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明細書 :オリゴチオフェンを用いた光記憶媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4623515号 (P4623515)
公開番号 特開2006-293292 (P2006-293292A)
登録日 平成22年11月12日(2010.11.12)
発行日 平成23年2月2日(2011.2.2)
公開日 平成18年10月26日(2006.10.26)
発明の名称または考案の名称 オリゴチオフェンを用いた光記憶媒体
国際特許分類 G03H   1/04        (2006.01)
B41M   5/26        (2006.01)
FI G03H 1/04
B41M 5/26 Y
請求項の数または発明の数 8
全頁数 26
出願番号 特願2005-342451 (P2005-342451)
出願日 平成17年11月28日(2005.11.28)
優先権出願番号 2005071431
優先日 平成17年3月14日(2005.3.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年12月20日(2007.12.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
発明者または考案者 【氏名】檜山 爲次郎
【氏名】清水 正毅
【氏名】川波 由紀夫
【氏名】神原 浩久
【氏名】森 裕平
【氏名】栗原 隆
【氏名】安達 昌文
【氏名】佐々木 豊
【氏名】秋山 誠治
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100074206、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 文二
【識別番号】100084858、【弁理士】、【氏名又は名称】東尾 正博
【識別番号】100087538、【弁理士】、【氏名又は名称】鳥居 和久
審査官 【審査官】大橋 憲
参考文献・文献 特開2005-099751(JP,A)
特開2005-099754(JP,A)
調査した分野 G03H 1/04
B41M 5/26
特許請求の範囲 【請求項1】
第一励起光照射により、一重項励起状態に励起され、その後、項間交差により最低三重項励起状態に移行し、続いて、第二励起光照射により、より高い三重項励起状態に励起される二段階励起型のエネルギー供与体と、そのエネルギー供与体からエネルギーを受け取り、かかるエネルギーを化学反応に供与するエネルギー受容体とを有し、前記エネルギー供与体が、下記式(1-1)~(1-4)のいずれかに示されるオリゴチオフェン系化合物であり、前記エネルギー受容体が、下記式(3)で示されるアジド系化合物であることを特徴とする有機混合体からなる光記憶媒体。
【化1】
JP0004623515B2_000016t.gif
(式(1-1)~(1-4)において、X~X,X7a~X7b,X8a~X8d,X9a~X9fは、水素原子、アルキル基、アルキル基の一部の炭素原子をケイ素原子と置き換えた基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基若しくはアリールオキシ基を有する基、又はジアルキルアミノ基から選ばれる基を示す。また、X~X,X7a~X7b,X8a~X8d,X9a~X9fは、それぞれ同じであっても異なってもよい。)
【化2】
JP0004623515B2_000017t.gif
(式(3)中、Yは、アルキル基、ハロゲン、アジド基、スルホニル基、アリール基、水酸基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する基、又は水素原子を示す。)
【請求項2】
前記エネルギー供与体が、下記式(2)に示されるオリゴチオフェン系化合物であることを特徴とする請求項に記載の光記憶媒体。
【化3】
JP0004623515B2_000018t.gif
(式(2)において、R~Rは、水素原子、アルキル基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基若しくはアリールオキシ基を有する基、又はジアルキルアミノ基から選ばれる基を示す。また、R~Rは、同じであっても異なってもよい。さらに、nは、4又は5を示す。)
【請求項3】
第一励起光照射により、一重項励起状態に励起され、その後、項間交差により最低三重項励起状態に移行し、続いて、第二励起光照射により、より高い三重項励起状態に励起される二段階励起型のエネルギー供与体と、そのエネルギー供与体からエネルギーを受け取り、かかるエネルギーを化学反応に供与するエネルギー受容体とを有し、前記エネルギー供与体が、下記式(2)に示されるオリゴチオフェン系化合物であり、前記エネルギー受容体が、下記式(3)で示されるアジド系化合物であることを特徴とする有機混合体からなる光記憶媒体。
【化4】
JP0004623515B2_000019t.gif
式(2)において、~Rは、炭素数1~2のアルキル基、炭素数6~10のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ピリジル基、チオフェン環から選ばれる基を示す。また、R~Rは、同じであっても異なってもよい。さらに、nは、4又は5を示す。
【化5】
JP0004623515B2_000020t.gif
(式(3)中、Yは、アルキル基、ハロゲン、アジド基、スルホニル基、アリール基、水酸基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する基、又は水素原子を示す。)
【請求項4】
前記エネルギー供与体が、下記式(2-1)で示されるオリゴチオフェン系化合物であることを特徴とする請求項に記載の光記憶媒体。
【化6】
JP0004623515B2_000021t.gif

【請求項5】
前記エネルギー供与体が、下記式(2-2)で示されるオリゴチオフェン系化合物であることを特徴とする請求項3に記載の光記憶媒体
【化7】
JP0004623515B2_000022t.gif

【請求項6】
前記エネルギー供与体が、下記式(2-3)~(2-5)のいずれかに示されるオリゴチオフェン系化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の光記憶媒体。
【化8】
JP0004623515B2_000023t.gif
【化9】
JP0004623515B2_000024t.gif
【化10】
JP0004623515B2_000025t.gif

【請求項7】
前記エネルギー受容体が、下記式(3-1)又は(3-2)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光記憶媒体。
【化11】
JP0004623515B2_000026t.gif
【化12】
JP0004623515B2_000027t.gif

【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光記憶媒体を製造する方法であって、
基板上に前記エネルギー供与体、及び前記エネルギー受容体を分散させた光記憶媒体用溶液を滴下し、その後、この基板との距離を一定に保つ刃によってこの基板上を掃引して、前記光記憶媒体用溶液を平坦化する掃引工程、さらに加圧下で加熱することにより平坦性を高める加熱工程を含む薄膜型の光記憶媒体を作製する、光記憶媒体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、高励起三重項状態を経由する二段階励起型のエネルギー供与体及びこのエネルギー供与体からエネルギーを受け取るエネルギー受容体を有する有機混合体からなる光記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムメモリとして、一段階励起型のホログラムメモリ、すなわち、光記憶媒体にデータを載せた物体光と参照光を同時に照射して、この2つの光の干渉縞を形成させ、この干渉縞の強度分布をデータとして保存し、次に、参照光をこの光メモリ媒体に照射することにより、回折光を生成させ、この回折光からデータを再生するホログラムメモリが知られている。
【0003】
このホログラムメモリを始めとする光記憶媒体が層構造をとる場合、その記録層は、通常、単層からなり、近年の大容量化への要望に応えるには限界がある。かかる限界を打破する有力な方法の一つとして、複数の記録層を積層することがあげられる。
【0004】
しかし、複数の記録層を積層した積層体を用いる場合、前記一段階励起型による場合は実現が困難である。すなわち、複数層の記録層にデータを記録する場合、まず、図7(a)に示すように、ある一つの記憶層a1に、データを記憶するべく参照光及び物体光を照射する。続いて、図7(b)に示すように、他の記憶層a2に、別のデータを記録すべく参照光及び物体光を照射する。このとき、物体光は、図7(a)(b)に示すように、物体光は層a2のみならず、層a1を含む他の層を通過する。このとき、層a1等のデータが記憶された層のデータが消去されてしまうという問題が生じる。さらに、データの再生時においても同様で、図7(c)に示すように、ある一つの層のデータを再生すると、再生光が他の層のデータを消去してしまうという問題が生じる。
【0005】
この問題を解決する有望な手法として、図8に示すような、高励起三重項状態を経由する二段階励起型の光記憶媒体を適用する方法がある。ホログラムメモリの例で説明すると、図8(a)に示すように、第一励起光(=ゲート光)を照射すると、その層のみが最低三重項励起状態となって記録可能となり、ここに、第二励起光(=参照光+物体光)を照射することにより、高励起の三重項励起状態になって二光束干渉による干渉縞が媒体内に構造変化屈折率変化として定着され、その結果、光記憶が行われる。他方、図8(b)に示すように、第一励起光を照射していない層は、最低三重項励起状態になく、記憶できる状態にないので、たとえ、第二励起光(=参照光+物体光)を照射しても、三重項励起状態にならないため、二光束干渉が生じず、光記憶が行われない。このため、第一励起光を照射していない層は、既に記憶されたデータがあっても、消去されることはない。
【0006】
すなわち、二段階励起型においては、光記録のためには、第一励起光及び第二励起光の両方の照射が必要であり、図8(a)に示すように、ゲート光を照射させて記録可能な最低三重項励起状態に励起させた上で、データを載せる物体光、及びこの物体光と干渉して干渉縞を生じさせる参照光とを照射させることで初めて、エネルギー供与体をより高い三重項励起状態にすることができ、光記録が可能となる。
【0007】
これに対し、ゲート光を照射せずに、物体光と参照光のみを照射しても、図8(b)に示すように、エネルギー供与体は記録可能な最低三重項励起状態に励起できないため、光記録は不可能であり、また、このゲート光の照射されない層では、データが消去されることもない。
【0008】
このような高励起三重項状態を経由する二段階励起型のホログラムメモリを構成する有機材料として、ビアセチル(ブタン-2,3-ジオン、非特許文献1参照)やカルバゾール(9H-カルバゾール、非特許文献2参照)が知られている。
【0009】
この非特許文献1や2に記載の方法においては、ビアセチルやカルバゾールが高励起の三重項励起状態(T)に励起されると、構造変化を起し、その結果、物体光と参照光とが作る干渉縞が媒質内の屈折率変化として定着され、ホログラムの記録・再生が可能と記載されている。
【0010】
しかし、これらのビアセチルやカルバゾールは、それら自体の効率が低いため、ホログラムの記憶・再生効率を示す指標となる参照光の回折効率が低く、回折効率1%を得るためには、最低でも200μm程度の厚みが必要となる。このため、ビアセチルやカルバゾールを用いる限り、実用的な膜厚とされる数μmの薄膜型の光記憶媒体の実現は難しいのが現状である。
【0011】
ところで、回折効率を向上させる方法としては、光源の強度をあげる方法や、集光レンズの焦点距離を短くして光密度をあげる等の方法があげられる。しかし、これらの方法によると、前記のビアセチルやカルバゾールでは、必要なゲート光の照射強度が高くなりすぎ、光損傷が生じてしまうという問題点を有していた。
【0012】
これらに対し、高励起三重項状態を生成する有機材料として、オリゴチオフェン系化合物(非特許文献3参照)が知られている。
【0013】

【非特許文献1】Opt.Lett.,7,177(1982)(Chr.Brauchle et al)
【非特許文献2】Opt.Lett.,6,159(1981)(G.C.Bjorklund et al)
【非特許文献3】J.Phys.Chem.,100,18683(1996)(R.S.Becker et al)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、オリゴチオフェン系化合物を用いる場合、高励起の三重項励起状態(T)に励起されても、そこから直ちに構造変化等の化学反応を起こすことは期待できず、このままでは、光記録を行うことはできない。
【0015】
すなわち、非特許文献3に記載されているように、オリゴチオフェン系化合物は、従来、一重項励起状態や三重項励起状態の生成効率が高いことが理論等で予測されているものの、直ちに構造変化等の化学反応は生じにくく、それだけではホログラムメモリなどの光記憶媒体に適用することはできないのである。
【0016】
そこで、この発明は、オリゴチオフェン系化合物のような一重項励起状態や三重項励起状態の生成効率が高いものの、直ちに構造変化等の化学反応は生じにくい化合物を用いた高効率な二段階励起型のホログラムメモリを始めとする光記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明においては、第一励起光照射により、一重項励起状態に励起され、その後、項間交差により最低三重項励起状態に移行し、続いて、第二励起光照射により、より高い三重項励起状態に励起される二段階励起型のエネルギー供与体と、そのエネルギー供与体からエネルギーを受け取り、かかるエネルギーを化学反応に供与するエネルギー受容体とを有し、前記エネルギー供与体が、下記式(1-1)~(1-4)のいずれかに示されるオリゴチオフェン系化合物であり、前記エネルギー受容体が、下記式(3)で示されるアジド系化合物であることを特徴とする有機混合体からなる光記憶媒体を用いることにより、前記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0018】
この発明は特定のエネルギー供与体及びエネルギー受容体を用いるので、三重項励起状態に励起されたエネルギー供与体から、エネルギー受容体へエネルギーが渡され、その渡されたエネルギーを化学反応に供与することができる。これにより、適切にエネルギーが化学反応に供与され、光記録をより確実に行うことができ、高効率な二段階励起型のホログラムメモリを始めとする光記憶媒体を提供することができる。
【0019】
また、エネルギー供与体としてオリゴチオフェン系化合物を用いる場合、この化合物は、一重項励起状態や三重項励起状態の生成効率が高いので、これを用いてホログラムメモリを作製すると、高い回折効率を得ることが可能となり、メモリ媒体を実用的な数μmの薄膜にすることが可能となる。
【0020】
さらに、この発明の適用用途は、ホログラムメモリに止まらず、光照射により、二段階励起のプロセスを通して、媒体の内部の任意のスポット(=ドット)において、干渉縞に対応したものでない通常の屈折率変化を低パワーで起こさせる場合にも適用可能である。この場合は、第一励起光と第二励起光の2つのビームで実現でき、たとえば、三次元媒体において二つのビームの重なった任意のスポットで屈折率変化を起こさせること等が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下において、ホログラムメモリへの適用を中心に、本発明の光記憶媒体について詳細に説明する。この光記憶媒体にかかる発明は、所定のエネルギー供与体及びエネルギー受容体を用いた光記憶媒体である。
【0022】
前記エネルギー供与体とは、オリゴチオフェン系化合物等の一重項励起状態及び三重項励起状態の生成効率が高いものの、直ちに構造変化等の化学反応は生じにくい化合物をいう。前記の一重項励起状態や三重項励起状態の生成効率が高い化合物とは、第一励起光照射により、一重項励起状態に励起される効率が高く、また、最低三重項励起状態への項間交差への効率も高く、さらに、第二励起光照射により、より高い三重項励起状態に励起される効率も高い二段階励起型の化合物をいう。
【0023】
また、前記エネルギー受容体とは、前記エネルギー供与体からエネルギーを受け取って最低三重項励起状態となり、化学反応へのエネルギーを供与し易い化合物をいう。すなわち、前記エネルギー受容体の三重項励起状態のエネルギーレベルが、前記エネルギー供与体の三重項励起状態のエネルギーレベルに比べて、同様又は少し小さい程度であるので、エネルギー受容体のエネルギー受容が容易となり、かつ、得たエネルギーのほとんどを化学反応に供与できる化合物がよい。
【0024】
前記のエネルギー供与体とエネルギー受容体とのエネルギーの受容関係の例を、図1に示すことができる。まず、エネルギー供与体にゲート光である第一励起光を与えることにより、エネルギー供与体は、基底状態(S)から、一重項励起状態(S)等となる。次いで、項間交差で、最低三重項励起状態(T)に移行する。そして、第二励起光(ホログラムの場合、物体光及び参照光)を与えることによって、より高い三重項励起状態(T)になる。
【0025】
次に、三重項励起状態(T)のエネルギー供与体から、エネルギーがエネルギー受容体にエネルギー移動(ET)される。これにより、エネルギー供与体は基底状態(S)に戻り、一方、エネルギー受容体は、最低三重項励起状態(T)等になる。そして、エネルギー受容体は得たエネルギーを化学反応に供与して、基底状態(S)に戻るか、または、反応生成物へ変化する。
【0026】
前記のようなエネルギー供与体とエネルギー受容体を用いる場合、エネルギー受容体が得たエネルギーによる化学反応によって、構造変化(=屈折率変化)が起こり、結果として光記録が行われたことになる。
【0027】
次に、前記光記憶媒体を構成するエネルギー供与体及びエネルギー受容体について記載する。このエネルギー供与体及びエネルギー受容体としては、前記の機能を発揮し得るものであれば特に限定されない。ただし、その中でも、好ましいエネルギー供与体及びエネルギー受容体があり、ここでは、その例について説明する。
【0028】
前記の好ましいエネルギー供与体として、下記式(1-1)~(1-4)のいずれかに示されるオリゴチオフェン系化合物をあげることができる。
【0029】
【化11】
JP0004623515B2_000002t.gif

【0030】
前記式(1-1)~(1-4)において、X~X,X7a~X7b,X8a~X8d,X9a~X9fは、水素原子、アルキル基、アルキル基の一部の炭素原子をケイ素原子と置き換えた基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基等があげられる。そして、前記の、X~X,X7a~X7b,X8a~X8d,X9a
~X9fは、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0031】
これらの中でも、下記式(2)に示されるようなオリゴチオフェン系化合物がより好ましい。この式(2)で示される化合物は、式(1-3)又は式(1-4)に示される化合物であって、X=X=X=X=X8a=X8b=X8c=X8d=X9a=X9b=X9c=X9d=X9e=X9f=水素原子であり、XはSi(R)(R)(R)を示し、XはSi(R)(R)(R)を示す。また、R~Rは、水素原子、アルキル基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基から選ばれる基を示す。さらに、R~Rは、同じであっても異なってもよい。さらにまた、nは、4又は5を示す。
【0032】
【化12】
JP0004623515B2_000003t.gif

【0033】
このような前記式(2)に示されるオリゴチオフェン系化合物の具体例としては、下記の式(2-1)、(2-3)~(2-5)に示されるような化合物があげられる。

【0034】
【化13】
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【0035】
【化14】
JP0004623515B2_000005t.gif

【0036】
【化15】
JP0004623515B2_000006t.gif

【0037】
【化16】
JP0004623515B2_000007t.gif

【0038】
【化17】
JP0004623515B2_000008t.gif

【0039】
さらにまた、前記式(2)に示されるオリゴチオフェン系化合物の中でも、R~R炭素数1~2のアルキル基、炭素数6~10のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ピリジル基、チオフェン環を示す化合物が、前記のエネルギー供与体としての機能をより顕著に有するので好ましく、特に、R~R、R~Rの各々について、その少なくとも1つが炭素数6~10のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ピリジル基、チオフェン環を示す化合物がより好ましい。この具体例としては、前記の式(2-2)~式(2-5)に示されるような化合物があげられる。
【0040】
シリコン原子を介したアルキル基の導入が、溶解性に寄与するという知見は、例えば、J.Mater.Chem.,10,1471-1507,(2000).などで知られているが、共役分子長の限られたオリゴチオフェンの場合は、さらにその効果が顕在化される。
【0041】
すなわち、ペンタチオフェンに対して、その分子両端にn-デシル基を置換した場合(下記式(2-5)’で示される化合物)と、デシルジメチルシリル基を置換した場合(上記式(2-5)で示される化合物)では、同一溶媒に対して、後者は前者の3~4桁多い重量を溶解することができる。
【0042】
具体的には、下記式(2-5)’で示される化合物のクロロホルムに対する溶解性は0.05mg/ml未満、トルエンに対する溶解性は0.05mg/ml未満、かつ、ヘキサンに対しては非溶解性であるのに対し、上記式(2-5)で示される化合物のクロロホルムに対する溶解性は200mg/ml以上、トルエンに対する溶解性は300mg/ml以上、かつ、ヘキサンに対する溶解性は100mg/ml以上を示すのである。
【0043】
【化18】
JP0004623515B2_000009t.gif

【0044】
また、トリオクチルシリル基を置換すると、室温に近い温度でも、オリゴチオフェンを液状化することが可能であり、100%濃度のアモルファス媒体を構成することが可能である。このような化合物は、例えば、中空キャピラリ型の容器に封入して、光記録媒体、非線形光学媒体として活用することができる。
【0045】
このように、アルキルシリル基を置換することは、置換された化合物を高濃度にマトリクス中に分散させることを可能にするばかりでなく、他の低分子化合物を、オリゴチオフェン部位近くに選択的に配置させる包摂的分子相互作用を発現させることができる。後述するように、式(2-5)で示される5,5’’’’-ビス(デシルジメチルシリル)ペンタチオフェンと、式(3-2)で示されるアジド化合物では、上記包摂的相互作用により、近傍位配置が可能となり、他の組み合わせでは得られない高効率の光書込を実現することができる。
【0046】
前記オリゴチオフェン系化合物は、一重項励起状態(S)、三重項励起状態(T)の生成率が、従来二段階励起する化合物として知られているビアセチルに比べて、通常1桁以上、好ましくは2桁以上、さらに好ましくは3桁以上大きい。中でも、一般式(1-1)~(1-4)に示す化合物は、ビアセチルに比べて当該生成率が数千倍高く、この発明のエネルギー供与体として使用することが、特に好ましい。
【0047】
次に、前記の好ましいエネルギー受容体として、下記式(3)に示されるアジド系化合物をあげることができる。
【0048】
【化19】
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【0049】
式(3)中、Yは、アルキル基、ハロゲン、アジド基、スルホニル基、アリール基、水酸基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の基を有する基、又は水素原子を示す。
【0050】
このようなアジド系化合物の具体例としては、下記式(3-1)又は(3-2)に示されるアジド系化合物があげられる。
【化20】
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【0051】
【化21】
JP0004623515B2_000012t.gif

【0052】
前記アジド系化合物は、三重項励起状態となると、下記反応式<1>に示す反応を生じ、三重項ナイトレン及び窒素分子を生成する。次いで、この三重項ナイトレンは、カップリング反応、二重結合への付加反応、水素引き抜き反応等の化学反応を起こす。このため、前記アジド系化合物からなるエネルギー受容体を用いると、光照射された部分で、三重項ナイトレンが、エネルギー供与体及びエネルギー受容体を分散させる高分子化合物において構造変化を生じさせ、これにより屈折率変化を生じさせることが可能となる。
【0053】
【化22】
JP0004623515B2_000013t.gif

【0054】
また、密度汎関数理論を用いて計算すると、前記オリゴチオフェン系化合物のS-Tの励起エネルギーは、3.65eV(340nm、n=2のとき)、3.05eV(407nm、n=3のとき)であり、一方、前記アジド系化合物のS-Tの励起エネルギーは、3.64eV(340nm,化合物(3-1)のとき)、3.47eV(357nm、化合物(3-2)のとき)である。数値に多少の高低はあるものの、これらから、これらの化合物は、エネルギー供与体とエネルギー受容体として組み合わせて使用することが可能である。
【0055】
ところで、光記憶媒体は、均一かつ平坦性に優れることが重要である。例えば、ホログラム実験においては、媒体表面が平坦でない場合や、媒体内部に脈理が発生している場合には、物体光と参照光とのビームが重なりにくく、また、この二光束干渉が起こっても、これが作り出す干渉縞を媒体内に屈折率変化として定着しがたいからである。このため、図2に示すように、ブレードコート法および熱圧着法を組み合せることにより、光記憶媒体を均一かつ平坦に作製する方法を説明する。
【0056】
まず、前記のエネルギー供与体及びエネルギー受容体を所定割合で混合、分散させて光記憶媒体用溶液を得る。次いで、図2(a)に示すように、基板上に光記憶媒体用溶液を滴下する。そして、図2(b)に示すように、前記基板との距離を一定に保つ刃(ブレード)によってこの基板上を掃引して、前記光記憶媒体用溶液を平坦化する掃引工程を行う(図2(c))。次いで、かかる掃引後、加熱により溶媒を除去し(図2(d))、続いて、得られた媒体を基板から剥離する(図2(e))。次いで、得られた媒体を2枚の基板に挟み、加圧下で加熱する加熱工程を行う(図2(f))。その後、基板から媒体を剥離する(図2(g))ことにより、平坦性を高めた薄膜型の光記憶媒体を作製することができる。得られた光記憶媒体が薄い場合、2枚等、複数枚を積層し、図2(f)の方法と同様に熱圧縮することにより、厚膜の光記憶媒体が得られる(図2(h))。なお、図2(c)の工程後、図2(d)(e)の工程をせず、基板を媒体の上に載せ、図2(f)の工程を行ってもよい。
【0057】
なお、光記憶媒体用溶液の基板への塗工方法としては、上記したブレードコート法以外に、スピンコート法、スプレー法、ワイヤーバー法、IJ法等の塗工方法を用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を用いて、この発明をさらに具体的に説明する。
【0059】
(実施例1)(オリゴチオフェン系化合物の製造)
[式(2-1)で示される化合物の製造]
式(2-1)で示される化合物(5,5’’’’-ビス(t-ブチルジメチルシリル)-2,2’:5’,2”:5”,2’’’:5’’’,2’’’’-キンカチオフェン)の製造方法及び化合物データを示す。
【0060】
[1]2-トリブチルスタニル-5-(t-ブチルジメチルシリル)チオフェンの製造
アルゴン雰囲気下、テトラヒドロフラン18mlにチオフェン(アルドリッチ社製)0.74g(8.8mmol)を溶解して-30℃に保った溶液に、ブチルリチウム(アルドリッチ社製)5.8ml(8.8mmol、ヘキサン溶液)を滴下した。この混合溶液を同温度で2時間撹拌した後、t-ブチルクロロジメチルシラン(アルドリッチ社製)1.4g(9.1mmol)を加え、さらに同温度で1時間撹拌した。この混合溶液に、ブチルリチウム6.0ml(9.1mmol、ヘキサン溶液)を滴下し、同温度で2時間撹拌した後、クロロトリブチルスズ(アルドリッチ社製)2.8g(8.8mmol)を加え、さらに同温度で1時間撹拌した。この混合溶液を室温で一晩撹拌した後、ジエチルエーテルで希釈し、激しく撹拌した氷冷飽和食塩水に投入した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮し、粗生成物5.1gを得た。
この粗生成物を170℃、0.3TorrでKugelrohr蒸留することにより、2-トリブチルスタニル-5-(t-ブチルジメチルシリル)チオフェン2.6gを得た。収率は60%であった。
【0061】
[2]式(2-1)で示される化合物の製造
トルエン4mlに、前記の2-トリブチルスタニル-5-(t-ブチルジメチルシリル)チオフェン0.59g(0.80mmol)と、5,5”-ジブロモ-2,2’:5’,2”-ターチオフェン(アルドリッチ社製)0.16g(0.4mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(アルドリッチ社製)46mg(0.040mmol)を混合した溶液を、アルゴン雰囲気下油浴中、120℃で18時間加熱撹拌した。
反応溶液を減圧濃縮してトルエンを除いた後、残渣を乾燥酢酸エチルで洗浄し、ジクロロメタンで抽出した。このジクロロメタン溶液を濃縮し、式(2-1)で示される化合物の橙色粉末を0.11g(0.17mmol)得た。収率は42%であった。
【0062】
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、MSスペクトルは次の通りである。
H-NMR(200MHz、CDCl)σ7.24(AB,J=3.5Hz,2H)、7.14(AB,J=3.5Hz,2H)、7.10(AB,J=3.8Hz,2H)、7.07(AB,J=3.8Hz,2H)7.07(s,2H)、0.94(s,18H)、0.31(s,12H)ppm
【0063】
13C-NMR(50MHz,CDCl)σ141.98,137.09,136.29,135.89,135.83,135.66,124.77,124.34,124.26,124.18,26.42,17.02-4.83ppm
【0064】
・FAB-LRMS for C3240Si:641([M+H],60),640(M,100),583([M-tBu],25)
【0065】
また、洗浄で用いた乾燥酢酸エチル層を濃縮し、得られた残渣を乾燥アセトニトリルで洗浄し、5,5’-ビス(t-ブチルジメチルシリル)-2,2’-ビチオフェン0.0068g(0.017mmol)の黄色粉末を得た。収率は43%であった。
【0066】
得られた化合物のH-NMR、MSスペクトルは次の通りである。
H-NMR(200MHz、CDCl)σ7.25(AB,J=3.5Hz,2H)、7.13(AB,J=3.5Hz,2H)、7.13(AB,J=3.5Hz,2H)0.95(s,18H)、0.30(s,12H)ppm
【0067】
・FAB-LRMS for C3034Si:396([M+2],4),395([M+1],7),394(M,13),379([M-Me],1),337({M-t-Bu},14)
【0068】
[式(2-2)で示される化合物の製造]
式(2-2)で示される化合物(5,5’’’’-ビス(ジメチルフェニルシリル)-2,2’:5’,2”:5”,2’’’:5’’’,2’’’’-キンカチオフェン)の製造方法及び化合物データを示す。
【0069】
[1]2-トリブチルスタニル-5-(ジメチルフェニルシリル)チオフェンの製造
アルゴン雰囲気下、テトラヒドロフラン10mlにチオフェン0.42g(5.0mmol)を溶解して-30℃に保った溶液に、ブチルリチウム1.9ml(5.0mmol、ヘキサン溶液)を滴下した。この混合溶液を同温度で2時間撹拌した後、クロロジメチルフェニルシラン(アルドリッチ社製)0.88g(5.2mmol)を加え、さらに同温度で1時間撹拌した。この混合溶液に、ブチルリチウム2.4ml(6.2mmol、ヘキサン溶液)を滴下し、同温度で2時間撹拌した後、クロロトリブチルスズ2.0g(6.0mmol)を加え、さらに同温度で1時間撹拌した。この混合溶液を室温で一晩撹拌した後、ジエチルエーテルで希釈し、激しく撹拌した氷冷飽和食塩水に投入した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮し、粗生成物2.9gを得た。
この粗生成物を200℃、0.3TorrでKugelrohr蒸留することにより、2-トリブチルスタニル-5-(ジメチルフェニルシリル)チオフェン1.6gを得た。収率は64%であった。
【0070】
[2]式(2-2)で示される化合物の製造
トルエン8mlに、前記の2-トリブチルスタニル-5-(ジメチルフェニルシリル)チオフェン0.81g(1.6mmol)と、5,5”-ジブロモ-2,2’:5’,2”-ターチオフェン0.32g(0.8mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)92mg(0.080mmol)を混合した溶液を、アルゴン雰囲気下油浴中、120℃で18時間加熱撹拌した。
反応溶液を減圧濃縮してトルエンを除いた後、残渣を乾燥酢酸エチルで洗浄し、ジクロロメタンで抽出した。このジクロロメタン溶液を濃縮し、式(2-2)で示される化合物の橙色粉末を0.31g(0.46mmol)得た。収率は57%であった。
【0071】
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、MSスペクトルは次の通りである。
H-NMR(200MHz、CDCl)σ7.55-7.62(m,4H)、7.35-7.43(m,6H)、7.24(AB,J=3.6Hz,2H)、7.16(AB,J=3.6Hz,2H)、7.09(AB,J=3.8Hz,2H)7.07(s,2H)、7.06(AB,J=3.8Hz,2H)、0.61(s,12H)ppm
【0072】
13C-NMR(50MHz,CDCl)σ142.72,137.95,137.93,136.37,136.07,136.04,135.97,133.85,129.41,127.88,125.04,124.55、124.34,124.29,-1.22ppm
【0073】
[式(2-3)で示される化合物の製造]
式(2-3)で示される化合物(5,5’’’’-ビス(トリオクチルシリル)-2,2’:5’,2”:5”,2’’’:5’’’,2’’’’-キンカチオフェン)の製造方法及び化合物データを示す。
【0074】
[1]2-トリブチルスタニル-5-(トリオクチルシリル)チオフェンの製造
アルゴン雰囲気下、テトラヒドロフラン10mlにチオフェン0.42g(5.0mmol)を溶解して-30℃に保った溶液に、ブチルリチウム3.3ml(5mmol、ヘキサン溶液)を滴下した。この混合溶液を同温度で2時間撹拌した後、クロロトリオクチルシラン(アルドリッチ社製)1.9g(5.2mmol)を加え、さらに同温度で1時間撹拌した。この混合溶液に、ブチルリチウム3.4ml(5.2mmol、ヘキサン溶液)を滴下し、同温度で2時間撹拌した後、クロロトリブチルスズ1.9g(5.2mmol)を加え、さらに同温度で1時間撹拌した。この混合溶液を室温で一晩撹拌した後、ジエチルエーテルで希釈し、激しく撹拌した氷冷飽和食塩水に投入した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮し、粗生成物3.7gを得た。
この粗生成物を250℃、0.3TorrでKugelrohr蒸留することにより、2-トリブチルスタニル-5-(トリオクチルシリル)チオフェン2.3gを得た。収率は63%であった。
【0075】
[2]式(2-3)で示される化合物の製造
トルエン6mlに、前記の2-トリブチルスタニル-5-(トリオクチルシリル)チオフェン0.90g(1.22mmol)と、5,5”-ジブロモ-2,2’:5’,2”-ターチオフェン0.25g(0.61mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)70mg(0.061mmol)を混合した溶液を、アルゴン雰囲気下油浴中、120℃で18時間加熱撹拌した。
120℃、0.3Torrで減圧蒸留して揮発成分を除去した残渣を、体積排除クロマトグラフィーによって精製し、式(2-3)で示される化合物の橙色油状物質を0.26g(0.22mmol)得た。収率は37%であった。
【0076】
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、MSスペクトルは次の通りである。
H-NMR(200MHz、CDCl)σ7.24(AB,J=3.5Hz,2H)、7.12(AB,J=3.5Hz,2H)、7.10(AB,J=3.8Hz,2H)、7.07(AB,J=3.8Hz,2H)、7.07(s,2H)、1.22-1.46(m,72H)、0.76-0.96(m,30H)ppm
【0077】
13C-NMR(50MHz,CDCl)σ141.85,137.61,136.48,135.97,135.66,135.34,124.84,124.31,124.26,124.16,33.69,31.94,29.28,29.21,23.73,22.70,14.13,13.37ppm
【0078】
・FAB-LRMS for C68112Si:1146([M+H],87),1145(M,100),1033([M-Oct+H],10),1032([M-Oct],10)
【0079】
また、副生生物として、5,5’’’’’’’-ビス(トリオクチルシリル)-2,2’:5’,2”:5”、2’’’:5’’’、2’’’’:5’’’’,2’’’’:5’’’’’,2’’’’’’:5’’’’’’,2’’’’’’’-オクタチオフェン0.077g(0.055mmol)の赤色ペースト状固体を得た。収率は18%であった。
【0080】
得られた化合物のH-NMR、MSスペクトルは次の通りである。
H-NMR(200MHz、CDCl)σ7.23(AB,J=3.5Hz,2H)、7.12(AB,J=3.5Hz,2H)、7.07(br s,J=3.8Hz,12H)1.22-1.46(m,72H)、0.76-0.96(m,30H)ppm
【0081】
13C-NMR(50MHz,CDCl)σ141.71,137.62,136.50,136.12,135.79,135.63,135.49,135.25,124.81,124.29,124.12,33.75,32.01,31.66,29.34,29.28,23.81,22.78,22.74,14.22,13.49ppm
【0082】
・FAB-LRMS for C80118Si:1391([M+H]),1390(M
【0083】
[式(2-4)及び式(2-5)で示される化合物の製造]
式(2-4)で示される化合物(5,5’’’-ビス(デシルジメチルシリル)クオーターチオフェン)、及び式(2-5)で示される化合物(5,5’’’’-ビス(デシルジメチルシリル)ペンタチオフェン)の製造方法及び化合物データを示す。
【0084】
[1]デシルジメチル(2’-チエニル)シラン(下記式(4-1)で示される化合物)の製造
【化23】
JP0004623515B2_000014t.gif

【0085】
無水THF40mLに溶かしたチオフェン(1.68g,20.0mmol)を-20℃に冷却し、そこへブチルリチウム(13.0mL,20.0mmol,1.6M in hexanes)を30分かけてゆっくり滴下した。混合溶液を室温まで昇温し1時間攪拌した。再び、溶液を-20℃に冷却したあと、クロロデシルジメチルシラン(4.70g,20.0mmol)のTHF溶液(10mL)を素早く加えた。溶液を室温まで昇温して終夜攪拌したあと、塩化アンモニウム水溶液50mLを加えた。水相をジエチルエーテル100mLで3回抽出したあと、合わせた有機相を飽和食塩水150mLで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、エバポレーターを使って濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒ヘキサン)で精製し、目的物(5.03g)を収率89%で得た。
【0086】
得られた化合物のTLCのR値、H-NMR、13C-NMR、IR、MSの各スペクトルは次の通りである。
・TLC:R=0.85(hexanes).
【0087】
H-NMR(400MHz,CDCl):σ=0.31(s,6H),0.77(dd,J=9.2,J=6.4Hz,2H),0.87(t,J = 6.6 Hz,3H),1.21-1.41(m,16H),7.06(dd,J=3.8,J=3.2Hz,1H),7.27(d,J=3.2Hz,1H),7.60(d,J=3.8Hz,1H)ppm.
【0088】
13C-NMR(100MHz,CDCl):σ=-1.81,14.13,16.61,22.69,23.76,29.29,29.34,29.58,29.65,31.92,33.49,128.02,130.33,134.10,139.21ppm.
【0089】
・IR(KBr):3076,2922,2853,1499,1465,1407,1250,1213,1082,991,810,704cm-1
・FAB-MS:m/z=283/282(5/34,M).
【0090】
[2]2-デシルジメチルシリル-5-トリブチルスタニルチオフェン(下記式(4-2)で示される化合物)の製造
【化24】
JP0004623515B2_000015t.gif

【0091】
上記の方法で得られたデシルジメチル(2’-チエニル)シラン(式(4-1)で示される化合物)(2.82g、10.0mmol)のジエチルエーテル溶液(30mL)を0℃に冷却し、そこにブチルリチウム(6.25mL,10.0mmol,1.6M in hexanes)を15分かけて滴下した。その懸濁液を室温まで昇温して1時間攪拌した。黄色い反応溶液を0℃に冷却してクロロトリブチルスタンナン(3.26g,10.0mmol)を素早く加えた。その混合液を室温まで昇温して終夜攪拌したあと、飽和塩化アンモニウム水溶液50mLを加え、反応を停止した。水相をジエチルエーテル50mLで3回抽出したあと、合わせた有機相を飽和食塩水50mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒をエバポレーターで濃縮し、得た黄色の粗生成物(5.44g,9.52mmol,95%)を精製することなく、そのまま次のカップリング反応に使用した。
【0092】
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IR、MSの各スペクトルは次の通りである。
【0093】
H-NMR(400MHz,CDCl):σ=0.30(s,6H),0.71-0.97(m,14H),0.99-1.21(m,6H),1.28-1.42(m,22H),1.44-1.66(m,6H),7.16-7.20(m,1H),7.39(bs,1H)ppm.
【0094】
13C-NMR(100MHz,CDCl):σ=-1.63,10.84,13.66,14.13,16.78,17.51,22.70,23.83,27.27,28.96,29.32,29.35,29.68,31.93,33.53,134.87,136.09,142.13,144.97ppm.
【0095】
・IR(KBr):2955,2922,2853,1466,1250,1200,1105,837,769cm-1
・FAB-MS:m/z=516/515/514/513/512(25/100/44/76/50,M-C).
【0096】
[3]式(2-4)で示される化合物の製造
5,5`-ジブロモ-2,2’-ビチオフェン(311mg,960mmol)の無水トルエン溶液15mLを注意深くアルゴンで脱気したのち、上記の方法で得られた2-デシルジメチルシリル-5-トリブチルスタニルチオフェン(式(4-2)で示される化合物)(1.65g,2.88mmol)を加えた。Pd(PPh(65.4mg,144mmol,15mol%)を加えたあと、反応溶液を120℃で24時間加熱した。溶媒を減圧留去したのち、粗生成物をアセトニトリルで洗浄した。残った固体をジクロロメタン100mLに溶解し、濾過した。ろ液にシリカゲルを加えて生成物を吸着させたのちに溶媒を減圧留去し、生成物を担持したシリカゲルを得た。これをカラム管に充填し、ヘキサン/ジクロロメタン混合溶媒をつかって生成物の精製をおこない、目的物を黄色固体(551mg,収率79%)として得た。
【0097】
得られた化合物のMp(融点。なお、括弧内の溶媒は、融点測定に供した結晶の再結晶溶媒を示す。)、TLCのR値、H-NMR、13C-NMR、IR、MSの各スペクトルは次の通りである。
【0098】
・Mp:70℃(hexanes/dichloromethane).
・TLC:R=0.70(hexanes:dichlormethane=7:1).
【0099】
H-NMR(400MHz,CDCl):σ=0.31(s,12H),0.78(dd,J=9.2,J=6.4Hz,4H),0.88(t,J=6.6Hz,6H),1.22-1.42(m,32H),7.06(d,J=3.8Hz,2H),7.09(d,J=3.8Hz,2H),7.13(d,J=3.4Hz,2H),7.23(d,J=3.4Hz,2H)ppm.
【0100】
13C-NMR(100MHz,CDCl):σ=-1.92,14.13,16.49,22.69,23.79,29.29,29.35,29.59,29.66,31.92,33.47,124.21,124.39,124.93,134.98,135.91,136.30,139.30,141.98ppm.
【0101】
・IR(KBr):3057,2957,2920,2851,1425,1257,1070,984,835,802,789cm-1
・FAB-MS:m/z=728/727/726/725(22/31/41/7,M).
【0102】
[4]式(2-5)で示される化合物の製造
5,5’’’-ビス(デシルジメチルシリル)クオーターチオフェン(式(2-4)で示される化合物)と同様の手順にしたがって、5,5’’-ジブロモ-2,2’:5’,2’’-ターチオフェンと2-デシルジメチルシリル-5-トリブチルスタニルチオフェン(式(4-2)で示される化合物)から明るい橙色固体として収率76%で合成した。
【0103】
得られた化合物のMp、TLCのR値、H-NMR、13C-NMR、IR、MSの各スペクトルは次の通りである。
【0104】
・Mp.:101-103℃(hexanes/dichloromethane).
・TLC:R=0.65(hexanes:dichlormethane=7:1).
【0105】
H-NMR(400MHz,CDCl):σ=0.32(s,12H),0.79(dd,J=9.2,6.4Hz,4H),0.89(t,J=6.6Hz,6H),1.21-1.41(m,32H),7.07(s,2H),7.07(d,J=3.2Hz,2H),7.10(d,J=3.2Hz,2H),7.14(d,J=3.4Hz,2H),7.23(d,J=3.4Hz,2H)ppm.
【0106】
13C-NMR(100MHz,CDCl):σ=-1.93,14.13,16.48,22.69,23.74,29.29,29.35,29.59,29.65,31.92,33.47,124.23,124.32,124.40,124.95,134.98,135.75,135.97,136.41,139.34,141.93ppm.
【0107】
・IR(KBr):3059,2955,2920,2851,1442,1427,1250,1070,988,837,791cm-1
・FAB-MS:m/z=810/809/808/807(14/19/26/3,M).
【0108】
(実施例2)[オリゴチオフェン系化合物及びアジド系化合物の励起エネルギー]
図3に示す過渡吸収測定装置を用いて、エネルギー供与体である式(2-3)に示される化合物のT-T吸収を測定すると共に、TからSに落ちる際のリン光を測定した。この装置では、QスイッチYAGレーザーの第二高調波発生装置(SHG)あるいは第三高調波発生装置(THG)を通して得られた第二高調波あるいは第三高調波をポンプ光として用い、また、キセノンランプ光をプローブ光として用いて、チオフェンのT-T吸収あるいはT-S(りん光)を測定することができる。測定の結果、T-T吸収は650nmであり、T-Sエネルギーは、820nmであることが判明し、また、これらから、S-Tエネルギーは、360nmであることが分かった。通常の吸収スペクトル測定の結果からは、S-S吸収が405nmであることも分かった。
【0109】
次に、エネルギー受容体である化合物(3-1)で示される化合物及び(3-2)で示される化合物(東洋合成工業(株)製)のトルエン溶液のS-Tエネルギーを図3に示す装置を用いて測定した。その結果、化合物(3-1)は440nm、化合物(3-2)は、500nmであることがわかった。
これらから、式(2-3)で表されるチオフェン系化合物に対する好適なエネルギー受容体は式(3-1)あるいは式(3-2)で表されるアジド系化合物であることが実験的に確認された。もちろん、チオフェン化合物については、側鎖の形状が多少異なっても、そのエネルギーレベルが、今回の測定値から大きく異なった値になることはなく、例えば、式(2-1)で表されるチオフェンを用いる場合でも、式(3-1)あるいは式(3-2)で表されるアジド系化合物をエネルギー受容体として用いることができる。
【0110】
(実施例3)[光記憶媒体の作製]
エネルギー供与体として、式(2-1)で示される化合物(5,5’’’’-ビス(t-ブチルジメチルシリル)-2,2’:5’,2”:5”,2’’’:5’’’,2’’’’-キンカチオフェン)を用い、エネルギー受容体として、DZDSあるいはBAP-Pを用いて、光学実験に好適な薄膜を作製した。
【0111】
最初に、チオフェン(濃度0.1wt%)とアジドDZDS(濃度0.4wt%)あるいはBAP-P(濃度0.4wt%)に溶媒テトラヒドロフラン(THF)(濃度5.6wt%)を加え加熱し溶解させ、これに、光学用シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製:商品名 ゼオネックス、濃度37.6wt%)とメシチレン(濃度56.3wt%)の混合溶液をさらに加えて、再び加熱し溶解させて、図2(a)の光記憶媒体用溶液を作製した。
【0112】
ここで、式(2-1)のペンタチオフェンとアジドDZDSあるいはBAP-Pを溶解させる溶媒としてTHFを用いたが(THFでは常温下でも溶解可能)、このほか、4溶媒(キシレン、モノクロロベンゼン、トルエン、メシチレン)にも加熱下、溶解できることが確認された。この4溶媒の中では、メシチレンが最適であり、溶液が加熱後常温に戻った際に最大の透明性を有していた。式(2-1)のペンタチオフェンとアジドとを分散させる高分子としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やシアノアクリレート等を種々検討した結果、光学用シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製:商品名 ゼオネックス)が最適であることが分かった。ただし、PMMAやシアノアクリレートもペンタチオフェンの側鎖を化学修飾し溶解度を高める等を行えば良好な分散媒になり得る。
【0113】
光学用シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製:商品名 ゼオネックス)を溶かす溶媒としてメシチレンが最適であったこと、および、式(2-1)のペンタチオフェンとアジドDZDSあるいはBAP-Pを溶解させる溶媒としてメシチレンも適していたことから、式(2-1)のペンタチオフェンとアジドのTHF溶液に加える光学用シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製:商品名 ゼオネックス)溶液の溶媒としてメシチレンを使った。この混合溶液も、常温に戻ったとき、光学実験に適する透明性・均一性を有していた。
【0114】
図2(b)(c)の基板との距離を一定に保つ刃(ブレード)によってこの基板上を掃引して平坦化した光記憶媒体用溶液を作るための基板として、本実施例では、通常のガラス製のスライドガラスを用いたが、これに限らず、石英基板を始めそれ自体の表面が平坦であれば基本的には何でも良い。
【0115】
図2(d)の工程においては、90℃のオーブン内にて60分間ベークして、溶媒(THF、メシチレン)を除去した。ベーク後の各成分濃度は、チオフェンが0.3wt%、DZDSあるいはBAP-Pがともに1.0wt%、光学用シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製:商品名 ゼオネックス)が98.7wt%となった。ベークの時間は、90℃のもとで、60分間とすれば、残留溶媒の量は光学実験に支障のないレベルに低減することができた。ブレードと基板との距離は任意に変えることができるので、この距離によって成膜後の膜厚を制御することが可能である。
【0116】
図2(d)を経た膜は、光記憶実験に十分な脈理のない均一性を有するものの、平坦性に問題があったので、本実施例では、媒体をスライドガラスから剥がし、万力に挟み込んで加圧下、100℃加熱を30分保つ熱圧着工程(図2(f))を加えた。
【0117】
万力で挟む際には、膜の両面にスライドガラスを貼り付け、このスライドガラスによるサンドイッチ状態の媒体を挟むこととした。万力の圧力は、スライドガラスが破損する寸前までの大きさとした。加える圧力は、この程度の領域で大きさを変えていくつか試したところ、作製される膜の厚みや膜質には大きな影響を及ぼさず、スライドガラスが破損する寸前の圧力領域であれば、いかなる圧力であっても、ほぼ一定の厚膜と膜質となることが確認された。図2(f)のベークは、サンプルを万力に挟んだまま、ベーク炉に入れることによって行った。
【0118】
図2(g)に至ったときの膜は、上記DZDSおよびBAP-P溶液の場合、図2(b)、(c)におけるブレードと基板との距離を500μmとすると、膜厚はともに170μmであった。膜質は、脈理が認められないのみならず、後述のホログラム実験に十分資する媒体表面の平坦性を有していることが確認された。
【0119】
なお、作製された光記憶媒体が薄い場合、例えば、図2(g)を経たサンプルを2枚積層し、図2(f)の方法と同様に熱圧縮すれば、厚膜の光記憶媒体が得られる(図2(h))。上記DZDSおよびBAP-P溶液を用いて、膜厚170μmの膜を作製後、これを2枚重ねて熱圧着を行った結果、膜厚250μmの光記憶薄膜を得ることができた。ベークの温度は100℃とし、これを90分間行った。この工程による場合も、膜質は、脈理がないのみならず、実施例4のホログラム実験に十分資する平坦性を有していることが確認された。
【0120】
本実施例では、図2(c)の状態から、媒体をスライドガラスから剥がすことなく、熱圧着工程を行うことも可能であることを確認した。スライドガラスに付いていない側の媒体に別のスライドガラスを貼付し、その後、図2(f)以下の工程によると、上記と全く同じ膜質、膜厚を有する媒体を作製することができた。
【0121】
(実施例4)[ホログラム実験]
実施例3で得られた媒体を用いて、図4に示す系で、ホログラム実験を行い、回折効率の時間依存性を測定した。ホログラム実験では、得られた媒体(膜厚250μm)を図4のSampleの位置に設置し、ゲート光(Gate Laser)を照射し、第一励起させた。次いで、第二励起レーザーたるホログラフィックレーザーを用いて、ビームスプリッター(BS)で参照光(Reference light)と物体光(Object
light)に分け、それぞれを媒体に照射した。
【0122】
この構成では、ゲート光により第一励起された記憶可能状態にあるエリアにおいて、第二励起光たる物体光と参照光とにより生じる干渉縞が、メモリ媒体内に屈折率変化として定着され、その定着された干渉縞から回折される参照光の割合を測定することにより、光記憶媒体としてのポテンシャルを知ることが可能である。
【0123】
本実施例では、第一励起光には波長410nmのGaNレーザー(連続光)を用い、第二励起光には、波長660nmの半導体レーザー(連続光)を用いた。物体光と参照光とのなす角度は、2度であった。入射光のスポットサイズは250μmであった。入射光の強度は、第一励起光が0.10W/cm、第二励起光が、参照光、物体光ともに20W/cmであった。
【0124】
図4における構成では、回折効率の測定は、その測定時に物体光を一時遮断し、参照光がメモリ媒体内に生成した干渉縞に回折される割合を測定することにより行うことができる。図5に、その回折効率の時間依存性を測定した結果を示す。これは、参照光がサンプルを通過する光量を測定し、それから、回折光のできる割合(Efficiency η(%))を測定し、その時間依存性をプロットした図である。図中、(1)とあるのは、第一励起光を遮断し、第二励起光(参照光と物体光の双方)を入射した場合を示し、(2)とあるのは、第一励起光、第二励起光(参照光と物体光の双方)ともに、入力した場合を示す。実験結果から、(2)の場合は、ほぼ計算通りに、回折効率が照射時間の二乗に比例して増加する一方で、(1)の状態では、回折効率が増大しないことが分かった。第一励起光を照射し、第二励起光のうち、物体光あるいは参照光のどちらか一方のみを照射した場合も、回折効率の増加は見られなかった。第一励起(ゲート)光と、第二励起光(参照光と物体光の双方)との3ビームがサンプルに照射したときのみ、干渉縞が生成し物体光の回折が観測されたという今回の結果は、本発明の光記憶媒体内には、二段階励起過程を経て、干渉縞が形成されたことを示している。
また、ここでの結果は、実施例2において調べたエネルギーレベルが正しいこと、および、上述した、チオフェンからアジドにエネルギー移動を行わせ、それに起因する構造変化による干渉縞が形成できるとの本発明者の考え方が正しいことを証明している。
【0125】
本実施例3において作製した膜厚170μmの薄膜媒体を用いても、参照光の回折光が観測された。回折効率は、膜厚の二乗に比例することが計算上予測されているが、その実験での強度は、膜厚250μmでの結果の1/7倍となった。計算上は1/6.25倍となるはずであり、良い一致を示した。
【0126】
図5における回折効率の絶対値が0.01%程度と小さいのは、本実施例で使用したレーザー光源のパワーあるいは光パワー密度(=集光レンズの焦点距離により増減可)が低いこと等が原因であり、より高強度のレーザーを用いるか集光レンズの焦点距離を短いものに換えれば、向上させることが出来る。ペンタチオフェン膜は十分な光耐性を有している。
【0127】
図6は、図4での照射光強度等の実験条件に合わせて、従来材料ビアセチルの回折効率(実験結果)を規格化してプロットした結果である。ビアセチルでは、第一励起光の波長はチオフェンと同じ410nmであるが、第二励起光の波長は830nmとした。エネルギーレベルの相違に基づくものである。ビアセチル膜の膜厚は500μmであった。ビアセチルは、光路長500μmの石英セルの中にビアセチル溶液を封入するという方法により作製した。ビアセチルの分散媒には、シアノアクリレートを用い、ビアセチルの濃度は10wt%とした。
【0128】
図6は、今回作製した媒体のチオフェンの濃度がビアセチルの1/30倍であることや膜厚の差を考慮すると、チオフェンのポテンシャルはビアセチルの2桁程度以上であることを示している。すなわち、本実施例では、チオフェンの濃度が0.3wt%の媒体を作製したが、チオフェン濃度をビアセチルと同程度として(アジドの濃度も相応して増大させて)光記憶媒体を作製し、また、膜厚もチオフェンと同等とするならば、実際に得られる媒体としての効率も2桁以上となることを示している。
【0129】
したがって、チオフェンを高濃度に分散させた媒体を用いて薄膜化して行けば、例えば、ビアセチルでは不可能と考えられる薄膜化媒体、すなわち数μmオーダに薄膜化した媒体においても、実用的な回折光を観測できることとなる。
【0130】
なお、本実施例4では、二段階励起過程を経て光記憶媒体に光照射に基づく構造変化(屈折率変化)が起こる様子を、第一励起光(ゲート光)で励起したエリアにおいて、第二励起光である物体光と参照光との二光束干渉により生じた干渉縞により参照光が回折される現象により観測したが、本発明の意図する二段階励起過程を経た光記憶媒体は、それに限られず、第二励起光は一つであっても構わない。図8に示すように、第一励起により記録可能な最低三重項状態となり、そこに第二励起光を一つだけ照射しても構造変化(屈折率変化)が起こるのであるから、この一つの第二励起光照射によって起こった変化を別の光を照射して透過率の変化を観測する等によって読み取ることとすれば、光記憶・再生を行うことができる。本実施例4では、構造変化(屈折率変化)が生じた様子を回折光の観測によって確認したに過ぎない。
【0131】
したがって、三次元の光記憶媒体において、第一励起光と第二励起光とを照射すれば、その両者の重なった部分のみにおいて構造変化(屈折率変化)が起こるのであるから、任意の形態の三次元媒体、例えば、DVDの記憶層を多層に積層したような媒体において、図7で説明した一段階励起過程のときのようなデータ消去の問題のない光記憶・再生が可能となる。
【0132】
(実施例5)
式(2-4)および(2-5)で表されるチオフェンを用いて、実施例3と同様の実験を行った(濃度、膜厚も実施例3と同じ)ところ、媒体が良好に作製でき、さらに、スピンコート法によっても、光学的に良好な薄膜が作製できた。スピンコート法による作製では、ペンタチオフェンをメシチレンに溶解させDZDSを加え、加熱下、溶解させた。これに光学用シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製:商品名 ゼオネックス)のメシチレン溶液を加えて溶解させ、スピンーターで薄膜を作製した。スピンコーターの回転数は1500rpmとした。作製されたスピンコート薄膜は、式(2-4)および(2-5)で表されるチオフェンがともに0.3wt%、DZDSが1.0wt%、光学用シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製:商品名 ゼオネックス)が98.7wt%であった。膜厚はともに45μmであった。
【0133】
(実施例6)
式(2-5)で表されるチオフェンを用いて実施例5に従って作製した膜を用い、実施例4と同様のホログラム実験を行った。実施例3と同様の方法により作製した媒体を用いた結果(適用波長など光学系は同じ)、同様なホログラム回折を観測することができた。次に、スピンコート薄膜を用いた実験でも、膜厚が減少したことに相応して、信号強度は低下したものの、作製された薄膜が十分な光耐性を有していることから、使用したレーザの光強度を上げて補うことにより、図5及び図6と同様の効率を有する結果を得ることが可能であった。ただし、チオフェンのように、第一励起光の吸収係数が大きい材料では、媒体の物理的厚みが薄くなるほど、その物理的厚みと実効長は接近してくる(物理的厚みの減少ほどに実効長が減少しない)。このため、本実施例で検討した結果では、実施例3と同様の方法により作製した媒体170μmとスピンコート薄膜45μmの物理的厚みの差から予想されるよりも、2倍程度大きな回折効率を得ることが可能であった。すなわち、本実施例のスピンコート薄膜での結果は、実施例3の方法により作製した厚い膜での結論に加え、本発明のチオフェン膜によれば、厚みがミクロン単位となってもチオフェン薄膜媒体により実用的なホログラム回折を実現できることを支持するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】エネルギー供与体及びエネルギー受容体のエネルギー受容の関係を示す、エネルギー励起状態の模式図
【図2】ブレードコート法と熱圧着法とによる光記憶媒体の作製工程を示す図
【図3】化合物の励起エネルギーを測定する過渡吸収測定装置を示す模式図
【図4】ホログラム実験の方法を示す模式図
【図5】ホログラム実験の結果を示すグラフ(回折光のできる割合-時間)
【図6】ホログラム実験の結果を示すグラフ(従来材料ビアセチルとの比較)
【図7】従来の一段階励起型メモリの問題点を示す模式図
【図8】データ記録と光励起の関係を示す、エネルギー励起状態の模式図
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7