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明細書 :薄膜形成方法、蒸着源基板、および蒸着源基板の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4716277号 (P4716277)
公開番号 特開2006-152352 (P2006-152352A)
登録日 平成23年4月8日(2011.4.8)
発行日 平成23年7月6日(2011.7.6)
公開日 平成18年6月15日(2006.6.15)
発明の名称または考案の名称 薄膜形成方法、蒸着源基板、および蒸着源基板の製造方法
国際特許分類 C23C  14/24        (2006.01)
C23C  14/04        (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  21/363       (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
FI C23C 14/24 R
C23C 14/04 Z
H01L 29/28
H01L 21/363
H01L 29/78 618A
H01L 29/78 618B
請求項の数または発明の数 29
全頁数 27
出願番号 特願2004-343001 (P2004-343001)
出願日 平成16年11月26日(2004.11.26)
審査請求日 平成19年5月16日(2007.5.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
発明者または考案者 【氏名】石田 謙司
【氏名】金原 秀療
【氏名】松重 和美
【氏名】下地 規之
個別代理人の代理人 【識別番号】100087701、【弁理士】、【氏名又は名称】稲岡 耕作
【識別番号】100101328、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 実夫
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開2003-123970(JP,A)
特開平07-278784(JP,A)
特開平02-101155(JP,A)
特開2000-113978(JP,A)
特開2003-129220(JP,A)
特開平06-017243(JP,A)
特開2002-302759(JP,A)
調査した分野 C23C14/00-14/58
H01L 21/336
H01L 21/363
H01L 29/786
H01L 51/05
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を蒸着させることによって前記膜材料の薄膜を形成する方法であって、
前記被蒸着基板の薄膜形成面と、前記膜材料を材料供給面に担持した供給基板の前記材料供給面とを、前記供給基板上の前記膜材料と前記被蒸着基板の前記薄膜形成面との間に所定の間隙を確保した状態で、近接対向配置する対向配置工程と、
この対向配置工程によって前記供給基板および前記被蒸着基板が対向配置された状態で、前記材料供給面上の前記膜材料を蒸発させることにより、前記材料供給面の前記膜材料が担持された各領域からこれに対向する前記薄膜形成面の各対向領域へと前記膜材料を輸送して、前記薄膜形成面に前記膜材料の薄膜を形成する蒸着工程とを含み、
前記対向配置工程では、前記被蒸着基板の薄膜形成面と、前記供給基板の材料供給面との間に、前記薄膜形成面において薄膜を形成すべき領域に対向し、実質的に密閉された局所的閉空間が区画されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記対向配置工程では、前記供給基板上の前記膜材料と前記薄膜形成面との間隙が、前記供給基板から蒸発した膜材料の平均自由行程の100倍以下の範囲となるように、前記被蒸着基板および前記供給基板が対向配置されることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記供給基板の材料供給面には、前記被蒸着基板の前記薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで前記膜材料が配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
前記供給基板の材料供給面には、前記被蒸着基板の前記薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンの凹部が形成されており、この凹部内に前記膜材料が配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項5】
前記対向配置工程では、前記凹部と前記被蒸着基板の薄膜形成面とによって、実質的に密閉された局所的閉空間が区画されることを特徴とする請求項4記載の薄膜形成方法。
【請求項6】
前記対向配置工程では、前記被蒸着基板と前記供給基板との間に弾性変形層が介在されることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項7】
前記蒸着工程では、前記被蒸着基板の温度が、前記供給基板の温度よりも低温に保持されることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項8】
前記蒸着工程では、前記被蒸着基板と前記供給基板との間に断熱層が介在されることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項9】
第1の膜材料を材料供給面に担持した第1の供給基板を用いて前記対向配置工程および前記蒸着工程を実行し、
次に、第2の膜材料を材料供給面に担持した第2の供給基板を用いて前記対向配置工程および前記蒸着工程を実行することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項10】
前記供給基板は、前記材料供給面に2種類以上の膜材料を担持しており、
前記蒸着工程は、前記材料供給面上の2種類以上の膜材料を前記薄膜形成面に同時に蒸着する工程を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項11】
前記2種類以上の膜材料の混合物が前記材料供給面に担持されていることを特徴とする請求項10記載の薄膜形成方法。
【請求項12】
前記2種類以上の膜材料が、前記材料供給面の異なる領域に配置されていることを特徴とする請求項10記載の薄膜形成方法。
【請求項13】
前記被蒸着基板の前記薄膜形成面とは反対側の表面から、当該被蒸着基板を透過する光によって、前記被蒸着基板に蒸着した薄膜を照射する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項14】
前記蒸着工程は、前記被蒸着基板を前記薄膜形成面を上方に向けた水平姿勢とし、前記供給基板を前記材料供給面を下方に向けた水平姿勢として行われることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項15】
前記蒸着工程は、前記被蒸着基板を前記薄膜形成面を下方に向けた水平姿勢とし、前記供給基板を前記材料供給面を上方に向けた水平姿勢として行われることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項16】
被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板であって、
前記被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで前記膜材料が配置されており、
前記材料供給面に配置された断熱層を含むことを特徴とする蒸着源基板。
【請求項17】
前記材料供給面には、前記薄膜パターンに対応するパターンの凹部が形成されており、この凹部内に前記膜材料が配置されていることを特徴とする請求項16記載の蒸着源基板。
【請求項18】
被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源を構成すべき蒸着源基板であって、
前記被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記膜材料が配置可能な凹部が形成されており、この凹部が、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンに形成されており、
前記材料供給面に配置された断熱層を含むことを特徴とする蒸着源基板。
【請求項19】
前記材料供給面に配置された弾性変形層をさらに含むことを特徴とする請求項16ないし18のいずれかに記載の蒸着源基板。
【請求項20】
被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板であって、
前記被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで前記膜材料が配置されており、
前記材料供給面に配置された弾性変形層を含むことを特徴とする蒸着源基板。
【請求項21】
前記材料供給面には、前記薄膜パターンに対応するパターンの凹部が形成されており、この凹部内に前記膜材料が配置されていることを特徴とする請求項20記載の蒸着源基板。
【請求項22】
被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源を構成すべき蒸着源基板であって、
前記被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記膜材料が配置可能な凹部が形成されており、この凹部が、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンに形成されており、
前記材料供給面に配置された弾性変形層を含むことを特徴とする蒸着源基板。
【請求項23】
前記膜材料を加熱して蒸発させるための加熱手段が内蔵されていることを特徴とする請求項16ないし22のいずれかに記載の蒸着源基板。
【請求項24】
誘導加熱可能な材料で構成されていることを特徴とする請求項16ないし22のいずれかに記載の蒸着源基板。
【請求項25】
所定の波長の光に対して透明な材料で構成されていることを特徴とする請求項16ないし24のいずれかに記載の蒸着源基板。
【請求項26】
被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板を製造するための方法であって、
被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで凹部を形成する工程と、
前記凹部内に前記膜材料を配置する工程とを含み、
前記膜材料を配置する工程は、前記凹部内に前記膜材料を所定の溶媒に溶解させた溶液を供給する工程を含むことを特徴とする蒸着源基板の製造方法。
【請求項27】
被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板を製造するための方法であって、
被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで凹部を形成する工程と、
前記凹部内に前記膜材料を配置する工程とを含み、
前記膜材料を配置する工程は、
前記凹部に入り込むことができる大きさの粒状の膜材料を前記凹部内に配置する工程を含むことを特徴とする蒸着源基板の製造方法。
【請求項28】
前記膜材料を配置する工程は、
前記材料供給面の凹部外の領域をマスク部材で覆う工程と、
前記材料供給面全体に前記膜材料を供給する工程と、
前記マスク部材を除去する工程とを含むことを特徴とする請求項26または7記載の蒸着源基板の製造方法。
【請求項29】
被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板を製造するための方法であって、
被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで凹部を形成する工程と、
前記凹部内に前記膜材料を配置する工程とを含み、
前記膜材料を配置する工程は、
前記材料供給面の凹部外の領域をマスク部材で覆う工程と、
前記材料供給面全体に前記膜材料を供給する工程と、
前記マスク部材を除去する工程とを含むことを特徴とする蒸着源基板の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸着によって薄膜を形成する方法、ならびにこの方法に使用する蒸着源基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体活性層に有機物層を用いた有機半導体装置の製造工程では、ガラス基板やシリコン基板などの基板上に有機材料の薄膜が形成される。この薄膜の形成には、一般に真空蒸着法が適用される。
図26は、通常の真空蒸着法による薄膜の形成のための構成を示す図解図である。真空チャンバ1内に蒸着源2が配置され、これに対向するように薄膜を形成すべき基板3が配置される。この基板3と蒸着源2との間にマスク(シャドーマスク)4が配置される。マスク4には、基板3に形成すべき薄膜のパターンに対応した開口5が形成されている。蒸着源2において蒸発し、基板3に向かって飛来する材料分子は、開口5を通って、基板3の表面に達し、この基板3に付着して薄膜6のパターンを形成する。

【特許文献1】特開2002-241923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
蒸着源2から基板3に向かう分子には指向性があり、蒸着源2の直上位置では比較的成膜速度が速いのに対し、蒸着源2の直上から離れた位置では成膜速度が遅い。また、マスク4の開口5が蒸着源2の直上からずれた位置に配置されていれば、蒸着源2から斜め上方に向かう分子が開口5を通って基板3の表面に達することになる。したがって、蒸着源2の直上からずれた位置では、開口5からずれた位置において基板3の表面に薄膜が形成されることになる。
【0004】
このような不具合を可能な限り抑制するためには、基板3とマスク4とを可能な限り近接させて配置するとともに、基板3およびマスク4と蒸着源2との間の距離を可能な限り長く(たとえば15cm~1m)とらなければならない。そのため、真空チャンバ1のサイズが必然的に大きくなる。
しかも、蒸着源2から発生した分子が長い行程を経て基板3に達するためには、真空チャンバ1内を高真空状態(たとえば10-5~10-7Paとして、気体分子の平均自由行程が十分に長くなる条件としておく必要がある。
【0005】
このように、従来からの真空蒸着法では、微細パターンの薄膜を基板3上に形成することが困難であり、しかも、装置構成が大型になる。さらには、高真空状態を形成するために、たとえばロータリポンプに加えてターボ分子ポンプ等の高価な装置を備える必要がある。
さらには、蒸着源2から飛来した気体分子がマスク4において捕獲されて、開口5を塞ぐ、いわゆるマスク目詰まり7が生じるという問題もある。
【0006】
また、蒸着源2から発生した気体分子は必ずしも基板3の表面に達するのではなく、真空チャンバ1の内壁にも達するため、真空チャンバ1の内部が著しく汚染されるという問題もあった。
そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、簡単な構成で、基板上に薄膜を形成することができる薄膜形成方法を提供することである。
【0007】
また、この発明の他の目的は、前記薄膜形成方法のための蒸着源基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を蒸着させることによって前記膜材料の薄膜を形成する方法であって、前記被蒸着基板の薄膜形成面と、前記膜材料を材料供給面に担持した供給基板の前記材料供給面とを、前記供給基板上の前記膜材料と前記被蒸着基板の前記薄膜形成面との間に所定の間隙を確保した状態で、近接対向配置する対向配置工程と、この対向配置工程によって前記供給基板および前記被蒸着基板が対向配置された状態で、前記材料供給面上の前記膜材料を蒸発させることにより、前記材料供給面の前記膜材料が担持された各領域からこれに対向する前記薄膜形成面の各対向領域へと前記膜材料を輸送して、前記薄膜形成面に前記膜材料の薄膜を形成する蒸着工程(近接蒸着工程)とを含み、前記対向配置工程では、前記被蒸着基板の薄膜形成面と、前記供給基板の材料供給面との間に、前記薄膜形成面において薄膜を形成すべき領域に対向し、実質的に密閉された局所的閉空間が区画されることを特徴とする薄膜形成方法である。「近接対向配置」とは、薄膜形成面と材料供給面とが互いに当接している場合、およびこれらの間に微少な隙間が開いている場合の両方を含む。
【0009】
この方法によれば、被蒸着基板の薄膜形成面と供給基板の材料供給面とが対向配置された状態で、材料供給面上の膜材料が蒸発させられることによって、気体分子となった膜材料が薄膜形成面へと輸送されて、この薄膜形成面上に薄膜を形成することになる。こうして、材料供給面の前記膜材料が形成された各領域から、これに対向する薄膜形成面の各対向領域へと膜材料が輸送される。
【0010】
したがって、被蒸着基板と供給基板との間隔を大きくとらなくても、被蒸着基板の薄膜形成面に良好な薄膜を成膜することができる。しかも、薄膜形成面と材料供給面とが近接対向配置されるので、材料供給面から蒸発した膜材料は容易に薄膜形成面に到達する。そのため、高真空雰囲気中で蒸着工程を行う必要がない。これにより、高真空空間を形成するための高価な設備を要することなく、被蒸着基板の薄膜形成面に薄膜を形成することができる。具体的には、蒸着工程は、高真空雰囲気中で行う必要はなく、たとえば1~10Pa程度の低真空度の空間で行えば十分である。また、低分子量の有機材料では、大気圧下でも蒸着が可能である。
【0011】
被蒸着基板に蒸着すべき膜材料は、供給基板の材料供給面に分散配置することができるので、実質的に指向性のない蒸着源を構成することができる。これにより、薄膜形成面上に均一な膜厚の薄膜を形成することができる。また、被蒸着基板が大面積のものである場合には、供給基板をそれに応じて大面積に形成しておけばよいから、大面積の薄膜形成面に対する薄膜の形成を実現することができる。
また、この発明では、実質的な密閉空間内において膜材料の蒸発が生じ、この膜材料が被蒸着基板の薄膜形成面に堆積されていくことになる。よって、効率的な蒸着が可能である。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記対向配置工程では、前記供給基板上の前記膜材料と前記薄膜形成面との間隙が、前記供給基板から蒸発した膜材料の平均自由行程の100倍以下の範囲となるように、前記被蒸着基板および前記供給基板が対向配置されることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成方法である。
これにより、供給基板の材料供給面上に担持された膜材料の蒸発気化物を、被蒸着基板の薄膜形成面に確実に導くことができ、この薄膜形成面上に薄膜を成膜できる。
【0013】
前記供給基板上の膜材料と薄膜形成面との間の間隙は、蒸発した膜材料の平均自由行程の10倍以下であれば、より好ましく、平均自由行程以下であればさらに好ましい。より具体的には、前記間隙は、10mm以下とすることが好ましく、1mm以下であればより好ましく、100μm以下であればさらに好ましい。
前記被蒸着基板と供給基板との間には一定以上の温度勾配がつけられていることが好ましい。より具体的には、たとえば被蒸着基板の温度を供給基板の温度よりも低く(たとえば50℃程度の温度差)しておくことが好ましい。これにより、より低温の被蒸着基板の薄膜形成面上に膜が成長しやすくなり、蒸着効率を高めることができる。このように温度勾配をつけることにより、大気中での成膜も可能となる。
【0014】
具体的には、供給基板を熱源の近くに置いたり、供給基板に加熱手段(ヒータ)を内蔵したりすることにより、供給基板の温度を被蒸着基板よりも確実に高くすることができる。また、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)からなるマイクロヒータを供給基板に担持された膜材料の近傍に配置したり、発熱抵抗体を供給基板の膜材料の近傍に配置したりして、膜材料の温度を被蒸着基板よりも高くするようにしてもよい。その他、たとえば供給基板の材料によっては、誘導加熱によって供給基板を加熱し、これにより、膜材料の蒸発を起こさせるとともに、被蒸着基板を供給基板よりも低温に保つようにしてもよい。誘導加熱の場合には、供給基板に対して熱源を接触させたり内蔵したりすることなく、この供給基板を昇温できるという利点がある。
【0015】
また、被蒸着基板と供給基板との間に温度差をつけるために、被蒸着基板に対して冷却機構を付設してもよい。このような冷却機構としては、ペルチエ素子や、ヘリウムチャックを挙げることができる。また、被蒸着基板を冷却水によって冷却するようにしてもよい。
また、被蒸着基板の一部の領域のみを選択的に冷却することにより、当該領域に対して膜材料を選択的に付着させることも可能である。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記供給基板の材料供給面には、前記被蒸着基板の前記薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで前記膜材料が配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の薄膜形成方法である。
この方法では、供給基板の材料供給面に膜材料がパターン形成されているため、この膜材料からの蒸発によって、被蒸着基板の薄膜形成面に対する蒸着を行うと、膜材料のパターンに対応した薄膜パターンが得られる。こうして、蒸着マスクを要することなく、被蒸着基板の薄膜形成面に薄膜をパターン形成できる。むろん、フォトリソグラフィのような複雑なパターニング工程も不要である。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記供給基板の材料供給面には、前記被蒸着基板の前記薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンの凹部が形成されており、この凹部内に前記膜材料が配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜形成方法である。
この方法では、供給基板の材料供給面に凹部が形成されていて、この凹部内に薄膜の膜材料が配置されている。したがって、材料供給面と薄膜形成面とを極めて近接させたり、互いに接触させたりすることができる。
【0018】
前記凹部は、材料供給面から供給基板をエッチングすることによって穿設されていてもよいし、前記供給基板を複数層で形成し、材料供給面側の少なくとも1層に開口を形成することにより、これを凹部としてもよい。
請求項5記載の発明は、前記対向配置工程では、前記凹部と前記被蒸着基板の薄膜形成面とによって、実質的に密閉された局所的閉空間が区画されることを特徴とする請求項4記載の薄膜形成方法である。
【0019】
この発明によれば、凹部によって局所的閉空間が形成されるので、微細なパターンの薄膜を薄膜形成面上に形成することができる。
【0020】
請求項記載の発明は、前記対向配置工程では、前記被蒸着基板と前記供給基板との間に弾性変形層が介在されることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法である。
これにより、弾性変形層を介して被蒸着基板および供給基板を密接させれば、両者間を密閉することができる。この場合に、弾性変形層の復元力を利用して、密閉性を高めることができる。
【0021】
弾性変形層には、供給基板から被蒸着基板への膜材料液体分子の輸送を妨げることがないように、開口が形成されていることが好ましい。これにより、密閉空間内で膜材料分子の移動が生じるので、被蒸着基板の薄膜形成面に効率的に薄膜を成長させることができる。
弾性変形層に形成される開口は、被蒸着基板に形成すべき薄膜のパターンに対応したパターンに形成されていることが好ましい。
【0022】
前記弾性変形層の材料としては、蒸着工程における基板温度以上の融点(たとえば330℃)を有するものが好ましい。また、被蒸着基板上にトランジスタ等の電子デバイスを形成する場合には、前記弾性変形層は絶縁性材料からなっていることが好ましい。これにより、蒸着工程において、万一、弾性変形層の構成材料が気化したとしても、デバイス特性に対する悪影響を抑制できる。
【0023】
前記被蒸着基板は、それ自体が柔軟性を有する基板(たとえばフレキシブル基板)であってもよい。この場合、弾性変形層を要することなく、被蒸着基板と供給基板とを容易に密接させることができる。それとともに、被蒸着基板が可撓性のものであれば、フレキシブルなデバイスを作製することができる。
請求項記載の発明は、前記蒸着工程では、前記被蒸着基板の温度が、前記供給基板の温度よりも低温に保持されることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法である。この方法により、被蒸着基板と供給基板との間に温度勾配を形成することができるので、薄膜形成面上における蒸着を効率的に進行させることができる。
【0024】
請求項記載の発明は、前記蒸着工程では、前記被蒸着基板と前記供給基板との間に断熱層が介在されることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法である。これにより、被蒸着基板と供給基板との間に容易に温度勾配を形成することができるので、効率的な蒸着処理が可能になる。
前記断熱層は、被蒸着基板よりも熱伝導率の低い材料(たとえば、熱伝導率100W・m-1・K-1以下の材料)からなることが好ましく、たとえば、フッ素樹脂、ステンレスまたはガラスなどを構成材料とすることができる。また、酸化シリコン等の厚膜を被蒸着基板または供給基板のいずれかの表面に形成して、これを断熱層として用いることもできる。
【0025】
断熱層は、被蒸着基板または供給基板上に、断熱材料を塗布したり、断熱層部材を貼り付けたりすることによって、それらと一体化されていてもよい。
被蒸着基板の薄膜形成面における成膜効率を高めるために、蒸着工程前に、この薄膜形成面に下地層を形成してもよい。たとえば、膜材料として有機物を使用し、有機物薄膜を薄膜形成面に形成するときには、有機物の下地膜を予め薄膜形成面に形成しておけば蒸着による薄膜形成を効率的に進行させることできる。下地層の形成は、ディップ法やスピン塗布法によって行うことができる。
【0026】
薄膜形成面に薄膜をパターン形成する場合には、そのパターンに応じて下地層をパターン形成しておけば、薄膜形成面上により精度の高い薄膜パターンを形成することができる。
請求項記載の発明は、第1の膜材料を材料供給面に担持した第1の供給基板を用いて前記対向配置工程および前記蒸着工程を実行し、次に、第2の膜材料を材料供給面に担持した第2の供給基板を用いて前記対向配置工程および前記蒸着工程を実行することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法である。これにより、第1の膜材料の薄膜および第2の膜材料の薄膜を被蒸着基板上に順に形成することができる。
【0027】
第1の膜材料および第2の膜材料は、同一材料であっても、異なる材料であってもよい。また、第1の膜材料および第2の膜材料は、同一パターンで各供給基板の材料供給面に配置されていてもよく、異なるパターンで各供給基板の材料供給面に配置されていてもよい。
請求項10記載の発明は、前記供給基板は、前記材料供給面に2種類以上の膜材料を担持しており、前記蒸着工程は、前記材料供給面上の2種類以上の膜材料を前記薄膜形成面に同時に蒸着する工程を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の薄膜形成方法である。これにより、2種類の膜材料を単一の蒸着工程で供給基板から被蒸着基板の薄膜形成面上に蒸着することができる。
【0028】
請求項11記載の発明は、前記2種類以上の膜材料の混合物が前記材料供給面に担持されていることを特徴とする請求項10記載の薄膜形成方法である。この場合、混合物の薄膜を被蒸着基板の薄膜形成面に形成することができる。材料供給面上に担持させる混合物の混合比を予め所定の値としておけば、容易に一定の組成比の混合物薄膜を蒸着できる。
請求項12記載の発明は、前記2種類以上の膜材料が、前記材料供給面の異なる領域に配置されていることを特徴とする請求項10記載の薄膜形成方法である。
【0029】
これにより、2種類以上の薄膜の蒸着を、同時に行える。すなわち、2種類以上の膜材料のパターンを材料供給面上にそれぞれ形成しておけば、複雑なフォトリソグラフィ工程を経ることなく、被蒸着基板の薄膜形成面上に複数種類の薄膜パターンを一気に形成することができる。また、たとえば第1の膜材料を供給基板の第1の領域に配置し、第2の膜材料を供給基板の材料供給面の第2の領域に配置しておいて、第1および第2の領域の温度を個別に制御できるようにしておいてもよい。これによって、第1および第2の膜材料のいずれか一方または両方を選択して被蒸着基板に蒸着させることができる。
【0030】
供給基板の材料供給面に膜材料を配置するための凹部が形成される場合には、凹部内の膜材料の減少に応じて、この膜材料と被蒸着基板との距離を調整して蒸着効率を調整するために、厚みが可変な変形層(たとえばフッ素樹脂からなる弾性変形層)を被蒸着基板と供給基板との間に介在させてもよい。また、供給基板に凹部が形成される場合には、この凹部の深さを調整できるようにしておいてもよい。具体的には、ピエゾ素子等を用いたマイクロマシーンからなる可動機構を設け、凹部の深さを調整可能としてもよい。
【0031】
請求項13記載の発明は、前記被蒸着基板の前記薄膜形成面とは反対側の表面から、当該被蒸着基板を透過する光によって、前記被蒸着基板に蒸着した薄膜を照射する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の薄膜形成方法である。
この方法により、たとえば、被蒸着基板上に蒸着された薄膜に対して光重合反応を起こさせるための光を供給することができる。これにより、蒸着膜を高分子化して、その耐久性を高めることができる。光によって薄膜を照射する工程を蒸着工程と並行して行えば、蒸着と同時に光重合の反応を進行させることができる。むろん、蒸着工程の後に光重合反応のための照射工程を行ってもよい。
【0032】
請求項14記載の発明は、前記蒸着工程が、前記被蒸着基板を前記薄膜形成面を上方に向けた水平姿勢とし、前記供給基板を前記材料供給面を下方に向けた水平姿勢として行われることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の薄膜形成方法である。
この方法では、被蒸着基板は薄膜形成面を上方に向けた水平姿勢で蒸着処理を受けることができる。これにより、被蒸着基板を、その薄膜形成面を下方に向けるための反転処理を行う必要がないので、被蒸着基板の搬送工程が簡単になる。
【0033】
請求項15記載の発明は、前記蒸着工程が、前記被蒸着基板を前記薄膜形成面を下方に向けた水平姿勢とし、前記供給基板を前記材料供給面を上方に向けた水平姿勢として行われることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の薄膜形成方法である。
この方法では、供給基板が、材料供給面を上方に向けた水平姿勢とされるので、たとえば薄膜材料を液体の状態で供給基板上に供給することができる。より具体的には、たとえば有機物材料を有機溶剤に溶解させた状態で、材料供給面上(たとえば材料供給面に形成された凹部内)に供給(たとえば、滴下)するようにして、膜材料を材料供給面に供給できる。
【0034】
請求項16記載の発明は、被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板であって、前記被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで前記膜材料が配置されており、前記材料供給面に配置された断熱層を含むことを特徴とする蒸着源基板である。この蒸着源基板は、前述の薄膜形成方法における供給基板として用いることができる。
【0035】
請求項17記載の発明は、前記材料供給面には、前記薄膜パターンに対応するパターンの凹部が形成されており、この凹部内に前記膜材料が配置されていることを特徴とする請求項16記載の蒸着源基板である。この蒸着源基板を被蒸着基板に近接対向配置させて用いることで、被蒸着基板の薄膜形成面上に局所的閉空間を形成し、この空間内で蒸着を効率的に進行させることができる。
【0036】
請求項18記載の発明は、被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源を構成すべき蒸着源基板であって、前記被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記膜材料が配置可能な凹部が形成されており、この凹部が、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンに形成されており、前記材料供給面に配置された断熱層を含むことを特徴とする蒸着源基板である。前記凹部内に膜材料を配置することにより、請求項17記載の蒸着源基板が得られる。
【0037】
請求項16~18記載の発明は、前記材料供給面に配置された断熱層を含むので、蒸着源基板から被蒸着基板への伝熱を抑制できるから、蒸着源基板と被蒸着基板との間に温度勾配を確保しやすく、被蒸着基板の薄膜形成面上に効率的に薄膜を成長させることができる。
【0038】
請求項19記載の発明は、前記材料供給面に配置された弾性変形層をさらに含むことを特徴とする請求項16ないし18のいずれかに記載の蒸着源基板である。この構成により、材料供給面と被蒸着基板の薄膜形成面との間に良好な密閉空間を形成することができ、効率的な蒸着処理が可能となる。
請求項20記載の発明は、被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板であって、前記被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで前記膜材料が配置されており、前記材料供給面に配置された弾性変形層を含むことを特徴とする蒸着源基板である。
請求項21記載の発明は、前記材料供給面には、前記薄膜パターンに対応するパターンの凹部が形成されており、この凹部内に前記膜材料が配置されていることを特徴とする請求項20記載の蒸着源基板である。
請求項22記載の発明は、被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源を構成すべき蒸着源基板であって、前記被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記膜材料が配置可能な凹部が形成されており、この凹部が、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンに形成されており、前記材料供給面に配置された弾性変形層を含むことを特徴とする蒸着源基板である。
請求項23記載の発明は、前記膜材料を加熱して蒸発させるための加熱手段が内蔵されていることを特徴とする請求項16ないし22のいずれかに記載の蒸着源基板である。この構成によれば、前記加熱手段によって膜材料を加熱して気化させることができ、別途の加熱手段を要することなく蒸着工程を行うことができる。
【0039】
請求項24記載の発明は、誘導加熱可能な材料で構成されていることを特徴とする請求項16ないし22のいずれかに記載の蒸着源基板である。この構成によれば、誘導加熱源に蒸着源基板を近接配置することによって膜材料を加熱して気化させることができる。すなわち、たとえば、非接触で蒸着源基板を加熱することも可能となる。
請求項25記載の発明は、所定の波長の光に対して透明な材料で構成されていることを特徴とする請求項16ないし24のいずれかに記載の蒸着源基板である。この構成によれば、たとえば、蒸着源基板の材料供給面の全面に膜材料を形成した後に、蒸着源基板の前記材料供給面とは反対側の表面から前記所定の波長の光によって膜材料を露光することによって、この膜材料を変質させることができる。たとえば、前記反対側の表面に所定のパターンの遮光性マスクを形成しておけば、前記膜材料を選択的に露光してパターニングしたりすることができる。
【0041】
請求項26記載の発明は、被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板を製造するための方法であって、被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで凹部を形成する工程と、前記凹部内に前記膜材料を配置する工程とを含み、前記膜材料を配置する工程は、前記凹部内に前記膜材料を所定の溶媒に溶解させた溶液を供給する工程を含むことを特徴とする蒸着源基板の製造方法である。これにより、所定パターンの凹部内に膜材料が配置された状態の蒸着源基板が得られる。
【0042】
また、この発明では、前記凹部内に前記膜材料を所定の溶媒に溶解させた溶液を供給(たとえば、滴下)することにより、凹部内に容易に膜材料を配置することができる。前記溶媒は、有機溶媒であることが好ましい。これにより、凹部内に溶液を供給した後は、溶媒が揮発することにより、凹部内には膜材料のみが残されることになる。
【0043】
請求項27記載の発明は、被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板を製造するための方法であって、被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで凹部を形成する工程と、前記凹部内に前記膜材料を配置する工程とを含み、前記膜材料を配置する工程は、前記凹部に入り込むことができる大きさの粒状の膜材料を前記凹部内に配置する工程を含むことを特徴とする蒸着源基板の製造方法である。この方法により、極めて容易に、膜材料を凹部内に配置できる。具体的には、たとえば、材料供給面の全面に粒状の膜材料を供給した後、凹部外の粒状膜材料を振り落とせば、凹部内にのみ膜材料が残ることになる。
【0044】
請求項28記載の発明は、前記膜材料を配置する工程は、前記材料供給面の凹部外の領域をマスク部材で覆う工程と、前記材料供給面全体に前記膜材料を供給する工程と、前記マスク部材を除去する工程とを含むことを特徴とする請求項26または7記載の蒸着源基板の製造方法である。この方法により、容易に凹部内にのみ膜材料を配置できる。
請求項29記載の発明は、被蒸着基板の薄膜形成面に所定の膜材料を気体分子として供給するための蒸着源となる蒸着源基板を製造するための方法であって、被蒸着基板の薄膜形成面に対向させられるべき材料供給面に、前記被蒸着基板の薄膜形成面に形成すべき薄膜パターンに対応するパターンで凹部を形成する工程と、前記凹部内に前記膜材料を配置する工程とを含み、前記膜材料を配置する工程は、前記材料供給面の凹部外の領域をマスク部材で覆う工程と、前記材料供給面全体に前記膜材料を供給する工程と、前記マスク部材を除去する工程とを含むことを特徴とする蒸着源基板の製造方法である。
【0045】
前記した各発明については、さらに以下のような形態での実施が可能である。
たとえば、供給基板の材料供給面とは反対側に、膜材料を供給するための供給口を形成しておいてもよい。これにより、材料供給面(たとえば材料供給面に形成された凹部内)への膜材料の供給が容易になる。
材料供給面上に一定のパターンで膜材料を供給するには、たとえば、供給基板の材料供給面の全面に蒸着や塗布等によって膜材料を形成した後、エッチングによって不要部分の膜材料を除去すればよい。
【0046】
また、材料供給面上における濡れ性を選択的に調整しておけば、溶液の状態で膜材料を材料供給面に形成すると、調整された濡れ性に応じた一定のパターンで、膜材料を材料供給面上に配置することができる。たとえば、材料供給面に凹部が形成される場合には、その凹部の内壁面の濡れ性を高めておけば、溶液の状態で膜材料を供給する場合に、凹部外の膜材料の付着を効果的に防止または抑制することができる。
【0047】
また、材料供給面の全面に膜材料を蒸着または塗布によって供給した後、凹部外の塗膜材料を物理的に除去するようにしてもよい。この場合、供給基板の凹部以外の表面には、フッ素系のコーティングを施しておくことが好ましい。これにより、凹部外の材料供給面から不要な膜材料を速やかに除去することができる。
さらに、材料供給面の全面に膜材料を堆積させた後、研磨処理によって、凹部外の不要な膜材料を除去するようにしてもよい。
【0048】
供給基板は、たとえば、長尺な帯状に形成されていて、これをロール状に巻回して収容しておくこともできる。すなわち、ロールから供給基板を引き出しながら、被蒸着基板に対する蒸着処理(成膜処理)を次々と実行していくことができる。
また、供給基板の材料供給面に複数枚の被蒸着基板に対する膜材料の供給が可能な量の膜材料が担持されている場合には、たとえば、複数枚の被蒸着基板を、電磁石装置等を備えた基板保持装置によって、1枚ずつ順に供給基板に近接対向配置すればよい。
【0049】
蒸着される膜材料は、上述のように、有機物材料(有機半導体材料)であってもよいし、供給基板や被蒸着基板よりも融点(昇華温度)が低いものである限り、金属材料などであってもよい。また、基板材料よりも融点の高い膜材料であっても、基板を融点の高い被覆膜で被覆した状態であれば、蒸着が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る薄膜形成方法を説明するための図解図である。この方法では、ガラス基板やシリコン基板等の被蒸着基板10の一方表面である薄膜形成面11に薄膜12のパターンが蒸着法によって形成される。薄膜12のパターンの形成にあたっては、薄膜形成面11に対向するように、被蒸着基板10とほぼ同等の大きさを有する供給基板20(蒸着源基板)が近接対向配置される。この供給基板20には、被蒸着基板10の薄膜形成面11に対向する材料供給面21に、薄膜12のパターンに対応したパターンの凹部22が穿設されている。この凹部22内には、薄膜12を構成すべき膜材料23が配置されている。
【0051】
図2は、薄膜12のパターンが形成された状態の被蒸着基板10の図解的な平面図である。この例では、被蒸着基板10の薄膜形成面11上の分散した複数の領域に薄膜12のパターンが形成されている。被蒸着基板10は、この実施形態では矩形に形成されていて、その四隅には、鉤形の位置合わせマーク13がそれぞれ形成されている。この位置合わせマーク13を参照しながら、供給基板20が、その材料供給面21を被蒸着基板10の薄膜形成面11に対向させた状態で、被蒸着基板10に対して近接配置されることになる。
【0052】
供給基板20に形成されている凹部22は、被蒸着基板10の薄膜形成面11に形成すべき薄膜12のパターンの鏡像パターンに形成されている。被蒸着基板10および供給基板20を近接配置した状態で、供給基板20の凹部22内の膜材料23を加熱すると、この膜材料が蒸発して気体分子となり、被蒸着基板10の薄膜形成面11へと導かれる。これによって、凹部22内の膜材料が薄膜形成面11に転写されて、図2に示すような薄膜12のパターンが得られることになる。
【0053】
図3は、凹部22の近傍の構成を拡大して示す図解図であり、薄膜12の蒸着時の様子を模式的に示している。被蒸着基板10の薄膜形成面11と、供給基板20の材料供給面21とは、凹部22内の膜材料23と薄膜形成面11上に形成される薄膜12との間に間隙が形成される状態で、近接対向配置(薄膜形成面11と材料供給面21とが接触する場合を含む)される。これにより、凹部22の内壁面と、被蒸着基板10の薄膜形成面11とによって、ほぼ密閉された空間(局所的閉空間)15が形成されることになる。
【0054】
この状態で、凹部22内の膜材料23を加熱すると、膜材料23の気体分子16が局所的閉空間15内に解き放たれ、被蒸着基板10の薄膜形成面11において、凝集と離脱を繰り返しながら、薄膜形成面11に堆積されていく。
局所的閉空間15は極めて制限された空間であるため、蒸気圧pが平衡蒸気圧peを上回り、過飽和度σ(=p-pe)が高い状態となる。これにより、被蒸着基板10の薄膜形成面11において、気相からの結晶成長が効率的に進行する。こうして、膜材料23として、例えば有機物を用いる場合に、π共役系分子の結晶成長を促すことができ、良好な結晶性の有機物薄膜を薄膜形成面11に形成することができる。
【0055】
図4に膜材料の気体分子の凝集および離脱の様子を図解的に示す。図4(a)は過飽和度σが比較的低い場合の様子を示し、図4(b)は過飽和度σが比較的高い場合の様子を示す。
局所的閉空間15(図3参照)内は過飽和度σが高い状態となるため、被蒸着基板10および供給基板20を高真空下に置く必要がない。
【0056】
たとえば、常温(T=300K)における窒素ガスの平均自由行程λは、窒素分子直径を3.7×10-10mとすれば、次式により与えられる。この関係を図5に示す。
λ(cm)=0.68/p(Pa)
したがって、平均自由行程λは、大気圧(760Torr)では、0.1μm以下となり、10-6Torr程度の圧力では50mとなる。よって、凹部22の深さをμm~mmのオーダとしておけば、1~10Pa程度の低真空下での成膜が可能である。すなわち、このような低真空雰囲気中において、局所的閉空間15内では、膜材料23が基板10の薄膜形成面11に容易に到達して、この薄膜形成面11上に薄膜を形成することになる。
【0057】
より正確には、圧力p(Pa)を、温度T(K)、分子半径2r、ボルツマン定数kとして、気体分子の平均自由行程λは、次式で与えられる。
【0058】
【数1】
JP0004716277B2_000002t.gif

【0059】
供給基板20の温度を200℃(473K)とし、膜材料23としてP3T(フェニル終端チオフェン3量体:分子長2nm。P型半導体)を用いるとすれば、この膜材料23の気体分子の平均自由行程λは、次式で与えられる。この関係を図6に示す。
λ(μm)=95.75/p(Pa)
よって、1Pa程度の低真空度のとき、分子の平均自由行程λは、約100μmであり、大気圧(105Pa)のときの平均自由行程λは約4μmとなる。
【0060】
凹部22内の空間は局所的閉空間15を形成していて、過飽和度σが高くなっているため、薄膜形成面11における分子の凝集が効率的に進行するので、材料気体分子の平均自由行程λの100倍程度の距離であれば、気体分子は十分に移動可能である。そこで、凹部22の深さをμm~mmのオーダとしておけば、1Pa程度の低真空度の雰囲気中から大気圧雰囲気中での薄膜12の形成が可能であると考えられる。
【0061】
1.0Pa程度の低真空度は、比較的安価なロータリポンプによって達成することができ、高価なターボ分子ポンプ等を要しない。よって、安価な真空設備で良好な薄膜を形成することができる。
一方、圧力p(Pa)、温度T(K)のときに、1秒間に単位面積に対して気体分子(分子量M)が入射する頻度F(1/m2秒)は、次式で与えられる。
【0062】
【数2】
JP0004716277B2_000003t.gif

【0063】
たとえば、ロータリポンプで達成することができる真空度である1.0Pa圧力雰囲気中において、温度が250℃(523K)、であり、薄膜材料としてP3T(分子量M=400.578)を用いる場合には、1秒間に単位面積に薄膜材料の気体分子が入射する頻度Fは、次式の通りとなる。
F=1.24×1019(分子/m2秒)
固体表面の原子密度は、1×1019(原子/m2)程度である。したがって、固体表面に入射したすべての分子が表面吸着すると仮定すれば、この固体表面は約1秒で覆われることになる。大気圧(105Pa)での成膜をすると仮定すれば、固体表面は約1μ秒で覆われることになる。
【0064】
図7は、被蒸着基板10の薄膜形成面11への薄膜形成のより具体的な方法を工程順に示す図解図である。まず、供給基板20が作製される(図7(a))。すなわち、たとえばシリコン基板からなる供給基板20の材料供給面21に、ウエットエッチングまたはドライエッチングによって凹部22のパターンが形成される。この凹部22が形成された供給基板20の材料供給面21に対して、蒸着法によって膜材料23が付着させられる。より具体的には、たとえば、膜材料として、有機膜材料であるP3Tを用い、このP3T分子を蒸着るつぼ17から蒸発させて、材料供給面21の全面に付着させる。P3T薄膜の膜厚は、たとえば40nmとされ、蒸着速度は、たとえば0.5nm/分とされる。
【0065】
この後、図7(b)に示すように、凹部22外の材料供給面21に付着している不要な膜材料23が、物理的に除去される。この不要な膜材料23の除去は、たとえば半乾きのアセトン付ティッシュペーパKWで材料供給面21を拭うようにして行われてもよい。これにより、凹部22内にのみ膜材料23が配置され、凹部22外の材料供給面21には膜材料23が存在しない状態となる。
【0066】
次に、図7(c)に示すように、加熱手段としての加熱ヒータ18上に、たとえばシリコン基板からなる被蒸着基板10が薄膜形成面11を上向きにして載置される。さらに、この薄膜形成面11上に、供給基板20が、材料供給面21を薄膜形成面11に対向させて載置される。すなわち、被蒸着基板10は薄膜形成面11を上向きとした姿勢で加熱ヒータ18の加熱面19上に載置され、供給基板20は材料供給面21を下向きとした姿勢で薄膜形成面11上に載置されて、薄膜形成面11と材料供給面とは互いに当接する。
【0067】
この状態で、加熱ヒータ18は、たとえば加熱面19が160℃以上となるように通電制御される。これによって、供給基板20の凹部22内に形成される局所的閉空間15内では、膜材料23であるP3Tが加熱されてその気体分子が生じ、薄膜形成面11において、凹部22に対向する各領域に付着していくことになる(近接蒸着工程)。こうして、凹部22内の膜材料23を薄膜形成面11に転写し、この薄膜形成面11上で薄膜12のパターンを形成することができる。
【0068】
図7(c)に示した構成では、蒸着による薄膜形成の進行速度を監視するために、加熱ヒータ18の加熱面19上に、比較用の別の供給基板20R(供給基板20と同等のもの)が材料供給面21を上向きにして載置されている。そして、材料供給面21の上方には、膜厚モニタとしての水晶振動子モニタ25が配置されている。この水晶振動子モニタ25の出力に基づいて、成膜速度および膜厚をモニタしながら加熱ヒータ18の通電制御を行うことによって、薄膜形成面11において所望の成膜速度で所望の膜厚のP3T薄膜を成長させることができる。たとえば、成膜速度は0.5nm/分とし、膜厚は25nmとする。
【0069】
その後は、図7(d)に示すように、被蒸着基板10の薄膜形成面11から、供給基板20が取り除かれる。こうして、P3Tからなる薄膜12のパターンが形成された被蒸着基板10を得ることができる。
図8は、上述のようなP3T薄膜を半導体活性層として用いた電界効果型トランジスタ(FET)の構造を図解的に示す断面図である。この図8に示すFETでは、被蒸着基板10として、ゲートとして機能するシリコン基板26の表面にゲート絶縁膜としての酸化シリコン膜27を形成したものを用いている。この被蒸着基板10の薄膜形成面11(すなわち、酸化シリコン膜27の表面)に、P3Tからなる薄膜12が形成されている。この薄膜12に接触するように、所定のチャネル長Lをあけて、ソース・ドレインとしての一対の電極28,29が形成されている。電極28,29の材料は、たとえば金である。
【0070】
図9に、図8に示すFETの特性の測定結果の一例を示す。ただし、チャネル長Lを30~50μmとし、チャネル幅を2mmとした場合の特性である。この図9には、ドレイン電圧(電極28,29間の印加電圧)に対するドレイン電流(電極28,29間に流れる電流)の特性が、様々なゲート電圧Vg(シリコン基板26への印加電圧)に対して表わされている。飽和領域におけるしきい値電圧VTは-38.9Vであり、飽和移動度μsat=4.73×10-4cm2/V秒であり、オン/オフ比は500であった。
【0071】
図9から理解されるように、電極28,29をソース電極およびドレイン電極とし、シリコン基板26をゲートとした図8の構造のFETでは、良好なFET特性が観測されている。
比較のために、同様な構造のFETを通常の真空蒸着法によって形成した場合の特性を図10に示す。飽和領域におけるしきい値電圧VTは-14.1Vであり、飽和移動度μsat=6.84×10-3/V秒であり、オン/オフ比は2.1×103であった。
【0072】
図11は、薄膜形成のための他の具体的な工程を示す図解的な断面図である。材料供給面21に所望の薄膜形成パターンに対応した凹部22のパターンが形成された供給基板20が予め作製される。この供給基板20の凹部22内に、マイクロシリンジを用いて、P3T溶液35が滴下される。P3T溶液35は、たとえば、溶媒としてのアセトン中にP3Tを溶解させたものであって、たとえばその濃度が約0.06wt%とされる。この場合、1滴の滴下量が約5μlであるとすれば、1滴あたりのP3Tは、3ng(ナノグラム)となる。
【0073】
図11(a)の例では、凹部22Aには1滴のP3T溶液35が滴下され、凹部22Bには3滴のP3T溶液35が滴下されている。ただし、供給基板20の材料供給面21に複数の凹部22が形成されている場合に、必ずしも、それらの凹部22に対する滴下量を異ならせる必要はない。もっとも、複数の凹部22は必ずしも等しい大きさに形成されるわけではないから、各凹部22の大きさに応じて滴下量が定められるべきである。
【0074】
P3T溶液35の溶媒であるアセトンは、有機溶媒であって、揮発性を有しているため、凹部22に滴下された後、速やかに揮発する。これにより、凹部22内には、P3Tのみが膜材料23として残されることになる。
その後、図11(b)に示すように、加熱ヒータ18の加熱面19上に供給基板20が載置される。このとき、供給基板20は、その材料供給面21を上向きとした姿勢とされる。この供給基板20の材料供給面21上に、被蒸着基板10が薄膜形成面11を下向きとした姿勢で載置されることになる。このように加熱面19側に供給基板20を配置することで、被蒸着基板10の温度を供給基板20よりも低くすることができるから、被蒸着基板10への薄膜形成効率を高めることができる。
【0075】
図11(b)の例では、成膜速度および膜厚を監視するために、比較用の別の供給基板20R(供給基板20と同等のもの)が加熱ヒータ18上に載置されている。この供給基板20Rに形成されている凹部22には、供給基板20と同様に膜材料23が配置されている。そして、その上方には、膜厚モニタとしての水晶振動子モニタ25が配置されている。この水晶振動子モニタ25の出力を監視することによって、蒸着速度、すなわち成膜速度を監視でき、かつ、成膜された膜厚を求めることができる。
【0076】
加熱ヒータ18は、たとえば加熱面19の温度を熱電対34によって監視しつつ、この加熱面19が145℃~190℃となるように通電制御される。これによって、供給基板20が加熱されるから、凹部22に配置された膜材料23の蒸発が始まり、凹部22によって区画された局所的閉空間内に充満する。こうして、凹部22内の膜材料23の気体分子が、凹部22に対応する薄膜形成面11上の領域に輸送される(近接蒸着工程)。その結果、薄膜形成面11には、凹部22のパターンに対応した薄膜12のパターンが形成される。
【0077】
蒸着速度は、たとえば、蒸着初期には1.0nm/分程度となり、蒸着後期には0.1/分程度となる。薄膜12の膜厚は、たとえば7nm程度とされる。
薄膜12の形成後は、図11(c)に示すように、被蒸着基板10と供給基板20とが引き離され、薄膜形成面11に薄膜12のパターンが形成された被蒸着基板10を得ることができる。
【0078】
従来の蒸着法の場合には、たとえば、るつぼの温度を約230℃としたときに、約15cmの距離に配置した基板上に薄膜の形成を開始させることができる。これに対して、図11に示す工程の場合には、加熱面19の温度を約145℃とすれば、供給基板20上の膜材料23から約1mmの距離にある薄膜形成面11への成膜が始まる。
図12および図13は、図11の工程に従って形成されたP3T薄膜を半導体活性層としたFETの特性を示す図である。図12は、P3T溶液の滴下量を約5μl(1滴)として形成したP3T薄膜の場合のFET特性を示し、図13は、P3T溶液の滴下量を50μl(10滴)とした場合のP3T薄膜を用いたFET特性を示している。図12(a)および図13(a)は、それぞれ、ドレイン電圧に対するドレイン電流の特性を示し、ゲート電圧Vgを-50V、-40V、-30V、-20V、-10V、0Vに設定したときの特性が示されている。また、図12(b)および図13(b)は、それぞれゲート電圧Vgに対するドレイン電流の変化(ただし、縦軸はドレイン電流IDの平方根)を示している。
【0079】
いずれの場合も、良好なFET特性が得られており、しきい値電圧VTはそれぞれ-20.7V、-27.6V、飽和移動度μsatはそれぞれ5.02×10-4cm2/V秒、2.19×10-3cm2/V秒、オン/オフ比(ON/OFF ratio)はそれぞれ500、8.6×103となっていて、いずれも良好な値を示している。
図14は、薄膜形成工程のさらに他の具体例を説明するための図解的な断面図である。この例の場合も、図14(a)に示すように、供給基板20の凹部22内にP3T溶液35(たとえば、溶媒としてパラキシレンを用いた約0.5mg/gの濃度のもの)をマイクロシリンジで滴下することによって、P3Tからなる膜材料23が凹部22内に配置される。
【0080】
この状態の供給基板20が、図14(b)に示すように、加熱ヒータ18の加熱面19上に載置される。このとき、材料供給面21は上向きの状態とされる。この材料供給面21上に、断熱層および弾性変形層としてのフッ素樹脂スペーサ30が載置される。このフッ素樹脂スペーサ30は、たとえば、厚さ3mm程度の板状体であり、凹部22とほぼ同一パターンの開口31が形成されていて、この開口31が凹部22と整合させられる。
【0081】
さらに、フッ素樹脂スペーサ30上に被蒸着基板10(たとえばシリコン基板)が載置される。こうして、被蒸着基板10の薄膜形成面11と、供給基板20の材料供給面21との間にフッ素樹脂スペーサ30が介在された状態となり、被蒸着基板10および供給基板20は、フッ素樹脂スペーサ30の両面にそれぞれ当接することになる。
この状態で、加熱ヒータ18は、熱電対34によってモニタされる加熱面19の温度がたとえば250℃となるように通電制御される。
【0082】
加熱面19上には、供給基板20と同様に作製した比較用の供給基板20Rが載置され、その上方には、膜厚モニタとしての水晶振動子モニタ25が配置されている。この水晶振動子モニタ25の出力を監視しながら、凹部22内の膜材料を蒸発させ、被蒸着基板10の薄膜形成面11に導いて、蒸着させる処理が進行させられる(近接蒸着工程)。この工程は、たとえば、ロータリポンプによって0.7Pa程度に減圧された真空室中で行われてもよい。
【0083】
加熱面19を250℃に加熱したとき、フッ素樹脂スペーサ30の断熱効果によって、被蒸着基板10の温度はたとえば174℃となる。また、加熱ヒータ18の加熱面19を100℃に制御すると、被蒸着基板10の温度はたとえば70℃となり、加熱面19の温度が160℃のとき被蒸着基板10の温度はたとえば118℃となる。
このように、フッ素樹脂スペーサ30による断熱効果によって、供給基板20と被蒸着基板10との間に十分な温度勾配を形成することができる。その結果、より低温の被蒸着基板10の薄膜形成面11上に良好に膜材料分子が付着し、薄膜12の良好なパターンを薄膜形成面11に形成することができる。
【0084】
本件発明者は、図11の工程で形成した薄膜パターンと図14の工程で形成した薄膜パターンとを比較した。その結果、図11の工程の場合には、被蒸着基板10の薄膜形成面11に微結晶粒の状態の薄膜12が形成されていたのに対し、図14の工程の場合には、膜状のP3Tが薄膜形成面11に形成されているのが確認された。
フッ素樹脂スペーサ30は、その断熱性能によって、供給基板20と被蒸着基板10との間に十分な温度勾配を提供する機能を有するほか、その弾性変形性能によって、凹部22内の局所的閉空間の密閉性を向上する機能をも有している。すなわち、被蒸着基板10の自重により、および/または、必要に応じて、被蒸着基板10に対して下方に向かう外力を付加することにより、フッ素樹脂スペーサ30が弾性変形して、被蒸着基板10および供給基板20の両方に対して良好に密着する。これによって、凹部22内および当該フッ素樹脂スペーサの開口31によって区画された空間は、良好な密閉空間となる。その結果、この密閉空間から膜材料分子が逃げ出すことができないので、良好な結晶性を有する薄膜12が被蒸着基板10の薄膜形成面11に形成されることになる。
【0085】
薄膜12の形成後は、被蒸着基板10を、フッ素樹脂スペーサ30から引き離せばよい。
フッ素樹脂スペーサ30は、被蒸着基板10および供給基板20とは独立して設けられてもよいが、被蒸着基板10または供給基板20のいずれかの表面にたとえば接着によって予め固定されていてもよい。フッ素樹脂スペーサ30を供給基板20側に固定する場合には、図15に示すように、供給基板20の材料供給面21を平坦面とし、フッ素樹脂スペーサ30の開口31と、平坦な材料供給面21とによって膜材料を配置するための凹部22を形成するようにしてもよい。
【0086】
図16は、供給基板20の作製のための他の工程例を示す図解的な断面図である。この例では、供給基板20の材料には、フォトマスクのように紫外線を透過させる材料が適用される。この供給基板20の材料供給面21には、図16(a)に示すように、予めエッチングによって凹部22が所望のパターンに形成される。そして、材料供給面21とは反対側の表面24には、凹部22に対応する位置に、紫外線を遮光する遮光性マスク(たとえばクロムからなるもの)33がパターン形成される。
【0087】
この状態で、図16(b)に示すように、たとえば、蒸着、スピンコート法、ディップ法または印刷法によって、供給基板20の材料供給面21の全面に、たとえば有機物からなる膜材料23の膜が形成される。
次いで、図16(c)に示すように、表面24側から紫外線36を照射することにより、凹部22以外の部分の膜材料23が露光されて除去される。こうして、図16(d)に示すように、凹部22内にのみ膜材料23が配置された状態となる。
【0088】
この後は、図16(e)に示すように、供給基板20を被蒸着基板10の薄膜形成面11に近接配置し、膜材料23を加熱することにより、膜材料23を被蒸着基板10の薄膜形成面11上に蒸着して、薄膜12のパターンを形成することができる。
図17は、薄膜形成工程の応用例を示す図である。この例では、2種類の供給基板201,202が用いられている。すなわち、供給基板201を用いて第1のパターンの薄膜121を被蒸着基板10上に形成した後、もう1つの供給基板202を用いて別の第2のパターンの薄膜122が被蒸着基板10上に重ねて蒸着されている。こうして、複雑なフォトリソグラフィ工程を経ることなく、2種類のパターンの薄膜121,122を被蒸着基板10上に重ねて形成することができる。むろん、3種類以上の薄膜パターンの形成も同様にして行われる。
【0089】
供給基板201,202は、前述の供給基板20と同様な構成を有するものであり、図17において、供給基板20の各部に対応する部分には、同一の参照符号を付して示す。ただし、符号213は供給基板201,201の材料供給面21の四隅に設けられた位置合わせマークであり、被蒸着基板10の位置合わせマーク13(図2参照)との位置合わせのためのものである。
【0090】
供給基板201の材料供給面21には、薄膜121のパターンに対応した凹部22が形成されており、供給基板202の材料供給面21には、薄膜122のパターンに対応した凹部22が形成されている。そして、供給基板201の凹部22には、第1の膜材料231(たとえば有機物材料)が配置されており、供給基板202の凹部22には、別の第2の膜材料232(たとえば有機物材料)が配置されている。したがって、2種類の材料の薄膜121,122を被蒸着基板10上に形成することができる。
【0091】
図18は、供給基板の他の例を示す図解的な断面図である。この供給基板203は、第1の膜材料233が配置された第1の凹部221と、別の第2の膜材料234が配置された第2の凹部222とを有している。この供給基板203を被蒸着基板10の薄膜形成面11に近接対向させて近接蒸着処理を行うことにより、2種類の膜材料の薄膜123,124の各パターンを同時に薄膜形成面11に形成することができる。
【0092】
図19は、被蒸着基板の薄膜形成面への薄膜形成のための他の工程を説明するための図解的な断面図である。この例では、被蒸着基板10および供給基板20を近接させて凹部22から膜材料23を薄膜形成面11に蒸着させるとともに、被蒸着基板10の背後(薄膜形成面11とは反対側)から光重合用の光40(たとえば紫外線)が照射される。これにより、たとえば有機物からなる膜材料23を被蒸着基板10の薄膜形成面11に蒸着するとともに、同時にその光重合処理を行うことができる。
【0093】
ただし、この場合には、被蒸着基板10は、光重合用の光40に対して透明なものである必要がある。
図20は、供給基板20の他の例を説明するための図解的な断面図である。この供給基板20には、凹部22に対応する位置に加熱手段としてのヒータ42が内蔵されている。したがって、供給基板20を被蒸着基板10に近接配置するとともに、ヒータ42に対して通電を行うことによって、凹部22内の膜材料23を薄膜形成面11に蒸着して転写することができる。たとえば、複数の凹部22に対して個別に駆動可能なヒータ42をそれぞれ配置しておけば、薄膜形成面11に形成される薄膜12のパターンを制御することができる。
【0094】
むろん、ヒータ42は、凹部22付近だけでなく、供給基板20全体を加熱するようにこの供給基板20内に設けられていてもよい。
図21は、供給基板20の凹部22に対する膜材料23の供給方法の一例を示す図解図である。まず、図21(a)に示すように、凹部22に対応した開口44を有するマスク部材45が材料供給面21に載置される。この状態で、図21(b)に示すように、マスク部材45上に膜材料23(たとえば流動性のもの)が供給される。その後、図21(c)に示すように、マスク部材45を除去すれば、凹部22内に選択的に膜材料23を配置することができる。
【0095】
図22は、供給基板20の凹部22に対する膜材料23の供給方法の他の例を示す図解図である。この例では、粒状の膜材料235が用いられる。粒状膜材料235は、凹部22に入り込むことができるサイズを有していて、供給基板の材料供給面21上に供給した後に(図22(a)参照)、凹部22外の材料供給面21上にあるものは、供給基板20外に掃き出されるか、または振り落とされる(図22(b)参照)。これによって、容易に凹部22内に粒状膜材料235を選択的に配置することができる。
【0096】
むろん、図21に示す工程のように、マスク部材を用い、その上から、粒状膜材料235を供給し、その後にマスク部材を取り除くようにしても、凹部22内への粒状膜材料235の選択的配置が可能である。
粒状膜材料235は、有機材料を粒状に形成したものであってもよいし、有機材料を有機溶剤に溶解させた溶液をカプセル中に収容して形成されたものであってもよい。
【0097】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、図23に示すように、供給基板20の平坦な材料供給面21のほぼ全面に膜材料23を配置するとともに、被蒸着基板10の薄膜形成面11には、所望のパターンに対応した開口31を有するフッ素樹脂スペーサ30を固定しておき、フッ素樹脂スペーサ30と供給基板20とを密接させた状態で近接蒸着処理を行ってもよい。この場合、フッ素樹脂スペーサ30の開口31を介する蒸着によって、所望のパターンの薄膜12を薄膜形成面11に形成できる。その後は、フッ素樹脂スペーサ30を薄膜形成面11から取り除けばよい。
【0098】
さらに、図24に示すように、供給基板20の材料供給面21を平坦面として、この平坦な材料供給面21に膜材料23を所望の薄膜パターンの鏡像パターンに形成しておいてもよい。この場合に、被蒸着基板10および供給基板20を近接させた状態で供給基板20を加熱すると、膜材料23の配置領域に対向する薄膜形成面11上の領域に膜材料23が輸送されて蒸着される。こうして、薄膜12の所望のパターンを薄膜形成面11上に形成することができる。
【0099】
また、図25に示すように、被蒸着基板10の薄膜形成面11とは反対側の表面9に、冷却装置50を配置してもよい。これにより、被蒸着基板10を供給基板20よりも確実に低温にすることができるので、薄膜12の形成効率を高めることができる。図25の例では、表面9の全面を冷却装置50で冷却するようにしているが、たとえば、薄膜12を形成すべき領域を選択的に冷却するようにしてもよい。これにより、冷却されている領域における薄膜形成効率が高まるので、さらに良好な薄膜パターンの形成が可能になる。
【0100】
冷却装置50としては、ペルチエ素子や、冷媒(冷却水等)を用いた熱交換装置を例示することができる。
また、低真空中に限らず、大気中での成膜も可能である。たとえば、大気中、N2ガス下で、有機材料の蒸着が可能である。具体的には、有機材料としてP3Tを用い、滴下量30μl、蒸着時間2分として実験したところ、高配向P3T薄膜パターンを成膜できた。
【0101】
また、供給基板に材料供給面に担持される膜材料は、単体のものである必要はなく、複数種類の材料の混合物であってもよい。これにより、予め所定の比率で混合した混合物(たとえば複数種類の有機物材料の混合物)を供給基板に担持させておけば、容易に所定の組成比の混合材料薄膜を被蒸着基板上に形成することができる。すなわち、従来の蒸着法によって同様な混合物を形成するには、真空装置内に複数のるつぼを配置して、混合すべき材料をそれぞれ蒸発させる共蒸着法によらなければならない。しかし、共蒸着法では、材料の混合比率の制御のためには、るつぼの加熱制御を厳密に行う必要があり、所望の比率の混合物を得ることが容易ではない。そこで、たとえば、複数種類の有機物材料を所定の比率で有機溶媒中に溶解しておき、これを供給基板の材料供給面に形成された凹部に滴下する。これにより、所望の比率の混合物を凹部内に配置した供給基板を準備できるから、これを用いて前述の近接蒸着工程を行えばよい。
【0102】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】この発明の一実施形態に係る薄膜形成方法を説明するための図解図である。
【図2】薄膜のパターンが形成された状態の被蒸着基板の図解的な平面図である。
【図3】供給基板の凹部の近傍の構成を拡大して示す図解図である。
【図4】膜材料の気体分子の凝集および離脱の様子を示す図解図である。
【図5】窒素ガスの平均自由工程と圧力との関係を示す図である。
【図6】膜材料の気体分子の平均自由行程と圧力との関係を示す図である。
【図7】被蒸着基板の薄膜形成面への薄膜形成のより具体的な方法を工程順に示す図解図である。
【図8】P3T薄膜を半導体活性層として用いた電界効果型トランジスタ(FET)の構造を図解的に示す断面図である。
【図9】図8に示すFETの特性の測定結果の一例を示す図である。
【図10】同様な構造のFETを通常の真空蒸着法によって形成した場合の特性を示す図である。
【図11】薄膜形成のための他の具体的な工程を示す図解的な断面図である。
【図12】図11の工程に従って形成されたP3T薄膜を半導体活性層としたFETの特性を示す図である。
【図13】同じく、図11の工程に従って形成されたP3T薄膜を半導体活性層としたFETの特性を示す図である。
【図14】薄膜形成工程のさらに他の具体例を説明するための図解的な断面図である。
【図15】供給基板の平坦な表面にフッ素樹脂スペーサを配置して膜材料配置用の凹部を形成した構成例を示す図解図である。
【図16】供給基板の作製のための工程例を示す図解的な断面図である。
【図17】薄膜形成工程の応用例を示す図である。
【図18】供給基板の他の例を示す図解的な断面図である。
【図19】被蒸着基板の薄膜形成面への薄膜形成のための他の工程を説明するための図解的な断面図である。
【図20】供給基板の他の例を説明するための図解的な断面図である。
【図21】供給基板の凹部に対する膜材料の供給方法の一例を示す図解図である。
【図22】供給基板の凹部に対する膜材料の供給方法の他の例を示す図解図である。
【図23】材料供給面に全面に配置した膜材料からの蒸着によって被蒸着基板に薄膜パターンを形成する工程を示す図解図である。
【図24】平坦な材料供給面にパターン配置した膜材料からの蒸着によって被蒸着基板に薄膜パターンを形成する工程を示す図解図である。
【図25】被蒸着基板を冷却しながら近接蒸着を行う工程を示す図解図である。
【図26】通常の真空蒸着法による薄膜の形成のための構成を示す図解図である。
【符号の説明】
【0104】
10 被蒸着基板
11 薄膜形成面
12 薄膜
13 位置合わせマーク
15 局所的閉空間
16 気体分子
17 蒸着るつぼ
18 加熱ヒータ
19 加熱面
20 供給基板
20R 比較用の供給基板
21 材料供給面
22 凹部
22A 凹部
22B 凹部
23 膜材料
25 水晶振動子モニタ
26 シリコン基板
27 酸化シリコン膜
28,29 電極
30 フッ素樹脂スペーサ
31 開口
33 遮光性マスク
34 熱電対
35 P3T溶液
36 紫外線
40 光重合用の光
42 ヒータ
44 開口
45 マスク部材
50 冷却装置
121 第1のパターンの薄膜
122 第2のパターンの薄膜
123,124 薄膜
201 供給基板
202 供給基板
203 供給基板
213 位置合わせマーク
221 第1の凹部
222 第2の凹部
231 第1の膜材料
232 第2の膜材料
233 第1の膜材料
234 第2の膜材料
235 粒状膜材料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25