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明細書 :有機半導体装置、ならびにそれを用いた表示装置および撮像装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4530334号 (P4530334)
公開番号 特開2005-209455 (P2005-209455A)
登録日 平成22年6月18日(2010.6.18)
発行日 平成22年8月25日(2010.8.25)
公開日 平成17年8月4日(2005.8.4)
発明の名称または考案の名称 有機半導体装置、ならびにそれを用いた表示装置および撮像装置
国際特許分類 H05B  33/26        (2006.01)
H01L  27/146       (2006.01)
H04N   5/335       (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
FI H05B 33/26 Z
H01L 27/14 C
H04N 5/335 U
H05B 33/14 A
請求項の数または発明の数 11
全頁数 14
出願番号 特願2004-013529 (P2004-013529)
出願日 平成16年1月21日(2004.1.21)
審査請求日 平成19年1月15日(2007.1.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
発明者または考案者 【氏名】安達 千波矢
【氏名】菅沼 直俊
個別代理人の代理人 【識別番号】100087701、【弁理士】、【氏名又は名称】稲岡 耕作
【識別番号】100101328、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 実夫
審査官 【審査官】磯貝 香苗
参考文献・文献 特開2004-212949(JP,A)
特開平6-168785(JP,A)
特開2003-282256(JP,A)
調査した分野 H05B 33/26
H01L 27/146
H01L 51/50
H04N 5/335
特許請求の範囲 【請求項1】
電子および正孔が移動可能なバイポーラ性の有機半導体層と、
この有機半導体層との間で正孔を授受する正孔授受電極と、
この正孔授受電極との間に所定の間隔を開けて設けられ、上記有機半導体層との間で電子を授受する電子授受電極と、
絶縁層を挟んで上記有機半導体層の上記正孔授受電極寄りの領域に対向し、上記有機半導体層内における正孔の分布を制御する正孔側ゲート電極と、
絶縁層を挟んで上記有機半導体層の上記電子授受電極寄りの領域に対向し、上記有機半導体層内における電子の分布を制御する電子側ゲート電極とを含むことを特徴とする有機半導体装置。
【請求項2】
上記有機半導体層は、バイポーラ性有機半導体材料からなっていることを特徴とする請求項1記載の有機半導体装置。
【請求項3】
上記有機半導体層は、N型有機半導体層とP型有機半導体層とを積層した積層構造膜であることを特徴とする請求項1記載の有機半導体装置。
【請求項4】
上記有機半導体層は、上記正孔授受電極と上記電子授受電極との間の位置に接合部を有するN型有機半導体層およびP型有機半導体層を含む接合膜構造を有していることを特徴とする請求項1記載の有機半導体装置。
【請求項5】
上記有機半導体層は、N型有機半導体材料およびP型有機半導体材料の混合物からなっていることを特徴とする請求項1記載の有機半導体装置。
【請求項6】
上記正孔授受電極は、上記有機半導体層に正孔を注入する正孔注入電極であり、
上記電子授受電極は、上記有機半導体層に電子を注入する電子注入電極であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項7】
上記有機半導体層は、層内における正孔および電子の再結合による発光を生じる有機半導体発光層であることを特徴とする請求項6記載の有機半導体装置。
【請求項8】
上記正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極に対して独立に制御電圧を与える制御回路をさらに含むことを特徴とする請求項6または7記載の有機半導体装置。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載の有機半導体装置を基板に上に複数個配列して構成される表示装置。
【請求項10】
上記有機半導体層は、外部からの光照射を受けて電子および正孔の対を生じさせる有機半導体感光層であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の有機半導体装置。
【請求項11】
請求項10記載の有機半導体装置を基板上に複数個配列して構成される撮像装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、有機半導体層と、この有機半導体層との間で正孔および電子をそれぞれ授受する一対の電極とを備えた有機半導体装置、ならびにそれを用いた表示装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体装置の典型例である有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機半導体層中における電子および正孔の再結合に伴う発光現象を利用した発光素子である。具体的には、有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機半導体発光層と、この有機半導体発光層に電子を注入する電子注入電極と、上記有機半導体発光層に正孔を注入する正孔注入電極とを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
発光効率を高めるためには、有機半導体層に注入されるキャリヤ(正孔および電子)のバランスを適切に定める必要がある。そのため、有機半導体層、正孔注入電極および電子注入電極の各材料の組み合わせを適切に選択し、かつ、正孔注入電極および電子注入電極の配置を適切に定めなければならないが、実際には、適切な材料等の選択は困難である。
また、有機半導体層を、外部からの光の照射によって正孔および電子の対を生成する光電変換機能を有する感光層として用いて、光センサを構成することが考えられる。この場合にも、所望の感度を得るためには、有機半導体層および一対の電極の各材料の組み合わせを適切に選択する必要があり、かつ、それらの配置を適切に定めなければならないと考えられるが、所望の特性を得るための設計が困難である。
【0004】
さらに、発光動作を行う装置の場合も、光検出を行う装置の場合も、発光特性や受光特性を変動させることができず、用途ごとに装置の設計を行わなければならない。

【特許文献1】特開平5-315078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の目的は、有機半導体層内における正孔および電子の再結合または光電変換を効率的に生じさせることができる有機半導体装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、特性の変更が可能であり、融通性の高い有機半導体装置を提供することである。
さらに、この発明の目的は、上記のような有機半導体装置を用いた表示装置を提供することである。
【0006】
この発明のさらに他の目的は、上記のような有機半導体装置を用いた撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためのこの発明の有機半導体装置は、電子および正孔が移動可能なバイポーラ性の有機半導体層と、この有機半導体層との間で正孔を授受する正孔授受電極と、この正孔授受電極との間に所定の間隔を開けて設けられ、上記有機半導体層との間で電子を授受する電子授受電極と、絶縁層を挟んで上記有機半導体層の上記正孔授受電極寄りの領域に対向し、上記有機半導体層内における正孔の分布を制御する正孔側ゲート電極と、絶縁層を挟んで上記有機半導体層の上記電子授受電極寄りの領域に対向し、上記有機半導体層内における電子の分布を制御する電子側ゲート電極とを含むことを特徴とする(請求項1)。
【0008】
より具体的には、上記正孔授受電極は、上記有機半導体層に正孔を注入する正孔注入電極であり、上記電子授受電極は、上記有機半導体層に電子を注入する電子注入電極であってもよい(請求項6)。
この構成によれば、正孔側ゲート電極に制御電圧を印加することによって、正孔注入電極から有機半導体層への正孔の注入を制御することができる。同様に、電子側ゲート電極に制御電圧を印加することによって、電子注入電極から有機半導体層への電子の注入を制御することができる。したがって、正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極の電位を個別に制御することによって、有機半導体層に注入されるキャリヤのバランスを容易に調整することができるから、有機半導体層内におけるキャリヤの再結合を効率的に生じさせることができる。
【0009】
また、有機半導体層内において正孔側ゲート電極に対向する領域におけるチャネルの形成、および有機半導体層内において電子側ゲート電極に対向する領域におけるチャネルの形成を個別に制御できる。したがって、たとえば、正孔注入電極に接続されて正孔を供給するチャネルと、電子注入電極に接続されて電子を供給するチャネルとを、正孔注入電極と電子注入電極との中間地点においてそれぞれピンチオフさせることができる。これにより、正孔注入電極と電子注入電極との中間地点における正孔および電子の濃度が著しく高くなるから、より効率的に正孔および電子の再結合を生じさせることができる。
【0010】
また、正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極への印加電圧を個別に制御することにより、特性の変更が容易であり、融通性の高い有機半導体装置を実現できる。
上記有機半導体層は、層内における正孔および電子の再結合による発光を生じる有機半導体発光層であってもよい(請求項7)。
この構成では、有機半導体層が発光層であり、この有機半導体層内におけるキャリヤの再結合を高効率で生じさせることができるため、高効率での発光動作が可能になる。また、正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極への印加電圧の個別制御によって、容易に特性を変更できるので、融通性の高い発光装置を実現できる。
【0011】
たとえば、正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極のうちの一方に一定の制御電圧を印加するとともに、それらのうちの他方に与える制御電圧を変動させれば、発光のオン/オフ制御や、発光強度の変調による多階調発光が可能となる。むろん、両方のゲート電極に与える制御電圧をそれぞれ2段階以上に変動させれば、さらに多くの階調の発光を実現できる。
【0012】
上記有機半導体装置は、上記正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極に対して独立に制御電圧を与える制御回路をさらに含むことが好ましい(請求項8)。
この構成により、正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極に対して独立して制御電圧を与えることができ、有機半導体層内におけるキャリヤのバランスを適正化したり、正孔注入電極側のチャネルおよび電子注入電極側のチャネルの形状を個別に制御したりすることができる。
【0013】
上記のような有機半導体装置を基板上に一次元または二次元に配列することにより、一次元または二次元の表示装置(個々の画素を有機半導体装置で構成したもの)を構成することができ(請求項9)、個々の画素の発光効率が高いため、低電力駆動の表示装置、または高輝度表示装置を実現できる。
上記有機半導体層は、外部からの光照射を受けて電子および正孔の対を生じさせる有機半導体感光層であってもよい。(請求項10)。
【0014】
この構成では、有機半導体層に光が照射されると、正孔および電子の対が生成される。すなわち、有機半導体層において光電変換が行われる。正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極に適切な制御電圧を与えておくと、正孔および電子を効率的に正孔授受電極および電子授受電極へとそれぞれ導くことができるので、高効率での光電変換が可能になる。
しかも、正孔側ゲート電極および電子側ゲート電極に与えられる制御電圧を調整することにより、光電変換効率を制御できるから、感度を調整することが可能になる。これにより、融通性の高い光検出装置を実現することができる。
【0015】
このような光検出装置を基板上に一次元または二次元に配列して検出画素として用いることによって、撮像装置を構成することができる(請求項11)
上記有機半導体層は、バイポーラ性有機半導体材料からなるものであってもよい(請求項2)。上記バイポーラ性有機半導体材料とは、正孔および電子のいずれもが移動可能な材料であり、α-NPD、Alq3、BSA-1m(9,10-Bis(3-cyanostilil)anthracene)、MEHPPV(Poly[2-Methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene])、CN-PPP(Poly[2-(6-cyano-6-methylheptyloxy)-1,4-phenylene])、Bis(2-(2-hydroxyphenyl)-benz-1,3-thiazolato)zinc complex、Poly[(9,9-dihexylfluoren-2,7-diyl)-co-(anthracen-9,10-diyl)]などを例示できる。このようなバイポーラ性有機半導体材料からなる有機半導体層内では、正孔および電子がいずれも良好な移動度を示すので、正孔および電子の再結合または正孔および電子の対の生成を効率的に起こさせることができる。
【0016】
また、上記有機半導体層は、N型有機半導体層とP型有機半導体層とを積層した積層構造膜であってもよい(請求項3)。N型有機半導体層は、N型有機半導体材料からなる層であり、P型有機半導体層は、P型有機半導体材料からなる層である。N型有機半導体層とP型有機半導体層との界面には、PN接合が形成されることになるから、この界面において正孔および電子の再結合を生じさせたり、正孔および電子の対を生成させたりすることができる。
【0017】
さらに、上記有機半導体層は、上記有機半導体層は、上記正孔授受電極と上記電子授受電極との間の位置に接合部を有するN型有機半導体層およびP型有機半導体層を含む接合膜構造を有するものであってもよい(請求項4)。この構成の場合には、正孔授受電極および電子授受電極の間にPN接合を形成することができるので、このPN接合部において、正孔および電子の再結合または正孔および電子の対の生成を効率的に生じさせることができる。
【0018】
さらに、上記有機半導体層は、N型有機半導体材料およびP型有機半導体材料の混合物からなるものであってもよい(請求項5)。この構成では、N型有機半導体材料とP型有機半導体材料とが混合されることによって、バイポーラ性の有機半導体層が構成されているから、この有機半導体層内においては、正孔および電子が良好な移動度を示すから、正孔および電子の再結合または正孔および電子の対の生成を効率的に生じさせることができる。
【0019】
上記N型有機半導体材料としては、C6-PTC、C8-PTC、C12-PTC、C13-PTC、Bu-PTC、F7Bu-PTC*、Ph-PTC、F5Ph-PTC*、PTCBI、PTCDI、TCNQ、C60フラーレンなどを例示することができる。
また、上記P型有機半導体材料としては、Pentacene、Tetracene、Anthracene、Phthalocyanine、α-Sexithiophene、α,ω-Dihexyl-sexithiophene、Oligophenylene、Oligophenylenevinilene、Dihexyl-Anthradithiophene、Bis(dithienothiophene)、Poly(3-hexylthiophene), Poly(3-butylthiophene)、Poly(phenylenevinilene)、Poly(thienylenevinilene)、Polyacetylene、α,ω-Dihexyl-quinquethiophene、TPD、α-NPD、m-MTDATA、TPAC、TCTA、Poly(vinylcarbazole)などを例示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る有機半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この有機半導体装置10は、有機半導体層1(有機半導体発光層)内において正孔および電子の再結合を生じさせることによって発光を生じさせる発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)である。この有機半導体装置10は、基板2上に間隔を開けて生成された正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6と、これらを覆うように形成されたゲート絶縁膜7(絶縁層)と、このゲート絶縁膜7上に積層して形成された上記の有機半導体層1と、この有機半導体層1上に間隔を開けて形成された正孔注入電極8(正孔授受電極)および電子注入電極9(電子授受電極)とを備えている。すなわち、有機半導体層1の一方側に正孔注入電極8および電子注入電極9が間隔をあけて配置され、有機半導体層1の反対側に、ゲート絶縁膜7を挟んで、正孔注入電極8および電子注入電極9にそれぞれ対向するように、正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6が配置されている。有機半導体層1は、正孔および電子の移動度がいずれも高いバイポーラ性の有機半導体材料で構成されている。
【0021】
正孔側ゲート電極5は、正孔注入電極8寄りの領域に形成されており、電子側ゲート電極6は、電子注入電極9寄りの領域に形成されている。より具体的には、正孔側ゲート電極5は、正孔注入電極8および電子注入電極9の間の中間位置よりも正孔注入電極8寄りの領域において、正孔注入電極8に対向する領域から電子注入電極9側に向かって延びて形成されている。同様に、電子側ゲート電極6は、正孔注入電極8および電子注入電極9の間の中間位置よりも電子注入電極9寄りの領域において、電子注入電極9に対向する領域から正孔注入電極8側に向かって延びて形成されている。
【0022】
正孔側ゲート電極5は、ゲート絶縁膜7を介して、有機半導体層1内の当該正孔側ゲート電極5が対向する領域に対して、電界を印加することができ、この領域におけるキャリヤの分布を制御することができる。同様に、電子側ゲート電極6は、ゲート絶縁膜7を介して、有機半導体層1の当該電子側ゲート電極6が対向する領域に対して、電界を印加することができ、この領域におけるキャリヤの分布を制御することができる。
【0023】
正孔注入電極8と電子注入電極9との間には、正孔注入電極8側を正極とし、電子注入電極9側を負極とするバイアス電圧Vdが、バイアス電圧印加回路11から与えられる。
また、正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6には、ゲート制御回路12から、個別に制御電圧が印加されるようになっている。より具体的には、ゲート制御回路12は、正孔側ゲート電極5に対し、正孔注入電極8によりも電圧Vgpだけ低い制御電圧を印加し、電子側ゲート電極6に対し、電子注入電極9よりも電圧Vgnだけ高い制御電圧を印加する。すなわち、正孔注入電極8の電位をVs=0とすると、電子注入電極9の電位は-Vd、正孔側ゲート電極5の電位は-Vgp、電子側ゲート電極の電位はVgn-Vdとなる。これにより、正孔注入電極8から有機半導体層1に正孔が注入され、電子注入電極9から有機半導体層1に電子が注入される。
【0024】
正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6にそれぞれ印加される制御電圧Vgp,Vgnを適切に定めると、正孔注入電極8から電子注入電極9に向かって延びる正孔側チャネル15と、電子注入電極9から正孔注入電極8に向かって延びる電子側チャネル16とを、いずれも、正孔注入電極8と電子注入電極9との中間位置付近でピンチオフさせることができる。このピンチオフ位置の近傍の領域では、正孔側チャネル15内の正孔密度および電子側チャネル16内の電子密度がいずれも高くなっているため、ピンチオフ位置において正孔および電子が高効率で再結合することになる。これにより、高輝度の発光が実現される。
【0025】
また、たとえば、正孔側ゲート電極5(一方のゲート電極)に与える制御電圧Vgpを一定値(たとえば、正孔注入電極8および電子注入電極9の間の中間位置で正孔側チャネルがピンチオフする値)に固定しておく一方で、電子側ゲート電極6(他方のゲート電極)に与える制御電圧Vgnを変動させると、正孔および電子の再結合の効率を変動させることができる。これにより、発光輝度を段階的または無段階に変化させることができるので、オン/オフ表示(2階調表示)や、3階調以上の多階調の表示が可能になる。むろん、電子側ゲート電極6に与える制御電圧を一定値に固定しておき、正孔側ゲート電極5に与える制御電圧を変動させても同様な発光動作が可能である。さらに、正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6の両方の制御電圧をそれぞれ段階的または無段階に変動させれば、さらに階調数の多い多階調表示が可能になる。
【0026】
正孔注入電極8および電子注入電極9には、それぞれ、正孔および電子を有機半導体層1に注入しやすい材料が適用される。たとえば、Mg-Ag合金、Li-Al合金、Ca、Pt、Au、ITO(酸化インジウム(In23)と酸化錫(SnO2)との固溶体)などから選択した適切なものを用いることができる。
正孔側ゲート電極5と電子側ゲート電極6との間の間隔dは、ゲート絶縁膜7の厚さtと同程度か、その数倍程度とすることが好ましい(添付図面では、図示の便宜上、厚さtを間隔dよりも大きく表してある)。ゲート絶縁膜7の厚さtは、発光動作のしきい電圧に応じて数十nm~数百nmの範囲で適切に定めればよい。
【0027】
正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6の材料としては、ポリシリコン(不純物を高濃度に添加して低抵抗化したもの)、Ni、Al、ITOなどを適用することができる。
また、有機半導体層1を構成するバイポーラ性有機半導体材料としては、「課題を解決するための手段」の項において例示したものを適用することができる。このようなバイポーラ性有機半導体材料を用いる代わりに、N型有機半導体材料およびP型有機半導体材料の混合物によって有機半導体層1を構成してもよい。この場合に、N型有機半導体材料およびP型有機半導体材料としては、上記の「課題を解決するための手段」の項で例示したものをそれぞれ適用することができる。
【0028】
さらに、基板2としては、シリコン基板、シリコン基板上に酸化シリコン層が形成されたもの、窒化珪素基板、ガラス基板、サファイア基板などを適用することができる。
また、ゲート絶縁膜7には、酸化シリコン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、ポリマー(たとえば、ノボラック樹脂、ポリイミド等)などを適用することができる。
図2Aおよび図2Bは、この発明の他の実施形態に係る有機半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。これらの図2Aおよび図2Bにおいて、上述の図1に示された各部に対応する部分には、図1と同一の参照符号を付して示す。この有機半導体装置10Aでは、有機半導体層1Aが、P型有機半導体層21とN型有機半導体層22とを積層した積層構造膜で構成されている。
【0029】
図2Aの構成では、ゲート絶縁膜7および電子注入電極9を覆うように(電子注入電極9に接するように)N型有機半導体層22が形成されている。このN型有機半導体層22を覆うようにP型有機半導体層21が形成されている。そして、このP型有機半導体層21上に(P型有機半導体層21に接するように)正孔注入電極8が配置されている。
図2Bの構成では、ゲート絶縁膜7上にN型有機半導体層22およびP型有機半導体層21が順に積層されており、上層のP型有機半導体層21上に正孔注入電極8および電子注入電極9の両方が配置されている。すなわち、正孔注入電極8はP型有機半導体層21に接しているが、電子注入電極9はN型有機半導体層22には接していない。このような状態でも、電子注入電極9は、N型有機半導体層22との間で、P型有機半導体層21を突き抜けて、キャリヤ(電子)の授受を行うことができる。
【0030】
図2Bの構成において、P型有機半導体層21とN型有機半導体層22との配置を交換してもよく、この場合には、電子注入電極9はN型有機半導体層22に接するが、正孔注入電極8はP型有機半導体層21に接しない状態となる。この構成の場合、正孔注入電極8は、P型有機半導体層21との間で、N型有機半導体層22を突き抜けて、キャリヤ(正孔)の授受を行うことになる。
【0031】
P型有機半導体層21は、正孔の移動度が高く電子の移動度が低いP型有機半導体材料からなっており、N型有機半導体層22は、正孔の移動度が低く電子の移動度が高いN型有機半導体材料からなっている。したがって、P型有機半導体層21およびN型有機半導体層22の積層構造膜からなる有機半導体層1Aは、全体として、バイポーラ性の薄膜を形成している。
【0032】
正孔注入電極8から供給される正孔は、P型有機半導体層21を通って電子注入電極9側へと向かい、電子注入電極9から供給される電子は、N型有機半導体層22を通って正孔注入電極8側へと向かう。そして、正孔注入電極8と電子注入電極9との間の領域において、P型有機半導体層21とN型有機半導体層22との界面のPN接合部で、正孔および電子の再結合が生じ、これにより発光が生じる。
【0033】
正孔側チャネル15はP型有機半導体層21内に形成され、電子側チャネル16はN型有機半導体層22内に形成されるが、上述の図1の実施形態の場合と同じく、正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6に印加される制御電圧をそれぞれ適切に定めることによって、チャネル15および16を、いずれも、正孔注入電極8および電子注入電極9の中間位置でピンチオフさせることができる。このような状況のときに、高効率での再結合が生じ、高輝度での発光が可能になる。
【0034】
また、図1の実施形態の場合と同様、正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6のうちの一方の制御電圧を固定し、他方の制御電圧を可変させたり、それらの両方の制御電圧を可変させたりして、多階調の発光動作を行わせてもよい。
P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料としては、それぞれ、上記「課題を解決するための手段」の項で例示したものを適用することができる。
【0035】
一般に、単層でトランジスタ特性を示すP型材料層およびN型材料層を積層することにより、バイポーラ駆動を実現できる。ただし、上層(図2Aおよび図2Bの符号21で示す層)の移動度は、下層(図2Aおよび図2Bの符号22で示す層)の表面の粗さの影響を受けるので、下層に用いる材料は、表面が平滑な薄膜、あるいは非晶質性の高い薄膜を形成し、なおかつ高い移動度を示すものが好ましい。たとえば、poly(3-hexylthiophene)など高分子系TFT材料は、下層に用いる材料として有用なものの一つであると考えられる。逆に、上層に用いる材料としては、多少膜の形状が乱れても高い移動度を示し、下層の表面の粗さの影響を受けにくい材料が好ましい。一例として、PTCBI,PTCDIなどのperylene骨格N型材料は、粗さの大きい膜の上に積層しても、高い移動度を示す。
【0036】
図3は、この発明のさらに他の実施形態に係る有機半導体装置の構成を示す図解的な断面図である。この図3において、上述の図1に示された各部に対応する部分には、図1と同一の参照符号を付して示す。この実施形態の有機半導体装置1Bでは、有機半導体層1Bは、正孔注入電極8と電子注入電極9との間の位置(好ましくはほぼ中間位置)に接合部30を有するP型有機半導体層31およびN型有機半導体層32とで構成された接合膜構造を有している。
【0037】
P型有機半導体層31は、ゲート絶縁膜7上において、正孔側ゲート電極5に対向する領域を覆い、正孔注入電極8および電子注入電極9の中間位置付近に至るように形成されている。このP型有機半導体層31上に(P型有機半導体層31に接するように)、正孔注入電極8が形成されている。
N型有機半導体層32は、ゲート絶縁膜7上において、電子側ゲート電極6に対向する領域を覆い、正孔注入電極8および電子注入電極9の中間域付近に達して、P型有機半導体層31との間に上記の接合部30を形成するように形成されている。ただし、この実施形態では、N型有機半導体層32は、接合部30を超えて、さらに、P型有機半導体層31の一部を覆う領域にまで延びて形成されている。これは、接合部30を確実に形成するために、N型有機半導体層32を広めの領域にまで形成した結果である。このN型有機半導体層32上に(N型有機半導体層32に接するように)、電子注入電極9が形成されている。
【0038】
この実施形態においても、上述の図2Aおよび図2Bの実施形態の場合と同様な動作が可能であり、接合部30において、効率的に、正孔および電子の再結合を生じさせることができる。
P型有機半導体層31を構成するP型有機半導体材料、およびN型有機半導体層32を構成するN型有機半導体材料としては、図2Aおよび図2Bの実施形態の場合と同じく、「課題を解決するための手段」の項で例示したものを適用できる。
【0039】
図4は、図1、図2A、図2Bまたは図3に示された有機半導体装置10,10Aまたは10B(図4では代表して符号「10」で表してある。)を基板2上に二次元配列して構成される表示装置60の電気回路図である。すなわち、この表示装置60は、上述のような有機半導体装置10をマトリクス配列された画素P11,P12,・・・・,P21,P22,・・・・・・内にそれぞれ配置し、これらの画素の有機半導体装置10を選択的に発光させ、また、各画素の有機半導体装置10の発光強度(輝度)を制御することによって、二次元表示を可能としたものである。
【0040】
各有機半導体装置10は、正孔側ゲート電極5および電子側ゲート電極6を一対のゲートG1,G2とした電界効果型トランジスタ(FET)であり、そのドレインとなる正孔注入電極8にはバイアス電圧Vdが与えられており、そのソースとなる電子注入電極9は接地電位とされている。また、ゲートG2には、一定の制御電圧Vgnが印加されている。この制御電圧Vgnは、たとえば、正孔注入電極8と電子注入電極9との間の中間位置で電子側チャネル16をピンチオフさせることができるような値とされている。一方、ゲートG1には、各画素を選択するための選択トランジスタTsと、データ保持用のキャパシタCとが並列に接続されている。
【0041】
行方向に整列した画素P11,P12,・・・・・・;P21,P22,・・・・・・の選択トランジスタTsのゲートは、行ごとに共通の走査線LS1,LS2,・・・・・・にそれぞれ接続されている。また、列方向に整列した画素P11,P21,・・・・・・;P12,P22,・・・・・・の選択トランジスタTsにおいて有機半導体装置10とは反対側には、列ごとに共通のデータ線LD1,LD2,・・・・・・がそれぞれ接続されている。
【0042】
走査線LS1,LS2,・・・・・・には、コントローラ53によって制御される走査線駆動回路51から、各行の画素P11,P12,・・・・・・;P21,P22,・・・・・・を循環的に順次選択(行内の複数画素の一括選択)するための走査駆動信号が与えられる。すなわち、走査線駆動回路51は、各行を順次選択行として、選択行の複数の画素の選択トランジスタTsを一括して導通させ、非選択行の複数の画素の選択トランジスタTsを一括して遮断させるための走査駆動信号を発生する。
【0043】
一方、データ線LD1,LD2,・・・・・・には、データ線駆動回路52からの信号が入力されるようになっている。このデータ線駆動回路52には、画像データに対応した制御信号が、コントローラ53から入力されるようになっている。データ線駆動回路52は、各行の複数の画素が走査線駆動回路51によって一括選択されるタイミングで、当該選択行の各画素の発光階調に対応した発光制御信号をデータ線LD1,LD2,・・・・・・に並列に供給する。
【0044】
これにより、選択行の各画素においては、選択トランジスタTsを介してゲートG1に発光制御信号が与えられるから、当該画素の有機半導体装置10は、発光制御信号に応じた階調で発光(または消灯)することになる。発光制御信号は、キャパシタCにおいて保持されるから、走査線駆動回路51による選択行が他の行に移った後にも、ゲートG1の電位が保持され、有機半導体装置10の発光状態が保持される。このようにして、二次元表示が可能になる。
【0045】
なお、ゲートG1の電位を固定するとともに、ゲートG2にデータ線LD1,LD2,・・・・・・からの発光制御信号を与えるようにしても同様な動作が可能である。また、ゲートG1,G2に与える制御電圧を画像データに応じて個別に制御するようにすれば、さらに多くの階調の表示が可能になる。
図5は、この発明の有機半導体装置を用いて構成した光センサ70の実施形態を示す図解的な断面図である。この図5において、上述の図1に示された各部に対応する部分には、図1と同一の参照符号を付して示す。この実施形態では、正孔側ゲート電極5に対向して正側電極(P側電極)8Aが有機半導体層1上に設けられ、電子側ゲート電極6に対向して負側電極(N側電極)9Aが有機半導体層1上に設けられている。有機半導体層1は、この実施形態では、外部からの光照射を受けて電子および正孔の対を生成する有機半導体感光層として用いられる。
【0046】
ゲート制御回路12は、正孔側ゲート電極5に対しては、正孔を正側電極8Aへと誘導するための制御電圧を印加し、電子側ゲート電極6に対しては、電子を負側電極9Aへと誘導するための制御電圧を印加する。これにより、有機半導体層1に光が照射されて電子および正孔の対が生成されると、正孔は正側電極8Aへと向かい、電子は負側電極9Aへと向かうことになるから、結果として、正側電極8Aと負側電極9Aとの間に起電力が生じることになる。そこで、正側電極8Aと負側電極9Aとの間に生じた電圧を増幅回路71によって増幅して取り出すことにより、有機半導体層1に入射した光量を検出できる。
【0047】
有機半導体層1に代えて、図2A、図2Bまたは図3に示された構成の有機半導体層1Aまたは1Bを用いても、同様な光センサ70を構成することができる。
このような光センサ70を複数個用い、図6に示すように、基板2上に検出画素としての複数の光センサ70をマトリクス配列することによって、2次元画像を検出するための撮像装置80を構成することができる。
【0048】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、上述の図4には2次元表示の可能な表示装置60を示したが、画素を一次元配列して一次元の表示装置を構成することもできる。同様に、上述の図6には、光センサ70を用いた検出画素を二次元配列した撮像装置80を示したが、検出画素を一次元配列して一次元撮像装置を構成することもできる。
【0049】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の一実施形態に係る有機半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図2A】この発明の他の実施形態に係る有機半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図2B】この発明の他の実施形態に係る有機半導体装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図3】この発明のさらに他の実施形態に係る有機半導体装置の構成を示す図解的な断面図である。
【図4】図1、図2A、図2Bまたは図3に示された有機半導体装置を基板上に二次元配列して構成される表示装置の電気回路図である。
【図5】この発明の有機半導体装置を用いて構成した光センサの実施形態を示す図解的な断面図である。
【図6】図5の光センサを基板上にマトリクス配列して構成された撮像装置の構成を示す図解図である。
【符号の説明】
【0051】
1 有機半導体層
1A 有機半導体層
1B 有機半導体層
2 基板
5 正孔側ゲート電極
6 電子側ゲート電極
7 ゲート絶縁膜
8 正孔注入電極
9 電子注入電極
8A 正側(P側)電極
9A 負側(N側)電極
10,10A,10B 有機半導体装置
11 バイアス電圧印加回路
12 ゲート制御回路
15 正孔側チャネル
16 電子側チャネル
21 P型有機半導体層
22 N型型有機半導体層
30 接合部
31 P型有機半導体層
32 N型有機半導体層
51 走査線駆動回路
52 データ線駆動回路
53 コントローラ
60 表示装置
70 光センサ
71 増幅回路
80 撮像装置
C キャパシタ
G1 ゲート
G2 ゲート
LD1,LD2,LD3 データ線
LS1,LS2,LD3 走査線
P11,P12,P21,P22 画素
Ts 選択トランジスタ
Vd バイアス電圧
Vgn 制御電圧
Vgp 制御電圧
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6