)、前述した通り、使用者Hが運動を開始するが、当該運動時の使用者Hの身体の動きが姿勢認識装置11により逐次検出され、当該検出データから、仮想リンク総和演算部20で各仮想リンクL1~L6の長さに関する前記総和Eが使用者Hの動作ポーズ毎に演算される(ステップS103)。そして、当該総和Eが演算される度に、動作音決定部21で動作音が決定され、当該動作音に対応する電気信号が出力装置14に送信される(ステップS104)。1セット分の目標音に対する使用者Hの運動が終了したら、今回終了した1セットにおける姿勢認識装置11の検出データ、すなわち、当該1セット中に使用者Hがなした運動に基づく身体の動きに関するデータから、偏重部位判定部22により、仮想リンクL1~L6の各長さそれぞれについての経時的な分散により、良く使われた筋肉部分とそうでない筋肉部分とが、各仮想リンクL1~L6それぞれについて判定される(ステップS106)。次に、重み付け更新部23では、偏重部位判定部22での判定結果に基づき、良く使われた筋肉部分の動きに対しては動作音を出し難くし、そうでない筋肉部分の動きに対しては動作音を出し易くするように、先のセットで用いた各仮想リンクL1~L6の重み付けを表す重み定数kが変更される(ステップS107)。次に、2セット目に入り、前述の処理が運動時間内で繰り返し行われる(ステップS108)。なお、2セット目からは、心拍数計測装置15により取得された直前セットの運動終了時における使用者Hの心拍数に関するデータが目標音生成手段17に送信され、当該データに基づき、目標音生成手段17では、目標音の生成時に各音間の高低差が調整される。

【0035】
従って、このような実施形態によれば、目標音に近い動作音を生成するための動きを使用者H自身で考えながら運動することができる。しかも、前に行われたセットでの使用者Hの身体の動きから、筋肉部位の運動の偏りが判定され、次セットでは、使用頻度が低い筋肉部位を動かし易くするように各仮想リンクL1~L6の重み付けが更新されるため、バランスの良い適正な運動を自然に行わせるように使用者Hを導くことができる。また、2セット目からは、直前セットの運動時における使用者Hの心拍数に基づき目標音の高低差が調整されるため、各使用者H個人の運動能力に合わせて、無理のない好適な運動強度に誘引できるという効果を得る。

【0036】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 運動継続支援システム
11 姿勢認識装置
12 運動誘引情報生成装置
14 出力装置
15 心拍数計測装置
17 目標音生成手段
18 動作音生成手段
20 仮想リンク総和演算部
21 動作音決定部
22 偏重部位判定部
23 重み付け更新部
H 使用者
L(L1、L2、L3、L4、L5、L6) 仮想リンク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4