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明細書 :新規チオフェン誘導体及びそれを用いたトランジスタ素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4614272号 (P4614272)
公開番号 特開2006-182730 (P2006-182730A)
登録日 平成22年10月29日(2010.10.29)
発行日 平成23年1月19日(2011.1.19)
公開日 平成18年7月13日(2006.7.13)
発明の名称または考案の名称 新規チオフェン誘導体及びそれを用いたトランジスタ素子
国際特許分類 C07D 333/08        (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
FI C07D 333/08
H01L 29/78 618B
H01L 29/28
請求項の数または発明の数 2
全頁数 13
出願番号 特願2004-380140 (P2004-380140)
出願日 平成16年12月28日(2004.12.28)
審査請求日 平成19年4月5日(2007.4.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
発明者または考案者 【氏名】安達 千波矢
【氏名】小山田 崇人
【氏名】檜山 爲次郎
【氏名】清水 正毅
【氏名】江尻 恵美子
【氏名】八尋 正幸
【氏名】秋山 誠治
個別代理人の代理人 【識別番号】100074206、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 文二
【識別番号】100084858、【弁理士】、【氏名又は名称】東尾 正博
【識別番号】100087538、【弁理士】、【氏名又は名称】鳥居 和久
審査官 【審査官】荒木 英則
参考文献・文献 特開平09-241356(JP,A)
特開平05-125360(JP,A)
DIMITRAKOPOULOS, C.D., et al.,Synth. Metals,89(3),pp.193-197 (1997)
調査した分野 C07D 333/00-333/80
H01L 29/00- 29/786
H01L 51/00-51/05
C08G 61/00-61/12
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)に示されるチオフェン誘導体。
【化1】
JP0004614272B2_000006t.gif
(式(1)中、Ar及びArは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を示し、上記Ar及びArは、それぞれ互いに同じであっても、異なってもよい。また、R及びRは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、及び置換基を有してもよいシリル基から選ばれる基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載のチオフェン誘導体を用いたトランジスタ素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、新規なチオフェン誘導体及びそれを用いたトランジスタ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体装置の典型例である有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機蛍光体からなる層中における電子及び正孔の再結合に伴う発光現象を利用したものである。この有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入層や輸送層として、チオフェン系の化合物を使用できることが、特許文献1等に記載されている。
【0003】

【特許文献1】特開2004-327454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有機半導体装置としては、上記有機エレクトロルミネッセンス以外に、有機蛍光体を使用したトランジスタ素子も知られている。このため、上記チオフェン系の化合物をトランジスタ素子の有機材料として用いることが考えられる。しかし、トランジスタ素子として使用するためには、キャリアの移動性能等が高いことが必要となる。
【0005】
そこで、この発明は、キャリア移動度のより高い新規なチオフェン誘導体及びこれを用いたトランジスタ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、下記式(1)に示されるチオフェン誘導体、及びこれを用いたトランジスタ素子を提供することにより、上記課題を解決したのである。
【0007】
【化2】
JP0004614272B2_000002t.gif

【0008】
(式(1)中、Ar及びArは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、上記Ar及びArは、それぞれ互いに同じであっても、異なってもよい。また、R及びRは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、及び置換基を有してもよいシリル基から選ばれる基を示す。)
【発明の効果】
【0009】
この発明によると、特定のチオフェン誘導体を用いるので、より高いキャリア移動度を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明は、下記式(1)に示されるチオフェン誘導体、及びこのチオフェン誘導体を用いたトランジスタ素子にかかる発明である。
【0011】
【化3】
JP0004614272B2_000003t.gif

【0012】
上記式(1)中、Ar及びArは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示す。また、上記Ar及びArは、それぞれ互いに同じであっても、異なってもよい。
【0013】
上記芳香族炭化水素基や芳香族複素環基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラニル基等があげられる。
【0014】
上記置換基としては、炭素数1~6の置換又は非置換アルキル基、低級アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、置換又は非置換アリール基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルシアノ基、アリールシアノ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、カルバルコキシ基、若しくはそれらのエステルやアミド、塩等、又はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン等があげられる。
【0015】
また、上記のR及びRは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、及び置換基を有してもよいシリル基から選ばれる基を示す。
【0016】
上記置換基としては、スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、カルバルコキシ基、エステル基、アミド基や、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン等があげられる。
【0017】
次に、上記式(1)に示されるチオフェン誘導体の製造方法について説明する。チオフェン誘導体として、式(1)において、R=RかつAr=Arの化合物を用い、下記反応式<1>~<2>にしたがって合成した。なお、R及びArは、上記と同様である。
【0018】
【化4】
JP0004614272B2_000004t.gif

【0019】
【化5】
JP0004614272B2_000005t.gif

【0020】
反応式<1>に示すように、2-置換チオフェンをトリブチルスズ化し、次いで、アリールアルデヒドと反応させて、2-置換チオフェンの5位にアリールアルデヒドを置換させた化合物を得る。
【0021】
次いで、反応式<2>に示すように、上記の2,5-ビス(ジエトキシホスホリルメチル)チオフェンと、2-置換チオフェンの5位にアリールアルデヒドを置換させた化合物とを、塩基を用いて、Wittig反応させることにより、式(1)にかかる化合物を製造することができる。
【0022】
上記のチオフェン誘導体を、電荷移動層の構成成分として使用することにより、トランジスタ素子が構成される。
【0023】
上記電荷移動層は、キャリア移動度をより向上させるために、上記チオフェン誘導体以外に、必要に応じて、他の有機蛍光体等の有機材料やドーパント材料等の副構成成分を併用してもよい。また、上記チオフェン誘導体以外に、必要に応じて、他の有機蛍光体やドーパント材料等の副構成成分をチオフェン誘導体層内に微量共蒸着した層を用いても良いし、電荷移動層内により多くのキャリアを注入するために、キャリア注入層などの機能分離した積層構造を導入しても良い。
【0024】
このような他の有機蛍光体等の有機材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、ペリレン、クリセン等の縮合環誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム等のキノリノール誘導体の金属錯体、ベンズオキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、ベンズチアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体等のビススチリル誘導体、キノリノール誘導体と異なる配位子を組み合わせた金属錯体、オキサジアゾール誘導体金属錯体、ベンズアゾール誘導体金属錯体、クマリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体等があげられる。さらに、ポリマー系の他の有機蛍光体等の有機材料の例としては、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、そして、ポリチオフェン誘導体などがあげられる。
【0025】
また、上記ドーパント材料は、特に限定されるものではなく、例えば、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンなどの縮合環誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体等のビススチリル誘導体、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2-メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2-トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフラン等のイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7-ジアルキルアミノクマリン誘導体、7-ピペリジノクマリン誘導体、7-ヒドロキシクマリン誘導体、7-メトキシクマリン誘導体、7-アセトキシクマリン誘導体、3-ベンズチアゾリルクマリン誘導体、3-ベンズイミダゾリルクマリン誘導体、3-ベンズオキサゾリルクマリン誘導体等のクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンズアンスラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、ビス(スチリル)ベンゼン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5-チアジアゾロピレン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、ジアザフラビン誘導体等があげられる。
【0026】
次に、上記チオフェン誘導体を用いたトランジスタ素子について説明する。
上記トランジスタ素子としては、図1に示すような電界効果型トランジスタ(FET)の基本構造を有する素子をあげることができる。
【0027】
このトランジスタ素子10は、キャリアとしての正孔及び電子を輸送可能であり、また、正孔及び電子の再結合により多少の発光を生じる、上記チオフェン系化合物を主構成成分とする電荷移動層1、この電荷移動層1に正孔を注入する正孔注入電極、いわゆるソース電極2、上記電荷移動層に電子を注入する電子注入電極、いわゆるドレイン電極3、及び上記ソース電極2及びドレイン電極3に対向し、上記電荷移動層1内のキャリアの分布を制御する、ヘビードープシリコン(図1中において、「N」と表記)基板で構成されたゲート電極4から構成される。なお、ゲート電極4は、シリコン基板の表層部に形成される不純物拡散層からなる導電層で構成してもよく、また、一般的な金属を用いてもよい。
【0028】
具体的には、図1に示すように、ゲート電極4の上に酸化シリコン等からなる絶縁膜5が設けられ、その上にソース電極2及びドレイン電極3が間隔を開けて設けられる。そして、このソース電極2及びドレイン電極3を覆い、かつ、両電極の間に入り込むように電荷移動層1が設けられる。
【0029】
上記の素子がトランジスタの機能を発揮するためには、上記電荷移動層1を構成する有機物、特に構成成分である上記チオフェン誘導体のキャリア移動度が所定の範囲を満たすことが好ましい。なお、上記のそれぞれの特徴を有する上記チオフェン系化合物を用いた場合、上記ドーパント等の副構成成分を加えることにより、それぞれの機能をより高くすることが可能となる。
【0030】
上記のキャリア移動度は、大きいほど半導体性が高まり好ましい。具体的には、1.0×10-5cm/V・s以上がよく、1.0×10-4cm/V・s以上がより好ましく、1.0×10-3cm/V・s以上がさらに好ましい。なお、キャリア移動度の上限は、特に限定されず、1cm/V・s程度であれば十分である。
【0031】
上記電荷移動層1は、構成する有機蛍光体等を蒸着(複数種あるときは、共蒸着)することにより形成される。この電荷移動層1の膜厚は、少なくとも50nm程度あればよい。なお、塗布法による製膜でもよいこともある。
【0032】
上記ソース電極2及びドレイン電極3は、正孔及び電子を上記電荷移動層1に注入するための電極で、金(Au)、マグネシウム-金合金(MgAu)等で形成される。両者間は、0.4~50μm等の微小間隔を開けて対向するように形成される。具体的には、例えば、図2に示すように、ソース電極2及びドレイン電極3が、それぞれ複数の櫛歯からなる櫛歯形状部2a,3aを有するように形成され、ソース電極2の櫛歯形状部2aを構成する櫛歯と、ドレイン電極3の櫛歯形状部3aを構成する櫛歯とを、所定間隔を開けて交互に配置することにより、トランジスタ素子10としての機能をより効率的に発揮させることができる。ソース電極2及びドレイン電極3は、同種の金属を用いても良いし、よりキャリア注入が容易なように、キャリア注入に有利な電極をそれぞれ用いても良い。
【0033】
このときのソース電極2及びドレイン電極3の間隔、すなわち、櫛歯形状部2a及び櫛歯形状部3aの間隔は、50μm以下がよく、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。50μmを超えると、電界強度不足により電子が注入され難くなる傾向がある。
【0034】
上記トランジスタ素子10は、上記ソース電極2及びドレイン電極3に電圧を印加することにより、その内部で正孔及び電子の両方を移動させ、電荷移動層1内で、両者を再結合させる。このとき、電荷移動層1を通って両電極間を移動する正孔及び電子の量は、ゲート電極4に印加される電圧に依存する。このため、ゲート電極4にかける電圧及びその変化を制御することにより、上記ソース電極2及びドレイン電極3の間の導通状態を制御することが可能となる。なお、このトランジスタ素子10は、P型駆動を行うので、ソース電極2に対しドレイン電極3に負の電圧が加えられ、また、ソース電極2に対してゲート電極4に負の電圧が加えられる。
【0035】
具体的には、ゲート電極4にソース電極2に対して負の電圧を印加することにより、電荷移動層1内の正孔がゲート電極4側に引き寄せられ、絶縁膜5の表面付近における正孔の密度が高い状態となる。ソース電極2及びドレイン電極3の間の電圧を適切にすると、ゲート電極4に与える制御電圧の大小によって、ソース電極2から電荷移動層1に正孔が注入され、ドレイン電極3から電荷移動層1に電子が注入される状態となる。すなわち、ソース電極2が正孔注入電極として機能し、ドレイン電極3は電子注入電極として機能する。これにより、電荷移動層1内において、正孔及び電子の再結合が生じる。そして、ゲート電極4に与えられる制御電圧を変化させることにより、オン/オフさせることが可能となる。
【0036】
上記のトランジスタ素子10は、電荷移動層1内において、正孔及び電子の再結合が生じる際に多少の発光が生じる。このため、この発光の程度、すなわち、発光輝度が高くなると、発光トランジスタとして使用することが期待できる。
【実施例】
【0037】
次に、この発明について、より具体的に実施例を用いて説明する。
(製造例1)[(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)フェニル-1-エチニル]チオフェンの製造]
上記式(1)にかかる化合物において、R=R=n-ヘキシル基、Ar=Ar=ベンゼン環の化合物である、(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)フェニル-1-エチニル]チオフェンを製造した。
【0038】
(4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ベンズアルデヒドの製造)
上記反応式<1>に記載の反応にしたがって、4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ベンズアルデヒドを製造した。
まず、アルゴン雰囲気下、2-ヘキシルチオフェン1.0ml(935mg,5.6mmol)をテトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液を-40℃に冷却し、この溶液にn-BuLiのヘキサン溶液(1.56M,3.8mL,5.9mmol)を滴下し、-40℃で1時間撹拌した後、反応液を0℃まで徐々に昇温させた。この反応溶液に塩化トリブチルスズをゆっくり滴下し、反応液を0℃から室温まで徐々に昇温させ、12時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に水および酢酸エチルで希釈した後、フロリジールを通した。ろ液は酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒を減圧下に留去した後、得られた粗生成物を減圧蒸留により精製し、5-ヘキシル-2-トリブチルスタニルチオフェン2.11g(4.60mmol,83%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・Pale yellow oil:235-240℃/2.5mmHg
・MS(EI):m/z 458(M+1).
H-NMR(CDCl,200MHz):0.90(t,J=7.2Hz,9H),1.07(t,J=7.6Hz,3H),1.24-1.44(m,16H),1.50-1.76(m,8H),2.86(t,J=7.6Hz,2H),6.90(d,J=3.0Hz,1H),6.99(d,J=3.0Hz,1H).
【0039】
次に、得られた5-ヘキシル-2-トリブチルスタニルチオフェン3.59g(7.84mmol)、4-ブロモベンズアルデヒド1.50g(8.10mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)470mg(5.2mol%)、および溶媒として乾燥トルエン32mlを、シュレンク管に順次加え、アルゴン雰囲気下、100℃で26時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで希釈した後、フロリジルを通し触媒を除去した。ろ液は酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、10%フッ化カリウム水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒を減圧下に留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)およびアルミナ(中性)カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=50/1)で分離精製し、目的の4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ベンズアルデヒド2.14g(7.85mmol,74%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・Pale yellow needles:
・FABMS(EI):m/z 273(M+1).
H-NMR(CDCl,200MHz):0.90(t,J=6.5Hz,3H),1.23-1.43(m,6H),1.58-1.78(m,2H),2.84(t,J=7.6Hz,2H),6.80(d,J=3.8Hz,1H),7.29(d,J=3.8Hz,1H),7.70(d,J=8.4Hz,2H),7.86(d,J=8.4Hz,2H),9.98(s,1H).
【0040】
(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)フェニル-1-エテニル]チオフェンの製造)
次に、上記反応式<2>に記載の反応にしたがって、(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)フェニル-1-エテニル]チオフェンを製造した。
[製造例1-1]
アルゴン雰囲気下、t-ブトキシカリウム209mg(1.86mmol)をテトラヒドロフラン15mLに溶解させた溶液を室温で撹拌した。この溶液に2,5-ビス(ジエトキシホスホリルメチル)チオフェン346mg(0.90mmol)および4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ベンズアルデヒド400mg(1.47mmol)をテトラヒドロフラン15mLに溶解させた溶液を室温で1時間かけてゆっくり滴下し、1時間撹拌した後、50℃で22時間加熱撹拌した。反応終了後、減圧下室温で溶媒を留去し、得られた褐色固体にメタノール10mLを加え、しばらく撹拌し、ろ過した。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄し、目的の(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)フェニル-1-エテニル]チオフェン393mg(0.63mmol,86%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・yellow solid
・FABMS(EI):m/z 620(M-1).
H-NMR(CDCl,400 MHz):0.90(t,J=6.4Hz,6H),1.45-1.80(m,12H),1.70(m,4H),2.82(t,J=7.6Hz,4H),6.75(d,J=3.4Hz,2H),6.89(d,J=16.0Hz,2H),6.96(s,2H),7.15(d,J=3.4Hz,2H),7.19(d,J=16.0Hz,2H),7.44(d,J=8.0Hz,4H),7.54(d,J=8.0Hz,4H).
【0041】
[製造例1-2]
アルゴン雰囲気下、n-BuLiのヘキサン溶液(1.60M,0.33mL,0.53mmol)をテトラヒドロフラン8mLに溶解させた溶液を-78℃で撹拌した。この溶液に2,5-ビス(ジエトキシホスホリルメチル)チオフェン116mg(0.26mmol)および4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ベンズアルデヒド142mg(0.52mmol)をテトラヒドロフラン7mLに溶解させた溶液を、-78℃で1時間かけてゆっくり滴下し、-78℃で1時間撹拌した後、反応液を0℃まで徐々に昇温させ、0℃で12時間撹拌した。反応終了後、減圧下室温で溶媒を留去し、得られた褐色固体にメタノール10mLを加え、しばらく撹拌し、ろ過した。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄し、目的の(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)フェニル-1-エテニル]チオフェン161mg(0.26mmol,52%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
【0042】
(製造例2)[(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ナフチル-2-エチニル]チオフェンの製造]
上記式(1)にかかる化合物において、R=R=n-ヘキシル基、Ar=Ar=ナフタレン環の化合物である、(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ナフチル-2-エチニル]チオフェンを製造した。
【0043】
アルゴン雰囲気下、2,6-ジブロモナフタレン(2.00g,7.0mmol)のテトラヒドロフラン(40ml)溶液を-78℃に冷却し、この溶液にn-BuLiのヘキサン溶液(1.60M,4.4mL,7.0mmol)を滴下し、-78℃で2時間撹拌した。この反応溶液にN,N-ジメチルホルムアミド(2.0mL,25mmol)をゆっくり滴下し、反応液を-78℃から室温まで徐々に昇温させ、12時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に水および酢酸エチルで希釈した。ろ液は酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒を減圧下に留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1)により精製し、6-ブロモナフタレン-2-カルボアルデヒド(1.18g,5.03mmol,72%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・Cholorless needles
・FAB-MS:m/z 235(M).
H-NMR(CDCl,200MHz):7.67(dd,J=1.9 and 8.6Hz,1H),7.86(d,J=8.6Hz,1H),7.88(d,J=8.6Hz,1H),7.99(dd,J=1.9 and 8.6Hz,1H),8.09(s,1H),8.32(s,1H),10.16(s,1H).
【0044】
シュレンク管に5-ヘキシル-2-トリブチルスタニルチオフェン(0.97g,2.13mmol)、6-ブロモナフタレン-2-カルボアルデヒド(0.5g,2.13mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh,123mg,5.0mol%)、および溶媒として乾燥トルエン(20ml)を順次加え、アルゴン雰囲気下、100℃で63時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで希釈した後、フロリジルを通し触媒を除去した。ろ液は酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、10%フッ化カリウム水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒を減圧下に留去した後、得られた粗生成物をアルミナ(中性)カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で分離精製し、目的の6-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ナフタレン-2-カルボアルデヒド(545mg,1.69mmol,80%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・Pale yellow needles
・FAB-MS:m/z 322(M).
H-NMR(CDCl,200MHz):0.91(t,J=6.5Hz,3H),1.26-1.50(m,6H),1.65-1.82(m,2H),2.86(t,J=7.5Hz,2H),6.82(d,J=3.7Hz,1H),7.33(d,J=3.7Hz,1H),7.76-8.00(m,4H),8.01(s,1H),8.28(s,1H),10.13(s,1H).
【0045】
アルゴン雰囲気下、t-ブトキシカリウム(222mg,1.98mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液を室温で撹拌した。この溶液に2,5-ビス(ジエトキシホスホリルメチル)チオフェン(320mg,0.83mmol)および6-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ナフタレン-2-カルバアルデヒド(502mg,1.55mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液を室温で1時間かけてゆっくり滴下し、12時間撹拌した後、50℃で48時間加熱撹拌した。反応終了後、減圧下室温で溶媒を留去し、得られた褐色固体にメタノール(10 mL)を加え、しばらく撹拌し、ろ過した。得られた粗生成物をメタノール、アセトン、ヘキサンで順次洗浄し、目的の(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)ナフチル-2-エテニル]チオフェン(378mg,0.52mmol,68%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・Pale brownish solid
・FAB-MS:m/z 720(M).
H-NMR(CDCl,400MHz):0.91(t,J=8.8Hz,6H),1.35-1.50(m,12H),1.67-1.78(m,4H),2.85(t,J=7.6Hz,4H),6.79(d,J=3.2Hz,2H),7.02(s,2H),7.08(d,J=16.0Hz,2H),7.23(m,2H),7.33(d,J=16.0Hz,2H),7.66-7.85(m,8H),7.79(s,2H),7.94(s,2H).
【0046】
(製造例3)[(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)アントリル-2-エチニル]チオフェンの製造]
上記式(1)にかかる化合物において、R=R=n-ヘキシル基、Ar=Ar=アントラセン環の化合物である、(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)フェニル-1-エチニル]チオフェンを製造した。
【0047】
アルゴン雰囲気下、9,10-ジブロモアントラセン(2.01g,6.0mmol)のテトラヒドロフラン(40ml)溶液を-78℃に冷却し、この溶液にn-BuLiのヘキサン溶液(1.60M,4.0mL,6.4mmol)を滴下し、-78℃で2時間撹拌した。この反応溶液にN,N-ジメチルホルムアミド(1.0mL,13mmol)をゆっくり滴下し、反応液を-78℃から室温まで徐々に昇温させ、12時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に水および酢酸エチルで希釈した。ろ液は酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒を減圧下に留去した後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1)により精製し、10-ブロモアントラセン-9-カルボアルデヒド(1.17g,4.09mmol,68%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・yellow needles
・FAB-MS:m/z 285(M).
H-NMR(CDCl,200MHz):7.62-7.76(m,4H),8.64-8.72(m,2H),8.86-8.94(m,2H),11.50(s,1H).
【0048】
シュレンク管に5-ヘキシル-2-トリブチルスタニルチオフェン(208mg,0.46mmol)、10-ブロモアントラセン-9-カルボアルデヒド(121mg,0.43mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (Pd(PPh,29mg,5.9mol%)、および溶媒として乾燥トルエン(10ml)を順次加え、アルゴン雰囲気下、100℃で42時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を酢酸エチルで希釈した後、フロリジルを通し触媒を除去した。ろ液は酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、10%フッ化カリウム水溶液、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒を減圧下に留去した後、得られた粗生成物をアルミナ(中性)カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=17/3)で分離精製し、目的の10-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)アントラセン-9-カルボアルデヒド(156mg,0.42mmol,80%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・yellow needles
・FAB-MS m/z372(M).
H-NMR(CDCl,200MHz):0.93(t,J=6.9Hz,3H),1.32-1.52(m,6H),1.73-1.89(m,2H),2.96(t,J=7.5Hz,2H),6.95-7.00(m,2H),7.44-7.53(m,2H),7.62-7.72(m,2H),8.01(d,J=8.8Hz,2H),8.95(d,J=8.8Hz,2H),11.57(s,1H).
【0049】
アルゴン雰囲気下、t-ブトキシカリウム(226mg,2.01mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液を室温で撹拌した。この溶液に2,5-ビス(ジエトキシホスホリルメチル)チオフェン(340mg,0.89mmol)および10-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)アントラセン-9-カルボアルデヒド(601mg,1.61mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液を室温で1時間かけてゆっくり滴下し、12時間撹拌した後、50℃で48時間加熱撹拌した。反応終了後、減圧下室温で溶媒を留去し、得られた褐色固体にメタノール(10mL)を加え、しばらく撹拌し、ろ過した。得られた粗生成物をメタノール、ヘキサンで順次洗浄し、目的の(E,E)-2,5-ビス[4-(5-ヘキシルチオフェン-2-イル)アントリル-2-エテニル]チオフェン(458mg,0.56mmol,63%)を得た。この化合物は、MassおよびH-NMRスペクトルにより上記化合物であることを確認した。
・Pale yellow solid
・FAB-MS:m/z 820(M).
H-NMR(CDCl,400MHz):0.94(t,J=6.8Hz,6H),1.35-1.41(m,8H),1.45-1.52(m,4H),1.78-1.86(m,4H),2.96(t,J=7.8Hz,4H),6.96-7.00(m,4H),7.12(d,J=3.6Hz,2H),7.14(d,J=16.0Hz,2H),7.43-7.48(m,4H),7.49-7.54(m,4H),7.89(d,J=16.0Hz,2H),7.97(d,J=8.8Hz,4H),8.44(d,J=8.8Hz,4H).
【0050】
(トランジスタ素子の製造)
次に、下記の条件の下、図1及び図2に示すトランジスタ素子を製造した。
・ソース電極2及びドレイン電極3は、それぞれ20本の櫛歯からなる櫛歯形状部を有する電極(Cr/Au、厚さ40nm)を形成し、図2に示すように、それぞれの櫛歯形状部が交互に配されるように、絶縁膜5の上に配置した。このとき、絶縁膜5と両電極との間に、接着層としてクロムからなる層(1nm)を設けた。また、このときのチャネル部(それぞれの櫛歯形状部間)の幅を10μm又は3μm、長さを4mmとした。
・絶縁膜5は、シリコン基板を熱酸化し緻密なシリコン酸化膜を300nm形成させた。
【0051】
・電荷移動層1は、上記の製造例1で得られたチオフェン誘導体を単独で、絶縁膜、ソース電極2及びドレイン電極3の周囲を覆うように蒸着することにより、電荷移動層1を形成した。
【0052】
得られた各素子について、キャリア移動度を測定した。その結果、チャンネル部の幅が10μmのときのキャリア移動度は4.7×10-3cm/V・sであり、5μmのときのキャリア移動度は3.8×10-3cm/V・sであった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明にかかるトランジスタ素子の例を示す断面図
【図2】ソース電極及びドレイン電極の構成を示す平面図
【符号の説明】
【0054】
1 電荷移動層
2 ソース電極
2a 櫛歯形状部
3 ドレイン電極
3a 櫛歯形状部
4 ゲート電極
5 絶縁膜
10 トランジスタ素子
図面
【図1】
0
【図2】
1