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明細書 :カーボンナノチューブの環状集合体の製造方法および製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5001544号 (P5001544)
公開番号 特開2007-106629 (P2007-106629A)
登録日 平成24年5月25日(2012.5.25)
発行日 平成24年8月15日(2012.8.15)
公開日 平成19年4月26日(2007.4.26)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブの環状集合体の製造方法および製造装置
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI C01B 31/02 101F
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2005-298693 (P2005-298693)
出願日 平成17年10月13日(2005.10.13)
審査請求日 平成20年1月16日(2008.1.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
発明者または考案者 【氏名】小松 直樹
【氏名】木村 隆英
個別代理人の代理人 【識別番号】100064414、【弁理士】、【氏名又は名称】磯野 道造
審査官 【審査官】壺内 信吾
参考文献・文献 特開2000-141056(JP,A)
特開2003-019427(JP,A)
特開2002-346996(JP,A)
特開2005-146406(JP,A)
調査した分野 C01B31/00-31/36
特許請求の範囲 【請求項1】
溶媒とカーボンナノチューブを含む懸濁液から該懸濁液のミストを発生させるミスト発生工程と、
前記ミスト発生工程で発生した前記ミストを気流により移送流路内を移送させ、前記ミスト内の前記溶媒の外周に沿ってカーボンナノチューブの環状集合体を生成させる移送生成工程と、
前記移送流路を拡径して前記気流の流速を低下させ、前記移送生成工程で生成された前記カーボンナノチューブの環状集合体を捕捉部に落下させる捕捉工程と、
を含むことを特徴とするカーボンナノチューブの環状集合体の製造方法。
【請求項2】
前記ミスト発生工程は、
前記懸濁液に超音波を照射してミストを発生させることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの環状集合体の製造方法。
【請求項3】
溶媒とカーボンナノチューブを含む懸濁液から該懸濁液のミストを発生させるミスト発生手段と、
前記懸濁液の上面に前記ミストを移送するための気流を供給する気流発生手段と、
前記気流により前記ミストが移送され、前記ミスト内の前記溶媒の外周に沿ってカーボンナノチューブの環状集合体を生成させる移送流路と、
前記移送流路より拡径することにより前記気流の流速を低下させ、前記カーボンナノチューブの環状集合体を捕捉部に落下させる捕捉手段と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブの環状集合体の製造装置。
【請求項4】
前記ミスト発生手段、超音波照射装置であることを特徴とする請求項3に記載のカーボンナノチューブの環状集合体の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの環状集合体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直径が数ナノメートルから数十ナノメートルの筒状炭素化合物であるカーボンナノチューブ(以下、CNTと記す)は、その特異な構造に基づく特異な物性を有することから、近年、研究開発が盛んに行なわれている。このようなCNTの応用としてカーボンナノリングも検討されており、特許文献1にはCNTからなるカーボンナノリングを利用した電子波干渉素子が提案されている。また、特許文献2にその製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献2の製造方法によれば、まず単層CNTを強酸中で超音波処理して切断し、次にCNTの両末端に反応性官能基を導入してオープンエンドCNTを調製する。このとき、単層CNTの持続長の約2倍の長さのオープンエンドCNTが含まれるようにする。そして、この反応性官能基を介してCNTを環状化し、得られた環状CNTを熱処理して反応性官能基を介する結合を分解してカーボンナノリングを製造している。

【特許文献1】特開2004-174637号公報(段落0014、図1)
【特許文献2】特開2002-338219号公報(段落0008~0012)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示されたカーボンナノリングの製造方法は、CNTを化学的に切断・修飾、そして環化する工程が含まれ、さらに環化する前のCNTの長さを制御する必要があるため、高度な合成技術を要する。今後カーボンナノリングの研究開発を進めていく上で、簡易なカーボンナノリングの製造方法が望まれている。
このような背景において、本発明は、カーボンナノリング等のCNTの環状集合体の簡易な製造方法と、この製造に適した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、溶媒とカーボンナノチューブとを含む懸濁液から該懸濁液のミストを発生させるミスト発生工程と、前記ミスト発生工程で発生した前記ミストを気流により移送流路内を移送させ、前記ミスト内の前記溶媒の外周に沿ってカーボンナノチューブの環状集合体を生成させる移送生成工程と、前記移送流路を拡径して前記気流の流速を低下させ、前記移送生成工程で生成された前記カーボンナノチューブの環状集合体を捕捉部に落下させる捕捉工程と、を含むことを特徴とするカーボンナノチューブの環状集合体製造方法である。
CNTを含む懸濁液からミストを発生させる手段として、超音波照射を用いることができる。

【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、CNTの環状集合体の簡易な製造方法と、この製造に適した装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に係るCNTの環状集合体の製造方法および装置について、図1に示したCNTの環状集合体の製造装置10の概念図を参照しながら説明する。図1では、CNTを含む懸濁液1に、ミスト発生手段として超音波バス4を用いて超音波照射することによりミスト2を発生させる。そして、CNTを含む懸濁液1の上面にミスト2を移送するための気流3を供給し、気流3により移送されたミスト2を捕捉手段6の捕捉部7に捕捉する。
【0008】
本発明で使用するCNTは、単層、多層、いずれでもよく、直径、長さ、キラリティー等その構造などは特に限定されない。また、CNTの骨格に置換基、官能基等を有するものでもよい。CNTの製造方法などは特に限定されず、例えば、グラファイト、炭化水素、アルコール、一酸化炭素等を原料とし、アーク放電法、レーザー気化法、CVD法等により合成されたCNTを用いることができる。
【0009】
本発明で使用するCNTを懸濁させるための溶剤の指定は特に無く、例えば、へキサン、ヘプタン、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトニトリル、ジエチルエーテル,THF等の有機溶剤が挙げられる。また、水を懸濁溶剤に用いることもできる。
【0010】
ミスト発生手段には、超音波バス4等の超音波照射を用いることができる。液体に超音波の振動エネルギーを与えると液面や液内部に周波数固有の毛細表面波が発生する。液体の表面に無数の毛細表面波が生じると、液体の表面張力が減少して規則的分裂が発生する。換言すれば、超音波により水の表面張力を減少させてミスト2を発生させることができる。このとき、ミスト2の内部にはCNTが懸濁した状態で存在している。
超音波照射により発生するミスト2の粒径は、超音波の周波数と、液体の表面張力および粘度をパラメータとした実験式で求めることができる。
【0011】
内部にCNTが懸濁しているミスト2は、他の方法で発生させることもできる。例えば、CNTを含む懸濁液1を高圧の噴射ノズルから噴霧して衝突板に衝突させて微細なミストを発生させる方法を用いこともできるし、回転体の遠心力を利用してミストを発生させる方法を用いることもできる。超音波照射でミストを発生させる場合、CNTが作る強固なバンドルをほどく効果も得られる。
【0012】
気流3を発生させるための気流発生手段は、懸濁液1から発生させたミスト2をガスに随伴させて捕捉部7まで移送できるものであればよく、例えば図1のようにエアポンプ5を用いることができる。この他、ガスボンベを用いることもできるし、液化ガスを気化させて供給することもできる。
【0013】
また、気流3のガスに指定は無い。空気でもよいし、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスでもよい。気流3は製造プロセスの全体にわたって層流とすることが好ましい。なお、ミスト2の飛散方向と、気流3の流れの方向の関係についての指定は無い。この2つの方向は、図1のように直交していてもよいし、平行でもよい。
【0014】
捕捉手段6は、気流3により移送されてきたミスト2を捕捉できるものであれば良く、例えば図1のように気流3の流路を拡径して流速を低下させてミスト2を落下し易くし、捕捉部7に着地させる構成とすることができる。あるいは、気流3の流路に多孔質のフィルタを設けてミスト2を捕捉する構成とすることもできる。
【0015】
次に、CNTの環状集合体の製造装置10内におけるミスト2の挙動について説明する。前記したように、ミスト2の内部にはCNTが懸濁している。懸濁液1から飛散したミスト2は、飛散方向と直交する向きの気流3により捕捉手段6に向けて移送される。移送の過程でミスト2の上方に向かう速度は徐々に低下し、最終的には重力により落下し始めて捕捉手段6内部の捕捉部7に着地する。
【0016】
ここで、ミスト2内部に懸濁しているCNT分子は、溶剤への溶解性が極めて低いため溶剤中に安定して懸濁することはできず、表面自由エネルギーが最小になるように一本のCNTが球状のミスト2の外周に沿ってコイル状の形状になり、分子内に作用するvan der Waals力によって強固な環状集合体を生成すると考えられる。あるいは、複数本のコイル状のCNTが球状のミスト2の外周に沿って集合し、CNT相互の距離が縮小して、ついにはCNT分子間に作用するvan der Waals力によって環状集合体を生成することも考えられる。この結果、化学反応によらなくてもCNTから、コイル状、もしくはリング状の環状集合体を製造することが可能となる。
【0017】
ミスト2は、気流3により移送されている間に、その溶剤の一部または全部が蒸発する。このため捕捉部7には、溶剤が一部残存したCNTの環状集合体も着地して集積する。このとき、CNTは分子間相互のvan der Waals力によって強固に環状集合体を形成しているので、溶剤が残存していても個々のCNT分子に再度分かれることは無い。
【0018】
捕捉部7に着地したCNTの環状集合体は、遠心分離して溶剤と分離することにより回収することができる。なお、回収したCNTの環状集合体を洗浄する場合、前記のようにvan der Waals力によって強固に環状集合体を形成しているので、溶剤に再度分散させて遠心分離するか、自然沈降や濾過によって固液分離することにより行なうことができる。
【0019】
以上の説明から分かるように、本実施形態に係るCNTの環状集合体の製造方法は、超音波照射するのみで化学反応を伴わないので極めて簡易にカーボンナノリングを製造することができる。また、原理的には、あらゆる直径、長さのカーボンナノチューブに対応可能である。
【実施例】
【0020】
本実施例では、図2に示すCNTの環状集合体の製造装置10を用いてCNTの環状集合体を製造した。本実施例では、エアポンプ5にニッソー社製エアポンプ(Chikara alpha-600)を用い、超音波バス4にはブランソン社製のバス型超音波装置(2510J-MT、42kHz、100W)を用いた。
【0021】
図2に示すCNTの環状集合体の製造装置10は、ガラス容器11にガラス製の入口配管12と出口配管13の一端を溶着し、さらに出口配管13の他端には、内径が出口配管13の内径よりも大きいガラス製の容器(捕捉手段6)を溶着して作製した。そして、捕捉手段6の下流に気流3の流れを確認するために水を満たした容器14を設け、ゴム管を介して接続した。また、入口配管12とエアポンプ5の接続にもゴム管を用いた。なお、本実施例の入口配管12の内径は4mm、出口配管13の内径は4mm、捕捉手段6の最大内径は15mmであった。
【0022】
本実施例では、CNTに直径1.2~1.5nmのアーク法で製造したCNTを用いた。このCNT9.7mgとヘプタン(和光純薬株式会社製、特級)12mlをCNTの環状集合体の製造装置10の中に入れ、超音波バス4により超音波照射して懸濁させた。
そして、エアポンプ5からCNT懸濁液1の上方約0.5cmの部分に空気を流通させ、この気流3によりミスト2を捕捉手段6内部の捕捉部7まで移送した。なお、超音波照射は20℃で行い、超音波照射中は、懸濁液1の液面がほぼ一定になるよう溶媒のヘプタンを滴下ロート15から適宜加えた。
【0023】
約1時間超音波を照射した後、捕捉部7にたまった黒色の懸濁液をFEP(Fluorinated ethylene propylene共重合体)製のチューブ(10ml、Nalgene社製)に移し、遠心分離機(TOMY社製、MRX-152)により遠心分離を20分間行った。遠心分離後の液の上澄みを除いた後、得られた黒色固体を、室温真空下で乾燥した。
【0024】
本実施例では、捕捉部7以外に、ガラス容器11の側壁部S1(図2参照)、入口配管12の内部S2、出口配管13の内部S3にも、黒色の付着が認められた。これらの黒色付着物についても前記と同様の方法で精製し黒色固体を得た。また、ガラス容器11の底部の黒色残渣S4についても同様の方法で精製し、黒色固体を得た。
そして、捕捉部7およびS1~S4で得られた黒色固体の形状を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。結果を図3~10に示す。
【0025】
捕捉部7で得られた黒色固体のTEM写真を図3~図6に示す。これらの写真から、捕捉部7で得られた黒色固体の大部分はリング状、もしくはCNTが渦巻状に巻いたコイル状のCNTの環状集合体で占められていることが認められた。得られたCNTの環状集合体の直径は、およそ1.0~3.3μmの範囲であり、円に近い形状のものから楕円のものまで見受けられた。また、2つの円に近い形状のものが接近して重なっているか、もしくはインターロックした形のものも含まれていた。
【0026】
これに対し、図7~図10のTEM写真に示したように、S1~S4で得られた黒色固体には、殆どCNTの環状集合体は認められなかった。より詳しくは、ガラス容器11の側壁部S1で得られた黒色固体(図7)ではコイル状のCNTの環状集合体が僅かに認められたものの、大部分は繊維状のCNTであった。また、入口配管12の内部S2(図8)では、数個のCNTの環状集合体が認められたが、他はすべて繊維状のCNTであった。出口配管13の内部S3(図9)では、S2よりはやや多くのCNTの環状集合体が認められたが大部分は繊維状のCNTであった。ガラス容器11の底部の黒色残渣S4(図10)についても、2~3個のCNTの環状集合体が認められたが、他は全て繊維状のCNTであった。
【0027】
以上のように、飛散したミスト2の内、捕捉部7に達したミスト2でのみ多量のCNTの環状集合体が認められたことから、CNTの環状集合体はミスト2が気流3により移送されている間に生成すると考えられる。また、CNTの環状集合体を含むミスト2は他の形状のCNTを含むミスト2に比べ気流の影響を受けやすく、それにより環状集合体のみが捕捉部7に濃縮された、ということも考えられる。また、ガラス容器11の底部の黒色残渣S4にCNTの環状集合体が殆ど存在しなかったことから、CNTの環状集合体は超音波照射のみでは生成しないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
CNTリングは大きな常磁性を示すと予見されていることから(Physical Review Letters,88, 217206 (2002))、本発明に係るCNTの環状集合体は、例えば非常に軽い磁石で構成された磁気テープや磁気ディスク等の磁気記録媒体の製造に利用できると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】CNTの環状集合体の製造装置の概念図である。
【図2】実施例に係るCNTの環状集合体の製造装置の図である。
【図3】CNTの環状集合体のTEM写真である。
【図4】CNTの環状集合体のTEM写真である。
【図5】CNTの環状集合体のTEM写真である。
【図6】CNTの環状集合体のTEM写真である。
【図7】ガラス容器の側壁部で得られた黒色固体のTEM写真である。
【図8】入口配管の内部で得られた黒色固体のTEM写真である。
【図9】出口配管の内部で得られた黒色固体のTEM写真である。
【図10】ガラス容器底部の黒色残渣のTEM写真である。
【符号の説明】
【0030】
1 懸濁液
2 ミスト
3 気流
4 超音波バス(ミスト発生手段)
5 エアポンプ(気流発生手段)
6 捕捉手段
10 CNTの環状集合体の製造装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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