TOP > 国内特許検索 > アルキルシロキサンエアロゲルの製造方法、並びに、アルキルシロキサンエアロゲル、その製造装置およびそれを含むパネルの製造方法 > 明細書

明細書 :アルキルシロキサンエアロゲルの製造方法、並びに、アルキルシロキサンエアロゲル、その製造装置およびそれを含むパネルの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5250900号 (P5250900)
登録日 平成25年4月26日(2013.4.26)
発行日 平成25年7月31日(2013.7.31)
発明の名称または考案の名称 アルキルシロキサンエアロゲルの製造方法、並びに、アルキルシロキサンエアロゲル、その製造装置およびそれを含むパネルの製造方法
国際特許分類 C08G  77/04        (2006.01)
C08J   9/00        (2006.01)
FI C08G 77/04
C08J 9/00
請求項の数または発明の数 26
全頁数 27
出願番号 特願2007-526036 (P2007-526036)
出願日 平成18年7月19日(2006.7.19)
国際出願番号 PCT/JP2006/314298
国際公開番号 WO2007/010949
国際公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
優先権出願番号 2005209000
2005228500
優先日 平成17年7月19日(2005.7.19)
平成17年8月5日(2005.8.5)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成21年5月26日(2009.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000204882
【氏名又は名称】株式会社ダイナックス
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】中西 和樹
【氏名】金森 主祥
【氏名】會澤 守
【氏名】田村 健太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100107641、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 耕一
【識別番号】100143236、【弁理士】、【氏名又は名称】間中 恵子
審査官 【審査官】阪野 誠司
参考文献・文献 特開平10-182261(JP,A)
特開2001-055508(JP,A)
特開平06-219726(JP,A)
特開2003-212999(JP,A)
特開2003-206125(JP,A)
特開平08-504674(JP,A)
特開平10-072212(JP,A)
特開2003-231755(JP,A)
特開2005-510436(JP,A)
特開2002-521302(JP,A)
特開2005-290033(JP,A)
米国特許第04374933(US,A)
調査した分野 C08G 77/04
C08J 9/00
C01B 33/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)分子中に加水分解性官能基および非加水分解性官能基を有するシリコン化合物を、界面活性剤を含む酸性水溶液に添加して、ゾルを生成させる反応と前記ゾルをゲル化させる反応とを一段階で行わせる工程と、
(b)前記工程(a)によって形成されたゲルを乾燥させる工程と、
を含むアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法であって、
前記工程(a)において、前記酸性水溶液が、加水分解によって前記ゾルをゲル化させる反応を促進させる物質を生成する加水分解性化合物をさらに含み、前記加水分解性化合物を加水分解させることによって前記ゾルをゲル化させる反応を行い、
前記工程(b)において、前記ゲルの乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で前記ゲルを乾燥させる、アルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項2】
前記加水分解性化合物は、前記シリコン化合物10gに対して0.1g~20.0gの割合で前記酸性水溶液に含まれている、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項3】
前記工程(b)において、前記ゲルを乾燥させる際に、前記ゲルの体積を収縮させ、その後前記ゲルの体積を回復させる、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項4】
前記工程(b)において、体積が回復した前記ゲルの体積が、前記ゲルの乾燥前の体積の50%以上である、請求項3に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項5】
前記工程(b)において、前記ゲルの体積を収縮させる前の前記溶媒の蒸発速度が、前記ゲル1cm3当たり0.01g/h以上0.35g/h以下である、請求項3に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項6】
前記溶媒の表面張力が、15mN/m以下である、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項7】
前記シリコン化合物における前記非加水分解性官能基の数が、1および2から選ばれる少なくとも何れか一方である、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項8】
前記シリコン化合物が、メチルトリメトキシシランおよびジメチルジメトキシシランから選ばれる少なくとも何れか一方である、請求項7に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも何れか1種を含む、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、および、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック共重合体から選ばれる少なくとも何れか一方である、請求項9に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項11】
前記カチオン性界面活性剤が、臭化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化セチルトリメチルアンモニウムから選ばれる少なくとも何れか一方である、請求項9のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項12】
前記アニオン性界面活性剤が、ドデシルスルホン酸ナトリウムである、請求項9に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項13】
前記加水分解性化合物が、加水分解によって塩基性触媒物質を生成させる化合物である、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項14】
前記加水分解性化合物が、尿素である、請求項13に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の製造方法によって製造されるアルキルシロキサンエアロゲルであって、
3次元網目状に連続した貫通孔と、アルキルシロキサンからなる3次元網目状に連続した骨格と、から形成される3次元網目構造を有し、
前記貫通孔の直径が5nm以上100nm以下、前記骨格の断面積の直径が2nm以上25nm以下であり、
さらに、圧縮破壊応力が5MPa以上、最大圧縮変形率が50%以上、変形回復率が80%以上である、アルキルシロキサンエアロゲル。
【請求項16】
請求項1に記載の製造方法によって製造されるアルキルシロキサンエアロゲルであって、
3次元網目状に連続した貫通孔と、アルキルシロキサンからなる3次元網目状に連続した骨格と、から形成される3次元網目構造を有し、
前記骨格の断面積の直径が2nm以上25nm以下で、圧縮破壊応力が5MPa以上、最大圧縮変形率が50%以上、変形回復率が80%以上であり、
10mm厚みに換算した場合の波長500nm~1000nmの光の透過率が50%以上である、アルキルシロキサンエアロゲル。
【請求項17】
1軸圧縮によるポアソン比が0.05以下である、請求項15または16に記載のアルキルシロキサンエアロゲル。
【請求項18】
10mm厚みに換算した場合の波長500nm~1000nmの光の透過率が50%以上である、請求項15に記載のアルキルシロキサンエアロゲル。
【請求項19】
請求項1に記載の製造方法によってアルキルシロキサンエアロゲルを製造するための装置であって、
溶媒を含むアルキルシロキサンゲルを乾燥させるための乾燥機を備え、
前記乾燥機が、
前記アルキルシロキサンゲルを内部に収納可能で、かつ、密閉可能な容器と、
前記アルキルシロキサンゲルに含まれる前記溶媒の蒸発速度を制御可能な制御部と、
前記容器内における前記溶媒の気体濃度を均質化するために前記容器内に設けられた、前記容器内の雰囲気を攪拌する攪拌手段と、
を含む、アルキルシロキサンエアロゲルの製造装置。
【請求項20】
ゾルを生成させる反応と、前記ゾルをゲル化させてアルキルシロキサンゲルを得る反応とを、一段階で行わせるための反応装置をさらに備え、
前記反応装置が、容器部と、前記容器部内の反応物質を攪拌するための攪拌機と、前記容器部内の反応物質の温度を制御するための温度制御手段と、を含む、
請求項19に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造装置。
【請求項21】
アルキルシロキサンエアロゲルを含むパネルを製造する方法であって、
(A)分子中に加水分解性官能基および疎水性官能基を有するシリコン化合物を、界面活性剤を含む酸性水溶液に添加して、ゾルを生成する反応と前記ゾルをゲル化させる反応とを一段階で行わせる工程と、
(B)前記工程(A)によって形成されたゲルを、前記ゲルの乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で乾燥させて、収縮させる工程と、
(C)収縮した前記ゲルを方枠内に配置し、前記溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で前記ゲルをさらに乾燥させ、前記ゲルの体積を回復させて前記ゲルを前記方枠に密着させて、前記ゲルと前記方枠とを一体化させる工程と、を含み、
前記工程(A)において、前記酸性水溶液が、加水分解によって前記ゾルをゲル化させる反応を促進させる物質を生成する加水分解性化合物をさらに含み、前記加水分解性化合物を加水分解させることによって前記ゾルをゲル化させる反応を行う、
パネルの製造方法。
【請求項22】
3次元網目状に連続した貫通孔と、アルキルシロキサンからなる3次元網目状に連続した骨格と、から形成される3次元網目構造を有し、前記貫通孔の直径が5nm以上100nm以下、前記骨格の断面積の直径が2nm以上25nm以下であり、さらに、圧縮破壊応力が5MPa以上、最大圧縮変形率が50%以上、変形回復率が80%以上であるアルキルシロキサンエアロゲルを得る、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項23】
3次元網目状に連続した貫通孔と、アルキルシロキサンからなる3次元網目状に連続した骨格と、から形成される3次元網目構造を有し、前記骨格の断面積の直径が2nm以上25nm以下で、圧縮破壊応力が5MPa以上、最大圧縮変形率が50%以上、変形回復率が80%以上であり、10mm厚みに換算した場合の波長500nm~1000nmの光の透過率が50%以上であるアルキルシロキサンエアロゲルを得る、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項24】
前記工程(a)と前記工程(b)との間に、前記工程(a)から得たゲルに対して溶媒置換を行う工程をさらに含む、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項25】
前記工程(a)と前記工程(b)との間に、前記工程(a)から得たゲルに対して、有機系の極性溶媒を用いて溶媒交換を行い、引き続き、前記工程(b)において前記ゲルの乾燥に用いられる溶媒を用いて溶媒交換する工程をさらに含む、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
【請求項26】
前記工程(b)において前記ゲルの乾燥に用いられる溶媒として、分子中に少なくとも一つのフッ素原子を含むフッ素溶媒を用いる、請求項1に記載のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルシロキサンエアロゲルの製造方法と、アルキルシロキサンエアロゲル、その製造装置およびそれを含むパネルの製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゲルは気孔率が高く、熱伝導率が極めて低いことから、高性能断熱材として知られている。さらに、可視光線透過率が高く、比重が0.1~0.2程度と軽量であるため、ソーラーヒートコレクターパネルの断熱材や住宅用断熱窓材に用いることが検討されている。
【0003】
一般に、エアロゲルなどの無機質多孔体は、液相反応であるゾル-ゲル法によって作製される。従来、エアロゲル製造に用いられるアルコゲルは、シリコン化合物をアルコール溶媒でシリカ含量が4~5%程度になるように希釈して、酸または塩基性触媒により加水分解重縮合することにより得られるが、ナノレベルで観察すると細孔構造は不均質となっている。
【0004】
エアロゲルを透明断熱材として利用する場合、透明性と断熱性とを確保するために、平均細孔径が40nm以下の細孔構造が均質に形成され、かつ、気孔率が80%を超えていることが要求される。
【0005】
従って、ゾル-ゲル法によって得られるエアロゲルにおいては、ゲル合成時の反応条件を制御することによって、細孔サイズを制御する試みがなされてきた。
【0006】
しかし、ゾル-ゲル法で得られる従来のエアロゲルは、平均細孔径が数nm以下で、しかも細孔径分布が広いものに限られていた。すなわち、細孔サイズと細孔径分布とを自在に制御することができなかった。これは、細孔が3次元的に束縛された網目の中に存在しているので、ゲル調製後に非破壊的な手段で外部から細孔構造を変えることができないからである。
【0007】
これを解決する手段として、本発明者らは、特開平10-182261号公報において、非イオン性界面活性剤を酸性溶液に溶かし、それに加水分解性の官能基を有する金属化合物を添加して加水分解反応を行い、生成物を固化させた後に乾燥加熱する、無機系多孔質体の製造方法を提案した。この方法により得られた多孔質体は、中心孔径が2μm程度の揃った貫通孔と、太さ約1μmのゲル骨格とが、3次元網目状に絡み合った構造を有していた。すなわち、この方法によれば、所望の細孔径分布に制御された多孔質体を製造することが可能である。
【0008】
しかし、上記従来の方法では、アルコゲルの乾燥が大気圧下での汎用的な乾燥方法により行われるため、アルコゲルから溶媒を取り除く際に、アルコゲル内部の毛細管力に起因するストレスでゲルが収縮したり、割れたりする、といった問題が生じていた。アルコゲルの細孔に掛かる毛細管力は、一般に、
c=-2γcos(θ)/a
で表される(Pcは毛細管力、γは溶媒の表面張力、θは溶媒と毛細管壁の接触角、aは細孔径)。細孔径が小さいほど、また、溶媒の表面張力が大きいほど、毛細管力は大きくなるので、ゲルは破壊されやすくなる。
【0009】
これを回避するための方法としては、超臨界条件により乾燥を行なう方法、毛細管力を上回る骨格強度または毛細管力に伴って自由に変形できる骨格柔軟性をゲルに付与する方法などが考えられる。
【0010】
超臨界乾燥法は、アルコゲルを高圧容器中に導入し、乾燥に用いる溶媒を臨界点以上の温度と圧力にし、超臨界流体とすることにより、ゲルからその溶媒を除去する方法である。超臨界流体で満たされた状態から徐々にこの超臨界流体を放出すると、気液界面が形成されないため、ゲル中の細孔に表面張力を作用させずに乾燥させることができる。
【0011】
しかし、超臨界乾燥は高圧プロセスであるため、超臨界に耐え得る特殊な装置など、多額の設備投資が必要であり、多くの手間と時間も必要である。
【0012】
ゲルを溶媒の超臨界以下の温度と圧力で乾燥させる場合、ゲルの骨格強度が毛細管力を上回る必要がある。また、毛細管力を低減するには、ゲルの細孔径を大きくする必要がある。しかし、ゲルの細孔径を大きくすると、可視光の散乱が発生し、透過率が低下するため、透明断熱材としての用途には適さない。よって、可視光の波長を400~780nmとすると、平均細孔径は40nm以下に抑える必要がある。
【0013】
特開平10-182261号公報に記載の方法により得られた無機系多孔質体は、ミクロンレベルの細孔分布に制御されたものであり、透明断熱材へ応用する場合には細孔径が大きすぎるという問題があった。また、特開2005-154195号公報などに示されているような既存のエアロゲルは脆いため、強度面のさらなる向上が必要とされている。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、上記の点に鑑み、メソスコピック領域の細孔構造を制御することにより、ゲルの骨格強度および骨格柔軟性を向上させ、大気圧下でゲルを乾燥させることができるアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法を提供することを目的とする。さらに、従来のエアロゲルよりも高い強度を有するアルキルシロキサンエアロゲルおよびその製造装置を提供することも目的とする。さらに、アルキルシロキサンエアロゲルを含むパネルの製造方法を提供することも目的とする。
【0015】
本発明のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法は、
(a)分子中に加水分解性官能基および非加水分解性官能基を有するシリコン化合物を、界面活性剤を含む酸性水溶液に添加して、ゾルを生成させる反応と前記ゾルをゲル化させる反応とを一段階で行わせる工程と、
(b)前記工程(a)によって形成されたゲルを乾燥させる工程と、
を含むアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法であって、前記工程(b)において、前記ゲルの乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で、前記ゲルを乾燥させる方法である。
【0016】
前記工程(a)において、ゾルを生成する反応と前記ゾルをゲル化させる反応とを一段階で行わせる(以下、一段階反応という場合がある。)ための具体的な手段として、例えば、工程(a)において、前記酸性水溶液が、加水分解によって前記ゾルをゲル化させる反応を促進させる物質を生成する加水分解性化合物をさらに含んでおり、前記加水分解性化合物を加水分解させることによって、前記ゾルをゲル化させる反応を行う方法が挙げられる。
【0017】
なお、本明細書において、「一段階反応」とは、シリコン化合物の加水分解反応によるゾル形成とそれに従う重縮合反応によるゲル化とを、同一の溶液組成で連続して行なうことを意味する。また、本明細書において「非加水分解性官能基」とは、[H+]イオン濃度が5M以下、或いは[OH-]イオン濃度が5M以下の水溶液中で加水分解されない官能基のことをいう。
【0018】
本発明の製造方法で製造されたアルキルシロキサンエアロゲルは、メソスコピック領域で3次元網目状に連続した貫通孔と3次元網目状のゲル骨格とから形成される3次元網目構造を有する。この3次元網目構造により、ゲルに働く毛細管力を上回る骨格強度および骨格柔軟性がゲルに付与されるため、ゲルを破壊させずに大気圧下でゲルを乾燥させることが可能となる。また、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度および圧力下でアルコゲルを乾燥させるため、高圧容器などの設備を必要とする超臨界乾燥法と比較して、低コストでアルキルシロキサンエアロゲルを製造することができる。なお、本明細書において、「アルコゲル」とは、溶媒等を含む湿潤状態の(溶媒を乾燥させる前の状態の)ゲルのことである。
【0019】
本発明のアルキルシロキサンエアロゲルは、3次元網目状に連続した貫通孔と、アルキルシロキサンからなる3次元網目状に連続した骨格と、から形成される3次元網目構造を有し、前記貫通孔の直径が5nm以上100nm以下であり、前記骨格の断面積の直径が2nm以上25nm以下である。
【0020】
本発明のアルキルシロキサンエアロゲルによれば、高い機械的強度と高い可視光透光性とを、同時に得ることができる。
【0021】
アルキルシロキサンエアロゲルの製造に用いられる本発明の製造装置は、溶媒を含むアルキルシロキサンゲルを乾燥させるための乾燥機を備え、前記乾燥機が、前記アルキルシロキサンゲルを内部に収納可能で、かつ、密閉可能な容器と、前記アルキルシロキサンゲルに含まれる前記溶媒の蒸発速度を制御可能な制御部と、前記容器内における前記溶媒の気体濃度を均質化するために前記容器内に設けられた、前記容器内の雰囲気を攪拌する攪拌手段と、を含む構成である。
【0022】
この装置によれば、容器内における溶媒の気体濃度が均質化されるので、ゲルからの溶媒の蒸発速度差の発生を抑制できる。これにより、溶媒の蒸発速度差に起因するゲルの破損が抑制できる。
【0023】
本発明のアルキルシロキサンエアロゲルを含むパネルを製造する方法は、
(A)分子中に加水分解性官能基および非加水分解性官能基を有するシリコン化合物を、界面活性剤を含む酸性水溶液に添加して、ゾルを生成する反応と前記ゾルをゲル化させる反応とを一段階で行わせる工程と、
(B)前記工程(A)によって形成されたゲルを、前記ゲルの乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で乾燥させて、収縮させる工程と、
(C)収縮した前記ゲルを方枠内に配置し、前記溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で前記ゲルをさらに乾燥させ、前記ゲルの体積を回復させて前記ゲルを前記方枠に密着させて、前記ゲルと前記方枠とを一体化させる工程と、を含む。
【0024】
本発明のパネルの製造方法によれば、接着剤などの接合手段を用いることなく、アルキルシロキサンエアロゲルによって形成されたパネルを方枠と接合することができる。したがって、接着剤との相性が悪いアルキルシロキサンエアロゲルを用いたパネルであっても、強度付与のために、パネルを方枠で補強することができる。これによって、アルキルシロキサンエアロゲルを、ソーラーヒートコレクターパネルなどの透明断熱材として使用することも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一段階反応を説明するための図である。
【図2】二段階反応を説明するための図である。
【図3】本発明の製造装置における乾燥機の一例を示す模式図である。
【図4】実施例におけるサンプル1のアルキルシロキサンエアロゲルの3次元網目構造について、走査型電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。
【図5】実施例におけるサンプル9のアルキルシロキサンエアロゲルの内部細孔構造について、走査電子顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
(実施の形態1)
本発明のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法の実施の形態と、本発明のアルキルシロキサンエアロゲルの実施の形態とについて、説明する。
【0028】
本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法は、
(a)分子中に加水分解性官能基および非加水分解性官能基を有するシリコン化合物を、界面活性剤を含む酸性水溶液に添加して、ゾルを生成させる反応と前記ゾルをゲル化させる反応とを一段階で行わせる(一段階反応させる)工程と、
(b)前記工程(a)によって形成されたゲルを乾燥させる工程と、
を含むアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法であって、前記工程(b)において、前記ゲルの乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で、前記ゲルを乾燥させる方法である。
【0029】
ここで、一段階反応とは、前述のとおり、シリコン化合物の加水分解反応によるゾル形成と、形成されたゾルの重縮合反応によるゲル化とを、同一の溶液組成で連続して行うことを意味する。なお、一段階反応に対して、二段階反応として知られている方法とは、シリコン化合物を加水分解してゾルを形成した後、別種の触媒を添加して別の溶液組成とした上で、前記ゾルの重縮合反応によるゲル化を行わせるものである。
【0030】
ゾル-ゲル法の出発原料であるシリコン化合物としては、分子中に親水性の加水分解性官能基および疎水性の非加水分解性官能基を有するシリコン化合物が用いられる。
【0031】
このようなシリコン化合物は、加水分解・重縮合反応後にすべての結合がシロキサン結合かシラノール結合となる、すべて加水分解性官能基をもつシリコン化合物とは異なり、加水分解・重縮合反応後に一部の結合がシロキサン結合に、一部の結合がケイ素-炭素結合を含む安定な末端基となる。このため、分子中に加水分解性官能基と非加水分解性官能基とを有するシリコン化合物は、非加水分解性官能基の化学的性質をもったシロキサン網目を構成することができる。また、分子中に非加水分解性官能基を有するシリコン化合物は、分子中に加水分解性官能基のみをもつシリコン化合物と比較して、より柔軟性の高い網目を形成することができる。
【0032】
シリコン化合物としては、例えば、アルキルケイ素アルコキシドが好ましく用いられる。アルキルケイ素アルコキシドの中でも、特に、非加水分解性官能基の数が1または2であるものが好ましく、具体的には、例えばメチルトリメトキシシランおよびジメチルジメトキシシランが挙げられる。特に、本実施の形態の製造方法において、メチルトリメトキシシランを用いてアルキルシロキサンエアロゲルを製造した場合、メソスコピック領域(1nm~100nm)での細孔構造がより均質に形成されるため、作製されるゲルに高い骨格柔軟性が付与される。
【0033】
従来、メチルトリメトキシシランは、単独でのゾル-ゲル反応が困難であることが知られており、一段階反応では強酸性または強塩基性条件でのみゲル化が確認されていた。しかし、この従来の方法では、気孔率が低く、緻密な細孔を有するアルキルシロキサンエアロゲルしか得られていない(H.Dong et al., Chem.Master. 200517(11)2807-2816)。二段階反応では、比較的気孔率の高いものが得られてはいるが、透明性が確保できるほどの細孔径サイズと均質性の制御に成功したことは報告されていない。
【0034】
これに対し、本実施の形態の製造方法では、メチルトリメトキシシランの重縮合反応を一段階で行わせることが可能であり、その結果、ゲルに骨格柔軟性が付与できるとともに、透明で細孔構造が均質なゲルを得ることができる。
【0035】
メチルトリメトキシシランおよびジメチルジメトキシシランと同様の効果が期待できる他のアルキルケイ素アルコキシドとして、ビストリメトキシシリルメタン、ビストリメトキシシリルエタン、ビストリメトキシシリルヘキサン、エチルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシランを挙げることができる。これらの化合物のメトキシ基の一部または全部が他のアルコキシ基(もっとも一般的にはエトキシ基)に置換されたもの(ビストリエトキシシリルメタンなど)も、同様の効果が期待できる。
【0036】
シリコン化合物の添加量は、酸性水溶液10gに対し、1g~10gであることが好ましい。
【0037】
なお、本実施の形態において用いられるシリコン化合物には、上記に例示したシリコン化合物が1種類だけ用いられていてもよいし、上記のシリコン化合物が複数組み合わされて用いられてもよい。
【0038】
本実施の形態において用いられる界面活性剤には、非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。イオン性界面活性剤には、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および両イオン性界面活性剤を用いることができるが、カチオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0039】
これらの界面活性剤は、ゾル-ゲル転移と相分離過程とを同時に誘起する働きをもつ物質であり、これらによって溶液が、溶媒リッチ相と骨格相とに分離すると同時にゲル化する。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンなどの親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含むもの、親水部としてポリオキシプロピレンを含むもの、が使用できる。ポリオキシエチレンなどの親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含むものとしては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテルが好適に用いられる。親水部としてポリオキシプロピレンを含むものとしては、例えば、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、および、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体などが好適に用いられる。
【0041】
また、カチオン性界面活性剤には、臭化セチルトリメチルアンモニウムまたは塩化セチルトリメチルアンモニウムを用いるのが好ましい。
【0042】
アニオン性界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0043】
両イオン性界面活性剤としては、アミノ酸系、ベタイン系およびアミンオキシド系を用いることができる。アミノ酸系としては、例えば、アシルグルタミン酸が好適に用いられる。ベタイン系としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインおよびステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインが好適に用いられる。アミンオキシド系としては、例えばラウリルジメチルアミンオキシドが好適に用いられる。
【0044】
これらの界面活性剤は、加水分解性官能基および非加水分解性官能基を有するシリコン化合物が、加水分解・重縮合反応によって、非加水分解性官能基を維持したままシロキサン網目を形成していく際に、反応系中の溶媒と、成長していくシロキサン重合体との間の、化学的親和性の差異を小さくし、重合反応によって誘起される相分離の傾向を抑制する。相分離の傾向の抑制により、ゾル-ゲル転移によって固化した材料中に凍結される材料中の細孔は、より細かいものとなり、メソスコピックレベルの繊細な相分離構造を維持することができる。
【0045】
なお、上記に示した各界面活性剤の具体例は、これに限定されるものではない。
【0046】
界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、シリコン化合物の種類および量にも左右されるが、シリコン化合物10gに対し、0.1~10.0g、好ましくは0.5~6.0gである。また、これらの界面活性剤は、単体または2種類以上を混合して用いられる。
【0047】
シリコン化合物の酸触媒として用いられる酸、すなわち、シリコン化合物が溶解される酸性水溶液の酸としては、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸などのカルボン酸類が好ましく、これらの中でも特に酢酸が好ましい。また、酸性水溶液の酸濃度は、例えば0.0003mol/L~0.05mol/Lの範囲であり、特に0.0008mol/L~0.02mol/Lの範囲が好ましい。
【0048】
本実施の形態において、一段階反応を実現させるための具体的手段としては、例えば、工程(a)において、界面活性剤を溶かした酸性水溶液に、加水分解によって前記ゾルをゲル化させる反応を促進させる物質を生成する加水分解性化合物をさらに添加しておき、この加水分解性化合物を加水分解させることによって、生成されたゾルをゲル化させる反応を、ゾル生成に連続して行わせる方法が挙げられる。
【0049】
図1は、一段階反応を説明する図であり、図2は、二段階反応を説明する図である。図1に示すように、一段階反応では、まず、反応容器11内に、界面活性剤、シリコン化合物および加水分解性化合物を溶解させた酸性水溶液12を入れて、この溶液を、攪拌機13を用いて攪拌する。この反応容器11の周囲には温度調節ジャケット14が設けられており、反応容器11内の溶液の温度を調節できるようになっている。反応容器11内でゾルが生成された後、生成されたゾル15を型16に流し込み、例えば60℃に保持されたインキュベーター17内で、ゲル化反応および熟成を行わせる。なお、一段階反応においては、ゲル化反応に至るまで、反応溶液は比較的低粘度である。上記に説明したように、一段階反応では、ゲル化反応は型に流し込まれた状態で行われるため、攪拌段階での反応溶液の粘度は比較的低い。したがって、一段階反応の場合は、比較的低速の攪拌でも、均質な溶液を得ることができる。
【0050】
一方、二段階反応は、図2に示すように、まず、反応容器21内に、界面活性剤およびシリコン化合物を溶解させた酸性水溶液22を入れて、この溶液を、攪拌機23を用いて攪拌する。この反応容器21の周囲には温度調節ジャケット24が設けられており、反応容器21内の溶液の温度を調節できるようになっている。次に、触媒として、例えばアンモニアを添加して別の溶液組成とし、さらに攪拌を行う。なお、アンモニアを添加した時点で固化反応が開始されるため、迅速な作業が要求される。その後、作製されたゲル25を型26に流し込み、例えば60℃に保持されたインキュベーター27内で熟成を行わせる。なお、二段階反応では、最初の溶液組成(一段階目)において初期の重合反応が進み、さらにアンモニアなどを添加した次の溶液組成(二段階目)においてゲル化反応が起こる。一段階目の重合反応では、反応溶液は比較的低粘度であるため、比較的低速の攪拌でも均質な溶液を得ることができる。一方、二段階目のゲル化反応は、塩基性条件下では比較的速く進行するため、短時間で均質な反応系を作製して、局所的にゲル化反応が進行することを防ぐことが望ましい。したがって、二段階目の攪拌は、より高速かつ強力に行うことが好ましい。
【0051】
酸性水溶液中で界面活性剤と共存させる加水分解性化合物には、尿素、および、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどの酸アミド、および、環状窒素化合物であるヘキサメチレンテトラミンを用いることができるが、加水分解後の溶媒のpH値が重要な条件であるので、加水分解後に溶媒を塩基性にする化合物であれば特に制限はない。また、分解反応によって、フッ化水素酸のようにアルキルシロキサンのゲル化を促進する性質を有する化合物を生じるものも、同様に用いることができる。加水分解性化合物の添加量は、化合物の種類にもよるが、例えば、尿素の場合には、シリコン化合物10gに対し、0.1~20.0g、好ましくは、0.2~15.0gである。尿素の添加量が0.1gを下回る場合、加水分解時に十分な量のアンモニアを発生させることができずゲル化が十分に行なわれないか、ゲル化に長時間を要す場合がある。一方、尿素の添加量が15.0gを超えると、尿素が溶液にとけきれなくなったり、熟成後の冷却過程で結晶が析出してゲルの微細構造を破壊したり、必要以上にゲルの密度を低下させたりする場合がある。
【0052】
また、加水分解させるための加熱温度は、例えば、尿素の場合は50~200℃の範囲である。加熱後の溶媒のpH値は、9.0~11.0が好ましい。
【0053】
界面活性剤および加水分解性化合物を溶かした酸性水溶液に、上述した加水分解性官能基および非加水分解性官能基を有するシリコン化合物を添加して、当該シリコン化合物を加水分解させてゾルを形成させる。ゾル形成に要する時間は、例えば10分~2時間であり、好ましくは20~40分である。この後、ゾルを加熱し、加水分解性化合物を加水分解させることによって、例えば塩基性触媒物質を発生させる。この塩基性触媒物質によって、ゾルを溶媒リッチ相と骨格相とに分離したゲルに転化させた後、適当な温度と時間をかけてゲルを熟成させる。
【0054】
熟成は、ゾル-ゲル転移を起こして流動性を失ったゲル(この段階ではゆるい網目構造)が、網目構造の中にまだ微細な未反応の部位を持ち、それらが熱振動や溶媒共存の条件下で、徐々に網目をきめ細かくつないでゆく反応である。熟成は、ゲル化を起こすために用いたのと同じ温度範囲内で静置することにより行なわれる。
【0055】
なお、加熱過程においては、ゲルを密閉条件下に置き、加水分解性化合物の加水分解による生成物の蒸気圧が飽和して、溶媒のpHが速やかに定常値をとるようにすることが有効である。
【0056】
熟成に要する時間は、細孔の大きさや試料の体積によって変化するので、それぞれの処理条件において実質的に細孔構造が変化しなくなる最短処理時間を決定することが必要である。例えば、加熱処理は、共存させる加水分解性化合物として尿素を用いた場合には、加熱温度が50~200℃で、加熱時間が2時間以上であることが好ましい。
【0057】
次に、上記処理を終えたアルコゲルを乾燥させる。
【0058】
本発明の方法では、乾燥に用いられる溶媒(以下、乾燥溶媒ということがある。)の臨界点未満の温度および圧力下でゲルを乾燥させる。
【0059】
アルコゲル乾燥の際の毛細管力は、前記の毛細管力の式で示されるように、細孔径が小さいほど、また、溶媒の表面張力が大きいほど大きくなる。したがって、細孔径が小さく、溶媒の表面張力が大きいほど、ゲルが破壊されやすくなる。
【0060】
本発明者らが検討した結果、例えばゲルの平均細孔径が20nm以上であり、ゲルの乾燥に用いられる溶媒の表面張力が15mN/m以下である場合、乾燥溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で乾燥させてもゲルが破壊されることがなく、かつ、得られたアルキルシロキサンエアロゲルの可視光透過性および機械的強度が優れていることが判明した。
【0061】
表面張力が15mN/m以下の乾燥溶媒(以下、「低表面張力溶媒」ということがある。)としては、分子中に少なくとも1個以上のフッ素原子を含むフッ素系溶媒が好適に用いられる。具体的には、例えば、2,3-ジハイドロデカフルオロペンタン(表面張14.1mN/m、商品名:バートレルXF(Vertrel XF)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、パーフロオロヘキサン(表面張力12mN/m、商品名:フロリナートFC-72、住友スリーエム株式会社製)、パーフルオロヘプタン(表面張力13mN/m、商品名:フロリナートFC-84、住友スリーエム株式会社製)、パーフルオロオクタン(表面張力15mN/m、商品名:フロリナートFC-77、住友スリーエム株式会社製)、メチルノナフルオロブチルエーテル(表面張力13.6mN/m、商品名:ノベックHFE-7100、住友スリーエム株式会社製)、エチルノナフルオロブチルエーテル(表面張力13.6mN/m、商品名:ノベックHFE-7200、住友スリーエム株式会社製)、などを挙げることができる。
【0062】
本実施の形態におけるアルコゲルの乾燥の一例は、例えば以下の手順により行われる。なお、ここでは、酸触媒として酢酸、加水分解性化合物として尿素を用いた場合の例について説明する。
【0063】
まず、アルコゲル中に残存する水分、酢酸触媒、界面活性剤、尿素および未反応のシリコン化合物原料などを除去するために、アルコゲルの溶媒交換を行なう。ここで用いる溶媒は、有機系の極性溶媒、通常はアルコール類、好ましくはメタノールを用いる。以下、溶媒としてメタノールを用いた例について説明する。
【0064】
アルコゲルの溶媒交換終了後、アルコゲルの溶媒(ここではメタノール)をさらに低表面張力溶媒に置換える。具体的には、溶媒がメタノールで置換されたアルコゲル(メタノール置換ゲル)が十分に浸漬される量の低表面張力溶媒に、当該メタノール置換ゲルを入れ、沸点付近まで加熱して8時間以上還流する。室温まで冷却した後、メタノールを取り除き、新鮮な低表面張力溶媒に入れ換え還流する。この作業を3回程度繰り返し、アルコゲルについて、低表面張力溶媒への溶媒交換を終了する。このとき、例えばフロリナートFC-72,FC-84,FC-77(住友スリーエム株式会社製)といったパーフルオロアルカンを低表面張力溶媒として用いている場合、パーフルオロアルカンはメタノールと相溶しないので、予め例えばノベックHFE-7100(住友スリーエム株式会社製)などのハイドロフルオロ系溶媒での置換を行なっておく。
【0065】
低表面張力溶媒で溶媒が置換されたゲル(低表面張力溶媒置換ゲル)を蒸発速度の制御できる容器(乾燥機)にいれ、乾燥を開始する。乾燥は、低表面張力溶媒の臨界点未満で行い、温度は乾燥時雰囲気圧力における溶媒沸点を超えないものとする。好適な乾燥条件は、低表面張力溶媒の種類によって異なるが、通常は、0.01~0.3MPaで-30℃~150℃の範囲内、好ましくは0.09~0.11MPaで-10℃~100℃の範囲内である。
【0066】
低表面張力溶媒置換ゲル1cm3あたりの乾燥開始直後から4時間までの溶媒蒸発速度は、例えば0.01g/(h・cm3)~0.4g/(h・cm3)の範囲内におく。ゲルの重量が一定になったら乾燥を終了する。
【0067】
乾燥後に得られたアルキルシロキサンエアロゲルは、3次元網目状に連続した貫通孔と、アルキルシロキサンからなる3次元網目状に連続した骨格とから形成され、メソスコピック領域での3次元網目構造を有する。3次元網目状に連続した貫通孔の孔径は、5nm~100nmの範囲内とすることができ、好ましくは25nm~35nmの範囲内である。また、骨格の断面積の直径は、2nm~25nmの範囲内とすることができ、好ましくは3nm~7nmの範囲内である。
【0068】
なお、前記の骨格の断面積の直径とは、3次元網目構造を形成する1本1本の骨格の断面を円とみなした場合の直径を意味する。ここで、断面を円とみなした場合の直径とは、同じ面積の円に置き換えたときの当該円の直径のことである。
【0069】
本実施の形態の製造方法によって得られる、上記の範囲の貫通孔および骨格を有する3次元網目構造は、従来のミクロンレベルの細孔分布に制御された3次元網目構造と比較して、変形回復力および圧縮強度に優れている。また、このような3次元網目構造は、加圧状態では骨格が細孔の内部に折畳まれるように収縮され、荷重を取り除くと折畳まれた骨格が元の状態に戻り、ほぼ加圧前の体積にまで回復する、という性質を備えている。このような3次元網目構造を有する本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルは、圧縮破壊応力が5MPa以上であることが好ましい。また、本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルは、非破壊で50%以上の圧縮変形が可能で、圧縮変形後80%以上の体積にまで回復することが好ましい。また、本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルは、1軸圧縮によるポアソン比が0.05以下であることが好ましい。上記に説明した本実施の形態の製造方法によれば、このような本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルを製造することが可能である。
【0070】
さらに、本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルは、10mm厚みに換算した場合の波長550nm~1000nmの光の透過率が50%以上であることが好ましく、気孔率が80%以上であることが好ましい。また、本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルの密度は、0.05g/cm3~0.25g/cm3以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.10g/cm3~0.20g/cm3である。
【0071】
以上のような性質を備えることによって、本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルは、ソーラーヒートコレクターの透明断熱材、建材用透明断熱窓材、建材用透明遮音材などに適用することができる。さらに、チェレンコフ光検出器、宇宙塵捕集器にも適用可能である。その他、機能性イオンや分子をドープして担体的に用いる場合は、触媒、センサーおよび反応場などにも適用可能となる。
【0072】
なお、上記したアルキルシロキサンエアロゲルにおける高強度などの特性は、3次元網目構造の貫通孔および骨格の直径が上記の範囲内にある場合に得られるものであるため、その製造方法は本発明の製造方法に限定されるものではない。例えば、アルコゲルの乾燥を超臨界条件下で行なっても、目的のアルキルシロキサンエアロゲを得ることは可能である。
【0073】
(実施の形態2)
本発明のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法の別の実施の形態と、本発明のパネルの製造方法の実施の形態について、説明する。
【0074】
本実施の形態のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法では、乾燥工程までのゲル作製方法および用いる材料(シリコン化合物、界面活性剤および加水分解性化合物など)については、実施の形態1で説明した製造方法と同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0075】
実施の形態1で説明した材料および方法を用いてゾル生成、ゲル化反応および熟成の各処理を終えたアルコゲルの骨格相は、ゲルに働く毛細管力に伴って自由に変形できる柔軟性を有する。従って、以下に説明するように、このアルコゲルは、乾燥溶媒の臨界点未満の温度および圧力下でゲルを乾燥させることができ、また、乾燥時の毛細管力に追随して収縮した後、溶媒が蒸発し毛細管力に起因するストレスが減少に転ずると、ほぼ最初の体積にまで回復する特性(スプリングバック)を有する。
【0076】
上述したように、アルコゲルの細孔に掛かる毛細管力は、
c=-2γcos(θ)/a
で表され(Pcは毛細管力、γは溶媒の表面張力、θは溶媒と毛細管壁の接触角、aは細孔径)、細孔径が小さいほど、また、溶媒の表面張力が大きいほど毛細管力が大きくなるので、ゲルが破壊されやすくなる。
【0077】
本実施の形態では、例えば細孔径が20nm以上であるゲルの場合、ゲルの乾燥に用いられる溶媒の表面張力を15mN/m以下とすることによって、ゲルの骨格強度を毛細管力よりも高くでき、臨界点未満の温度および圧力条件下で乾燥させても破壊することなくアルキルシロキサンエアロゲルを得ることができる。なお、本実施の形態において用いられる具体的に用いることができる乾燥溶媒は、実施の形態1の場合と同様である。
【0078】
次に、乾燥工程の一例について説明する。
【0079】
アルコゲル中の溶媒を、表面張力が低い乾燥溶媒(低表面張力溶媒)に置換える。この方法は、実施の形態1の場合と同様の方法を用いることができる。
【0080】
次に、低表面張力溶媒で湿潤状態にあるアルコゲルを、例えばバルブや電磁弁などを備えた、溶媒の蒸発速度を制御できる密閉容器(乾燥機)に入れる。このとき、密閉容器内を低表面張力溶媒蒸気で満たしておく。
【0081】
次に、密閉容器に設けられたバルブや電磁弁を開け、乾燥を開始する。乾燥温度は溶媒の沸点以下とし、乾燥初期(全乾燥時間のほぼ2/3程度の期間。この期間において溶媒蒸発速度は常に一定である。全乾燥時間はゲルのサイズに大きく依存し、例えば4時間から5日間の範囲内である。)の溶媒蒸発速度をゲル1cm3あたり0.01g/h~0.40g/hの範囲内とし、低表面張力溶媒を蒸発させる。このとき、ゲルの体積は殆ど変化しない(以下、これを「第1乾燥期」と呼ぶ。)。
【0082】
次の段階で、ゲルは乾燥に伴い急速に収縮を始め、70%以下にまで収縮した時点で溶媒の蒸発は大部分が終了する(以下、これを「第2乾燥期」と呼ぶ。)。
【0083】
その後、ゲルはスプリングバックにより復元を開始し、全乾燥工程の1/4程度の時間で、乾燥前の体積の50%以上の体積に回復する(以下、これを「第3乾燥期」と呼ぶ。)。ゲル重量が一定になったら乾燥を終了する。
【0084】
以上のような乾燥の後に得られたアルキルシロキサンエアロゲルは、平均細孔径が30nm程度の連続した貫通孔とアルキルシロキサンからなる1次元形状骨格とから形成された、メソスコピック領域での3次元網目構造を有する。
【0085】
このアルキルシロキサンエアロゲルは、骨格が柔軟性に富むため、変形回復力および圧縮強度に優れ、加圧状態では3次元網目構造を形成する骨格が内部に折畳まれるように収縮し、荷重を取り除くと折畳まれた骨格が元の状態に戻り、ほぼ加圧前の体積にまで回復する。本実施の形態で作製された3次元網目構造を有するアルキルシロキサンエアロゲルは、圧縮破壊応力5MPa以上を実現でき、非破壊で50%以上の圧縮変形が可能であり、圧縮変形後80%以上の体積にまで回復することができる。
【0086】
次に、本実施の形態におけるアルキルシロキサンエアロゲルを用いたパネルの製造方法について説明する。
【0087】
本実施の形態におけるパネルの製造方法は、
(A)分子中に加水分解性官能基および非加水分解性官能基を有するシリコン化合物を、界面活性剤を含む酸性水溶液に添加して、ゾルを生成する反応と前記ゾルをゲル化させる反応とを一段階で行わせる工程と、
(B)前記工程(A)によって形成されたゲルを、前記ゲルの乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で乾燥させて、収縮させる工程と、
(C)収縮した前記ゲルを所定の容積を有する方枠内に配置し、前記溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で前記ゲルをさらに乾燥させ、前記ゲルの体積を回復させて前記ゲルを前記方枠に密着させて、前記ゲルと前記方枠とを一体化させる工程と、を含む。
【0088】
本実施の形態のパネルの製造方法では、上記に説明したゲルのスプリングバック現象を利用して、ソーラーヒートコレクターパネルなどに適用可能なエアロゲルパネルを製造する。
【0089】
ゾル生成およびゲル化反応までの方法(工程(A))については、実施の形態1のアルキルシロキサンエアロゲルの製造方法と同様の方法を用いることができるので、ここでは説明を省略する。
【0090】
次に、作製されたアルコゲルについて、溶媒置換を行なう。アルコゲルを密閉容器に移し、上記に説明した第1乾燥期および第2乾燥期を経てゲルを収縮させ(工程(B))、その後、密閉容器からゲルを取り出す。
【0091】
乾燥(第1乾燥期および第2乾燥期)終了後のゲルを、当該ゲルの体積よりも小さい容積を持つパネルの方枠内に配置し、さらにゲルを完全乾燥させる(第3乾燥期)。このように方枠内に配置したゲルを完全乾燥させることにより、ゲルがスプリングバックにより膨張して、ゲルが方枠に密着して固定される。すなわち、ゲルと方枠とが一体化される(工程(C))。
【0092】
なお、方枠とは、例えば、パネルの縁を囲むための多角形の枠である。また、この方枠は、上下面の何れか一方、或いは両面に配置されたガラス板等の板状体を含んでいてもよい。例えば、板状体が設けられている方枠の場合、ゲルは、方枠で囲まれた(枠と板状体とで囲まれた)空間内に配置されて、方枠(枠および板状体)と一体化される。
【0093】
このようなアルキルシロキサンエアロゲルを用いたパネルの製造方法によれば、従来のようにパネルの方枠とエアロゲルを接着する必要がなく、ゲルが膨張しようとする力により、ゲルを方枠に強く密着させて方枠と接合することができる。
【0094】
その結果、ゲルが方枠で補強されるため、実用に耐え得る強度がパネルに付与され、取り扱いも容易になることから、ソーラーヒートコレクターや建材用透明断熱窓材などに好適に用いることができる。
【0095】
(実施の形態3)
本発明のアルキルシロキサンエアロゲルの製造装置の実施の形態について説明する。
【0096】
本実施の形態の製造装置は、溶媒を含む(乾燥前の状態の)アルキルシロキサンゲルを乾燥させるための乾燥機を備えている。この乾燥機は、アルキルシロキサンゲルを内部に収納可能で、かつ、密閉可能な容器と、アルキルシロキサンゲルに含まれる溶媒の蒸発速度を制御可能な制御部と、前記容器内における前記溶媒の気体濃度を均質化するために前記容器内に設けられた、前記容器内の雰囲気を攪拌する攪拌手段と、を含んでいる。
【0097】
図3は、本実施の形態の製造装置に含まれる乾燥機の一例を示す模式図である。この乾燥機3には、密閉可能な容器31と、容器31内においてアルキルシロキサンゲルからの溶媒の蒸発速度を制御するための制御部32とが備えられている。この制御部32は、例えば、密閉容器内に設置された溶媒蒸気濃度センサーと、この溶媒蒸気濃度センサーから入力される信号に応じて開閉可能であり、容器31内の溶媒の気体濃度を調整できる電磁弁と、によって実現できる。さらに、容器31内には、容器31内における溶媒の気体濃度を均質化するためのファン(攪拌手段)33が、容器31の底部に設置されている。乾燥させるアルキルシロキサンゲル34は、容器31の内部に設置された乾燥台35の上に配置される。なお、ここでは攪拌手段の一例としてファンを用いているが、これに限定されない。攪拌手段は、容器内の雰囲気を攪拌して気体を循環させることができればよいため、例えば、容器内部の雰囲気を循環させることが可能なポンプを攪拌手段として備えることも可能である。
【0098】
従来の乾燥機を用いた場合、アルキルシロキサンゲルから蒸発した溶媒が乾燥機の容器の底部に溜まり、ゲルの上面と下面とで溶媒の気体濃度の差が生じる場合がある。このような気体濃度差によってアルキルシロキサンゲルからの溶媒の蒸発速度差が発生し、ゲルの破壊につながる場合がある。これに対し、図3に示した本実施の形態の乾燥機3の場合は、ファン33によって、溶媒の気体濃度の差が生じにくいため、乾燥時のアルキルシロキサンゲルの破壊を抑制できる。
【0099】
本実施の形態の乾燥機において、容器31内における溶媒の気体濃度の差は、気体蒸気圧の差として2kPa(0.02atm)以下となるように調節されていることが望ましい。
【0100】
本実施の形態の製造装置は、さらに、ゾル生成およびゲル化反応を行うことができる機能を備えていてもよく、例えば、ゾルを生成する反応と、前記ゾルをゲル化させる反応とを、一段階で行わせるための反応装置をさらに備えていてもよい。この場合、この反応装置は、例えば、容器部と、この容器部内の反応物質を攪拌するための攪拌機と、容器部内の反応物質の温度を制御するための温度制御手段とを備えている。温度制御手段としては、例えば、容器を覆うように配置される加熱冷却ジャケットなどを使用できる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
(サンプル1)
カチオン系界面活性剤として、臭化セチルトリメチルアンモニウム(別名:臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム:ナカライテスク株式会社製、以下、「CTAB」と略記)1.00gを、酸性水溶液である0.01mol/L酢酸水溶液10.00gに溶解させた後、さらに加水分解性化合物として尿素(ナカライテスク株式会社製)0.50gを加えて溶解させた。この酸性水溶液に、シリコン化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学工業製、LS-530(比重:0.95)、以下、「MTMS」と略記)5.0mLを添加した後、氷冷下で30分攪拌混合し、MTMSの加水分解反応を行なわせ、ゾルを生成させた。その後、生成させたゾルを、密閉容器内で60℃で静置し、ゲル化させた。その後、続けて96時間静置することにより、ゲルを熟成させた。次いで、密閉容器よりアルコゲルを取り出し、メタノールに浸漬して溶媒置換を行なった。この操作は、1回目は60℃で24時間、2回目は新しいメタノールに交換して60℃で48時間行なった。
【0103】
以下の方法により、アルコゲルを大気圧下で乾燥(大気圧乾燥)させた。
【0104】
低表面張力溶媒として2,3ジハイドロデカフルオロペンタン(バートレルXF(Vertrel XF)、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を用い、アルコゲルを低表面張力溶媒に置換えた。
【0105】
アルコゲルが十分に浸漬される量の低表面張力溶媒に当該アルコゲルを入れ、沸点の55℃付近まで加熱し、8時間還流を行った。還流後、室温まで冷却した後に容器中の低表面張力溶媒を取除き、新鮮な低表面張力溶媒に入れ替え還流を行なった。この作業を3回以上繰り返し、低表面張力溶媒への溶媒交換を終了した。
【0106】
次に、低表面張力溶媒置換ゲルを、蒸発速度を制御できる容器(乾燥機)に入れ、乾燥を開始した。乾燥温度は溶媒の沸点以下とし、低表面張力溶媒置換ゲル1cm3当たりの乾燥開始直後から4時間までの溶媒蒸発速度を0.2g/(h・cm3)に調整した。その後は徐々に溶媒蒸発速度を低下させ、ゲル重量が一定になった時点で乾燥を終了した。
【0107】
(サンプル2)
CTAB1.20gを、酸性水溶液である0.01mol/L酢酸水溶液10.00gに溶解させた後、さらに加水分解性化合物として尿素1.00gを加えて溶解させた。この酸性水溶液に、シリコン化合物としてMTMS10mLを添加後、氷冷下で30分攪拌混合し、MTMSの加水分解反応を行なわせた。その後、密閉容器内60℃で静置しゲル化させた後、続けて96時間静置することによりゲルを熟成させた。
【0108】
ゲルをメタノールで溶媒置換した後、サンプル1と同じ低表面張力溶媒に置き換え、サンプル1と同様の条件で大気圧乾燥を行なった。
【0109】
(サンプル3)
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック共重合体であるPoly(ethylene glycol)-block-poly(propylene glycol)-block-poly(ethylene glycol)(BASF社製 F-127(EO108PO70EO108 Mw:12600))2.00gを、酸性水溶液である0.01mol/L酢酸水溶液10.00gに溶解させた後、さらに加水分解性化合物として尿素1.00gを加えて溶解させた。MTMS10mLを添加後、氷冷下で30分攪拌混合し、MTMSの加水分解反応を行なわせた。その後、密閉容器内60℃で静置しゲル化させた後続けて96時間静置することによりゲルを熟成させた。
【0110】
ゲルをメタノールで溶媒置換した後、サンプル1と同じ低表面張力溶媒に置き換え、サンプル1と同様の条件で大気圧乾燥を行なった。
【0111】
(サンプル4)
サンプル1において、シリコン化合物をMTMSからテトラエトキシシラン(ナカライテスク株式会社製、以下、「TEOS」と略記)に替え、酢酸水溶液の濃度を0.01mol/Lから0.001mol/Lに替え、それ以外はサンプル1と同様にしてアルコゲルを作製した。低表面張力溶媒をバートレルXFからフロリナートFC-72に替え、それ以外はサンプル1と同様の条件で大気圧乾燥を行った。
【0112】
(サンプル5)
サンプル1と同じ条件でアルコゲルを作製し、熟成させた後、密閉容器よりアルコゲルを取り出し、2-プロパノールに浸漬して溶媒置換を行なった。この操作は、1回目は60℃で24時間、2回目は新しい2-プロパノールに交換して60℃で48時間行なった。
【0113】
以下の条件でアルコゲルを超臨界乾燥させた。
【0114】
容量400mLのオートクレーブ内を2-プロパノールで満たし、溶媒置換を終了したアルコゲルを入れた。蓋を閉め、液化炭酸ガスを送り圧力を約882N/cm2(約90kgf/cm2)を保持しながら、1回目の液相置換作業を行なった(所要時間:1.5時間)。
【0115】
1回目の液相置換が終了したら、バルブを閉じて圧力を保持した状態で17.5時間かけてゲル内部に液化炭酸ガスを拡散させた。
【0116】
その後、1回目の液相置換と同様に、圧力を約882N/cm2(約90kgf/cm2)に保持しながら、2回目の液相置換を行なった(所要時間:1時間)。
【0117】
2回目の液相置換が終了したら、1回目と同様にバルブを閉じて圧力を保持した状態で、5時間かけてゲル内部に液化炭酸ガスを拡散させた。
【0118】
その後、1回目の液相置換と同様に、約882N/cm2(約90kgf/cm2)を保持しながら、同様に3回目の液相置換を行なった(所要時間:0.75時間)。
【0119】
3回目の液相置換が終了したら、バルブを閉じて、オートクレーブを1.5時間かけて室温から80℃まで昇温させた。
【0120】
80℃に到達後、4.9N/cm2・min(0.5kgf/cm2・min)の速度で減圧した。
【0121】
大気圧に到達した後、オートクレーブを2時間かけて室温に冷却した。
【0122】
その後、オートクレーブを開けてアルキルシロキサンエアロゲルを取出し、超臨界乾燥を終了した。
【0123】
(サンプル6)
サンプル5において、カチオン系界面活性剤を、CTABから塩化セチルトリメチルアンモニウム(別名:塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム:ナカライテスク株式会社製、以下、「CTAC」と略記)に替え、それ以外はサンプル5と同様にしてアルコゲルを作製した後、サンプル5と同様の条件で超臨界乾燥を行い、アルキルシロキサンエアロゲルを得た。
【0124】
(サンプル7)
サンプル5において、界面活性剤を、アニオン系界面活性剤のドデシルスルホン酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社製、以下、「SDS」と略記)に替え、それ以外はサンプル5と同様にしてアルコゲルを作製した後、サンプル5と同様の条件で超臨界乾燥を行い、アルキルシロキサンエアロゲルを得た。
【0125】
(サンプル8)
サンプル5と同様の条件でアルコゲルを作製した。
【0126】
以下の条件で、アルコゲルを亜臨界乾燥させた。
【0127】
容量約400mLのオートクレーブ内を2-プロパノールで満たし、溶媒置換を終了したアルコゲルを入れた。
【0128】
蓋を閉め、液化炭酸ガスを送り圧力を729.12N/cm2(74.4kgf/cm2)を保持しながら、1回目の液相置換作業を行なった(所用時間:1.5時間)。
【0129】
1回目の液相置換が終了したら、バルブを閉じて圧力を保持した状態で17.5時間かけてゲル内部に液化炭酸ガスを拡散させた。
【0130】
その後、1回目の液相置換と同様に、約729.12N/cm2(74.4kgf/cm2)を保持しながら、2回目の液相置換を行なった(所用時間:1時間)。
【0131】
2回目の液相置換が終了したら、1回目と同様にバルブを閉じて圧力を保持した状態で5時間かけてゲル内部に液化炭酸ガスを拡散させた。
【0132】
その後、同様に3回目の液相置換を行なった(所用時間:0.75時間)。
【0133】
3回目の液相置換が終了したら、バルブを閉じオートクレーブを1.5時間かけて室温から31℃まで昇温させた。
【0134】
31℃に到達後、4.9N/cm2・min(0.5kgf/cm2・min)の速度で減圧した。
【0135】
大気圧に到達した後、オートクレーブを1時間かけて冷却した。
【0136】
その後、オートクレーブを開けてアルキルシロキサンエアロゲルを取り出し、亜臨界乾燥を終了した。
【0137】
(サンプル9)
サンプル5において、界面活性剤を添加せず、それ以外はサンプル5と同様にしてアルコゲルを作製した後、サンプル5と同様の条件で超臨界乾燥を行い、アルキルシロキサンエアロゲルを得た。
【0138】
表1に、各サンプルで用いた乾燥方法、溶媒の種類、界面活性剤およびシリコン原料の種類および添加量、酢酸水溶液、尿素の添加量をまとめて示す。
【0139】
また、サンプル1のアルキルシロキサンエアロゲルの3次元網目構造を、走査電子顕微鏡を用いて観察した図を、図4に示す。また、サンプル9のアルキルシロキサンエアロゲルの3次元網目構造を、走査電子顕微鏡を用いて観察した図を、図5に示す。
【0140】
(細孔径、ゲル骨格直径、密度および気孔率の測定)
上記の各サンプルのアルキルシロキサンエアロゲルについて、3次元網目状に連続した貫通孔(細孔)の中心細孔径、骨格の断面を円とみなした場合の直径、密度、気孔率を水銀圧入法により測定した。測定結果を表2に示す。
【0141】
(光透過率の測定)
上記の各サンプルの乾燥後のアルキルシロキサンエアロゲルの光学的透明性を評価するために、光透過率の測定を実施した。アルキルシロキサンエアロゲルは上面と下面の平行を確保するために必要に応じて#1500以上の紙やすりで整形した。
【0142】
紫外/可視分光光度計は、日本分光株式会社製のV-530を用いた。測光モードは%T、レスポンスはFast、バンド幅は2.0nm、走査速度は2000nm/min、測定波長範囲は1000nm~200nm、データ取込間隔は2.0nmとした。
【0143】
光透過率は、波長550nm(可視光)のデータを採用し、アルキルシロキサンエアロゲルの厚さが10mmのときの値となるよう補正した。厚さ補正後の透過率TCは、Lambertの式を変形して次式のように示される。
C=10(log(T/100)×10/d)×100
ここで、Tは補正前の透過率(%)、dは測定サンプルの厚さを示す。測定結果を表2に示す。
【0144】
(断熱性の評価)
上記の各サンプルのアルキルシロキサンエアロゲルの断熱性を評価するために熱伝導率の測定を実施した。
【0145】
アルキルシロキサンエアロゲルを1mm厚の板状に成形して、測定サンプルとした。定常法熱伝導率測定装置には、アルバック理工株式会社製のGH-1を用いた。
【0146】
サンプルを0.3MPaの荷重で上部・下部ヒーター間に挟み、温度差ΔTをつけ、ガードヒーターによって一次元の熱流になるようにして、サンプルの熱抵抗RSを次式より求めた。
S=N((TU-TL)/Q)-RO
ここで、TUはサンプル上面温度、TLはサンプル下面温度、ROは上下界面の接触熱抵抗、Qは熱流束計出力である。なお、Nは比例係数であり、較正試料を用いて予め求めておく。
【0147】
サンプルの熱伝導率λは次式より求めた。
λ=d/RS
ここで、dは測定サンプルの厚さを示す。測定結果を表2に示す。
【0148】
(機械的強度の評価)
上記の各サンプルのアルキルシロキサンエアロゲルの機械的強度を評価するために、圧縮破壊応力、体積弾性率、最大変形率、変形回復率およびポアソン比の測定を実施した。
【0149】
アルキルシロキサンエアロゲルは7.5mm角の立方体(サイコロ状)に成形し、測定サンプルとした。装置は島津製作所製のEZTestを用い、体積弾性率の測定には、10mmφの圧縮測定用冶具を用いた。ロードセルは500Nを使用した。
【0150】
測定サンプルを冶具にセットし、1mm/minの速度で圧縮を行なった。測定サンプルが破壊するかまたは負荷が500Nを超過した時点で測定を終了した。
【0151】
測定項目は、体積弾性率(10-20N)および破壊応力(最大点応力)(サンプル破壊時または500N超負荷時のいずれかの時点)とした。
【0152】
最大変形率および変形回復率は、負荷をかける前の測定サンプルの厚みをd1とし、500N最大負荷時の測定サンプルの厚みをd2、負荷を取り除いた後の測定サンプルの厚みをd3として、以下のように算出した。
最大変形率=(d1-d2)/d1×100
変形回復率=(d3-d2)/(d1-d2)×100
【0153】
ポアソン比は、アルキルシロキサンエアロゲルの弾性範囲内において、サンプルの厚みをd1、測定サンプルの幅をw1とし、圧縮負荷時の測定サンプルの厚みをdx、幅をwyとし、
ポアソン比=|((wy-w1)/w1)/((d1-dx)/d1)|
として計算した。
【0154】
これらの測定結果を表2に示す。
【0155】
【表1】
JP0005250900B2_000002t.gif

【0156】
【表2】
JP0005250900B2_000003t.gif

【0157】
図4に示すように、サンプル1のアルキルシロキサンエアロゲルは、中心細孔径30nm程度の3次元網目状に連続した貫通孔と、直径5nm程度のアルキルシロキサンからなる骨格(骨格の断面を円とみなす)とが、3次元網目状に絡み合った構造を有する。
【0158】
これに対し、図5のサンプル9のアルキルシロキサンエアロゲルは、粒子が凝集した形状を成しており、3次元網目構造は存在しないことが分かる。
【0159】
表2に示すように、溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で乾燥して得られたサンプル1~3のアルキルシロキサンエアロゲルと、超臨界乾燥または亜臨界乾燥により得られたサンプル5~8のアルキルシロキサンエアロゲルは、いずれも、30nm程度の中心細孔径を有する貫通孔と、5nm前後の直径を有するアルキルシロキサンからなる骨格と、から形成される3次元網目構造を有する。さらに、サンプル1~3およびサンプル5~8のアルキルシロキサンエアロゲルは、高い可視光透過率、低い熱伝導率、高い機械的強度(破壊応力、変形回復率、最大変形率、体積弾性率)を有していることが分かる。
【0160】
また、サンプル1~3のアルキルシロキサンエアロゲルは、乾燥溶媒として、表面張力が15mN/m以下の溶媒を用い、乾燥溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で乾燥を行って作製されたゲルである。このような大気圧乾燥を行った場合でも、ゲルが破壊されることがないことが確認された。
【0161】
さらに、この結果より、乾燥溶媒の臨界点未満の温度および圧力下で乾燥して得られたサンプル1~3のゲルは、超臨界または亜臨界乾燥により得られたサンプル5~8のアルキルシロキサンエアロゲルと比較して、同等の可視光透過性と機械的強度が確保されることも確認された。
【0162】
これに対し、サンプル4のアルキルシロキサンエアロゲルは、大気圧下での乾燥中に粉砕した。これは、本発明の製造方法で用いられるシリコン化合物(分子中に加水分解性官能基および非加水分解性官能基を有するシリコン化合物)以外のシリコン化合物を用いたため、メソスコピック領域での3次元網目構造が形成されず、ゲルの骨格強度および骨格柔軟性がサンプル1~3のアルキルシロキサンエアロゲルよりも劣るためと考えられる。
【0163】
また、サンプル9のアルキルシロキサンエアロゲルは、圧縮破壊応力が1MPaを下回り、サンプル1~3およびとサンプル5~8と比較して機械的強度に劣ることが分かった。これは、界面活性剤がゲル形成溶液に添加されなかったため、サンプル1~3およびサンプル5~8のアルキルシロキサンエアロゲルのような3次元網目構造を形成する骨格ほど柔軟性がなく、骨格の圧縮強度が弱いためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明のアルキルシロキサンエアロゲルおよび本発明の製造方法で製造されたアルキルシロキサンエアロゲルは、高い機械的強度を有するため、建材用断熱材や建材用遮音材として幅広い場所に適用可能である。さらに、高い可視光透過率も同時に実現できるため、ソーラーヒートコレクターの透明断熱材、建材用透明断熱窓材、建材用透明遮音材などにも適用できる。さらに、チェレンコフ光検出器、宇宙塵捕集器にも適用可能である。その他、機能性イオンや分子をドープして担体として用いる場合は、触媒、センサーおよび反応場などとしても利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4