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明細書 :クラスタ噴射式加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5575648号 (P5575648)
登録日 平成26年7月11日(2014.7.11)
発行日 平成26年8月20日(2014.8.20)
発明の名称または考案の名称 クラスタ噴射式加工方法
国際特許分類 H01L  21/302       (2006.01)
H01L  29/84        (2006.01)
H01L  21/3205      (2006.01)
H01L  21/768       (2006.01)
H01L  23/522       (2006.01)
B81C   1/00        (2006.01)
FI H01L 21/302 201B
H01L 29/84 Z
H01L 21/88 J
B81C 1/00
請求項の数または発明の数 11
全頁数 26
出願番号 特願2010-525664 (P2010-525664)
出願日 平成21年8月10日(2009.8.10)
国際出願番号 PCT/JP2009/064131
国際公開番号 WO2010/021265
国際公開日 平成22年2月25日(2010.2.25)
優先権出願番号 2008210140
優先日 平成20年8月18日(2008.8.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年10月15日(2010.10.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】小池 国彦
【氏名】妹尾 武彦
【氏名】吉野 裕
【氏名】東 周平
【氏名】松尾 二郎
【氏名】瀬木 利夫
【氏名】二宮 啓
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査官 【審査官】宮崎 園子
参考文献・文献 特開平08-319105(JP,A)
特表2005-512312(JP,A)
国際公開第2005/031838(WO,A1)
特開昭62-007442(JP,A)
特開2001-137797(JP,A)
調査した分野 H01L 21/302
特許請求の範囲 【請求項1】
反応性ガスと、反応性ガスより低沸点のガスとからなる混合ガスを、液化しない範囲の圧力で噴出部から所定の方向に断熱膨張させながら噴出させ、電気的に中性な反応性クラスタを生成し、前記反応性クラスタを真空処理室内の試料に噴射して、試料表面に化学的な反応による加工を行う
ことを特徴とするクラスタ噴射式加工方法。
【請求項2】
前記反応性ガスがハロゲン間化合物ガス、又は、ハロゲン化水素ガスであることを特徴とする請求項1に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項3】
前記試料が半導体材料又は金属材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項4】
前記試料表面に、フォトレジスト、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、又は、酸窒化ケイ素膜のいずれか一種以上を用いてパターンを形成し、前記パターンをマスクとして用いて、前記試料を加工することを特徴とする請求項1に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項5】
前記試料表面に前記反応性ガスに耐性を持つ金属材料を用いてパターンを形成し、前記パターンをマスクとして用いて前記試料を加工することを特徴とする請求項1に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項6】
前記反応性クラスタを前記試料表面に対し、斜めの方向から噴射することで、前記試料を斜めに加工することを特徴とする請求項1に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項7】
前記噴出部又は前記試料を移動することにより、前記試料表面を平坦化することを特徴とする請求項6に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項8】
前記噴出部又は前記試料を移動することにより、直線加工、曲線加工及び広面積加工を行うことを特徴とする請求項1に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項9】
前記試料に貫通孔を形成することを特徴とする請求項1に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項10】
試料表面の自然酸化膜を除去した後に、表面を加工することを特徴とする請求項1に記載のクラスタ噴射式加工方法。
【請求項11】
複数の前記噴出部から前記反応性ガスを同一方向に噴出して前記試料に反応性クラスタを噴出する加工方法、複数の前記噴出部から前記反応性ガスを異なる方向に噴出して前記試料に反応性クラスタを噴出する加工方法、又は、複数の前記噴出部の流量及び圧力を同一に若しくは個別に制御して前記試料に反応性クラスタを噴出する加工方法から選ばれる1種類若しくは2種類以上の加工方法を同時に行うことを特徴とする請求項1に記載のクラスタ噴射式加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ガスから形成した反応性クラスタを用いて試料表面を加工する、クラスタ噴射式加工方法、及び、反応性クラスタを用いた加工方法により製造される、半導体素子、微小電気機械素子、及び、光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
試料表面にガスクラスタを照射して加工を行う方法としては、例えば、ガスクラスタをイオン化し、電界や磁界により加速して試料表面に衝突させることで試料表面の原子や分子を除去する、ガスクラスタイオンビームを用いた方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述の試料の加工方法では、ガス供給部から、常温常圧の気体状の物質と希ガスとを混合した加圧ガスを噴出することで、気体状物質の塊状原子集団または分子集団からなるガスクラスタを生成する。そして、このガスクラスタに電子線を照射することでイオン化し、ガスクラスタイオンビームを形成する。
【0004】
このガスクラスタイオンビームを固体表面に照射すると、クラスタイオンを構成する分子または原子種相互、及び、固体表面の原子との間で多段階の衝突が発生する。このため、横方向の運動成分を持った反射原子又は分子を生じ、この反射原子又は分子により、基板表面の平坦化や清浄化が可能となる。
このように、ガスクラスタイオンビームによって、試料の表面を処理することができる。
【0005】
また、クラスタイオンを用いる加工装置に、クラスタイオンに加速電圧を加える加速電界部、及び、減速電圧を加える減速電界部を備えることにより、クラスタイオンビームに与える加速電圧を段階的又は連続的に減少させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開平8-319105号公報
【特許文献2】特開2005-310977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のガス・クラスタ・イオン・ビームを用いた方法や、ガス・クラスタ・イオン・ビームを用いる装置では、クラスタをイオン化させて直流電圧によりイオンを加速する工程を行っている。そのため、弱いイオン化分子、又は、ニュートライザーを用いて、クラスタイオンを電気的に中性に変化させてから試料に衝突させている。
【0008】
しかし、上述の方法では、クラスタを完全に電気的中性の粒子にすることができず、試料への電気的ダメージを完全に無くすことができない。
【0009】
また、例えば、半導体素子や、微小電子機械素子(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)、光学部品等を作製する際に、アスペクト比1以上の深掘加工や、基板への貫通孔の形成、金属層のエッチングを行う。このような加工は、一般的にはプラズマ異方性エッチングにより行われている。
しかし、プラズマ異方性エッチングにより上述の加工を行うと、例えば、既に基板に形成されているMOSトランジスタやMOSキャパシタ等からなるコントローラ・トランジスタの閾値電圧等の特性が変化してしまう。また、例えば、半導体素子に形成されている多層配線構造において、プラズマ熱により誘電率の低い材料(Low-k)からなる層間絶縁膜の誘電率が変化してしまう。
また、プラズマ処理以外にも、例えば、エッチング液への浸漬法によるエッチングも行われる。しかし、プラズマ処理や浸漬法のよるエッチングでは、サイドエッチングやアンダーカット等の発生量が大きく、微細化や高密度化されたパターンには適さない。
【0010】
上述した問題の解決のため、本発明においては、電気的に中性な反応性クラスタを用いた試料の加工方法を提供するものである。また、本発明においては、上述の加工方法の適用による異方性エッチングによって加工されている半導体素子、微小電子機械素子、及び、光学部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のクラスタ噴射式加工方法は、反応性ガスより低沸点のガスとからなる混合ガスを、液化しない範囲の圧力で、所定の方向に断熱膨張させながら噴出させ、電気的に中性な反応性クラスタを生成し、前記反応性クラスタを真空処理室内の試料に噴射して試料表面に化学的な反応による加工を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、試料の加工の際に、反応性ガスと反応性ガスより低沸点なガスを用いて反応性クラスタを形成することにより、反応性クラスタが試料に衝突し、試料と反応することにより、試料表面を加工することができる。このため、電界や磁界を加えてガスクラスタをイオン化する必要がなく、且つ、イオン化していない電気的中性粒子のため、クラスタを電気的に中性にする必要がない。よって、試料への電気的なダメージを与えない。さらに、シースが発生しないため、側壁方向への反応性クラスタの引き込みが発生せず、異方性エッチングの深さ方向への直進性が向上する。
従って、本発明によれば、試料への電気的なダメージを無くした状態で、深さ方向への
直進性が高い加工が可能となる。
また、本発明によれば、反応性クラスタの真空処理室内への噴射により半導体基板を加工する。このため、プラズマ異方性エッチングを行うこと無く、高精度の異方性エッチングを行うことができる。このため、プラズマ処理によるトランジスタの閾値電圧の変化や、層間絶縁膜の誘電率の変化等を発生させずに、基板等にアスペクト比1以上の深掘加工を行うことができる。また、高精度の異方性エッチングにより、サイドエッチングやアンダーカットの発生量が非常に小さく、高密度化や微細化されたパターンを形成することができる。このため、反応性クラスタを用いた精度の高い異方性エッチングにより、設計値からのずれが少ない半導体素子、微小電子機械素子、及び、光学部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の加工方法にかかる試料の加工装置の一実施の形態の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の加工方法において、一次圧力及び試料への噴射時間と、試料のエッチング速度の関係を示す図である。
【図3】本発明の加工方法において、噴出部と試料表面との距離と、加工による試料のエッチング速度との関係を示す図である。
【図4】本発明の加工方法において、噴出部と試料表面との距離を26mmとして加工した場合の加工後の試料表面の状態を表す写真である。
【図5】本発明の加工方法において、噴出部と試料表面との距離を35mmとして加工した場合の加工後の試料表面の状態を表す写真である。
【図6】本発明の加工方法において、反応性クラスタの入射角度を試料表面に対して斜め方向として、試料表面の加工を行った場合の加工後の試料表面付近の断面の写真である。
【図7】本発明の加工方法において、貫通孔が形成されたケイ素単結晶の状態の写真である。
【図8】ClFガスを単独で用いて試料表面の加工を行った場合の加工後の試料表面の状態を表す写真である。
【図9】Arガスを単独で用いて試料表面の加工を行った場合の加工後の試料表面の状態を表す写真である。
【図10】一次圧力を-0.09MPaGとして試料表面の加工を行った場合の加工後の試料表面の状態を表す写真である。
【図11】Clガスを用いて加工した場合の加工後の試料表面の状態を表す写真である。
【図12】Fガスを用いて加工した場合の加工後の試料表面の状態を表す写真である。
【図13】本発明の加工方法において、酸化ケイ素膜を形成した試料の加工を行った場合の加工後の試料表面の状態を示す写真である。
【図14】本発明の加工方法において、自然酸化膜を除去した試料の表面を加工した場合の加工後の試料表面の状態を表す写真
【図15】本発明の加工方法において、自然酸化膜を除去せずに試料の表面を加工した場合の加工後の試料表面の状態を表す写真である。
【図16】本発明の加工方法において、一次圧力及び試料への噴射時間と、試料のエッチング速度の関係を示す図である。
【図17】本発明の半導体素子の実施の形態の概略構成を示す図である。
【図18】A~Cは、本発明の半導体素子の実施の形態の製造工程図である。
【図19】本発明の圧力センサの実施の形態の概略構成を示す図である。
【図20】本発明の圧力センサの実施の形態の製造工程を説明する図である。
【図21】Aは、本発明の光学素子の実施の形態の製造工程図である。Bは、本発明の光学素子の実施の形態の概略構成図である。
【図22】Aは、本発明の光学素子の実施の形態の製造工程図である。Bは、本発明の光学素子の実施の形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を用いて説明する。
まず、本発明の加工方法に適用する試料の加工装置の一実施の形態を図1に示す。
図1Aに示す加工装置は、真空処理室13内に、ガス供給部11と、試料台14が備えられて構成されている。

【0018】
ガス供給部11には、断熱膨張するための充分に小さい面積の開孔を有する噴出部12が設けられている。また、噴出部12は、真空処理室13内に備えられる。
また、図示しないガスの供給手段により、ガス供給部11に、反応性ガスであるハロゲン間化合物又はハロゲン化水素と、反応性ガスより低沸点なガスとの混合ガスが供給される構成である。そして、ガス供給部11内に充填された混合ガスの分子18が、噴出部12から噴射されて反応性クラスタ19が形成される構成である。

【0019】
噴出部12は、ガス供給部11の端部おいて、例えば、図1Bに示すように円形状に形成された開口部や、図1Bに示すように矩形状に形成された開口部からなる。なお、噴出部12は、ガス供給部11と真空処理室13との間で、反応性クラスタを形成できる差圧が得られる充分に面積が小さい開口部であれば、どのような形状でもよい。

【0020】
また、真空処理室13内には、ガス供給部11と、試料17を設置するための試料台14がガス噴射方向の直線上に並ぶように設置されている。また、真空処理室13内を図示しない可動部を駆動することにより、試料台14及び噴射部12が移動可能に設置されている。
このため、試料台14と噴射部12とを移動、又は、傾斜角度を変えることにより、噴出部12との距離を変更したり、噴出部12から噴射される反応性クラスタを衝突させる位置を変更したり、反応性クラスタの入射角度を変更したりすることができる。

【0021】
真空処理室13には、ターボ分子ポンプ15及びドライポンプ16が接続され、これらの2つのポンプを組み合わせることにより、真空処理室13内を減圧することができる。

【0022】
次に、本発明の試料の加工方法の一実施の形態として、図1に示した加工装置を用いた試料の加工方法について説明する。

【0023】
まず、ガス供給部11に、反応性ガスとして、例えば、ハロゲン間化合物又はハロゲン化水素と、反応性ガスより低沸点なガスとの混合ガスを、図示しない供給手段を用いて供給する。このときのガス供給部11内の圧力(一次圧力)は、沸点の高い反応性ガスが液化しない範囲の圧力、例えば、ClF6vol%とAr94vol%との混合ガスの場合には、0.3MPaG以上1.0MPaG以下とする。
なお、一次圧力は、大気圧基準の圧力単位であるPaGを使用し、二次圧力は、絶対圧力基準の圧力単位であるPaを使用する。

【0024】
そして、真空処理室13内を、ターボ分子ポンプ15及びドライポンプ16により真空引きし、真空処理室13内の圧力(二次圧力)を、100~0.1Pa以下、特に好ましくは10Pa以下に制御する。ガス供給部11内の混合ガスの一次圧力と、真空処理室13内の二次圧力との差により、ガス供給部11内の混合ガスが、噴出部12から真空処理室13内に噴射される。
このとき、噴出部12からのガス噴射は、一次圧力と二次圧力との差圧により行われる。このため、一次圧力と二次圧力との差を大きくすることが望ましい。但し、混合ガスが液化した状態では、安定したガス供給ができないため、一次圧力を混合ガスが液化しない範囲の圧力以下で行う必要がある。
また、一次圧力と二次圧力の差圧が大きい方が噴出部12から噴射される際の運動エネルギーが大きくなる。このため、反応性クラスタが試料に衝突する際のエネルギーが大きくなり、試料を加工する反応エネルギーが大きくなる。

【0025】
このとき、噴射された混合ガスは、高圧状態から急激に低圧状態になり、電気的に中性な反応性クラスタが発生する。反応性クラスタは、通常数十~数千個の反応性ガス、例えばハロゲン間化合物又はハロゲン化水素と、反応性ガスより低沸点なガスとを構成する原子又は分子集団から形成される。

【0026】
反応性ガスとしては、加工対象となる試料との間での反応性が高いことが必要である。このため、試料として、ケイ素単結晶を用いる場合には、ケイ素との反応性が高いハロゲン間化合物を用いることが好ましい。ハロゲン間化合物としては、例えば、ClF,ClF,ClF,BrF,BrCl,IF,IFを用いることができる。特に、ケイ素との反応性が高いClFを用いることが好ましい。
また、試料として、金属材料、又は、ケイ素以外の半導体材料、例えば、GaAs,InP,GaN等を用いる場合には、金属材料との反応性が高いハロゲン化水素を用いることが好ましい。
ハロゲン化水素としては、HCl,HBr,HI等を用いることができる。特に、金属材料との反応性が高いHIを用いることが好ましい。

【0027】
このとき、上述の反応性ガスは沸点が高いため、反応性ガスのみをガス供給部11内に供給した場合には、反応性クラスタを生成するために必要な圧力を得ることができない。このため、上述の反応性ガス、例えばハロゲン間化合物及びハロゲン化水素に対して低沸点なガスを混合することにより、上述の反応性ガスの分圧を低下させることができる。このため、反応性ガスの液化を防止しながら、反応性クラスタを生成するのに充分な一次圧力を得ることができる。
反応性ガスより低沸点なガスとしては、He,Ar,Ne,Kr,Xe等の希ガス、N
,CO,O等を用いることができる。
また、反応性ガスより低沸点なガスは、ガス供給部11内で、反応性ガスと反応しないことが望ましい。ガス供給部11内で、反応性ガスと、反応性ガスより低沸点なガスが反応することにより、安定して反応性クラスタを生成することができず、試料の加工が困難になる場合がある。

【0028】
発生した反応性クラスタは、ガス供給部11から噴射された際の運動エネルギーにより、噴出部12から、試料台14に設置された試料17に向かって噴射される。そして、試料17の表面に衝突することにより、運動エネルギーが反応エネルギーへと変換され、試料と反応する。
特に、試料との反応性が高いガス、例えばハロゲン間化合物又はハロゲン化水素を用いることにより、反応性クラスタの衝突部分において、反応性ガスと試料との反応が起こり、試料表面の原子又は分子を効率よくエッチング、除去することができる。このため、試料表面を互いの反応性が高い組み合わせの反応性ガスと試料とを用いることにより、効率的に試料を加工することができる。

【0029】
上述のように、反応性ガスと反応性ガスより低沸点なガスの反応性クラスタを試料に噴射して試料を加工することにより、クラスタに加速電圧を加えることなく、試料を加工することができる。この反応性クラスタはイオンになっていないため、反応性クラスタを中性化する必要がなく、クラスタが完全に中性化されていない場合に発生する試料への電気的なダメージをなくすことができる。

【0030】
なお、上述の装置では、混合ガスを噴出するための噴出部が1つ備えられた加工装置について説明したが、本発明の加工方法において、加工装置に備える噴出部の数は複数であってもよい。
複数の噴出部から同一方向にクラスタを噴出して試料の加工を行うことにより、単一の噴射部を用いた加工よりも広範囲の加工行うことができるとともに、試料の加工速度が向上する。
また、噴出方向が異なる噴出部を複数設けることにより、試料に対して、垂直方向からのクラスタの噴射と、斜め方向からのクラスタの噴射を同時に行うことが可能となる。また、複数の噴出部において混合ガス圧力や流量を同一に若しくは個別に制御することにより、試料の表面状態や加工速度を制御することが可能となる。
さらに、前記の加工方法を複数組み合わせることができ、従来と比較して複雑な形状がより早く、また一度の加工で行うことが可能となる。

【0031】
次に、上述のクラスタ噴射式加工方法を用いて製造することができる、本発明の半導体素子の実施の形態について説明する。図17に、本実施の形態の半導体素子の概略構成図を示す。
図17に示す半導体素子40は、基体51と、基体51上に実装された半導体チップ41とから構成されている。

【0032】
半導体チップ41は、半導体基板42の一方の主面上に形成されている配線層43と層間絶縁層44とからなる多層配線層50と、他方の主面上に形成されている接続用の電極パッド49と、半導体基板42を貫通して形成されている貫通電極45とを備える。
また、基体51には、基体51の一方の主面上に形成されている配線層52と層間絶縁層53とからなる多層配線層55、及び、接続用の電極パッド54を備える。
そして、基体51上に形成されている電極パッド54と、半導体基板42上に形成されている電極パッド49とが接続することにより、半導体チップ41が基体51上に実装されている。

【0033】
半導体チップ41に形成されている貫通電極45は、上述の反応性クラスタを用いたエッチングにより形成された孔部56内に形成されている埋め込み導電層46からなる。
また、半導体基板42設けられた貫通孔は、上述の反応性クラスタを用いた試料の加工方法により形成されている。

【0034】
また、貫通電極45は、半導体基板42に設けられた孔部56において、孔部56の側壁に絶縁層48が形成されている。そして、この側壁に添って絶縁層48上に、バリアメタル層47が形成されている。

【0035】
また、半導体チップ41に形成されている配線層43、及び、基体51に形成されている配線層52は、例えば、サブトラクティブ法で形成する場合には、絶縁層上の全面に配線層となる導電体層を形成した後、フォトレジストなどによる配線パターンを形成し、導電体層をエッチングすることにより、所望のパターンを有する配線層が形成される。
この導電体層のエッチングに、上述の反応性クラスタによる試料の加工方法を用いることができる。上述の反応性クラスタによるエッチングは、異方性の高いエッチングが可能であるため、従来のサブトラクティブ法において発生するサイドエッチングやアンダーカット等による配線の細線化などの影響が無く、配線のデザインルールの微細化が可能である。従って、上述の反応性クラスタによる試料の加工方法を用いることにより、サブトラクティブ法を用いた場合にも高密度配線が可能である。

【0036】
なお、半導体基板42には、上記以外の方法により形成された貫通孔が構成されていてもよいが、少なくとも1つ以上の貫通孔が上述の反応性クラスタを用いたエッチングにより形成されている。また、上記の配線層は、上述の反応性クラスタを用いたエッチングにより形成されことが望ましいが、この方法以外の方法によりエッチングが行われていてもよい。
従って、上述の半導体素子において、半導体基板に設けられた孔部、又は、配線パターンのうち、いずれか1つ以上が、上述の反応性クラスタによる加工を用いて形成されていればよく、上述の反応性クラスタによる加工に併せて、他の加工方法を併用して形成された上記各構成を備えていてもよい。

【0037】
次に、本発明の半導体素子の製造方法の実施の形態について説明する。
まず、図18Aに示すように、半導体基板42の一方の主面側に、配線層43と層間絶縁層44とを積層して、多層配線層50を形成する。そして、多層配線層50を形成した半導体基板42に対して、上記多層配線50側から、孔部56を形成する。孔部56は、多層配線層50を貫通し、半導体基板42の厚さ方向の途中まで形成する。また、形成した孔部には、例えば熱酸化法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用いて絶縁層48を形成する。

【0038】
上述の孔部56の形成には、上述の反応性クラスタを用いた加工方法を適用する。
まず、例えば、フォトリソグラフィにより、半導体基板42に孔部56を形成する部分のみを開口するフォトレジストによるパターンマスクを形成し、孔部56のエッチングを行う。このエッチングには、上述の反応性クラスタによる試料の加工方法を用いる。例えば、図1に示す加工装置において、試料台に半導体基板42を載置し、噴出部から反応性ガスと、反応性ガスよりも低沸点なガスとの混合ガスを噴出する。これにより、反応性クラスタを生成して、半導体基板42をエッチングする。半導体基板42としてシリコン基板を用いる場合には、シリコン基板との反応性が高いClFガスと、アルゴンガスとの混合ガスを用いることが好ましい。

【0039】
また、半導体基板42上への配線層43の形成は、例えば、サブトラクティブ法で形成する場合には、絶縁層上の全面に配線層となる導電体層を形成し、フォトレジストなどによる配線パターンのマスクを形成する。そして、このマスクを用いて導電体層をエッチングすることにより、所望のパターンを有する配線層43を形成する。

【0040】
上述の反応性クラスタによるエッチングは、異方性の高いエッチングが可能である。このため、この反応性クラスタを用いたエッチングによって、アスペクト比1以上の深掘加工を精密に行うことができ、半導体基板42に精密な孔部56を形成することができる。また、反応性クラスタによる加工方法を用いて、配線層43のパターニングを行うことにより、導電体層のサイドエッチングやアンダーカット等による配線の細線化などが発生せず、配線のデザインルールの微細化や、高密度配線が可能となる。

【0041】
次に、図18Bに示すように、孔部56内にバリアメタル層47と、埋め込み導電層46とを形成する。
まず、孔部56を含む半導体基板42の全面に、スパッタ法やCVD法を用いて、TiN,WN,Ti,TaN,Ta等からなるバリアメタル層47を形成する。そして、バリアメタル層47上に、Cu,Al,Ti,Sn等からなる導電体層を形成する。そして、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用いて、孔部46内を除く半導体基板42上に形成されている導電体層とバリアメタル層47を除去することにより、孔部56内に、バリアメタル層47と埋め込み導電層46とを形成する。

【0042】
また、CMP法のかわりに、上述の反応性クラスタを用いた加工方法により、基板の平坦化を行ってもよい。例えば、図1に示す加工装置において、試料台に半導体基板42を載置し、噴出部から反応性ガスと、反応性ガスよりも低沸点なガスとの混合ガスを噴出する。このとき、試料台を移動することにより、試料全面に反応性クラスタを噴射することができ、試料表面の平坦化を行うことができる。これにより、反応性クラスタを生成して、半導体基板42上に形成した導電体層とバリアメタル層47をエッチングする。反応性ガスには、導電体層又はバリアメタル層47に用いられる金属との反応性が高いHCl,HBr,HI等のガスを用いることが好ましい。

【0043】
次に、図18Cに示すように、埋め込み導電層46を半導体基体42の両方の主面から露出することにより、貫通電極45を形成し、この貫通電極45に接続する配線層43及び電極パッド49を形成する。
まず、半導体基板42の多層配線層50を形成していない面を、CMP法又は上述の反応性クラスタを用いたエッチングによりエッチングする。このエッチングにより、半導体基体42から埋め込み導電層46を露出する。このように、半導体基体42の両主面から埋め込み導電層46を露出することにより、貫通電極45とする。
そして、上述の多層配線層50の配線層43と同様の方法により、貫通電極45と接続する配線層43を、多層配線層50上に形成する。また、他方の面に貫通電極45を接続する電極パッド49を形成する。

【0044】
上述の工程により、半導体チップ41を形成することができる。そして、この半導体チップ41の電極パッド49を、基体51の電極パッド54に接続することにより、図17に示す半導体素子40を製造することができる。
なお、基体51は、上述の半導体チップ41の製造方法において、孔部56及び貫通電極45を形成する工程を除く同様の方法で製造することができ、また、そのほか公知の方法を用いて製造することができる。

【0045】
次に、上述のクラスタ噴射式加工方法を用いて製造することができる、本発明の微小電子機械素子(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)の実施の形態について説明する。
図19に、MEMSの実施の形態として圧力センサの概略構成図を示す。
図19に示す圧力センサ20は、コントローラ一体型のMEMSセンサが半導体基板21上に形成された構成である。

【0046】
半導体基板21上の一方の主面上には、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタやMOSキャパシタからなるMEMSセンサ・コントローラ22が形成されている。さらに、MEMSセンサ・コントローラ22に接続する誘電率の低い材料(low-k)からなるlow-k配線23が形成されている。半導体基板21及びlow-k配線23上に、絶縁性のパッシベーション膜24が形成されている。

【0047】
半導体基板21のMEMSセンサ・コントローラ22が形成されている面には、真空カバーガラス28が貼付けられている。真空カバーガラス28は、半導体基板21への貼付け面側に、容量コンデンサ兼コントローラ配線29が設けられている。この容量コンデンサ兼コントローラ配線29は、low-k配線23を介して、MEMSセンサ・コントローラ22に接続されている。真空カバーガラス28は、接着剤層31により半導体基板21のパッシベーション膜24上に接着されている。

【0048】
また、半導体基板21の他方の主面上には、スピン・オン・グラス(Spin On Glass :SOG)絶縁層25が形成されている。そして、SOG絶縁層25上に、Ni等からなる電極層26が形成されている。

【0049】
上述の半導体基板21には、両主面を貫通するアスペクト比1以上の孔部からなる圧力リファレンス真空27が形成されている。半導体基体21の圧力リファレンス真空27は、上述の反応性クラスタを用いた試料の加工方法により形成されている。そして、圧力リファレンス真空27を半導体基板21に形成することにより、圧力リファレンス真空27と接触する部分のSOG絶縁層25及び電極層26によるメンブラン構造30が圧力センサ20に形成されている。また、真空カバーガラス28の容量コンデンサ兼コントローラ配線29は、半導体基板21を介してメンブラン構造30と対向する位置に形成されている。

【0050】
次に、上述の圧力センサ20の製造方法について説明する。
まず、半導体基体21の一方の主面側に、MEMSセンサ・コントローラ22を形成する。このMEMSセンサ・コントローラ22は、公知のMOSトランジスタ及びMOSキャパシタと同じ方法により作製することができる。さらに、MEMSセンサ・コントローラ22上にlow-k材料により、MEMSセンサ・コントローラ22用のlow-k配線23を形成する。そして、半導体基板21、MEMSセンサ・コントローラ22及びlow-k配線23を覆うパッシベーション膜24を形成する。
また、半導体基板21の他方の主面側に、スピンコート法等を用いてSOG絶縁層25を形成する。そして、SOG絶縁層25上に電極層26を、例えばNiめっき等により形成する。

【0051】
次に、図20に示すように、フォトリソグラフィにより、半導体基板21に圧力リファレンス真空27を形成する部分のみを開口するフォトレジスト32によるパターンマスクを形成する。
そして、フォトレジスト32をマスクとして、半導体基板21のエッチングを行う。このエッチングには、上述の反応性クラスタによる試料の加工方法を用いる。例えば、図1に示す加工装置において、試料台に半導体基板21を載置し、噴出部から反応性ガスと、反応性ガスよりも低沸点なガスとの混合ガスを噴出する。これにより、反応性クラスタを生成して、半導体基板21をエッチングする。半導体基板21としてシリコン基板を用いる場合には、シリコン基板との反応性が高いClFガスと、アルゴンガスとの混合ガスを用いることが好ましい。
この反応性クラスタを用いたエッチングにより、半導体基板21の圧力リファレンス真空27を形成する部分にのみ、アスペクト比1以上の深掘加工を行うことができる。

【0052】
さらに、圧力リファレンス真空27となる孔部を形成した後、エッチングした真空処理室内で、半導体基板21のパッシベーション膜24上に、接着剤層31を用いて真空カバーガラスを貼付ける。真空カバーガラスには、予め容量コンデンサ兼コントローラ配線29を形成しておく。そして、容量コンデンサ兼コントローラ配線29が、low-k配線23と接続するように、半導体基板21に真空カバーガラス28を貼付ける。
以上の工程により、図19に示すコントローラと一体型の静電容量圧力センサを製造することができる。

【0053】
上述の製造方法によれば、半導体基板21のエッチング工程で反応性クラスタを用いるため、プラズマ異方性エッチングを行っていない。このため、一般的にプラズマダメージに弱いMEMSセンサ・コントローラ22を、エッチング工程前に半導体基板21上に形成した場合にも、プラズマ熱による閾値電圧や、設計値から特性に影響を与えない。また、プラズマ熱によるlow-k層間絶縁膜の誘電率の変化を無くすことができる。従って、設計値からのずれが少ないコントローラ一体型のMEMSセンサを基板上に製造することができる。

【0054】
次に、上述のクラスタ噴射式加工方法を用いて製造することができる、本発明の光学部品の実施の形態について説明する。図21Aに、露光用マスクの製造工程図を示し、図21Bに、上述の反応性クラスタを用いた加工方法により製造された露光用マスクの概略構成図を示す。

【0055】
図21Aに示すように、石英基板61上の全面に、遮光層となるMo,Ta,Cr等による金属膜64を形成する。そして、金属膜64上に、例えば、フォトリソグラフィにより、遮光層を形成する部分の金属膜64上にのみ、フォトレジストのパターンを形成する。

【0056】
次に、形成したフォトレジストをマスクとして、上述の反応性クラスタによる試料の加工方法を用いて、金属膜64をエッチングする。例えば、図1に示す加工装置において、試料台に石英基板61を載置し、噴出部から反応性ガスと、反応性ガスよりも低沸点なガスとの混合ガスを噴出する。これにより、反応性クラスタを生成して、石英基板61上の金属膜64をエッチングする。反応性ガスには、金属膜64に用いられる金属との反応性が高いHCl,HBr,HI等のガスを用いることが好ましい。

【0057】
反応性クラスタを用いて、金属膜64をエッチングした後、フォトレジストを除去する。以上の工程で、図21Bに示すように、石英基板61上に、遮光層62からなる光学パターンを備える露光用マスクを製造することができる。

【0058】
次に、本発明の光学部品の他の実施の形態として、光学スリットについて説明する。図22Aに、本実施の形態の光学スリットの製造工程図を示し、図22Bに、反応性クラスタを用いた加工方法により製造された光学スリットの概略構成図を示す。

【0059】
図22Aに示すように、シリコン基板71上に、例えば、フォトリソグラフィにより、スリットを形成するための孔部を形成する部分を除いて、フォトレジストのパターンを形成する。

【0060】
次に、形成したフォトレジストをマスクとして、上述の反応性クラスタによる試料の加工方法を用いて、シリコン基板71をエッチングする。例えば、図1に示す加工装置において、試料台にシリコン基板71を載置し、噴出部から反応性ガスと、反応性ガスよりも低沸点なガスとの混合ガスを噴出する。これにより、反応性クラスタを生成して、シリコン基板71をエッチングする。シリコン基板71のエッチングには、シリコン基板71との反応性が高いClFガスと、アルゴンガスとの混合ガスを用いることが好ましい。
そして、反応性を用いて、シリコン基板71をエッチングした後、フォトレジストを除去する。
以上の工程で、図22Bに示すように、シリコン基板71に、孔部72を形成することができる。また、エッチングにより形成された孔部72と、残存するシリコン基板71とから、スリット73を形成することができる。
このように、上述の製造方法により、図22Bに示すように、スリット73からなる光学パターンを備える光学スリット70を製造することができる。

【0061】
上述の露光用マスク及び光学スリットのような光学部品において、遮光層又は光学スリット等の光学パターンを、反応性クラスタにより形成することにより、異方性の高い光学パターンのエッチングが可能である。このため、この反応性クラスタを用いたエッチングによって、光学パターンの形成の際にサイドエッチングやアンダーカット等によるパターンの精度低下が発生せず、光学パターンの微細化や、高密度化が可能となる。
【実施例】
【0062】
次に、上述の本実施の形態のクラスタ噴射による加工方法を用いて、実際に試料を加工した結果を以下に示す。
まず、試料へ噴射する混合ガスの噴射時間と、ガス供給部内の混合ガスの一次圧力とを変化させて、試料表面を加工した。この加工による一次圧力、及び、試料への噴射時間と、試料のエッチング速度の関係を図2に示す。
【実施例】
【0063】
加工条件は、試料として表面に厚さ約2nmの自然酸化膜が形成されたケイ素単結晶を使用し、反応性ガスとしてClFガス6vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス94vol%とからなる混合ガスを使用した。また、噴出部の直径を0.1mmとした。また、一次圧力は、図2に示すように変化させ、噴射時間は、2分、5分、7分、15分と変化させた。
【実施例】
【0064】
図2に示した結果から、同じ噴射時間の条件下では、一次圧力を高くすることにより、試料のエッチング速度が増加することがわかる。従って、一次圧力を高くして二次圧力との差を大きくすることにより、発生する反応性クラスタの運動エネルギーを大きくすることができ、反応性クラスタと試料との衝突により発生する反応エネルギーを大きくすることができる。このため、エッチング速度を大きくすることができる。
【実施例】
【0065】
次に、図1に示した装置において、噴出部と試料表面との距離を、26mm、35mm、50mmと変化させて試料表面の加工を行った。噴出部と試料表面との距離と、加工による試料のエッチング速度との関係を図3に示す。また、噴出部と試料表面との距離を26mmとして加工した後の試料表面の状態を表す写真を図4に示し、噴出部と試料表面との距離を35mmとして加工した後の試料表面の状態を表す写真を図5に示す。
【実施例】
【0066】
試料の加工条件は、試料としてケイ素単結晶を使用し、反応性ガスとしてClFガス6vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス94vol%とからなる混合ガスを使用した。また、試料への反応性クラスタの噴射時間を5分、混合ガスの流量を398sccmとし、一次圧力を0.53MPaG、二次圧力を3.2Pa、真空処理室内の温度を28℃とした。
【実施例】
【0067】
図3に示すように、噴出部と試料との距離が26mmの場合には、約4.1μm/minのエッチング速度が得られた。また、噴出部と試料との距離が35mmの場合には、約2.2μm/minのエッチング速度が得られた。また、50mm以上離れると、エッチング速度がほぼ0になった。
また、噴出部と試料との距離を26mmとした場合には、距離を35mmとした場合の約2倍のエッチング速度を得ることができた。
【実施例】
【0068】
上述の結果から、噴出部と試料との距離を近付けることにより、試料のエッチング速度が大きくなることがわかる。
また、噴出部と試料との距離によって、試料のエッチング速度が変化するため、噴出部と試料との距離を変化させることにより、試料のエッチング速度を変更することができる。
【実施例】
【0069】
次に、試料台を傾けることにより、クラスタの入射角度を試料表面に対して斜め方向として、試料表面の加工を行った。また、試料には、ケイ素単結晶を使用し、表面に1.2μmの厚さのフォトレジスト層により、ライン・アンド・スペースのパターンを形成した。加工された試料表面付近の断面の写真を図6に示す。
【実施例】
【0070】
試料の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとし、反応性ガスとしてClFガス6vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス94vol%とからなる混合ガスを使用した。また、試料への反応性クラスタの噴射時間を5分、混合ガスの流量を398sccmとし、一次圧力を0.53MPaG、二次圧力を3.2Pa、真空処理室内の温度を28℃とした。
【実施例】
【0071】
図6に示すように、反応性クラスタの入射方向に合わせて、試料が斜めにエッチングされている。このように、斜め方向からの入射を行うことにより、入射角に対応した直進性の高いエッチングが可能である。
また、上述のように、噴出部と試料との距離が変化することにより、試料のエッチング速度が変化することを利用し、斜め方向からの加工時に試料とノズルとの距離を一定に保持した状態で、噴出部又は試料を移動する。これにより、突起部が優先的にエッチングされる。従って、試料表面の段差を低減して平坦化することが可能である。
【実施例】
【0072】
また、図6に示すように、試料表面に形成したフォトレジスト層は、ほとんどエッチングされず、ケイ素単結晶とフォトレジストとのエッチング選択比は、100:1以上であった。このため、フォトレジストのマスクを用いてパターンを形成した後、ケイ素単結晶を選択的に加工し、パターンを形成することができる。
【実施例】
【0073】
次に、試料に反応性クラスタを噴射することにより試料を貫通させる加工を行った。
反応性クラスタの噴射による貫通孔を形成した。貫通孔が形成されたケイ素単結晶の状態の写真を図7に示す。
【実施例】
【0074】
試料の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとし、試料として厚さ625μmのケイ素単結晶を使用し、反応性ガスとしてClFガス6vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス94vol%とからなる混合ガスを使用した。また、試料への反応性クラスタの噴射時間を15分、混合ガスの流量を585sccmとし、一次圧力を0.8MPaG、二次圧力を7.5Pa、真空処理室内の温度を25.4℃とした。
【実施例】
【0075】
図7に示すように、上述の加工により625μmの厚さのケイ素単結晶に貫通孔を形成することができた。また、625μmの厚さのケイ素単結晶に対し、15分以内の噴射時間で貫通孔を形成することができたため、上述の加工条件でのエッチング速度は、41μm/min以上となる。
【実施例】
【0076】
上述の加工結果から、反応性ガスと反応性ガスより低沸点なガスの反応性クラスタを試料に噴射することにより、試料に貫通孔を形成することができる。このため、例えば、ケイ素材料において、スクライブラインを形成したり、また、形成したスクライブラインにおいて基板を切断したりすることが可能となる。さらに、フォトレジストとの良好な選択比を利用して、フォトレジストのマスクにより試料上に任意のパターンを形成し、直線以外のスクライブラインを形成したり、形成したスクライブラインにおいて基板を切断したりすることが可能となる。
【実施例】
【0077】
次に、ガス供給部内に、混合ガスを用いる代わりに、ClFガスを単独で用いて、試料表面の加工を行った。加工された試料表面の状態を表す写真を図8に示す。
【実施例】
【0078】
試料の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとし、また、試料への反応性クラスタの噴射時間を15分、混合ガスの流量を300sccmとし、一次圧力を0.05MPaG、二次圧力を2.2Pa、真空処理室内の温度を29℃とした。
【実施例】
【0079】
図8に示すように、試料表面には、反応性クラスタによる加工跡が形成されているものの、15分の噴射時間に対して、試料表面がほとんどエッチングできず、上記の条件でのエッチング速度は、0.01μm/min以下であった。
このように、ClFガスは沸点が高く、高圧下では液化してしまため、ClFガスを単独で用いた場合には、試料の加工において、一次圧力を高くすることができず、二次圧力との差を大きくすることができない。従って、反応性クラスタを生成するための充分な断熱膨張を得ることができない。
従って、反応性ガスに反応性ガスより低沸点なガスを混合し、一次圧力を大きくすることにより、噴射部から噴射される混合ガスのクラスタが充分に生成され、試料表面を効率的に加工することが証明された。
【実施例】
【0080】
次に、混合ガスの代わりに、Arガスを単独で用いて、試料表面を加工した。加工された試料表面の状態を表す写真を図9に示す。
【実施例】
【0081】
試料の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとした。また、試料への反応性クラスタの噴射時間を15分、Arガスの流量を637sccmとし、一次圧力を0.8MPaG、二次圧力を8.6Pa、真空処理室内の温度を21.1℃とした。
【実施例】
【0082】
図9に示すように、Arガスを用いた加工では、試料表面には変化が見られなかった。このため、Arガスを単独で用いた加工では、ケイ素単結晶の加工ができないことがわかる。
従って、混合ガスとして反応性ガスと、反応性ガスより低沸点なガスを用いることにより、試料表面の加工ができたことが証明された。
【実施例】
【0083】
次に、噴出部の口径を6mmに拡大し、一次圧力を-0.09MPaGとして試料表面の加工を行った。加工後の試料表面の状態を表す写真を図10に示す。
【実施例】
【0084】
試料の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとし、反応性ガスとしてClFガス6vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス94vol%とからなる混合ガスを使用した。また、試料への混合ガスの噴射時間を15分、混合ガスの流量を580sccmとし、二次圧力を7.5Pa、真空処理室内の温度を25.4℃とした。
【実施例】
【0085】
上述の条件では、噴出部の口径を6mmに拡大して一次圧力を下げ、二次圧力との差を小さくした。この結果、図10に示すように、試料表面には加工跡が形成されなかった。
この結果から、上述の加工条件では、一次圧力が低すぎるため、混合ガスのクラスタが有効に形成されなかったと考えられる。また、この結果から、反応性クラスタ生成には、一次圧力と二次圧力の差圧が必要であることがいえる。
【実施例】
【0086】
次に、反応ガスとして用いるハロゲン間化合物又はハロゲン化水素の代わりに、Clガス又はFガスを用いて、試料表面の加工を行った。Clガスを用いて加工した試料表面の状態を表す写真を図11に示し、Fガスを用いて加工した試料表面の状態を表す写真を図12に示す。
【実施例】
【0087】
Clガスを用いた場合の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとし、Clガス5vol%と、不活性ガスとしてArガス95vol%とからなる混合ガスを使用した。また、試料への混合ガスの噴射時間を15分、混合ガスの流量を542sccmとし、一次圧力を0.81MPaG、二次圧力を8.3Pa、真空処理室内の温度を28.4℃とした。
【実施例】
【0088】
ガスを用いた場合の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとし、混合ガスとして、Fガス5vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス95vol%とからなる混合ガスを使用した。また、試料への混合ガスの噴射時間を30分、混合ガスの流量を569sccmとし、一次圧力を0.81MPaG、二次圧力を8.6Pa、真空処理室内の温度を27.4℃とした。
【実施例】
【0089】
図11及び図12に示すように、混合ガスが噴射された部分が変色したものの、試料表面はほとんどエッチングされていない。この結果から、ハロゲンと不活性ガスとの混合ガスを用いた場合には、試料の加工ができないことがわかる。
この結果から、反応性ガス、例えばハロゲン間化合物及びハロゲン化水素と、反応性ガスより低沸点なガスとの混合ガスを用いることにより、試料表面の加工が可能となることがわかる。
【実施例】
【0090】
次に、ケイ素単結晶の表面に、酸化ケイ素膜を形成した試料を用いて、試料表面の加工を行った。加工後の試料表面の状態を示す写真を図13に示す。
【実施例】
【0091】
試料の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとし、反応性ガスとしてClFガス6vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス94vol%とからなる混合ガスを使用した。また、試料への混合ガスの噴射時間を15分、混合ガスの流量を560sccmとし、一次圧力を0.7MPaG、二次圧力を5Pa、真空処理室内の温度を28.2℃とした。
【実施例】
【0092】
図13に示すように、試料表面に形成された酸化ケイ素膜は、上述の加工条件ではエッチングされていない。従って、上述の加工方法では、酸化ケイ素膜は、ケイ素単結晶に比べてエッチング速度が非常に小さく、酸化ケイ素膜とケイ素材料とのエッチング選択比が大きいことがわかる。このため、フォトマスクによるパターンを形成する他に、ケイ素材料の表面に、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜等によるマスクのパターンを形成することにより、このパターンに応じたケイ素材料の加工が可能となる。
【実施例】
【0093】
このように、反応性ガスに対して耐性を持つ膜を試料表面にパターンマスクとして形成することにより、パターンに応じた試料の加工が可能となる。
また、パターンマスクの材料として上述の材料の他に、金属材料を用いることもできる。反応性ガスがハロゲン間化合物である場合には、金属材料との反応性を考慮する必要がないため、一般的なパターンマスクとして用いられる金属材料を適用して、金属材料によるマスクを使用した試料の加工が可能となる。
また、反応性ガスがハロゲン化水素の場合には、ハロゲン化水素に対して耐性があるNi等の金属材料を選択して、金属材料によるマスクを使用した試料の加工が可能となる。
【実施例】
【0094】
次に、試料となるケイ素単結晶の表面に形成された、厚さ約2nmの自然酸化膜を、フッ化水素(HF)で処理することにより除去した後、試料表面の加工を行った。加工後の表面の状態を表す写真を図14に示す。また、比較のため、自然酸化膜を除去せずに表面加工を行った試料について、加工後の表面の状態を表す写真を図15に示す。
【実施例】
【0095】
試料の加工条件は、噴出部と試料との距離を26mmとし、反応性ガスとしてClFガス6vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス94vol%とからなる混合ガスを使用した。また、試料への混合ガスの噴射時間を5分、混合ガスの流量を560sccmとし、一次圧力を0.3MPaG、二次圧力を1.5Pa、真空処理室内の温度を28.2℃とした。
また、比較のために自然酸化膜を除去せずに表面加工をした試料は、図2で示した、反応性ガスとしてClFガス6vol%と、反応性ガスより低沸点なガスとしてArガス94vol%とからなる混合ガスを使用し、一次圧力を0.3MPaG、噴射時間を5分として加工した試料である。
【実施例】
【0096】
図14に示した結果と、図15に示した結果とを比較すると、図14に示した自然酸化膜を除去した試料のエッチング深さが8.67μmであったのに対し、図15に示した自然酸化膜を除去していない試料のエッチング深さが、0.711μmであった。
【実施例】
【0097】
自然酸化膜を除去していない試料のエッチング速度が、0.14μm/minであるのに対し、自然酸化膜を除去した試料のエッチング速度が、1.73μm/minとなる。この結果、ケイ素単結晶の表面に形成された自然酸化膜をHF等によって除去することにより、エッチング速度が約12倍になった。
【実施例】
【0098】
この加工による一次圧力、及び、試料への噴射時間と、試料のエッチング速度の関係を図16に示す。なお、図16では、比較のため、図2に示した試料への噴射時間と、試料のエッチング速度の関係をそのまま記載し、上述の自然酸化膜を除去して行った試料の加工を星印と矢印で示している。
図16に示すように、一次圧力及び噴射時間がほぼ同じ条件において、自然酸化膜を除去していない試料を加工した場合に比べ、自然酸化膜を除去することにより、エッチング速度が大きく向上していることがわかる。
従って、ケイ素材料の自然酸化膜を除去することにより、試料のエッチング速度を向上することができる。
【実施例】
【0099】
本発明は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【符号の説明】
【0100】
11 ガス供給部
12 噴出部
13 真空処理室
14 試料台
15 ターボ分子ポンプ
16 ドライポンプ
17 試料
18 混合ガスの分子
19 反応性クラスタ
20 圧力センサ
21 半導体基体
22 MEMSセンサ・コントローラ
23 low-k配線
24 パッシベーション膜
25 SOG絶縁層
26 電極層
27 圧力リファレンス真空
28 カバーガラス
29 容量コンデンサ兼コントローラ配線
30 メンブラン構造
31 接着剤層
32,63,74 フォトレジスト
40 半導体素子
41 半導体チップ
42 半導体基板
43,52 配線層
44,53 層間絶縁層
45 貫通電極
46 埋め込み導電層
47 バリアメタル層
48 絶縁層
49,54 電極パッド
50,55 多層配線層
51 基体
56,72 孔部
60 露光用マスク
61 石英基板
62 遮光層
64 金属膜
70 光学スリット
71 シリコン基板
73 スリット
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図16】
3
【図17】
4
【図18】
5
【図19】
6
【図20】
7
【図21】
8
【図22】
9
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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