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明細書 :有機半導体発光装置およびそれを用いた表示装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4972730号 (P4972730)
登録日 平成24年4月20日(2012.4.20)
発行日 平成24年7月11日(2012.7.11)
発明の名称または考案の名称 有機半導体発光装置およびそれを用いた表示装置
国際特許分類 H01L  51/50        (2006.01)
H05B  33/26        (2006.01)
G09F   9/30        (2006.01)
H01L  27/32        (2006.01)
FI H05B 33/14 A
H05B 33/26 Z
G09F 9/30 365Z
請求項の数または発明の数 17
全頁数 20
出願番号 特願2006-532620 (P2006-532620)
出願日 平成17年8月26日(2005.8.26)
国際出願番号 PCT/JP2005/015525
国際公開番号 WO2006/025274
国際公開日 平成18年3月9日(2006.3.9)
優先権出願番号 2004250600
優先日 平成16年8月30日(2004.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年7月15日(2008.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
発明者または考案者 【氏名】小山田 崇人
【氏名】内生蔵 広幸
【氏名】安達 千波矢
個別代理人の代理人 【識別番号】100087701、【弁理士】、【氏名又は名称】稲岡 耕作
【識別番号】100101328、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 実夫
審査官 【審査官】東松 修太郎
参考文献・文献 特開2003-282884(JP,A)
特開2002-313584(JP,A)
特開2002-083685(JP,A)
調査した分野 H01L 51/50-51/56
H05B 33/00-33/28
特許請求の範囲 【請求項1】
基板の表面に沿って形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように前記基板の表面に沿って形成されたゲート絶縁膜と、
前記基板の表面に沿って形成され、正孔および電子を輸送可能であり、正孔および電子の再結合により発光を生じる有機半導体発光層と、
この有機半導体発光層に正孔を注入する正孔注入電極と、
この正孔注入電極に対して、前記基板の表面に沿って所定の間隔を開けて配置され、前記有機半導体発光層に電子を注入する電子注入電極とを含み
前記ゲート電極が、前記正孔注入電極と前記電子注入電極との間の前記有機半導体発光層に対向し、前記有機半導体発光層内のキャリヤの分布を制御するものである、有機半導体発光装置。
【請求項2】
前記有機半導体発光層は、正孔輸送材料であるP型有機半導体材料と、電子輸送材料であるN型有機半導体材料とを含むものである、請求項1記載の有機半導体発光装置。
【請求項3】
前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料の混合物からなる、請求項2記載の有機半導体発光装置。
【請求項4】
前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料の共蒸着によって作製されたものである、請求項3記載の有機半導体発光装置。
【請求項5】
前記有機半導体発光層は、さらに、発光中心を形成する発光材料を含む、請求項3記載の有機半導体発光装置。
【請求項6】
前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料、N型有機半導体材料および発光材料の共蒸着によって作製されたものである、請求項5記載の有機半導体発光装置。
【請求項7】
前記発光材料は、前記P型半導体材料およびN型有機半導体材料の少なくともいずれか一方よりもHOMOエネルギーレベルとLUMOエネルギーレベルとの差が小さい材料である、請求項5または6記載の有機半導体発光装置。
【請求項8】
前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料からなるP型有機半導体層と、N型有機半導体材料からなるN型有機半導体層とを積層した積層構造を有している、請求項2記載の有機半導体発光装置。
【請求項9】
前記P型有機半導体層およびN型有機半導体層のいずれか一方に、前記正孔注入電極および電子注入電極の両方が接している、請求項8記載の有機半導体発光装置。
【請求項10】
前記P型有機半導体材料は、チオフェンおよびフェニレンのコオリゴマーを含む、請求項2ないしのいずれかに記載の有機半導体発光装置。
【請求項11】
前記N型有機半導体材料は、ナフタレン酸無水物を含む、請求項2ないし10のいずれかに記載の有機半導体発光装置。
【請求項12】
基板の表面に沿って形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うように前記基板の表面に沿って形成されたゲート絶縁膜と、
前記基板の表面に沿って形成され、正孔および電子の少なくともいずれか一方の注入が可能であり、正孔および電子の再結合により発光を生じる有機半導体発光層と、
この有機半導体発光層に正孔を注入する正孔注入電極と、
この正孔注入電極に対して、前記基板の表面に沿って1.0μm以下の間隔を開けて配置され、前記有機半導体発光層に電子を注入する電子注入電極とを含み
前記ゲート電極が、前記正孔注入電極と前記電子注入電極との間の前記有機半導体発光層に対向し、前記有機半導体発光層内のキャリヤの分布を制御するものである、有機半導体発光装置。
【請求項13】
前記有機半導体発光層が、P型有機半導体材料またはN型有機半導体材料の単層からなる、請求項12記載の有機半導体発光装置。
【請求項14】
前記有機半導体発光層は、さらに、発光中心を形成する発光材料を含む、請求項12または13記載の有機半導体発光装置。
【請求項15】
前記有機半導体発光層は、チオフェンおよびフェニレンのコオリゴマーを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の有機半導体発光装置。
【請求項16】
前記正孔注入電極および前記電子注入電極は、間隔を開けて、互いに嵌め合わされるように配置された櫛歯形状部をそれぞれ有している、請求項1ないし15のいずれかに記載の有機半導体発光装置。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかに記載の有機半導体発光装置を基板上に複数個配列して構成される表示装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、有機半導体発光層を備えた有機半導体発光装置およびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体装置の典型例である有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機半導体層中における電子および正孔の再結合に伴う発光現象を利用した発光素子である。具体的には、有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機半導体発光素子と、この有機半導体発光層に電子を注入する電子注入電極と、前記有機半導体発光層に正孔を注入する正孔注入電極とを備えている(特許文献1)。
【0003】
このような有機エレクトロルミネッセンス素子における発光のオン/オフは、正孔注入電極および電子注入電極間に印加する電圧のオン/オフによって行われる。また、発光強度の変調は、正孔注入電極および電子注入電極間に印加する電圧を可変制御することによって行われることになる。

【特許文献1】特開平5-315078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の発光画素を二次元配列(マトリクス配列)して二次元表示デバイスを作製する場合を考えると、前述のような従来の有機エレクトロルミネッセンス素子では、駆動が困難であり、電界効果型トランジスタの形態をとることが好ましい。
ところが、有機半導体を用いた電界効果型トランジスタでは、発光に成功した例の報告は未だなされておらず、電界効果型トランジスタの形態の有機半導体発光装置は実現に至っていない。
【0005】
そこで、この発明の目的は、電界効果型トランジスタの形態を有する有機半導体発光装置およびこれを用いた表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一つの局面に係る有機半導体発光装置は、基板の表面に沿って形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように前記基板の表面に沿って形成されたゲート絶縁膜と、前記基板の表面に沿って形成され、正孔および電子を輸送可能であり、正孔および電子の再結合により発光を生じる有機半導体発光層と、この有機半導体発光層に正孔を注入する正孔注入電極と、この正孔注入電極に対して、前記基板の表面に沿って所定の間隔を開けて配置され、前記有機半導体発光層に電子を注入する電子注入電極とを含み前記ゲート電極が、前記正孔注入電極と前記電子注入電極との間の前記有機半導体発光層に対向し、前記有機半導体発光層内のキャリヤの分布を制御するものである
【0007】
この構成によれば、正孔および電子を輸送可能なバイポーラ性の有機半導体発光層を用いることによって、この有機半導体発光層内で、正孔注入電極から注入された正孔と電子注入電極から注入された電子との再結合を生じさせ、これにより発光を生じさせることができる。そして、正孔注入電極と電子注入電極との間の有機半導体発光層に対向するようにゲート電極が配置されており、これによって、この有機半導体発光装置は、電界効果型トランジスタとしての基本形態を有することになる。したがって、ゲート電極に制御電圧を与えて、有機半導体発光層内のキャリヤの分布を制御することにより、発光のオン/オフを行ったり、発光強度を変調したりすることができる。
【0008】
前記有機半導体発光層は、正孔輸送材料であるP型有機半導体材料と、電子輸送材料であるN型有機半導体材料とを含むものであってもよい。この構成では、有機半導体発光層は、P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料を含むので、正孔および電子の両方を良好に輸送することができる。これにより、有機半導体発光層内における正孔および電子の再結合を効率的に起こさせることができる。
【0009】
また、前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料の混合物からなるものであってもよい。この構成によれば、P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料の混合物によって有機半導体発光層が形成されているから、この有機半導体発光層内における正孔および電子の再結合を効率的に生じさせることができる。この場合に、P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料の混合比を適切に定めることによって、正孔注入電極および電子注入電極からそれぞれ注入される正孔および電子の注入量のバランスを調整することができる。これによって、より効率的な発光が可能になる。
【0010】
前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料の共蒸着によって作製されたものであってもよい。
また、前記有機半導体発光層は、さらに、発光中心を形成する発光材料を含むことが好ましい。これにより、より効率的な発光が可能になる。発光材料とは、この場合、有機物であるが、電子・正孔輸送機能のないものをいう。
【0011】
この場合に、前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料、N型有機半導体材料および発光材料の共蒸着によって作製されたものであることが好ましい。
前記発光材料は、前記P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料の少なくともいずれか一方よりもHOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギーレベルとLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)エネルギーレベルとの差が小さい材料であることが好ましい。
【0012】
前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料からなるP型有機半導体層と、N型有機半導体材料からなるN型有機半導体層とを積層した積層構造を有していてもよい。この構成では、P型有機半導体層とN型有機半導体層とを積層した積層構造によって正孔および電子の両方を輸送可能な有機半導体発光層が構成されている。この構造によっても、積層構造の有機半導体発光層内において正孔および電子の再結合を生じさせることができ、電界効果型トランジスタとしての基本形態を有する有機半導体発光装置を実現できる。
前記P型有機半導体層およびN型有機半導体層のいずれか一方に、前記正孔注入電極および電子注入電極の両方が接していてもよい。
【0013】
前記P型有機半導体材料は、チオフェンおよびフェニレンのコオリゴマーを含むものであることが好ましい。チオフェンおよびフェニレンのコオリゴマーとは、チオフェン環およびベンゼン環が一次元的につながったπ電子共役系材料である。この(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの例としては、TPTPT(2,5-bis(4-(2'thiophene-yl)phenyl)thiophene)を挙げることができる。
【0014】
また、前記N型有機半導体材料は、ナフタレン酸無水物を含むものであることが好ましい。ナフタレン酸無水化合物の例として、NTCDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)を挙げることができる。
前記P型有機半導体材料としては、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの他にも、アセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体およびフルオレン誘導体が適用可能であり、さらにこれらの構造にスチルベンを含む材料も用いることができる。むろん、発光量子収率が高いものが好ましい。
【0015】
また、前記N型有機半導体材料としては、ナフタレン酸無水物以外にも、ペリレン誘導体、フラレーン誘導体などを用いることができる。さらには、上記P型材料をフッ素化させた材料も有用である。
この発明の別の局面に係る有機半導体発光装置は、基板の表面に沿って形成されたゲート電極と、前記ゲート電極を覆うように前記基板の表面に沿って形成されたゲート絶縁膜と、前記基板の表面に沿って形成され、正孔および電子の少なくともいずれか一方の注入が可能であり、正孔および電子の再結合により発光を生じる有機半導体発光層と、この有機半導体発光層に正孔を注入する正孔注入電極と、この正孔注入電極に対して、前記基板の表面に沿って1.0μm以下の間隔を開けて配置され、前記有機半導体発光層に電子を注入する電子注入電極とを含み前記ゲート電極が、前記正孔注入電極と前記電子注入電極との間の前記有機半導体発光層に対向し、前記有機半導体発光層内のキャリヤの分布を制御するものである
【0016】
この構成によれば、正孔または電子のいずれかの輸送が可能な有機半導体発光層を活性層として用いた電界効果型トランジスタとしての形態を有する有機半導体発光装置を実現できる。この発明では、正孔注入電極と電子注入電極との間の間隔が、1.0μm以下の微小な間隔とされている。すなわち、チャネル長が1.0μmの微小距離に定められている。
【0017】
このような構成によって、ゲート電極に適切な電圧を与えると、有機半導体発光層のゲート電極側表面に誘起されるキャリヤのピンチオフ点が、正孔注入電極および電子注入電極のいずれかのごく近傍に位置することになる。そして、このピンチオフ点と電極との間に強電界が形成され、電極と有機半導体発光層との間の電位障壁を超えてキャリヤが移動することになる。
【0018】
これによって、ピンチオフ点の近傍において正孔および電子の再結合が生じ、これによる発光が観測されることになる。このようにして、正孔または電子のいずれかの輸送のみが可能な有機半導体発光層であっても、微小なチャネル長を設定することにより、効率的な発光が可能になる。
前記有機半導体発光層は、P型有機半導体材料またはN型有機半導体材料の単層からなっていてもよい。
前記有機半導体発光層は、さらに、発光中心を形成する発光材料を含むものであってもよい。この構成によれば、有機半導体発光層内に発光中心を形成することによって、より効率的な発光が可能になる。
【0019】
前記有機半導体発光層は、チオフェンおよびフェニレンのコオリゴマーを含むものであってもよい。
前記正孔注入電極および前記電子注入電極は、間隔を開けて、互いに嵌め合わされるように配置された櫛歯形状部をそれぞれ有していてもよい。この構成によれば、正孔注入電極および電子注入電極が、間隔(微小な間隔)を保持して、互いに嵌め合わされる櫛歯形状部を有しているから、正孔注入電極と電子注入電極との対向部の全長を長くとることができる。換言すれば、チャネル幅を広くとることができる。これによって、正孔と電子の再結合を効果的に生じさせることができるから、低電圧駆動が可能になるとともに、高い発光効率を実現することができる。また、櫛歯部分を広幅に形成して、面発光状態として視認されるようにしておけば、実質的な面発光光源を実現できる。
【0020】
上記のような有機半導体装置を基板上に1次元または2次元に配列することにより、1次元または2次元の表示装置(個々の画像を有機半導体発光装置で構成したもの)を構成することができる。
本発明における上述の、またはさらに他の目的、特徴および効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る有機半導体発光装置の構造を説明するための図解的な断面図である。
【図2】ソース電極およびドレイン電極の構成を説明するための図解的な平面図である。
【図3】図3(A)-3(D)は、有機半導体発光装置(TPTPT60モル%含有)の特性を示す図である。
【図4】図4(A)-4(D)有機半導体発光装置(TPTPT50モル%含有)の特性を示す図である。
【図5】図5(A)-5(D)有機半導体発光装置(TPTPT40モル%含有)の特性を示す図である。
【図6】図6(A)-6(D)有機半導体発光装置(TPTPT33モル%含有)の特性を示す図である。
【図7】図7(A)-7(D)P型駆動の場合におけるドレイン電流に対する量子効率の測定結果を示す図である。図7(A)はTPTPTの含有量が60モル%である場合の特性を示し、図7(B)はTPTPTの含有量が50モル%である場合の特性を示し、図7(C)はTPTPTの含有量が40モル%である場合の特性を示し、図7(D)はTPTPTの含有量が33モル%である場合の特性を示す。
【図8】図8(A)-8(D)N型駆動の場合におけるドレイン電流に対する量子効率の測定結果を示す図である。図8(A)はTPTPTの含有量が60モル%である場合の特性を示し、図8(B)はTPTPTの含有量が50モル%である場合の特性を示し、図8(C)はTPTPTの含有量が40モル%である場合の特性を示し、図8(D)はTPTPTの含有量が33モル%である場合の特性を示す。
【図9】TPTPTの含有量に対する量子効率の変動を示す図である。
【図10】この発明の第2の実施形態に係る有機半導体発光装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図11】この発明の第3の実施形態に係る有機半導体発光装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図12】図12(A)は図11の有機半導体発光装置(チャネル長L=0.8μm)におけるドレイン電圧に対するドレイン電流の変動を示す特性図であり、図12(B)は、チャネル長L=9.8μmとした有機半導体発光装置の同様な特性を示す。
【図13】図13(A)はチャネル長L=0.8μmとした場合におけるドレイン電圧に対する輝度の特性を示し、図13(B)はチャネル長L=9.8μmとした場合におけるドレイン電圧に対する輝度の特性を示している。
【図14】図14(A)はチャネル長L=0.8μmとした場合のドレイン電圧に対する量子効率の特性図であり、図14(B)はチャネル長L=9.8μmとした場合における同様な特性を示す。
【図15】図15(A)-15(C)は、有機半導体発光層における発光のメカニズムを説明するための図解図である。
【図16】有機半導体発光層における発光の他のメカニズムを説明するための図解図である。
【図17】この発明の第4の実施形態に係る有機半導体発光装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図18】有機半導体発光装置を基板上に二次元配列して構成される表示装置の電気回路図である。
【発明の実施の形態】
【0022】
図1は、この発明の第1の実施形態に係る有機半導体発光装置の構造を説明するための図解的な断面図である。この有機半導体発光装置は、FET(電界効果型トランジスタ)としての基本構造を有する素子である。この有機半導体装置は、高濃度に不純物を導入したN+シリコン基板で構成されたゲート電極1と、このゲート電極1を覆うように当該ゲート電極1を構成する基板の表面に沿って形成され当該ゲート電極1上に積層されたゲート絶縁膜としての酸化シリコン膜2(たとえば膜厚300nm)と、この酸化シリコン膜2上に前記基板の表面に沿って間隔を開けて形成された一対の電極3,4と、この一対の電極3,4を被覆するとともにそれらの間に入り込み、前記基板の表面に沿って形成された有機半導体発光層5とを備えている。ゲート電極1は、シリコン基板の表層部に形成された不純物拡散層からなる導電層で構成されていてもよい。すなわち、ゲート電極1は、基板の表面に沿って形成されていればよい。
【0023】
有機半導体発光層5に対向するように、光取り出し効率を高めるためのプラスチックレンズ等からなるレンズ6が配置されており、さらにこのレンズ6を覆うように視認性を高めるための偏光板7が配置されている。
有機半導体発光層5は、下記化学式(1)で示すP型有機半導体材料であるTPTPTと、下記化学式(2)で示すN型有機半導体材料であるNTCDAの混合物からなっている。TPTPTは、キャリヤ移動度が5.1×10-3cm2/V・s、HOMOエネルギーレベルが5.0eV、LUMOエネルギーレベルが1.3eVの正孔輸送性材料である。また、NTCDAは、キャリヤ移動度が3.4×10-4cm2/V・s、HOMOエネルギーレベルが6.8eV未満、LUMOエネルギーレベルが約3.6eVの電子輸送性材料である。
【0024】
【化1】
JP0004972730B2_000002t.gif
【0025】
【化2】
JP0004972730B2_000003t.gif
【0026】
具体的には、有機半導体発光層5は、TPTPTおよびNTCDAを共蒸着することによって形成されており、その膜厚は、たとえば70nmとされている。有機半導体発光層5には、さらに、TPTPTまたはNTCDAよりもHOMO-LUMOエネルギーレベル差の小さな発光材料(発光中心を形成するもの)がドーピングされていることが好ましい。この場合、TPTPT、NTCDAおよび発光材料を共蒸着して有機半導体発光層5を形成することができる。発光材料としては、Rubrene、DCM、フルオレン化合物、スチルベンを含む化合物、アセン誘導体など、発光量子収率が90%以上ある材料が好ましい。また、リン光材料であるPtOEPなどの白金錯体やイリジウム錯体などの金属錯体も有用である。
【0027】
一対の電極3,4は、たとえば、酸化シリコン膜2側に密着層として薄いクローム層(たとえば膜厚1nm)を配置し、このクローム層上に金層(たとえば膜厚30nm)を積層して構成されている。これらの一対の電極3,4は、酸化シリコン膜2の表面に沿って(すなわち基板としてのゲート電極1の表面に沿って)微小な間隔(たとえば1μm)をあけて対向するように形成されている。この一対の電極3,4の間の領域に有機半導体発光層5が存在しており、この領域の有機半導体発光層5に、ゲート電極1が、酸化シリコン膜2を介在させた状態で対向している。
【0028】
有機半導体発光層5は、P型有機半導体材料およびN型有機半導体材料の混合物からなっているので、一対の電極3,4の間に電圧を印加すれば、その内部を正孔および電子の両方が移動することになる。そして、有機半導体発光層5内でそれらの正孔および電子が再結合することにより、発光が生じる。このとき、有機半導体発光層5を通って電極間3,4を移動するキャリヤ(正孔および電子)の量は、ゲート電極1に印加される電圧に依存する。そこで、ゲート電極1に、段階的または連続的に変化する電圧を印加することで、一対の電極3,4(ソース,ドレイン電極)間の導通状態(オン/オフまたは電流量)を制御することができる。
【0029】
有機半導体発光層5は、正孔および電子の両方を輸送することができるバイポーラ性の有機半導体層であるため、この有機半導体装置は、P型駆動およびN型駆動のいずれの形態の駆動をも行うことができる。
たとえば、P型駆動を行うときには、一方の電極3をソース電極とし、他方の電極4をドレイン電極として、ソース電極3を基準としてドレイン電極4に負の電圧が与えられる。この状態で、ゲート電極1には、ソース電極3を基準として負の制御電圧が印加される。これによって、有機半導体発光層5内の正孔がゲート電極1側に引き寄せられ、酸化シリコン膜2の表面付近における正孔の密度が高い状態となる。ソース電極3およびドレイン電極4の間の電圧を適切に定めておくと、ゲート電極1に与える制御電圧の大小によって、ソース電極3から有機半導体発光層に正孔が注入され、ドレイン電極4から有機半導体発光層5に電子が注入される状態を達成できる。すなわち、ソース電極3は正孔注入電極として機能し、ドレイン電極4は電子注入電極として機能する。これにより、有機半導体発光層5内において、正孔および電子の再結合が生じ、これに伴う発光が観測されることになる。この発光状態は、ゲート電極1に与えられる制御電圧を変化させることにより、オン/オフしたり発光強度を変調したりすることができる。
【0030】
一方、N型駆動を行うときには、一方の電極3をソース電極とし、他方の電極4をドレイン電極として、このドレイン電極4にソース電極3を基準として正の電圧が印加される。また、ゲート電極1には、ソース電極3を基準として正の制御電圧が印加される。これにより、有機半導体発光層5内において酸化シリコン膜2との界面付近には、電子が誘起されることになる。これにより、ソース電極3およびドレイン電極4の間を導通させることができる。そこで、ソース電極3とドレイン電極4との間に適切な電圧を印加しておけば、ソース電極3から有機半導体発光層へと電子が注入されるとともに、ドレイン電極4から有機半導体発光層5に正孔が注入される。すなわち、ソース電極3は電子注入電極として機能し、ドレイン電極4は正孔注入電極として機能する。そして、注入された電子および正孔が、有機半導体発光層5内で再結合することになる。これによって、発光が生じる。この発光状態は、ゲート電極1に与えられる制御電圧を変化させることにより、オン/オフしたり発光強度を変調したりすることができる。
【0031】
ソース電極3およびドレイン電極4は、図2の平面図に示すように、それぞれ、本体部3A,4Aと、この本体部3A,4Aから互いに平行に突出した複数本(図2の例では各10本。合計で20本)の櫛歯部3B,4Bとを有している。そして、櫛歯部3B,4Bが互いに微小な間隔(たとえば1μm)をあけて嵌まり合うように酸化シリコン膜2上に配置されている。ソース電極3の各櫛歯部3Bは、その両側においてドレイン電極4の櫛歯部4Bに対向することになるから、ソース電極3およびドレイン電極4の実質的な対向部の全長が長くなっており、これにより、有機半導体発光層5への電子の注入および正孔の注入の各効率が高められていて、低電圧での駆動が可能とされている。ソース電極3およびドレイン電極4の対向部の全長は、チャネル幅となり、たとえば、4mm程度とされることが好ましい。
【0032】
個々の櫛歯部3B,4Bが微小幅(たとえば1μm以下)に形成されており、ゲート電極1は櫛歯部3B,4Bが重なり合う矩形の領域8の全体に対向しているので、この矩形領域8は、発光時には、面発光光源として視認されることになる。
図3(A)-3(D)、図4(A)-4(D)、図5(A)-5(D)および図6(A)-6(D)は、前述の有機半導体発光装置の特性を示す図である。図3(A)-3(D)は、TPTPTと、NTCDAとの混合比を3対2(すなわちTPTPTの含有量が60モル%)とした場合の特性であり、図4(A)-4(D)は、同混合比を1対1(すなわちTPTPTの含有量50モル%)とした場合の特性を示し、図5(A)-5(D)は、同混合比を2対3(すなわちTPTPTの含有量40モル%)とした場合の特性を示し、図6(A)-6(D)は、同混合比を1対2(すなわちTPTPTの含有量33モル%)とした場合の特性を示している。各図の(A)は、P型駆動を行った場合におけるドレイン電圧(Drain Voltage:ドレイン電極4に印加される電圧)に対するドレイン電流(Drain Current:電極3,4の間に流れる電流)を示す。また、各図の(B)は、N型駆動を行った場合におけるドレイン電圧に対するドレイン電流の変化を示す。また、各図の(C)は、P型駆動を行った場合におけるドレイン電圧に対する輝度(Luminance)の変化を示す。さらに、各図の(D)は、N型駆動を行った場合におけるドレイン電圧に対する輝度の変化を示している。各特性図には、ゲート電圧Vg(ゲート電極1に印加される電圧)を、P型駆動に対しては、0V,-20V,-40V,-60V,-80V,-100Vとした場合の特性が示されており、N型駆動に対しては、ゲート電圧Vgを0V,20V,40V,60V,80V,100Vとした場合の特性がそれぞれ示されている。
【0033】
たとえば、図3(A)においてゲート電圧Vg=-100Vの場合に注目すると、ドレイン電圧対ドレイン電流特性曲線は、ドレイン電圧の増加(絶対値の増加)に従ってドレイン電流が単調に増加(絶対値の単調増加)していく線形領域RAと、この線形領域RAに引き続き、ドレイン電流が飽和する飽和領域RBと、この飽和領域RBに引き続き、ドレイン電圧の増加に従ってドレイン電流が増加して発散していく発散領域RCとを有している。
【0034】
線形領域RA、飽和領域RBおよび発散領域RCにおいては、ソース電極3から有機半導体発光層5への正孔の注入が生じている。飽和領域RBおよび発散領域RCにおいて、ドレイン電極4から有機半導体発光層5への、発光に寄与する電子の注入が生じ、この領域において、有機半導体発光層5内での正孔および電子の再結合、ならびにこれに伴う発光が生じる。
【0035】
図4(B)においてゲート電圧Vg=20Vの場合に注目すると、ドレイン電圧対ドレイン電流の特性曲線は、ドレイン電流が飽和する飽和領域RBと、この飽和領域RBに引き続いて、ドレイン電圧の増加に従ってドレイン電流が増加して発散していく発散領域RCとを有している。この場合、N型駆動であるので、飽和領域RBおよび発散領域RCにおいては、ソース電極3から有機半導体発光層5への電子の注入が生じている。発散領域RCに至ると、ドレイン電極4から有機半導体発光層5に、発光に寄与する正孔が注入され、これらが、有機半導体発光層5内で再結合し、これに伴う発光が生じることになる。
【0036】
このようにして、電界効果型トランジスタの活性層として機能する有機半導体発光層5からの発光を生じさせることができる。
図7(A)-7(D)は、P型駆動の場合におけるドレイン電流に対する量子効率(Quantum efficiency)の測定結果を示す図である。図7(A)は、TPTPTの含有量が60モル%である場合の特性を示し、図7(B)はTPTPTの含有量が50モル%である場合の特性を示し、図7(C)はTPTPTの含有量が40モル%である場合の特性を示し、図7(D)はTPTPTの含有量が33モル%である場合の特性を示す。
【0037】
ドレイン電流の変化に対する量子効率の変化が大きい場合、ドレイン電流の制御による光量の制御は複雑になる。これに対して、ドレイン電流の変動に対する量子効率の変動が少なければ、ドレイン電流の増加に伴って発光光量を増加させることができるので、発光光量の制御が簡単になる。このような観点から、ドレイン電流に対する量子効率の変動が少ない特性が好ましい特性であるといえる。図7(A)-7(D)からは、TPTPTの含有量を50モル%以下(より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは33モル%以下)とすることによって、好ましいドレイン電流対量子効率特性が得られることがわかる。
【0038】
図8(A)-8(D)は、N型駆動の場合における同様な特性を示しており、図8(A)はTPTPTの含有量が60モル%の場合の特性を示し、図8(B)はTPTPTの含有量が50モル%の場合の特性を示し、図8(C)はTPTPTの含有量が40モル%の場合の特性を示し、図8(D)はTPTPTの含有量が33モル%の場合の特性を示している。
【0039】
図7(A)-7(D)の場合と同様な考察を行うと、N型駆動の場合には、TPTPTの含有量が50モル%以上(より好ましくは60モル%以上)の場合に、良好なドレイン電流対量子効率特性が得られることがわかる。
図9は、TPTPTの含有量に対する量子効率の変動を示す図である。P型駆動の場合にはTPTPTの含有量を多くすることによって、量子効率が向上されることがわかる。これに対して、N型駆動の場合にはTPTPTの含有量70モル%程度で量子効率は飽和してしまう。なお、図9には、P型駆動に関しては、ドレイン電圧Vdを-100Vとし、ゲート電圧Vg=-100Vとした場合の測定結果が示されており、N型駆動に関しては、ドレイン電圧Vd=100Vとし、ゲート電圧Vg=0Vとした場合の特性が示されている。
【0040】
図10は、この発明の第2の実施形態に係る有機半導体発光装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この図10において、上述の図1に示された各部に相当する部分には、図1の場合と同一の参照符号を付して示す。
この実施形態では、有機半導体発光層5は、TPTPTで構成されたP型有機半導体層5Pと、NTCDAで構成されたN型有機半導体層5Nとを積層した積層構造膜によって構成されている。図10では、P型有機半導体層5PがN型有機半導体層5N上に積層されているが、この2層の有機半導体層5P,5Nの配置は図10の配置と逆であってもよい。有機半導体発光層5上には、ソース電極3およびドレイン電極4が、所定の微小距離(たとえば25nm)だけ間隔をあけて配置されている。図10の配置では、上に配置されたP型有機半導体層5Pに、ソース電極3およびドレイン電極4の両方が接している。
【0041】
この実施形態では、単層でトランジスタ特性を示すP型有機半導体材料からなるP型有機半導体層5Pと、単層でトランジスタ特性を示すN型材料からなるN型有機半導体層5Nとを積層することによって、全体としてバイポーラ駆動が可能な有機半導体発光層5が構成されている。P型駆動を行う場合の電子注入電極となるドレイン電極4はN型有機半導体層5Nに接していないが、このような状態であっても、ドレイン電極4は、P型有機半導体層5Pを突き抜けて、N型有機半導体層5Nとの間でキャリヤ(電子)の授受を行うことができる。また、N型駆動を行う場合における電子注入電極となるソース電極3は、N型有機半導体層5Nに接していないが、このソース電極3は、P型有機半導体層5Pを突き抜けて、N型有機半導体層5Nとの間でキャリヤ(電子)の授受を行うことができる。
【0042】
キャリヤの授受を行うため、P型有機半導体層5Pの厚みは200nm以下であることが好ましい。本実施形態のP型有機半導体層5Pの厚みは100nmである。
このような構成によって、前述の第1の実施形態の場合と同じく、P型駆動またはN型駆動を行うことにより、有機半導体発光層5内において正孔および電子の再結合を生じさせ、これに伴う発光を起こさせることができる。
【0043】
図11は、この発明の第3の実施形態に係る有機半導体発光装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この図11において、上述の図1に示された各部に対応する部分には、図1の場合と同一の参照符号を付して示す。また、この実施形態の説明において、上述の図2を再び参照する。
この実施形態では、電界効果型トランジスタの活性層として機能する有機半導体発光層50には、P型有機半導体材料であるTPTPTが適用されており、この有機半導体発光層50に、N型有機半導体材料は実質的に混入されていない。すなわち、この実施形態の有機半導体発光層50は、P型有機半導体材料の単層からなっている。
【0044】
この実施形態において、ソース電極3とドレイン電極4との間の距離であるチャネル長Lは、1μm以下、より具体的には0.8μmとされている。ソース電極3の櫛歯部3Bとドレイン電極4の櫛歯部4Bとの対向部の全長であるチャネル幅は、たとえば、1mmとされている。
図12(A)は、図11の有機半導体発光装置(チャネル長L=0.8μm)におけるドレイン電圧(Drain voltage)に対するドレイン電流(Drain current)の変動を示す特性図であり、ゲート電圧Vgを0V,-20V,-40V,-60V,-80V,-100Vとした場合の各特性が示されている。また、図12(B)は、チャネル長L=9.8μmとした有機半導体発光装置の同様な特性を示している。チャネル長Lを9.8μmとした場合には、参照符号S1で示すように、P型駆動において典型的な飽和特性が現れる。すなわち、有機半導体層には正孔電流が流れるだけであって、この有機半導体層への電子の注入は生じない。
【0045】
それに対して、チャネル長L=0.8μmとした場合には、参照符号S2に示すように、発散領域が現れる。これは、有機半導体発光層50に対して、ドレイン電極4からの電子の注入が生じていることを表わす。すなわち、チャネル長Lを1μm以下(具体的には0.8μm)とした本実施形態の構成の場合には、本来的には正孔の輸送のみが可能なP型有機半導体材料の単層からなる有機半導体発光層50に対して、ソース電極3からの正孔の注入とともにドレイン電極4からの電子の注入が同時に生じ、それらの再結合に伴う発光が生じることになる。
【0046】
図13(A)は、チャネル長L=0.8μmとした場合におけるドレイン電圧に対する輝度(Luminance)の特性を示し、図13(B)は、チャネル長L=9.8μmとした場合におけるドレイン電圧に対する輝度の特性を示している。これらの比較から、チャネル長L=0.8μmとした本実施形態の構成により、チャネル長が9.8μmの場合の約5倍の輝度が得られることが理解される。
【0047】
図14(A)は、チャネル長L=0.8μmとした本実施形態の有機半導体発光装置におけるドレイン電圧に対する量子効率(Quantum efficiency)の特性図であり、図14(B)は、チャネル長L=9.8μmとした場合における同様な特性を示している。これらの比較から、チャネル長L=0.8μmとした本実施形態の構成により、チャネル長L=9.8μmとした場合の約10倍の量子効率が達成されることがわかる。
【0048】
図15(A)-15(C)は、P型有機半導体材料からなる有機半導体発光層50における発光のメカニズムを説明するための図解図であり、図15(A)は、チャネル長Lを1μm以下とした場合に対応し、図15(B)はチャネル長Lを10μm程度とした場合に対応している。図15(C)は、図15(A)に対応したバンド構造図である。
ゲート電極1に対して、負の電圧Vgを印加したときに、有機半導体発光層50において酸化シリコン膜2の界面の近傍に正孔のチャネル51が形成され、そのピンチオフ点52が、ドレイン電極4の近傍に至る。
【0049】
しかし、図15(B)のように、チャネル長Lが長いときには、ピンチオフ点52とドレイン電極4との間に形成される電界強度が十分に高くなく、ドレイン電極4内の電子は、このドレイン電極4と有機半導体発光層50との間の電位障壁を容易には突き抜けない。
これに対して、図15(A)の場合のように、チャネル長Lが十分に短い場合には、ピンチオフ点52とドレイン電極4との間に高電界が形成され、エネルギーバンドが大きく曲げられる。これにより、ドレイン電極4内の電子は、このドレイン電極4と有機半導体発光層50との間の電位障壁を突き抜けて有機半導体層5内に注入され、正孔と再結合する。
【0050】
しかも、図15(A)および(B)の比較から理解されるように、チャネル長Lを短くすることにより、ピンチオフ点からドレイン電極までの間に高電界が生じ、これによって、ドレイン電極4からの電子の注入効率が高まるとともに、正孔および電子の再結合効率も高まる。これによって、発光効率が向上される。
ドレイン電極4から有機半導体発光層5への電子注入のメカニズムは推定にすぎないが、上記のような電位障壁を突き抜けるFN(ファウラーノルドハイム)トンネル効果の他に、ピンチオフ点52とドレイン電極4との間に生じる高電界に起因するP型有機半導体材料(TPTPT)の励起が考えられる。
【0051】
すなわち、図16に示すように、P型有機半導体材料中のHOMOエネルギーレベルの電子が高電界によってLUMOエネルギーレベルへと励起されて、これが有機半導体発光層5内で正孔と再結合する。それととともに、LUMOエネルギーレベルへの励起によって空席となったHOMOエネルギーレベルに、ドレイン電極4から電子が注入されて補われる。
【0052】
P型半導体材料からなる有機半導体発光層50には、発光材料がドーピングされていることが好ましい。これにより、発光効率をより向上することができる。
ドーピングされる発光材料は、P型有機半導体材料としてのTPTPTよりも、HOMOエネルギーレベルとLUMOエネルギーレベルとのエネルギー差が小さな有機半導体材料であることが好ましい。このような発光材料としては、Rubrene、DCM、フルオレン化合物、スチルベンを含む化合物、アセン誘導体など、発光量子収率が90%以上ある材料が好ましい。また、リン光材料であるPtOEPなどの白金錯体やイリジウム錯体などの金属錯体も有用である。また、化合物の置換基を選択し、共役系を広げることによって、HOMOエネルギーレベルおよびLUMOエネルギーレベルを調整できる。
【0053】
発光材料の有機半導体発光層50へのドーピングは、たとえば、TPTPTと発光材料とを共蒸着することによって有機半導体発光層50を形成することにより行われてもよい。
また、有機半導体発光層50への正孔および電子の注入効率を高めるために、ソース電極3およびドレイン電極4を、MgAu合金層とAu層との積層構造膜で構成してもよい。また、ソース電極3およびドレイン電極4の全体をそれぞれMgAu合金で構成してもよい。
【0054】
図17は、この発明の第4の実施形態に係る有機半導体発光装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この図17において、上述の図1に示された各部に対応する部分には、図1の場合と同一の参照符号を付して示す。
この実施形態の有機半導体発光装置は、透明基板としてのガラス基板11上に、透明導電膜からなるゲート電極1を形成し、このゲート電極1上に酸化シリコン膜2を介してソース電極3およびドレイン電極4を配置した構成となっている。また、ソース電極3およびドレイン電極4を被覆するとともに、ソース電極3およびドレイン電極4の間の領域において酸化シリコン膜2を介してゲート電極1に対向するように、有機半導体発光層5が配置されている。この有機半導体発光層5の代わりに、上述の図11に示されたP型有機半導体材料の単層からなる有機半導体発光層50が配置されてもよいが、この場合には、ソース電極3およびドレイン電極4の間の間隔であるチャネル長Lを1.0μm以下とすることが好ましい。
【0055】
有機半導体発光層5の表面には、この有機半導体発光層5の吸湿を防止するための乾燥剤層12が配置されており、さらに、この乾燥剤層12上には乾燥剤層12を保持するための保持基板としてのガラス基板13が配置されている。ガラス基板11,13の間には、これらを互いに固定し、有機半導体発光層5および乾燥剤層12が配置された空間を封止して密閉空間14を形成するための接着層15が配置されている。また、ガラス基板11において有機半導体発光層5とは反対側の表面である光取り出し側表面11Aには、視認性を改善するための偏光板16が配置されている。
【0056】
ゲート電極1を構成する透明導電膜は、たとえばITO(酸化インジウム錫)、IZO(酸化インジウム亜鉛)またはZnO(酸化亜鉛)などの透明な導電材料からなっている。また、上記接着層15は、たとえばエポキシ樹脂からなっている。さらに、乾燥剤層12は、たとえば酸化バリウム等で構成されている。
この構成では、透明基板であるガラス基板11側に光が取り出され、この光が偏光板16を介して観察されることになる。有機半導体発光層5は、乾燥剤層12が配置された密閉空間14内に封止されているので、吸湿に伴う変質を抑制または防止することができ、有機半導体発光装置の長寿命化を図ることができる。
【0057】
なお、この図17の構成において、ガラス基板11と偏光板16との間に、光取り出し効率を高めるためのレンズ(図1のレンズ6と同様のもの)が配置されていてもよい。
図18は、図1、図10、図11または図17に示された構成を有する有機半導体発光装置10を基板20上に二次元配列して構成される表示装置60の電気回路図である。すなわち、この表示装置60は、前述のような有機半導体発光装置10を、マトリクス配列された画素P11,P12,・・・・,P21,P22,・・・・・・内にそれぞれ配置し、これらの画素の有機半導体発光装置10を選択的に発光させ、また、各画素の有機半導体発光装置10の発光強度(輝度)を制御することによって、二次元表示を可能としたものである。基板20は、図1、図10または図11の構成の場合には、たとえば、ゲート電極1と一体化したシリコン基板であってもよい。すなわち、ゲート電極1は、シリコン基板の表面にパターン形成した不純物拡散層からなる導電層により構成しておけばよい。また、図17の構成が適用される場合には、基板20として、ガラス基板11を用いればよい。
【0058】
各有機半導体発光装置10をP型駆動する場合には、そのドレイン電極4(D)にはバイアス電圧Vd(<0)が与えられ、そのソース電極3(S)は接地電位(=0)とされる。ゲート電極1(G)には、各画素を選択するための選択トランジスタTsと、データ保持用のキャパシタCとが並列に接続されている。
行方向に整列した画素P11,P12,・・・・・・;P21,P22,・・・・・・の選択トランジスタTsのゲートは、行ごとに共通の走査線LS1,LS2,・・・・・・にそれぞれ接続されている。また、列方向に整列した画素P11,P21,・・・・・・;P12,P22,・・・・・・の選択トランジスタTsにおいて有機半導体発光装置10とは反対側には、列ごとに共通のデータ線LD1,LD2,・・・・・・がそれぞれ接続されている。
【0059】
走査線LS1,LS2,・・・・・・には、コントローラ63によって制御される走査線駆動回路61から、各行の画素P11,P12,・・・・・・;P21,P22,・・・・・・を循環的に順次選択(行内の複数画素の一括選択)するための走査駆動信号が与えられる。すなわち、走査線駆動回路61は、各行を順次選択行として、選択行の複数の画素の選択トランジスタTsを一括して導通させ、非選択行の複数の画素の選択トランジスタTsを一括して遮断させるための走査駆動信号を発生する。
【0060】
一方、データ線LD1,LD2,・・・・・・には、データ線駆動回路62からの信号が入力されるようになっている。このデータ線駆動回路62には、画像データに対応した制御信号が、コントローラ63から入力されるようになっている。データ線駆動回路62は、各行の複数の画素が走査線駆動回路61によって一括選択されるタイミングで、当該選択行の各画素の発光階調に対応した発光制御信号をデータ線LD1,LD2,・・・・・・に並列に供給する。
【0061】
これにより、選択行の各画素においては、選択トランジスタTsを介してゲート電極1(G)に発光制御信号が与えられるから、当該画素の有機半導体発光装置10は、発光制御信号に応じた階調で発光(または消灯)することになる。発光制御信号は、キャパシタCにおいて保持されるから、走査線駆動回路61による選択行が他の行に移った後にも、ゲート電極Gの電位が保持され、有機半導体発光装置10の発光状態が保持される。このようにして、二次元表示が可能になる。
【0062】
以上、この発明の4つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。たとえば、前記第1および第2の実施形態などで用いられているNTCDAに代えて、C6-NTC(下記化学式(3))や、CH2613-NTC(下記化学式(4))などをN型有機半導体材料として用いてもよい。これらの材料は、NTCDAよりもアクセプター性が弱く、量子収率の向上を見込むことができる。
【0063】
【化3】
JP0004972730B2_000004t.gif
【0064】
【化4】
JP0004972730B2_000005t.gif
【0065】
また、ソース電極3およびドレイン電極4の材料としては、金の他にも、マグネシウム、白金、アルミニウム、ITO、IZOなどを適用することができる。さらに、ゲート絶縁膜としては、酸化シリコン膜の他にも、窒化シリコン膜やPMMA(ポリメチルメタクリレート)膜、アルミナ膜、酸化タンタル膜などが適用されてもよい。
有機半導体発光層の膜厚は、とくに限定されないが、干渉効果によって光取り出し効率を最大にできるように定められることが好ましい。具体的には、有機半導体発光層の屈折率をn、発光波長をλとしたときに、膜厚t=(2k+1)・(λ/4n)(ただし、k=0,1,2,3,……)とすればよい。
【0066】
さらに、前記の図18では、2次元表示の可能な表示装置を示したが、画素を1次元配列して1次元の表示装置を構成することもできる。
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【0067】
この出願は、2004年8月30日に日本国特許庁に提出された特願2004-250600号に対応しており、この出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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